(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ラミネート用接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20220722BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220722BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/10
C08G18/64 015
(21)【出願番号】P 2020530176
(86)(22)【出願日】2019-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2019026992
(87)【国際公開番号】W WO2020013129
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2018131270
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐太
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一博
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/133496(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104510(WO,A1)
【文献】特開2014-019711(JP,A)
【文献】特開2014-058685(JP,A)
【文献】特開2011-102387(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J175/04-175/16
C08G18/10;18/32;18/68;18/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有し、
前記ポリオール成分は、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体との反応生成物であるポリウレタンポリオールを含み、
前記ポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネート誘導体および/または脂環族ジイソシアネート誘導体であることを特徴とする、ラミネート用接着剤。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および/または脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用接着剤。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート誘導体は、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用接着剤。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および/またはキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有することを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用接着剤。
【請求項5】
前記ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体およびキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有することを特徴とする、
請求項1に記載のラミネート用接着剤。
【請求項6】
キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の含有割合に対する、キシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体の含有割合の比が、1.5以上4以下であることを特徴とする、請求項5に記載のラミネート用接着剤。
【請求項7】
前記ポリオールは、低分子量ポリオールと多塩基酸との反応生成物であり、
前記多塩基酸は、ダイマー酸を含み、
前記低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のラミネート用接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用接着剤、詳しくは、ラミネートフィルムのラミネート加工に用いられるラミネート用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業分野で使用される包装材料として、ラミネートフィルム、具体的には、例えば、プラスチックフィルムや、アルミニウムなどの金属箔、金属蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどを接着剤によりラミネート加工して得られるラミネートフィルムが、知られている。
【0003】
このようなラミネートフィルムに用いられる接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン接着剤、すなわち、ポリイソシアネート成分を含む硬化剤と、ポリオール成分を含む主剤とを、組み合わせて使用する二液硬化型ポリウレタン接着剤が、知られている。
【0004】
より具体的には、例えば、ポリオールと、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)との反応により得られるポリウレタンポリオールを含む主剤、および、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む硬化剤とを含有するラミネート用接着剤、さらに、そのラミネート用接着剤により複数のフィルムが接着され、24℃において4日間養生されて得られるラミネートフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、ラミネートフィルムの製造において、4日以上の養生を必要とするラミネート用接着剤を用いると、ラミネートフィルムの製造に時間がかかるという不具合がある。
【0007】
本発明は、より短い時間で養生しても、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制できるラミネート用接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有し、前記ポリオール成分は、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体との反応生成物であるポリウレタンポリオールを含み、前記ポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネート誘導体および/または脂環族ジイソシアネート誘導体である、ラミネート用接着剤である。
【0009】
本発明[2]は、前記ポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および/または脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体である、上記[1]に記載のラミネート用接着剤を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記ポリイソシアネート誘導体は、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート誘導体であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のラミネート用接着剤を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、前記ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および/またはキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のラミネート用接着剤を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、前記ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体およびキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有することを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のラミネート用接着剤を含んでいる。
【0013】
本発明[6]は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の含有割合に対する、キシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体の含有割合の比が、1.5以上4以下であることを特徴とする、上記[5]に記載のラミネート用接着剤を含んでいる。
【0014】
本発明[7]は、前記ポリオールは、低分子量ポリオールと多塩基酸との反応生成物であり、前記多塩基酸は、ダイマー酸を含む、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のラミネート用接着剤を含んでいる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のラミネート用接着剤は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有し、ポリオール成分は、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体との反応生成物であるポリウレタンポリオールを含み、ポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネート誘導体および/または脂環族ジイソシアネート誘導体である。そのため、このラミネート用接着剤を短い時間で養生しても、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のラミネート用接着剤は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有し、好ましくは、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とからなる。
【0017】
ポリイソシアネート成分は、後述するポリオール成分(主剤)の硬化剤であって、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0018】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート単量体などが挙げられる。
【0019】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0020】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0021】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0022】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート(1,2-水添キシリレンジイソシアネート、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
これらポリイソシアネート単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0024】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体)、5量体、7量体など)、アロファネート誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、公知の低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート誘導体など)、ポリオール誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と公知のトリオール(好ましくは、トリメチロールプロパン)との反応により生成するトリオール誘導体)など)、ビウレット誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット誘導体など)、ウレア誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア誘導体など)、オキサジアジントリオン誘導体(例えば、上記したポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド誘導体(上記したポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド誘導体など)、ウレトジオン誘導体、ウレトンイミン誘導体などが挙げられる。さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)なども挙げられる。
【0025】
これらポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0026】
ポリイソシアネート成分は、好ましくは、ポリイソシアネート誘導体を含有し、より好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネートのポリイソシアネート誘導体を含有し、さらに好ましくは、キシリレンジイソシアネートのポリイソシアネート誘導体を含有する。
【0027】
また、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、ポリイソシアネート単量体の多量体および/またはポリイソシアネート単量体のポリオール誘導体を含有し、より好ましくは、ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体および/またはポリイソシアネート単量体のトリオール誘導体を含有する。
【0028】
そして、とりわけ好ましくは、ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および/またはキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有する。
【0029】
ポリイソシアネート成分が、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および/またはキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有すれば、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制でき、接着強度に優れる。
【0030】
特に好ましくは、ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有する。
【0031】
ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含有すれば、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制でき、レトルト後の外観およびヒートシール強度に優れる。
【0032】
そして、最も好ましくは、ポリイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体およびキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有する。
【0033】
ポリイソシアネート成分が、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体およびキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有すれば、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制でき、レトルト後の外観およびヒートシール強度、接着強度に優れる。
【0034】
ポリイソシアネート成分が、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体およびキシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体を含有する場合には、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の含有割合に対する、キシリレンジイソシアネートのトリオール誘導体の含有割合の比は、例えば、0.5以上、好ましくは、1.5以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、10.0以下、好ましくは、4.0以下、より好ましくは、3.0以下である。
【0035】
上記した比が、上記の下限以上であれば、レトルト後の接着強度に優れる。
【0036】
上記した比が、上記の上限以下であれば、レトルト後の外観およびヒートシール強度に優れる。
【0037】
また、ポリイソシアネート成分は、有機溶媒で希釈することができる。
【0038】
有機溶媒としては、例えば、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0039】
これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
有機溶媒としては、好ましくは、アルキルエステル類、さらに好ましくは、酢酸エチルが挙げられる。
【0041】
また、ポリイソシアネート成分が有機溶媒で希釈される場合において、ポリイソシアネート成分の固形分濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、50質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。なお、ポリイソシアネート成分は、有機溶媒で希釈することなく、すなわち、固形分濃度100質量%で用いることもできる。
【0042】
ポリオール成分は、上記したポリイソシアネート成分の主剤であって、必須成分として、ポリウレタンポリオールを含んでいる。
【0043】
ポリウレタンポリオールは、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体との反応生成物である。
【0044】
ポリオールとしては、例えば、高分子量ポリオールが挙げられる。
【0045】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上、好ましくは、500以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0047】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、後述する低分子量ポリオールまたは芳香族/脂肪族ポリアミンを開始剤とする、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)が挙げられる。
【0048】
ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に後述する2価アルコールを共重合した非晶性ポリオキシテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0049】
また、フルフラールなどの植物由原料をもとに製造されたテトラヒドロフランを出発原料とした植物由来のポリオキシテトラメチレンエーテルグリコールも使用することができる。
【0050】
ポリオキシトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物由来の1,3-プロパンジオールの縮重合により製造されるポリオールが挙げられる。
【0051】
ポリエステルポリオールとしては、低分子量ポリオール(多価アルコール)と多塩基酸との重縮合による反応生成物(重縮合型ポリエステルポリオール)が挙げられる。
【0052】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量40以上400未満、好ましくは、300以下の化合物であって、例えば、2価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなど)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなど)、4価アルコール(例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなど)、5価アルコール(例えば、キシリトールなど)、6価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなど)、7価アルコール(例えば、ペルセイトールなど)、8価アルコール(例えば、ショ糖など)などが挙げられる。
【0053】
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0054】
このような低分子量ポリオールとしては、好ましくは、2価アルコール(低分子量ジオール)が挙げられ、さらに好ましくは、2種以上の2価アルコール(低分子量ジオール)が挙げられ、とりわけ好ましくは、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、最も好ましくは、エチレングリコールと、ネオペンチルグリコールと、1,6-ヘキサンジオールとを併用する。
【0055】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物(例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸)、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド(例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド)などが挙げられる。
【0056】
多塩基酸は、好ましくは、少なくとも、飽和脂肪族ジカルボン酸(好ましくは、アジピン酸)および芳香族ジカルボン酸(好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸)を含み、より好ましくは、さらに、その他のカルボン酸(好ましくは、ダイマー酸)を含む。
【0057】
つまり、より好ましくは、多塩基酸は、ダイマー酸を含んでいる。
【0058】
多塩基酸がダイマー酸を含むと、熱間強度に優れ、レトルト後のヒートシール強度および接着性能に優れる。
【0059】
そして、多塩基酸と低分子量ポリオールとを反応させるには、多塩基酸のカルボキシル基に対する、低分子量ポリオールの水酸基の当量比(水酸基/カルボキシル基)が、例えば、1を超過2以下となる割合で多塩基酸と低分子量ポリオールとを配合し、必要により、エステル化触媒を添加して、多塩基酸と低分子量ポリオールとをエステル化反応させる。
【0060】
エステル化触媒としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトラブチルチタネートなどの有機チタン化合物、例えば、ジブチルスズオキサイドなどの有機スズ化合物、例えば、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸カルシウムなどの酢酸金属塩などの公知のエステル化触媒が挙げられる。
【0061】
これらエステル化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0062】
このようなエステル化触媒として、好ましくは、酢酸金属塩、より好ましくは、酢酸亜鉛が挙げられる。
【0063】
また、エステル化触媒の添加割合は、多塩基酸100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、例えば、0.5質量部以下、好ましくは、0.1質量部以下である。
【0064】
エステル化反応の反応条件としては、温度が、例えば、150℃以上250℃以下であり、時間が、例えば、8時間以上96時間以下である。エステル化反応は、好ましくは、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴンなど)にて実施される。
【0065】
これにより、多塩基酸と低分子量ポリオールとがエステル化反応して、ポリエステルポリオールが調製される。なお、ポリエステルポリオールは、上記した多塩基酸のアルキルエステルと、上記した低分子量ポリオールとの公知のエステル交換反応によって調製することもできる。
【0066】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールと、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸とを、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0067】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0068】
ポリエステルポリオールとしては、好ましくは、重縮合型ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0069】
ポリエステルポリオールの150℃における粘度は、例えば、100mPa・s以上、好ましくは、1000mPa・s以上であり、また、例えば、10000mPa・s以下、好ましくは、8000mPa・s以下、より好ましくは、7000mPa・s以下、さらに好ましくは、6500mPa・s以下である。
【0070】
なお、粘度は、JIS K 7117-2(1999年)に準拠して、コーンプレート型粘度計により測定することができる(以下同様)。
【0071】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0072】
また、上記のポリオールは、必要に応じて、酸変性されていてもよい。
【0073】
ポリオールを酸変性する方法としては、特に制限されず、公知の方法が採用される。具体的には、例えば、ポリオールの末端水酸基に、例えば、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸などの無水酸を、ポリオールの末端水酸基に対する、無水酸の当量比(無水酸/水酸基)が、例えば、0.1以上1.0以下となる割合で、反応させる。なお、反応条件は、ポリオールの種類や、無水酸の種類などに応じて、適宜設定される。
【0074】
平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体は、上記したポリイソシアネート誘導体のうち、平均官能基数が2を超過、好ましくは、2.5以上、より好ましくは、3以上であり、また、例えば、5以下、好ましくは、4以下であるポリイソシアネート誘導体である。なお、平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体は、官能基として、イソシアネート基を有する。
【0075】
平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネート誘導体および/または脂環族ジイソシアネート誘導体である。
【0076】
平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体が、芳香脂肪族ジイソシアネート誘導体および/または脂環族ジイソシアネート誘導体であるため、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制でき、また、レトルト後のヒートシール強度および接着性能に優れる。
【0077】
好ましくは、平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体として、キシリレンジイソシアネート(XDI)誘導体、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)誘導体、さらに好ましくは、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)誘導体が挙げられる。
【0078】
平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体が、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)誘導体であれば、レトルト後のヒートシール強度および接着性能に一層優れる。
【0079】
また、好ましくは、平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体として、イソシアヌレート誘導体、トリオール誘導体が挙げられ、より好ましくは、イソシアヌレート誘導体(具体的には、芳香脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体および脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体)が挙げられる。
【0080】
平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体が、イソシアヌレート誘導体であれば、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制でき、レトルト後の外観に優れる。
【0081】
そして、とりわけ好ましくは、平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体として、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0082】
平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体が、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート誘導体であれば、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制できるとともに、レトルト後の接着性能のさらなる向上を図ることができる。
【0083】
そして、ポリウレタンポリオールを得るには、イソシアネート基に対する水酸基の当量比(OH/NCO)が、例えば、1を超過する割合で、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体とを配合し、必要により、ウレタン化触媒を添加して、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体とをウレタン化反応させる。
【0084】
ウレタン化触媒としては、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒などが挙げられる。
【0085】
アミン類としては、例えば、3級アミン類(例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテルなど)、4級アンモニウム塩(例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなど)、イミダゾール類(例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなど)などが挙げられる。
【0086】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫などの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、有機ビスマス化合物、例えば、有機ジルコニウム化合物、例えば、有機チタン化合物、例えば、有機亜鉛化合物などが挙げられる。
【0087】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0088】
ウレタン化触媒としては、好ましくは、有機錫系化合物、さらに好ましくは、オクチル酸錫が挙げられる。また、ウレタン化触媒の添加割合は、平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.05質量部以上、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0089】
ウレタン化反応の反応条件としては、温度が、例えば、40℃以上100℃以下であり、時間が、例えば、2時間以上24時間以下である。ウレタン化反応は、好ましくは、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素、アルゴンなど)にて実施される。
【0090】
これにより、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体とがウレタン化反応して、分子末端に水酸基を有するポリウレタンポリオールが調製される。
【0091】
このようにして得られたポリウレタンポリオールの数平均分子量(標準ポリスチレン換算)は、例えば、3000以上、好ましくは、5000以上であり、例えば、10000以下である。
【0092】
ポリオール成分の酸価は、通常、0mgKOH/g以上であり、例えば、280mgKOH/g以下、好ましくは、100mgKOH/g以下、より好ましくは、50mgKOH/gである。
【0093】
また、ポリオール成分は、上記した有機溶媒(好ましくは、酢酸エチル)で希釈することができる。
【0094】
ポリオール成分が有機溶媒に希釈される場合において、ポリオール成分の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。なお、ポリオール成分は、有機溶媒で希釈することなく、すなわち、固形分濃度100質量%で用いることもできる。
【0095】
また、ラミネート用接着剤は、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、例えば、スルホンアミド基を含有する化合物、例えば、リンの酸素酸またはその誘導体、さらには、エポキシ樹脂、触媒、カルボン酸またはその無水物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤などの公知の添加剤などを、適宜の割合で含有することができる。
【0096】
なお、ラミネート用接着剤が上記の添加剤を含有する場合、その配合のタイミングは特に制限されず、例えば、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分のいずれか一方または両方に配合してもよく、また、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の配合時に同時に添加剤を配合してもよく、また、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の配合後に、添加剤を別途配合してもよい。また、添加割合は、添加剤の種類などに応じて、適宜設定される。
【0097】
そして、本発明のラミネート用接着剤は、例えば、二液硬化型ポリウレタン樹脂として調製される。
【0098】
すなわち、本発明のラミネート用接着剤は、予め、ポリイソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール成分(主剤)をそれぞれ別々に調製して用意しておき、使用時において、それらポリイソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール成分(主剤)を配合して、被着体に塗布するようにして使用される。
【0099】
ポリイソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール成分(主剤)との配合割合は、ポリオール成分(主剤)中の水酸基に対するポリイソシアネート成分(硬化剤)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.4以上、好ましくは、0.5以上であり、例えば、10以下、好ましくは、6以下である。
【0100】
ラミネート用接着剤を、二液硬化型ポリウレタン樹脂(すなわち、二液タイプのウレタン接着剤)として使用すれば、ポリイソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール成分(主剤)とが別々に調製されているので、ポットライフが長い一方で、使用時には、ポリイソシアネート成分(硬化剤)およびポリオール成分(主剤)をそれぞれ必要な最小量だけ配合することによって、速硬化で接着性能に優れる接着剤として有効に使用することができる。
【0101】
そして、上記のラミネート用接着剤は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有し、ポリオール成分は、ポリオールと平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体との反応生成物であるポリウレタンポリオールを含み、ポリイソシアネート誘導体は、芳香脂肪族ジイソシアネート誘導体および/または脂環族ジイソシアネート誘導体である。このようなポリウレタンポリオールは、分子内に、平均官能基数が2を超過するポリイソシアネート誘導体に基づく分岐構造を有するため、高い架橋密度および凝集力を有する。その結果、このラミネート用接着剤を短い時間で養生しても、接着強度に優れ、また、硬化が不十分となることがないため、加熱処理時におけるデラミネーションを抑制できる。その結果、上記のラミネート用接着剤は、複数のフィルムを接着(貼着)させ、ラミネートフィルムを製造するための接着剤、具体的には、食品、飲料、医薬品および医薬部外品などの各種の産業分野における包装材料を製造するためのラミネート用接着剤として、好適に使用される。
【0102】
このラミネート用接着剤を用いて、ラミネートフィルムを製造するには、まず、上記のラミネート接着剤によって、複数のフィルムを接着させる。
【0103】
例えば、有機溶剤で希釈されている硬化剤および主剤を用いる場合には、硬化剤と主剤とを混合した後、溶剤型ラミネーターによって、この混合物を各フィルム表面に塗布し、溶剤を揮散させた後、接着面を貼り合わせ、その後、常温(20℃以上30℃未満)において養生して硬化させる。
【0104】
塗布量は、好ましくは、溶剤揮散後において、約2.0g/m2以上5.0g/m2以下である。
【0105】
また、養生時間は、例えば、12時間以上、好ましくは、24時間以上であり、例えば、4日間以下、好ましくは、2日間以下である。
【0106】
また、例えば、有機溶剤で希釈されていない硬化剤および主剤を用いる場合には、硬化剤と主剤とを混合した後、無溶剤型ラミネーターによって、この混合物を各フィルム表面に塗布し、接着面を貼り合わせ、その後、上記の条件で、常温において養生して硬化させる。なお、塗布量は、例えば、1.0g/m2以上4.0g/m2以下である。
【0107】
また、ラミネートされるフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、例えば、アルミニウムなどの金属箔、金属蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ-アルミナ複合蒸着フィルム、ステンレス、鉄、銅、鉛などの金属フィルムなどが挙げられる。
【0108】
これらフィルムは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、フィルムは、必要により、延伸処理、コロナ処理、コーティング処理など、公知の処理が施されていてもよい。
【0109】
フィルムの厚みは、種類および用途に応じて、適宜設定される。
【0110】
そして、このラミネート用接着剤は、常温(20℃以上30℃未満)で養生することで、硬化させることができる。
【0111】
なお、必要により、このラミネート用接着剤を、加熱下(30℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、60℃以下)で養生してもよい。
【実施例】
【0112】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.ポリオールの調製
表1に示す配合処方に基づいて、ポリオールを調製した。
【0113】
合成例1
イソフタル酸665.7質量部、テレフタル酸166.4質量部、アジピン酸187.7質量部、エチレングリコール277.9質量部、ネオペンチルグリコール268.6質量部、1,6-ヘキサンジオール395.9質量部、ダイマー酸(クローダ社製、商品名プリポール1013、以下同様。)37.4質量部および酢酸亜鉛0.5質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、コーンプレート型粘度計によって測定される粘度が約6000mPa・s(150℃)のポリエステルポリオールを得た。これを150℃まで冷却した後、無水トリメリット酸9.25質量部を加え、1時間反応させた。この全量を酢酸エチル1500.0質量部に溶解させ、固形分濃度57%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0114】
合成例2
イソフタル酸665.7質量部、テレフタル酸166.4質量部、アジピン酸187.7質量部、エチレングリコール277.9質量部、ネオペンチルグリコール268.6質量部、1,6-ヘキサンジオール395.9質量部、ダイマー酸37.4質量部および酢酸亜鉛0.5質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、コーンプレート型粘度計によって測定される粘度が約7000mPa・s(150℃)のポリエステルポリオールを得た。これを150℃まで冷却した後、無水トリメリット酸9.25質量部を加え、1時間反応させた。この全量を酢酸エチル1500.0質量部に溶解させ、固形分濃度56%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0115】
合成例3
イソフタル酸678.4質量部、テレフタル酸169.6質量部、アジピン酸191.3質量部、エチレングリコール283.2質量部、ネオペンチルグリコール273.7質量部、1,6-ヘキサンジオール403.4質量部および酢酸亜鉛0.5質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、コーンプレート型粘度計によって測定される粘度が約6000mPa・s(150℃)のポリエステルポリオールを得た。これを150℃まで冷却した後、無水トリメリット酸9.25質量部を加え、1時間反応させた。この全量を酢酸エチル1500.0質量部に溶解させ、固形分濃度57%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0116】
合成例4
イソフタル酸665.7質量部、テレフタル酸166.4質量部、アジピン酸187.7質量部、エチレングリコール277.9質量部、ネオペンチルグリコール268.6質量部、1,6-ヘキサンジオール395.9質量部、ダイマー酸37.4質量部および酢酸亜鉛0.5質量部、グリセリン10.0質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、コーンプレート型粘度計によって測定される粘度が約28000mPa・s(150℃)のポリエステルポリオールを得た。この全量を酢酸エチル1500.0質量部に溶解させ、固形分濃度56%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0117】
合成例5
イソフタル酸157.2質量部、テレフタル酸39.3質量部、グリセリン40.8質量部、1,6-ヘキサンジオール188.7質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、酸価が約6.4の時点でダイマー酸271.6質量部を加えた。さらに、酸価が約4.6の時点でチタンテトラブトキシド0.1質量部を加え、酸価が約0.8のポリエステルポリオールを得た。これを150℃まで冷却した後、無水トリメリット酸67.5質量部を加え、1時間反応させた。この全量を酢酸エチル300.0質量部に溶解させ、固形分濃度70%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0118】
合成例6
イソフタル酸488.3質量部、アジピン酸137.7質量部、エチレングリコール203.9質量部、ネオペンチルグリコール219.0質量部、1,6-ヘキサンジオール290.5質量部および酢酸亜鉛0.4質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、数平均分子量約5000のポリエステルポリオールを得た。この全量を酢酸エチル800.0質量部に溶解させ、固形分濃度60%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0119】
合成例7
イソフタル酸488.3質量部、アジピン酸137.7質量部、エチレングリコール203.9質量部、ネオペンチルグリコール219.0質量部、1,6-ヘキサンジオール290.5質量部および酢酸亜鉛0.4質量部を窒素気流下180~220℃でエステル化反応させ、所定量の水およびグリコールを留出させ、数平均分子量約5000のポリエステルポリオールを得た。これを150℃まで冷却した後、無水トリメリット酸7.85質量部を加え、2時間反応させた。この全量を酢酸エチル805.2質量部に溶解させ、固形分濃度60%の溶液とし、ポリオールを得た。
【0120】
合成例8
合成例6のポリオール805.8質量部に、窒素雰囲気下で3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート16.54質量部、オクチル酸錫0.25質量部を加え、77~80℃で4時間ウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、酢酸エチル177.66質量部を加え、固形分濃度50%の溶液とし、ポリオール(ポリウレタンポリオール)を得た。
2.主剤(ポリオール成分)の調製
表2に示す配合処方に基づいて、主剤(ポリオール成分)を調製した。
【0121】
合成例9
合成例1のポリオール700.0質量部に、窒素雰囲気下でVestanat T1890/100(3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、固形分濃度:100質量%、エボニック デグサジャパン社製)13.9質量部、オクチル酸錫0.12質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、リン酸(和光純薬工業製、以下同様。)0.21質量部、アミノシラン(信越化学工業社製、商品名KBM603、以下同様。)0.41質量部、エポキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM403、以下同様。)2.05質量部混合した。この全量に酢酸エチル117.7質量部を混合して、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0122】
合成例10
合成例2のポリオール729.9質量部に、窒素雰囲気下でVestanat T1890/100 14.2質量部、オクチル酸錫0.13質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、エポキシシラン2.12質量部混合した。この全量を酢酸エチル102.1質量部に溶解させ、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0123】
合成例11
合成例2のポリオール729.9質量部に、窒素雰囲気下でD-131N(タケネートD-131N、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、固形分濃度:75質量%、三井化学社製) 18.9質量部、オクチル酸錫0.13質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、エポキシシラン2.12質量部混合した。さらに、酢酸エチル102.1質量部を加えて混合し、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0124】
合成例12
合成例2のポリオール729.9質量部に、窒素雰囲気下でD-110N(タケネートD-110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン誘導体(トリオール誘導体)、固形分濃度:75質量%、三井化学社製) 18.9質量部、オクチル酸錫0.13質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、エポキシシラン2.12質量部混合した。この全量を酢酸エチル102.1質量部に溶解させ、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0125】
合成例13
合成例2のポリオール729.9質量部に、窒素雰囲気下でD-140N(タケネートD-140N、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのトリメチロールプロパン誘導体(トリオール誘導体)、固形分濃度:75質量%、三井化学社製) 18.9質量部、オクチル酸錫0.13質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、エポキシシラン2.12質量部混合した。この全量を酢酸エチル102.1質量部に溶解させ、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0126】
合成例14
合成例3のポリオール700.0質量部に、窒素雰囲気下でVestanat T1890/100 13.9質量部、オクチル酸錫0.12質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、リン酸0.21質量部、アミノシラン0.41質量部、エポキシシラン2.05質量部混合した。この全量に酢酸エチル117.7質量部を混合して、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0127】
合成例15
合成例2のポリオール729.9質量部に、窒素雰囲気下でD-170N(タケネートD-170N、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、固形分濃度:100質量%、三井化学社製)14.2質量部、オクチル酸錫0.13質量部を加え、77~80℃でウレタン化反応させ、イソシアネート基の消失を確認した後、50℃に冷却し、エポキシシラン2.12質量部混合した。この全量を酢酸エチル102.1質量部に溶解させ、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0128】
合成例16
合成例4のポリオール844.8質量部、合成例5のポリオール39.0質量部、エポキシシラン2.5質量部、酢酸エチル113.64質量部混合し、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
【0129】
合成例17
合成例8のポリオール600.0質量部、合成例7のポリオール333.3質量部、リン酸0.15質量部、アミノシラン0.3質量部、エポキシシラン4.5質量部、酢酸エチル71.62質量部混合し、固形分濃度50%の溶液として、主剤を得た。
3.ラミネート用接着剤の製造
実施例1~実施例11、および、比較例1~比較例3
表3の記載に従って、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合し、ラミネート用接着剤を得た。
4.評価
(剥離強度)
各実施例および各比較例のラミネート用接着剤を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)/ナイロンフィルム(厚み15μm:両面コロナ処理)/アルミニウム箔(厚み9μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム(厚み60μm:両面コロナ処理)の4層からなる複合フィルムを作製した。
【0130】
すなわち、ラミネート用接着剤(硬化剤および主剤が配合されたもの)を、常温下、まず、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方面に塗布し、有機溶媒を揮散させた後、一方面(塗布面)をナイロンフィルムの他方面に貼り合わせ、2層複合フィルムを得た。
次いで、その2層複合フィルムのナイロンフィルムの一方面に、このラミネート用接着剤を塗布し、有機溶媒を揮散させた後、一方面(塗布面)をアルミニウム箔の他方面に貼り合わせ、3層複合フィルムを得た。次いで、その3層複合フィルムのアルミニウム箔の一方面に、このラミネート用接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、一方面(塗布面)を未延伸ポリプロピレンフィルムの他方面に貼り合わせた。
【0131】
なお、上記の貼り合わせ工程では、ラミネート用接着剤(硬化剤および主剤が配合されたもの)を、適宜、酢酸エチルでさらに希釈し、溶剤揮散後の塗布量が約3.3g/m2となるように、貼り合せた。
【0132】
その後、得られた4層複合フィルムを、24℃(非加熱)で2日間の条件で養生し、このラミネート用接着剤を硬化させた。これにより、ラミネートフィルムを得た。
【0133】
また、このラミネートフィルムの一部を、ヒートシーラーに装着し、220℃の条件で、ヒートシールした。
【0134】
得られたラミネートフィルムについて、ナイロンフィルム/アルミニウム箔間(NY/AL)の剥離強度、および、ヒートシール部の剥離強度(HS強度)を、JIS K 6854-3(1999年)に準拠して、15mm幅、引張速度300mm/minにて測定した。また、この測定は、24℃下(常態強度)および120℃恒温槽下(熱間強度)の下で実施した。
【0135】
その結果を、表3に示す。
【0136】
また、得られたラミネートフィルムについて、ヒートシール部を目視で観察し、そのヒートシール耐性を評価した。
【0137】
判定基準は下記の通りである。
【0138】
判定基準○:デラミネーションが確認されなかった。
【0139】
判定基準△:デラミネーションがヒートシール部の一部に確認された。
【0140】
判定基準×:ヒートシール部の大部分にデラミネーションが確認された。
【0141】
(非加熱養生レトルト試験)
上記で得られたラミネートフィルムを使用して、13×17.5cm(シール幅5~10mm)の大きさの袋を作製し、内容物として食酢/サラダ油/ケチャップを体積比1/1/1で混合したものを130g充填した。
【0142】
そして、袋の口部分をヒートシーラーに装着し、220℃の条件で、ヒートシールした。
【0143】
そして、この袋を、210×520×105mmのトレイに載置し、135℃で30分間、毎分8回転、0.35MPaの加圧下で熱水減菌した。
【0144】
そして、熱水減菌試験後の、ナイロンフィルム/アルミニウム箔間(NY/AL)、および、ヒートシール部の剥離強度(HS強度)を、JIS K 6854-3(1999年)に準拠して、24℃下、15mm幅、引張速度300mm/minにて測定した。また、熱水減菌試験後の外観を目視で評価した。その結果を表3に示す。
【0145】
なお、外観の評価について、判定基準は下記の通りである。
【0146】
判定基準○:デラミネーションが確認されなかった。
【0147】
判定基準△:デラミネーションがヒートシール部の一部に確認された。
【0148】
判定基準×:ヒートシール部の大部分にデラミネーションが確認された。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
T1890:Vestanat T1890/100、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、固形分濃度:100質量%、エボニック デグサ ジャパン社製
D-131N:タケネートD-131N、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、固形分濃度:75質量%、三井化学社製
D-110N:タケネートD-110N、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン誘導体(トリオール誘導体)、固形分濃度:75質量%、三井化学社製
D-140N:タケネートD-140N、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートのトリメチロールプロパン誘導体(トリオール誘導体)、固形分濃度:75質量%、三井化学社製
D-170N:タケネートD-170N、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、固形分濃度:100質量%、三井化学社製
AL:アルミニウム箔
NY:ナイロンフィルム
また、上記各試験において用いられたフィルムの詳細を下記する。
ポリエチレンテレフタレートフィルム:東洋紡社製 エステルフィルムE5102
ナイロンフィルム:ユニチカ社製 エンブレムONBC、両面コロナ処理
アルミニウム箔:東洋アルミニウム社製 アルミハクC
未延伸ポリプロピレンフィルム:東レフィルム加工社製 トレファンNO ZK207、両面コロナ処理
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明のラミネート用接着剤は、ラミネートフィルムのラミネート加工において、好適に用いられる。