IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福州大学の特許一覧 ▶ 福建省▲博▼屹▲環▼保科技有限公司の特許一覧

特許7109580ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法およびその応用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法およびその応用
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/04 20060101AFI20220722BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20220722BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220722BHJP
   B01J 20/32 20060101ALI20220722BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20220722BHJP
   B01D 53/70 20060101ALI20220722BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20220722BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20220722BHJP
【FI】
B01J20/04 A
C01B33/12 A
B01J20/28 Z
B01J20/32
B01D53/68 100
B01D53/70
B01D53/82
B09B3/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020556839
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 CN2019073981
(87)【国際公開番号】W WO2019205765
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】201810394407.5
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519113491
【氏名又は名称】福州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】519113505
【氏名又は名称】福建省▲博▼屹▲環▼保科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼明▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲霊▼敏
(72)【発明者】
【氏名】林春香
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼以凡
(72)【発明者】
【氏名】▲呂▼源▲財▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼登周
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009785(JP,A)
【文献】特開2015-014594(JP,A)
【文献】特表2009-523998(JP,A)
【文献】特開2005-154722(JP,A)
【文献】特開2000-335916(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107930579(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104930518(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
C01B 33/00 - 33/193
B09B 1/00 - 5/00
B01D 53/34 - 53/78
53/74 - 53/85
53/92
53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、
天然鉄鉱石の粉末と石英粉を、前記石英粉と前記天然鉄鉱石の粉末の重量比率が1:1.7~2.7となるように混合した後、200℃までに加熱して前記石英粉の水分を除去し、400℃に加熱して昇華させた前記天然鉄鉱石に含まれる鉄にFe を形成させ、室温に冷却させた後に粉末にして400℃に昇温させてSiO -Fe 担体を得る工程と、
前記SiO -Fe 担体とCaO前駆体の水溶液とを超音波混合する工程と、
前記超音波混合したSiO -Fe 担体を900℃でか焼して、CaOで修飾されたSiO -Fe 担体を得る工程と、を有する
塩素系物質にとって吸着性を持つごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項2】
前記CaO前駆体の水溶液は、前記CaO前駆体の固液比が0.4~1.2Kg/Lである、請求項1に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項3】
前記CaO前駆体は、(Ca(NO ・4H O)である、請求項1または2に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項4】
前記塩素系物質が少なくとも塩化水素およびクロロベンゼンを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項5】
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程と、
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程と、
(3)化学蒸着法を用いて前記工程(2)で調製したSiO粉末をCVD装置の石英管に入れ、そしてSiO粉末と鉄鉱石粉末の重量比率が1:1.7~2.7になるように前記工程(1)で調製した鉄鉱石粉末をCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とが上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPaに保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、2~3時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で2時間保持しSiO粉末と鉄鉱石粉末とで形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させてFe を形成した後、室温まで冷却し、室温で乾燥させた後に粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、1~2時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程と、
(4)Ca(NO・4HOを前駆体として用意し、それを水と混合して固液比0.4~1.2Kg/Lで溶液に調合する工程と、
(5)前記工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えて6~9時間超音波混合する工程と、
(6)前記工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mmに研磨して、塩素吸着材を調製する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項6】
前記工程(1)、前記工程(2)および前記工程(4)で添加される成分および部数は、以下の通りであることを特徴とする、請求項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
天然鉄鉱石 52部~67部、
石英石 25部~30部、
Ca(NO・4HO 0.03部~0.05部。
【請求項7】
前記工程(3)における石英管に吹き込む空気の流量は80mL・min-1であることを特徴とする、請求項5または6に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項8】
前記工程(4)におけるCa(NO・4HOの純度>99.9%、粒子径<5μmであることを特徴とする、請求項5から7のいずれか1項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項9】
前記工程(5)における超音波洗浄器の動作時、水槽の温度を90℃にさせることを特徴とする、請求項5から8のいずれか1項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項10】
前記工程(5)における超音波洗浄器の動作周波数は、40000Hzであり、動作電力が100Wであることを特徴とする、請求項5から9のいずれか1項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法。
【請求項11】
調製された塩素吸着材をごみ焼却における塩素系物質の吸着に使用することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法により調製された塩素吸着材の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素吸着材分野に関し、特に、ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
急成長する経済は、人々に利便性をもたらしているが、また多くの固形廃棄物を発生させる。 固形廃棄物の組成は、複雑であり、毒性、可燃性、感染性および病原性などを含んでいる可能性があるため、固形廃棄物の処理が解決すべき喫緊の課題になっている。ごみ埋立地と比較すると焼却には、減量化、衛生管理、エネルギー回収などの利点があり、より良い廃棄物管理方法であると考えられている。通常固形廃棄物には、塩素源が含有されているため、大量のHClが発生する可能性がある。したがって、プラスチック廃棄物の燃焼過程でクロロベンゼンの排出を制御する必要がある。
【0003】
焼却中のHClの除去については、通常、煙道ガス浄化・捕集装置を介して除去される。吸着材と反応生成物の物質形態に応じて、固形廃棄物焼却煙道ガス浄化技術は、湿式法、半乾式法および乾式法に分けられる。湿式法は、一般的に水溶液やスラリーを脱塩素剤とし、吸収性能に優れているが、製造工程が複雑でコストが高く;半乾式法は、石灰スラリーが使用され、価格も安いがスラリー製造システムが複雑であり、スラリー輸送パイプラインが故障しやすく;乾式法による脱塩素は、添加される脱塩素剤が乾燥状態で、汚染物質への浄化効率が高く、吸着材の利用効率も高く、操作が簡単で、製造コストが安い。乾式法によるHCl除去に使用される脱塩素剤は、主に脱塩素剤の比表面積に依存し、比表面積が大きく、脱塩素剤の活性が高いほど、脱塩素反応が速く、塩素容量が高い。ただし、脱塩素剤の活性成分の比表面積は、大きくないため、脱塩素剤の強度を確保することを前提に、脱塩素剤の比表面積をどのように増加させるかが脱塩素剤の鍵となる。
【0004】
特許文献1は、ガスからHClを除去するための乾式法の脱塩素剤およびその調製方法を開示している。前記脱塩素剤は、NaCO、CaCO、CaO、MgOを活性成分として、架橋ベントナイトを多孔性補助剤として、メチルセルロースが発泡剤および押出助剤として使用され、押出成形されてから乾燥および焙焼されて製造されるものである。吸着材の調製プロセスが簡単で、脱塩素活性が高く、低温でのブレイクスルー塩素容量が大きい。しかし吸着材は、非常に高い温度条件下での使用に適しておらず、かつリサイクルできない。
【0005】
特許文献2は、新型の高効率脱塩素剤およびその調製方法を開示している。前記脱塩素剤は、NaCO、CaCO、CaO、MgO、CuO、ZnOおよびそれらの誘導体の1種以上を活性成分として、NHHCOを多孔性補助剤として、Al、ダイアスポア、カオリンまたは白土の少なくとも1種を担体および助剤として使用し、相乗的な助剤として部分的に改質されたZn塩とCa塩が添加される。対応する比率に従い適量の水を加え、調合後押出成形してから乾燥、焙焼して製造される。室温で高濃度および低濃度HClに対する吸着材の吸着率が高く、脱塩素精度が高く、塩素容量が35%以上に達する。同時に300~600℃の温度範囲で接触改質の各プロセス中のHClガスを高効率除去でき、塩素容量が今までにはない65%以上に達することができる。ただしダイアスポア、カオリンまたは白土の細孔容積および比表面積は、制限され、かつ前記吸着材のコストが高い。
【0006】
上記の特許文献は、脱塩素剤に対し一定の研究を行っていたが、一般的に常温または高温条件下でしか使用できず、再利用率も高くなく、使用条件が限定され、かつ脱塩素剤のコストが高く、これらの問題が脱塩素剤の調製における応用を制限してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許第CN101773768A号
【文献】中国特許第CN106268832A号
【非特許文献】
【0008】
【文献】《生活ごみ焼却汚染制御基準》(GB 18485-2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の状況および欠点に着目して、本発明は、コストが低く、高効率で安全かつ製造工程が単純な塩素吸着材の調製方法およびその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を提供する。
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、天然鉄鉱石と石英粉を混合した後、混合系内にCaOを加えると共に超音波含浸を通じて天然鉄鉱石と石英粉を修飾して塩素系物質にとって吸着性を持つ塩素吸着材が得られる。
【0011】
さらに、前記塩素系物質は、少なくとも塩化水素およびクロロベンゼンを含む。
【0012】
さらに、ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法は、以下の工程(1)~工程(6)を含む。
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程。
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程。
(3)化学蒸着法(Chemical vapor deposition、CVD)を用いて工程(2)で調製したSiO粉末をCVD装置の石英管に入れ、そしてSiO粉末と鉄鉱石粉末の比率が1:1.7~2.7になるように工程(1)で調製した鉄鉱石粉末をCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とが上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPaに保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、2~3時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で2時間保持した後、SiO粉末と鉄鉱石粉末とで形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させた後、室温まで冷却し、室温で乾燥させた後に粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、1~2時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程。
(4)Ca(NO・4HOを前駆体として用意し、それを固液比0.4~1.2Kg/Lで溶液に調合する工程。
(5)工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えて6~9時間超音波混合する工程。
(6)工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mm程度に研磨して、塩素吸着材を調製する工程。
【0013】
好ましくは、工程(1)、工程(2)および工程(4)で添加される成分および部数は以下の通りである。
天然鉄鉱石 52部~67部;
石英石 25部~30部;
Ca(NO・4HO 0.03部~0.05部。
【0014】
好ましくは、工程(3)における石英管に吹き込む空気の流量は80mL・min-1である。
【0015】
好ましくは、工程(4)におけるCa(NO・4HOの純度>99.9%、粒子径<5μmである。
【0016】
好ましくは、工程(5)における超音波洗浄器の動作周波数は、40000Hzで、動作電力が100Wである。
【0017】
好ましくは、工程(5)における超音波洗浄器の動作時、水槽の温度を90℃にさせる。
【0018】
好ましくは、工程(6)における工程(5)で処理されたSiO-Fe担体のか焼処理時間は、1時間である。
【0019】
上記ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法により調製された塩素吸着材をごみ焼却に用いる塩素系物質の吸着に使用する。
【発明の効果】
【0020】
上記の技術的手段により、本発明は次の有利な効果を奏する。
天然鉄鉱石、石英粉を原料として、それをCaOと超音波含浸により塩素吸着材を調製し、調製した吸着剤材料の孔径が大きく、空隙率が高く、構造が安定し、かつごみ焼却時の塩素系物質に対しより高い吸着効率および吸着量を有し、再利用が可能で、またコストが低い天然鉄鉱石および石英石を用いることで塩素系物質の処理コストを削減するだけではなく、資源の利用を大幅に実現し、環境保全を促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、以下の工程(1)~(6)を含む。すなわち、
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程。
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程。
(3)化学蒸着法を用いて工程(2)で調製したSiO粉末をCVD装置の石英管に入れ、そしてSiO粉末と鉄鉱石粉末の比率が1:1.7~2.7になるように工程(1)で調製した鉄鉱石粉末をCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とを上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPaに保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、2~3時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で2時間保持した後、SiO粉末と鉄鉱石粉末で形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させた後に室温まで冷却し、室温で乾燥させた後、粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、1~2時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程。
(4)Ca(NO・4HOを前駆体として用意し、それを固液比0.4~1.2Kg/Lで溶液に調合する工程。
(5)工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えて6~9時間超音波混合する工程。
(6)工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mm程度に研磨して、塩素吸着材を調製する工程。
【0022】
好ましくは、工程(1)、工程(2)および工程(4)で添加される成分および部数は以下の通りである。
天然鉄鉱石 52部~67部;
石英石 25部~30部;
Ca(NO・4HO 0.03部~0.05部。
【0023】
好ましくは、工程(3)における石英管に吹き込む空気の流量は80mL・min-1である。
【0024】
好ましくは、工程(4)におけるCa(NO・4HOの純度>99.9%、粒子径<5μmである。
【0025】
好ましくは、工程(5)における超音波洗浄器の動作周波数は、40000Hzで、動作電力が100Wである。
【0026】
好ましくは、工程(5)における超音波洗浄器の動作時、水槽の温度を90℃にさせる。
【0027】
好ましくは、工程(6)における工程(5)で処理されたSiO-Fe担体のか焼処理時間は、1時間である。
【0028】
上記ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法により調製された塩素吸着材をごみ焼却に用いる塩素系物質の吸着に使用する。
【実施例
【0029】
[実施例1]
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、以下の工程(1)~(6)を含む。すなわち、
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程。
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程。
(3)化学蒸着法を用いて工程(2)で調製したSiO粉末2KgをCVD装置の石英管に量りとり、工程(1)で調製した鉄鉱石粉末5.36KgをCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とが上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPa、空気の流量を80mL・min-1に保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、2~3時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で2時間保持した後、SiO粉末と鉄鉱石粉末とで形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させた後に室温まで冷却し、室温で乾燥させた後、粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、2時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程。
(4)0.4KgのCa(NO・4HOを前駆体として用意し、それを1Lの脱イオン水と混合して純度>99.9%、粒子径<5μmの溶液に調合する工程。
(5)工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えてから動作周波数40,000Hz、動作電力100Wの動作パラメータにより、水槽内の混合系を6時間超音波混合し、混合の間は水槽内の混合温度を90℃に保つ工程。
(6)工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mm程度に研磨して、塩素吸着材を調製する工程。
【0030】
[実施例2]
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、以下の工程(1)~(6)を含む。すなわち、
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程。
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程。
(3)化学蒸着法を用いて工程(2)で調製したSiO粉末2KgをCVD装置の石英管に量りとり、工程(1)で調製した鉄鉱石粉末3.46KgをCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とが上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPa、空気の流量を80mL・min-1に保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、3時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で2時間保持した後、SiO粉末と鉄鉱石粉末とで形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させた後、室温まで冷却し、室温で乾燥させた後に粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、2時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程。
(4)0.4KgのCa(NO・4HOを前駆体として用意し、それを1Lの脱イオン水と混合して純度>99.9%、粒子径<5μmの溶液に調合する工程。
(5)工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えてから動作周波数40,000Hz、動作電力100Wの動作パラメータにより、水槽内の混合系を8時間超音波混合し、混合の間は水槽内の混合温度を90℃に保つ工程。
(6)工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mm程度に研磨して、塩素吸着材を調製する工程。
【0031】
[実施例3]
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、以下の工程(1)~(6)を含む。すなわち、
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程。
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程。
(3)化学蒸着法を用いて工程(2)で調製したSiO粉末2KgをCVD装置の石英管に量りとり、工程(1)で調製した鉄鉱石粉末5.36KgをCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とが上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPa、空気の流量を80mL・min-1に保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、3時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で3時間保持した後、SiO粉末と鉄鉱石粉末とで形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させた後、室温まで冷却し、室温で乾燥させた後に粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、1時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程。
(4)0.8KgのCa(NO・4HOを前駆体として用意し、それを1Lの脱イオン水と混合して純度>99.9%、粒子径<5μmの溶液に調合する工程。
(5)工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えてから動作周波数40,000Hz、動作電力100Wの動作パラメータにより、水槽内の混合系を9時間超音波混合し、混合の間は水槽内の混合温度を90℃に保つ工程。
(6)工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mm程度に研磨して、塩素吸着材を調製する工程。
【0032】
[実施例4]
ごみ焼却に用いる塩素吸着材の調製方法であって、以下の工程(1)~(6)を含む。すなわち、
(1)天然鉄鉱石を粉砕機に入れて粉砕し、篩にかけて、粒子径0.2~0.3mmの鉄鉱石粉末を得る鉄鉱石粉末調製工程。
(2)石英石を打錠機に入れて圧潰して粉末状とし、そして乾燥・脱水した後、60~100メッシュの篩にかけて、SiO粉末を得るSiO調製工程。
(3)化学蒸着法を用いて工程(2)で調製したSiO粉末2KgをCVD装置の石英管に量りとり、工程(1)で調製した鉄鉱石粉末3.46KgをCVD装置の昇華器に量りとり、石英管と昇華器とが上下に対向配置されて連通され、石英管内にSiO粉末を載置する台が設けられており、石英管に空気を吹き込むと共に真空度を0.08MPa、空気の流量を80mL・min-1に保持する条件下で、SiO粉末を流動状態にしてから石英管を加熱して200℃までに昇温させてSiO粉末中の水分を除去し、2時間保持した後、石英管の温度を400℃に上げて保持し、昇華器に窒素を吹き込んで昇華器内の温度を110℃に調節し、鉄鉱石粉末が完全に昇華した後に、昇華器の温度を400℃に調節することで、昇華器と石英管とに反応室を形成させると共に流動状態にしたSiO粉末と昇華した鉄鉱石粉末を十分に混合させ、反応室を温度400℃条件下で2時間保持した後、SiO粉末と鉄鉱石粉末とで形成された担体上の鉄および鉄化合物を完全に酸化させた後、室温まで冷却し、室温で乾燥させた後に粉砕して粉末にし、最後に粉末を管状炉に入れて3℃・min-1の昇温速度で400℃に昇温させ、1時間保持して、SiO-Fe担体を得るSiO-Fe担体調製工程。
(4)1.2KgのCa(NO・4HOを前駆体として用意し、それを1Lの脱イオン水と混合して純度>99.9%、粒子径<5μmの溶液に調合する工程。
(5)工程(4)で調製した溶液を超音波洗浄器の水槽に加え、工程(3)で調製したSiO-Fe担体を水槽に加えてから動作周波数40,000Hz、動作電力100Wの動作パラメータにより、水槽内の混合系を9時間超音波混合し、混合の間は水槽内の混合温度を90℃に保つ工程。
(6)工程(5)で処理したSiO-Fe担体を温度900℃でか焼し、表面付着物上のNOを除去すると共にCaOを調製し、CaOによるSiO-Fe担体の修飾を実現し、常温に冷却してから粒子径0.1~0.2mm程度に研磨して、塩素吸着材を調製する工程。
【0033】
性能テスト
実施例1乃至実施例4で調製した塩素吸着材別々のごみ焼却反応器に入れ、塩素吸着材を完全に酸化させるため、反応器内の温度を空気雰囲気下で900℃に加熱し、30分保持し、次に助燃合成ガス(1%HCl、21.9%CO、5.9%CH、12.7%H、7.8%COおよび50.7%Nで構成される)を導入し、エアーノズルによりガスを焼却炉に吹き込んでごみと一緒に燃焼させ、燃焼が終えた後、煙道ガス内のHCl含有量を測定した。また塩素吸着材を設けない別のテストを追加して塩素吸着材を添加しない時の煙道ガス内のHCl含有量を測定した。得られた結果を以下に示す。
【表1】
【0034】
非特許文献1の規定によれば、HClの限界値は60ppm(1時間平均値)、50ppm(24時間平均)であり、これから分かるように、本発明の技術的手段で調製した塩素吸着材を添加した後、ごみ焼却中で発生した塩素系物質を吸着でき、中国の規定で要求される関連の指標を満たすことができる。
【0035】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、当業者が本発明の教示に基づき、本発明の原理および精神から逸脱しない限り、本発明の特許請求の範囲によりかかる均等な変化、修正、置換および変形も本発明に網羅される。