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特許7109529印刷装置、印刷データ作成方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷データ作成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/505 20060101AFI20220722BHJP
   H04N 1/393 20060101ALI20220722BHJP
   H04N 1/409 20060101ALI20220722BHJP
   G06T 3/40 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B41J2/505 101L
B41J2/505 101G
H04N1/393
H04N1/409
G06T3/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020219479
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104334
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2022-04-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301043638
【氏名又は名称】日本プリンタエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100188156
【弁理士】
【氏名又は名称】望月 義時
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 卓二
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186549(JP,A)
【文献】特開2001-313834(JP,A)
【文献】特開平11-296670(JP,A)
【文献】特開平09-102050(JP,A)
【文献】特開平04-067197(JP,A)
【文献】米国特許第6226420(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/505
H04N 1/393
H04N 1/409
G06T 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷する対象となる文字データを取得するデータ取得部と、
前記文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、前記領域よりも大きい9個の3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する拡大部と、
3マス×3マスの領域に含まれる複数のマスの画素値のパターンがそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶する複数の前記マッチングパターンから、前記補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択する選択部と、
前記選択部が選択した前記マッチングパターンに対応する補正方法で、前記拡大データに含まれる複数の前記補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する補正部と、
前記印刷データを印刷する印刷部と、
を有する印刷装置。
【請求項2】
前記拡大部は、前記複数の画素それぞれの画素値を前記補正領域内の複数のマスの中央のマスに割り当てた後に、当該マスに隣接するマスの画素値が、前記文字データにおける対応する画素に隣接する画素の画素値になるようにする、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記拡大部は、前記複数の画素それぞれの画素値が割り当てられた前記補正領域内の複数のマスの中央のマスに隣接するマスの画素値が、前記文字データにおける対応する画素に隣接する画素の画素値になるようにした後に、第1画素値の複数のマスに囲まれた第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更する、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記データ取得部は、前記文字データを印刷する際の拡大率を示す拡大率データをさらに取得し、
前記拡大部は、前記拡大率データが示す拡大率に基づいて、前記補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさを決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記補正部は、前記補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値のマスの対角線に対して前記複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値の第1マスと、前記第1マスと第1画素値のマスに接する第2画素値の第2マスと、から構成される長方形領域の対角線に対して、前記複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記補正部は、前記補正領域において、隣接する第1画素値の2個のマスと、当該2個のマスと同じ行又は列に含まれる第2画素値の1個のマスと、により構成される長方形領域を、当該長方形領域の対角線に対して、第1画素値の他のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正し、前記対角線に対して反対側の領域の画素値を第2画素値に補正する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
印刷する対象となる文字データを取得するステップと、
前記文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、前記領域よりも大きい9個の3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成するステップと、
3マス×3マスの領域の画素値がそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けたマッチングデータを参照することにより、複数の前記マッチングパターンから、前記補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択するステップと、
選択した前記マッチングパターンに対応する補正方法で、前記拡大データに含まれる複数の前記補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成するステップと、
を有する印刷データ作成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
印刷する対象となる文字データを取得するステップと、
前記文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、前記領域よりも大きい9個の3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成するステップと、
3マス×3マスの領域の画素値がそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けたマッチングデータを参照することにより、複数の前記マッチングパターンから、前記補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択するステップと、
選択した前記マッチングパターンに対応する補正方法で、前記拡大データに含まれる複数の前記補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷データ作成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を拡大して印刷する印刷装置が知られている。特許文献1には、プリンタに用いられる画像拡大方式に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-222574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷装置において、画像を拡大して印刷する場合、印刷した文字のエッジにギザギザの段差が生じてしまうという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、印刷した文字のエッジに段差を生じさせづらくする印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、印刷する対象となる文字データを取得するデータ取得部と、前記文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、前記領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する拡大部と、3マス×3マスの領域に含まれる複数のマスの画素値のパターンがそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けて記憶する記憶部と、前記記憶部が記憶する複数の前記マッチングパターンから、前記補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択する選択部と、前記選択部が選択した前記マッチングパターンに対応する補正方法で、前記拡大データに含まれる複数の前記補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する補正部と、前記印刷データを印刷する印刷部と、を有する印刷装置を提供する。
【0007】
また、前記拡大部は、前記複数の画素それぞれの画素値を前記補正領域内の複数のマスの中央のマスに割り当てた後に、当該マスに隣接するマスの画素値が、前記文字データにおける対応する画素に隣接する画素の画素値になるようにしてもよい。
【0008】
また、前記拡大部は、前記複数の画素それぞれの画素値を前記補正領域内の複数のマスの中央のマスに割り当てた後に、第1画素値の複数のマスに囲まれた第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更してもよい。
【0009】
また、前記データ取得部は、前記文字データを印刷する際の拡大率を示す拡大率データをさらに取得し、前記拡大部は、前記拡大率データが示す拡大率に基づいて、前記補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさを決定してもよい。
【0010】
また、前記補正部は、前記補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値のマスの対角線に対して前記複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正してもよい。
【0011】
また、前記補正部は、前記補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値の第1マスと、前記第1マスと第1画素値のマスに接する第2画素値の第2マスと、から構成される長方形領域の対角線に対して、前記複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正してもよい。
【0012】
また、前記補正部は、前記補正領域において、隣接する第1画素値の2個のマスと、当該2個のマスと同じ行又は列に含まれる第2画素値の1個のマスと、により構成される長方形領域を、当該長方形領域の対角線に対して、第1画素値の他のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正し、前記対角線に対して反対側の領域の画素値を第2画素値に補正してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、コンピュータが実行する、印刷する対象となる文字データを取得するステップと、前記文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、前記領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成するステップと、3マス×3マスの領域の画素値がそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けたマッチングデータを参照することにより、複数の前記マッチングパターンから、前記補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択するステップと、選択した前記マッチングパターンに対応する補正方法で、前記拡大データに含まれる複数の前記補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成するステップと、を有する印刷データ作成方法を提供する。
【0014】
本発明の第3の態様においては、コンピュータに、印刷する対象となる文字データを取得するステップと、前記文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、前記領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成するステップと、3マス×3マスの領域の画素値がそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けたマッチングデータを参照することにより、複数の前記マッチングパターンから、前記補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択するステップと、選択した前記マッチングパターンに対応する補正方法で、前記拡大データに含まれる複数の前記補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成するステップと、を実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷装置において、印刷した文字のエッジに段差を生じさせづらくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る印刷装置の構成を示す。
図2】印刷装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図3】印刷する対象となる文字データの一例を示す。
図4】複数の補正領域の一例を示す。
図5】拡大部が作成した第1段階のデータの一例を示す。
図6】拡大部が作成した第2段階のデータの一例を示す。
図7】拡大データの一例を示す。
図8】記憶部が記憶する複数のマッチングパターンの例を示す。
図9】補正方法の例を示す。
図10】印刷データの一例を示す。
図11】補正方法の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[印刷装置Sの概要]
図1は、本実施形態に係る印刷装置Sの構成を示す図である。
印刷装置Sは、制御部11及び記憶部12を有する。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部111、拡大部112、選択部113、補正部114、及び印刷部115として機能する。
【0018】
データ取得部111は、印刷する対象となる文字データを取得する。また、データ取得部111は、拡大率データを取得する。拡大率データは、文字データを印刷する際の拡大率を示すデータである。本実施形態では、拡大率が9倍である場合を例示するが、拡大率は任意である。拡大率は、印刷する対象となる文字データに対する比率を示す値であればよく、9倍に拡大する場合、拡大率データの値は「9」であっても「900%」であってもよい。
【0019】
データ取得部111は、外部装置Tから文字データ、及び拡大率データを取得する。外部装置Tは、例えばコンピュータであるが、自動販売機又は券売機といった電子機器に設けられた制御ユニットであってもよい。データ取得部111は、外部装置Tから取得した文字データ及び拡大率データを拡大部112に通知する。
【0020】
拡大部112は、文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、各画素毎に当該領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する。1マスは、複数の画素×複数の画素により構成される。拡大部112は、拡大率データが示す拡大率に基づいて、補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさを決定する。マスの大きさを決定することは、マスに含まれる複数の画素の数を決定することに相当する。本実施形態では、前述したように拡大率は9倍であり、1マスは、3画素×3画素により構成される。印刷装置Sにおいては、拡大部112が、このように拡大率に基づいて、補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさを決定することで、拡大率に応じた9個のマスを有する補正領域を作成することができる。
【0021】
拡大部112は、後述するように複数の画素それぞれの画素値を補正領域内の複数のマスの中央のマスに割り当てた後に、当該マスに隣接するマスの画素値が、文字データにおける対応する画素に隣接する画素の画素値になるようにする。
【0022】
拡大部112は、後述するように複数の画素それぞれの画素値を補正領域内の複数のマスの中央のマスに割り当てた後に、第1画素値の複数のマスに囲まれた第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更する。第1画素値は、例えば黒色を示す値である。第2画素値は、例えば白色を示す値である。印刷装置Sにおいては、拡大部112がこのように拡大データを作成することで、文字を示す第1画素値の複数の画素中に第2画素値の画素が含まれてしまうのを防ぐことができる。
【0023】
拡大部112は、データ取得部111から文字データ及び拡大率データを取得し、取得した拡大率データが示す拡大率に基づいて、補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさを決定する。そして、拡大部112は、取得した文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、当該領域よりも大きい、決定したマスの大きさを有する3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する。そして、拡大部112は、作成した拡大データを選択部113に通知する。
【0024】
選択部113は、後述する記憶部12が記憶する複数のマッチングパターンから、補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択する。具体的には、選択部113は、拡大部112から拡大データを取得し、取得した拡大データの3マス×3マスの補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンを、後述する記憶部12が記憶する複数のマッチングパターンと比較する。そして、選択部113は、後述する記憶部12が記憶する複数のマッチングパターンのうちから、補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択する。そして、選択部113は、選択したマッチングパターンを補正部114に通知する。
【0025】
補正部114は、選択部113が選択したマッチングパターンに対応する補正方法で、拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する。補正方法は、以下のような補正方法を含む。各補正方法の詳細については、後述する。
【0026】
補正部114は、例えば、補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値のマスの対角線に対して当該複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正する。補正部114が、このように拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することを、本明細書においては第1斜め補正という。
【0027】
また、補正部114は、例えば、補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値の第1マスと、第1マスと第1画素値のマスに接する第2画素値の第2マスと、から構成される長方形領域の対角線に対して、当該複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正する。補正部114が、このように拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することを、本明細書においては第2斜め補正という。
【0028】
また、補正部114は、例えば、補正領域において、隣接する第1画素値の2個のマスと、当該2個のマスと同じ行又は列に含まれる第2画素値の1個のマスと、により構成される長方形領域を、当該長方形領域の対角線に対して、第1画素値の他のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正し、対角線に対して反対側の領域の画素値を第2画素値に補正する。補正部114が、このように拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することを、本明細書においては第3斜め補正という。
【0029】
補正部114は、選択部113から選択部113が選択したマッチングパターンを取得し、取得したマッチングパターンに対応する補正方法で、拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する。補正方法は、上述した第1斜め補正、第2斜め補正、及び第3斜め補正を含む。そして、補正部114は、作成した印刷データを印刷部115に通知する。
【0030】
印刷装置Sにおいては、補正部114が、上述したように、選択部113が選択したマッチングパターンに応じて、第1斜め補正、第2斜め補正、又は第3斜め補正をすることで、印刷した文字のエッジに段差を生じさせづらくすることができる。第1斜め補正及び第2斜め補正が行われる場合が、第3斜め補正が行われる場合よりも多い。第1斜め補正及び第2斜め補正の場合は、第1画素値のマスには補正をしないが、第3斜め補正の場合は、第1画素値のマスにも補正をする。第1斜め補正及び第2斜め補正は、細かな補正をし易いため、拡大率が小さい場合でも対応し易い。
【0031】
印刷部115は、印刷データを印刷する。具体的には、印刷部115は、補正部114から印刷データを取得し、取得した印刷データを印刷する。
【0032】
記憶部12は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいる。記憶部12は、制御部11が実行するプログラムを記憶している。
【0033】
記憶部12は、マッチングデータを記憶している。マッチングデータは、3マス×3マスの領域に含まれる複数のマスの画素値のパターンがそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと前述した補正方法とを関連付けたデータでる。マッチングパターンの詳細は後述する。
【0034】
本実施形態に係る印刷装置Sは、上述したように文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、当該領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する拡大部112と、選択部113が選択したマッチングパターンに対応する補正方法で、拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する補正部114と、を有する。よって、印刷装置Sにおいては、印刷した文字のエッジに段差を生じさせづらくすることができる。また、印刷装置Sにおいては、1つの補正領域が3マス×3マスの9マスで構成されていることで、マッチングパターンを選択する処理の処理量を抑えつつ、印刷した文字のエッジを滑らかにすることができる。
【0035】
[印刷装置Sの動作フローチャート]
図2は、印刷装置Sの動作の流れを示すフローチャートである。図3は、印刷する対象となる文字データの一例を示す図である。
【0036】
図4は、複数の補正領域の一例を示す図である。図5は、拡大部112が作成した第1段階のデータの一例を示す図である。図6は、拡大部112が作成した第2段階のデータの一例を示す図である。図7は、拡大データの一例を示す図である。
【0037】
図8は、記憶部12が記憶する複数のマッチングパターンの例を示す図である。図8(a)~図8(j)は、第1斜め補正に関連付けられたマッチングパターンの例を示す図である。図8(k)~図8(t)は、第2斜め補正に関連付けられたマッチングパターンの例を示す図である。図8(u)~図8(y)は、第3斜め補正に関連付けられたマッチングパターンの例を示す図である。
【0038】
まず、データ取得部111は、印刷する対象となる文字データを取得する(S11)。図3に示すように、例えば、縦10画素×横7画素の文字データを取得する。図3中における縦軸に示す数字、及び横軸に示す数字は、各画素の位置を示すための座標である。次に、データ取得部111は、拡大率データを取得する(S12)。次に、拡大部112は、拡大率データが示す拡大率に基づいて、補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさを決定する(S13)。本実施形態では、前述したように拡大率は9倍であり、1マスは、3画素×3画素により構成される。
【0039】
次に、拡大部112は、文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、当該領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する(S14)。
【0040】
具体的には、拡大部112は、複数の補正領域を準備する(図4)。図4中に示す実線で囲まれた領域が、1つの補正領域である。1マスは、実線又は破線で囲まれる領域である。1つの補正領域は、縦3マス×横3マスを有する。図4中における縦軸に示す数字、及び横軸に示す数字は、マスの位置を示すための座標である。そして、拡大部112は、図3に示す縦10画素×横7画素の印刷する対象となる文字データを縦3画素×横3画素毎に縦3つの補正領域×横3つの補正領域に割り当てる(図5)。
【0041】
例えば、図3で示す文字データにおける縦3画素×横3画素(縦8~10、横1~3)により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、図4で示す縦3つの補正領域×横3つの補正領域(縦22~30、横1~9)に割り当てる。この場合、9個の画素に対応する9つの補正領域それぞれにおける中央のマスの画素値を第1画素値に変更する。よって、図4で示す縦3つの補正領域×横3つの補正領域(縦22~30、横1~9)における(縦,横)=(23,8)の位置の第2画素値のマスの画素値が第1画素値に変更される(図5)。
【0042】
そして、次に、例えば、図3で示す文字データにおける縦3画素×横3画素(縦8~10、横2~4)により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、図4で示す縦3つの補正領域×横3つの補正領域(縦22~30、横4~12)に割り当てる。この場合、前述したように、9個の画素に対応する9つの補正領域それぞれにおける中央のマスの画素値を第1画素値に変更する。よって、図4で示す縦3つの補正領域×横3つの補正領域(縦22~30、横4~12)における(縦,横)=(23,8)、(26,11)、(23,11)の位置の第2画素値のマスの画素値が第1画素値に変更される(図5)。
【0043】
このようにして、拡大部112は、順に、図3で示す文字データに含まれる縦3画素×横3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、図4で示す3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、図5に示す第1段階のデータを作成する。
【0044】
次に、拡大部112は、原画像の隣接画素を継承して隣接する複数の補正領域における第1画素値のマス同士の縦、横、及び斜めの間における第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更する(図6)。例えば、図5で示す第1段階のデータにおいて、隣接する複数の補正領域における第1画素値の複数のマス((縦,横)=(26,11)、(23,11))の縦の間における複数の第2画素値のマス((縦,横)=(25,11)、(24,11))の画素値を第1画素値に変更する。このようにして、拡大部112は、隣接する複数の補正領域における第1画素値のマス同士の縦、横、及び斜めの間における第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更することにより、図6に示す第2段階のデータを作成する。
【0045】
次に、拡大部112は、第1画素値の複数のマスに囲まれた第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更する。具体的には、拡大部112は、隣接する上下のマス、及び隣接する左右のマスが第1画素値の画素である第2画素値のマスの画素値を第1画素値に変更する(図7)。例えば、図6で示す第2段階のデータにおいて、第1画素値のマスである上下の複数のマス((縦,横)=(25,10)、(23,10))、及び第1画素値のマスである左右の複数のマス((縦,横)=(24,9)、(24,11))に囲まれた第2画素値のマス((縦,横)=(24,10))の画素値を第1画素値に変更する。このようにして、拡大部112は、第1画素値の複数の画素に囲まれた第2画素値の画素の画素値を第1画素値に変更することにより、図7に示す拡大データを作成する。
【0046】
次に、選択部113は、記憶部12が記憶する複数のマッチングパターンから、補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択する(S15)。
【0047】
例えば、図7に示す補正領域(縦25~27、横10~12)は、図8(c)に示すマッチングパターンに一致する。よって、この場合、選択部113は、図8(c)に示すマッチングパターンを選択する。図8(c)に示すマッチングパターンは、後述する第1斜め補正に関連付けられている。また、例えば、図7に示す補正領域(縦16~18、横7~9)は、図8(l)に示すマッチングパターンに一致する。よって、この場合、選択部113は、図8(l)に示すマッチングパターンを選択する。図8(l)に示すマッチングパターンは、後述する第2斜め補正に関連付けられている。
【0048】
次に、補正部114は、選択部113が選択したマッチングパターンに対応する補正方法で、拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する(S16)。
【0049】
図9は、補正方法の例を示す図である。図9(a)及び図9(b)は、第1斜め補正の例を示す図である。図9(c)及び図9(d)は、第2斜め補正の例を示す図である。図9(e)及び図9(f)は、第3斜め補正の例を示す図である。図10は、印刷データの一例を示す図である。
【0050】
図9(a)に示すように、補正部114は、選択部113が選択したマッチングパターンが第1斜め補正に関連付けられているマッチングパターンである場合、補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値のマスの対角線に対して当該複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正する(図9(b))。
【0051】
図9(c)に示すように、補正部114は、選択部113が選択したマッチングパターンが第2斜め補正に関連付けられているマッチングパターンである場合、補正領域に含まれる第1画素値の複数のマスに接する第2画素値の第1マスと、第1マスと第1画素値のマスに接する第2画素値の第2マスと、から構成される長方形領域の対角線に対して、当該複数のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正する(図9(d))。
【0052】
図9(e)に示すように、補正部114は、選択部113が選択したマッチングパターンが第3斜め補正に関連付けられているマッチングパターンである場合、補正領域において、隣接する第1画素値の2個のマスと、当該2個のマスと同じ行又は列に含まれる第2画素値の1個のマスと、により構成される長方形領域を、当該長方形領域の対角線に対して、第1画素値の他のマスの側の領域の画素値を第1画素値に補正し、対角線に対して反対側の領域の画素値を第2画素値に補正する(図9(f))。
【0053】
このようにして、補正部114は、印刷データを作成する(図10)。次に、印刷部115は、印刷データを印刷する(S17)。印刷装置Sにおいては、上述したように、1つの補正領域が3マス×3マスの9マスで構成されていることで、マッチングパターンを選択する処理の処理量を抑えつつ、印刷した文字のエッジを滑らかにすることができる。
【0054】
[変形例]
図11は、補正方法の変形例を示す図である。図11(a)及び図11(b)は、第1斜め補正の変形例を示す図である。図11(c)及び図11(d)は、第2斜め補正の変形例を示す図である。図11(e)及び図11(f)は、第3斜め補正の変形例を示す図である。
【0055】
本実施形態では、拡大率は9倍であり、1マスは、3画素×3画素により構成される例を示したが、これに限定されない。倍率によって9マスのうちの中心のマス(主マス)、及び中心のマスの周りの8つのマス(隣接マス)の大きさが異なる。主マスは正方形であるが、隣接マスは長方形の場合も生じる。
【0056】
例えば、拡大率は16倍であってもよい。この場合、補正領域に含まれる9個のマスそれぞれの大きさは、図11(a)~図11(f)に示すようになる。すなわち、補正領域に含まれる9個のマスのうち、中心のマスは縦6画素×横6画素により構成されており、中心のマスに隣接する上下の2つのマスは、縦5画素×横6画素により構成されており、中心のマスに隣接する左右の2つのマスは、縦6画素×横5画素により構成されており、中心のマスに隣接する斜め方向の4つのマスは、縦5画素×横5画素により構成されている。
【0057】
[本実施形態に係る印刷装置Sによる効果]
本実施形態に係る印刷装置Sは、印刷する対象となる文字データを取得するデータ取得部111と、文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する拡大部112と、を有する。
【0058】
また、印刷装置Sは、3マス×3マスの領域に含まれる複数のマスの画素値のパターンがそれぞれ異なる複数のマッチングパターンと補正方法とを関連付けて記憶する記憶部12と、記憶部12が記憶する複数のマッチングパターンから、補正領域に含まれる9マスの画素値が示すパターンと一致するマッチングパターンを選択する選択部113と、を有する。また、印刷装置Sは、選択部113が選択したマッチングパターンに対応する補正方法で、拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する補正部114と、印刷データを印刷する印刷部115と、を有する。
【0059】
本実施形態に係る印刷装置Sは、このように文字データに含まれる3画素×3画素により構成される領域に含まれる9個の画素の画素値を、当該領域よりも大きい3マス×3マスの補正領域に割り当てることにより、拡大データを作成する拡大部112と、選択部113が選択したマッチングパターンに対応する補正方法で、拡大データに含まれる複数の補正領域の画素値を補正することにより印刷データを作成する補正部114と、を有する。よって、印刷装置Sにおいては、印刷した文字のエッジに段差を生じさせづらくすることができる。また、印刷装置Sにおいては、1つの補正領域が3マス×3マスの9マスで構成されていることで、マッチングパターンを選択する処理の処理量を抑えつつ、印刷した文字のエッジを滑らかにすることができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0061】
S・・・印刷装置
11・・・制御部
111・・・データ取得部
112・・・拡大部
113・・・選択部
114・・・補正部
115・・・印刷部
12・・・記憶部
T・・・外部装置
図1
図2
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図10
図11