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特許7109444鋳型材料及びその製造方法、鋳型の製造方法、並びに回収耐火性骨材の再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】鋳型材料及びその製造方法、鋳型の製造方法、並びに回収耐火性骨材の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/18 20060101AFI20220722BHJP
   B22C 9/12 20060101ALI20220722BHJP
   B22C 5/06 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B22C1/18 B
B22C9/12 A
B22C5/06
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019534600
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2018029203
(87)【国際公開番号】W WO2019027038
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2017150411
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】高間 智宏
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500338(JP,A)
【文献】特表2016-500337(JP,A)
【文献】特開昭56-086643(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194550(WO,A1)
【文献】特表2013-514189(JP,A)
【文献】特表平10-500067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/18
B22C 9/12
B22C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)耐火性骨材と、
(b)水溶性無機粘結剤と、
(c)鉄含有化合物の粉状物であって、平均粒子径が、0.01μm以上50μm未満 であるもの
を少なくとも含ことを特徴とする、前記水溶性無機粘結剤と前記鉄含有化合物の粉状物とを含む被覆層が前記耐火性骨材の表面に形成されてなる、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドからなる鋳型材料。
【請求項2】
前記鉄含有化合物が酸化鉄である請求項1に記載の鋳型材料。
【請求項3】
前記酸化鉄が、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、フェライト、及びそれらのうちの2種以上の混合物からなる群より選ばれてなる請求項2に記載の鋳型材料。
【請求項4】
前記鉄含有化合物の粉状物が、前記水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、1~500質量部の割合で含有せしめられている請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項5】
前記水溶性無機粘結剤を固形分で30質量%含む水溶液をブランク液とし、かかるブランク液の波長660nmにおける光の透過率を100%としたとき、該ブランク液の100質量部に対して前記鉄含有化合物の粉状物の5質量部を混合してなる分散液の波長660nmにおける光の透過率の平均値が、20%以下である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項6】
前記鉄含有化合物の粉状物が球状である請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含有してなる請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項8】
前記水溶性無機粘結剤が水ガラスである請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の鋳型材料。
【請求項9】
加熱した耐火性骨材に対して、水溶性無機粘結剤と、平均粒子径が0.01μm以上50μm未満である鉄含有化合物の粉状物とを添加し、混練乃至は混合せしめて混和物を調製し、かかる混和物中の水分を蒸発させることにより、前記水溶性無機粘結剤と前記鉄含有化合物の粉状物とを含む被覆層が前記耐火性骨材の表面に形成されてなる、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドを製造することを特徴とする鋳型材料の製造方法。
【請求項10】
さらに水が添加されて前記混和物が調製される請求項9に記載の鋳型材料の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型材料を、加熱された成形型内に充填した後、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
【請求項12】
前記成形型が、80℃~200℃の温度に加熱される請求項11に記載の鋳型の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型材料に水を添加して湿態化させ、その湿態状の鋳型材料を加熱された成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
【請求項14】
前記成形型が、80℃~300℃の温度に加熱される請求項13に記載の鋳型の製造方法。
【請求項15】
前記成形型の保持中に、該成形型内に熱風又は過熱水蒸気が通気せしめられる請求項11乃至請求項14の何れか1項に記載の鋳型の製造方法。
【請求項16】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の鋳型材料からなる鋳型を用いた鋳造の後に得られる、前記鉄含有化合物の粉状物を含有する前記水溶性無機粘結剤が固着した耐火性骨材を含む回収耐火性骨材の再生方法であって、
前記耐火性骨材を回収した後、かかる回収された耐火性骨材を研磨して、その表面に固着している前記水溶性無機粘結剤を削り取る研磨処理を実施し、次いで該耐火性骨材から削り取られた該水溶性無機粘結剤の固形物を、該固形物中に含まれる前記鉄含有化合物の粉状物が磁石に引き寄せられる作用を利用して、かかる耐火性骨材から分離する磁選処理を実施することを特徴とする回収耐火性骨材の再生方法。
【請求項17】
前記磁選処理が、500~10000ガウスの範囲内の磁束密度を有する磁選機にて実施されることを特徴とする請求項16に記載の回収耐火性骨材の再生方法。
【請求項18】
前記耐火性骨材に対する焼成処理が、前記研磨処理に先立って、前記研磨処理と前記磁選処理との間において、及び/又は前記磁選処理の後に、実施されることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の回収耐火性骨材の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型材料及びその製造方法、鋳型の製造方法、並びに回収耐火性骨材の再生方法に係り、特に、最終的に得られる鋳型において、鋳造製品に対する鋳型材料及び/又はその固化物の付着が抑止され、また、優れた鋳型強度及び鋳型充填性を発揮する、鋳型材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火性骨材からなる鋳型砂を所定の粘結剤にて被覆してなるコーテッドサンドを鋳型材料として用いて、目的とする形状に造型して得られたものが、用いられている。具体的には、日本鋳造工学会編の「鋳造工学便覧」第78~90頁には、そのようなコーテッドサンドにおける粘結剤として、水ガラスの如き無機系粘結剤の他、フェノール樹脂やフラン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を用いた有機系粘結剤が明らかにされており、また、それら粘結剤を用いて自硬性鋳型を造型する手法も、明らかにされている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2012-76115号公報)においては、耐火骨材の表面に、粘結剤たる水ガラス等の水溶性無機化合物を含有する固形のコーティング層が被覆されてなる、流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物(コーテッドサンド)が、明らかにされている。そこにおいて、そのような流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物(コーテッドサンド)は、鋳型造型のための成形型の成形キャビティ内に充填せしめられた後、水蒸気が通気せしめられることにより、かかる粘結剤コーテッド耐火物(コーテッドサンド)の固化が進行し、目的とする鋳型を得る手法が、明らかにされているのである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の如き従来の、水ガラス等の無機系粘結剤を用いてなるコーテッドサンドにあっては、有機分が微量しか含まれていないため、金属溶湯の注入に伴う加熱によって発生するガス量が少なく、それ故に、鋳造の際に鋳物(鋳造製品)と鋳型との間に適度な隙間が生じず、鋳造製品にコーテッドサンド(及び/又はその固化物)が付着するという問題が発生する恐れがある。有機系粘結剤は、一般に、加熱によって粘着力が消失するものの、無機系粘結剤は、加熱のみでは粘着力が消失しないため、鋳造製品の表面に付着したコーテッドサンド(及び/又はその固化物)は、鋳造工程やその後の熱処理工程における加熱によっても、鋳造製品の表面に残存する場合が多い。このため、それら処理工程の後に、鋳造製品の表面に付着したコーテッドサンド(及び/又はその固化物)を除去する工程が必要となり、多大な労力がかかるという問題がある。また、水ガラス等の無機系粘結剤を用いてなる従来のコーテッドサンドには、それを用いて得られる鋳型の崩壊性が未だ不十分なものであり、その点において、改善の余地が残されているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-76115号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「鋳造工学便覧」第78~90頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景として為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、最終的に得られる鋳型において、鋳造製品に対する鋳型材料及び/又はその固化物の付着が抑止され、また、優れた鋳型強度及び鋳型充填性を発揮する鋳型材料を、提供することにある。加えて、本発明は、そのような優れた鋳型材料を有利に製造することが出来る方法や、そのような優れた鋳型材料を用いた鋳型の製造方法、更には、回収耐火性骨材の再生方法を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) (a)耐火性骨材と、(b)水溶性無機粘結剤と、(c)鉄含有化合物の粉状物 であって、平均粒子径が、0.01μm以上50μm未満であるものとを少なくと も含ことを特徴とする、前記水溶性無機粘結剤と前記鉄含有化合物の粉状物とを 含む被覆層が前記耐火性骨材の表面に形成されてなる、常温流動性を有する乾態の コーテッドサンドからなる鋳型材料。
(2) 前記鉄含有化合物が酸化鉄である前記態様(1)に記載の鋳型材料。
(3) 前記酸化鉄が、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、フェライト、及びそれらのうちの2種以上の 混合物からなる群より選ばれてなる前記態様(2)に記載の鋳型材料。
(4) 前記鉄含有化合物の粉状物が、前記水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に 対して、1~500質量部の割合で含有せしめられている前記態様(1)乃至前記 態様(3)の何れか1つに記載の鋳型材料。
(5) 前記水溶性無機粘結剤を固形分で30質量%含む水溶液をブランク液とし、かか るブランク液の波長660nmにおける光の透過率を100%としたとき、該ブラ ンク液の100質量部に対して前記鉄含有化合物の粉状物の5質量部を混合してな る分散液の波長660nmにおける光の透過率の平均値が、20%以下である前記 態様(1)乃至前記態様(4)の何れか1つに記載の鋳型材料。
(6) 前記鉄含有化合物の粉状物が球状である前記態様(1)乃至前記態様(5)の何 れか1つに記載の鋳型材料。
(7) さらに界面活性剤を含有してなる前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1 つに記載の鋳型材料。
(8) 前記水溶性無機粘結剤が水ガラスである前記態様(1)乃至前記態様(7)の何 れか1つに記載の鋳型材料。
(9) 加熱した耐火性骨材に対して、水溶性無機粘結剤と、平均粒子径が0.01μm 以上50μm未満である鉄含有化合物の粉状物とを添加し、混練乃至は混合せしめ て混和物を調製し、かかる混和物中の水分を蒸発させることにより、前記水溶性無 機粘結剤と前記鉄含有化合物の粉状物とを含む被覆層が前記耐火性骨材の表面に形 成されてなる、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドを製造することを特徴 とする鋳型材料の製造方法。
(10) さらに水が添加されて前記混和物が調製される前記態様(9)に記載の鋳型材 料の製造方法。
(11) 前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の鋳型材料を、加熱さ れた成形型内に充填した後、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で保持し、固 化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型 の製造方法。
(12) 前記成形型が、80℃~200℃の温度に加熱される前記態様(11)に記載 の鋳型の製造方法。
(13) 前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の鋳型材料に水を添加 して湿態化させ、その湿態状の鋳型材料を加熱された成形型内に充填した後、か かる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を 得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
(14) 前記成形型が、80℃~300℃の温度に加熱される前記態様(13)に記載 の鋳型の製造方法。
(15) 前記成形型の保持中に、該成形型内に熱風又は過熱水蒸気が通気せしめられる 前記態様(11)乃至前記態様(14)の何れか1つに記載の鋳型の製造方法。
(16) 前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに記載の鋳型材料からなる鋳 型を用いた鋳造の後に得られる、前記鉄含有化合物の粉状物を含有する前記水溶 性無機粘結剤が固着した耐火性骨材を含む回収耐火性骨材の再生方法であって、
前記耐火性骨材を回収した後、かかる回収された耐火性骨材を研磨して、その 表面に固着している前記水溶性無機粘結剤を削り取る研磨処理を実施し、次いで 該耐火性骨材から削り取られた該水溶性無機粘結剤の固形物を、該固形物中に含 まれる前記鉄含有化合物の粉状物が磁石に引き寄せられる作用を利用して、かか る耐火性骨材から分離する磁選処理を実施することを特徴とする回収耐火性骨材 の再生方法。
(17) 前記磁選処理が、500~10000ガウスの範囲内の磁束密度を有する磁選 機にて実施されることを特徴とする前記態様(16)に記載の回収耐火性骨材の 再生方法。
(18) 前記耐火性骨材に対する焼成処理が、前記研磨処理に先立って、前記研磨処理 と前記磁選処理との間において、及び/又は前記磁選処理の後に、実施されるこ とを特徴とする前記態様(16)又は前記態様(17)に記載の回収耐火性骨材 の再生方法。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明に従う鋳型材料及びその製造方法、並びに鋳型の製造方法によれば、以下に列挙せる如き各種の効果が奏され得ることとなるのである。
(A) 本発明に従う鋳型材料からなる鋳型(以下、本段落では、単に鋳型
という)において、それを用いて製造される鋳造製品に対する鋳型材
料及び/又はその固化物の付着が効果的に抑止される。即ち、平均粒
子径が所定の範囲内にある鉄含有化合物の粉状物は、水溶性無機粘結
剤(及び水との混合物)中にて優れた分散性を発揮するため、本発明
の鋳型材料からなる鋳型においても良好な分散状態にて存在すること
となり、以て、鋳造製品に対する鋳型材料及び/又はその固化物の付
着が、鋳造製品の外表面においてムラなく、抑止されることとなる。
(B) 鋳型を用いて製造される鋳造製品の表面粗さが、良好なものとなる

(C) 鋳型が優れた強度を発揮する。
(D) 鋳型における充填性が優れたものとなる。
【0011】
また、本発明に従う回収耐火性骨材の再生方法によれば、以下に記載の各種の効果が奏され得ることとなる。
(E) 研磨処理によって削り取られた水溶性無機粘結剤の固形物を、磁力
を用いて、耐火性骨材から容易に分離することが出来る。
(F) 通常の集塵操作等では除去しきれない、静電気等の作用にて付着し
ている、削り取られた水溶性無機粘結剤の固形物を、容易に分離する
ことが出来る。
(G) 研磨処理によって削り取られた水溶性無機粘結剤の固形物中には、
鉄含有化合物の粉状物が有利に存在しており、後の磁選処理によって
、微粉の固形物まで効率良く除去され得ることとなるために、再生さ
れた耐火性骨材を用いて再び鋳型を造型したとき、その強度の低下を
有利に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例において鋳物に対するコーテッドサンドの付着状況を評価するために用いた鋳造試験用砂型の縦断面説明図である。
図2】実施例において廃中子を内包したアルミニウム合金鋳物の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ところで、耐火性骨材と水溶性無機粘結剤とを含む鋳型材料は、その調製後の状態により、乾態の鋳型材料と湿態の鋳型材料とに分類される。先ず、乾態の鋳型材料とは、耐火性骨材の表面に、水溶性無機粘結剤からなる被覆層が形成されてなる形態を呈するものであり、乾態の状態では粘着性がない(粘着性を発揮しない)ものの、水蒸気の通気等によって水分が供給されると、耐火性骨材の表面を覆う被覆層(水溶性無機粘結剤)が溶解し、粘着力を発揮することとなるものである。そのような乾態の鋳型材料は、例えば、水分が添加されて粘着力を発現している状態において成形型内に充填され、加熱及び乾燥せしめられることにより、或いは、乾態の状態にて成形型内に充填されて、かかる成形型内への水蒸気の通気等によって水分が供給された後に、加熱及び乾燥せしめられることにより、固化乃至硬化反応が進行し、以て、目的とする鋳型が造型されることとなるものである。その一方、湿態の鋳型材料とは、水溶性無機粘結剤が粘着性を発現した状態にある、全体として湿った状態(外観)を呈するものである。そのような湿態の鋳型材料は、例えば、成形型内に充填され、かかる成形型内にて加熱及び乾燥せしめられることにより、固化乃至硬化反応が進行し、以て、目的とする鋳型が造型されることとなるものである。なお、鋳型材料が乾態を呈するか、或いは湿態を呈するかについては、鋳型材料における、水溶性無機粘結剤の固形分量に対する含水分量によって決まるが、水溶性無機粘結剤の種類によって、鋳型材料が乾態若しくは湿態を呈することとなる含水分量は異なる。例えば、水溶性無機粘結剤が水ガラスの場合、その固形分量の5~55質量%に相当する量の水分を含有する鋳型材料は、乾態を呈し、一方、水ガラスの固形分量の55質量%を超える量に相当する水分量を含有する鋳型材料は、湿態を呈する。
【0014】
そして、本発明における常温流動性を有する乾態の鋳型材料(コーテッドサンド)とは、水分量に関わらず、動的安息角を測定した時に、動的安息角の測定値が得られる鋳型材料(コーテッドサンド)をいう。ここで、動的安息角とは、片面が透明で平らな面を持つ円筒内に鋳型材料(コーテッドサンド)を入れ(例えば、直径:7.2cm×高さ:10cmの容器に体積半分まで鋳型材料を入れる)、一定速度(例えば、25rpm)で回転させ、円筒内で流動している鋳型材料の層の斜面が平面状となり、斜面と水平面との間で形成される角度を測定したものである。この動的安息角は80°以下が好ましく、45°以下がより好ましく、30°以下が更に好ましい。特に、耐火性骨材が球状である場合において、45°以下の動的安息角が容易に実現され得るのである。一方、鋳型材料(コーテッドサンド)が湿ったような状態で円筒内で流動せずに、鋳型材料(コーテッドサンド)の層の斜面が平面として形成されず、それ故に動的安息角が測定できないものを、湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)とする。
【0015】
本発明に従う鋳型材料を構成する耐火性骨材としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来より鋳型用として利用されている各種の耐火性粒状乃至は粉状材料が、何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂をはじめ、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子、また、アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子や、更には、アルミナボール、マグネシアクリンカー等を挙げることが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂または回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何ら差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40~130程度の粒度のものとして、好ましくは、60~110程度の粒度のものとして、用いられることとなる。また、本発明で用いられる耐火性骨材は、球状のものであることが好ましく、具体的には粒形係数が1.2以下、より好ましくは1.0~1.1であることが望ましい。この粒形係数が1.2以下である耐火性骨材を用いることにより、鋳型製造時の流動性や充填性が良くなって、耐火性骨材同士の接点数が多くなるところから、同じ強度を発現するために必要な水溶性無機粘結剤や添加物の量を少なくすることが出来る。なお、ここで用いられる耐火性骨材の粒形係数は、一般に、粒子の外形形状を示す一つの尺度として採用され、粒形指数とも称されるものであって、その値が1に近付く程、球形(真球)に近付くことを意味しているものである。そして、そのような粒形係数は、公知の各種の手法で測定された耐火性骨材の表面積(砂表面積)を用いて算出された値にて表わされるものであって、例えば、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて、1gあたりの実際の耐火性骨材粒子(砂粒)の表面積を測定し、それを、理論的表面積で除した値を意味するものである。なお、理論的表面積とは、耐火性骨材粒子(砂粒)が全て球形であると仮定した場合の表面積である。
【0016】
また、本発明に従う鋳型材料における水溶性無機粘結剤としては、水ガラス、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウムなどから選ばれる1種又は2種以上のものを主成分とするものが、有利に用いられることとなる。これらのうち、取扱いの容易性や耐湿性、更には最終的に得られる鋳型強度の観点より、水ガラス、及び水ガラスを主成分とするものが特に好ましい。ここで、水ガラスとは、可溶性のケイ酸化合物の水溶液であって、そのようなケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等を挙げることが出来るが、特に、本発明においては、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が有利に用いられることとなる。また、本発明においては、水ガラスを主成分として用いる限り、他に熱硬化性樹脂、糖類、タンパク質、合成高分子、塩類や無機高分子等の水溶性粘結剤を使用することも可能である。なお、水ガラスと他の水溶性粘結剤とを併用する場合、粘結剤の全量における水ガラスの割合は60質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上とされる。
【0017】
ここで、ケイ酸ナトリウムは、通常、SiO2 /Na2O のモル比により、1号~5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.0~2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.4~2.6であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.8~3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.3~3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.6~3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号~3号は、JIS-K-1408においても規定されている。そして、これらのケイ酸ナトリウムは、単独での使用の他、混合して用いられても良く、また2種以上のものを混合することで、SiO2 /Na2O のモル比を調製することも可能である。
【0018】
なお、本発明に従う鋳型材料を有利に得るべく、粘結剤として用いられる水ガラスを構成するケイ酸ナトリウムとしては、SiO2 /Na2O のモル比が、一般に1.9以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上であるものが望ましく、上記したケイ酸ナトリウムの分類において、1号及び2号に相当するケイ酸ナトリウムが、特に有利に用いられることとなる。かかるケイ酸ナトリウム1号及び2号は、それぞれ、水ガラス中のケイ酸ナトリウム濃度が広い範囲においても、安定して、特性の良好な鋳型材料を与えるものである。また、そのようなケイ酸ナトリウムにおけるSiO2 /Na2O のモル比の上限は、水溶液の形態にある水ガラスの特性に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは2.7以下とされることとなる。ここで、SiO2 /Na2O のモル比が1.9よりも小さくなると、水ガラスに多くのアルカリが存在することとなるため、水に対する水ガラスの溶解性が上がり、鋳型材料が吸湿劣化し易くなる恐れがある。一方、SiO2 /Na2O のモル比が3.5よりも大きいケイ酸ナトリウムでは、水に対する溶解性が低いため、最終的に得られる鋳型において、耐火性骨材間における接着面積が稼げず、鋳型強度が低下するという問題を生じる恐れがある。
【0019】
また、本発明において用いられる水ガラスは、水に溶けた状態のケイ酸化合物の溶液のことを意味し、本発明の鋳型材料を製造するに際しては、市場において購入されたままの原液の状態において用いられる他、そのような原液に水を添加して、希釈した状態において用いられることとなる。そして、そのような水ガラスから、水や溶剤等の揮発する物質を除いた不揮発分(水ガラス成分)を固形分と言い、これが、上記したケイ酸ナトリウム等の可溶性のケイ酸化合物に相当するものである。また、そのような固形分の割合が高い程、水ガラス中のケイ酸化合物濃度も、高くなるものである。従って、本発明において用いられる水ガラスの固形分とは、それが原液のみにて構成される場合においては、かかる原液中の水分量を除いた割合に相当することとなり、一方、原液を水にて希釈して得られる希釈液が用いられる場合にあっては、原液中の水分量と希釈に用いられた水の量とを除いた割合が、使用される水ガラスの固形分に相当することとなる。
【0020】
そして、そのような水ガラス中の固形分は、水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の種類等に応じて適宜の割合とされることとなるが、有利には、20~50質量%の割合において含有せしめられていることが望ましい。この固形分に相当する水ガラス成分を適度に水溶液中に存在せしめた水ガラスを用いて、耐火性骨材と混練乃至は混合することにより、かかる耐火性骨材に対して、水ガラス成分がムラなく、均一に分散した状態の混和物を調製することが出来、それによって、目的とする鋳型を、本発明に従って、有利に造型することが可能となる。なお、水ガラス中における水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の濃度が低くなり過ぎて、水ガラス成分(固形分)の合計量が20質量%未満となると、例えば乾態の鋳型材料を製造する際には、耐火性骨材、鉄含有化合物の粉状物及び水ガラスの混和物の乾燥のために、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりする必要があり、また湿態の鋳型材料については、成形型内での加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くする必要が生じ、そのために、エネルギーロス等の問題が惹起されるようになる。一方、水ガラス中における固形分の割合が高くなり過ぎると、耐火性骨材に対して、水ガラス成分がムラなく、均一に分散した状態の混和物を調製することが困難となり、目的とする鋳型の特性において問題を惹起する恐れがあるところから、かかる固形分は50質量%以下、従って水分量が50質量%以上の割合となるように、水溶液の形態にある水ガラスを調製することが望ましい。
【0021】
本発明において、水溶性無機粘結剤として使用可能な塩化ナトリウム(NaCl)は、食塩と言われているように可食性であって、人体に無害であると共に、安価で容易に使用することが出来るものである。また、水に容易に溶解するので、塩化ナトリウムを粘結剤として用いた鋳型材料は、水で容易に崩壊する鋳型を製造することが出来る。特に、0~100℃の温度範囲の水に対する塩化ナトリウムの溶解度は、水100gに対して35.7~39.1gであり、水温による変化が小さいため、作業性が良いものである。更に、塩化ナトリウムの融点は1413℃であり、比較的高いため、耐熱性の高い鋳型を製造することが出来るものである。
【0022】
また、リン酸ナトリウムとしては、リン酸一ナトリウム水和物(NaH2PO4・xH2 O;xは公知の整数)、リン酸二ナトリウム水和物(Na2HPO4・x’H2O ;x’は公知の整数)、リン酸三ナトリウム水和物(Na3PO4・x”H2O ;x”は公知の整数)などを用いることができる。そして、水100gに対するリン酸三ナトリウム水和物の溶解量が1.5g(0℃)であることに代表されるように、リン酸ナトリウムは水に可溶性であり、また、リン酸二ナトリウム水和物の融点が1340℃であることに代表されるように、リン酸ナトリウムの融点は比較的高い。このため、水溶性無機粘結剤としてリン酸ナトリウムを用いた鋳型材料は、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することが可能である。
【0023】
さらに、バナジン酸ナトリウム(Na3VO4)は、水に可溶であり、融点は866℃と比較的高い。このため、水溶性無機粘結剤としてバナジン酸ナトリムを用いた鋳型材料は、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することが可能である。
【0024】
加えて、酸化アルミニウムナトリウム(NaAlO2 )は、水に可溶であり、また、融点が1700℃以上と高いものである。このため、水溶性無機粘結剤として酸化アルミニウムナトリウムを用いた鋳型材料は、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することが可能である。
【0025】
また、塩化カリウム(KCl)は、水100gに対する溶解量が28.1g(0℃)であるように、水に溶解し易く、しかも安価である。また、融点は776℃と比較的高い。このため、水溶性無機粘結剤として塩化カリウムを用いた鋳型材料は、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することが可能である。
【0026】
さらに、炭酸カリウム(K2CO3)は、水100gに対する溶解量が129.4g(0℃)であるように、水に溶解し易く、また、融点が891℃であり、比較的高い。このため、水溶性無機粘結剤として炭酸カリウムを用いた鋳型材料は、水で容易に崩壊し、耐熱性が高い鋳型を製造することが可能である。
【0027】
そして、上述した各種の水溶性無機粘結剤は、本発明に従う鋳型材料において、固体の場合はその質量が、液体の場合は固形分のみとして考えた場合の固形分換算が、耐火性骨材の100質量部に対して、0.1~5質量部の割合となる量において、好ましくは0.1~2.5質量部の割合となる量において、用いられる。中でも、0.2~2.0質量部の割合となる量が、特に有利に採用される。ここで、固形分の測定は、以下のようにして実施される。即ち、アルミ箔製の試料皿(縦:9cm、横:9cm、高さ:1.5cm)内に、試料10gを収容して秤量し、180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料皿を、反転させて、更に20分間、上記加熱板上に放置する。次いで、かかる試料皿を、加熱板上から取り出して、デシケータ中で放冷した後、秤量を行って、次式により、固形分(質量%)が算出される。
固形分(質量%)
={[乾燥後の試料皿の質量(g)-試料皿の質量(g)]
/[乾燥前の試料皿の質量(g)-試料皿の質量(g)]}
×100
【0028】
なお、本発明において、水溶性無機粘結剤の使用量が少な過ぎると、乾態の鋳型材料では、耐火性骨材の表面に被覆層が形成され難くなって、鋳型材料の固化乃至は硬化が充分に行われ難くなる問題を生じる恐れがあり、また、湿態の鋳型材料では、耐火性骨材に対して、水溶性無機粘結剤がムラなく、均一に分散した状態の混和物(鋳型材料)を調製することが困難となる恐れがある。その一方、水溶性無機粘結剤の使用量が多過ぎても、乾態の鋳型材料では、耐火性骨材の表面に、必要以上の量の水溶性無機粘結剤が付着して、均一な被覆層が形成され難くなり、また、乾態の鋳型材料及び湿態の鋳型材料の何れにおいても、鋳型の造型前に鋳型材料が相互に固着して団塊化(複合粒子化)する恐れがあり、そのために、最終的に得られる鋳型の物性に悪影響をもたらし、また、金属を鋳込んだ後の中子の砂落とし(鋳型材料の固化物の除去)を難しくする問題等も、惹起するようになる。
【0029】
そして、本発明に従う鋳型材料においては、上述した水ガラス等の水溶性無機粘結剤と共に、平均粒子径が0.01μm以上50μm未満、好ましくは0.05μm以上25μm以下、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上3μm以下である鉄含有化合物の粉状物が、含有せしめられているのである。このように、本発明の鋳型材料は、平均粒子径が所定の範囲内にある鉄含有化合物の粉状物を含むものであるところから、かかる鋳型材料にて造型された鋳型を用いて鋳造を行なうと、鋳造製品と鋳型との間、より詳細には鋳造製品と固化(硬化)した粘結剤との間に、鉄含有化合物の粉状物に起因する適度の隙間が形成されるのであり、以て、鋳造製品に対する鋳型材料及び/又はその固化物の付着が効果的に抑止されることとなるのである。また、本発明において用いられる、平均粒子径が所定の範囲内にある鉄含有化合物の粉状物は、水溶性無機粘結剤(及び水との混合物)中にて優れた分散性を発揮するものであり、かかる粉状物は、本発明の鋳型材料からなる鋳型においても良好な分散状態にて存在することとなるところから、鋳造製品に対する鋳型材料及び/又はその固化物の付着は、鋳造製品の外表面においてムラが発生することなく、抑止されることとなるのである。加えて、そのような鉄含有化合物の粉状物を含有することにより、本発明の鋳型材料にて造型される鋳型は、熱伝導率が高くなり、鋳造時に優れた崩壊性を発揮する。更に、鉄含有化合物は、他の金属含有化合物と比較して安価であり、鋳型材料の製造コストに与える影響は小さく、加えて、熱伝導率に優れ、比熱も高いことから、最終的に得られる鋳型の物性に悪影響を与える恐れは非常に小さいものである。
【0030】
ここで、本発明において用いられる鉄含有化合物とは、鉄原子を有する化合物、換言すれば、化学式中にFeを有する化合物の全てを意味するものであり、具体的には、鉄、鉄合金、酸化鉄、オキシ水酸化鉄、水酸化鉄、酸化鉄の一部が他の金属に置換された混晶フェライト等を、例示することが出来る。また、本発明においては、鉄含有化合物の粉状物が用いられるため、火災や爆発の危険性等を考慮して、酸化鉄が有利に用いられる。酸化鉄としては、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四酸化三鉄(磁鉄鉱)、オキシ水酸化鉄、水酸化鉄、磁赤鉄鉱やフェライト等を、例示することが出来る。これら酸化鉄のうち、磁性を有するもの、具体的には、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、フェライト、及びこれらのうちの2種以上の混合物が、特に好ましい。磁性を有する酸化鉄の粉状物は、水溶性無機粘結剤(及び水との混合物)中においてより優れた分散性を発揮することから、最終的に得られる鋳型を用いて製造された鋳造製品において、その表面の肌荒れの発生をより効果的に抑制することが出来る。なお、磁性を有するとは、磁着能力を有することを意味するものである。
【0031】
また、本発明に従う鋳型材料は、かかる鋳型材料からなる鋳型を用いた鋳造後に回収される耐火性骨材の再生が有利に実施され得るという利点を有する。即ち、本発明の鋳型材料からなる鋳型を用いた鋳造後に、鉄含有化合物の粉状物を含有する水溶性無機粘結剤が固着した耐火性骨材を回収した後、かかる回収された耐火性骨材を研磨して、その表面に固着している水溶性無機粘結剤を削り取る研磨処理を実施する。削り取られた水溶性無機粘結剤の固形物中には、鉄含有化合物の粉状物が分散しており、鉄含有化合物の粉状物が磁石に引き寄せられる作用を利用して、耐火性骨材から分離する磁選処理を実施することにより、研磨処理によって削り取られた水溶性無機粘結剤の固形物を、磁力を用いて耐火性骨材からより容易に分離することが可能となり、水溶性無機粘結剤の固形物の微粉までより効率良く、除去することが出来るのである。このような再生方法に従って耐火性骨材を再生する場合には、鋳型材料に含有せしめられる鉄含有化合物として、磁鉄鉱、磁赤鉄鉱、フェライト、及びこれらのうちの2種以上の混合物等の磁性材料がより好ましい。
【0032】
また、鉄含有化合物の粉状物の形状は、特に限定されるものではなく、球状、多面体状(六面体、八面体、他)、針状、柱状等を呈する粉状物を用いることが可能であるが、好ましくは、球状の粉状物が用いられる。鉄含有化合物の粉状物であって球状を呈するものの中でも、特に、真球度が、アスペクト比(短径/長径)で0.7以上のもの、好ましくは0.8以上のもの、さらに好ましくは0.9以上のものが用いられる。球状の粉状物は、ほぐれ易く、凝集しにくいため、水溶性無機粘結剤(及び水との混合物)中において分散しやすく、鋳型材料を製造(調製)する際に混和物の流動性も良好となる。なお、球状を呈する粉状物の真球度とは、走査型電子顕微鏡観察において、単粒子のものを無作為に10個選択し、その投影形状から得られたアスペクト比(短径/長径の比)の平均値を意味するものである。
【0033】
さらに、本発明で用いられる鉄含有化合物の粉状物は、共に鋳型材料を構成する水溶性無機粘結剤との間において、換言すれば、鋳型材料の製造時に共に用いられる水溶性無機粘結剤との間において、以下の如き特性を有するものであることが望ましい。即ち、水溶性無機粘結剤を固形分で30質量%含む水溶液をブランク液とし、波長660nmにおける光の透過率を100%としたとき、かかるブランク液の100質量部に対して鉄含有化合物の粉状物の5質量部を混合してなる分散液の、波長660nmにおける光の透過率の平均値が、20%以下であることが望ましい。より具体的には、ブランク液(水溶性無機粘結剤を固形分で30質量%含む水溶液)における波長660nmの光の透過率を100%として、かかるブランク液の100質量部に対して鉄含有化合物の粉状物の5質量部を添加し、混合撹拌して分散液を調製し、かかる調製から15分経過後(混合撹拌終了から15分経過後)の分散液について、分光光度計を用いて、波長660nmの光の透過率を3回、測定する。そして、その3回の測定値より算出される、分散液における波長660nmの光の透過率の平均値が20%以下、好ましくは10%以下を示す鉄含有化合物の粉状物が、本発明において有利に用いられるのである。分散液における波長660nmの光の透過率の平均値が20%以下であるということは、分散液に含まれる鉄含有化合物の粉状物が、分散液中に良好な分散状態にて存在していることを意味するところから、そのような鉄含有化合物の粉状物は、水溶性無機粘結剤(及び/又はその水溶液)中においても、高い分散性を発揮するのである。
【0034】
なお、鋳型における鉄含有化合物の粉状物の分散状態を直接的に確認する手法としては、色差計を用いて色差:ΔEを測定する手法を例示することが出来る。即ち、鋳型における鉄含有化合物の粉状物の分散状態が悪い場合には、かかる鉄含有化合物の粉状物を含まない鋳型との間の色差:ΔEの値が低くなり、その一方、分散状態が良好な場合には色差:ΔEは高くなる傾向がある。これにより、色差:ΔEが1.0以上であれば、好ましくは2.0以上であれば、鋳型における鉄含有化合物の粉状物の分散状態が良好であると判断することが出来る。鉄含有化合物の粉状物の分散状態が良好な鋳型にあっては、鋳型表面と鋳造製品との間に、より均一に隙間が形成され、鋳造製品に対する鋳型材料及び/又はその固化物の付着がより効果的に抑止され、また、鉄含有化合物の粉状物の凝集による鋳型強度の低下も有利に抑制されるという利点がある。
【0035】
以上、詳述した鉄含有化合物の粉状物は、その配合による効果を有利に享受するためには、水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、1~500質量部の割合となる量において、好ましくは10~300質量部の割合となる量において、より好ましくは20~200質量部の割合となる量において、本発明の鋳型材料に含有せしめられることとなる。
【0036】
また、本発明に係る鋳型材料においては、上述した鉄含有化合物の粉状物と共に、更に界面活性剤が含有せしめられていることが好ましい。界面活性剤を含有せしめることにより、本発明の鋳型材料における水の浸透性、換言すれば水への濡れ性が、向上するという利点がある。より具体的には、本発明に従う、界面活性剤を含む乾態の鋳型材料については、鋳型造型時に水分が供給されると、供給された水分と水溶性無機粘結剤との間を界面活性剤が仲介することにより、少量の水分であっても、鋳型材料の全体が効果的に湿態化することとなるのであり、1)鋳型材料への水分の供給時間(例えば、水蒸気によって水分を供給する場合には、水蒸気の通気時間)を必要最低限に抑えることが可能ならしめられ、また、2)成形型(成形キャビティ)への水分の供給量が少量に抑えられる結果、造型された鋳型にあっては、成形型からの離型性が優れていることに加えて、優れた強度も発揮する、等の効果を、有利に享受することが可能である。さらに、本発明に従う、界面活性剤を含む湿態の鋳型材料については、1)界面活性剤が存在していることにより、その調製(製造)の際に添加される水分量を必要最低限に抑えることが可能ならしめられ、また、2)水の表面張力が抑制され、鋳型材料の流動性が向上し、更に、3)造型された鋳型が、成形型からの離型性が優れていることに加えて、優れた強度も発揮する、等の効果を、有利に享受することが出来る。
【0037】
ここで、本発明の鋳型材料に含有せしめられる界面活性剤の量は、水溶性無機粘結剤の固形分の100質量部に対して、0.1~20.0質量部であることが望ましく、中でも0.5~15.0質量部が好ましく、特に0.75~12.5質量部であることが好ましい。含有せしめられる界面活性剤の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、界面活性剤の量が多過ぎても、使用量に応じた効果の向上が認められず、また界面活性剤によっては、水溶性無機粘結剤が乾態化する際に固体化せず、乾態の鋳型材料を得ようとしても得られない恐れがあり、更には、費用対効果の観点より得策ではない。本発明においては、界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の何れをも、用いることが出来る。
【0038】
具体的には、陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。更に、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。加えて、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、エマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ニューポールPE-62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0039】
また、種々の界面活性剤のうち、特に、非極性部位としてシロキサン構造を有するものをシリコーン系界面活性剤といい、パーフルオロアルキル基を有するものをフッ素系界面活性剤という。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーン、アクリル末端ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル末端ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノプロピル変性シリコーン等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルフォン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、上述の如き各種の界面活性剤を、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが可能である。尤も、界面活性剤によっては、水溶性無機粘結剤と反応し、時間の経過と共に界面活性能が低下乃至は消失する恐れがあるものがあるため、例えば、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いる場合には、かかる水ガラスと反応しない陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が有利に使用される。
【0041】
さらに、本発明に係る鋳型材料には、上述した界面活性剤の他にも、必要に応じて、公知の各種添加剤を適宜に含有せしめることも可能である。なお、そのような添加剤を鋳型材料に含有せしめるに際しては、水溶性無機粘結剤に、所定の添加剤を予め配合した後、耐火性骨材と混練乃至は混合せしめる方法や、水溶性無機粘結剤とは別個に、所定の添加剤を、耐火性骨材に対して添加して、全体を均一に混練乃至は混合せしめる方法等が、採用される。
【0042】
本発明において用いられ得る添加剤として、耐湿性向上剤を例示することが出来る。本発明においては、従来より鋳型材料において用いられている耐湿性向上剤であれば、本発明の効果を阻害しないものである限り、如何なるものであっても使用することが出来る。具体的には、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸マンガン、炭酸銅、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ストロンチウム、四ホウ酸銀、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸アンモニウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸銀、メタホウ酸銅、メタホウ酸鉛、メタホウ酸マグネシウム等のホウ酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅等の硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等の水酸化物、珪素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、銅、鉄、ホウ素、ジルコニウム等の酸化物等を、例示することが出来る。それらの中でも、特に塩基性炭酸亜鉛、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、硫酸リチウム、水酸化リチウムは、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いた場合に、より有利に耐湿性を向上させることが可能である。上記したものを始めとする耐湿性向上剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを併用することも可能である。なお、先に耐湿性向上剤として列記した化合物の中には、水溶性無機粘結剤として使用可能な化合物も含まれているが、かかる化合物にあっては、それとは異なる水溶性無機粘結剤を用いる場合に、耐湿性向上剤として作用させることが可能であり、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いる場合、耐湿性向上剤としてより効果的に作用する。
【0043】
そのような耐湿性向上剤の使用量としては、水溶性無機粘結剤中の固形分に対して、一般に、0.5~10質量%、好ましくは1~8質量%の割合において、用いられる。耐湿性向上剤の添加効果を有利に享受するために、0.5質量%以上の使用量であることが望ましいのであり、一方、その添加量が多すぎると、水溶性無機粘結剤の結合を阻害し、最終的に得られる鋳型の強度が低下する等の問題を惹起する恐れがあるところから、10質量%以下とされることが望ましいのである。
【0044】
また、鋳型の崩壊性を向上させるために、アルカリ金属硝酸塩やアルカリ土類金属硝酸塩等の硝酸塩を添加しても良く、更には、鋳型の保湿性を向上させると共に、水溶性無機粘結剤を増粘させて鋳型の離型性を向上させるために、多価アルコール、水溶性高分子化合物、炭水化物、糖類、タンパク質、無機化合物等を添加することも可能である。このような添加剤の使用量としては、その総量において、水ガラスの固形分100質量部に対して、一般に、0.5~30質量部程度であることが好ましく、中でも、1~20質量部がより好ましく、特に、2~15質量部が更に好ましい。
【0045】
さらに、その他の添加剤として、耐火性骨材と水溶性無機粘結剤との結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いることが出来る。また、鋳型材料の流動性の向上に寄与する滑剤の含有も有効であり、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類;ステアリン酸、ステアリルアルコール;ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等を使用することが可能である。更に、離型剤として、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等も使用可能である。そして、これらその他の添加剤は、それぞれ、水溶性無機粘結剤中の固形分に対して、一般に、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の割合において、含有せしめられる。
【0046】
ところで、本発明に従う、常温流動性を有する乾態の鋳型材料を製造するに際しては、一般に、耐火性骨材に対して、粘結剤としての水溶液状の水溶性無機粘結剤を、必要に応じて用いられる添加剤と共に、混練乃至は混合せしめて、かかる耐火性骨材の表面が水溶性無機粘結剤にて均一に覆われた状態を呈する混和物を調製し、次いで、その調製された混和物に含まれる水分を蒸発(蒸散)せしめることによって、目的とする常温流動性を有する乾態の粉末状鋳型材料(乾態のコーテッドサンド)を得る手法が採用される。かかる手法において、混和物中の水分の蒸散は、水溶性無機粘結剤の固化乃至は硬化が進む前に迅速に行われる必要があり、そのために、本発明にあっては、耐火性骨材に対して、水溶液の形態にある水溶性無機粘結剤を投入(混合)してから、5分以内に、より好ましくは3分以内に、含有水分を飛ばして、乾態のコーテッドサンドとすることが望ましい。かかる蒸散の時間が長くなると、混練(混合)サイクルが長くなり、生産性が低下する他、水溶性無機粘結剤が空気中のCO2 に触れる時間が長くなって、失活する等の問題を生じる恐れが高くなるからである。なお、このようにして得られる乾態のコーテッドサンドにおける含水分量は、例えば、水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いた場合には、水ガラスの固形分量に対して5~55質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~50質量%となるように、調製される。
【0047】
また、そのような乾態のコーテッドサンド(鋳型材料)の製造工程において、上記混和物中の水分を迅速に蒸散せしめるための有効な手段の一つとして、耐火性骨材を予め加熱しておき、それに、水溶液の形態にある水溶性無機粘結剤を混練乃至は混合して、混和物を調製する手法が、採用される。この予め加熱された耐火性骨材に、水溶液の形態にある水溶性無機粘結剤を混練乃至は混合せしめるようにすることによって、水溶液の形態にある水溶性無機粘結剤に由来する水分は、そのような耐火性骨材の熱によって極めて迅速に蒸散せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られる鋳型材料の含水分量を効果的に低下せしめ得て、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドが、有利に得られることとなるのである。なお、この耐火性骨材の予熱温度としては、使用される水溶性無機粘結剤の種類や配合量、更には水溶性無機粘結剤の水溶液中の水分量等に応じて、適宜に選定されることとなるが、例えば水ガラスの場合には、一般に100~160℃程度、好ましくは100~140℃程度の温度に、耐火性骨材を加熱して行なうことが望ましい。この予熱温度が低くなり過ぎると、水分の蒸散を効果的に行なうことが出来ず、混和物の乾燥に時間がかかるようになるところから、100℃以上の温度を採用することが望ましいのであり、また予熱温度が高くなり過ぎると、得られるコーテッドサンド(鋳型材料)の冷却時に、水溶性無機粘結剤成分の固化(硬化)が進行し、加えて、複合粒子化も進行するようになるところから、鋳型材料としての機能、特に強度の如き物性に問題を生じる恐れがある。
【0048】
一方、常温流動性を有さない湿態の鋳型材料を製造するに際しては、一般に、常温の耐火性骨材に対して、粘結剤としての水溶液状の水溶性無機粘結剤を、必要に応じて添加剤と共に、混練乃至は混合せしめることにより、耐火性骨材と水溶液状の水溶性無機粘結剤(及び添加剤)とが均一に混和している状態の混和物からなる、常温流動性を有さない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を得る手法が採用される。常温流動性を有さない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)は、必要に応じて、その含水分量が、湿態を呈する程度にまで調整されるが、例えば水溶性無機粘結剤として水ガラスを使用する場合、鋳型材料(コーテッドサンド)の含水分量が、水ガラスの固形分量の55質量%より多くなるように、好ましくは70~900質量%となるように、より好ましくは95~500質量%となるように調整されて、製造される。このように含水分量が調整された湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)にあっては、鋳型造型時に成形型内へ充填する際のブローエアーによって乾燥し、成形型内への充填が阻害されることを効果的に防止し、湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)の湿潤さを保つことが出来ることに加え、そのような鋳型材料(コーテッドサンド)を用いて造型された鋳型においても、優れた特性が付与されたものとなるのである。なお、本発明における、常温流動性を有さない湿態の鋳型材料とは、水分量に関わらず、動的安息角を測定した時に、動的安息角の測定が出来ない鋳型材料をいう。
【0049】
なお、本発明に従う鋳型材料は、乾態又は湿態の何れの状態で用いても構わないが、常温流動性を有することで成形型への充填性が良く、また取り扱いも容易なことから、常温流動性を有する乾態のものがより望ましい。
【0050】
また、乾態又は湿態の鋳型材料の製造工程において、鉄含有化合物の粉状物は、水溶液状の水溶性無機粘結剤に予め混合した状態で、耐火性骨材に対して添加し、混練乃至は混合してもよく、混練時に別個に添加して混練してもよく、混練時に時間差を設けて混練してもよい。そのため、本発明に従う乾態の鋳型材料の場合、耐火性骨材の表面を覆う被覆層は、水溶性無機粘結剤と鉄含有化合物の粉状物とが混在した層にて構成されていてもよく、水溶性無機粘結剤からなる層の外周に、水溶性無機粘結剤と鉄含有化合物の粉状物とを含む層が形成されてなる構成であっても構わないが、本発明の効果をより有利に享受するためには、耐火性骨材の表面を覆う被覆層は、水溶性無機粘結剤と鉄含有化合物の粉状物とが混在した層であることが望ましい。また、鉄含有化合物の粉状物を用いることなく、耐火性骨材の表面が水溶性無機粘結剤からなる被覆層にて覆われてなる乾態状のものを製造し、鋳型造型の際に、かかる乾態状のものに水及び鉄含有化合物の粉状物、必要に応じてその他の添加剤を添加し、混練したものを、鋳型材料として用いても良い。なお、本発明に従う乾態又は湿態の鋳型材料を製造するに際して、粘結剤としての水溶液状の水溶性無機粘結剤は、使用される水溶性無機粘結剤が固体状のものである場合には、予め水に溶かした状態において用いられる。液体状の水溶性無機粘結剤にあっても、その粘度を調整するために、水に希釈したものを用いることが可能である。また、耐火性骨材等との混練乃至は混合時に、固体状又は液体状の水溶性無機粘結剤と水とを、耐火性骨材等に対して個別に添加することも可能である。
【0051】
かくして得られた本発明に従う鋳型材料(コーテッドサンド)を用いて、目的とする鋳型を造型する手法については、使用される鋳型材料(コーテッドサンド)の状態、即ち、常温流動性を有さない湿態を呈するものであるか、或いは、常温流動性を有する乾態を呈するものであるかによって、以下のように大別される。
【0052】
常温流動性を有さない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を用いて鋳型を造型する場合、かかる鋳型材料を、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填する一方、成形型を80~300℃、好ましくは100~200℃の温度に加熱して、そこに充填された鋳型材料が乾燥するまで、成形型内で保持される。このような成形型内での加熱保持によって、充填された鋳型材料の固化乃至は硬化が進行することとなる。
【0053】
すなわち、加熱された成形型のキャビティ内に、常温流動性を有さない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)を充填し、保持することにより、キャビティ内の充填相を構成する鋳型材料は湿態であることから、耐火性骨材が水溶性無機粘結剤を介して相互に結合して連結し、一体的な鋳型形状を呈する鋳型材料の集合体(結合物)が形成されるのである。なお、水溶性無機粘結剤は、通常、何の添加剤も加えられていなければ、水の蒸発乾固により固化し、また、硬化剤として酸化物や塩が加えられている場合には、硬化することとなるのである。本発明において、鋳型材料の集合体(結合物)は、単に固化したもの、及び硬化剤によって硬化したものの何れをも含むものである。なお、本明細書における「固化物」との表現は、「硬化物」をも含めた意義において使用されていることが、理解されるべきである。
【0054】
また、常温流動性を有さない湿態の鋳型材料(コーテッドサンド)は、予め80~300℃に加熱され、その温度にて保温された状態の成形型内で一定時間、保持されることにより、水の蒸発乾固により乾燥せしめられて、固化乃至は硬化せしめられるのである。この予熱による保温温度としては、80~300℃、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃が採用される。乾燥を速め、造型時間を短縮する理由と、添加剤による耐湿強度の向上を図る観点より、80℃以上であることが好ましく、耐火性骨材間の結合が十分に形成される前に水分が蒸発し、鋳型強度が発現しなくなるという問題の発生を防止する観点より、300℃以下であることが好ましい。このような温度範囲内の温度にて成形型を加熱することにより、最終的に得られる鋳型の耐湿強度を向上せしめると共に、鋳型材料の乾燥が、有利に進行せしめられ得るのである。なお、成形型内での鋳型材料の保持中に、乾燥促進のために、成形型内に熱風又は過熱水蒸気を吹き込んでも良く、また、鋳型材料(充填相)の固化乃至は硬化をより一層、促進させるために、硬化促進剤としての二酸化炭素(CO2 ガス)やエステル等をガス状又は霧状にして、成形型内に通気しても良い。
【0055】
一方、常温流動性を有する乾態の鋳型材料(コーテッドサンド)を用いて鋳型を造型する場合、第1の方法としては、乾態の鋳型材料を、鋳型造型現場で水と混練することにより湿態化させ、その湿態状とされた鋳型材料を、予め80~300℃に加熱され、その温度にて保温された成形型の成形キャビティ内で、一定時間、鋳型材料が乾燥するまで保持する。かかる第1の方法における、予熱による成形型の保温温度としては、80~300℃、好ましくは90~250℃、より好ましくは100~200℃が採用される。第2の方法としては、予め80~200℃に加熱され、その温度にて保温された成形型の成形キャビティ内に、乾態の鋳型材料を充填し、その後に成形キャビティ内に水蒸気を吹き込み、鋳型材料からなる充填相内に水蒸気を通気せしめるものであり、この水蒸気の通気によって、乾態の鋳型材料に対して水分が供給されて湿態状となり、そのような湿態状の鋳型材料が乾燥するまで成形型内で保持されるものである。この第2の方法における、予熱による成形型の保温温度としては、80~200℃、好ましくは90~150℃、より好ましくは100~140℃が採用される。
【0056】
上記第1の方法は、乾態の鋳型材料(コーテッドサンド)と水とを混練(混合)する場合、乾態の鋳型材料を、鋳型の製造場所たる造型現場まで運搬した後、その造型現場にて、水を添加して湿態化させた後、その得られた湿態状の鋳型材料を成形型に充填して、目的とする鋳型の造型を行うものであるが、そこにおいて、乾態の鋳型材料に水を加えて湿態化する工程は、単に、乾態の鋳型材料と所定量の水とを適当なミキサに投入して、混合せしめることにより、鋳型材料を湿らせれば足りるものであるところから、極めて単純な作業にて実施され得て、作業環境の悪い造型現場においても、極めて簡単に且つ容易に行い得るのである。なお、水の添加時には、他の添加剤、硬化促進剤、鋳型強度の再調整のための水溶性無機粘結剤から選ばれる一種以上のものを、一緒に添加しても良い。また、水は溶液中に水が含有されたものを用いても良い。
【0057】
また、上記第2の方法において、成形キャビティ内に充填された鋳型材料(充填相)に水蒸気を吹き込むにあたり、その水蒸気の温度は、一般に、80~150℃程度、より望ましくは95~120℃程度とされる。高温の水蒸気を採用すると、その生産のために多量のエネルギーが必要となるところから、特に100℃付近の水蒸気温度が有利に採用されることとなる。また、本発明に従って通気せしめられる水蒸気の圧力としては、ゲージ圧で、0.01~0.3MPa程度、より好ましくは0.01~0.1MPa程度の値が有利に採用される。更に、その通気時間としては、一般に、2秒程度から60秒程度までの通気時間が、採用されることとなる。この水蒸気の通気時間が短くなり過ぎると、乾態の鋳型材料の表面を充分に湿らせることが困難となるからであり、また通気時間が長くなり過ぎると、鋳型材料(コーテッドサンド)表面の被覆層を構成する水溶性無機粘結剤が溶解、流出する等の問題を生じる恐れがあるからである。
【0058】
ここで、上記した第1の方法及び第2の方法においては、湿った鋳型材料からなる充填相を積極的に乾燥させるべく、成形型内に熱風又は過熱水蒸気を吹き込み、かかる充填相に通気せしめるようにする手法が、好適に採用される。このような熱風又は過熱水蒸気(熱風等)の通気によって、鋳型材料の充填相の内部にまで迅速に乾燥させて、かかる充填相の固化乃至は硬化をより一層有利に促進せしめ、以て、硬化速度を有利に高めると共に、得られる鋳型の抗折強度等の特性をも有利に高め得ることとなる他、鋳型の造型時間の短縮にも、有利に寄与し得るのである。また、上記第1の方法では、例えば熱風等の通気の前に、上記第2の方法では、例えば水蒸気の通気と熱風等の通気との間に、充填相の固化乃至は硬化をより有利に促進させるため、硬化促進剤として二酸化炭素(CO2 ガス)、エステル等をガス状又は霧状にして通気しても良く、この二酸化炭素、エステル等で水溶性無機粘結剤を中和することにより、その固化乃至は硬化をより促進させることが可能である。なお、二酸化炭素やエステル等の通気は、上記第1の方法においては熱風等の通気と同時に、上記第2の方法においては水蒸気の通気と同時に、又は熱風等の通気と同時に行なっても、何等差支えない。
【0059】
なお、上記硬化促進剤としては、二酸化炭素(炭酸水)や、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、γ-ブチロラクトン、γ-プロピオンラクトン、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、トリアセチン、プロピレンカーボネート等のエステルの他、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、カルボン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸や、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等の一価のアルコール等を、例示することが出来る。これら硬化促進剤は単独で、或いは2種以上のものを混合して、使用してもよい。なお、これらの硬化促進剤は、成形型の保持中にガス状又は霧状にしたものを、成形型内に通気すると良く、乾態の鋳型材料に水を加えて湿態化する場合には、水と共に硬化促進剤を鋳型材料に添加しても良い。
【0060】
また、本発明に従う鋳型材料を用いた鋳型の製造方法としては、上述した方法の他にも、公知の各種の造型手法が適宜に採用され得るところであり、例えば、鋳型材料の層を順次、積層せしめる一方、目的とする鋳型に対応する部分を硬化せしめて、三次元の鋳型を直接に造型する積層造形の手法も、採用可能である。
【0061】
以上の如き、種々の製造方法に従って作製された鋳型を用いて、所定の金属溶湯の鋳造を行い、目的とする金属部品(鋳造製品)が製造されることとなるが、その鋳造の方法としては、特に限定されるものではなく、公知の各種の鋳造手法を採用することが可能である。
【0062】
本発明に従う鋳型材料は、鉄含有化合物の粉状物を含むものであるところから、例えば以下に詳述する再生方法に従うことにより、耐火性骨材を有利に再生することが可能である。以下に示す再生方法を実施する際には、本発明の鋳型材料からなる鋳型を用いた鋳造の終了後、その使用済みの鋳型を、粉砕機等を用いた公知の手法に従って、粉砕乃至は解砕せしめて、小片に、好ましくは数mm程度以下の大きさ迄、より好ましくは耐火性骨材の一粒一粒に近い位の大きさ迄の粒子において、回収される。
【0063】
なお、以下に詳述する回収耐火性骨材の再生方法は、上述の如く鋳造後の使用済みの鋳型から回収される耐火性骨材が、主として、その対象とされるものであるが、鋳型の造型工程において排出される、鋳型材料の形態にある、回収された耐火性骨材や、鋳造に供されなかった未使用の鋳型から回収される耐火性骨材をも、その対象とし得るものであって、それら回収耐火性骨材は、何れも、それに固着する水溶性無機粘結剤中に鉄含有化合物の粉状物が含有されているものである。そして、そのような鉄含有化合物の粉状物を固着した水溶性無機粘結剤中に含有する耐火性骨材は、本発明たる再生方法が適用される回収耐火性骨材の全体を構成するものであることが一般的であるが、その一部を構成するものであっても、何等差支えなく、その場合において、回収耐火性骨材の5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上の割合で存在せしめられることとなる。この回収耐火性骨材中の、鉄含有化合物を含む耐火性骨材の割合が、高くなれば高くなる程、本発明の特徴がより有利に発揮され得ることとなることは言うまでもないところである。なお、そのような鉄含有化合物を含む耐火性骨材と共に用いられる他の耐火性骨材としては、鉄含有化合物の有無に関わらず、また粘結成分の種類の如何に関わらず、鋳型造型工程や鋳造工程から回収される耐火性骨材の何れもが、その対象とされるものである。
【0064】
そして、本発明に従う回収耐火性骨材の再生方法においては、上述の如くして回収されてなる回収耐火性骨材の再生のために、先ず、かかる回収耐火性骨材の表面に固着している水溶性無機粘結剤の固形物を削り取る研磨処理が実施され、次いで、その削り取られた固形物を、磁力によって、かかる固形物中に含まれる鉄含有化合物の粉状物が磁石に引き寄せられる力(作用)を利用して、耐火性骨材から分離する磁選処理が実施されることとなるのである。
【0065】
そこにおいて、研磨処理は、回収された耐火性骨材を研磨して、骨材表面に残存する固着物である水溶性無機粘結剤の固形物を削り取り、骨材から分離するものである。具体的には、従来から公知の研磨装置に回収耐火性骨材が投入されて、骨材表面を被覆し、或いは固着している水ガラス等の水溶性無機粘結剤を粘結成分とする固形の粘結剤が削り落とされることとなるのであるが、その際、投入される耐火性骨材が団塊状態にある場合にあっては、研磨装置の回転するロータ等によって一粒一粒の粒子に解砕された後、更にその表面の研磨が行われることとなる。なお、この研磨処理における研磨方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ロータリーリクレーマ、サンドフレッシャ、サンドシャイナ等を用いた研磨方式が、適宜に採用されることとなる。また、かかる研磨処理の工程における研磨時間の如き研磨条件は、回収された耐火性骨材における骨材表面への固形物の固着状態により、適宜に選定されるものである。
【0066】
また、かかる研磨処理の工程から取り出された耐火性骨材には、研磨処理にて削り取られた水溶性無機粘結剤の固形物の粉末が混在しており、そして、そのような粘結剤の粉末乃至はその粉塵は、研磨装置に通常設けられている集塵装置等によっては、充分に又は確実に除去され得ず、耐火性骨材の表面に物理的に付着したものとなっているところから、本発明にあっては、そのような研磨処理の工程から取り出された処理物に対して、更に、適当な磁選機を用いた磁選処理が施されて、固形の水溶性無機粘結剤粉末中に分散、含有せしめられている鉄含有化合物の粉状物が、磁石に引き寄せられる作用(力)を利用することによって、そのような粘結剤の粉末乃至は粉塵が、耐火性骨材から分離せしめられるのである。即ち、耐火性骨材と固形の粘結剤粉末とが混在する研磨処理物に対して、磁選処理が施されることにより、粘結剤が固着していない耐火性骨材は、磁選機の下方に設けられた耐火性骨材回収部へ回収される一方、鉄含有化合物を含む固形の粘結剤粉末は、磁選機の下方に設けられた鉄含有化合物回収部において回収されるようになっているのである。
【0067】
なお、上記の磁選処理において用いられる磁選機としては、半磁外輪方式、吊り下げ方式、マグネットプーリ方式等の各種の方式のものが知られているが、磁力によって回収耐火性骨材の研磨処理物中から、鉄含有化合物を含む固形の粘結剤粉末を分離することが出来るものであれば、その構造や形式は特に限定されることはなく、公知のものが適宜に採用されることとなる。また、そのような磁選機における磁力は、耐火性骨材と、鉄含有化合物を含む固形の粘結剤粉末との良好な分離のために、磁束密度が500~10000ガウス、好ましくは1000~8000ガウス、更に好ましくは1500~6000ガウスの範囲内のものであることが望ましい。この磁束密度が500ガウスよりも低くなると、磁選処理による粘結剤粉末の分離が有利に行い得ず、また10000ガウスよりも高い磁束密度になると、鉄含有化合物を含む固形の粘結剤粉末が磁選機に強く引き付けられて磁着し、その回収が困難となる等の問題が惹起されるようになる。
【0068】
このように、本発明に従う鋳型材料は鉄含有化合物の粉状物を含むものであるところから、回収耐火性骨材に固着している水溶性無機粘結剤の固形物中に、必然的に鉄含有化合物の粉状物が含まれることとなり、そのような回収耐火性骨材に対して研磨処理と磁選処理とを実施することにより、研磨によって削り取られた固形の水溶性無機粘結剤(粉末)を、磁力を用いて耐火性骨材から容易に分離することが出来る。しかも、通常の集塵等で除去し切れない、静電気等により耐火性骨材表面に付着している、削り取られた固形の粘結剤粉末を、骨材から容易に分離することが出来る。以上より、本発明に係る回収耐火性骨材の再生法法によれば、品質の良好な再生耐火性骨材を、有利に提供することが出来るのである。更に、そのようにして再生された耐火性骨材は、削り取られた固形の水溶性無機粘結剤粉末が、充分に且つ確実に除去せしめられてなるものであるところから、再び鋳型の造型に用いられた場合においては、その得られた鋳型の強度低下が効果的に抑制され得て、優れた強度を有する鋳型が提供され得るのである。
【0069】
ところで、本発明の再生方法にあっては、その再生の対象とされる回収耐火性骨材に対して、それを焼成する焼成処理を施すことも、有利に採用され得るところである。この焼成処理は、本発明に従う研磨処理よりも前に実施され得る他、そのような研磨処理と磁選処理との間において、更には磁選処理の後において、行うことも可能であり、更にはそれら研磨・磁選処理の前、間及び後の二つ以上において、行うことも可能である。なお、そのような回収耐火性骨材の焼成処理には、例えば、ロータリーキルンやトンネルキルン等の焙焼炉を用いて、その焙焼炉内に、回収耐火性骨材を随時投入しつつ、焼成を行う手法が、採用される。
【0070】
なお、かかる焼成処理が、本発明に従う研磨処理や磁選処理に先立って実施されることにより、耐火性骨材の付着物、ゴミ及び不純物を燃焼させて取り除くことが可能となる。このような焼成処理における焙焼炉内の焼成温度としては、一般に200~700℃程度、好ましくは300~700℃程度、より好ましくは350~650℃程度、更に好ましくは400~600℃程度が採用されることとなる。この焼成温度が200℃よりも低くなると、耐火性骨材の付着物、ゴミ及び不純物が充分に燃焼しない恐れがあり、また焼成温度が700℃を超えようになると、酸化等によって鉄含有化合物の磁石へ引き寄せられる力が低下すると共に、水溶性無機粘結剤が焼結して、耐火性骨材から剥がれ難くなる等の問題を惹起する。
【0071】
また、かかる焼成処理を、本発明に従う磁選処理よりも後で実施する場合にあっては、回収耐火性骨材に仮に粘結剤が固着していたとしても、焼成による加熱によって、水溶性無機粘結剤を失活化させることが出来ることとなる。このような焼成処理における焙焼炉内の焼成温度としては、一般に200~1000℃程度、好ましくは300~900℃程度、より好ましくは350~850℃程度、更に好ましくは400℃~800℃程度であることが望ましい。この焼成温度が200℃よりも低くなると、耐火性骨材に固着している水溶性無機粘結剤が充分に失活化しない恐れがある。また、焼成温度が1000℃を超えるようになると、焙焼炉に負荷がかかる上に、加熱コストが増大する恐れがある等の問題を惹起する。
【0072】
さらに、本発明に従う回収耐火性骨材の再生方法にあっては、その研磨処理又は磁選処理の工程から取り出された耐火性骨材処理物に対して、更に、分級処理を施すことも有効である。この分級処理は、本発明に従う研磨処理又は磁選処理の後に焼成処理が実施された場合にあっては、そのような焼成処理の後に実施されることとなる。なお、かかる分級処理は、空気流により耐火性骨材処理物を流動させて、集塵装置によって、そのような耐火性骨材処理物に含まれる微粉体を取り除く集塵工程と、ふるいにより耐火性骨材処理物に含まれる異物を取り除くふるい工程とを有している。具体的には、集塵工程では、空気流により耐火性骨材処理物を流動させて、かかる耐火性骨材処理物に含まれている、それまでの工程では取り除けなかった削りかす、塵及び微粉等の微粉体を、駆動状態の集塵装置で除去するものであり、これによって、研磨後又は磁選後の耐火性骨材処理物から微小な残留物が効果的に取り除かれることとなる。また、ふるい工程では、ふるいを用いて耐火性骨材処理物の粒子径を分級することで、そのような耐火性骨材処理物に含まれる、これまでの工程では取り除けなかった異物を取り除くことが行われる。これによって、磁選後の耐火性骨材から大きな残留物が取り除かれると共に、適切な粒子径の骨材が選択的に取り出されるのである。
【0073】
なお、ここで採用される分級処理は、上述の如き集塵工程及びふるい工程を有するものに限定されるものではなく、例えば、集塵工程及びふるい工程の何れか一方を有するものであっても何等差支えなく、また、ふるい工程を実行した後に集塵工程を実行するものであっても何等差支えない。更に、分級工程は、耐火性骨材を所定の大きさで分級することが出来る手法であれば、他の如何なる公知の手法をも採用可能である。
【0074】
そして、上述の如くして、本発明に従う回収耐火性骨材の再生方法によって再生された耐火性骨材は、再び鋳型の造型工程に提供され、特性の優れた鋳型を与え得る骨材(鋳物砂)として、有利に用いられることとなるのである。
【0075】
なお、上記した、本発明に従う鋳型材料及びその製造方法、鋳型の製造方法、並びに回収耐火性骨材の再生方法については、上記例示の実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでは決してなく、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【0076】
例えば、上記した回収耐火性骨材の再生方法における研磨処理や磁選処理の各工程においては、その処理の最中に、空気中に微粉が舞うようになるところから、上記した集塵工程とは別に、それぞれの工程中において微粉を取り除くように雰囲気の吸引を行う操作も、適宜に採用されることとなる。
【実施例
【0077】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。なお、以下の記載に示す「%」及び「部」は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準である。また、以下の実施例及び比較例において、粉状物の平均粒子径、粉状物の分散液の光透過率、鋳型材料たるコーテッドサンド(CS)の含水分量、CSの磁着率、各CSを用いて鋳造した際の砂付着状況(CSの付着状況)、並びに、鋳物表面の表面粗さの測定乃至評価は、各々、以下のようにして行なった。
【0078】
(1)粉状物の平均粒子径
粉状物の平均粒子径について、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布測定装置(製品名:MT3200II)を用いて、粒度分布から、積算値50%の粒子径を平均粒子径(D50)として測定する。なお、実施例及び比較例で用いた粉状物について、上記測定装置を用いて平均粒子径を測定したところ、各メーカーの公表値との間の誤差が10%以内であったため、以下において、粉状物の平均粒子径はメーカーの公表値を示す。
【0079】
(2)粉状物の分散液の光透過率
先ず、水溶性無機粘結剤(水ガラス2号又は塩化ナトリウム)を固形分で30質量%含む水溶液からなるブランク液について、分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、商品名:U-2800)を用いて波長660nmの光の透過率を測定し、かかる透過率を100%に合わせる。次いで、ブランク液の100質量部に粉状物の5質量部を添加し、1分間撹拌して、分散液を調製する。かかる分散液を測定容器に入れ、静置してから15分が経過した後に、波長660nmの光の透過率を測定する。かかる測定を3回、実施し、その3回の測定値より算出される光透過率の平均値を、下記表1乃至表6において「分散液の光透過率」として示す。
【0080】
(3)CSの含水分量
水溶性無機粘結剤として水ガラスを用いた場合の、CSにおける含水分量(CSに含まれる水ガラスの固形分量に対する含水分量)を、以下の手順に従い、測定及び算出した。空焼して秤量したるつぼに、各CSを10g秤量して収容し、900℃にて1時間曝熱した後の質量減少量(%)を用いて、CS中の水分量(W1)を、下記の式(1)より算出する。なお、秤量は、小数点以下第4位まで計測する。次に、CSに対する水ガラスの固形分量(B1)を、下記の式(2)を用いて算出し、その後、CS中の水分量(W1)及びCSに対する水ガラスの固形分量(B1)より、水ガラスの固形分量に対する水分量(被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量:W2)を、下記の式(3)を用いて算出する。以上の如くして算出されたW2を、下記表1乃至表6において「含水分量」として示す。
W1=[(M1-M2)/M3]×100 ・・・(1)
[W1:CS中の水分量(%)、M1:焼成前のるつぼとCSの合計
質量(g)、M2:焼成後のるつぼとCSの合計質量(g)、M3
:焼成前のCSの質量(g)]
B1=[B2/(100+B2)]×(100-W1) ・・・(2)
[B1:CSに対する水ガラスの固形分量(%)、B2:砂の100
部に対して添加した水ガラスの固形分量(部)、W1:CS中の水
分量(%)]
W2=(W1/B1)×100 ・・・(3)
[W2:被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量(
%)、W1:CS中の水分量(%)、B1:CSに対する水ガラス
の固形分量(%)]
【0081】
(4)CSの磁着率
乾態のCSについては、その乾態の状態にあるCSより100gを取り出して、試料とした。一方、湿態のCSについては、CSを乾燥器内にて110℃で30分間、保持した後、乾燥したCSを解して、その解したものより100gを取り出して、試料とした。取り出した試料を、5000ガウスの磁石に対して付着させ、磁石に付着した試料の量より、試料(CS)の磁着率を下記の計算式より算出した。
磁着率(%)=[付着した質量(g)]/[試料量(g)]×100
【0082】
(5)CSの付着状況の評価
まず、図1に示される様に、予め常温自硬性砂で作製された、上部に注湯注入口2と下部に中子の幅木固定部4を有する半割れ中空主型6(キャビティ直径:6cm、高さ:6cm)の内に、各々のCSを用いて作成した幅木部8を有する円形無空中子10(直径:5cm、高さ:5cm)を、幅木固定部4で接着固定した後、更に半割れ中空主型6を相互に接着固定して、鋳造試験用砂型12を作製する。次に、この鋳造試験用砂型12の注湯注入口2からアルミニウム合金溶湯(温度710±5℃)を注湯し、凝固せしめた後、主型6を壊して、図2に示す円筒の鋳物16を取り出す、そして室温になったところで、旋盤などを用いて鋳物を中の中子ごと半分に切断する。その後、中子部分を取り除き鋳物への中子砂(CS)の付着状況を目視にて確認を行った。なお、本発明においては、△及び○の評価を合格とする。各CSについての評価結果を、表1乃至表4において「鋳造後砂付着状況」として示す。
○:砂の付着が全く見られなかった。
△:鋳物表面の一部に砂の付着が見られた。
×:鋳物表面の全面に亘って砂の付着が見られた。
【0083】
(6)鋳物表面の表面粗さの評価
上記「(5)CSの付着状況の評価」に従って砂付着状況を確認した鋳物について、その表面の粗さを、目視及び指で触れた際の感触により、以下の基準に従って評価した。なお、鋳物表面に砂(CS)が付着している場合には、その付着した砂(CS)を真鍮ブラシ等で除去した後の鋳物の表面について、評価した。本発明においては、△及び○の評価を合格とする。
○:目視で認められる凹凸がほぼ無く、且つ、指先に引っかかりを感じ
ない。
△:目視で多少の凹凸は認められるが、指先に引っかかりを感じない。
×:目視で大きな凹凸が認められ、且つ、指先に引っかかりを感じる。
【0084】
-湿態CSの製造例1-
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#60(商品名、花王クエーカー株式会社製)と、水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、市販品の2号ケイ酸ナトリウム(商品名、富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.5、固形分:41.3%)と、鉄含有化合物たる磁鉄鉱の粉状物(球状、平均粒子径:0.25μm)とを準備した。骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.0部(固形分:0.41部)に相当する量の水ガラスに対して、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.125部に相当する量の磁鉄鉱の粉状物を添加し、混合して、液状混合物とした後、骨材(ルナモス#60)の100部を常温のまま、品川式万能撹拌機(5DM-r型、株式会社ダルトン製)に投入し、更に、先に調製した液状混合物(水ガラス+磁鉄鉱の粉状物)を撹拌機内に投入して、3分間の混練を行ない、均一になるまで撹拌混合した。その後、撹拌機内より混和物を取り出すことにより、骨材、水ガラス及び磁鉄鉱の粉状物の混和物からなる、湿態の鋳型材料(コーテッドサンド):CS1を得た。得られたCS1の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0085】
-湿態CSの製造例2-
磁鉄鉱の粉状物の添加量を0.25部としたこと以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS2を得た。得られたCS2の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0086】
-湿態CSの製造例3-
磁鉄鉱の粉状物の添加量を0.50部としたこと以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS3を得た。得られたCS3の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0087】
-湿態CSの製造例4-
磁鉄鉱の粉状物の添加量を1.00部としたこと以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS4を得た。得られたCS4の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0088】
-湿態CSの製造例5-
磁鉄鉱の粉状物として、球状を呈し、平均粒子径が0.10μmであるものを用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS5を得た。得られたCS5の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0089】
-湿態CSの製造例6-
磁鉄鉱の粉状物として、球状を呈し、平均粒子径が3.0μmであるものを用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS6を得た。得られたCS6の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0090】
-湿態CSの製造例7-
磁鉄鉱の粉状物として、八面体形状を呈し、平均粒子径が0.30μmのものを用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS7を得た。得られたCS7の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0091】
-湿態CSの製造例8-
磁鉄鉱の粉状物に代えて、フェライトの粉状物(針状、平均粒子径:φ0.2×1.0μm)を用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS8を得た。得られたCS8の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0092】
-湿態CSの製造例9-
磁鉄鉱の粉状物に代えて、磁鉄鉱及びフェライトの何れにも該当しない酸化鉄の粉状物(針状、平均粒子径:φ0.08×0.8μm)を用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS9を得た。得られたCS9の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0093】
-湿態CSの製造例10-
上記製造例3において、さらに市販品の陰イオン性界面活性剤(商品名:オルフィンPD-301、日信化学工業株式会社製)を、下記表2に示す割合にて添加したこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS10を得た。得られたCS10の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0094】
-湿態CSの製造例11-
上記製造例3において、さらに市販品の非イオン性界面活性剤(商品名:オルフィンE1004、日信化学工業株式会社製)を、下記表2に示す割合にて添加したこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS11を得た。得られたCS11の含水分量を測定したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0095】
-湿態CSの製造例12-
耐火性骨材としての、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#60(商品名、花王クエーカー株式会社製)、鉄含有化合物たる磁鉄鉱の粉状物(球状、平均粒子径:0.25μm)、更には、水溶性無機粘結剤たる塩化ナトリウム(塩化Na)を水に溶かして、固形成分(濃度)が20質量%である塩化ナトリウム水溶液を、準備した。そして、骨材(ルナモス#60)を常温のまま、品川式万能攪拌機(5DM-r型、株式会社ダルトン製)に投入し、更に、塩化ナトリウム水溶液を、骨材(ルナモス#60)の100部に対して3.0部(固形成分:0.6部)の割合にて、磁鉄鉱の粉状物を、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.50部の割合にて、撹拌機内に添加した。ここで、磁鉄鉱の粉状物は、予め塩化ナトリウム水溶液に混合した状態で添加した。かかる添加の後、撹拌機内にて3分間の混練を行ない、均一になるまで撹拌混合した。その後、撹拌機内より混和物を取り出すことにより、骨材、塩化ナトリウム及び磁鉄鉱の粉状物の混和物からなる、湿態の鋳型材料:CS12を得た。得られたCS12の含水分量を算出したところ、塩化ナトリウム水溶液の固形分量の79質量%、換言すれば、CSに含まれる塩化ナトリウム(固形分)の79質量%、に相当する量であった。
【0096】
-湿態CSの製造例13-
上記製造例1において、磁鉄鉱の粉状物を使用しなかったこと以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS13を得た。得られたCS13の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0097】
-湿態CSの製造例14-
磁鉄鉱の粉状物として、球状を呈し、平均粒子径が160.2μmであるものを用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS14を得た。得られたCS14の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0098】
-湿態CSの製造例15-
磁鉄鉱の粉状物として、球状を呈し、平均粒子径が106.5μmであるものを用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS15を得た。得られたCS15の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0099】
-湿態CSの製造例16-
磁鉄鉱の粉状物に代えて、酸化銅の粉状物(不定形、平均粒子径:32.1μm)を用いたこと以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、湿態の鋳型材料:CS16を得た。得られたCS16の含水分量を算出したところ、水ガラスの固形分量の140質量%に相当する量であった。
【0100】
-鋳型の造型例I(実施例1~12、比較例1~4)-
上記した各手順に従って製造されたCS1~16(温度:20℃)を、150℃に加熱された成形金型内に充填した後、成形金型内で保持し、かかる成形型内に充填されたCSを各々、固化(硬化)させることにより、円形無空中子の試験体(φ50×50cm)として用いられる鋳型を、作製した。なお、実施例1~12、比較例1~4の各々に係る鋳型(試験体)を作製する際に使用したCSは、下記表1及び表2に示す通りである。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
かかる表1及び表2の結果から明らかなように、本発明に係る湿態の鋳型材料(CS:コーテッドサンド)を用いて得られる鋳型においては、それを用いて製造される鋳物(鋳造製品)に対する鋳型材料(CS:コーテッドサンド)の付着が、効果的に抑止されることが認められる。
【0104】
次いで、本発明に従う乾態のコーテッドサンド(CS)を製造し、湿態のCSと同様の試験を行なった。
【0105】
-乾態CSの製造例17-
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#60(商品名、花王クエーカー株式会社製)と、水溶性無機粘結剤たる水ガラスとして、市販品の2号ケイ酸ナトリウム(商品名、富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.5、固形分:41.3%)と、鉄含有化合物たる磁鉄鉱の粉状物(球状、平均粒子径:0.25μm)とを準備した。骨材(ルナモス#60)の100部に対して1.0部(固形分:0.41部)に相当する量の水ガラスに対して、骨材(ルナモス#60)の100部に対して0.50部に相当する量の磁鉄鉱の粉状物を添加し、混合して、液状混合物とした後、約130℃に加熱した骨材(ルナモス#60)の100部をワールミキサー(遠州鉄工製)に投入し、更に、先に調製した液状混合物(水ガラス+磁鉄鉱の粉状物)をミキサー内に投入して、3分間の混練を行ない、水ガラスに含まれる水分を蒸発せしめると共に、砂粒塊が崩壊するまで撹拌混合した。その後、ミキサー内より砂粒を取り出すことにより、骨材の表面に、水ガラスと鉄含有化合物の粉状物を含む被覆層が形成されてなる、乾態の鋳型材料(コーテッドサンド):CS17を得た。得られたCS17の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の32質量%に相当する量であった。
【0106】
-乾態CSの製造例18-
上記製造例17において、さらに市販品の陰イオン性界面活性剤市販品(商品名:オルフィンPD-301、日信化学工業株式会社製)を、下記表3に示す割合にて添加したこと以外は、上記製造例17と同様の手順に従って、乾態の鋳型材料:CS18を得た。得られたCS18の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の34質量%に相当する量であった。
【0107】
-乾態CSの製造例19-
上記製造例17において、磁鉄鉱の粉状物を使用しなかったこと以外は、上記製造例17と同様の手順に従って、乾態の鋳型材料:CS19を得た。得られたCS19の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の32質量%に相当する量であった。
【0108】
-乾態CSの製造例20-
磁鉄鉱の粉状物として、球状を呈し、平均粒子径が106.5μmであるものを用いたこと以外は、上記製造例17と同様の手順に従って、乾態の鋳型材料:CS20を得た。得られたCS20の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の34質量%に相当する量であった。
【0109】
-鋳型の造型例II(実施例13~14、比較例5~6)-
上記した各手順に従って製造されたCS17~20(温度:20℃)を、110℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、更に0.05MPaのゲージ圧力の下で、温度:99℃の水蒸気を4秒間吹き込み、成形金型内に充填したコーテッドサンド(CS)相に通気せしめた。次いで、そのような水蒸気の通気が終了した後、0.03MPaのゲージ圧力の下で、温度150℃の熱風を2分間吹き込み、成形金型内に充填されたCSを固化(硬化)させることにより、円形無空中子の試験体(φ50×50cm)として用いられる鋳型を、作製した。なお、実施例13~14、比較例5~6の各々に係る鋳型(試験体)を作製する際に使用したCSは、下記表3に示す通りである。
【0110】
【表3】
【0111】
-鋳型の造型例III (実施例15~16、比較例7~8)-
上記した各手順に従って製造されたCS17~20(温度:20℃)を常温のまま、品川式万能撹拌機(5DM-r型、株式会社ダルトン製)に投入し、更に、水を、CSの100部に対して1.0部の割合にて、撹拌機内に添加し、撹拌することにより、湿態化させたCS(鋳型材料)を準備した。撹拌機内より取り出した湿態状のCSを、150℃に加熱された成形金型内に充填した後、成形金型内で保持し、かかる成形型内に充填されたCSを各々、固化(硬化)させることにより、円形無空中子の試験体(φ50×50cm)として用いられる鋳型を、作製した。なお、実施例15~16、比較例7~8の各々に係る鋳型(試験体)を作製する際に使用したCSは、下記表4に示す通りである。
【0112】
【表4】
【0113】
上記表3及び表4の結果より明らかなように、本発明に係る乾態の鋳型材料(CS:コーテッドサンド)についても、それを用いて得られる鋳型にて鋳造を行なった際に、鋳物(鋳造製品)に対する鋳型材料(CS)の付着が効果的に抑止されることが認められる。特に、実施例13~14に係る鋳型(試験体)は、水蒸気の通気によって湿態化された鋳型材料(CS)にて造型されたものであり、また、実施例15~16に係る鋳型(試験体)は、水の添加によって湿態化された鋳型材料にて造型されたものであり、実施例13~14と実施例15~16とでは異なる造型方法が採用されているところ、何れの造型方法によって得られた鋳型(試験体)にあっても、鋳物(鋳造製品)に対する鋳型材料(CS)の付着が効果的に抑止されることが認められるのである。
【0114】
-鋳型の造型例IV(実施例17~18、比較例9~10)-
CS3、CS7、CS10、CS11、CS13及びCS15の各々を用いて、上記した「鋳型の造型例I」の手順に準じて、試験体たる鋳型(幅:2.54cm×高さ:2.54cm×長さ:20cm)を作製し、得られた鋳型(試験体)について、以下に示す手法に従って抗折強度の測定及び充填率(%)の測定を行なった。その測定結果を下記表5に示す。
【0115】
(7)抗折強度
各CSを用いて得られた鋳型(試験体)について、その破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製;デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて、測定する。そして、この測定された破壊荷重を用いて、抗折強度を、下記の計算式より算出する。
抗折強度(N/cm2 )=1.5×(L×W)/(a×b2
[L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(N)、a:試験体の幅(
cm)、b:試験体の厚み(cm)]
【0116】
(8)充填率
各CSを用いて得られた鋳型(試験体)について、骨材の真比重に対する各鋳型(試験体)の比重(質量を試験片の体積で除して算出する)の割合を、百分率で算出する。
充填率(質量%)
={[試験体の質量(g)/試験体の体積(cm3 )]
/骨材の真比重(g/cm3 )}×100
【0117】
【表5】
【0118】
表5の結果からも明らかなように、本発明に従う鋳型材料を用いて得られる鋳型は、優れた鋳型強度を発揮するものであり、また、充填性においても優れたものであることが、認められるのである。
【0119】
-再生CSの製造例及び鋳型の造型例V(実施例21~22、比較例11)-
図1に示される、予め常温自硬性砂で作製された、上部に注湯注入口2と下部に中子の幅木固定部4を有する半割れ中空主型6(キャビティ:直径6cm×高さ6cm)の内部に、上記した鋳型材料のうちの3種類(CS3、CS10、CS13)の各々を用いて作製した、幅木部8を有する円形無空中子10(直径5cm×高さ5cm)を、幅木固定部4で接着固定した後、更に半割れ中空主型6を相互に接着固定して、鋳造試験用砂型12を作製した。なお、鋳造時の湯漏れを防ぐために、接着した主型を、万力等でクランプするか、主型の周囲を針金で巻くことにより、しっかりと固定した。そして、この鋳造試験用砂型12の注湯注入口2から、アルミニウム合金溶湯(温度710±5℃)を注湯し、凝固せしめた後、主型6を壊して、図2に示す円筒の鋳物16を取り出し、室温になったところで、エアハンマーを用いて中子を分解して、中子の鋳型片を回収した。そして、回収した鋳型片を、その大きさ(最大長さ)が3mm以下になるまで解砕した。
【0120】
かかる解砕された鋳型片(水ガラスが固着した耐火性骨材)の500部を、研磨機としてのボールミルに入れて、30分間、研磨処理を行い、次に、磁選処理として、5000ガウスの磁石を用いて、上記の研磨処理後の耐火性骨材から、磁石に引き寄せられる粉状物や粒状物を取り除いた。その後、集塵工程として、280メッシュの篩の上部に集塵機を備え、篩分け中に下からエアを流すことにより微粉分を除去して、再生した耐火性骨材を得た。以下、1)CS3からなる中子を用いて上記の鋳造を行い、その後に回収した中子の鋳型片より再生された耐火性骨材を再生骨材aと、2)CS10からなる中子を用いて上記の鋳造を行い、その後に回収した中子の鋳型片より再生された耐火性骨材を再生骨材bと、3)CS13からなる中子を用いて上記の鋳造を行い、その後に回収した中子の鋳型片より再生された耐火性骨材を再生骨材cと、各々、示す。そして、1)再生骨材aを用いて、前記したCS3と同様な製造方法に従って湿態の鋳型材料:再生CS3’を、2)再生骨材bを用いて、前記したCS10と同様な製造方法に従って湿態の鋳型材料:再生CS10’を、3)再生骨材cを用いて、前記したCS13と同様な製造方法に従って湿態の鋳型材料:再生CS13’を、それぞれ得た。
【0121】
得られた再生CS3’、再生CS10’及び再生CS13’を用いて、上記した「鋳型の造型例I」の手順に準じて、試験体たる鋳型(幅:2.54cm×高さ:2.54cm×長さ:20cm)を作製し、得られた鋳型(試験体)について、上記した「(7)抗折強度の測定」に示す手法に従い、抗折強度の測定を行った。そして、1)CS3の抗折強度(実施例17の抗折強度)と、CS3の再生骨材(再生骨材a)を用いて得られた再生CS3’の抗折強度より、2)CS10の抗折強度(実施例19の抗折強度)と、CS10の再生骨材(再生骨材b)を用いて得られた再生CS10’の抗折強度より、3)CS13の抗折強度(比較例9の抗折強度)と、CS13の再生骨材(再生骨材c)を用いて得られた再生CS13’の抗折強度より、下記式に基づいて、強度発現率(%)を算出した。その結果を、下記表6に示す。
強度発現率(%)
=[CSの抗折強度(N/cm2
/再生CSの抗折強度(N/cm2 )]×100
【0122】
【表6】
【0123】
かかる表6における結果から明らかな如く、本発明に従う鋳型材料より再生された耐火性骨材を用いてなる鋳型材料(再生CS3’、再生CS10’)については、強度発現率が高くなることが認められた(実施例21~22)。これに対して、鉄含有化合物の粉状物が使用されていない鋳型材料より再生された耐火性骨材を用いた鋳型材料(再生CS13’)にあっては、強度発現率が低く、回収した耐火性骨材を効率よく再生することが困難であることが、確認されたのである。
【符号の説明】
【0124】
2 溶湯注入口 4 幅木固定部
6 主型 8 幅木部
10 円形無空中子 12 鋳造試験用鋳型
14 廃中子排出口 16 鋳物
図1
図2