(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ステントシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A61B17/22 528
(21)【出願番号】P 2019169164
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513165056
【氏名又は名称】株式会社Biomedical Solutions
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】石田 宏輝
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-525796(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022145(WO,A1)
【文献】特表2018-508270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0112376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 17/22
A61F 2/82 - 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーと、
前記ワイヤーの遠位側に連結された第1ステントと、
前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに外挿されて固定される第1外挿部と、
前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに配置される第2ステントであって、その前記第1ステントの側に拡縮自在な開口を有する第2ステントと、
前記第2ステントよりも近位側の前記ワイヤーに外挿されて固定される第2外挿部と、を備え、
前記第2ステントは、前記第1ステントに対して接近又は離間を可能に移動自在に構成されており、
前記第2ステントが窄まった状態において、前記第1外挿部の近位側端部と前記第2外挿部の遠位側端部との間の外挿部無し領域に、前記第2ステントが収まることが可能に構成さ
れ、かつ、前記第2ステントは、前記第1外挿部の近位側端部及び前記第2外挿部の遠位側端部それぞれに突き当たるように構成されている、脳領域の血栓の回収に用いられるステントシステム。
【請求項2】
前記第2ステントが窄まった状態において、前記第2ステントは、前記第2ステントの遠位側端部が前記第1外挿部の近位側端部に対向した状態で、前記外挿部無し領域に収まることが可能に構成されている、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項3】
前記第2ステントは、前記第1ステントの側に移動したときに、前記第1ステントの少なくとも近位側の部分に対向する位置に配置可能に構成されている、
請求項2に記載のステントシステム。
【請求項4】
前記第2ステントは、前記第1外挿部により遠位側への移動範囲を規制されていると共に、前記第2外挿部により近位側への移動範囲を規制されている、
請求項1~3のいずれかに記載のステントシステム。
【請求項5】
ワイヤーと、前記ワイヤーの遠位側に連結された第1ステントと、前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに外挿されて固定される第1外挿部と、前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに配置される第2ステントであって、その前記第1ステントの側に拡縮自在な開口を有する第2ステントと、前記第2ステントよりも近位側の前記ワイヤーに外挿されて固定される第2外挿部と、を備えるステントシステムであって、
前記第2ステントが窄まった状態において、前記第1外挿部の近位側端部と前記第2外挿部の遠位側端部との間の外挿部無し領域に、前記第2ステントが収まることが可能に構成さ
れ、かつ、前記第2ステントは、前記第1外挿部の近位側端部及び前記第2外挿部の遠位側端部それぞれに突き当たるように構成されており、
脳領域に送達し、前記第1ステントが絡めた血栓を前記第1ステントと前記第2ステントとの間で挟み込んだ状態で、ステントシステムを近位側へと移動させるために用いられる、ステントシステム。
【請求項6】
血栓が形成された後8時間以上経過した患者に対して用いられる、請求
項5に記載のステントシステム。
【請求項7】
前記第1ステントの拡張は、前記第1ステントの少なくとも一部が血栓よりも遠位側に位置する状態で行われる、請求
項5又
は6に記載のステントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーとその遠位側に連結されたステントとを備えるステントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば血管に発生した血栓を捕捉するために、ワイヤーとその遠位側に連結されたステントとを備えるステントシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなステントシステムによれば、ステントにより血栓を捕捉して、その後、カテーテルを介してワイヤーを体外に引き出すことにより、ワイヤーに連結され且つ血栓を捕捉したステントを体外に引き出し、その結果、血栓を回収することができる。
【0003】
また、血栓を捕捉したステントが太い状態になっていたり、血栓が固い状態になっていたりして、その全体をマイクロカテーテル内へ挿入することができない場合、血栓を捕捉したステントをなるべくマイクロカテーテルの側に引き付けたり、血栓を捕捉したステントの近位側の一部をマイクロカテーテル内に挿入した状態で、血栓を捕捉したステントとマイクロカテーテルとを一緒に、ガイディングカテーテルを介して、体外に引き出す手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ステントで血栓を一旦捕捉したとしても、ステントを体外に引き出す過程においてステントから血栓が脱落することがある。また、血栓の大きさや固さによっては、血栓をしっかりと捕捉することが困難なことがある。この課題は、血栓捕捉後のステントを体外へ引き出す過程で、血管が合流して血管径が不連続的に大きくなるときに顕著となる。
【0006】
本発明は、脳領域の血栓の捕捉性を向上することができるステントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、ワイヤーと、前記ワイヤーの遠位側に連結された第1ステントと、前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに外挿されて固定される第1外挿部と、前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに配置される第2ステントと、を備え、前記第2ステントは、前記第1ステントに対して接近又は離間を可能に移動自在に構成されている、脳領域の血栓の回収に用いられるステントシステムに関する。
【0008】
(2)また、前記第2ステントは、その前記第1ステントの側に、拡縮自在な開口を有してもよい。
【0009】
(3)また、前記第2ステントは、前記第1ステントの側に移動したときに、前記第1ステントの少なくとも近位側の部分に対向する位置に配置可能に構成されてもよい。
【0010】
(4)また、前記第2ステントよりも近位側の前記ワイヤーに外挿されて固定される第2外挿部を更に備え、前記第2ステントは、前記第1外挿部により遠位側への移動範囲を規制されていると共に、前記第2外挿部により近位側への移動範囲を規制されていてもよい。
【0011】
(5)また、第2ステントが窄まった状態において、前記第2ステントは、前記第1外挿部の近位側端部及び前記第2外挿部の遠位側端部それぞれに突き当たるように構成されていてもよい。
【0012】
(6)また、本発明は、ワイヤーと、前記ワイヤーの遠位側に連結された第1ステントと、前記第1ステントよりも近位側の前記ワイヤーに配置される第2ステントと、を備えるステントシステムであって、脳領域に送達し、前記第1ステントが絡めた血栓を前記第1ステントと前記第2ステントとの間で挟み込んだ状態で、ステントシステムを近位側へと移動させるために用いられる、ステントシステムに関する。
【0013】
(7)また、血栓が形成された後8時間以上経過した患者に対して用いられてもよい。
【0014】
(8)また、前記第1ステントの拡張は、前記第1ステントの少なくとも一部が血栓よりも遠位側に位置する状態で行われてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本発明は、脳領域の血栓の捕捉性を向上することができるステントシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】ステントが縮径状態(マイクロカテーテルに挿入されて、拡張していない状態)の場合の本発明の実施形態のステントシステムの模式図である。
【
図1B】ステントが拡張状態(マイクロカテーテルから出て、拡張した状態)の場合の本発明の実施形態のステントシステムの斜視図である。
【
図2A】ステントが拡張状態の場合の本発明の実施形態のステントシステムの模式図である。
【
図2B】
図2Aに示す状態から、第2ステントが第1ステントに接近した状態を示す模式図である。
【
図3A】実施形態のステントシステムがマイクロカテーテルに挿入されている状態を示す模式的断面図である。
【
図3B】
図3Aに示す状態から、マイクロカテーテルから第1ステントが出て、第1ステントが血栓を絡めた状態を示す模式的断面図である。
【
図3C】
図3Bに示す状態から、マイクロカテーテルから第2ステントが出て、第2ステントが拡張した状態を示す模式的断面図である。
【
図3D】
図3Cに示す状態から、血栓を絡めた第1ステントが第2ステントに接近した状態を示す模式的断面図である。
【
図3E】
図3Dに示す状態から、第2ステントがマイクロカテーテルの遠位側の開口に当接した状態を示す模式的断面図である。
【
図3F】
図3Eに示す状態から、実施形態のステントシステムがマイクロカテーテルに収納された状態を示す模式的断面図である。
【
図3G】
図3Fに示す状態から、マイクロカテーテルに収納されたステントシステムが、ガイディングカテーテルに挿入され、ガイディングカテーテル内を移動する状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明のステントシステムの実施形態を説明する。
図1Aは、ステントが縮径状態(マイクロカテーテルに挿入されて、拡張していない状態)の場合の本発明の実施形態のステントシステムの模式図である。
図1Bは、ステントが拡張状態(マイクロカテーテルから出て、拡張した状態)の場合の本発明の実施形態のステントシステムの斜視図である。
図2Aは、ステントが拡張状態の場合の本発明の実施形態のステントシステムの模式図である。
図2Bは、
図2Aに示す状態から、第2ステントが第1ステントに接近した状態を示す模式図である。
図3Aは、実施形態のステントシステムがマイクロカテーテルに挿入されている状態を示す模式的断面図である。
図3Bは、
図3Aに示す状態から、マイクロカテーテルから第1ステントが出て、第1ステントが血栓を絡めた状態を示す模式的断面図である。
図3Cは、
図3Bに示す状態から、マイクロカテーテルから第2ステントが出て、第2ステントが拡張した状態を示す模式的断面図である。
図3Dは、
図3Cに示す状態から、血栓を絡めた第1ステントが第2ステントに接近した状態を示す模式的断面図である。
図3Eは、
図3Dに示す状態から、第2ステントがマイクロカテーテルの遠位側の開口に当接した状態を示す模式的断面図である。
図3Fは、
図3Eに示す状態から、実施形態のステントシステムがマイクロカテーテルに収納された状態を示す模式的断面図である。
図3Gは、
図3Fに示す状態から、マイクロカテーテルに収納されたステントシステムが、ガイディングカテーテルに挿入され、ガイディングカテーテル内を移動する状態を示す模式的断面図である。
【0018】
図1A~
図2Bに示すように、本実施形態のステントシステム1は、ワイヤー2と、第1ステント3と、第1外挿部としての第1コイル5と、第2ステント4と、第2外挿部としての第2コイル6とを備える。
【0019】
ワイヤー2は、プッシャーワイヤー等とも呼ばれるものであり、第1ステント3を血管などの生体器官内の目的部位などへ押し出す際に、遠位側へ移動され、また、血栓を絡めた第1ステント3を体外へ引き出す際に、近位側D2へ移動される。
【0020】
第1ステント3は、ワイヤー2の遠位側D1に連結されている。第1ステント3は、一般的には、メッシュパターンの構造を有しているが、血栓を絡めることができれば、その構成に制限は無い。
【0021】
第1コイル5は、第1ステント3よりも近位側D2のワイヤー2に外挿されて固定されている。固定箇所は、第1コイル5の全長のうち、一部でもよい。第1コイル5の近位側D2の端部(近位側端部52)は、縮径状態の第2ステント4の遠位側D1の端部が突き当たる突き当て面としても機能する。なお、第1外挿部は、ワイヤー2に外挿されて固定されていれば、コイルに制限されず、例えば、チューブであってもよい。
【0022】
第2ステント4は、第1ステント3よりも近位側D2のワイヤー2に配置されている。第2ステント4については、後で詳述する。
【0023】
第2コイル6は、第2ステント4よりも近位側D2のワイヤー2に外挿されて固定されている。固定箇所は、第2コイル6の全長のうち、一部でもよい。第2コイル6の遠位側D1の端部(遠位側端部61)には、第2ステント4の近位側D2の端部が突き当たる突き当て面としても機能する。なお、第2外挿部は、ワイヤー2に外挿されて固定されていれば、コイルに制限されず、例えば、チューブであってもよい。第1コイル5の近位側端部52と第2コイル6の遠位側端部61との間は、コイルが配置されていない「コイル無し領域R」となっている。
【0024】
第2ステント4は、第1ステント3に対して接近又は離間を可能に移動自在に構成されている。なお、これは、逆の見方とすると、第1ステント3は、第2ステント4に対して接近又は離間を可能に移動自在に構成されていると捉えることができる。本明細書において、第1ステント3と第2ステント4との移動は相対的なものである。
【0025】
第2ステント4は、近位側D2の端部に、マーカー部材44を備えている。マーカー部材44は、マーカーとして機能する。また、マーカー部材44は、ワイヤー2の長手方向に貫通する貫通孔を有しており、コイル無し領域Rをワイヤー2の長手方向に移動自在になっている。これにより、第2ステント4全体は、ワイヤー2の長手方向に移動自在になっている。一方、第2ステント4は、第1コイル5により遠位側D1への移動範囲を規制されていると共に、第2コイル6により近位側D2への移動範囲を規制されている。
【0026】
詳細には、
図1Aに示すように、マーカー部材44は、その近位側D2の端部が第2コイル6の遠位側端部61に突き当たるまで、近位側D2に移動可能である。また、
図2Bに示すように、マーカー部材44は、その遠位側D1の端部が第1コイル5の近位側端部52に突き当たるまで、遠位側D1に移動可能である。なお、マーカー部材44の構成によっては、マーカー部材44の遠位側D1の端部が第1コイル5の近位側端部52に突き当たる前に、第2ステント4の本体部分が第1コイル5の近位側端部52に突き当たる。
【0027】
図2A及び
図2Bに示すように、第2ステント4は、径方向(ワイヤー2の長手方向に直交する方向)に拡張(拡径)可能であり、その第1ステント3の側(遠位側D1)に、拡縮自在な開口41を有している。
図2Bに示すように、開口41は、拡張すると、第1コイル5を超えて、第1ステント3の少なくとも近位側D2の部分に対向する位置まで移動可能である。別の見方をすると、第2ステント4は、第1ステント3の側(遠位側D1)に移動したときに、第1ステント3の少なくとも近位側D2の部分に対向する位置に配置可能である。
【0028】
また、第2ステント4が窄まった状態において、第2ステント4は、第1コイル5の近位側端部52及び第2コイル6の遠位側端部61それぞれに突き当たるように構成されている。このような突き当たった状態は、見方を変えると、縮径状態の第2ステント4がコイル無し領域Rに収まった状態である。この状態では、第2ステント4の外径は、第1コイル5及び第2コイル6の外径と同程度となるため、マイクロカテーテル内におけるステントシステム1の挿通性は、第2ステント4が無い形態と同等である。
【0029】
また、拡張状態の第2ステント4は、拡張状態の第1ステント3よりも、大きく拡張可能である。拡張状態の第2ステント4は、血管BVの内径の大きさ(バルーンによる血管の拡張した場合を含む)によって、血管の内面を径方向外方に押す場合と、血管の内面を径方向外方に押さない場合とがあり得る。なお、後述の
図3C~
図3Eに示す状態は、第2ステント4が血管BVの内面を径方向外方に押していない状態である。
【0030】
次に、ステントシステム1の使用方法の一例について、
図3A~
図3Gを参照しながら説明する。患者の体内に配置されているガイディングカテーテル(図示せず)に挿入されているマイクロカテーテルMC内に、ステントシステム1を挿入する(
図3A参照)。ステントシステム1は、
図1Aに示す縮径状態になっている。ステントシステム1を、脳領域(血管径は通常、6mm以下)に送達し、配置させる。
【0031】
図3Bに示すように、マイクロカテーテルMCの遠位側D1の開口の付近に、血栓BCが配置した状態で、ワイヤー2を遠位側D1に向けて押し、マイクロカテーテルMCの遠位側D1の開口から第1ステント3を押し出す。第1ステント3は、血栓BCを貫通し、第1ステント3の少なくとも一部が血栓BCよりも遠位側D1に位置する状態で拡張(拡径、展開)して、血栓BCに絡み付く。本実施形態においては、第1ステント3の拡張力に対する血栓BCの抵抗が比較的強く、第1ステント3は完全には拡張しない。詳述すると、第1ステント3における、血栓BCよりも遠位側D1に位置する部分は、血栓BCの抵抗をあまり受けないので、最大限拡張する。一方、第1ステント3における、血栓BC内に位置する部分及び血栓BCよりも近位側D2に位置する部分は、血栓BCの抵抗を受けて、拡張しにくい。その結果、血栓BCの近位側D2の一部は、第1ステント3の外側に露出する。
【0032】
その後、ワイヤー2を保持した状態で、マイクロカテーテルMCを近位側D2へ引く。このようにして、縮径状態の第2ステント4を、マイクロカテーテルMCの遠位側D1の開口から出す。マイクロカテーテルMCから出た第2ステント4は、
図3Cに示すように、拡張(拡径、展開)し、血管BVの内面を径方向外側に押す。拡張状態の第2ステント4は、血管BVに対して容易に動かなくなっている。
【0033】
その後、ワイヤー2を近位側D2へ引くことにより、第2ステント4の位置が維持されたまま、血栓BCを絡めた第1ステント3は、近位側D2、すなわち第2ステント4の側へ移動する。その結果、
図3Dに示すように、第1ステント3に絡められた血栓BC、特に第1ステント3の外側に露出する血栓BCは、第2ステント4によって押さえ付けられたり、覆われたりする。なお、第2ステント4は、その構成によっては、血栓BCを完全に覆うことができる(血栓BCを露出しないようにすることができる。血栓BCと血管BVの内面やマイクロカテーテルMCの内面との接触を回避させることができる。)。第1ステント3が更に近位側D2に移動可能な場合、第1コイル5の近位側端部52が第2ステント4に突き当たり、第1コイル5は、近位側D2に移動不可となるまで、移動する。
【0034】
更に、マイクロカテーテルMCを保持した状態で、ワイヤー2を近位側D2へ引くと、第1ステント3、血栓BC、第1コイル5等に押されて、第2ステント4は近位側D2へ移動する。このようにして、第2ステント4は、マイクロカテーテルMCの遠位側D1の開口に突き当たる(
図3E参照)。なお、第2ステント4の近位側D2の一部が、マイクロカテーテルMCの遠位側D1の開口から内部に入り込んでもよい。
【0035】
この状態から更に、マイクロカテーテルMCを保持した状態で、ワイヤー2を近位側D2へ引くと、拡張状態の第2ステント4は、マイクロカテーテルMCに対して近位側D2に移動できる。これにより、
図3Fに示すように、第1ステント3が絡めた血栓BCを第1ステント3と第2ステント4との間で挟み込んだ状態で、第2ステント4の近位側D2の一部は、マイクロカテーテルMCに収納される。第1ステント3とそれに絡められた血栓BCは、マイクロカテーテルMCの内径よりも大きいため、マイクロカテーテルMCに収納されない。その後、
図3Gに示すように、このような半収納状態のステントシステム1全体を、マイクロカテーテルMCと一緒に、ガイディングカテーテルGCに挿入し、ガイディングカテーテルGC内を移動させて、体外に出す(回収する)ことができる。
【0036】
このような使用方法は、血栓が形成された後8時間以上経過した患者に対して好適である。このような場合、血栓が固くなっており、血栓が脱落しやすいことが多いからである。
【0037】
実施形態のステントシステム1によれば、例えば、次のような効果を奏する。
(1)実施形態のステントシステム1は、ワイヤー2と、ワイヤー2の遠位側D1に連結された第1ステント3と、第1ステント3よりも近位側D2のワイヤー2に外挿されて固定される第1コイル5と、第1ステント3よりも近位側D2のワイヤー2に配置される第2ステント4と、を備える。第2ステント4は、第1ステント3に対して接近又は離間を可能に移動自在に構成されている。そのため、血栓BCを絡めた第1ステント3に第2ステント4を接近させることができる。これにより、血栓BCを絡めた第1ステント3を、第2ステント4が押さえ付けたり、覆ったりすることができる。その結果、脳領域の血栓BCの捕捉をより確実にして、ステントシステム1を引き出す過程で、血管合流により血管径が不連続的に大きくなっても血栓BCが脱落することを抑制することできる。第1ステント3と第2ステント4とが一軸上に並ぶことで、ステントシステム1全体の縮径性を損ないにくい。
【0038】
(2)第2ステント4は、その第1ステント3の側に、拡縮自在な開口41を有する。そのため、血栓BCを絡めた第1ステント3を、第2ステント4が押さえ付けたり、覆ったりすることを、より確実に行うことができる。なお、開口41は必須ではない。開口41を有しない形態の場合、第2ステント4の遠位側D1の(開口していない)端部で、血栓BCを絡めた第1ステント3を長手方向に押せばよい。
【0039】
(3)第2ステント4は、第1ステント3の側に移動したときに、第1ステント3の少なくとも近位側D2の部分に対向する位置に配置可能に構成されている。そのため、血栓BCを絡めた第1ステント3を、第2ステント4が押さえ付けたり、覆ったりすることを、より確実に行うことができる。
【0040】
(4)ステントシステム1は、第2ステント4よりも近位側D2のワイヤー2に外挿されて固定される第2コイル6を更に備える。第2ステント4は、第1コイル5により遠位側D1への移動範囲を規制されていると共に、第2コイル6により近位側D2への移動範囲を規制されている。そのため、第2ステント4の挙動を安定化させやすい。
【0041】
(5)第2ステント4が窄まった状態において、第2ステント4は、第1コイル5の近位側端部52及び第2コイル6の遠位側端部61それぞれに突き当たるように構成されている。そのため、第2ステント4は、第1コイル5の近位側端部52と第2コイル6の遠位側端部61との間の領域を埋める部材として機能する。これにより、マイクロカテーテルMCに挿通されている状態において、ステントシステム1を遠位側D1に押し出す際のステントシステム1全体の剛性や強度を向上させることができる。特に、ステントシステム1の座屈強度が高くなる。
【0042】
(6)実施形態のステントシステム1は、脳領域に送達し、第1ステント3が絡めた血栓BCを第1ステント3と第2ステント4との間で挟み込んだ状態で、ステントシステム1を近位側へと移動させる。これにより、脳領域に存在し、回収が困難な血栓BCを比較的容易に捕捉して、体外へ出す(回収する)ことができる。
なお、このような使用方法を採用する場合、実施形態における「第1ステント3よりも近位側D2のワイヤー2に外挿されて固定される第1外挿部(第1コイル5)」は必須ではなく、また、第2ステント4は、第1ステント3に対して接近又は離間を可能に移動自在に構成されていることも必須ではない。
【0043】
(6)に関して詳述すると、脳領域の血栓を体外へ回収する経路には、血管径が不連続的に大きくなる血管合流箇所や曲率半径が小さい屈曲箇所を通らざるを得ず、捕捉した血栓が高度に脱落しやすい。これに対し、本発明は、脳領域で予め血栓を第1ステント3と第2ステント4との間で挟んだ後にステントシステムを近位側D2側へと移動させることで、血管径が不連続的に大きくなる箇所や曲率半径が小さい屈曲箇所での血栓の脱落を抑制可能である。なお、ステントシステムを近位側へと移動させた後に血栓を挟む順序だと、前記箇所で血栓が脱落してしまう。
【0044】
(7)ステントシステム1は、血栓が形成された後8時間以上経過した患者に対して好適に使用される。これにより、長時間が経過して硬くなった血栓BCを、比較的に容易に捕捉し、脱落を抑制して、体外へ出すことができる。なお、ステントシステムは、血栓が形成された後8時間以上経過していない患者に対しても、当然に使用可能である。
【0045】
(8)第1ステント3の拡張は、好適には、第1ステント3の少なくとも一部が血栓BCよりも遠位側に位置する状態で行われる。これにより、第1ステント3が拡張しやすく、第1ステント3は血栓BCに絡みやすくなる。なお、第1ステント3の拡張態様は、これに制限されない。
【0046】
(8)に関して詳述すると、従来のステントは、ステントの高い拡張力により血栓を血管壁に圧着させるように拡張し、血栓を径方向内側から掴み、小型化した血栓をステント内に収容するという設計思想を有していた。この思想に基づくステントは、血栓と同じ位置で血栓を砕いて拡張されて使用される。また、この思想に基づくステントでは、ステントの高い拡張力による血管へのダメージの回避は困難である。これに対し、本発明の一形態は、血栓を砕いて小型化させるのではなく、血栓を第1ステント3と第2ステント4との間に挟んで使用しようとする設計思想を有している(なお、この使用方法に制限されない)。また、この設計思想を有しているため、第1ステント3には、高い拡張力は必要とされない。この設計思想に基づいているため、血栓の少なくとも一部が第1ステント3と第2ステント4との間に位置するように、第1ステント3の拡張は、第1ステント3の少なくとも一部が血栓BCよりも遠位側に位置する状態で行われる。また、第1ステント3の拡張力が低くても、容易に血栓を回収することができる。このような技術思想の場合、ステントが血栓を径方向に貫通しないことは好ましいことである。本発明の一形態では、ステントの高い拡張力により血栓を砕く必要が無いので、血管へのダメージを最小限とすることができる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ステントシステム
2 ワイヤー
3 第1ステント
4 第2ステント
5 第1コイル(第1外挿部)
6 第2コイル(第2外挿部)
41 開口
44 マーカー部材
52 近位側端部
61 遠位側端部
BC 血栓
BV 血管
D1 遠位側
D2 近位側
MC マイクロカテーテル
R コイル無し領域