(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】真空断熱パネル
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20220722BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220722BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220722BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
F16L59/065
B32B5/18
B32B27/40
B65D81/38 A
(21)【出願番号】P 2019520085
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2017075212
(87)【国際公開番号】W WO2018069116
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507193412
【氏名又は名称】キングスパン・ホールディングス・(アイアールエル)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098062
【氏名又は名称】梅田 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】マック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュフォール,マルコム
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-205566(JP,A)
【文献】特開平02-212510(JP,A)
【文献】国際公開第2015/095114(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/113423(WO,A1)
【文献】特開昭54-028054(JP,A)
【文献】特開平11-264654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
B32B 5/18
B32B 27/40
B65D 81/38
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上面、下面及び側部を有する多孔性断熱コアと、
(b)前記断熱コアを被包し、印加された真空を内部に維持するように、前記断熱コアの周りに配置されたエンベロープと、
(c)前記エンベロープに被着され
て、前記エンベロープの全表面域に亘って形成され、その厚さが0.1mmから5mmである非発泡ポリウレタンコーティング層とからなり、
(d)前記エンベロープと前記非発泡ポリウレタンコーティング層が前記断熱コアの周りにバリア層を形成し、前記バリア層の水蒸気透過率が、規格ASTM F1249-90に従って測定したとき、1.5×10
-3
g/m
2
.dayから3.0×10
-3
g/m
2
.dayである真空断熱パネル。
【請求項2】
前記エンベロープがメタライズドフィルムからなる請求項1に記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記非発泡ポリウレタンコーティング層の厚さ
が0.1mmから3mm
、好ましくは0.1mmから1.5mmである請求項1
又は2に記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記非発泡ポリウレタンコーティング層の蒸気抵抗率が5,000MN・s/gmから100,000MN・s/gmであり、好ましくは、前記非発泡ポリウレタンコーティング層の蒸気抵抗率が7,000MN・s/gm以上である請求項1乃至
3のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項5】
前記非発泡ポリウレタンコーティング層が、第1のイソシアネート含有部と第2のポリオール含有部とからなるポリウレタン樹脂組成物から形成されている請求項1乃至
4のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項6】
前記バリア層の水蒸気透過率が、規格ASTM F1249-90に従って測定したとき
、1.5×10
-3g/m
2.day
から2.5×10
-3
g/m
2
.dayである請求項1乃至
5のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項7】
前記バリア層の酸素透過率が、規格ASTM D3985に従って測定したとき
、2x10
-3cc/m
2.dayか
ら5x10
-3cc/m
2.dayであり、好ましく
は4×10
-3cc/m
2.day以下である請求項1乃至
6のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項8】
前記エンベロープと前記非発泡ポリウレタンコーティング層が合体して前記断熱コアの周りに
前記バリア層を形成し、前記バリア層の水蒸気透過率
が2.5×10
-3g/m
2.day以下であり、酸素透過率
が4×10
-3cc/m
2.day以下である請求項1乃至
7のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項9】
前記多孔性断熱コアは、フュームドシリカ及び/又は沈降シリカのようなシリカ、パーライト、珪藻土(
diatomaceous earth)、及びそれらの組合せから選択される粉状微孔質材料から構成される請求項1乃至
8のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項10】
3.0mW/(m・K)から4.5mW/(m・K)、例えば3.0mW/(m・K)から4.0mW/(m・K)の熱伝導率を有する請求項1乃至
9のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項11】
前記断熱コアの前記上面又は下面に配設されて該断熱コアを補強する少なくとも1つの補強部材を更に備え、前記補強部材は多孔質材料で形成され、かつ実質的に硬質であり、前記少なくとも1つの補強部材と前記断熱コアとは合体してハイブリッドコアを形成するが、前記少なくとも1つの補強部材は前記断熱コアを横断する熱橋を形成せず、前記エンベロープは、前記ハイブリッドコアを被包する請求項1乃至
10のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項12】
前記断熱コアの上面に配置された上側補強部材を有し、かつ前記断熱コアの下面に配置された下側補強部材を有する請求項
11に記載の真空断熱パネル。
【請求項13】
少なくとも1つの補強部材が金属箔フェーサー(facer)
を含み、前記金属箔フェーサーが、4μm~50μmの厚さを有し、かつ前記補強部材の前記上面又は下面にその実質的に全面に亘って延在し、前記金属箔フェーサーが、前記補強部材の前記上面と下面との間に熱橋を形成しない請求項
11又は
12に記載の真空断熱パネル。
【請求項14】
前記断熱コアの前記真空断熱パネル内における密度が100kg/m
3から160kg/m
3、例えば110kg/m
3から150kg/m
3である請求項
11乃至
13のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項15】
前記少なくとも1つの補強部材の密度が前記断熱コアの密度より低い請求項
11乃至
14のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項16】
前記エンベロープと前記断熱コアとの間で、4μmから50μmの厚さを有し、前記断熱コアの前記上面又は下面にその実質的に全面に亘って延在する少なくとも1つの金属箔を更に備え、前記金属箔が、前記断熱コアの前記上面と下面との間に熱橋を形成しない請求項1乃至
15のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項17】
前記金属箔が、前記エンベロープの内側にくっついている請求項
16に記載の真空断熱パネル。
【請求項18】
前記エンベロープがエンベロープ内層を備え、前記金属箔がそれにくっつけられた少なくとも1つの外層を有し、前記エンベロープ内層と前記金属箔の前記外層とが互いにくっつけられ、任意により互いに接着される請求項
17に記載の真空断熱パネル。
【請求項19】
4μmから50μmの厚さを有する2つの金属箔を有し、一方の前記金属箔が、前記断熱コアの前記上面の略全面に亘って延在し、他方の前記金属箔が、前記断熱コアの前記下面の略全面に亘って延在する請求項
16乃至
18のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項20】
前記真空断熱パネルの外面に接着剤の層を更に有する請求項1乃至
19のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【請求項21】
前記接着剤が感圧接着剤である請求項
20に記載の真空断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネル(VIP)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VIPは、建物の断熱及び冷却・冷凍ユニット並びにその類似物のような他の用途を含む多くの断熱の用途に使用されている。このようなパネルは一般に、エンベロープ内に被包される又は包まれる断熱「コア」を形成する断熱材料のパネルを有する。前記エンベロープは、真空断熱パネルを提供するべく減圧されかつシールされる。
【0003】
前記コアは、あらゆる適当な材料で形成され、かつ一般に微孔質である。例えば、粉末、繊維及びそれらの混合物を含む粒状物質から形成することができる。例えば、微粒子状シリカ、例えばフュームドシリカ及び/又は沈降シリカで、任意により強化繊維と共に形成することができる。
【0004】
赤外線乳白剤のような乳白剤を前記コア内部に用いることができる。
【0005】
前記コアは一般に柔軟で気密なエンベロープ内に包まれ、該エンベロープには、シールする前に真空が印加される。
【0006】
VIPの熱伝導特性は、通常約0.005W/(m・K)単位で表される。
【0007】
本明細書中に言及する全ての熱伝導率値は、そうでないことが明確に示されていない限り、欧州規格BS EN:12667:2001に基づいて測定されたものである。本明細書に記載される全ての熱伝導率値は、ワット(又はミリワット)毎メートル毎ケルビンで測定されたものである。
【0008】
本明細書において言及するとき、用語ミクロンは、SI単位マイクロメートルである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
様々なVIP製品が市販されているにも拘わらず、それに代わるVIPの構造、VIP及び/又は特性が改善されたVIPの新しい製造方法が望まれている。
【0010】
VIPを構成する際に考慮されるいくつかの検討事項は、製造の容易さ、取扱いでの頑丈さ・堅牢さ、材料の入手容易性及び費用、初期熱伝導率値、経年熱伝導率値である。
【0011】
熱伝導率に関して、VIPの全体の熱伝導率に影響を与えるコアの熱伝導率及びエンベロープの熱伝導率を含む多くの要素がある。コア及びエンベロープの熱伝導率は、同様に他の多くの要素に依存している。
【0012】
欧州特許公報EP2607073には、ガラス繊維ウール及びガラス繊維ボードで形成された複合コア材料と、外側から表面保護層、金属バリア層及び接着層で構成されて、前記コア材料を真空包装する層構造を有する表皮材とからなるVIPが記載されている。欧州特許公報EP2607073の目的は、10年以上の長期耐久性を発揮するVIPを提供することである。しかしながら、約2.4mW/(m・K)の初期熱伝導率から開始するにも拘わらず、2年後の予想熱伝導率は約6.4mW/(m・K)であった。ガラス繊維ボードを組み込むことによって、初期熱伝導率が十分であるにも拘わらず、該ガラス繊維ボードの寿命は急激に経年劣化する。 最新技術にも拘わらず、熱伝導率を向上させかつ長期間の耐久性及び寿命を備えたVIPを提供することが、長年に亘って解決されないまま必要とされている。VIP製品の熱伝導率は、コアの密度を小さくすることにより改善され得ること、それによってVIPの製造コストが低減するという付加利益があることは知られている。しかしながら、密度が低下したコアは、頑丈さ・堅牢さが減って破損し易くなり、従って様々な製造段階においてハンドリングがより難しくなる。
【0013】
このように、熱性能を改善するために、コアの密度をできる限り低下させることが望ましいとしても、密度が低下するほど、コア及びそれから作られる全てのVIPのハンドリング特性について、より多くを妥協することになる。
【0014】
例えば、コア密度の値が約165kg/m3より低い粉状断熱コアから作られる従来のVIPは、寸法安定性が乏しく、パネルのエッジ部が崩れて、パネルのエンベロープには皺ができる。その結果物は粗悪品で、経年的に歪み・反りを生じる傾向があり、美的には不快な外観となる。従って、一方で熱性能及び寸法の完全性と、他方でハンドリングの簡単さとの間で、バランスを取らなければならない。VIPは一旦作られると、切断することができないから、最終製品の寸法安定性は重要である。
【0015】
VIPの寿命を改善することについて主な問題の1つは、水分及び/又は空気の経年的なエンベロープへの侵入である。この問題の1つの解決策は、断熱コアを囲むエンベロープの厚さを増大させることであった。エンベロープの厚さを増大させることによって、その水分及び/又は空気の侵入に対する透過性が減少するとは言え、エンベロープを介した伝導が、特にVIPの側部周りで増加する。エンベロープは熱伝導率が断熱コアよりも大きくなるので、VIPのエッジにおける熱橋の形成は、VIPの断熱の効き目を低下させる。
【0016】
断熱コアの熱性能を改善し、エンベロープの透過性を改善し、かつ熱橋作用を低下させることは望ましいが、1つの性能を改善することは、他の性能に有害な作用を有する場合が多い。VIPの熱性能を改善してその寿命を長くすることは、その機能性を増強し、より広い用途への適合性を高めることになる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、1つの側面において、
(a)上面、下面及び側部を有する多孔性断熱コアと、
(b)断熱コアを被包し、印加された真空を内部に維持するように、断熱コアの周りに配置されたエンベロープと、
(c)エンベロープに被着された非発泡ポリウレタンコーティング層とからなり、
非発泡ポリウレタンコーティング層が、エンベロープの表面域全体に亘って形成されている真空断熱パネルが提供される。
【0018】
有利なことに、エンベロープの外面全体に付着される非発泡ポリウレタンコーティング層の存在によって、エンベロープに防水バリアが設けられる。前記ポリウレタンコーティング層は、エンベロープの全面に亘って連続する。従って、前記ポリウレタンコーティング層に、空所や隙間、割れ目のような不連続部分は皆無である。また前記ポリウレタンコーティング層によって、真空断熱パネルの保管中、輸送中、設置の際及び寿命の期間中、真空断熱パネルの損傷しやすさが低減する。この結果、真空保持が強化され、エンベロープ及び従ってVIP自体の寿命が長くなる。
【0019】
好適には、前記エンベロープはメタライズドフィルムからなり、前記エンベロープが複数のメタライズドフィルムからなると好都合であり、例えば、前記エンベロープは、互いに接着されて積層体を形成する3つ又はそれ以上のメタライズドフィルムで構成することができる。有利なことに、複数のメタライズドフィルムからなるエンベロープによって、従来のアルミニウムエンベロープと比較して、熱エッジ効果(thermal edge effects)(断熱コアをエッジ部で通過する熱橋)が低減されている。
【0020】
好適には、前記ポリウレタンコーティング層の厚さは約5mm未満である。これにより、VIPの厚さは大きく増加しないことが確実で、それによって冷蔵庫のような用途において、その実用性・有用性を維持し、付随的にその寿命を長くしている。
【0021】
前記ポリウレタンコーティング層の厚さは少なくとも0.05mmに、例えば約0.1mmから約1.5mmのように、約0.1mmから約3mmにすることができる。
【0022】
好適には、前記ポリウレタンコーティング層は、約0.1mmから約3mmの厚さを有し、かつ約10MN・s/gから約100MN・s/gの蒸気透過抵抗(vapour resistance)を有し、例えば、前記ポリウレタンコーティング層の蒸気透過抵抗は、約0.5mmから約3mmのコーティング厚さに対して、約14MN・s/gにすることができる。好適には、前記ポリウレタンコーティング層の蒸気透過抵抗は、約0.5mmから約3mmの厚さを有するポリウレタンコーティング層に対して、約70MN・s/g又は約80MN・s/g又は約90MN・s/gのように、70~100MN・s/gにすることができる。
【0023】
前記ポリウレタンコーティング層の蒸気抵抗率(vapour resistivity)は、5,000MN・s/gmから100,000MN・s/gmにすることができ、好適には、前記ポリウレタンコーティング層の蒸気抵抗率は7,000MN・s/gm以上である。例えば、前記蒸気抵抗率は、約6,000MN・s/gmから10,000MN・s/gm、又は約10,000MN・s/gmから100,000MN・s/gm、又は約20,000MN・s/gmから90,000MN・s/gm、又は約30,000MN・s/gmから80,000MN・s/gm、又は約40,000MN・s/gmから70,000MN・s/gmであって良い。有利なことに、前記ポリウレタンコーティング層により、真空断熱パネルのエンベロープの全表面について防水コーティングとして機能することによって、真空断熱パネルの頑丈さ・堅牢さが増加する。これは、水分、例えば輸送中の雨水、又は保管中若しくは使用中の凝結の真空断熱パネルへの浸透しやすさを減少させ、かつまた、例えば真空断熱パネルに近接する発泡体のような他の断熱材料から浸出し得る、腐食性の酸のような腐食性を有する物質に対するバリアを提供する。
【0024】
前記ポリウレタンコーティング層は、ポリウレタン樹脂組成物から形成することができる。この組成物は、コーティングのようなあらゆる適当な手法で、例えば、適当なポリウレタン樹脂組成物を真空断熱パネル全体に、浸漬コーティング、カーテンコーティングすることにより、刷毛塗り又は吹き付けることにより、付着させることができる。
【0025】
好適には、前記ポリウレタンコーティング層は、ポリウレタン樹脂組成物から形成される。ポリウレタン樹脂組成物は、第1のイソシアネート含有部と第2のポリオール含有部とからなる二成分組成物とすることができる。前記イソシアネート含有部は、その粘度が、20℃で測定したときに約2000mPa・sから約3000mPa・sであってよい。前記ポリオール含有部は、その粘度が、20℃で測定したときに約2000mPa・sから約3000mPa・sであってよい。好適には、前記イソシアネート含有部及びポリオール含有部はそれぞれ、20℃で測定したときに約2300mPa・sのように、20℃で測定して2000mPa・sから2500mPa・sの粘度を有する。これによって、樹脂のVIPエンベロープへの容易な付着が促進される。
【0026】
好適には、前記樹脂は、一旦エンベロープの外面に付着すると、急速に硬化して、防水コーティング層をエンベロープの周りに設ける。
【0027】
この樹脂は、前記バリアエンベロープに対して適合性を有するべきであり、前記バリアエンベロープの腐食を生じさせるべきではない。
【0028】
前記エンベロープと非発泡ポリウレタンコーティング層は合体して、前記真空断熱パネルの断熱コアの周りにバリア層を形成する。前記バリア層は、水蒸気透過率(MVTR)が、規格ASTM F1249-90に従って測定したとき、約1.5×10-3g/m2.dayから約3.0×10-3g/m2.day、好ましくは約2.5×10-3g/m2.day以下であってよい。前記バリア層は、酸素透過率(OTR)が、規格ASTM D3985に従って測定したとき、約2x10-3cc/m2.dayから約5x10-3cc/m2.day、好ましくは約4×10-3cc/m2.day以下であってよい。好ましくは、前記MVTRは2.5×10-3g/m2.day未満であり、前記OTRは4×10-3cc/m2.day未満である。
【0029】
有利なことに、前記ポリウレタン層の存在によって、真空断熱パネルの頑丈さ・堅牢さが大きく増加する。これにより確実に、製造時から設置時まで及び寿命の期間を通して、本発明の真空断熱パネルは、偶然に穴が開く虞が少なく、エンベロープ内への水分及び空気の透過が大きく減少する。
【0030】
前記断熱コアは微孔質断熱材料から構成することができ、その詳細を以下に説明する。
【0031】
前記真空断熱パネルは、断熱コアの上面又は下面に配設されて該断熱コアを補強する少なくとも1つの補強部材を更に備えることができ、該補強部材は多孔性材料で形成され、かつ実質的に硬質(rigid)であり、前記少なくとも1つの補強部材と断熱コアとは合体してハイブリッドコアを形成するが、前記少なくとも1つの補強部材は断熱コアを横断する熱橋を形成せず、エンベロープは前記ハイブリッドコアを被包するように設けられる。
【0032】
本発明の真空断熱パネルは、断熱コアの上面に配置された上側補強部材からなり、かつ断熱コアの下面に配置された下側補強部材を有する。
【0033】
前記少なくとも1つの補強部材は、上面、下面及び側部を備える。前記補強部材の上面及び下面はそれぞれ、表面積が側部よりも大幅に大きい。前記補強部材の上面及び下面は、該補強部材の主面である。好適には、前記補強部材は多孔性材料のシートである。前記少なくとも1つの補強部材の密度は、断熱コアの密度よりも低くすることができる。好適には、前記補強部材は、気泡材料、例えば発泡体である。前記補強部材は、例えば、実質的に連続気泡のポリウレタンフォームのような、ポリウレタンフォームのシートであってよい。
【0034】
有利なことに、前記少なくとも1つの多孔質補強部材を用いて断熱コアを補強することによって、低密度断熱コアからなる低密度ハイブリッドコアの製造が可能になる。前記少なくとも1つの補強部材が無い場合、低密度断熱コアは単独では、VIPに形成するのに十分なハンドリング強度を有しない。前記少なくとも1つの補強部材が無い場合、そのような低密度断熱コアから形成されるVIPの構造的完全性・一体性は低い。例えば、そのような低密度断熱コアを有するVIPは、前記少なくとも1つの補強部材が無い場合、部分的に崩れたり、真空を印加したときに該VIPのエンベロープに皺の増加が認められる。更に、上述した断熱コアの部分的な崩れによって、真空断熱パネルの四角い側部は、全くその形態を保持できない。構造的完全性・一体性の喪失によって、VIPは、それらの側部が不規則になり、たとえ横に突き合わせて並べてもVIPの間に大きな隙間があるので、密接なパッキングに適しないものになる。
【0035】
シリカ断熱コアからなる従来のVIPは、おおよそ5.0mW/(m・K)の熱伝導率(ラムダ値)を有する。対照的に、本発明の前記ハイブリッドコアを備えるVIPは、約3.0mW/(m・K)から約4.0mW/(m・K)の熱伝導率を有し、望ましくは、本発明のVIPは、約3.5mW/(m・K)以下、例えば約3.2mW/(m・K)以下の熱伝導率値を有する。
【0036】
好適には、前記少なくとも1つの補強部材は、約95kPaから約150kPaの圧縮強度を有する。約95kPaから約150kPaの圧縮強度を有する補強部材の存在により、伝統的なVIPの断熱コアと比較したとき、低密度の断熱コアの使用が容易になる。全体的に見れば、その結果、熱性能が強化されかつ外観が改善されたVIPが得られる。
【0037】
前記ハイブリッドコア内において、前記少なくとも1つの補強部材の密度は、断熱コアのそれよりも低いことが望ましい。複数の補強部材を有する本発明のVIPは、例えば上側補強部材及び下側補強部材を有する実施形態において、前記上側補強部材及び下側補強部材が、それぞれ断熱コアの密度より低い密度を有してもよい。低密度断熱コアを有するVIPを形成することが要求されているので、前記補強部材が断熱コアよりも高い密度を有する場合があるとは言え、前記補強部材の密度は、断熱コアのそれよりも低いことが好ましい。別の実施形態では、1つの補強部材が、断熱コアよりも高い密度を有することができる。任意により、1つの補強部材が断熱コアよりも高い密度を有し、別の補強部材が断熱コアよりも低い密度を有する。
【0038】
前記補強部材は、真空安定性多孔質材料である。前記補強部材は、約20μmから約200μmの平均ポアサイズを有する硬質の多孔質材料で形成することができる。例えば、前記平均ポアサイズは、約50μm~約200μm、又は約50μm~約150μm、又は約100μm~約200μmとすることができる。
【0039】
好適には、前記補強部材は、硬質の微孔質材料から形成することができる。前記補強部材は、ポリウレタンから形成することができる。前記補強部材は、フォーム(発泡体)であってよい。前記補強部材は、ポリウレタン(PU)、ポリイソシアヌレート(PIR)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、若しくはポリフェノール類(PP)、又はそれらの組み合わせから形成することができる。例えば、前記補強部材は、ポリウレタン(PU)、ポリイソシアヌレート(PIR)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリフェノール(PP)のフォーム又はそれらの組み合わせから形成することができる。前記補強部材は、混合ポリマーフォームから形成することができる。
【0040】
好適には、本発明のVIPは、ポリウレタンで形成された少なくとも1つの補強部材を有する。本発明のVIPは、上側補強部材及び下側補強部材を有し、これら各補強部材はポリウレタンで形成することができる。望ましくは、ポリウレタンフォームを使用する。
【0041】
一般に、前記補強部材は、約30kg/m3から約80kg/m3の間の密度を有する。前記補強部材は、硬質の微孔質材料である。前記補強部材を構成する前記多孔質材料の平均ポアサイズは、一般に直径が約150μmよりも小さい。例えば、前記補強部材を構成する多孔質材料の平均ポアサイズは、直径で約140μmよりも小さく、又は直径で約130μmよりも小さく、又は直径で約120μmよりも小さく、又は直径で約110μmよりも小さく、又は直径で約100μmよりも小さくすることができる。ポアサイズが小さいことは、VIPの寿命に貢献し、とりわけポアサイズが小さいほど、VIPの寿命が長くなる。従って、ポアサイズが大きい材料は、本発明における補強部材として適していない。一般に平均ポアサイズが約250μmより大きい材料は、本発明の補強部材として適していない。
【0042】
前記補強部材は、実質的に連続気泡のフォーム材料とすることができる。このフォームは、連続気泡含有率が約90%より大きいものであってよい。(これは、露出した気泡容積を測定する気孔率測定法に基づく。容積の残部%は、独立気泡及び気泡壁を構成する。)例えば、前記補強部材は、連続気泡含有率が約90%を超えるポリウレタンフォームとすることができる。
【0043】
ハイブリッドコア内において、前記補強部材は、製造時に前記ハイブリッドコアがコンベアーベルト上を搬送されているとき、該ハイブリッドコアの一体性・完全性が維持されるように、断熱コアを支持する十分な強さを持たなければならない。従って、前記ハイブリッドコアが2つのコンベアーベルトの間を搬送され、両コンベアーベルト間の隙間が該ハイブリッドコアの長さ及び/又は幅より小さいとき、前記補強部材は、断熱コアを支持するのに十分な強度を持たなければならない。
【0044】
例えばフュームドシリカである粉状断熱材料からなる材料から構成されるような、従来のVIPに使用されている断熱コアは、コアの密度が約170~200kg/m3の範囲である。その結果得られる従来のVIPの熱伝導率は、約4.0mW/(m・K)から約4.5mW/(m・K)の範囲である。
【0045】
例えば断熱コアが、フュームドシリカ及び/又は沈降シリカのようなシリカからなる本発明のVIPは、約100kg/m3から約165kg/m3のコア密度、例えば、約110kg/m3~約165kg/m3、又は約110kg/m3~約160kg/m3、又は120kg/m3~約160kg/m3、又は130kg/m3~約160kg/m3、又は約100kg/m3~約140kg/m3、又は約100kg/m3~約135kg/m3、又は約100kg/m3~約120kg/m3のコア密度を達成することができる。それ故、前記補強部材をVIPに組み込むことによって、標準的なVIPに使用されている断熱コアと比較して、断熱コアの密度を容易に最大約25%減らすことができ、これは、VIP全体の熱性能において約13%の改善に相当する。
【0046】
本発明のVIP内の前記断熱コアの密度は、約100kg/m3から約165kg/m3とすることができる。任意で、本発明のVIP内の前記断熱コアの密度は、約130kg/m3から約160kg/m3である。例えば、本発明のVIP内の前記断熱コアの密度は、約110kg/m3から約160kg/m3、又は130kg/m3から約160kg/m3、又は128kg/m3から162kg/m3、又は132kg/m3から157kg/m3、又は128kg/m3から162kg/m3又は132kg/m3から157kg/m3、又は100kg/m3から150kg/m3、又は100kg/m3から140kg/m3、又は100kg/m3から135kg/m3、又は100kg/m3から120kg/m3とすることができる。
【0047】
前記断熱コアは、フュームドシリカのようなシリカから構成することができ、この断熱コアの密度は、約100kg/m3から約160kg/m3とすることができる。この断熱コアの密度は、任意で、約120kg/m3から約150kg/m3としてもよい。
【0048】
前記少なくとも1つの補強部材はポリウレタンから構成することができ、前記断熱コアはフュームドシリカから構成することができ、この断熱コアの密度は約100kg/m3から約160kg/m3であり、この密度は任意で約120kg/m3から約150kg/m3とすることができる。
【0049】
前記少なくとも1つの補強部材は、4μmから50μmの厚さを有し、かつ前記補強部材の上面又は下面の実質的に全面に亘って延在し、前記補強部材の上面と下面との間に熱橋を形成しない金属箔フェーサーを含むことができる。
【0050】
有利なことに、前記補強部材上の金属箔フェーサーの存在によって、断熱コア内への水分及びガスの透過に対するバリアが増強される。
【0051】
本明細書に開示する真空断熱パネルは、上述したハイブリッドコアからなるか又は断熱コア無しの補強部材からなるかに拘わらず、前記エンベロープと断熱コアのと間で、4μmから50μmの厚さを有し、断熱コアの上面又は下面の実質的に全面に亘って延在し、断熱コアの上面と下面との間に熱橋を形成しない少なくとも1つの金属箔を備えることができる。好適には、前記金属箔は、エンベロープの内側にくっつけられる。
【0052】
前記エンベロープはエンベロープ内層を備えることができ、前記金属箔は、それにくっつけられた少なくとも1つの外層を有することができ、前記エンベロープの内層と前記金属箔の外層とは、互いにくっつけることができ、任意で互いに接着することができる。
【0053】
本明細書に開示する真空断熱パネルは、4μmから50μmの厚さを有する2つの金属箔を有することができ、一方の前記金属箔は、断熱コアの上面の実質的に全面に亘って延在し、他方の前記金属箔は、前記断熱コアの下面の実質的に全面に亘って延在する。このような構成は特に、冷蔵庫パネルに使用するための真空断熱パネルに適しており、真空断熱パネルの両主面への透過に対するバリアは、特に有利である。
【0054】
断熱コアとエンベロープとの間に配設される前記金属箔によって、前記補強部材に金属フェーサーが存在するか否かに拘わらず、エンベロープの透過率が改善される。これは、エンベロープ内への空気(ガス)の経年的な侵入が相当減少し、その結果、VIPの経年熱伝導率が改善されることを意味している。印加された真空は、長期間に亘って保持される。経年的な真空の保持は、熱伝導率の観点からVIPの性能が長期間保持されることを意味している。これは、VIPの実効寿命が改善されることを意味している。
【0055】
金属フェーサーとして金属箔が補強部材に存在することは、コア密度の減少及びエンベロープにおける透過の減少を促進し、それにより本発明のVIPの断熱性能全体を向上させるので、有利である。
【0056】
特に、本発明によれば、透過率が改善された、前記断熱コアのためのエンベロープが提供される。これに関連して、透過の改善とは、エンベロープ内の真空を保持するという観点から、透過は低ければ低いほど良いので、実際は透過の減少である。経年的にエンベロープ内への(を通しての)空気(ガス)の透過減少によって、VIPの性能が改善される。
【0057】
8~16μmのように4μmから50μmの厚さを有する金属箔は、VIPのエンベロープを構成するために一般に使用されている材料よりも大きい熱伝導率を有することになる。そのため、本発明の真空断熱パネルは、断熱コアをバイパスすることにより熱が断熱コアを通過して伝達されることを可能にする熱橋が、前記金属箔によって形成されないように構成されることが重要である。前記金属箔が、前記上面を越えて(真空断熱パネルの側部を回って)かつ下面に向けて(又はその逆に)延長するようになる場合、熱橋を形成する可能性が増加し、その結果、熱伝導率の点で性能が損なわれることになる。断熱の観点から、真空断熱パネルの熱伝導率が低ければ低いほど良い。従って、前記金属箔が金属箔フェーサーとして補強部材上に存在するかそうでないか(即ち、金属箔が単に断面コア主面に亘って設けられているか)に拘わらず、いずれの実施形態においても、前記金属箔は、断熱コアを横切る、即ち断熱コアの一方の主面から該断熱コアの全く反対側の他方の主面への熱橋を形成しないものである。
【0058】
前記断熱コアは、上面、下面及び側部からなる平行六面体又は直方体の形状を有する。前記上面及び下面(即ち、主面)は、側部よりも表面積が大きい。前記上面及び下面は、全く反対側の面である。前記金属箔は、断熱コアに直接接している。前記断熱コアは、通気性のカバー又はスリーブ内に入れることができ、当業者であれば、そのような場合、前記金属箔は、断熱コアを入れるスリーブに直接接することが分かる。前記金属箔は、前記エンベロープの層の間に挟み込まれるのではない。特に、前記金属箔は、前記エンベロープの、断熱コアの周りに熱橋を形成する層の間に挟み込まれるのではない。
【0059】
前記金属箔の層は、内面及び外面を有する。上述したように、前記金属箔は、前記エンベロープの内面と断熱コアとの間に、例えば前記エンベロープと断熱コアの上面(又は下面)との間に配置される。前記金属箔自体が内面及び外面を有し、前記金属箔の内面は断熱コアに近接し、前記金属箔の外面はエンベロープの内面に近接している。
【0060】
前記金属箔は、前記上面と下面との間に熱橋を形成しない。特に、前記金属箔によって形成される熱橋は無い。例えば、前記金属箔が、前記断熱コアの側部の周りに延長することはない。その代わり、前記金属箔は、前記断熱コアの上面及び/又は下面にのみ配置される。これが、前記断熱コアを横切ることはない。
【0061】
これは、前記金属箔を用いた結果生じる、真空断熱パネルを全体的に見た熱伝導性能の減損が、前記断熱コアをバイパスする熱橋を通して熱が伝達される熱エッジ効果によって更に妥協を余儀なくされないことを意味している。
【0062】
このように、本願発明者らは、前記断熱コア又はエンベロープと比較して、熱伝導性能が劣る金属箔を使用しているにも拘わらず、前記金属箔は前記断熱コア又はエンベロープよりもはるかに良い熱伝導体となることから、真空断熱パネルの全体の経年熱性能を改善する構成が可能であることを見出した。
【0063】
特に、高熱伝導率の材料は一般に熱伝導性能を低下させると考えられているので、一般にVIPに使用することは適していないと考えられる熱伝導率を有する金属箔の使用にも拘わらず、本願発明者らは、経年熱性能が改善されるという範囲で、前記エンベロープの空気(ガス)の透過を小さくできることを発見した。
【0064】
この空気(ガス)の透過減少及びその結果である経年熱性能の改善は、前記断熱コアを囲むエンベロープを有すること、及び前記断熱コアの上面及び/又は下面にのみ存在する金属箔を有することによって達成される。
【0065】
前記金属箔は、前記エンベロープの内側にくっつけられる。典型的には、これは真空を印加した後に行われる。前記金属箔は、真空が印加された後にかつVIPが形成された後に、前記エンベロープの内側に接着することができる。これは、例えばVIP全体をオーブンで加熱することによって達成することができる。この工程は、VIPを非発泡ポリウレタンコーティングで被覆する前に実行される。
【0066】
本発明の真空断熱パネルにおいて、前記エンベロープは内層を備え、前記金属箔はそれにくっつけられた少なくとも1つの外層を有し、前記エンベロープの内層と前記金属箔の外層とは互いにくっつけられ、任意により互いに接着される。これに関連して、内側とは前記真空断熱パネルの構成、特に前記断熱コアに関するものである。従って、前記エンベロープの内層は、前記断熱コアに向けて内方を向いた側(例えば、前記エンベロープの側)にあり、外層は、前記断熱コアから離れる外方を向いた側(例えば、前記金属箔の側)にある。
【0067】
上記から分かるように、透過を最小にするためには、エンベロープ全体に亘って透過バリアを有することが望ましい。前記透過バリアが前記断熱コア全体を囲んでいることが望ましい。
【0068】
この点において、既に市場に出ているVIPは、耐透過性を有するように構成されている。例えば、VIPが、1つ又は複数のメタライズド層で被覆されたポリマーフィルムから形成されたメタライズドフィルムで構成されたエンベロープを有することは一般的である。例えば、メタライズドPET(メタライズド・ポリエチレンテレフタレート)を用いてエンベロープを構成することが行われている。メタライズドフィルムは、金属をポリマーフィルムに被着させることによって、例えば金属を金属デポジション技術により所望のフィルム上に被着させることによって形成され、前記メタライズドフィルムのメタライズド層は、一般に(厚さが)ナノメートルの単位である。例えば、このようなメタライズド層は、約10~30nm、例えば約18nm(厚さ)にすることができる。前記メタライズドフィルム(一般に1つ又は複数のメタライズド層で被覆したポリマーフィルムからなる)は、多くの場合、厚さが約5~20μm、例えば約12μmの厚さである。(これは、前記ポリマーフィルムとメタライズド層とを1つにした厚さである。)使用される金属は、多くの場合アルミニウムである。
【0069】
上述したように、メタライズドフィルム例えばメタライズドPETを用いて、VIPのエンベロープを形成することができる。メタライズドPETフィルムは、少なくとも1つの薄い金属層(即ち、メタライズド層)で被覆したポリエチレンテレフタレートのフィルムからなる。VIPを作成するために、各層が上述したタイプのPETメタライズドフィルムのようなメタライズドフィルムである複数の層を用いて、前記エンベロープを作成することができる。そのような場合、前記メタライズドフィルムは、積層体として形成される。前記メタライズド層は、例えばポリエチレン(PE)からなるエンベロープ内層にくっつけることができる。他の適当なエンベロープ内層には、例えば線形低密度ポリエチレン(LLDPE)である低密度ポリエチレン(LDPE)と、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE);ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC);熱可塑性ウレタン;それらの共重合体及び混合物を含むそれらの組合せが含まれる。
【0070】
いずれにしても、エンベロープを形成する材料は前記断熱コアの周りを包み、次に前記エンベロープがそれ自体にシールされる。これは、前記エンベロープのエッジの周りへの熱の印加によって、例えばエンベロープ材料の2つのエッジを加熱ジョーの間で掴み、次に圧力をかけて加熱して、前記エンベロープ材料をシールして1つのエンベロープにすることによって行うことができる。次に真空を印加し、エンベロープの前記真空が印加された位置を最終的にまたシールして、真空を保持するエンベロープを形成する。
【0071】
このようにエンベロープを構成したとき、材料をそれ自体に折り曲げてそれをエッジの周りに熱シールしてエンベロープを形成することにより、エンベロープの全体に亘って同じ材料が使用される。特に、1つ又は複数のメタライズド層から構成されるエンベロープの場合、メタライズドフィルムが前記エンベロープの内面全面に亘って延在する。特にこれは上面に亘って、下面に亘って、かつ側部に亘って延在し、従って前記上面と下面とを橋渡しする。
【0072】
本発明の真空断熱パネルに使用される金属箔層は、このようなエンベロープ構造と結合させて使用することができる。しかしながら、上述したように、本発明の金属箔層は、断熱コアの側部の周りに延長せず、前記断熱コアの上面と下面とを橋渡ししない。このような本発明による構造を実現することは、以下に説明する本発明の方法を用いて達成することができる。
【0073】
上述した構成において、前記エンベロープの内面と前記金属箔の外面とは、互いに近接させて配置される。前記エンベロープの内面と前記金属箔は、最初別個に提供し、後で1つにすることができる。一般に、前記金属箔の外層は、該金属箔の上面及び/又は下面の実質的に全面に亘って設けられる。前記金属箔は、表面積において実質的に断熱コアの上面及び/又は下面に対応しているので、これは、前記金属箔が、エンベロープの内側に、かつ断熱コアの上面及び/又は下面と実質的に整合する位置に保持されることを意味している。前記金属箔は、断熱コアの上面及び/又は下面から側部の周りには延在しない。
【0074】
前記少なくとも1つの金属箔は圧延金属であることが望ましい。前記金属箔は、単独で取扱い可能なものである。前記金属箔は自立しており、支持部上に設ける必要は無いが、それにも拘わらずいくつかの実施形態では、前記金属箔は上述したように、補強部材上のフェーサーとして設けることができる。便利良くするために、特にエンベロープに容易にくっつけられるように、前記金属箔上に層を設けることができ、例えば少なくともその外面に層を設けることができる。この層は前記エンベロープの層と、これら2つの層を後で例えば加熱によって結合できるようにするために、適合性を有するものである。任意であるが、前記金属箔の外面に設けられる前記層は、ポリマー層である。
【0075】
エンベロープを形成する材料は、エンベロープを形成するために、エッジでシールされるが、このエッジでのシール形成が、前記金属箔をエンベロープに結合しないことは、前記金属箔がエンベロープの側部の周りに延在しないので、理解されるであろう。その代わり、前記金属箔は、以下に詳細に説明するように、後の製造工程で前記エンベロープにくっつけられる。
【0076】
前記金属箔は、合金等の組合せを含む適当な金属で形成することができる。適当な金属には、アルミニウムとび例えばステンレス鋼である鋼鉄が含まれる。
【0077】
望ましくは、前記少なくとも1つの金属箔の厚さは、4μmから50μm、又は4μmから30μm、又は4μmから20μm、又は4μmから18μm、又は4μmから16μm、又は4μmから14μm、又は4μmから12μm、又は6μmから20μm、又は6μmから18μm、又は6μmから16μm、又は6μmから14μm、又は6μmから12μm、又は8μmから20μm、又は8μmから18μm、又は8μmから16μm、又は8μmから14μm、又は8μmから12μmである。
【0078】
本発明の範囲内において、前記少なくとも1つの金属箔は、圧延アルミニウム、例えば厚さ約12μmの圧延アルミニウムとすることができる。
【0079】
望ましくは、本発明の真空断熱パネルは2つの金属箔を有し、一方の前記金属箔が、前記断熱コアの上面の略全面に亘って延在し、他方の前記金属箔が、前記断熱コアの下面の略全面に亘って延在する。
【0080】
金属箔は、前記断熱コアの上面又は下面の、少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%のように、少なくとも80%に亘って延在することが望ましい。
【0081】
本発明の範囲内において、前記エンベロープの内層は、ヒートシールされるべく十分に軟化する熱可塑性材料からなる。この軟化は、前記エンベロープの一体性・完全な状態を危うくする温度より低い温度で発生する。
【0082】
前記熱可塑性材料は、例えば線形低密度ポリエチレン(LLDPE)である低密度ポリエチレン(LDPE)と、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含むポリエチレン;ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC);熱可塑性ウレタンからなり、それらの共重合体及び混合物を含むそれらの組合せを含む群から選択することができる。
【0083】
あらゆる適当なグレードの材料を用いることができる。これらには、可塑性化のグレード(plasticised grade)、難燃性のグレード(flame retardant grade)及びそれらの組合せが含まれる。
【0084】
前記金属箔上に外層が設けられる場合、前記外層は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール又はそれらの共重合体からなる群から選択される熱可塑性ポリマーからなる。
【0085】
前記金属箔上に外層が設けられ、前記エンベロープ上に内層が設けられ、前記金属箔の外層と前記エンベロープの内層とは、前記真空断熱パネルを加熱することによって接着される。
【0086】
前記金属箔は、実質的にその全表面域に亘って前記エンベロープの内側にくっつけられることが望ましい。例えば、前記エンベロープと前記金属箔とは、くっつけられたとき、実際上積層構造を形成することができる。前記金属箔が、前記積層構造の最内層を形成する。当業者であれば、前記金属箔が前記コアに近接していることは理解されるであろう。前記金属箔は、前記断熱コアの周りに熱橋を形成するプラスチック層の間に挟み込まれない。
【0087】
前記エンベロープの内層は、ポリエチレンフィルムのようなポリエチレン材料から構成し、前記金属箔の外層は、ポリエチレンコーティングのようなポリエチレン材料から構成することができる。
【0088】
前記金属箔にくっつけられる前記エンベロープの内層は、その厚さを約10μmから約50μmの範囲にすることができる。前記エンベロープにくっつけられる前記金属箔の外層は、その厚さを約10μmから約50μmの範囲にすることができる。
【0089】
上述したように、前記金属箔には層をくっつけることができ、前記層は、前記金属箔の外面にくっつけることができる。前記層は、一般にポリマー層であってよい。前記層は、接着剤の使用を含むあらゆる所望の方法によって、前記金属箔にくっつけられる。前記金属箔にくっつけられる前記層は、例えばポリエチレン(PE)とすることができる。そのような場合、前記金属箔は、積層構造の一部を形成することができる。積層構造であるか否かに拘わらず、前記金属箔は、真空が印加される後まで、前記エンベロープの内面に直接(又は間接に)くっつけられることはない。任意で、前記金属箔の内面に層をくっつけることができる。この層は、一般にポリマー層、任意で熱可塑性ポリマー層であり、前記層は、接着剤の使用を含むあらゆる所望の方法によって前記金属箔にくっつけることができる。この前記金属箔の内層は、前記コアの側部の周りに延在していない。例えば、前記金属箔の内層は、前記断熱コアの上面と該断熱コアの下面との間に熱橋を形成しない。前記内層は、前記金属箔と実質的に同じサイズにすることができ、好適には、前記金属箔の内層は該金属箔と同じサイズである。
【0090】
好適には、前記エンベロープはメタライズドフィルムを有し、例えば前記エンベロープは、例えば積層構造をなす複数のメタライズドフィルムを有することができる。任意により、3つのメタライズドフィルムを積層構造に設けることができる。このような構成では、前記メタライズドフィルムのメタライズされた側が、一般に外側(前記エンベロープの外面の方)を向くことになる。
【0091】
別の層を前記エンベロープの内層として設けることができる。このような層は、典型的には、非メタライズド層となる。上述したように、この別の層は、ポリエチレン層とすることができる。再び、前記エンベロープの全体構造を積層体として設けることができ、この場合、その積層体からエンベロープが作成される。前記エンベロープは、エッジのシール処理によってシールされる。しかしながら、前記金属箔、又は前記金属箔が組み込まれたあらゆる積層体は、前記エッジのシール処理によっては前記エンベロープにくっつけられない。
【0092】
前記メタライズドフィルム内で前記金属層を支持する材料は、一般にポリマー材料である。これは、前記エンベロープの内層より高い融点を有するように選択される。例えば、前記エンベロープは、複数のメタライズドPETの層で構成することができ、その場合、前記エンベロープの内層はPEから形成することができる。
【0093】
一般に、PETは、ポリエチレンより高い融点を有する。例えば、PETは、250℃より高い融点を持つことができる。ポリエチレンは、一般に融点が約105~180℃の範囲内である。例えば、低密度ポリエチレンは、融点を約105~115℃の範囲内にすることができる。例えば、中程度から高い密度のポリエチレンは、融点を115~180℃の範囲内にすることができる。
【0094】
一般的なメタライズドフィルムは、規格ASTM D3985に従って測定(23℃、相対湿度50%で測定)して、約2x10-3cc/m2.dayより低い酸素透過率(OTR)を有し、規格ASTM F1249-90に従って測定(38℃、相対湿度100%で測定)して、約0.02g/m2.dayの水蒸気透過率を有する。対照的に、一般的なアルミニウム箔は、規格ASTM D3985に従って測定(23℃、相対湿度50%で測定)して、約5x10-4cc/m2.dayより低い酸素透過率(OTR)を有し、規格ASTM F1249-90に従って測定(38℃、相対湿度100%で測定)して、約0.005g/m2.dayより低い水蒸気透過率を有する。前述の値は、平坦なフィルムサンプルについて測定したものであり、該平坦なフィルムサンプルは、VIPのエンベロープに見られるようなシールを備えていない。
【0095】
VIPのエンベロープにおいて、エンベロープのバリア材料内の欠陥とエンベロープのシールの存在は、エンベロープの透過値を、上述した標準的な試験方法に従って使用されるような平坦なフィルムサンプルについて測定した透過値よりも、高くする。従って、エンベロープを通過する透過は、メタライズされたバリアを有しないエンベロープのシールを通過する透過によって、一般に高い。従来のVIPのエンベロープにおける全体の酸素透過率は、メタライズされていないシールの存在によって、平坦なフィルムのそれよりも1桁以上高くなる。即ち、従来のメタライズドフィルムを有するVIPのエンベロープにおける酸素透過率は、約20x10-3cc/m2.dayである。
【0096】
メタライズドフィルム(例えば、メタライズドPET)で作られたVIPのエンベロープのOTRが約20x10-3cc/m2.dayであるのに対し、アルミニウム箔で作られたVIPのエンベロープのOTRは、約5x10-3cc/m2.dayである。
【0097】
上述したように、本発明のVIPは、OTR及びMVTRの減少のおかげで、寿命が長くなっている。更に、エンベロープの外面における非発泡ポリウレタンコーティングの存在によって、VIPの蒸気抵抗率が改善される。
【0098】
また、本発明によれば、真空断熱パネルを製造する方法であって、
(i)上面、下面及び側部を有する多孔性断熱コアを準備する過程と、
(ii)前記断熱コアの上面又は下面の実質的に全体に亘って延在する、少なくとも4μmの厚さを有する少なくとも1つの金属箔を、該金属箔が断熱コアの上面と下面との間に熱橋を形成しないように準備する過程と、
(iii)内面及び外面を有するエンベロープを準備し、該エンベロープが、(i)断熱コアと金属箔とを、前記金属箔をエンベロープと断熱コアとの間にして被包し、(ii)印加される真空を前記エンベロープ内に維持するように、配置される過程と、
(iv)前記エンベロープに真空を印加する過程と、
(v)真空が印加された後の前記エンベロープの内面に前記金属箔をくっつける過程と、
(vi)前記真空断熱パネルの外面全面を非発泡ポリウレタン層で被覆する過程とからなる方法が提供される。
【0099】
前記金属箔をくっつける工程が真空を印加した後に完了することによって、前記エンベロープを挟んだ圧力差(真空の印加によってエンベロープ内が減圧されたことにより起こる)が、金属箔をエンベロープの内部に接合させる非常に強い付勢力を発生させる。この場合、本質的に、大気圧は、前記エンベロープを金属箔に対して押し付け、次に前記金属箔を断熱コアに対して押し付けるのに十分強力である。この圧力は、2つの別々な部分(前記金属箔とエンベロープ)を、それらが接する全領域で結合させ得るのに十分な大きさを有する。
【0100】
前記くっつける工程は、真空を印加するための全設備を取り外した後に実行し得ることが分かる。即ち、前記くっつける工程は、前記エンベロープ内に保持される真空が唯一存在する真空であるとき、実行することができる。従って、前記くっつける工程は、VIPが排気されかつ次に、真空を維持するようにシールされた後に、行うことができる。真空が存在するのは、減圧されかつシールされた前記エンベロープ内である。
【0101】
前記金属箔は、前記断熱コアの上面又は下面の実質的に全表面域に亘って、前記エンベロープの透過率を減少させるように配置される。
【0102】
前記エンベロープがエンベロープ内層を有し、かつ前記金属箔がそれにくっつけられた少なくとも1つの外層を有する場合、前記エンベロープ内層と前記金属箔の外層とが互いにくっつけられ、任意により互いに接着される。
【0103】
本明細書中に記載される本発明の真空断熱パネルのいずれの構造も、本発明の方法によって作ることができる。
【0104】
前記エンベロープの内層は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール又はそれらの共重合体からなる群から選択される重合体から構成することができる。
【0105】
前記金属箔の外層は、ポリエチレン、ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール又はそれらの共重合体からなる群から選択される重合体から構成することができる。
【0106】
前記金属箔と前記エンベロープの内面とは、前記真空断熱パネルを加熱する(前記真空が印加された後)ことによって、互いにくっつけることができる。好適には、前記真空断熱パネル全体がオーブン内で加熱される。単に真空断熱パネルの上面又は下面を加熱するのに対して、真空断熱パネル全体を加熱することによって、エッジのシールが著しく強化される。
【0107】
前記金属箔と前記エンベロープの内面とは、前記真空断熱パネルを約100~180℃の範囲の温度に、任意で約0.5~10分間加熱することによって、互いにくっつけることができる。
【0108】
前記真空断熱パネルは、約100~180℃の範囲の温度に約0.5~10分間加熱した後、約1~15分間で環境温度に冷却する。
【0109】
微孔質材料から作られる断熱コアからなる従来のVIPは、おおよそ5.0mW/(m・K)の熱伝導率(ラムダ値)を有する。対照的に、本発明のVIPは、約3.0mW/(m・K)から約4.0mW/(m・K)の熱伝導率を有し、望ましくは、本発明のVIPは、約3.2mW/(m・K)以下のように、約3.5mW/(m・K)以下の熱伝導率値を有する。
【0110】
本発明のVIPは、熱伝導率が改善され、VIP内に前記少なくとも1つの金属箔が存在することによって、前記バリアエンベロープにおける透過が減少し、水分への暴露の結果としての損傷が、エンベロープに被着させた非発泡ポリウレタンコーティング層の存在によって減少するので、従来のVIPより長い寿命を有する。本発明のVIPは、従来のVIPよりも頑丈・堅牢であり、追加の非発泡ポリウレタンコーティング層の結果として、穴開きが起こり難い。
【0111】
更に、本発明のVIPのエンベロープのエッジ付近のシールは、以下に詳細に説明する本発明のVIPの製造方法によって、従来のVIPのエッジ付近のシールよりも実質的に強くかつ大きい。
【0112】
好適には、前記断熱コアは、粒状の形態をなす断熱材料から構成することができる。特に、前記断熱コアは、シリカ、パーライト、珪藻土(diatomaceous earth)、並びにヒュームドシリカ及びそれらの組合せ等の微孔質材料から構成することができる。
【0113】
任意で、前記断熱材料は、直径が約1μmより小さい平均粒径の微孔質断熱材料とすることができる。一般に、微孔質断熱材料は、約20nmから約500nmの平均粒径を有し、例えば約50nmから約500nm、又は約50nmから約400nm、又は約50nmから約350nm、又は約50nmから約300nm、又は約100nmから約300nm、又は約100nmから約400nmである。微孔質断熱材料の平均粒径は、約200nmよりも小さいことが好ましい。
【0114】
これらの材料は、カーボンブラック、二酸化チタン、鉄酸化物、マグネタイト若しくは炭化ケイ素、又はそれらの組合せ等の赤外線吸収材料(IR乳白剤)を混合することができる。
【0115】
従って、前記断熱コアの断熱材料が主として微孔質材料から構成される一方、更に繊維バインダー(高分子又は無機材であり得る)及び赤外線乳白剤(例えば、炭化ケイ素、カーボンクラック又は鉄酸化物)の割合は、少なくてもよい(典型的には、それぞれ5~20%)。前記繊維及び乳白剤は、いずれも微孔質である必要は無く、一般に微孔質ではない。
【0116】
前記断熱材料は混合物であってもよく、例えば、(一度加圧すると)前記粒状材料を一体に結合させるように働く繊維を含むことができる。前記繊維は、有機又は無機材料であってよい。或る場合に、前記繊維はポリエステル繊維又はポリプロピレン繊維である。
【0117】
好適には、前記断熱コアは、例えばフュームドシリカ、沈降シリカ、パーライト、珪藻土(diatomaceous earth)、又はそれらの組合せである粉末断熱材料からなる。前記多孔性断熱コアは、断熱(微孔質)コアに形成される粉末材料、例えば、フュームドシリカ、沈降シリカ及びパーライト、又はそれらの組合せからなる群から選択される粉状微孔質断熱材料から構成される。望ましくは、前記断熱コアはフュームドシリカからなる。
【0118】
前記断熱コアは、該断熱コア及び前記少なくとも1つの金属箔の層を柔軟なエンベロープに入れる前に、通気性カバー又はフリース内に入れることができる。
【0119】
例えば、前記通気性カバーは、不織PETフリース又は有孔収縮包装物から選択することができる。
【0120】
前記エンベロープは、メタライズド・ポリエチレンテレフタレート(PET)積層体から構成することができる。好ましくは、前記エンベロープは、例えば積層体として、アルミニウム上のポリエチレンの層からなるアルミニウムメタライズドポリエステルである。VIPを形成するとき、前記ポリエチレンの層は前記エンベロープ内にある。前記断熱コアと前記少なくとも1つの金属箔の層とからなるエンベロープが一旦減圧されると、前記ポリエチレンの層を用いてVIPをシールする。前記エンベロープはまた、メタライズド・エチレンビニルアルコール(EVOH)、又はメタライズド・ポリプロピレン(PP)とすることができる。
【0121】
或る実施形態において、本発明によれば、
(a)上面、下面及び側部を有し、フュームドシリカ、沈降シリカ、パーライト、珪藻土(diatomaceous earth)、及びそれらの組合せから選択される粉状微孔質材料から形成された多孔性断熱コアと、
(b)前記断熱コアを被包し、印加された真空を内部に維持するように、前記断熱コアの周りに配置され、メタライズド・ポリエチレンテレフタレートフィルムから構成されたエンベロープであって、エンベロープ内層を備え、前記エンベロープ内層がポリエチレン、エチレンビニルアルコール、又はポリ塩化ビニリデンの1種から構成されるエンベロープと、
(c)4μmから50μmの厚さを有し、前記エンベロープと断熱コアとの間に設けられて、前記断熱コアの上面又は下面に実質的に全面に亘って延在し、前記断熱コアの上面と下面との間に熱橋を形成しない少なくとも1つの金属箔であって、該金属箔にくっつけられた少なくとも1つの外層を有し、前記エンベロープ内層と前記金属箔の外層とが互いにくっつけられ、任意により互いに接着される金属箔と、
(d)前記エンベロープに被着され、前記エンベロープの全表面域に亘って形成された非発泡ポリウレタンコーティング層とからなり、
3.0mW/(m・K)から4.0mW/(m・K)の熱伝導率を有する真空断熱パネルが提供される。
【0122】
別の実施形態において、本発明によれば、
(a)上面、下面及び側部を有し、フュームドシリカ、沈降シリカ、パーライト、珪藻土(diatomaceous earth)、及びそれらの組合せから選択される粉状微孔質材料から形成された多孔性断熱コアであって、前記断熱コアの上面又は下面には、多孔質材料で形成されて実質的に硬質である少なくとも1つの補強部材が配設されて、該断熱コアを補強し、前記少なくとも1つの補強部材と断熱コアとが合体してハイブリッドコアを形成するが、前記少なくとも1つの補強部材は断熱コアを横断する熱橋を形成せず、前記ハイブリッドコアを被包するようにエンベロープが設けられた断熱コアと、
(b)前記断熱コアを被包し、印加された真空を内部に維持するように、前記断熱コアの周りに配置され、メタライズド・ポリエチレンテレフタレートフィルムから構成されたエンベロープであって、エンベロープ内層を備え、前記エンベロープ内層がポリエチレン、エチレンビニルアルコール、又はポリ塩化ビニリデンの1種から構成されるエンベロープと、
(c)4μmから50μmの厚さを有し、前記エンベロープと前記ハイブリッドコアとの間に設けられて、該ハイブリッドコアの上面又は下面に実質的に全面に亘って延在し、前記ハイブリッドコアの上面と下面との間に熱橋を形成しない少なくとも1つの金属箔であって、該金属箔にくっつけられた少なくとも1つの外層を有し、前記エンベロープ内層と前記金属箔の外層とが互いにくっつけられ、任意により互いに接着される金属箔と、
(d)前記エンベロープに被着され、前記エンベロープの全表面域に亘って形成された非発泡ポリウレタンコーティング層とからなる真空断熱パネルであって、
前記断熱コアの真空断熱パネル内における密度が100kg/m3から150kg/m3であり、3.0mW/(m・K)から4.0mW/(m・K)の熱伝導率を有する真空断熱パネルが提供される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の真空断熱パネルは、該真空断熱パネルの外面に、例えば前記非発泡ポリウレタンコーティングの外面に、接着剤の層を更に備えることができる。好適には、前記接着剤は感圧接着剤層である。前記接着剤の層には、剥離基材をくっつけることができ、該剥離基材は真空断熱パネルの設置前に除去される。前記接着剤の層の存在は、真空断熱パネルの設置を容易にし、ユーザーが壁、クラッディング(外装材)又は屋根等の基材に真空断熱パネルを接着できるようにするので、有利である。好適には、前記感圧接着剤はホットメルト接着剤ではない。
【0124】
本発明のVIPは、輸送用コンテナー、パイプ断熱材、冷蔵庫、冷却器、及び様々な産業用機器に組み込むことができるので、有利である。更に、本発明のVIPは軽量で、従来のVIPよりも頑丈・堅牢であり、様々な環境で使用することができる。例えば、本発明のVIPは、極低温装置に、又は高温(80℃まで)で、その断熱性能を危うくすることなく使用することができる。
【0125】
以下に、本発明の実施形態を、添付図面を参照しつつ、単なる実施例として詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】本発明の或る側面における真空断熱パネルの破断斜視図である。
【
図2】ハイブリッドコアを有する真空断熱パネルの断面図である。
【
図3】
図2の真空断熱パネルに対して代替のハイブリッド構造を有する真空断熱パネルの断面図である。
【
図5】補強部材に金属箔フェーサーを有するハイブリッドコアからなる真空断熱パネルの破断斜視図である。
【
図6】断熱コアとエンベロープとの間に配置された金属箔層を有する真空断熱パネルの破断斜視図である。
【
図7】断熱コアを入れるフリースを更に有する
図6の真空断熱パネルを示す図である。
【
図9】金属箔及びエンベロープの拡大図を含む、
図6に類似の破断斜視図である。
【
図10】エンベロープ構造の構成を示す断面図である。
【
図12A】真空断熱パネルのエンベロープをシールする方法を示す断面図である。
【
図12B】真空断熱パネルのエンベロープをシールする方法を示す断面図である。
【
図13】真空断熱パネルのエンベロープのシールされたエッジを示す断面図である。
【
図14】真空断熱パネルの断面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0127】
本明細書中に言及する全ての熱伝導率値は、そうでないことが明確に示されていない限り、欧州規格BS EN:12667:2001に基づいて測定されたものである。本明細書に記載される全ての熱伝導率値は、ワット毎メートル・ケルビン又はミリワット毎メートル・ケルビンで測定されたものである。
【0128】
本明細書中に言及する全ての酸素透過率(OTR)値は、規格ASTM D3985に従って測定(23℃、相対湿度50%で測定)され、全ての水蒸気透過率(MVTR)値は、規格ASTM F1249-90に従って測定(38℃、相対湿度100%で測定)されている。
【0129】
本明細書中に言及する全ての蒸気透過抵抗値及び蒸気抵抗率値は、欧州規格EN 12086に従って測定されたものである。蒸気抵抗率の単位は、メガニュートン秒毎グラム・メートル、MN・s/gmである。蒸気透過抵抗の単位は、メガニュートン秒毎グラムである。
【0130】
本明細書中に言及する全ての粘度値は、英国規格BS188に従って測定されたものである。粘度値の単位は、ミリパスカル秒、mPa・sである。
【0131】
圧縮強度は、そうでないことが明確に示されていない限り、欧州規格BS EN 826:2013に従って測定されたものである。圧縮強度の単位は、キロパスカル、kPaである。
【0132】
図1は、本発明によるVIP1の破断斜視図である。
図1は、上面301と下面302と側部303a~303dとを有する多孔性断熱コア3を示している。断熱コア3の周りのエンベロープ2は、前記断熱コアを被包し、かつ印加された真空をエンベロープ2内に維持するように配設される。フリース5が断熱コア3を包むように示されている。非発泡ポリウレタンコーティング層4が、エンベロープ2の外側に被着している。前記非発泡ポリウレタンコーティング層は、エンベロープ2の外面域全体に亘って形成されている。
【0133】
図2は、本発明のVIP1の断面図である。VIP1は、上面301及び下面302を有する断熱コア3を備える。前記VIPは、断熱コア3の上面301に配設された硬質ポリウレタンの補強部材6aをも備える。硬質ポリウレタンで形成された別の補強部材6bが、断熱コア3の下面302に配設されている。補強部材6a、6bは、好適には、発泡体等の気泡材料から構成される。前記補強部材は多孔質で、実質的に滑らかな外面601a,601bを有する。補強部材6a、6bと断熱コア3とが合体して、ハイブリッドコア7を形成する。補強部材6a、6bは、断熱コア3を横切る熱橋が形成されないように、即ち、前記補強部材が、前記断熱コアの上面301と該断熱コアの下面302との間に熱橋を形成しないように配設される。上側の補強部材6aの上面601aは、下側の補強部材6bの下面601bと同じく、実質的に滑らかである。任意によりバリアフィルムから構成され、ハイブリッドコア7の断熱コア3と補強部材6a、6bとを被包するように配設されたバリアエンベロープ2を、前記VIPは更に備える。バリアエンベロープ2は、非発泡ポリウレタンコーティング層で被覆され、該コーティング層は、前記エンベロープの外面全体を被覆する。前記断熱コアは微孔質フュームドシリカからなる。本実施形態における前記断熱コアの密度は130kg/m
3である。
【0134】
図3は、補強部材6bが1つ存在し、断熱コア3の実質的に下面302全体に亘って延在する別の構成を示している。この実施形態では、補強部材6bと断熱コア3とが合体して、ハイブリッドコア7を形成する。前記断熱コアは微孔質フュームドシリカからなる。本実施形態における前記断熱コアの密度は140kg/m
3である。
【0135】
図4は、本発明によるVIP1の破断斜視図を示している。図示した実施形態では、前記VIPが2つの補強部材6a、6bを有する。断熱コア3は、フリース5に入れた状態で図示されている。フリース5は、任意の構成要素であり、VIPの製造方法によって有用性が大きくなったり小さくなったりすることがある。
【0136】
図5は、上側の補強部材6aが金属箔フェーサー8を更に有する、
図4の実施形態を示している。前記金属箔フェーサーの厚さは、4μmから50μmとすることができる。
図5に示す実施形態では、前記金属箔フェーサーは12μmの厚さを有する。
図5に明確に示すように、前記金属箔は、補強部材6aの上面602aと下面602bとの間に熱橋を形成しない。
【0137】
有利なことに、前記上側及び下側補強部材の一方又は両方が、金属箔フェーサーを備えることができる。前記補強部材は、例えば、金属箔フェーサー上に吹き付けられるポリウレタン発泡体とすることができる。これに追加して又は別の実施形態として、前記金属箔フェーサーは、ポリウレタン発泡体のシートから形成される補強部材に接着し又は添着することができる。
【0138】
図6は、本発明の別の実施形態を示している。対応する特徴部分には、上述した説明と同じ符号が付されている。上面301と下面302と側部303a~303dとを有する多孔性断熱コア3からなるVIP1が示されている。断熱コア3の周りのエンベロープ2は、前記断熱コアを被包し、かつ印加された真空をエンベロープ2内に維持するように配設される。フリース5が断熱コア3を包むように示されている。非発泡ポリウレタンコーティング層4が、エンベロープ2の外側に被着している。前記非発泡ポリウレタンコーティング層は、エンベロープ2の外面域全体に亘って形成されている。4μmから50μmの厚さを有する金属箔9が、エンベロープ2と断熱コア3との間に配置されている。金属箔9aは、前記断熱コアの上面301と下面302との間に熱橋を形成することなく、前記断熱コアの上面301の実質的に全面に亘って延在する。第2の即ちもう1つの金属箔9bは、前記断熱コアの下面302と上面301との間に熱橋を形成することなく、前記断熱コアの下面302の実質的に全面に亘って延在する。金属箔9a及び金属箔9bのいずれも、断熱コア3にはくっついていない。
【0139】
図7は、
図6に示したものに類似するVIPの破断斜視図であり、フリース5が断熱コア3を包むように示されている。1つの金属箔9aが、断熱コア3の上面301上のフリース5の上に示されている。もう1つの金属箔9bが、断熱コア3の下面302上のフリース5の下側に示されている。いずれの金属箔9a,9bも、前記断熱コア及びフリース5にくっついていない。
【0140】
図8は、本発明によるVIPの断面図である。
図8には、断熱コア3とエンベロープ2との間に配置された金属箔9が明確に示されている。非発泡ポリウレタンコーティング層4が、エンベロープ2全体を被包するように示されている。
図8は、金属箔9aが、前記断熱コアの上面301と下面302との間に熱橋を形成することなく、前記断熱コアの上面301の実質的に全面に亘って延在することを示している。
図8はまた、前記断熱コアの下面302と上面301との間に熱橋を形成することなく、前記断熱コアの下面302の実質的に全面に亘って延在する別の金属箔9bを示している。いくつかの実施形態では、1つの金属箔のみが存在する場合がある。
【0141】
金属箔9a,9bが断熱コア3にくっついていないことに注意する。その代わり、前記金属箔は、最初はエンベロープ2及び断熱コア3から分離しているが、後述するように、後でエンベロープ2にくっつけられる。
【0142】
図9は、
図6乃至
図8のそれらに類似する、本発明によるVIPの斜視図であり、エンベロープ2の拡大図がエンベロープ構造201として、金属箔9aの拡大図が金属箔構造901として示されている。(2つの金属箔9a,9bは別個のものであるが、互いに同じ構造を有する場合があることが分かる。)エンベロープ構造201の拡大図は、3つのメタライズドフィルム10を示している。各メタライズドフィルム10は、例えばメタライズドPETのメタライズドプラスチック層である。好適には、メタライズドポリプロピレン(PP)又はメタライズドEVOH(エチルビニルアルコール)を用いることもできる。メタライズドフィルム10は、エンベロープ内層11にくっついている。エンベロープ内層11は、一般には、ポリエチレンのような熱可塑性ポリマーである。好ましい代替物には、例えば線形低密度ポリエチレン(LLDPE)である低密度ポリエチレン(LDPE)と、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE);ポリプロピレン及びエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC);熱可塑性ウレタン;それらの共重合体及び混合物を含むそれらの組合せが含まれる。
【0143】
金属箔構造901の拡大図は、外層12がくっつけられた金属箔9aを示している。外層12は、一般に熱可塑性ポリマー材料、例えばポリエチレンである。
【0144】
図10は、エンベロープ構造201の構造を示す断面図である。メタライズドフィルム6の前記層は、一体に接着されて、例えばラミネート即ち積層体61を形成する。各層(即ち、ポリマーフィルムとそれに付けた金属を一体にしたもの)は、一般に約12μmの厚さを有する。前記積層体構造は、例えばポリエチレンの層である、熱可塑性材料のエンベロープ内層7に接着される。
【0145】
図11は、前記金属箔構造の構造を示す断面図である。金属箔9は、一般にアルミニウム箔である。金属箔9は、例えばポリエチレンの層である、熱可塑性材料の外層12にくっつけられる。任意により、金属箔9は、例えばPETである適当なポリマーの内層13にくっつけられる。
【0146】
図12A及び
図12Bは、シール方法、及びVIPエンベロープがシールされたときに得られるシールを示す断面図である。当業者であれば、前記非発泡ポリウレタンコーティング層が、エンベロープの表面(外面)域全体を被覆するように、エンベロープに付着される前に、VIPはシールされることが分かる。
【0147】
図12Aに示すように、加熱アイロン又は加熱ジョー501a,501bを用いて、エンベロープ2の両側(上側グリップ502a及び下側グリップ502b)を掴んで一体にして、前記加熱ジョーによって熱をエンベロープ2の両側504a(上側)及び504b(下側)のエッジ503a(上側)及び503b(下側)に印加する。加熱ジョー501a、501bに掴まれたエッジ503a、503b間で、エンベロープ2の内面505上のポリマー11の内層が十分に軟化し、加熱ジョー501a、501b間で互いに接するエンベロープ2のエッジ503aと503bの間に接着部601を形成する(
図12Bを参照)。熱の印加に曝されたポリマー11の前記内層のみが軟化し、エッジ503aと503bの間に接着部即ちシール部601を形成する。加熱アイロン又は加熱ジョー501a、501bから前記エンベロープのエッジ503a、503bへの前記熱の印加が、掴まれたエンベロープ2のエッジ503a、503bを実質的に越えて、ポリマー11の前記内層を軟化させることはない。従って、加熱ジョー501a,501bからの前記熱の印加によって、エッジ直近部分603aと603bが互いに接着されることはない。更に、減圧したVIP1内の金属箔9が、この製造段階で前記エンベロープの前記内層にくっつくことはない。
【0148】
図13は、本発明によるVIPのエンベロープ2がシールされたときに得られるシール部602を示す断面図である。
図12A及び
図12Bに関連して上述した方法のように、加熱ジョー501a,501bにより熱を印加して、VIP1のエンベロープ2のエッジ503aと503bを接着する。上述したように、シ-ル部601は、加熱ジョー501a,501bから前記エッジへの熱の印加によって形成される。その後に、前記VIP全体を加熱して、各金属箔9をエンベロープ2の内層11にくっつける。
図14の拡大表示した部分801に示すように、VIP1全体を一旦加熱すると、エンベロープ2の内層11が金属箔9上の外層12と同じく軟化し、それにより金属箔9とエンベロープ2との間に接着部701を形成する。
図13には、金属箔9a全体及び金属箔9b全体は示されていないが、その少なくとも一方又は両方が存在し得ることは、当業者であれば分かる。更に、前記VIP全体を加熱することによって、エンベロープ2の内層11を金属箔9にくっつけ、エンベロープ2のエッジ直近部分603aと603bに位置して、加熱ジョー501a,501bの熱に直接曝されなかった内層11が十分に軟化して、エンベロープ2の周りに強化されたエッジシール部602が設けられる。真空が、金属箔9の前記エンベロープへの接着だけでなく、最初のシール部の周りの前記エンベロープの部分、特に前記最初のシール部の内側、即ち真空側にある部分を引き寄せ合わせる際に、それを助けていることが分かる。従って、本発明のVIPは、エンベロープのシールが、従来のVIPのそれと比較して、改善されている。シールの強化は、VIPの寿命を長くし、VIPの経年熱性能の改善に寄与する。
【0149】
図14は、非発泡ポリウレタンコーティング層を被着させる前の本発明によるVIPの断面斜視図であり、前記VIPの両側部(断熱コア3のエンベロープシール部直近の側部303bと303dのみを図示)に位置するエンベロープシール部901を示している。
図15は、断熱コア3とエンベロープ2との間に配置された金属箔9a,9bを明確に示している。符号902は、金属箔9aが前記断熱コアの側部303a~303dの周りを包まないことで、前記断熱コアを横切る熱橋を形成しないように、金属箔9aを配置した状態を示している。
図15は、前記エッジを折り曲げかつテーピングする前、及び前記非発泡ポリウレタンコーティング層を被着させる前の本発明によるVIPを示している。
【0150】
図15は、実質的に直方体形状の最終製品のVIPが提供されるように、前記エッジのシール部が折り曲げられかつテーピングされた、本発明によるVIP1の斜視図であり、非発泡ポリウレタンコーティング層が前記エンベロープに被着されて、該エンベロープの表面(外面)域全体を被覆している。
【0151】
VIPの寿命期間中、VIPのエンベロープの、定められた真空を維持する能力は、長期間の熱性能を達成しかつ維持するのに、非常に重要である。熱エッジ効果は、前記断熱コアを被包するエンベロープ材料の熱伝導率が比較的高いことによって発生する。VIP内では、真空が一旦維持されると、非常に熱伝導率が低い前記断熱コアの周りで、前記エンベロープが熱橋として作用するので、熱エッジ効果が観察される。
【0152】
従って、VIPのエンベロープに適した材料を選択することは、望ましくは低熱伝導率と低透過性を有する材料を選択することのバランスである。従来のVIPにエンベロープとして使用されている、上述したメタライズドフィルムは、適度に低い熱伝導率を有する。しかしながら、その透過性は、従来のVIPの寿命、及び従って総合的な有用性を実質的に低下させる。
【0153】
アルミニウムの熱伝導率は167W/(m・K)である。従って、アルミニウムの高い熱伝導率値の結果として観察されるであろう高いエッジ効果のせいで、アルミニウムはVIPのエンベロープに適した材料ではない。しかしながら、アルミニウム箔は、優れたバリア特性を有する。
【0154】
4μmから50μmの金属箔層を有する本発明のVIPによれば、従来技術のVIPに対する大きな進歩が得られる。このようなVIPによって、従来のVIPのエンベロープの望ましい低熱伝導特性が、金属箔の望ましい低透過特性と結合される。
【0155】
図5乃至
図15に示す実施形態の場合、真空を印加してVIPのエッジをシールした後に、エンベロープの内面と断熱コアの少なくとも上面との間に配置された金属箔を、
図5に示す構成であっても、
図6及び
図7に示すようなものであっても、前記エンベロープの内面にくっつける。例えば、前記金属箔をポリエチレンのような熱可塑性材料の外層にくっつけることができ、前記エンベロープは、ポリエチレンのような熱可塑性材料で作られたエンベロープ内層を有することができる。前記VIPが減圧されると、前記金属箔の外面は、前記エンベロープ内層の内面に非常に近接する。前記VIPを、例えばオーブン内で、前記熱可塑性材料を軟化させるのに十分な高い温度に加熱したとき、前記金属箔は、前記エンベロープの内面にくっついた状態になる。前記金属箔は、前記断熱コアを横切る熱橋を形成しないように配置される。しかしながら、前記金属箔の優れた低透過特性によって、VIPの透過特性が大きく改善される。従って、VIPの寿命は、大きく増加する。前記金属箔を前記エンベロープにくっつけることは、VIPが形成された後で、特に真空源を取り外した後に、行い得ることが分かる。前記エンベロープ内に保持される真空が、前記金属箔を前記エンベロープに結合させるのを促進することになる。前記VIPの外面への大気圧と該VIP内に保持される(減圧された)圧力との圧力差によって、前記エンベロープを前記金属箔(及び前記断熱コア)に向けて押し付ける力が加わると、効果的である。そして、当然ながら、この力は、前記エンベロープ全体に一様に加わる。これは、前記エンベロープを前記金属箔に均一に結合させるために理想的である。
【0156】
減圧したVIPをオーブン内で加熱するという手順は、前記エンベロープのエッジにおける最初の熱シールをも改善する。
【0157】
VIPのエンベロープは従来、上述したように、加熱ジョーの間でシールされているので、加熱ジョーの熱に直接曝されるエンベロープの領域のみが、熱可塑性のエンベロープ内層を溶融させて、2つの近接するエッジを結合させるために、十分に加熱されている。直近している前記エンベロープのエッジで高温に曝されていないところは、結合又は接着されない。
【0158】
対照的に、本発明によるVIPの全体(減圧後)を加熱することによって、該VIPの金属箔がVIPのエンベロープの内面にくっつけられる、上述した実施形態では、最初は前記加熱ジョーによって接着されなかった前記エンベロープの近接するエッジが、減圧したVIPに作用する外部圧力によって、近接した状態を保持し、加熱されると、前記エッジの熱可塑性層が軟化して、それらの間に接着部が形成される。
【0159】
このように、エンベロープにくっつけられた金属箔の存在によって超低透過性のエンベロープを提供しつつ、本発明のVIPのシール部が、従来のVIPのそれと比較して相当強化され、従って、本発明のVIPの寿命が、熱性能を低下させることなく、従来のVIPよりも大幅に長くなる。
【0160】
図5乃至
図15に示すVIPのエンベロープは、酸素透過率が約4x10
-3cc/m
2.dayであり、水蒸気透過率が約2.5x10
-3g/m
2.dayである。
【0161】
前記非発泡ポリウレタンコーティングの存在が、VIPの頑丈さ・堅牢さを実質的に増加させている。このポリウレタンコーティングによって、VIPの外面に保護コーティングが与えられ、それがVIPに防水コーティングを提供し、またバリア保護を強くして、VIPに偶発的な穴開きを起こり難くしている。
【0162】
好適には、前記非発泡ポリウレタンコーティングによって、VIPに優れた耐摩耗性と長期耐久性が付与される。例えば、前記非発泡ポリウレタンコーティングは、防水性を提供することに加えて、紫外線に対する耐損傷性、又は酸性物質等の腐食性物質に対する耐食性をも与えることができる。好適には、前記非発泡ポリウレタンコーティングは、柔軟で耐亀裂性を有する。
【0163】
本明細書中、用語「からなる/備える」(comprises/comprising)及び用語「有する/含む」(having/including)は、本願発明に関連して使用したとき、明記した特徴、整数(integers)、ステップ(過程)又は構成要素の存在を特定するのに使用されるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はその組の存在又は追加を排除するものではない。
【0164】
本発明の所定の特徴で、明確にするために、別々の実施形態の文脈で記載されているものでも、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが分かる。逆に言えば、本発明の様々な特徴で、簡単のために、1つの実施形態の文脈で記載されているものでも、別々に又は任意で適当に部分的に組み合せて提供することができる。