(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】原子力給電式真空マイクロエレクトロニクス装置
(51)【国際特許分類】
G21C 3/30 20060101AFI20220722BHJP
H01J 21/10 20060101ALI20220722BHJP
G21C 3/33 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G21C3/30 100
H01J21/10
G21C3/33 200
(21)【出願番号】P 2019553027
(86)(22)【出願日】2018-03-21
(86)【国際出願番号】 US2018023453
(87)【国際公開番号】W WO2018203981
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2017-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】カルバハル、ジョージ、ブイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
(72)【発明者】
【氏名】ペトロスキー、ライマン、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クレーデ、ティム、エム
(72)【発明者】
【氏名】フラマング、ロバート、ダブリュー
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0146681(US,A1)
【文献】米国特許第03321646(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/30
H01J 21/10
G21C 3/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)を含む炉内エレクトロニクスアセンブリであって、当該アセンブリは、
陰極(14)と、
陽極(16)と、
当該陰極(14)と当該陽極(16)の間に位置するグリッド(18)と、
当該グリッド(18)と接地(42)の間に所望のバイアス電圧を印加する手段(48)と、
当該
陽極(16)と接地(42)の間に所望のバイアス電圧を印加するSPDの電圧源と、
当該陰極(14)、当該陽極(16)および当該グリッド(18)を密封するハウジングと、
当該ハウジング内において当該陰極(14)の近傍にまたは当該陰極(14)の一部として配置された、核分裂性物質(38)より成る、当該陰極を加熱するための加熱器(40)と
を具備する炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項2】
前記陰極(14)は前記核分裂性物質(38)の上に巻回されている、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項3】
前記陰極(14)は前記核分裂性物質(38)を貫通する、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項4】
前記核分裂性物質(38)の寸法は高さが0.1インチ以下、直径が0.260インチ以下である、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項5】
前記核分裂性物質(38)は5w/o未満の二酸化ウランである、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項6】
前記SPDの電圧源は炉心(50)内で照射に反応して所望の電圧を提供する、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項7】
前記SPDの電圧源は自己給電型炉内放射線検出器である、請求項6の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項8】
前記固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)は無線送信器に給電する、請求項7の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項9】
前記固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)は原子燃料集合体の上部ノズル(44)に取り付けられるように構成された、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項10】
前記炉内エレクトロニクスアセンブリは、出力信号が前記グリッド(18)に電気送信される1つ以上のセンサを具備する、請求項1の炉内エレクトロニクスアセンブリ。
【請求項11】
固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)であって、
陰極(14)と、
陽極(16)と、
当該陰極(14)と当該陽極(16)の間に位置するグリッド(18)と、
当該グリッド(18)と接地(42)の間にバイアス電圧を印加する手段(48)と、
当該
陽極(16)と接地(42)の間に所望のバイアス電圧を印加するSPDの電圧源と、
当該陰極(14)、当該陽極(16)および当該グリッド(18)を密封するハウジングと、
当該ハウジング内において当該陰極(14)の近傍にまたは当該陰極の一部として配置された、核分裂性物質(38)より成る、当該陰極を加熱するための加熱器(40)と
を具備する固体真空マイクロエレクトロニクス装置。
【請求項12】
前記陰極(14)は前記核分裂性物質(38)の上に巻回されている、請求項11の固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)。
【請求項13】
前記陰極(14)は前記核分裂性物質(38)を貫通する、請求項11の固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)。
【請求項14】
前記核分裂性物質(38)の寸法は高さが0.1インチ以下、直径が0.260インチ以下である、請求項11の固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)。
【請求項15】
前記核分裂性物質(38)は5w/o未満の二酸化ウランである、請求項11の固体真空マイクロエレクトロニクス装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して自立電源に関し、具体的には、放射線源の近くで作動する設計の電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型原子炉は、炉内計装装置から制御室へ信号を伝送するケーブルのための原子炉容器貫通部を必要とする。そのような貫通部は、原子炉容器の供用期間にわたって、しばしば原子炉冷却材の漏洩源となる。したがって、原子炉容器貫通部の数を、原子力発電所の安全運転に必要とされる限度いっぱいまで減らすことが常に目標となっている。炉内計装装置のための貫通部の数を減らす1つの方法は、炉内検出器信号の無線伝送である。しかし、検出器信号を無線伝送するには、原子炉容器内に自立電源を確保する必要がある。そのような無線送信器への電圧と電流の供給にこれまで使われてきた化学電池、熱電発電装置、振動発電装置のような従来型電源は、原子炉の炉内環境に耐えられないことがよく知られている。
【0003】
また、真空マイクロエレクトロニクス(VME)装置は原子炉の炉内環境に耐えられることがよく知られているが、そのような技術に基づく装置は原子炉容器内に電源を確保する必要がある。
図1に略示するように、真空マイクロエレクトロニクス装置10は、典型的には、陰極14の一部を構成するかまたは陰極14に接触している加熱器回路(フィラメントヒーター)12によって部分的に給電される。ヒーター回路からの熱エネルギーが適当なレベルに到達すると、陰極から電子が放出される。放出された電子は、
図1の矢印20で示すように陰極14から陽極16へ移動する。従来の使用例では、電源から単なる直流電圧と電流の組み合わせが、加熱要素および陽極/プレート端子に供給される。一般に「グリッド」と呼ばれる端子18は、グリッド18に印加されるバイアス電圧に基づいて、陰極14と陽極16の間の電子の流れを制御する。グリッド18および陽極16を作動させるバイアス電圧は、陰極14の加熱に必要な電圧よりはるかに小さい。したがって、炉内検出器信号を原子炉容器の外へ無線伝送するには、原子炉環境に耐えられる真空マイクロエレクトロニクス装置を、好ましくは、炉内検出器アセンブリが組み込まれた燃料集合体が炉心内に留まる間に限り作動させる新しい電源が必要である。本発明の目的は、そのような電源、好ましくは、燃料集合体が環境リスクとなる間に限り炉内検出器アセンブリを給電できるそのような電源を備えた真空マイクロエレクトロニクス装置を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
前述の目的を達成するために、本発明は、固体真空マイクロエレクトロニクス装置を含む炉内エレクトロニクスアセンブリを提供する。当該固体真空マイクロエレクトロニクス装置は、陰極と、陽極と、グリッドと、当該グリッドと接地の間にバイアス電圧を印加する手段と、当該陽極と当該接地の間に所望のバイアス電圧を印加するための電圧源とを具備する。当該陰極、当該陽極および当該グリッドはハウジング内に密封され、核分裂性物質より成る加熱器が当該ハウジング内の当該陰極の近傍にまたは当該陰極の一部として配置されて、当該陰極を加熱する。
【0005】
一実施態様において、当該陰極は当該核分裂性物質の上に巻回される。別の実施態様では、当該陰極は当該核分裂性物質を貫通する。当該核分裂性物質の寸法は、高さが0.1インチ以下、直径が0.230インチ以下であるのが好ましい。そのような一実施態様において、当該核分裂性物質は5w/o未満の二酸化ウランである。
【0006】
当該電圧源は、炉心内の照射に反応して所望の電圧を提供し、かかる一実施態様において、自己給電型炉内放射線検出器であるのが好ましい。当該炉内エレクトロニクスアセンブリはまた、出力信号が当該グリッドを介して監視される1つ以上のセンサを含む。当該炉内エレクトロニクスアセンブリは、当該固体真空マイクロエレクトロニクス装置によって給電される無線送信器を含むのが望ましい。本発明はまた、前述の諸要素の一部を具備する固体真空マイクロエレクトロニクス装置を企図する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0008】
【
図1】標準的な固体真空マイクロエレクトロニクス装置の概略図である。
【0009】
【
図2】本発明の特徴を組み込んだ固体真空マイクロエレクトロニクス装置の概略図である。
【0010】
【
図3】陽極にバイアス電圧を印加するための、本発明に使用可能な自己給電型検出器の縦断面図である。
【0011】
【
図4】
図3に示す自己給電型検出器の半径方向断面図である。
【0012】
【
図5】本発明の一実施態様に従って構成された真空マイクロエレクトロニクス(三極管)装置の概略図である。
【0013】
【
図6】本発明の固体真空マイクロエレクトロニクス装置を配備できる原子燃料集合体の上部ノズルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、核分裂性の加熱要素を備えた真空マイクロエレクトロニクス(VME)装置より成り、当該加熱要素は、U-235のような核分裂性物質が発生する熱エネルギーから直接当該真空マイクロエレクトロニクス装置への給電に必要なエネルギーを得ることができる。
図2は、U-235加熱器によって給電される真空マイクロエレクトロニクス装置10の加熱器/陰極22の構成を高レベルで表現したものである。
図2において、陰極14はU-235の被膜を有する。別案として、加熱器/陰極22を、核分裂性物質を陰極上に巻回するか、または核分裂性物質に陰極を貫通させることにより形成してもよい。核分裂性物質は、炉心から漏れる中性子を吸収して発熱する。核分裂性物質の寸法は、典型的なVMEに収まるように、高さが約0.1インチ、直径が0.260インチであるのが好ましい。核分裂性物質は、低濃縮度(理想的には5w/o未満)のU-235の二酸化ウラン(U0
2)ペレットが好ましいが、その他の核分裂性物質を用いてもよい。
【0015】
本発明の別の重要な局面は、VMEの陽極/プレート端子16への給電に関する。VMEの陽極/プレート端子を一個または複数の自己給電型検出器(SPD)のエミッタに接続することにより必要な電力を発生させることができる。米国特許出願第2013/0083879号に記述されているように、典型的なSPDは理想的な電流源としてふるまい、中性子束に比例する電流を発生する。本発明は、SPDの特性を利用して、VMEの陽極端子16に電圧を発生させる。
図3は、陽極16にバイアスを印加するために使用可能なSPDの縦断面図であり、
図4は、
図3のSPDの半径方向断面図である。
図3、4に示すSPDは、リード線36を介して陽極16に接続されるエミッタ26を有する。エミッタ26は、参照符号28で示すCo-59に取り囲まれており、このCo-59は白金シース30に取り囲まれている。エミッタ、Co-59および白金シースのアセンブリは、酸化アルミニウムの絶縁体32に取り囲まれ、鋼製外筒34に封入されている。
【0016】
図5は、炉内エレクトロニクスアセンブリ54の中にある本発明に従って構成したVME(三極管)の概略図である。図示のように、陰極14は、核分裂性物質38のペレットによって加熱されるフィラメント40によって加熱される。陽極16は、陽極16と接地の間にバイアス電圧Vを印加するSPD24のエミッタ26に接続される。
図5に表象的に示すように、グリッド18は、炉心50内に配置された固定式炉内計装アセンブリ48のセンサの出力に接続される。そのような炉内計装装置アセンブリの一例は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,251,242号に詳細に説明されている。
【0017】
本発明のVMEは、
図6に示す上部ノズルのような原子燃料集合体の上部ノズルに設置することができる。同図は、ノズル44の側壁46に取り付けられた本発明に従って構成されたVME10を、ブロックで示している。反応中の炉心の約12インチ上方に核分裂性物質のペレットがあると仮定して計算による解析を行ったところ、VMEの位置における中性子束は炉心平均熱中性子束(3×l0
12n/cm
2・s)のおよそ5%であり、燃料集合体の供用期間を通して測定可能な熱エネルギーを発生させることが示された。無線送信器52への給電に必要なVMEの数は、送信器の出力要件のみによって決まる。
【0018】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。