(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】混合キシレンおよびハイオクタン価C9+芳香族化合物の同時生産プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 2/86 20060101AFI20220722BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20220722BHJP
C07C 15/02 20060101ALI20220722BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20220722BHJP
C10G 50/00 20060101ALI20220722BHJP
C10L 1/06 20060101ALI20220722BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220722BHJP
【FI】
C07C2/86
B01J29/70 Z
C07C15/02
C07C15/08
C10G50/00
C10L1/06
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020552708
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019022387
(87)【国際公開番号】W WO2019190774
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-30
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599134676
【氏名又は名称】エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】チェン、タン―ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ライ、ウェニー、エフ
(72)【発明者】
【氏名】ゴー、アンソニー
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/000974(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/138504(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/067282(WO,A1)
【文献】ZHU, Z et al.,Catalytic performance of MCM-22 zeolite for alkylation of toluene with methanol,Catalysis Today,2004年,Vol. 93-95,pp. 321-325
【文献】金子タカシ,オクタン価とガソリン品質設計,日本燃焼学会誌,2012年,第54巻170号,第217-220頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合キシレン流れおよびC
9+芳香族炭化水素流れを製造するプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
(a)芳香族炭化水素供給原料を、アルキル化条件の下でアルキル化触媒の存在下にアルキル化剤供給原料と接触させて、前記混合キシレンおよび前記C
9+芳香族炭化水素を含んでいるアルキル化芳香族製品流れを製造する工程であって、
前記芳香族炭化水素がベンゼンおよび/またはトルエンを含んでおり、前記アルキル化剤がメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでおり、前記アルキル化触媒が0超~約3の範囲の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでおり、およびアルキル化条件が500℃未満の温度を含み、
芳香族炭化水素供給原料とアルキル化剤供給原料とのモル比が1:1超~4:1未満の範囲にある、工程;
(b)前記アルキル化芳香族製品流れから前記混合キシレンおよび前記C
9+芳香族炭化水素を含んでいる流れを回収する工程;
(c)前記混合キシレン流れをキシレン異性化装置に供給して、パラキシレンを製造する工程;
(d)前記C
9+芳香族炭化水素流れを分離装置に供給して、少なくともC
9芳香族炭化水素流れを回収する工程であって、前記C
9芳香族炭化水素流れがトリメチルベンゼンの混合物およびエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる工程;
(e)前記C
9芳香族炭化水素流れを分離装置に供給して、トリメチルベンゼンの前記混合物を含んでいる流れおよび/またはエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる前記流れを回収する工程;および
(f)トリメチルベンゼンの前記混合物を含んでいる前記流れおよび/またはエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる前記流れを自動車燃料ブレンド成分として供給する工程。
【請求項2】
前記モレキュラーシーブが、MTW、BEA*、FAUまたはMORの骨格構造を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記MTW骨格構造を有する前記モレキュラーシーブが、ZSM-12である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記BEA*骨格構造を有する前記モレキュラーシーブが、ゼオライトベータである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記FAU骨格構造を有する前記モレキュラーシーブが、フォージャサイト、ゼオライトY、超安定Y(USY)、脱アルミニウムY(Deal Y)、希土類Y(REY)、超疎水性Yおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項6】
前記MOR骨格構造を有する前記モレキュラーシーブが、天然のモルデナイト、TEA-モルデナイトおよびこれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項7】
前記モレキュラーシーブが、ZSM-3、ZSM-4、ZSM-14、ZSM-18、ZSM-20、ZSM-38およびこれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記アルキル化芳香族製品流れが、前記混合キシレンを少なくとも約75重量%および/または前記C
9+芳香族炭化水素を少なくとも約21重量%含んでおり、各重量%が前記アルキル化芳香族製品流れの重量に基いている、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルキル化条件が、300℃~450℃の範囲の温度、700kPa-a~7000kPa-aの範囲の圧力および50時
-1~0.5時
-1の芳香族炭化水素供給原料に基いた重量時空間速度を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルキル化触媒が固定床に存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
C
9芳香族炭化水素流れおよびC
10芳香族炭化水素流れを製造するプロセスであって、以下の工程を含むプロセス:
(a)ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料を、アルキル化条件の下でZSM-12を含んでいるアルキル化触媒の存在下に、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいる供給原料と接触させて、前記C
9芳香族炭化水素およびC
10芳香族炭化水素を含んでいるアルキル化芳香族製品流れを製造する工程であって、
芳香族炭化水素供給原料と、メタノール
および/またはジメチルエーテルを含んでいる供給原料とのモル比が約1:1超~約4:1の範囲であり、かつ前記アルキル化条件が、300℃~450℃の範囲の温度、700kPa-a~7000kPa-aの範囲の圧力および50時
-1~0.5時
-1の芳香族炭化水素供給原料に基いた重量時空間速度を含む工程;
(b)前記アルキル化芳香族製品流れを分離して、前記C
9芳香族炭化水素流れおよび前記C
10芳香族炭化水素流れを回収する工程であって、
前記C
9芳香族炭化水素流れがトリメチルベンゼンの混合物およびエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる工程;
(c)前記C
9芳香族炭化水素流れを分離装置に供給して、トリメチルベンゼンの前記混合物を含んでいる流れ、および/またはエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる前記流れを回収する工程;
(d)トリメチルベンゼンの前記混合物を含んでいる前記流れおよび/またはエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる前記流れを自動車燃料ブレンド成分として供給する工程。
【請求項12】
以下の工程をさらに含む、請求項11に記載のプロセス:
(e)前記C
10芳香族炭化水素流れを自動車燃料ブレンド成分として供給する工程。
【請求項13】
トリメチルベンゼンの前記混合物が、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを含んでいる、請求項11または12に記載のプロセス。
【請求項14】
以下の工程をさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載のプロセス:
(f)トリメチルベンゼンの前記混合物を含んでいる前記流れを前記分離装置に供給して、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを含んでいる個別の複数の流れを回収する工程。
【請求項15】
以下の工程をさらに含む、請求項14に記載のプロセス:
(g)前記個別のトリメチルベンゼンの複数の流れのそれぞれを自動車燃料ブレンド成分として供給する工程。
【請求項16】
エチルメチルベンゼンの前記混合物が、1-エチル-2-メチルベンゼンおよび1-エチル-3-メチルベンゼンを含んでいる、請求項11~15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
以下の工程をさらに含む、請求項16に記載のプロセス:
(h)エチルメチルベンゼンの前記混合物を含んでいる前記流れを前記分離装置に供給して、1-エチル-2-メチルベンゼンおよび1-エチル-3-メチルベンゼンを含んでいる個別の複数の流れを回収する工程。
【請求項18】
以下の工程をさらに含む、請求項17に記載のプロセス:
(i)1-エチル-2-メチルベンゼンおよび1-エチル-3-メチルベンゼンを含んでいる前記個別の複数の流れのそれぞれを自動車燃料ブレンド成分として供給する工程。
【請求項19】
前記アルキル化触媒が固定床に存在する、請求項11~18のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月30日に出願された米国特許仮出願第62/650,673号および2018年4月27日に出願された欧州特許出願第18169815.0号の優先権を主張し、これらの内容はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素流れを、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいる流れを用いて、零超から約3までの範囲の拘束指数を有するモレキュラーシーブの存在下で、最も好ましくはZSM-12の存在下でアルキル化することによって混合キシレンおよびC9+炭化水素化合物を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
シェールガスの最近の発見および拡大する生産は、天然ガス(実質的にメタン)の重要な新しい供給源を示す。その結果、天然ガスの供給は、それほど高価でなくかつより潤沢なものとなり、その価値を高めることが有利な供給原料となった。これは、天然ガスを、芳香族化合物に富む供給原料を製造するための中間物としてのメタノールに変換するプロセスの進展をもたらした。
【0004】
石油精製産業は現在、単環状芳香族化合物ならびにC4~C10飽和分枝状非環状アルカンおよびオレフィンを含んでいる広範囲の炭化水素流れをブレンドすることによって自動車ガソリンプールの配合物を構成している。しかし、どのような誘導品でであっても、これらの炭化水素流れは広い範囲の成分を含んでおり、通常、いくつかの単位操作で(たとえば、炭化水素転換、蒸留または溶媒抽出によって)処理されて、特定の所望の成分または成分の組み合わせが得られている。これらの単位操作の1つの目的は、C9およびC10+芳香族炭化水素のようなハイオクタン価ガソリン成分を得ることである。これらの単位操作の別の目的は、高純度の、多くの場合99%超の化学品供給原料を、たとえば混合キシレンからパラキシレンを得ることであり、パラキシレンは、スチレン、フェノール、ポリアミドモノマー、テレフタル酸および他の化学製品の生産に大量に使用されている。
【0005】
したがって、高オクタン価自動車ガソリンブレンド成分および混合キシレンを製造するための、たとえばベンゼンおよび/またはトルエンをメタノールおよび/またはジメチルエーテルを用いてアルキル化することによる等の改善されたプロセスの必要性が存在する。本開示は、この必要性やその他の必要性を満たす。
【発明の概要】
【0006】
この開示の1つの様相では、芳香族炭化水素供給原料は、アルキル化触媒の存在下でアルキル化条件の下で、アルキル化剤流れを用いたアルキル化反応によってアルキル化芳香族製品流れに転化されて、アルキル化芳香族製品流れが形成されてもよい。アルキル化反応によって形成されたアルキル化芳香族製品流れは、混合キシレンおよびC9+炭化水素を含んでいる。芳香族炭化水素供給原料はトルエンおよび/またはベンゼンを含んでいてもよく、また、アルキル化剤はメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいる。
【0007】
この開示では、アルキル化触媒はモレキュラーシーブ、好ましくは比較的大きい細孔のモレキュラーシーブ、より好ましくは0超~約3、0超~約2の範囲の拘束指数、最も好ましくは約2の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいる。アルキル化反応では、芳香族炭化水素とアルキル化剤とのモル比は約1:1~約4:1、好ましくは約2:1~約4未満:1の範囲から選ばれ、より好ましくは芳香族炭化水素とアルキル化剤とのモル比は約3:1である。
【0008】
アルキル化芳香族製品流れは、アルキル化芳香族製品流れの重量に基いて、混合キシレンを少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%含んでいてもよく、また、C9+芳香族炭化水素を少なくとも17重量%、好ましくは少なくとも21重量%含んでいる。
【0009】
混合キシレンおよびC9+炭化水素は、当該アルキル化芳香族製品から回収されてもよい。混合キシレンは、キシレン異性化装置に供給されてパラキシレンが製造されてもよい。C9+炭化水素は、分離装置に供給されて、少なくともトリメチルベンゼンの混合物およびエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる少なくともC9芳香族炭化水素流れが回収されてもよい。C9芳香族炭化水素流れは、分離装置で分離されて、少なくともトリメチルベンゼンの混合物を含んでいる流れおよび少なくともエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる流れが回収されてもよい。これらのトリメチルベンゼンおよびエチルメチルベンゼンの流れは、自動車燃料ブレンド成分、好ましくは高いMONC値およびRONC値を有するものとして、一緒にまたは別個に供給されてもよい。
【0010】
有利であるには、アルキル化触媒は、MTW、BEA*、FAUの骨格構造を有するモレキュラーシーブを含んでいる。モレキュラーシーブは、ゼオライトおよび/またはこれらの骨格構造の混合物であってもよい。好ましくは、MTW骨格構造のモレキュラーシーブはZSM-12である。BEA*骨格構造のモレキュラーシーブは、好ましくはゼオライトベータである。FAU骨格構造のモレキュラーシーブは、好ましくはゼオライトYまたは超安定Y(USY)である。好ましくは、MOR骨格構造のモレキュラーシーブは、天然のモルデナイトまたはTEA-モルデナイトである。いくつかの様相では、モレキュラーシーブは、ZSM-3、ZSM-4、ZSM-14、ZSM-18、ZSM-20、ZSM-38およびこれらの混合物から成る群から選ばれる。
【0011】
好都合であるには、アルキル化条件は比較的穏やかであり、好ましくはこの反応は500℃未満の範囲、好ましくは300℃~450℃の範囲のアルキル化条件の下で実施される。圧力は700kPa-a~7000kPa-aの範囲にある。重量時空間速度は芳香族炭化水素供給原料の重量に基いて50時-1~0.5時-1の範囲にある。
【0012】
この開示の別の様相では、芳香族炭化水素供給原料は、アルキル化触媒、好ましくはZSM-12の存在下でアルキル化条件の下で、アルキル化剤流れを用いたアルキル化反応によってC9芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含んでいるアルキル化芳香族製品流れに転化されて、アルキル化芳香族製品流れが形成されてもよい。形成されたアルキル化芳香族製品流れは、C9芳香族炭化水素流れおよび任意的にC10芳香族炭化水素へと分離され、これらのそれぞれは自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。
【0013】
C9芳香族炭化水素流れは、トリメチルベンゼンの混合物および/またはエチルメチルベンゼンの混合物を含んでおり、これらの混合物は分離されてもよく、また、自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。トリメチルベンゼンは、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを含んでおり、それらを包含する異性体群である。エチルメチルベンゼンは、1-エチル,2-メチルベンゼンおよび1-エチル,3-メチルベンゼンを含んでおり、それらを包含する。トリメチルベンゼン異性体群のいずれもまたはエチルメチルベンゼンのいずれも分離されてもよく、また、ハイオクタン価を有する自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例2に記載された、メタノールでトルエンをアルキル化するプロセスにおいてオンストリーム時間に対するZSM-12上でのトルエンおよびメタノールの転化率を示すグラフである。
【0015】
【
図2】実施例2に記載された、メタノールでトルエンをアルキル化するプロセスにおいてオンストリーム時間に対するZSM-12上でのトルエンおよびメタノールの選択率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に開示されたアルキル化プロセスは、たとえば、0超~約3の範囲の拘束指数を有するモレキュラーシーブ等の比較的大きい細孔のモレキュラーシーブを含んでいるアルキル化触媒の存在下で、混合キシレンおよびC9+芳香族炭化水素を製造するプロセスを提供する。そのようなモレキュラーシーブとしては、MTW、BEA*、FAUまたはMORの骨格構造を有するモレキュラーシーブが挙げられるが、それらに制限されず、以下でさらに説明される。
定義
【0017】
本明細書で使用される用語「アルファ値」とは、触媒のクラッキング活性の尺度を意味し、米国特許第3,354,078号ならびにJournal of Catalysis、第4巻、527頁(1965年)、第6巻、278頁(1966年)および第61巻、395頁(1980年)に記載されており、これらのそれぞれは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書で使用される用語「芳香族」および「芳香族炭化水素」とは、少なくとも1つの芳香族核を含んでいる炭化水素化合物の種類を意味する。
【0019】
本明細書で使用される用語「炭化水素」または「複数の炭化水素」とは、炭素に結合された水素を含んでいる化合物の種類を意味し、(i)飽和炭化水素化合物、(ii)不飽和炭化水素化合物および(iii)(飽和および/または不飽和の)炭化水素化合物の混合物、たとえば異なるnの値を有する炭化水素化合物の混合物、を包含する。
【0020】
本明細書で使用される用語「Cn」炭化水素(nは正の整数、たとえば、1、2、3、4、5等である)とは、1分子当たりn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
【0021】
本明細書で使用される用語「Cn+」炭化水素(nは正の整数、たとえば、1、2、3、4、5等である)とは、1分子当たり少なくともn個の炭素原子を有する炭化水素を意味する。したがって、用語「C9+炭化水素」とは、9個以上の炭素原子を有する炭化水素を意味し、「C10+炭化水素」を包含する。
【0022】
本明細書で使用される用語「Cn-」炭化水素(nは正の整数、たとえば、1、2、3、4、5等である)とは、1分子当たりn個以下の炭素原子を有する炭化水素を意味する。
【0023】
本明細書で使用される用語「拘束指数」とは、アルミノケイ酸塩またはモレキュラーシーブがその内部構造内への、様々な大きさの分子に制御されたアクセスを可能にする範囲についての便利な尺度である。たとえば、その内部構造への高度に制限されたアクセスおよびその内部構造からの高度に制限された脱出を提供するアルミノケイ酸塩は拘束指数として高い値を有し、この種類のアルミノケイ酸塩は、通常小さいサイズ、たとえば5オングストローム未満の細孔を有している。他方において、アルミノケイ酸塩の内部構造への比較的自由なアクセスを提供するアルミノケイ酸塩は、拘束指数として低い値を有し、通常、大きいサイズの細孔を有している。拘束指数が決定されてもよい方法は米国特許第4,016,218号に十分に記載されている。
【0024】
本明細書で使用される用語「混合キシレン」とは、オルトキシレン、メタキシレンおよびパラキシレンの平衡混合物を意味する。
【0025】
本明細書で使用される用語「モレキュラーシーブ」および「ゼオライト」は、互換的に使用されてもよい。
【0026】
本明細書で使用される用語「MON」とは、モーター法オクタン価を意味する。
【0027】
本明細書で使用される用語「MONC」とは、無鉛モーター法オクタン価を意味する。
【0028】
本明細書に使用される用語「RON」とは、リサーチオクタン価を意味する。
【0029】
本明細書に使用される用語「RONC」とは、無鉛リサーチオクタン価を意味する。
【0030】
本明細書に使用される用語「自動車燃料ブレンド成分」とは、108~119の範囲のRONC値および/または98~111の範囲のMONC値を有する仕上げられた自動車燃料またはガソリンプールへとブレンドされるために使用される炭化水素を意味する。
プロセス
【0031】
この開示の1つの様相は、下で議論されるアルキル化触媒の存在下でアルキル化条件の下で、芳香族炭化水素供給原料がアルキル化剤を用いたアルキル化反応によってアルキル化芳香族製品流れに転化されてもよいプロセスであり、このアルキル化触媒は少なくとも1つのアルキル化反応ゾーンに配置される。アルキル化芳香族製品流れは回収され、C8炭化水素流れおよびC9+芳香族炭化水素流れとして分離されてもよい。C8炭化水素流れは、たとえば混合キシレンを含んでいる。C9+炭化水素流れは、たとえばトリメチルベンゼン等のC9芳香族炭化水素、およびC10芳香族炭化水素を含んでいる。回収された混合キシレン流れは、パラキシレンに異性化されてもよい。C9+芳香族炭化水素流れは分離装置に供給されて、少なくともC9芳香族炭化水素流れおよびC10炭化水素流れが回収されてもよい。下で議論されるC9芳香族炭化水素流れ、および任意的にC10炭化水素流れは、自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。
【0032】
芳香族炭化水素供給原料は、好ましくはトルエンを含んでおり、または他の様相では、当該芳香族炭化水素供給原料の重量に基いてトルエンを少なくとも90重量%含んでおり、またはトルエン単独である。任意的に、そのようなトルエン供給原料はベンゼンと同時供給されてもよい。あるいは、芳香族炭化水素供給原料はベンゼン単独であってもよい。アルキル化剤は、好ましくはメタノールを、またはメタノールとトルエンおよび/またはベンゼンとの混合物としてメタノールを含んでいる。任意的に、アルキル化剤は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを、またはメタノールおよび/またはジメチルエーテルとトルエンおよび/またはベンゼンとの混合物としてメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいる。
【0033】
本プロセスは、ベンゼンおよび/またはトルエンを混合キシレンおよびC9+芳香族炭化水素に、本質的に100%のメタノール転化率でおよび実質的に軽質ガスの生成なしで転化するのに有効である。この高いメタノール利用率は、従来技術のトルエンおよび/またはベンゼンのメチル化プロセスにおけるメタノール利用率に照らして驚くべきことであり、かつ、より少ないコーク生成量という実質的な利点をもたらし、これは触媒寿命を増加させる。さらに、従来技術のプロセスでは、メタノールの副反応を最小化するためにリアクター中にメタノールとともにスチームを同時供給することが好まれているが、このスチームは触媒寿命に悪影響を与える。本発明のプロセスではメタノールのほぼ100%が芳香族環と反応して芳香族化合物を生成するので、スチームを同時供給する必要がなく、これは本プロセスのエネルギー需要を減少させ、かつ触媒寿命を増加させる。
【0034】
本明細書に開示されたいくつかの様相では、混合キシレンへの選択率は、アルキル化芳香族製品流れの重量に基いて、混合キシレンが典型的には少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも75重量%ほどである。副生成物は、ベンゼンと、たとえばC9およびC10芳香族炭化水素等のC9+芳香族炭化水素とである。C9+芳香族炭化水素は、アルキル化芳香族製品流れの重量に基いて、少なくとも21重量%、少なくとも17重量%、または少なくとも15重量%を構成する。C9芳香族炭化水素は、アルキル化芳香族製品流れの重量に基いて、少なくとも10重量%、または好ましくは少なくとも13重量%、またはより好ましくは少なくとも15重量%、または最も好ましくは少なくとも17重量%を構成する。C10芳香族炭化水素は、アルキル化芳香族製品流れの重量に基いて、少なくとも4重量%、または少なくとも3重量%、または少なくとも1重量%を構成する。
【0035】
製造されたアルキル化芳香族製品流れは、少なくとも混合キシレンを含んでいる流れおよび少なくともC9+芳香族炭化水素を含んでいる流れとして回収される。そのようなアルキル化芳香族製品流れはまた、ベンゼンおよび/またはトルエン(両方とも、本プロセスでの残留物および同時製造されたもの)とともに同時製造された水、含酸素副生成物およびいくつかの場合には未反応メタノールも含んでいる。しかし、全てのメタノールが芳香族炭化水素供給原料と反応させられ、かつアルキル化芳香族製品流れが残余のメタノールを概して含んでいないように、本プロセスが操作されることが一般に好ましい。アルキル化芳香族製品流れはまた、一般にエチレンおよび他のオレフィンへのメタノールの分解によって生成された軽質ガスを含んでいない。いくつかの実施形態では、アルキル化芳香族製品流れは、アルキル化芳香族製品流れの重量に基いて、少なくとも75重量%までの混合キシレンを含有していてもよく、また、パラキシレンは、混合キシレン画分の重量に基いて、少なくとも35重量%を構成してもよい。
【0036】
水が分離された後、アルキル化芳香族製品流れは、分離装置または分離区画、たとえば1つ以上の蒸留塔に供給されて、従来の蒸留技術によって混合キシレンが回収され、かつ従来の蒸留技術によってC9+芳香族炭化水素副生成物からベンゼンおよびトルエンが分離されてもよい。混合キシレン流れはキシレン異性化装置に供給されて、パラキシレンが製造される。
【0037】
C9+芳香族炭化水素は、自動車燃料中にブレンドされる成分として分離されることができ、好ましくは、そのようなC9+芳香族化合物は高いオクタン価、たとえば108超のRONC値および98超のMONC値を有する。あるいは、C9+芳香族炭化水素は、追加のベンゼンおよび/またはトルエンとともにトランスアルキル化させられて、追加の混合キシレンが作られてもよい。ベンゼンはアルキル化芳香族製品流れから分けられ、1つまたは複数のアルキル化反応ゾーンへリサイクルされてもよい。
【0038】
既存のプロセスと比較して、反応温度がより低く、メタノール分解がはるかにより少ないので、アルキル化触媒の寿命が改善される。さらに、より大きい細孔のモレキュラーシーブの使用は拡散律速を最小化し、アルキル化反応が商業的に実現可能なWHSVで実施されることを可能にする。加えて、トルエン供給原料(当該芳香族炭化水素供給原料の重量に基いて、トルエンを少なくとも90重量%有するもの)が使用される場合には、既存のプロセスと比較して、アルキル化剤が、アルキル化剤またはその反応の副生成物のような他の分子に対してよりもトルエンとより多く反応して、より多くの混合キシレンが製造される。
【0039】
含酸素副生成物は、アルキル化芳香族製品流れから当該技術分野で知られた任意の手段によって除去されてもよく、たとえば、米国特許第9,012,711号、第9,434,661号および第9,205,401号に記載された吸着法;米国特許第9,294,962号に記載されたアルカリ洗浄法;米国特許第8,252,967号、第8,507,744号および第8,981,171号に記載された晶析法;および米国特許出願公開第2016/0115094号および第2016/0115103号に記載されたケトンへの転化法が挙げられる。
【0040】
アルキル化芳香族製品流れおよび任意の下流のC9+トランスアルキル化プロセスから回収された混合キシレンは、パラキシレン製造ループに送られてもよい。パラキシレン製造ループはパラキシレン分離区画を含んでおり、そこでパラキシレンは吸着法もしくは晶析法または両者の組み合わせによって従来通りに分離され、回収される。パラキシレンが吸着法によって分離される場合には、使用される吸着剤は好ましくはゼオライトを含んでいる。使用される典型的な吸着剤としては、天然あるいは合成の結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライト、たとえばゼオライトXもしくはYまたはこれらの混合物等が挙げられる。これらのゼオライトは、好ましくはカチオン、たとえばアルカリまたはアルカリ土類または希土類カチオンによって交換される。吸着カラムは好ましくは擬似移動床カラム(SMB)であり、脱着剤、たとえばパラジエチルベンゼン、パラジフルオロベンゼン、ジエチルベンゼンもしくはトルエン、またはこれらの混合物等が使用されて、選択的に吸着されたパラキシレンが回収される。本発明のプロセスで使用されるのに適している商業的SMB装置は、PAREX(商標)またはELUXYL(商標)である。
【0041】
下で議論されるアルキル化触媒は、この開示の1つ以上の様相では、モレキュラーシーブ、好ましくは比較的大きい細孔のモレキュラーシーブ、より好ましくは0超~約3の範囲の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいる。
【0042】
この開示の別の様相は、いくつかの工程を含む、C9芳香族炭化水素流れおよびC10芳香族炭化水素流れを製造するプロセスである。ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料が、ZSM-12を含んでいるアルキル化触媒の存在下でアルキル化条件の下で、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含んでいる供給原料と接触しまたは反応させられて、アルキル化芳香族製品流れが製造される。あるいは、本プロセスは、ベンゼンおよび/またはトルエンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとの混合物を含んでいる混合供給原料を供給されてもよい。
【0043】
芳香族炭化水素供給原料とメタノール供給原料とが反応させられて、アルキル化芳香族製品流れが製造され、これは、C9芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素とともに未反応ベンゼンおよび他の副生成物を含んでいる。任意的に、メタノール供給原料はジメチルエーテルと同時供給されてもよく、またはジメチルエーテルが単独の供給原料であってもよい。この反応では、芳香族炭化水素とメタノール供給原料とのモル比は、約1超:1~約4未満:1、好ましくは約2:1~約4:1、より好ましくは約2.5:1~約3.5:1、最も好ましくは約3:1の範囲にある。
【0044】
アルキル化条件は、約500℃以下の範囲、または約300℃~約450℃の範囲の温度、700kPa-a~7000kPa-aの範囲の圧力、および芳香族炭化水素供給原料に基いて50時-1~0.5時-1の重量時空間速度を含む。本プロセスの第2の工程では、C9芳香族炭化水素およびC10芳香族炭化水素を含んでいる流れは、当該アルキル化芳香族製品流れから分離される。これらの流れはその後、自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。好ましくは、そのようなC9芳香族炭化水素および/またはC10芳香族炭化水素ブレンド成分は、高いオクタン価、たとえば108~111の範囲のRONC値および98~111の範囲のMONC値を有している。
【0045】
C9芳香族炭化水素流れは、トリメチルベンゼンの混合物およびエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいてもよい。これらの混合物は、分離装置または分離区画、たとえば1つ以上の蒸留塔に供給されて、従来の蒸留技術によって当該トリメチルベンゼンの混合物を含んでいる流れおよび/またはエチルメチルベンゼンの混合物を含んでいる流れが回収されてもよい。そのような流れは、上に述べられた範囲の高いオクタン価を有する自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。
【0046】
トリメチルベンゼンの混合物は、トリメチルベンゼン異性体の混合物を含んでいてもよい。そのような異性体は、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを含んでいる。異性体のこの混合物は、自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。あるいは、そのような混合物は、分離装置または分離区画、たとえば1つ以上の蒸留塔に供給されて、従来の蒸留技術によって1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼンおよび1,2,3-トリメチルベンゼンを含んでいる1つ以上の別個の流れが回収されてもよい。そのような流れは、上に述べられた範囲の高いオクタン価を有する自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。
【0047】
エチルメチルベンゼンの混合物は、1-エチル-2-メチルベンゼンおよび1-エチル-3-メチルベンゼンを含んでいてもよい。この混合物は自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。あるいは、そのような混合物は、分離装置または分離区画、たとえば1つ以上の蒸留塔に供給されて、従来の蒸留技術によって1-エチル-2-メチルベンゼンおよび1-エチル-3-メチルベンゼンを含んでいる1つ以上の別個の流れが回収されてもよい。そのような流れは、上に述べられた範囲の高いオクタン価を有する自動車燃料ブレンド成分として供給されてもよい。
アルキル化触媒
【0048】
アルキル化触媒は、0超~約3、好ましくは0超~約2の範囲の拘束指数、最も好ましくは約2の拘束指数を有するモレキュラーシーブを含んでいる。
【0049】
本プロセスに使用するための0超~約3の拘束指数を有する適当なモレキュラーシーブの例は、ゼオライトベータ、ゼオライトY、超安定Y(USY)、超疎水性Y(UHP-Y)、脱アルミニウムY(Deal Y)、モルデナイト、ZSM-3、ZSM-4、ZSM-12、ZSM-14、ZSM-18、ZSM-20、ZSM-38およびこれらの混合物を含む。
【0050】
ゼオライトベータは米国特許第3,308,069号および再発行特許第28,341号に記載されている。低ナトリウム超安定Yモレキュラーシーブ(USY)は米国特許第3,293,192号および第3,449,070号に記載されている。超疎水性Y(UHP-Y)は米国特許第4,401,556号に記載されている。脱アルミニウムYゼオライト(Deal Y)は米国特許第3,442,795号に認められる方法によって調製されてもよい。ゼオライトYおよびモルデナイトは天然に存在する材料であるが、合成型、たとえばTEA-モルデナイト(すなわち、テトラエチルアンモニウム構造指向剤を含んでいる反応混合物から調製された合成モルデナイト)も利用可能である。TEA-モルデナイトは米国特許第3,766,093号および第3,894,104号に開示されている。
【0051】
ゼオライトZSM-3は米国特許第3,415,736号に記載されている。ゼオライトZSM-4は米国特許第4,021,947号に記載されている。ゼオライトZSM-12は米国特許第3,832,449号に記載されている。ゼオライトZSM-14は米国特許第3,923,636号に記載されている。ゼオライトZSM-18は米国特許第3,950,496号に記載されている。ゼオライトZSM-20は米国特許第3,972,983号に記載されている。ZSM-38は米国特許第4,046,859号に記載されており、米国特許第3,960,705号に述べられているように2の拘束指数を有する。
【0052】
モレキュラーシーブはMTW、BEA*、FAUの骨格構造を有していてもよい。モレキュラーシーブはゼオライトおよび/またはこれらの骨格構造の混合物であってもよい。好ましくは、MTW骨格構造のモレキュラーシーブはZSM-12である。BEA*骨格構造のモレキュラーシーブはゼオライトベータである。FAU骨格構造のモレキュラーシーブは、好ましくはゼオライトYまたは超安定Y(USY)である。MOR骨格構造のモレキュラーシーブは天然のモルデナイトまたはTEA-モルデナイトである。
【0053】
追加してまたは代わりに、本発明に有用なモレキュラーシーブは、ケイ素とアルミニウムとのモル比によって特徴付けられたゼオライトであってもよい。この開示の特定の様相では、本発明に適したモレキュラーシーブとしては、約5~100の範囲、好ましくは約10~約80の範囲、最も好ましくは約15~約50の範囲のSi/Al2モル比を有するものが挙げられる。
【0054】
アルキル化触媒は、100~800の範囲、好ましくは150~600の範囲、最も好ましくは200~500の範囲のアルファ値を有する。
【0055】
アルキル化触媒のモレキュラーシーブ結晶は、一次結晶として0.05ミクロン超~約0.2ミクロンまたは0.05ミクロン超~0.5ミクロンの範囲の結晶サイズを有する。
【0056】
上記のモレキュラーシーブは、本発明に使用されるアルキル化触媒として、バインダーまたはマトリクスなしで使用されてもよい。あるいは、モレキュラーシーブは、アルキル化反応で使用された温度および他の条件に耐性を有する別の材料と複合化されてもよい。そのような材料としては、活性および不活性な材料、合成または天然に存在するゼオライトとともに無機材料、たとえばクレーおよび/または酸化物、例としてアルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシアまたはこれらの混合物および他の酸化物が挙げられる。この他の酸化物は、天然に存在するものあるいはゼラチン状沈降物またはゲルの形態をしているもの、たとえばシリカと金属酸化物との混合物であってもよい。そのような金属酸化物以外には、アルキル化触媒は、添加された金属、たとえば希土類金属またはアルカリ土類金属等を含有していない。
【0057】
クレーもまた、触媒の機械的性質を改変するためにまたはその製造に役立てるために、酸化物タイプのバインダーとともに含まれてもよい。モレキュラーシーブと組み合わせて、すなわちモレキュラーシーブと組み合わせてまたはモレキュラーシーブの合成の際に存在して、それ自体が触媒活性を有する材料を使用すると、触媒の転化率および/または選択率を変えることができることがある。不活性な材料は、反応速度を調節するための他の手段を用いることなく製品が経済的にかつ秩序立って得られように、転化量を調節するための希釈剤として適当な役割を果たす。これらの材料は天然に産出するクレー、たとえばベントナイトやカオリン中に取り込まれて、商業運転条件下の触媒の破砕強度を改善しかつ触媒のバインダーまたはマトリクスとしての機能を果たしてもよい。モレキュラーシーブと無機酸化物マトリクスとの相対的な割合は広い範囲で様々であり、モレキュラーシーブの含有量は、複合物の約1~約90重量%の範囲、より普通には、とりわけ複合物がビーズの形状で調製されている場合には、約2~約80重量%の範囲である。
アルキル化条件
【0058】
本発明のアルキル化プロセスは、比較的低い温度、すなわち500℃未満、たとえば475℃未満、または450℃未満、または425℃未満、または400℃未満で実施される。商業的に実施可能な反応速度を提供するために、本プロセスは、少なくとも250℃、たとえば少なくとも275℃、たとえば少なくとも300℃の温度で実施されてもよい。範囲に関しては、本プロセスは、250℃~500℃未満、たとえば275℃~475℃、たとえば300℃~450℃の範囲の温度で実施されてもよい。運転圧力は温度に応じて変わるであろうが、一般に少なくとも700kPa-a、たとえば少なくとも1000kPa-a、たとえば少なくとも1500kPa-a、または少なくとも2000kPa-a、約7000kPa-aまで、たとえば約6000kPa-aまで、約5000kPa-aまでである。範囲に関しては、運転圧力は700kPa-a~7000kPa-a、たとえば1000kPa-a~6000kPa-a、たとえば2000kPa-a~5000kPa-aの範囲であってもよい。芳香族供給原料およびアルキル化剤供給原料の合計に基いた適当なWHSV値は、50時-1~0.5時-1の範囲、たとえば10時-1~1時-1の範囲にある。この開示のいくつかの様相では、芳香族供給原料、メタノールアルキル化剤および/またはアルキル化流出物の少なくとも一部は、1つまたは複数のアルキル化反応ゾーン中に液相で存在してもよい。
リアクター
【0059】
アルキル化反応は任意の公知のリアクター装置で実施されることができ、たとえば固定床リアクター、移動床リアクター、流動床リアクターおよび反応蒸留装置が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、リアクターは、同じまたは異なる反応槽中に置かれた単一の反応ゾーンまたは複数の反応ゾーンを含んでいてもよい。さらに、メタノールおよび/またはジメチルエーテルアルキル化剤の注入は、リアクターの単一の点で、またはリアクターに沿って間隔を空けて配置された複数の点で実施されることができる。
供給原料
【0060】
本プロセスへの供給原料は、ベンゼンおよび/またはトルエンを含んでいる芳香族炭化水素供給原料、ならびにメタノール、任意的に、および/またはジメチルエーテルを含んでいるアルキル化剤を含んでいる。任意の石油精製所の芳香族供給原料が、ベンゼンおよび/またはトルエンの源として使用されることができる。もっとも、この開示のいくつかの様相では、当該芳香族炭化水素供給原料の重量に基いて、トルエンを少なくとも90重量%含んでいる芳香族炭化水素供給原料を使用することが望ましいことがある。さらに、いくつかの様相では、芳香族炭化水素供給原料を前処理して、触媒毒、たとえば窒素および硫黄化合物を除去することが望ましいことがある。他の様相では、この供給原料は非芳香族、たとえばそこから非芳香族がまだ抽出されていない石油精製所の芳香族供給原料をさらに含んでいてもよい。
【0061】
本開示は、これから以下の非限定的な実施例および添付された図面を参照してさらに詳しくは記載される。
[実施例]
X線回折パターン
【0062】
X線回折データ(粉末XRD法またはXRD法)が、銅のK-アルファ線を用いてVANTEC社製多チャンネル検知器を備えたBruker社製D4 Endeavor回析装置を使用して収集された。回析データは0.018度の2シータ(シータはブラッグ角である。)の走査モードにより、各ステップについて約30秒間の有効カウント時間を使用して記録された。
BETによる全表面積およびメソ細孔表面積の測定
【0063】
全BET表面積およびtプロット細孔表面積が、焼成されたゼオライト粉末を350℃で4時間脱気した後にMicromeritics社製Tristar II 3020測定器を用いて窒素吸着/脱着によって測定された。メソ細孔表面積は、全BET表面積からtプロット細孔表面積を差し引くことによって得られた。メソ細孔容積は同じデータセットから導かれた。この方法に関するもっと多くの情報は、たとえば「多孔質固体および粉末の特性解析:表面積、細孔サイズおよび密度」、S.Lowellら、Springer社刊、2004年に見出だされることができる。
アルファ値
【0064】
本実施例で使用された試験の実験条件は、Journal of Catalysis、第61巻、395頁(1980年)に詳細に記載されているように538℃の一定温度および可変流量を含むものであった。
吸着データ
【0065】
n-ヘキサン吸着についての吸着データは、焼成された吸着剤の秤量されたサンプルが吸着室内で所望の純粋な吸着質に接触させられ、1mmHg未満まで脱気され、そして90℃でのそれぞれの吸着質の気液平衡圧力未満の40トルのn-ヘキサン蒸気圧と接触させられるようにして測定された平衡吸着値であった。圧力は、吸着の間マノスタットによって調節された吸着質蒸気の追加によって一定(約±0.5mmHg以内)に保たれ、吸着時間は約8時間を超えなかった。吸着質が結晶質材料によって吸着されると、圧力の減少がマノスタットにバルブを開かせ、これはより多くの吸着質蒸気を吸着室に受け入れ、上記の調節圧力を回復させた。圧力変化がマノスタットを作動させるのに十分ではなくなった時に、吸着は完了した。重量の増加が、焼成された吸着剤100g当たりのg単位でのサンプルの吸着容量として計算された。
【実施例1】
【0066】
ZSM-12触媒の調製
ZSM-12の小結晶が米国特許第8,202,506号の開示に従って合成され、同特許の内容は参照によって本明細書に組み込まれた。合成されたままの材料のX線回折(XRD)パターンは、ZSM-12トポロジーの典型的な純粋相を示した。合成されたままの材料のSEMは、その材料が(0.05ミクロン未満の平均結晶サイズを有する)小結晶の凝集体から構成されていることを示す。得られたZSM-12結晶は約43のSiO2/Al2O3モル比を有していた。アルミナで結合された触媒が、約80重量%のZSM-12の合成されたままの結晶および約20重量%のアルミナ(Versal(商標)300、Honeywell UOP社から入手可能)を使用する押し出しによって形成されて、1/20インチ(1.3mm)の4葉状押し出し成形物が作られた。乾燥されて得られた押し出し成形物が窒素中で(約538℃(1000°F)で約3時間)焼成され、約1Nの硝酸アンモニウム溶液でアンモニウム交換され、そして空気中で(約538℃(1000°F)で約6時間)焼成されて、仕上げられた、酸性の、H-ZSM-12と命名された、4葉の形状をして、540のアルファ値、44.5mg/gのヘキサン吸着量およびBETによって測定された334m2/gの表面積を有する押し出し成形物として形成された。
【実施例2】
【0067】
性能評価
メタノールでトルエンをアルキル化することによる混合キシレンおよびC
9+芳香族の製造を検討するために、実験が、350℃の温度、600psig(4238kPa-a)の圧力および全供給原料に基いて3.5時
-1のWHSVで行われた。使用された供給原料は、3:1のモル比のメタノールとトルエンとの混合物から成っていた。使用された触媒は、上に記載されたH-ZSM-12(80%のゼオライト/20%のアルミナバインダー)であり、これは約1~約3の範囲の拘束指数を有していた。この反応は下降流の固定床リアクター中で実施された。液体製品は収集され、Agilent社製6890 GCによって分析された。ガスの収率は差分によって計算された。結果が
図1および
図2にまとめられている。
メタノールおよびトルエンの転化率
【0068】
図1は、15日間の試験におけるH-ZSM-12触媒上でのトルエンおよびメタノールの転化率を示す。
図1から分かるように、メタノールの転化率は実質的に100%であった。試験期間をとおして、メタノールは製品中に検出されなかった。トルエンの転化率は15日間の試験にわたって安定していた。平均トルエン転化率は31%超であり、供給原料の組成と一貫性があった。
選択率
【0069】
図2は、15日間の試験における混合キシレン、C
9、C
10+、ベンゼンおよびC
4ガスの選択率を示す。
図2から分かるように、平均の混合キシレン選択率は、65パーセントから始まり、それから触媒が定常状態に達した後は75パーセントまで増加している。平均C
9選択率は17%であった。平均C
10+選択率は4%であった。平均ベンゼン選択率は4重量%であった。ガス生成率は実質的に零であった。
C
9+
芳香族分布
【0070】
表1は、ZSM-12触媒上でのメタノールによるトルエンのアルキル化から製造されたC9+芳香族の組成を示す。表1から分かるように、C9芳香族は、1,2,4-トリメチルベンゼン64%から構成され、これは110のRONC値および102のMONC値を有する。
【0071】
C9芳香族はまた、1、3、5-トリメチルベンゼンを28%含有している。これは119のRONC値および111のMONC値を有する。したがって、トリメチルベンゼン異性体混合物は、108と119の間のRONC値、および98と111の間のMONC値を有する。
【0072】
メタノールによるトルエンのアルキル化から製造されたC
9芳香族は、自動車燃料(モーガス)プールのための優れたブレンド成分であると期待される。トルエンがZSM-12上でメタノールでアルキル化されるときに、いくらかのC
10+芳香族もまた製造される。C
10+芳香族もまたモーガス用の優れたブレンド成分であると期待される。
【表1】
【0073】
本明細書に引用された全ての特許、試験手順および他の文献は、優先権書類を含めて、参照によって本明細書に完全に組み込まれるが、そのような開示が本明細書と矛盾せず、かつそのような組み込みが許される全ての管轄を対象とすることを限度とする。
【0074】
本明細書に開示された例示的な形態が詳細に記載されてきたが、様々な他の変形が当業者には明らかであり、本開示の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって直ちに実施されることができることは理解されるだろう。したがって、本明細書に添付された特許請求の範囲が本明細書に記載された実施例および説明に限定されることは意図されておらず、そうではなくて、特許請求の範囲は本明細書に存在する、特許性を有する斬新さの全ての特徴を、この開示が関わる分野の当業者によってその等価物として扱われるであろう全ての特徴を含めて、包含するものと解釈されるべきである。
【0075】
数の下限および数の上限が本明細書に記載されている場合には、任意の下限から任意の上限までの範囲が意図されている。
【0076】
本明細書の発明の詳細な説明および特許請求の範囲内の全ての数値は、「約」または「およそ」表示された数値によって修正され、かつ当業者によって予測される実験誤差および変動幅が考慮に入れられる。