(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】鉄道車両用ブレーキディスク
(51)【国際特許分類】
F16D 65/12 20060101AFI20220722BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
F16D65/12 T
F16D65/12 Q
F16D65/12 P
B61H5/00
(21)【出願番号】P 2019507585
(86)(22)【出願日】2018-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2018009870
(87)【国際公開番号】W WO2018173869
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2017058310
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】若林 雄介
(72)【発明者】
【氏名】栗田 健
(72)【発明者】
【氏名】坂口 篤司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】野上 裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄基
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特許第4595581(JP,B2)
【文献】特許第3919061(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/136832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
B61H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面
が摺動部
であるディスク板部と、
前記ディスク板部の表面から裏面に貫通し、前記ディスク板部と鉄道車両の車輪とを締結するためのボルトが通される貫通孔とを備え、
前記ディスク板部の表面側における前記貫通孔の開口部の縁部には、前記ディスク板部の半径方向よりも前記ディスク板部の周方向に大きく広がる傾斜面が設けられていることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
【請求項2】
前記傾斜面のうち前記開口部の中心から前記ディスク板部の周方向の位置にある部位は4mm以上かつ24mm以下のC面又はR面であることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
【請求項3】
前記傾斜面のうち前記開口部の中心から前記ディスク板部の周方向の位置にある部位は6mm±15%のC面又はR面であることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
【請求項4】
前記開口部のうち前記開口部の中心から前記ディスク板部の半径方向の位置にある部位には傾斜面が無いか、2mm以下のC面又はR面である傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車輪に締結されて、摺接部材が押し当てられることで制動力を発生させる鉄道車両用ブレーキディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、鉄道車両の車輪にブレーキディスクを締結し、ブレーキディスクに摺接部材を押し当てることで車輪に制動力を発生させるブレーキシステムがある。鉄道車両の走行時、ブレーキディスクの周辺において比較的に大きな騒音が発生することが分かっている。
特許文献1には、本発明に関連する技術として、鉄道車両の走行時にブレーキディスクから生じる騒音を低減する技術が示されている。特許文献1の技術は、ブレーキディスクの裏面に設けられた冷却用の空気の流路の開口面積を調整し、この間を流れる空気の量を抑制することで、騒音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブレーキディスクは、裏面に設けられた冷却用の空気の流路における騒音を低減できる。しかしながら、特許文献1のブレーキディスクを採用しても、未だ、ブレーキディスクの周辺から発生する騒音は大きなものであった。このため、現在、ブレーキディスクの周辺から発生する騒音をさらに低減することが望まれている。
本発明者らが試験を行ったところ、ブレーキディスクの表面に設けられた、ボルトを挿入するための貫通孔の開口部が、騒音の発生源の一つになっていることが分かった。貫通孔はブレーキディスクを鉄道車両の車輪に締結するために設けられている。
【0005】
一方、ボルトを挿入するための貫通孔の開口部は、摺接部材が押し当てられるブレーキディスクの表面にある。従って、開口部の大きさ又は形状を変えると、ブレーキディスクと摺接部材との接触面積が変化し、ブレーキディスクの制動特性に影響が生じるという課題がある。
本発明は、制動能力の低下を抑制しつつ、ボルトを挿入するための貫通孔が原因となる騒音を低減できるブレーキディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、
表面が摺動部であるディスク板部と、
前記ディスク板部の表面から裏面に貫通し、前記ディスク板部と鉄道車両の車輪とを締結するためのボルトが通される貫通孔とを備え、
前記ディスク板部の表面側における前記貫通孔の開口部の縁部には、前記ディスク板部の半径方向よりも前記ディスク板部の周方向に大きく広がる傾斜面が設けられていることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスクとした。
【0007】
この構成によれば、貫通孔の開口部の縁部に設けられた傾斜面により、ブレーキディスクの回転時に貫通孔の開口部で生じる気流の乱れが抑制され、開口部で発生する騒音を低減できる。また、一般に、開口部では、ブレーキディスクの回転方向に対して直交する向きの縁部は気流の乱れが生じ易いため騒音が生じ易く、回転方向と平行な向きの縁部は気流の乱れが生じ難いため騒音が生じ難い。このため、傾斜面をディスク板部の半径方向よりもディスク板部の周方向に大きく広がるように設けることで、ディスク板部と摺接部材との接触面積を無駄に小さくせずに、効率的に騒音を低減できる。
【0008】
ここで、前記傾斜面のうち前記開口部の中心から前記ディスク板部の周方向の位置にある部位は4mm以上かつ24mm以下のC面又はR面であるとよい。
このような傾斜面により開口部で生じる騒音を顕著に低減できる。
【0009】
また、前記傾斜面のうち前記開口部の中心から前記ディスク板部の周方向の位置にある部位は6mm±15%のC面又はR面であるとなおよい。
このような傾斜面により開口部で生じる騒音を顕著に低減できる。
【0010】
さらに、前記開口部のうち前記開口部の中心から前記ディスク板部の半径方向の位置にある部位には傾斜面が無いか、2mm以下のC面又はR面である傾斜面が設けられているとよい。
このような傾斜面により、ディスク板部と摺接部材との接触面積を無駄に小さくせずに、効率的に騒音を低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制動能力の低下を抑制しつつ、ボルトを挿入するための貫通孔の開口部で発生する騒音を低減できるブレーキディスクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】鉄道車両におけるブレーキシステムの一例を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るブレーキディスクの表面側を示す平面図である。
【
図3A】ボルトを挿入するための貫通孔の第1例を示す平面図である。
【
図3B】ボルトを挿入するための貫通孔の第1例を示す図であり、
図3AのA-A線断面図である。
【
図3C】ボルトを挿入するための貫通孔の第1例を示す図であり、
図3AのB-B線断面図である。
【
図3D】ボルトを挿入するための貫通孔の第1例を示す図であり、
図3AのC-C線断面図である。
【
図4A】ボルトを挿入するための貫通孔の第2例を示す平面図である。
【
図4B】ボルトを挿入するための貫通孔の第2例を示す図であり、
図4AのA-A線断面図である。
【
図4C】ボルトを挿入するための貫通孔の第2例を示す図であり、
図4AのB-B線断面図である。
【
図4D】ボルトを挿入するための貫通孔の第2例を示す図であり、
図4AのC-C線断面図である。
【
図5A】ボルトを挿入するための貫通孔の第3例を示す平面図である。
【
図5B】ボルトを挿入するための貫通孔の第4例を示す平面図である。
【
図5C】ボルトを挿入するための貫通孔の第5例を示す平面図である。
【
図5D】ボルトを挿入するための貫通孔の第6例を示す平面図である。
【
図5E】ボルトを挿入するための貫通孔の第7例を示す平面図である。
【
図6】騒音試験の結果を示す周波数特性グラフである。
【
図8】傾斜面のサイズとピーク騒音レベルとの関係を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、鉄道車両におけるブレーキシステムの一例を示す斜視図である。
図2は、実施形態に係る鉄道車両用のブレーキディスクの表面側を示す平面図である。
本発明の第1実施の形態のブレーキシステムは、高速鉄道に搭載される。このブレーキシステムは、鉄道車両の車輪100の側部に締結されたブレーキディスク10と、ブレーキディスク10に接触して制動力を発生させる摺接部材200と、摺接部材200をブレーキディスク10に押し付け可能な可動部210とを備える。ブレーキディスク10と摺接部材200とは、特に制限されないが、1つの車輪100の両方の側面にそれぞれ設けられ、可動部210は2つの摺接部材200で車輪100を挟み込むように構成される。
【0014】
ブレーキディスク10は、環状のディスクであり、ディスク板部10aの表面10fが摺動部である。ディスク板部10aの裏面には、図示略の複数の縦フィン及び横フィンが設けられ、これらによって冷却用の空気を通す通路が形成されている。ブレーキディスク10のうち、縦フィン及び横リブを除いた板状の部分をディスク板部10aと称する。
【0015】
ディスク板部10aには、ボルトを通すために表面から裏面に貫通された複数の貫通孔12が設けられている。複数の貫通孔12は、ディスク板部10aの同一径上に設けられ、且つ、ディスク板部10aの周方向に等間隔に並んでいる。
【0016】
図3Aは、ボルトを挿入するための貫通孔の第1例を示す平面図であり、
図3BはそのA-A線断面図、
図3CはそのB-B線断面図、
図3DはそのC-C線断面図である。
図4Aは、ボルトを挿入するための貫通孔の第2例を示す平面図であり、
図4BはそのA-A線断面図、
図4CはそのB-B線断面図、
図4DはそのC-C線断面図である。
【0017】
貫通孔12は、ボルトの軸部を通す径の小さい小径部12tと、ボルトの頭部又はナットが配置される径の大きい大径部12wとを有し、大径部12wがディスク板部10aの表面10fと交差する部分を開口部と称する。また、貫通孔12の中心軸がディスク板部10aの表面10fと交差する部分を開口部の中心12cと称する。
図3B、
図3C、
図3D、また
図4B、
図4C、
図4Dにおいて、ボルトの頭頂部の位置を二点鎖線で示す。
【0018】
ディスク板部10aの表面側において、貫通孔12の開口部の縁部には、ディスク板部10aの半径方向よりもディスク板部10aの周方向に大きく広がる傾斜面12xが設けられている。より具体的には、傾斜面12xは、貫通孔12の開口部の縁部に設けられ、ディスク板部10aの表面10fに近い位置から裏面側に向かうほど、貫通孔12の中心軸に近くなる向きに傾斜している。ディスク板部10aの半径方向よりもディスク板部10aの周方向に大きく広がる傾斜面12xとは、言い換えれば、次の形態を示す。すなわち、ディスク板部10aの回転軸方向に見て、貫通孔12の開口部の中心12cを通りディスク板部10aの周方向に延びる直線と傾斜面12xとの重なる範囲が、貫通孔12の開口部の中心12cを通りディスク板部10aの半径方向に延びる直線と傾斜面12xとの重なる範囲よりも大きい形態である。ディスク板部10aの回転軸方向に見て、貫通孔12の開口部の中心12cを通りディスク板部10aの半径方向に延びる直線と傾斜面12xとの重なる範囲は、ゼロであってもよい。
【0019】
傾斜面12xは、
図3B、
図3C、
図3Dに示すように、貫通孔12の開口部の縁部に形成された面取り部であり、R面である。また、傾斜面12xは、
図4B、
図4C、
図4Dに示すように、C面であってもよい。
なお、傾斜面12xは、切削加工などの面取り加工により形成されたものであってもよいし、型成形により形成されたものであってもよい。本明細書では、傾斜面12xが型形成により形成された場合でも、傾斜面12xのことを面取り部、R面又はC面とも呼ぶ。以下、XmmのR面又はC面とは、
図3B、
図4Bに示すように、ディスク板部10aの表面10fに沿った方向の長さの最大部L1と、ディスク板部10aの軸方向に沿った長さの最大部L2とが、ほぼXmmであるR面又はC面を意味する。
【0020】
図3A~Dの第1例及び
図4A~Dの第2例において、傾斜面12xは、開口部の中心12cからディスク板部10aの周方向の位置にある部位が最も大きく、開口部の中心12cからディスク板部10aの半径方向の位置にある部位へかけて連続的に小さくなる。開口部の縁部において、開口部の中心12cからディスク板部10aの半径方向の位置にある部位には、傾斜面12xは形成されていない。
【0021】
図5A~
図5Eは、ボルトを挿入するための貫通孔の第3例~第7例を示す平面図である。
貫通孔12の傾斜面12xは、
図5A~
図5Eのように変形してもよい。
図5A~
図5Eの貫通孔12の大径部12wの直径は36mmである。
第3例の貫通孔12は、
図5Aに示すように、第1例又は第2例の貫通孔12より小さい傾斜面12xを有する。第3例の傾斜面12xの最大の部位は、開口部の中心12cからディスク板部10aの周方向の位置の設けられた、6mmのR面又はC面である。第3例の貫通孔12において、開口部の中心12cからディスク板部10aの半径方向の部位には、傾斜面12xは形成されていない。傾斜面12xは、最大の部位から最小の部位にかけて連続的に小さくなるように形成されている。
【0022】
第4例の貫通孔12は、
図5Bに示すように、第1例又は第2例の貫通孔12より大きい傾斜面12xを有する。第4例の傾斜面12xの最大の部位は、開口部の中心12cからディスク板部10aの周方向の位置に設けられた、24mmのR面又はC面である。第4例の貫通孔12において、開口部の中心12cからディスク板部10aの半径方向の部位には、傾斜面12xは形成されていない。傾斜面12xは、最大の部位から最小の部位にかけて連続的に小さくなるように形成されている。24mmのR面又はC面とは、R面又はC面がボルトの頭頂部の位置に到達する大きさである。
第5例の貫通孔12は、
図5Cに示すように、傾斜面12xの最大部位及び最小部位の位置を、開口部の中心軸を中心に回転させた例であり、その他の形態は、第1例~第4例の傾斜面12xの形態が採用される。この場合でも、傾斜面12xの最大の部位は、貫通孔12をディスク板部10aの半径方向に等間隔に3分割した範囲e1~e3のうち、中央の範囲e2に位置するとよい。
【0023】
第6例の貫通孔12は、
図5Dに示すように、傾斜面12xの形態を開口部の中心12cを通る周方向の直線に対称な形態から、非対称な形態に変化させたものであり、その他の形態は、第1例~第4例の形態が採用される。この場合でも、傾斜面12xの最大部位は、貫通孔12をディスク板部10aの半径方向に等間隔に3分割した範囲e1~e3のうち、中央の範囲e2に位置するとよい。
第7例の貫通孔12は、
図5Eに示すように、傾斜面12xが開口部の全周に設けられた例である。第7例において、傾斜面12xの最大の部位は、開口部の中心12cからディスク板部10aの周方向の位置に設けられる。また、傾斜面12xの最小の部位は、開口部の中心12cからディスク板部10aの半径方向の位置に設けられる。傾斜面12xは、最大の部位から最小の部位にかけて連続的に小さくなるように形成され、傾斜面12xの最小の部位は2mm以下のR面又はC面にするとよい。なお、第7例の傾斜面12xの形態に、第5例又は第6例に示した変形を適用してもよい。
【0024】
上述した第1例から第7例の貫通孔12によれば、その開口部の縁部に、ディスク板部10aの半径方向よりもディスク板部10aの周方向に大きく広がる傾斜面12xを有する。これにより、貫通孔12の開口部で生じる気流の乱れが抑制され、開口部で発生する騒音を低減できる。また、一般に、開口部の縁部の全周のうち、ブレーキディスク10の回転方向に対して直交する方向を向いた部位は気流が乱れ易いため騒音が生じ易く、回転方向と平行な方向を向いた部位は気流が乱れ難いため騒音が生じ難い。このため、上記の傾斜面12xの形態により、ディスク板部10aと摺接部材との接触面積を無駄に小さくせずに、効率的に騒音を低減できる。従って、ブレーキディスク10の制動能力が低下することを抑制しつつ、鉄道車両の走行時においてブレーキディスク10から生じる騒音を低減することができる。
【0025】
<騒音の低減効果>
図6は、騒音試験の結果を示す周波数特性グラフである。
図7は、騒音試験の結果を示す棒グラフである。これらのグラフは、貫通孔12の開口部の形態が異なる複数種類のブレーキディスク10を回転させたときの騒音レベルを示す。「R24」とは、最大部位が24mmのR面である
図5Bの傾斜面12xが貫通孔12の開口部に形成された構成を示す。「C24」とは、最大部位が24mmのC面である
図5Bの傾斜面12xが形成された構成を示す。「R6」とは、最大部位が6mmのR面である
図5Aの傾斜面12xが形成された構成を示す。「C6」とは、最大部位が6mmのC面である
図5Aの傾斜面12xが形成された構成を示す。「面取りなし」は、貫通孔12の表面側の開口部に傾斜がない構成を示し、「全周C2」は、貫通孔12の表面側の開口部の縁部の全域に2mmのC面が形成された構成を示す。
図6の縦軸は、各周波数バンドの騒音レベルを示し、
図6の横軸は1/3オクターブバンドの中心周波数を示す。
図7には、ピーク騒音レベルと、貫通孔が原因となる騒音の主要な周波数範囲(1250Hz~5000Hz)の騒音レベルのオーバーオールを示す。
【0026】
図6に示すように、R24又はC24の傾斜面12xを有する本実施形態のブレーキディスク10によれば、面取りなしの構成、あるいは全周C2の構成を採用したブレーキディスクと比較して、2500Hz周辺の騒音レベルが顕著に低減することが確認された。同様に、R6又はC6の傾斜面12xを有する本実施形態のブレーキディスク10によれば、2500Hz周辺の騒音レベルがより顕著に低減することが確認された。
【0027】
また、
図7に示すように、R24又はC24の傾斜面12xを有する本実施形態のブレーキディスク10によれば、面取りなしの構成、あるいは全周C2の構成を採用したブレーキディスクと比較して、ピーク騒音レベルが顕著に低減することが確認された。また、R6又はC6の傾斜面12xを有する本実施形態のブレーキディスク10によれば、面取りなしの構成、あるいは全周C2の構成を採用したブレーキディスクと比較して、ピーク騒音レベルと貫通孔が原因となる騒音の主要な周波数範囲の騒音レベルとが顕著に低減することが確認された。
【0028】
図8は、傾斜面のサイズとピーク騒音レベルとの関係を表わすグラフである。
貫通孔12の開口部で発生する騒音は、開口部の全周のうち、ブレーキディスク10の回転方向に対して直交する縁部で発生する騒音が支配的となると推測される。従って、この部位における傾斜面12xのサイズが騒音レベルに相関すると推測される。この部位の傾斜面のサイズは、「面取りなし」の構成ではゼロ、「全周C2」の構成では2mm、「R6」と「C6」の構成では6mm、「R24」と「C24」の構成では24mmである。
このような推測に基づいて、傾斜面12xのサイズとピーク騒音レベルとの相関を計算すると、
図8に示すような近似曲線が求められる。この近似曲線によれば、傾斜面のサイズを4mm以上かつ24mm以下とすることで、ピーク騒音レベルが顕著に低減すると推測される。また、傾斜面のサイズを5mm以上かつ20mm以下にすることで、ピーク騒音レベルがより顕著に低減すると推測される。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、傾斜面12xとして、
図3B及び
図4Bに示される長さL1と長さL2とが等しいR面又はC面を一例に示した。しかし、この傾斜面12xは、長さL1が長さL2より大きい傾斜面としてもよいし、長さL1が長さL2より小さい傾斜面としてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、鉄道車両用のブレーキディスクに利用できる。
【符号の説明】
【0031】
10 ブレーキディスク
10a ディスク板部
10f 表面
12 貫通孔
12t 小径部
12w 大径部
12x 傾斜面
12c 開口部の中心