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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】携帯型装置の駆動システム
(51)【国際特許分類】
   A46B 7/10 20060101AFI20220722BHJP
   A46B 13/02 20060101ALI20220722BHJP
   A61C 17/34 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A46B7/10 Z
A46B13/02
A61C17/34 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019538644
(86)(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018051068
(87)【国際公開番号】W WO2018134225
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】S2017/0021
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IE
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ダイアモンド,ジーン
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507162(JP,A)
【文献】実開平05-032771(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 7/10
A46B 13/02
A61C 17/22-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なヘッドと、ドライブシャフトと、前記ドライブシャフトから前記回転可能なヘッドに駆動力を伝達するように動作可能なカップリングと、を備え、
前記カップリングは、前記回転可能なヘッドの閾値トルクが超過された場合に、前記ドライブシャフトと前記回転可能なヘッドとの間で前記駆動力の伝達を自動的に解除するように構成され
前記カップリングは、前記ドライブシャフトと作動可能に連携する少なくとも1つの駆動歯及び前記回転可能なヘッドと作動可能に連携して共働する従動歯を有するギアセットを有し、
前記少なくとも1つの駆動歯は、前記駆動力の伝達の解除を容易にするために弾性的に変形可能であり、
前記少なくとも1つの駆動歯は、少なくとも1つの弾性的に変形可能な指状物を有し、
前記少なくとも1つの弾性的に変形可能な指状物は、金属ワイヤを有する携帯型装置の駆動システム。
【請求項2】
請求項に記載の駆動システムであって、
前記回転可能なヘッドは、中心軸によって接合されて対向する半体を有し、
前記従動歯は、前記回転可能なヘッドの前記対向する半体の一方の半体に設けられている駆動システム。
【請求項3】
請求項に記載の駆動システムであって、
前記対向する半体の各半体は、端面を有し、
一対の前記端面は、前記対向する半体間で溝を画定するように互いに間隔を空けて対向し、
前記従動歯は、前記半体の一方の前記端面に設けられている駆動システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動システムであって、
前記少なくとも1つの弾性的に変形可能な指状物は、少なくとも1つの対向する一対の弾性的に変形可能な指状物を有する駆動システム。
【請求項5】
請求項に記載の駆動システムであって、
前記対向する一対の弾性的に変形可能な指状物は、一対の自由端が互いに隣接して位置するように折り畳まれた単一の長さの材料から形成されている駆動システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の駆動システムであって、
前記金属ワイヤは、直径が1mm未満ある駆動システム。
【請求項7】
請求項に記載の駆動システムであって、
前記少なくとも1つの対向する一対の弾性的に変形可能な指状物は、二対の対向する弾性的に変形可能な指状物を有る駆動システム。
【請求項8】
請求項に記載の駆動システムであって、
前記従動歯は、前記回転可能なヘッドの前記対向する半体の一方の前記端面から突出するペグを有する駆動システム。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の駆動システムであって、
前記ドライブシャフトは、前記回転可能なヘッドに隣接する中空端を有し、前記中空端から前記少なくとも1つの駆動歯が突出している駆動システム。
【請求項10】
請求項に記載の駆動システムであって、
前記ドライブシャフトは、直径が5mm未満ある駆動システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の駆動システムであって、
前記回転可能なヘッドは、実質的に球状である駆動システム。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の駆動システムであって、
前記回転可能なヘッドは、前記回転可能なヘッドから外側に延びて配列されている剛毛を有する駆動システム。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の駆動システムを備える電動歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシ、スクリュドライバ、研磨装置等の携帯型装置のための駆動システムに関し、特に、駆動システムの回転可能なヘッドに一定の制限値を超える負荷がかかった場合に、自動的に解除し、そのような負荷がかかった場合に駆動システム及び、何よりも駆動システムとヘッドとの間のギア装置への損傷を防止する駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型駆動システムは、歯ブラシ、スクリュドライバ、研磨装置、研削盤等の様々な小さな電気器具装置で使用されている。携帯型駆動システムは、同時に又は独立して(特許EP2142138B1に概説されるように)のいずれかで、1を超える方向にヘッドのコンポーネントの動きを誘導してもよく、携帯型駆動システムは、可逆動作(時計回り及び反時計回りの動作)を行えてもよい。
【0003】
駆動システムの携帯型の特質に起因して、システム内のコンポーネントは、可能な限り小さく、可能な限り軽い傾向にある。そのため、システム内のコグ又はギアの歯等のアイテムは、極めて小さいことが期待され、それに起因して強度が制限される。モータの能力も、携帯型駆動システムの使用目的に適するように選択され、例えば、歯ブラシに適した携帯型駆動システムは、スクリュドライバに適した携帯型駆動システムよりも動力が小さくてもよい。
【0004】
もし、ヘッドの動きに対する障害(例えば、歯で歯ブラシを噛み締める又はスクリュの過度の締め付け)があるにも拘わらず、シャフトとヘッドとの間の駆動力の伝達が継続した場合、携帯型駆動システム内の個々のコンポーネント(コグの歯等)に損傷を引き起こしかねない。携帯型駆動システムは、多くの場合、実質的に閉鎖型システムであるため、小さなパーツの交換作業は、実用的でないかもしれず、内部コンポーネントの故障は、装置全体の寿命の終わりを示唆するものかもしれない。障害があるにも拘わらず、駆動力の伝達を長引かせることは、携帯型駆動システムに動力を供給するモータにも損傷を引き起こしかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、本発明の目的は、ヘッドの動きに対する障害が、結果的に閾値トルクの超過となる場合に、駆動システムコンポーネントへの損傷を回避するため、ヘッドに駆動力を伝達することを自動的に解除できるようにする解決手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によれば、回転可能なヘッドと、ドライブシャフトと、前記ドライブシャフトから前記ヘッドに駆動力を伝達するように動作可能なカップリングと、を備え、前記カップリングは、前記ヘッドの閾値トルクが超過された場合に、前記ドライブシャフトと前記ヘッドとの間で前記駆動力の伝達を自動的に解除するように構成されている携帯型装置の駆動システムが提供される。
【0007】
好適には、前記カップリングは、前記ドライブシャフトと作動可能に連携する少なくとも1つの駆動歯及び前記ヘッドと作動可能に連携して共働する従動歯を有するギアセットを有し、前記少なくとも1つの駆動歯は、前記駆動力の伝達の解除を容易にするために弾性的に変形可能である。
【0008】
好適には、前記ヘッドは、中心軸によって接合されて対向する半体を有し、前記従動歯は、前記ヘッドの一方の半体に設けられている。
【0009】
好適には、各半体は、端面を有し、一対の前記端面は、前記半体間で溝を画定するように互いに間隔を空けて対向し、前記従動歯は、前記半体の一方の前記端面に設けられている。
【0010】
好適には、前記ギアセットは、ペグギアを有する。
【0011】
好適には、前記少なくとも1つの駆動歯は、弾性的に変形可能な指状物を有する。
【0012】
好適には、前記少なくとも1つの駆動歯は、対向する一対の弾性的に変形可能な指状物を有する。
【0013】
好適には、前記一対の指状物は、一対の自由端が互いに隣接して位置するように折り畳まれた単一の長さの材料から形成されている。
【0014】
好適には、前記指状物又は各指状物は、金属ワイヤを有する。
【0015】
好適には、前記金属ワイヤは、直径が1mm未満、好適には、0.7mm未満、最も好適には、0.5mmである。
【0016】
好適には、前記少なくとも1つの駆動歯は、二対の対向する弾性的に変形可能な指状物を有し、前記二対は、オフセットしている。
【0017】
好適には、前記従動歯は、前記ヘッドの前記半体の一方の前記端面から突出するペグを有する。
【0018】
好適には、前記ドライブシャフトは、前記ヘッドに隣接する中空端を有し、前記中空端から前記少なくとも1つの駆動歯が突出している。
【0019】
好適には、前記ドライブシャフトは、直径が5mm未満、好適には、4mm未満、最も好適には、2.5mm未満である
【0020】
好適には、前記ヘッドは、実質的に球状である。
【0021】
好適には、前記ヘッドは、前記ヘッドから外側に延びて配列されている剛毛を有する。
【0022】
本発明の第2態様によれば、先行する請求項に記載の駆動システムを備える電動歯ブラシが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
次に、本発明は、添付図面を参照して説明される。
図1】本発明の実施形態による携帯型装置の駆動システムの概略図を示す。
図2図1に示される携帯型装置の駆動システムの端面図を示す。
図3図1及び図2に示される携帯型装置の駆動システムのドライブシャフト形成部の自由端の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照すると、特に好適な実施形態では、電動歯ブラシ(不図示)に組み込まれる携帯型装置の駆動システム(概して10として示される)が示されているが、以下の説明から、駆動システム10は、1以上のドライブシャフト等を通して様々な駆動モードが与えられ得る他の機械化ツールに使用できることが理解されるであろう。
【0025】
示される実施形態では、駆動システム10は、実質的に球状であるが、任意の他の適切な形状であり得るヘッド12を備え、ヘッド12は、以下に説明されるようにドライブシャフト14からヘッド12に駆動力を伝達するカップリング16の作用を通して、ヘッド12の回転を生じさせるように動作可能なドライブシャフト14の自由端に隣接して取り付けられる。
【0026】
使用に際して、電動歯ブラシ又は他の機械化ツールは、ヘッド12の回転を生じさせるためにドライブシャフト14の高速回転を生じさせるよう調整された電気モータ(不図示)付きであることが望ましく、電気モータは、ドライブシャフト14の対向する端部と作動可能に連携している。しかしながら、その他の適切な駆動源が、電気モータの代わりに使用されてもよいことが理解されるだろう。電動歯ブラシ(不図示)又は他の携帯型ツール若しくは装置は、任意の必要となるセンサ、制御回路等と共に電気モータ及び必要なバッテリ(不図示)が配置されるハンドル部を有することが望ましい。
【0027】
示される実施形態では、ヘッド12は、中心に延びている軸22により互いに固定されている一対の半球、すなわち第1半球18及び第2半球20を有する。軸22は、示される実施形態では、ヘッド12の回転軸を画定する。各半球18及び20は、駆動システム10が電動歯ブラシに組み込まれる際に、その表面に配列された剛毛26を有する湾曲した外表面24を有する。半球18及び20は、使用に際して半球18と20との間に溝30を画定するように互いに対向して間隔を空けた関係性を持って設けられる平面的な端面28をさらに有する。使用に際し、この溝30は、ドライブシャフト14の回りに同心円状に配置される中空軸(不図示)に固定されてもよい円周方向に延びているリング(不図示)によって外部から隔絶されていてもよく、リングはまた、半球18及び20のベアリング及び任意でドライブシャフト14の縦軸と実質的に同軸の第2回転軸の回りにヘッド12を回転させる手段として機能してもよい。
【0028】
ドライブシャフト14からヘッド12に駆動力を伝達するためのカップリング16は、ドライブシャフト14の中空端34から延びている駆動歯32及びヘッド12の第1半球18のみの端面28から突出する対応する従動歯36を有するギアセットを有する。従動歯36は、端面28から片持ち突起をそれぞれ形成するペグ又はピンのような筒状ロッドであり、一方、駆動歯32は、従動歯36に対して直角に向けられて、ドライブシャフト14の中空端34に隣接する従動歯36とかみ合うように位置付けられる細長い指状物である。この配置は、一般に一連のペグギア(pegged gears)と呼ばれる。単独の駆動歯が提供されることがあり得るものの、駆動システム10は、図1及び図2に示されるように、少なくとも一対の駆動歯32を備えることが望ましく、90度でオフセットされたこのような二対も想定され、図3に示されている。各対向する一対の駆動歯32は、弾性的に変形可能なワイヤ等の単一の長さの材料から形成され、対向する自由端が一対の駆動歯32を形成するようにほぼ半分で折り畳まれることが望ましく、折り畳まれたワイヤ長の端部は、ドライブシャフト14の中空端34内に挿入され、適切に固定される。駆動歯32は、寸法及び材料の選択の組み合わせによって弾性的に変形可能となるように調整され、適切な閾値力がそこにかかると、互いに向けて放射状に内方へ変形するように構成されている。一旦、力が取り除かれると、弾性的に変形可能な駆動歯32は、その互いに間隔を空けた本来の構成に戻る。
【0029】
このように、使用に際し、ドライブシャフト14は、例えば、上記のような電気モータを用いてその縦軸回りに回転するため、その結果、溝30内で駆動歯32の回転を生じさせる。駆動歯32が従動歯36とかみ合うにつれて、これは軸22により定義される回転軸回りのヘッド12の回転となる。駆動歯32及び従動歯36の数は、ヘッド12の適切な回転速度を提供するように選択されてもよい。しかしながら、万が一、ヘッド12に外部の減速力がかかった場合、例えば、ユーザが歯でヘッド12を噛み締めたり、ユーザの指でヘッド12を挟んで握ったりした場合、駆動システム10は、駆動システム10の小さな動作コンポーネント、特に、駆動歯32及び従動歯36への損傷を防止するため、ドライブシャフト14からヘッド12への駆動力の伝達を解除するように設計されている。
【0030】
このように、このようなヘッド12への閾値トルクが超過された場合は、停止したヘッド12にも拘わらずドライブシャフト14が回転を継続できるように、駆動歯32が停止した従動歯36を通過してスリップできるようにするため、弾性的に変形可能な駆動歯32は、かみ合っている従動歯36と当接しつつ、内方へ変形し、それによって、これらコンポーネントへの損傷を回避する。この機能は、携帯型電動歯ブラシ等の内部で使用されるために適切に小さなサイズでなくてはならない、顕著に縮小された寸法のコンポーネントの利用を容易にする。例えば、これにより、ドライブシャフト14は、直径が5mm未満、好適には、直径が2.5mm未満の領域内にあることができる。示される好適な実施形態では、駆動歯32は、直径が0.5mmである鋼鉄ワイヤから形成されているが、特に、駆動歯32が、ドライブシャフト14とヘッド12との間で駆動力の伝達を解除するように変形する閾値トルクを調節するために、駆動歯32及び従動歯36の両者に対して選択されるサイズ、形状及び材料は、必要に応じて変えてもよいことが理解されるであろう。従動歯36は、駆動歯32と共に又はその代わりで弾性的に変形可能な材料から形成され得ることも理解されるであろう。
【0031】
そのため、本発明の駆動システム10は、その設計が、ヘッドの回転に対する外部障害が起こった場合に、小さく、相対的に繊細なギアへの損傷を防止する、小径のドライブシャフトからブラシヘッド等へ駆動力を伝達する手段を提供することが理解されるであろう。
図1
図2
図3