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  • 特許-付加層製造のための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】付加層製造のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/85 20210101AFI20220722BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20220722BHJP
   B22F 10/364 20210101ALI20220722BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20220722BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20220722BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220722BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220722BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220722BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220722BHJP
【FI】
B22F10/85
B22F10/28
B22F10/364
B22F10/37
B29C64/153
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019543060
(86)(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 GB2018000019
(87)【国際公開番号】W WO2018146441
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】1702129.6
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522050332
【氏名又は名称】リライアンス アールジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・トーマス・リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】イアン・レイドラー
(72)【発明者】
【氏名】リアム・ブラント
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0034606(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015201775(DE,A1)
【文献】特表2016-540109(JP,A)
【文献】Additive Manufacturing,2016年08月16日,Vol.12,p.100-107
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/85
B22F 10/28
B22F 10/364
B22F 10/37
B29C 64/153
B29C 64/393
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加層製造の方法であって、
溶融可能な粉体材料の層を重なり合う関係に連続的に堆積させるステップと、
各堆積層にエネルギーを導入して前記層内の材料を選択的に融解させ、それによって前記融解させた材料をまとめて溶融させるとともに、下方の層のすでに溶融した材料に溶融させて、連続する断面層における三次元の固体物品を作製するステップと、
各層上に、その層内の材料の前記融解よりも前の時点と前記融解よりも後の時点との両方において、干渉縞を画定する構造光を投影するステップと、
前記投影の視点とは異なる視点から各層上の前記干渉縞を撮像し、それによって前記層の形状的特徴によって前記干渉縞の乱れを示すステップと、
前記撮像された干渉縞をそのような示された乱れに関して解析して、前記粉体材料の前記それぞれの層内の材料の前記融解よりも前にその層上に前記構造光が投影されたときのその層の欠陥、及び、前記それぞれの粉体材料層内の材料の前記融解よりも後にその層上に前記構造光が投影されたときのその層から形成された前記物品の断面層における欠陥を認識するステップと、
前記粉体材料層における欠陥を認識した場合に層堆積に対する是正処置を施し、前記物品断面層における欠陥を認識した場合には、次の粉末層に対するエネルギー導入に対する是正処置を施すステップとを含む方法。
【請求項2】
前記粉体材料層における欠陥を認識するために解析する前記ステップは、前記層の深さの局所的なばらつきを認識することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉体材料層の前記深さの前記認識される局所的なばらつきは、前記層における凹凸または前記層における空隙もしくは粉体が失われた領域の形のへこみを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉体材料層の前記深さの前記認識される局所的なばらつきは、前記層における凹凸または下から前記層内への突出に起因する変位の形の隆起を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記物品断面層における欠陥を認識するために解析する前記ステップは、前記断面層の深さの局所的なばらつきを認識することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記断面層の前記深さの前記認識される局所的なばらつきは、前記断面層の形成元となった前記粉体材料層における空隙もしくは粉体が失われた領域、または仕様に準拠していない前記断面層の生成によって生じるへこみを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記断面層の前記深さの前記認識される局所的なばらつきは、作製時の、前記断面層に垂直な方向への前記物品の膨張または仕様に準拠していない前記断面層の生成によって生じる隆起を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
解析する前記ステップは、デカルト座標を割り当てることによって認識される局所的なばらつきを特定するステップを含む、請求項2から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
解析する前記ステップは、前記撮像された干渉縞に干渉縞アルゴリズムを適用して畳み込まれた位相を取得し、前記畳み込まれた位相に位相アンラッピングアルゴリズムを適用して、真の位相を与える接続し直された位相を取得し、位相対高さモデルによって前記真の位相を処理して隆起高さまたはへこみ深さを与えるステップを含む、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記物品断面層における欠陥を認識するために解析する前記ステップは、所定の形状からの前記融解領域の形状の逸脱を認識することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
層堆積に是正処置を施す前記ステップは、粉体材料層を振動させて前記粉体材料層の前記粉体材料を再安定化するステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
層堆積に是正処置を施す前記ステップは、粉体材料層の上面の平滑化を繰り返すことを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
層堆積に是正処置を施す前記ステップは、粉体材料層に材料を追加するステップまたは前記粉体材料層から材料を除去するステップを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
層堆積に是正処置を施す前記ステップは、粉体材料層を置き換えるステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
層堆積に是正処置を施す前記ステップは、現在の粉体材料層に対して実施される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
層堆積に是正処置を施す前記ステップは、次の粉体材料層に対して実施される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
投影する前記ステップは、前記干渉縞を、選択的な融解が実施される前記粉体床層の領域と実質的に一致するように形成するステップを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
投影する前記ステップおよび撮像する前記ステップは、前記エネルギー導入から切り離された専用光学機器を使用することによって実施される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
エネルギーを各粉体材料層に導入する前記ステップは、電子ビームによって前記層を走査するステップを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加層製造のための方法および装置に関し、詳細には、製造プロセスの各局面を監視し、監視結果に応じてプロセスを処置するのを可能にし得る方法および装置に関する。
【0002】
追加層製造は、三次元の物品を形成することを目的として基板上に材料が選択的に層状に堆積されるプロセスである。このプロセスに使用される確立された技術には粉体床溶融結合があり、この場合、通常は金属またはプラスチックの粉体の薄い層が、レーザまたは電子ビームなどのエネルギー源によって選択的に融解される。粉体層の融解された領域は、物品の断面部分を形成し、一方、層内の未融解の粉体は、破棄され、通常、プロセスの終了時に再生される。各層が選択的に融解された後、新しい粉体の層が堆積され、次いで選択的に融解され、それによって、完成品は、融解されしたがって溶融された粉体から層ごとに作製される。
【0003】
電子ビームによる融解および溶融は、以前から使用されており、デカルト偏向システム内に配置された電磁偏向器による粉体層上への制御されたビーム偏向によって実施される。粉体層は、偏向電子機器用のアドレス指定可能なグリッドを形成するX/Y座標にマップされ、作製すべきパターンがこのグリッドに転写される。ビームは次いで、様々な長さの単純な線を使用して走査され、開始点および終了点によって画定される。
【0004】
溶融層の品質は、堆積させた粉体層の品質を含む多数の局面に依存する。粉体は、基板上に拡散され、その後、層ごとに製造が進むにつれて溶融材料の層になる。品質が保証された製造プロセスおよび完成品を実現するために、装置パラメータを監視するとともに、粉体床および溶融層を監視することが望ましい。プロセス監視は、たとえば、融解領域に関する気孔率情報を提供する高解像度可視スペクトルカメラによって行うことができる。さらに、製造後技法を使用して完成品を測定することができる。
【0005】
粉体堆積プロセスは、現在までのところ非定量的である。特に電子ビームによって融解が実施されるときにあらゆる工程内監視システムに課題が生じる。融解プロセスは、高温で行われ、製造場所周辺は、真空環境では周囲温度が約700℃の高温になり、この環境は、真空チャンバ内に確立され、電子ビームを伝搬させるのに必要である。さらに、粉体を融解させ溶融させると、粉体が蒸発し、その後蒸発した材料が、真空チャンバ内部の接近可能な任意の表面で再凝華する。チャンバ内部を保護する必要があるので、撮像システムの視線を制限するバッフルが配置され、視線を実現することができるときには、粉体に面する第1の光学要素が、凝固した粉体によって非常に急速に汚染され、特に金属粉体材料の場合には金属化することがある。電子ビーム装置における走査速度は高速であり、速度制限事象としては一般に、粉体堆積による速度制限事象がある。このステップの時間を延長する監視手順は、スループットの点で望ましくなく、プロセスを監視しかつ高速化するのを助ける何らかの方法が望ましい。
【0006】
このような条件の下で、監視システムは、溶融の前および/または後に、粉体層内の異常、たとえば、粉体密度のばらつき、粉体表面における長い範囲の変化、中程度の範囲の変化、および短い範囲の変化、凹凸、ならびに粉体の集塊などの表面形状のばらつきの有無を検査する必要がある。粉体リコータまたはスプレッダ、再コーティング速度および再コーティング深さによって生じ、たとえば、リコータの自然な振動に起因する表面形状の幾何学的不規則性は、実質的に顕著である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の主要な目的は、付加層製造の状況において、上述の種類のプロセスパラメータ、特に製造プロセスに関与する材料層の特性を監視するのを可能にする手段を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、リアルタイムに実行することができ、かつプロセス中の介入によって、特定された障害を解消すること、および/または製造が進むにつれて障害が生じるのを防止することを可能にする監視手順を考案することである。
【0009】
さらに別の目的は、電子ビームをエネルギー源として使用することによる製造に適合し、電子ビームの生成および走査に関連する高温および真空環境に特に適した監視手順およびシステムを付加層製造プロセスおよび装置に含めることである。
【0010】
本発明の他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、付加層製造の方法であって、溶融可能な粉体材料の層を重なり合う関係に連続的に堆積させるステップと、各堆積層にエネルギーを導入して層内の材料を選択的に融解させ、それによって融解させた材料をまとめて溶融させるとともに、下方の層のすでに溶融した材料に溶融させて、連続する断面層における三次元の固体物品を作製するステップと、各堆積層上に、その層内の材料の融解よりも前の時点と融解よりも後の時点との少なくとも一方において、干渉縞を画定する構造光を投影するステップと、投影の視点とは異なる視点から各層上の干渉縞を撮像し、それによって層の形状的特徴によって干渉縞の乱れを示すステップと、撮像された干渉縞をそのような示された乱れに関して解析して、粉体材料のそれぞれの層内の材料の融解よりも前にその層上に構造光が投影された場合にその層の欠陥を認識し、またはそれぞれの粉体材料層内の材料の融解よりも後にその層上に構造光が投影された場合にその層から形成された物品の断面層における欠陥を認識するステップと、粉体材料層における欠陥を認識した場合に層堆積に対する是正処置を施し、物品断面層における欠陥を認識した場合にはエネルギー導入に対する是正処置を施すステップとを含む方法が提供される。
【0012】
そのような方法は、付加層製造のために堆積された各粉体材料層の監視を、欠陥のある層形状に起因する様々な障害を示すのに有効な手順を使用する非接触計測によって実施することができ、その結果、示された障害の軽減または解消を製造中に、したがってリアルタイムに実施できる利点をもたらす。この方法は、個々の各層を、堆積させた粉体層における障害に対処する機会をもたらすために各層を融解する前に評価し、ならびに/または融解の質に関する問題に対処する機会をもたらすために融解の後に評価することができるように、各層に対して複数回の投影および撮像を実施するのを可能にする。厳密な光学機器、信頼できる画像処理ソフトウェア、および高速計算を利用して測定プロセスまたは監視プロセスの信頼性および精度を最適化する利点をもたらすことができる。
【0013】
粉体材料層における欠陥を認識するために解析するステップは好ましくは、層の深さの局所的なばらつきを認識することを含み、それによって、製造された物品が仕様から逸脱した主要な原因の1つを直ちに特定するのを可能にする。粉体材料層の深さのそのような認識される局所的なばらつきは、層における凹凸または層における空隙もしくは粉体が失われた領域の形のへこみならびに/あるいは層における凹凸または下から層内への突出に起因する変位の形の隆起を含めることができる。これらの種類のばらつきを認識すると、認識されたばらつきの性質および程度ならびに関連する層の所期の融解領域の内部または外部などの層におけるばらつきの位置に応じて、現在の粉体材料層または次の粉体材料層のいずれかに対して是正措置を施す決定を下すことが可能になる。
【0014】
同様に、物品断面層における欠陥を認識するために解析するステップは好ましくは、この場合も完成品の品質を損なう主要な原因である、断面層の深さの局所的なばらつきを認識することを含む。断面層の深さの認識される局所的なばらつきは、断面層の形成元となった粉体材料層における空隙もしくは粉体が失われた領域、または仕様に準拠していない断面層の生成によって生じるへこみ、ならびに/あるいは作製時の、断面層に垂直な方向への物品の膨張または仕様に準拠していない断面層の生成によって生じる隆起を含めることができる。物品断面層におけるこれらの種類のばらつきを認識すると、物品の進展を監視できるだけでなく、必要に応じて物品の進展に対して処置を施すことができるように、認識されたばらつきの性質、程度、および位置に応じて、現在の断面層または次の断面層に対する是正処置に関して決定を下すことができる。
【0015】
好ましくは、解析するステップは、デカルト座標を割り当てることによって認識される局所的なばらつきを特定するステップを含む。付加層製造装置の制御において広く使用されているデカルト座標を障害位置に割り当てることによって、是正措置が必要な場所を簡単にかつ迅速に示し、場合によっては、すでに座標ベースの制御を受けている装置構成要素の動作をただちに補正することができる。
【0016】
解析するステップは好ましくは、撮像された干渉縞に干渉縞アルゴリズムを適用して畳み込まれた位相を取得し、畳み込まれた位相に位相アンラッピングアルゴリズムを適用して、真の位相を与える接続し直された位相を取得し、位相対高さモデルによって真の位相を処理して隆起高さまたはへこみ深さを与えるステップを含む。これらの目的のためのアルゴリズムは、公知であり、形状特徴によって層表面の理想的な平面度から逸脱する程度を明確に特徴付けする絶対高さ/深さ寸法を与えることができる。物品断面層における欠陥を認識するために解析するステップは、追加または代替として、所定の形状からの融解領域の形状の逸脱を認識し、したがって、融解されなかった領域および融解すべきではなかった領域を認識することを含み、この場合、前者の領域は、現在の層に対する処置によって是正することができ、後者の領域は、次の層に対する是正措置を必要とし、場合によっては製造された物品の仕上げ加工を必要とする。
【0017】
粉体層堆積に是正処置を施すことに関する限り、是正処置は、粉体材料層を振動させてこの層の粉体材料を再安定化すること、粉体材料層の上面の平滑化を繰り返すこと、粉体材料層に材料を追加することまたは粉体材料層から材料を除去すること、場合によっては粉体材料層を全体的に置き換えることのうちの1つまたは複数によって行うことが可能である場合がある。これらの種類の手順からの選択は、それぞれの認識された欠陥および最も適切な対処に応じて行うことができる。同様に、前述のように、層堆積に是正処置を施すステップは、特に認識された欠陥の性質に応じて、現在の粉体材料層および/または次の粉体材料層に対して実施することができる。
【0018】
エネルギー導入に是正処置を施す場合、このことは、物品断面層における材料を少なくとも部分的に再融解させることによって行われてもよい。エネルギー導入について次の層に対して是正処置を施す場合、このことは、たとえば、次の走査ステップ、すなわち、選択的融解ステップの前に、ビームパワー、ビームスポットサイズ、ビーム走査速度などのパラメータを調整することによって実施されてもよい。
【0019】
投影するステップは好ましくは、干渉縞を、選択的な融解が実施される粉体床層の領域と実質的に一致するように形成するステップを含む。このことは、投影される干渉縞のサイズを物品断面層サイズと相関させることと見なされ、それによって、たとえば、より小さい物品の場合に、実際の関心領域の境界を越えて延びる撮像された干渉縞に対する解析作業、したがって、計算能力およびデータ出力の経費が無駄になることが回避される。
【0020】
投影するステップと撮像するステップが、互いに影響し合う可能性がなくなるように、エネルギー導入から切り離された専用光学機器を使用することによって実施され、かつ投影および撮像のための光学系を監視作業のためのみに最適化することができれば有利である。エネルギー導入は、様々な方法によって行うことができるが、好ましくは、電子ビームによって各粉体材料層を走査することを含む。そのような手順は、高い走査速度および高レベルのビーム制御を実現し、したがって、監視によって、欠陥が検出されずに高速の製造が進行することを防止することから顕著な利益が得られ、欠陥が検出された場合には、ビーム動作の一方または他方の調整によって容易に対処できる場合がある。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、付加層製造装置であって、溶融可能な粉体材料の層を重なり合う関係に連続的に堆積させるための粉体堆積手段と、各堆積層にエネルギーを導入して層内の材料を選択的に融解させ、それによって融解させた材料をまとめて溶融させるとともに、下方の層のすでに溶融した材料に溶融させて、三次元の固体物品を層ごとに作製するためのビーム生成および透過手段と、各堆積層上に、その層内の材料の融解よりも前の時点と融解よりも後の時点との少なくとも一方において、干渉縞を画定する構造光を光学的に投影するための光学投影手段と、投影の視点とは異なる視点から各層上の干渉縞を光学的に撮像し、それによって層の形状的特徴によって干渉縞の乱れを示すための光学撮像手段と、撮像された干渉縞をそのような示された乱れに関して解析して、粉体材料のそれぞれの層内の材料の融解よりも前にその層上に構造光が投影された場合にその層の欠陥を認識し、またはそれぞれの粉体材料層内の材料の融解よりも後にその層上に構造光が投影された場合に物品の断面層における欠陥を認識するための解析手段と、粉体材料層における欠陥を認識した場合に層堆積に対する是正処置を施し、物品断面層における欠陥を認識した場合にはエネルギー導入に対する是正処置を施すための処置手段とを備える付加層製造装置が提供される。
【0022】
本発明を具現化する装置は、方法に関してすでに説明したのと同じ利点、特に、層に対するビーム動作の前および/または後の、各粉体層の迅速で正確な監視、ならびに未融解の粉体層の特性および/または選択的に融解され溶融された層の特性に是正処置を施す装置制御において利点をもたらす。
【0023】
好ましくは、処置手段は、粉体堆積手段を制御して粉体材料層における認識された欠陥を解消するかまたは少なくとも軽減するように構成され、このことは是正処置の特に有効な経路を表す。この場合、処置手段は好ましくは、解析手段によって供給される、粉体材料層における認識された欠陥を示すデータを処理し、処理されたデータに応じて粉体堆積手段を制御するための処理および制御手段を備える。したがって、解析手段の出力は、要件に対して適切な直接使用可能な制御データに変換することができる。
【0024】
層堆積の是正処置に関して、粉体堆積手段は、粉体材料層用の粉体材料の反復吐出を実施するように処理および制御手段によって制御可能な粉体材料吐出手段と、粉体材料層の粉体材料の反復平滑化を実施するように処理および制御手段によって制御可能な粉体材料拡散手段と、粉体材料層を振動させて粉体材料層の粉体材料を再安定化するように処理および制御手段によって制御可能な振動手段とのうちの1つまたは複数を備えることができる。これらの手段の任意の1つまたは組合せを、粉体材料層における1つまたは複数の欠陥を迅速に解消するように適宜利用することができる。
【0025】
追加または代替として、処置手段は、物品断面層における認識された欠陥を解消するかまたは少なくとも軽減するようにビーム生成および透過手段を制御するように構成することができる。このことは、現在の断面層に対して適宜実施することができ、または欠陥が緊急を要するものではない場合には次のそのような層において実施することができる。この場合、処置手段は、解析手段によって供給される、物品断面層における認識された欠陥を示すデータを処理し、処理されたデータに応じてビーム生成および透過手段を制御するための処理および制御手段を備えることができる。層堆積の処置と同様に、解析手段の出力を再び、ビーム動作を処置するのに適切な直接使用可能な制御データに変換することができる。
【0026】
これとの関連で、エネルギー導入の是正処置に関して、ビーム生成および透過手段は好ましくは、物品断面層における材料の少なくとも部分的な再融解を実施するように処理および制御手段によって制御可能である。前述の方法の場合と同様に、エネルギー導入について、次の層に対して是正処置を施す場合、ビーム生成および透過のパラメータは、次の走査ステップが実施される前に調整することができる。
【0027】
好ましくは、ビーム生成および透過手段は、電子ビームを生成し透過させるように動作可能であり、このことは、特に高速で厳密に制御可能な製造を実現し、したがって、投影光学系によって可能になる連続的な品質制御監視、構造光に基づく撮像および解析、ならびに未融解の層および/または融解された層に関する処置手段による解析結果の利用から利益を得る装置の形態を表す。
【0028】
次に、本発明による方法の好ましい例および装置の好ましい実装形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明を具現化する付加層製造装置の、一部ブロック図形態の概略立面図である。
図1A】装置における構造光投影によって生成された干渉縞の、実質的な拡大図である。
図1B図1Aに基づく図であるが、投影の視点とは異なる視点からの干渉縞の画像を示す図である。
図2】本発明を例示し図1の装置によって実行可能な方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図面を参照すると、図1には、真空チャンバ12を画定するハウジング11を備える例示的な形態の付加層製造装置10が示され、ハウジングは、所望の亜大気圧を生成するように排気することができる圧力容器の形をしている。製造は、付加層または3D印刷プロセスによって製造すべき物品14または人工物を支持するための増分的に下降可能な台13上のチャンバ12内で実施される。このプロセスでは、選択された金属、通常は金属合金などの溶融可能な粉体材料15が、概略的に表されている制御可能なディスペンサ16から台13および隣接する領域上に分散され、ブレード(図示されている)またはローラなどの、同様に概略的に表されている制御可能な拡散および均し要素17によって拡散され、台上に一様な深さの薄い粉体材料層15aを形成する。層15aの粉体材料15は次いで、規定の領域内の熱の作用によって選択的に融解され溶融される。その領域内の粉体材料15は、凝固後、図面の平面に垂直な物品14の断面層を形成する。図示の層15aよりも前に、したがって図示の層15aの下方に粉体材料層が溶融することによって形成される物品14の個々の断面層は、14aによって示され、粉体材料層15aと同様に、誇張された厚さまたは深さを有するように示されている。融解領域を囲み、最終的に物品14を囲む残留粉体材料15は全体として、プロセスにおいてさらなる役割を果たすことはなく、回収され再生されるかまたは破棄されるまで粉体床の一部として残る。物品14のそのような各断面層14aを形成した後、台13が断面層の、所定の値である、深さまたは厚さ分だけ下降され、粉体材料15のさらなる層15aが前の層の凝固した部分の上方に分散され、選択的にまとめて融解し溶融するとともに下方の溶融材料に溶融することによって、同じまたは異なる規定の領域上に物品14の断面層14aを形成する。このプロセスは、層ごとの物品14の製造が完了するまで繰り返される。
【0031】
粉体材料15を融解させて溶融を誘起させるための熱は、特にレーザビームまたは荷電粒子ビームによって供給することができ、この装置の場合は、ハウジング11上に取り付けられた電子ビームカラム19によって生成され透過される電子ビーム18によって供給することができる。カラム19は、電子源、一般には印加電圧の下で電子を放出することのできる電子放出材料のカソードを含む制御可能な電子ビーム生成ユニット20と、たとえば、カラム19の軸およびその軸の連続部分に沿って規定の断面サイズおよび形状のビームとして伝搬させる電子を集束させるための一連のレンズ、ビームのオン、オフを効果的に切り替えるためのブランキングアパーチャ、および延長された軸に対してビームを偏向させる偏向器を備える制御可能なビーム集束、ブランキング、および偏向ユニット21とを備える。偏向器は、ビーム18に瞬間粉体材料層15aを高速に走査させて、前のパラグラフで説明したように物品14の断面層14aの所望の形状に対応する領域において粉体15を融解させるように、プログラムされたコンピュータ制御下で動作可能である。走査すべき領域は一般に、1回の走査で、または好ましくは複数回の走査から漸進的に熱を蓄積することによって、粉体を融解させるように一度に1つずつ各フィールド内の規定の経路に沿って走査される複数のフィールドに微細に分解される。個々の制御ユニット16a、17a、20a、および21aはそれぞれ、粉体材料ディスペンサ16、拡散および均し要素17、ビーム生成ユニット20、ならびにビーム集束、ブランキング、および偏向ユニット21を制御するように設けられる。制御ユニットは、単に好都合な例として個々の部品として示されており、実際にはハードウェアおよび/またはソフトウェアによって実現されてもよい。
【0032】
このプロセスによる付加層製造は、一般に公知であり、そのような目的に使用される装置10の例示的な形態の構成および動作を概略的に理解するのに必要な程度にのみ説明している。
【0033】
冒頭で概略的に説明したように、付加層製造を首尾よく実施する際の特定の課題は、各粉体層15aを堆積させる段階および堆積層を選択的に融解させる段階に出現する場合がある様々な障害によって表される。これらの問題に対処するために、装置10は、台13上に堆積させた各粉体材料層15aおよび粉体材料層15aから作製される物品断面層14aを光学的に監視し、光学的監視の結果を解析して製造プロセスの異変を認識し、ならびに/または製造仕様を引き続き順守することを保証し、必要に応じて製造プロセス、特に図2を参照しながら以下で説明する監視ステップおよびフィードバックステップを含むプロセスに関与する構成要素を介して是正処置を実施することのできるシステムを備える。
【0034】
この場合、図1に示す装置は、真空チャンバ12を通し窓(図示せず)を介して光路A上に構造光を投影して各々の堆積させた粉体材料層15a上に干渉縞を画定するための光学プロジェクタ22を備える非接触測定システムを含む。投影は、構成粉体材料を融解させるための層に対するビーム作用の前、そのようなビーム作用の後、または装置10の上述の実施形態の場合のように、ビーム作用の前と後の両方に実施される。干渉縞は、コンピュータソフトウェアによって生成され、様々な形態をとることができるが、好適には、対照的なトーン(縞)の規則的な間隔を置いて配置されたストライプ23のアレイから成り、そのような投影された干渉縞の例が、干渉縞の小さいセグメントを大幅に拡大した形で図1Aに示されている。図1の投影ビームの経路Aが示すように、入射干渉縞は、融解が行われて物品14の断面層14aが形成される粉体材料層15aの領域、したがって、各層15a内の粉体材料15に対して電子ビーム18が走査作用を及ぼす概略的なゾーン全体と実質的に同じ範囲にある。
【0035】
測定システムは、真空チャンバ12を通しさらなる窓(同じく図示せず)を介して光路B上の投影された干渉縞を撮像するための光学撮像カメラ24をさらに含み、撮像された干渉縞は、図1Aと比較して、光学投影経路Aに対する光学撮像経路Bの角度を示す傾斜を有するように図1Bに示されている。撮像は、相対的な角度を有する光路AおよびBによって表されているように、投影の視点とは異なる視点から行われるので、干渉縞が投影された層14aまたは15aの領域における形状的特徴、特に隆起およびへこみが、撮像された干渉縞の個々のストライプ23の乱れまたは歪みとして出現する。そのような乱れは、図1Bに示すように、特定のストライプにおける局所的な隆起23aおよびへこみ23bの形で再生される。未融解の粉体材料層15aの隆起23aは、層における凹凸の頂点、粒子の集塊、下層からの突出による変位、および他のそのような障害によって形成されることがあり、へこみ23bは、そのような凹凸の谷部、空隙、粉体が失われた領域、拡散および均し要素17の粒子ドラッグまたは損傷に起因する傷、ならびに様々な他の問題によって形成されることがある。同様に、粉体材料層15aの材料を選択的に融解させることによって作製された物品断面層14aの場合の隆起23aは、製造時の物品14の膨張、ビーム作用の走査または他の局面における障害、所定の物品設計パラメータからの逸脱、およびその他の問題によって生じることがある。物品断面層14aにおけるへこみ23bは、主要な原因のみを挙げれば、空隙および粉体が失われた領域などの粉体材料層15aに関する既存の障害、ならびにこの場合も設計パラメータからの逸脱から生じることがある。
【0036】
これらの種類の欠陥の認識は、解析ユニット25により、図2に関して以下で説明するように解析技法を使用することによって、撮像された各干渉縞を解析することによって実現される。解析ユニット25は、ビーム作用の前に粉体材料層15aにおける障害を特徴付ける第1のデータおよびビーム作用の後に示される物品断面層14aにおける障害を特徴付ける第2のデータを生成し、第1のデータは、粉体材料層15aにおける粉体配置に関する是正処置を決定するために第1のプロセッサ26に供給され第1のプロセッサ26によって処理され、第2のデータは、ビーム18の動作に対する是正処置を決定するために第2のプロセッサ27に供給され第2のプロセッサ27によって処理される。したがって、第1のプロセッサ26は、粉体材料ディスペンサ16ならびに拡散および均し要素17用の制御ユニット16a、17aに対する是正処置のための符号化された命令を必要な限り生成して発行し、第2のプロセッサ27は、ビーム生成ユニット20ならびにビーム集束、ブランキング、および偏向ユニット21用の制御ユニット20a、21aに対する是正処置のための符号化された命令を必要な限り生成して発行する。これらの是正処置は、通常の制御変数についての各ユニットへの図示されたさらなる入力によって表されるように、制御ユニット16a、17a、20a、および21aによって実行される通常の制御処置の追加として行われてもよく、または適切であれば、それらの変数を適切に修正することによって行われてもよい。制御ユニットと同様に、図示のプロセッサ26、27は、装置の機能別能力を図示したものに過ぎず、実際には、プロセッサが、たとえば一般的な制御システムのソフトウェアの一部によって実現できることを理解されたい。
【0037】
拡散および均し要素17によってその制御ユニット17aの制御下で行うことができる是正処置には、粉体材料層15aの表面の反復平滑化またはその層の反復拡散が含まれ、一方、ディスペンサ16は、層15aに付加するか、または場合によっては層を完全に置き換えるための材料を放出するようにそれぞれの制御ユニット16aによって制御することができる。装置10が、層に振動を加えて構成粉体材料15を再安定化するための設備を含む場合、是正処置は、制御ユニット16a、17aの一方またはさらにそのような制御ユニットの制御下で実施することもできる。同様に、ビーム生成ユニット20によってその制御ユニット20aの制御下で行うことができる是正処置には、粉体材料15を融解させるようにビームパワー、したがって層15aに導入可能なエネルギーを調整することが含まれ、一方、ビーム集束、ブランキング、および偏向ユニット21によってその制御ユニット21aの制御下で行うことができる是正処置には、ビームスポットサイズの変更、走査の間のドエルタイムまたは露光時間の変更、走査速度の変更、選択された領域の反復走査、およびビーム動作に関連付けられた様々な他の可能性が含まれる。
【0038】
プロジェクタ22がカラム軸のできるだけ近くに配置され、この軸が光路Aについての理想的な軸であることに留意されたい。カラム軸に対する光路Aの軸のずれの、投影される干渉縞に対する影響の補償を、解析ユニット25によって行われる解析に含めることができる。
【0039】
図2は、図1の装置10または同等の適切な機能もしくは他の適切な機能を有する他のそのような装置によって実行可能な例示的な方法のステップをフローチャートの形で示し、以下では、この方法について、図1の装置10による実行に基づいて具体的に説明する。第1のステップS1では、溶融可能な金属粉体材料の層が、ディスペンサと拡散および均し要素の協働動作によって台の最上位置に堆積され、ディスペンサは、粉体を備蓄から台に隣接する領域に放出し、拡散および均し要素は、粉体を台上に一様な深さを有しかつ水平または平滑な表面を有する層として拡散させる。前述のように、実際には、形成された層は、空隙、粉体が失われた領域、傷、筋、くぼみ、谷部、穴、突起、土手部、山部、および全体的に不均一または不規則な深さ、ならびに場合によっては所定の深さから正または負の方向に異なる全体的な深さなどの、様々な障害または理想からの逸脱を示すことがある。したがって、作製すべき物品の所期の断面層に対応する規定の領域を選択的に融解させるための粉体材料層に対する、この実施形態では電子ビームによる処置の前に、図1Aに例示的な形態で示すような交互に対照的なストライプを有する干渉縞を画定する構造光が、ステップS2において層上に投影される。この後にステップS3において、干渉縞が投影の視点とは異なる視点から撮像され、層深さの局所的なばらつきに起因する干渉縞ストライプの線形性における乱れ、特に層表面における隆起およびへこみ(図1B参照)が示される。
【0040】
次いで、ステップS4において画像が解析され、示された乱れにX座標およびY座標が割り当てられ、この乱れの原因である特定の障害が認識される。解析は、図1Bに示すような乱れの場合に、特定の隆起の高さが、干渉縞の空間位相(φ)、すなわち、層表面上に投影される干渉縞ストライプの間隔の関数として符号化される場合があることを考慮して既知の手順によって実施することができる。したがって、隆起の形状は、次式によって表されるように、干渉縞の強度分布、すなわち、干渉縞ストライプのコントラストを変調する。
g(x,y) = a(x,y) + b(x,y) cos (2πfx + φ(x,y))
上式において、a(x,y)は背景照明であり、b(x,y)は、干渉縞ストライプの振幅変調であり、fは、空間周波数キャリアであり、φ(x,y)は、干渉縞ストライプの位相変調(必要な位相分布)であり、xおよびyはそれぞれ、X軸およびY軸についてのサンプルインデックスである。
【0041】
干渉縞画像における乱れによって表される障害を認識するための解析の重要な局面は、数式によって与えられるような強度分布からの位相の抽出である。干渉縞の復調について、位相ステッピング手順、フーリエ縞解析法(FFA)、直接位相検出(DPD)、ウェーブレット変換縞解析、およびその他のアルゴリズムなどの、様々な干渉縞技法が提案されている。これらの技法は、必要な位相ではなく畳み込まれた位相を生成し、したがって、畳み込まれた位相から真の位相を回復するために位相アンラッピングアルゴリズムも必要である。最後に、計算された位相差は、相対高さ情報を与え、信頼できる高さ補正モデルを使用することによって絶対高さに変換される。したがって、干渉縞解析のステップは、撮像された干渉縞g(x,y)に前述の種類のうちの1つの適切な干渉縞アルゴリズムを適用して畳み込まれた位相Ψ(x,y)を取得し、畳み込まれた位相Ψ(x,y)に位相アンラッピングアルゴリズムを適用して、接続し直された位相φ(x,y)を取得することと要約することができる。最後に、位相対高さモデルによるこの処理は、個々の隆起の絶対高さh(x,y)を与え、絶対高さh(x,y)に基づいて、障害の存在および位置が認識され、障害の存在および位置から層補正の必要が認識される。
【0042】
認識された障害の性質に応じて、ステップS5において、現在の層における粉体分散を補正する必要があるかどうかについて決定を下すことができる。粉体分散を補正する必要があるのは特に、融解させるべき粉体材料の領域内に位置する障害が、選択的な融解によって作製すべき物品断面層の完全性に影響を与える可能性が高い場合である。現在の層の補正が必要である場合、この補正は、後続のステップS6において行われ、たとえば、拡散および均し要素17は、層を構成する粉体を再分散、再均し、もしくは部分的に除去するか、またはディスペンサ16から補助粉体を添加することによって層を再構成するように動作させられる。装置が層を含む粉体床を振動させるための機器を含む場合、層をかすかに揺らし、そのようにして粉体を再安定化させて小さい隆起を無くすように機器を動作させることができる。
【0043】
特定の障害が認識されたが、障害しきい値を参照することなどによって、直ちに是正する必要がない種類の障害であると判定された場合、次の層において補正を実施することの決定をステップS7において下すことができ、このことは、ステップS8において、適切な時間に実施されるようにスケジューリングされる。したがって、ステップS8において、拡散および均し要素の今後のパス速度もしくはパス回数、またはディスペンサから粉体の放出、粉体組成、および粉体流動性についての今後の態様に適切な調整を施し、それによって、現在の層では重大ではないことがあるが、特に累積効果がある場合には以後の層において場合によっては重大であることがある種類の障害の反復を回避することができる。
【0044】
ステップS6および/またはステップS8において適切な処置が実施されるかまたはそのような処置が必要とされない場合、この方法は、ステップS9に進むことができ、最初に敷設された層または改良された層における選択的な融解が、物品断面層のそれぞれの形状を形成するように融解させるべき粉体領域を決定するプログラムの制御下で電子ビーム走査によって実施される。ステップS10において、今や融解された材料の領域を含む層上に干渉縞を重畳させるための構造光投影がステップS2と同様に実施され、次いで、ステップS11において、ステップS3と同様に干渉縞が撮像されて干渉縞の乱れが示されるが、現在、乱れは、融解に関連する障害、たとえば、融解によって誤って失われ、融解後の液溜りではなく未融解の粉体を示唆する高さを有する領域を表す。ステップS4と同様に、次に、ステップS12において、取得された画像に解析が施され、層補正が必要であるかどうかが特定され、必要である場合、ステップS13およびS15において、S5およびS7と同様に、現在の層および/または次の層に補正が必要であるかどうかについて決定が下される。現在の層に補正が必要である場合、ステップS14において、たとえば、材料を少なくともある程度再融解させて現在の層における1つまたは複数の障害を解消し、補正が次の層に必要である場合、たとえば、障害が再発しない、または再発させるべきでないように、ビームパワー、ビーム走査(偏向)速度、ビームスポットサイズまたは場合によっては形状、ビームドエルタイム、各部位(融解点)への走査回数など要素を変化させて調整するためにステップS16においてビーム生成および/または透過制御がスケジューリングされる。
【0045】
ステップS14および/またはステップS16における1つまたは複数の処置が行われた後、または処置が必要とされない場合、この方法はステップS17に進み、物品断面層の深さ分だけ台を下降させた後、層ごとの製造において次の断面層を作製する際の第1のステップとして、第1の層の上に次の粉体層が堆積される。ステップS18において、その次の層に対してステップS2~ステップS16が繰り返され、それに続いて、各堆積後に新しい粉体層のステップS17が繰り返される。
【0046】
図2を参照しながら説明した方法の例は、層の選択的な融解の前と後の両方に層解析を可能にするための構造光投影および干渉縞の撮像を含むが、要件に応じて、融解段階の前のみまたは後のみに投影、撮像、および解析を行うことが完全に可能である。
【0047】
本発明を具現化する上述の装置および本発明を例示する上述の方法は、付加層製造プロセスの重大な局面の連続的な光学的監視および是正処置の決定をリアルタイムに行うことを可能にし、それによって、プロセスによって作製される物品の品質が著しく向上することが可能になり、または場合によっては所望の品質標準が維持されることを保証し得る。
【符号の説明】
【0048】
10 付加層製造装置、装置
11 ハウジング
12 真空チャンバ
13 台
14 物品
14a 物品断面層、断面層
15 粉体材料
15a 粉体材料層、層
16 ディスペンサ
16a、17a、20a、21a 制御ユニット
17 拡散および均し要素、要素
18 電子ビーム
19 電子ビームカラム、カラム
20 電子ビーム生成ユニット
21 ビーム集束、ブランキング、および偏向ユニット
22 光学プロジェクタ
23 ストライプ
23a 隆起
23b へこみ
24 光学撮像カメラ
25 解析ユニット
26 第1のプロセッサ、プロセッサ
27 第2のプロセッサ、プロセッサ
A 光路、経路、光学投影経路
B 光路、光学撮像経路
a(x,y) 背景照明
b(x,y) 振幅変調
空間周波数キャリア
g(x,y) 撮像された干渉縞
Ψ(x,y) 畳み込まれた位相
φ(x,y) 接続し直された位相、位相変調
h(x,y) 絶対高さ
図1
図1A
図1B
図2