(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】LC-MS/MSプロテオーム遺伝子型解析のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20220722BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220722BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220722BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20220722BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N27/62 V ZNA
G01N27/62 X
C07K14/47
G01N30/72 C
G01N30/88 J
(21)【出願番号】P 2020566642
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 US2019034976
(87)【国際公開番号】W WO2019232421
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-24
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュフォード, クリストファー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グラント, ラッセル フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー, メーガン ノリス
(72)【発明者】
【氏名】ホランド, パトリシア ルイーズ ミラー
(72)【発明者】
【氏名】レヴァンドスキ, マイケル
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03139171(EP,A1)
【文献】特表2008-529027(JP,A)
【文献】国際公開第2017/173390(WO,A1)
【文献】Stuart J Moat et al.,Newborn screening for sickle cell disorders using tandem mass spectrometry: three years` experince of using a protocol to detect only the disease states,Annals of clinical Biochemistry,2017年,Vol.54(5),P601-611
【文献】Haihong Zhou et al.,Rapid detection and quantification of apolipoprotein L1 genetic variants and total levels in plasma by ultra-performance liquid chromatography/tandem mass spectrometry,Rapid Commun Mass Spectrom,27,2013年,P2639-2647
【文献】Nicholas J.Martin et al.,Dried Blood Spot Proteomics: Surface Extraction of Endogenous Proteins Coupled with Automated Sample Preparation and Mass Spectrometry Analysis,J.Am. Soc. Mass Spectrom.,2013年,24,P1242-1249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/68
G01N 27/62
C07K 14/47
G01N 30/72
G01N 30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するための方法であって、
前記対象から提供された
血液を、固体担体上に堆積させるステップ
;
前記固体担体上の前記血液から血液血漿画分を分離するステップであって、前記
血液血漿画分を、乾燥させて
前記固体担体上に乾燥
させた血漿試料を生産し、前記
乾燥させた血漿試料は、前記目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する、ステップ;
前記
乾燥させた血漿試料を消化して、前記タンパク質の、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成
し、それによって、消化された試料を生成するステップ;
質量分析を使用して、
前記消化された試料中に存在する、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの
前記検出の結果に基づいて、前記対象の前記遺伝子型を決定するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記消化するステップが、プロテアー
ゼを用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的の遺伝子由来の前記タンパク質を含有する前記乾燥
させた血漿試料が、
前記消化の前に変性される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記
質量分析が、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)
である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップが、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を獲得することを包含する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記目的の遺伝子の各遺伝子型に共通の少なくとも1つの共通サロゲートペプチド
を生成し、そして、質量分析を用いて前記乾燥させた血漿試料中で検出するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドを検出するステップが、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答を獲得することを包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップが、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在を検出することを包含する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥させた血漿試料における前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの
前記測定された応答を、
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの
前記測定された応答と比較することによって決定される、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥させた血漿試料における前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの
前記測定された応答を、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの
前記測定された応答を、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定
するステップをさらに含む、請求項
7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体が、
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドについての内部標準として添加される、請求項
10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体が、
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドについての内部標準として添加される、請求項
10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記
少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記測定された応答が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体の前記測定された応答に正規化される、請求項
10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記
少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの前記測定された応答が、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体の前記測定された応答に正規化される、請求項
11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドについての前記内部標準が、消化のステップの前に添加される、請求項
12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドについての前記内部標準が、消化のステップの前に添加される、請求項
13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドについての前記測定された応答が、前記
少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である、請求項
5から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドについての前記測定された応答が、前記
少なくとも1つの共通サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である、請求項
7から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質が、ApoL1である、請求項1から
19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記対立遺伝子特異的サロゲートペプチドが、野生型対立遺伝子(配列番号1)由来のアミノ酸配列LNILNNNYK(配列番号4)を有するか、またはG1対立遺伝子(配列番号2)由来のアミノ酸配列LNMLNNNYK(配列番号5)を有するか、またはG2対立遺伝子(配列番号3)由来のアミノ酸配列LNILNNK(配列番号6)を有する、請求項1から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
SETAEELK(配列番号7)および/またはVAQELEEK(配列番号8)のアミノ酸配列を有する共通サロゲートペプチドの量を決定するステップをさらに含み、前記共通サロゲートペプチドは、前記野生型、G1またはG2対立遺伝子のそれぞれに存在する、請求項1から
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記質量分析が、表3の遷移の少なくとも1つを測定する、請求項1から
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの、表2に列挙した安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、請求項
8から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記
LC-MS/MSが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項
4から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するためのシステムであって、
前記対象から乾燥させた血漿試料を提供するためのデバイスであって、前記デバイスは、固体担体上に前記対象からの血液を堆積させて前記対象から提供された血液から血液血漿画分を分離させるように構成された固体担体を備え、ここで、前記血液血漿画分を前記固体担体上で乾燥させて、乾燥させた血漿試料を生産し、ここで、前記乾燥させた血漿試料は、前記目的の遺伝子由来のタンパク質を含む
、デバイス;
前記乾燥させた
血漿試料を消化に供して、
前記目的の遺伝子由来の前記タンパク質について少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチ
ドを生成するためのステーション
;
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを質量分析によって分析して
、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド
を検出するためのステーション
;ならびに
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記検出の結果に基づいて、前記目的の遺伝子の前記遺伝子型を決定するためのステーション
を含む、システム。
【請求項27】
前記分析の前に、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド
のための安定同位体で標識された内部標準、および必要に応じて、前記タンパク質の前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドのため
の安定同位体で標識された内部標準を添加するためのステーションをさらに含む、請求項2
6に記載のシステム。
【請求項28】
質量分析のための前記ステーションが、タンデム質量分析計を含む、請求項26
または27に記載のシステム。
【請求項29】
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドのクロマトグラフィーによる精製のためのステーションをさらに備える、請求項26から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
クロマトグラフィー
による精製のための前記ステーションが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項
29に記載のシステム。
【請求項31】
前記ステーションの少なくとも1つが、コンピューターによって制御される、請求項26から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記タンパク質が、ApoL1である、請求項26から31のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項33】
対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するための方法であって、
前記対象から提供された体液を、固体担体上に堆積させるステップであって、前記体液を、乾燥させて乾燥検体を生産し、前記体液は、前記目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する、ステップ;
前記乾燥検体を消化して、前記タンパク質の、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するステップ;
質量分析を使用して、消化された試料中に存在する、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在もしくは非存在または量に基づいて、前記対象の前記遺伝子型を決定するステップ
を含む、方法であって、
ここで、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの表2に列挙された安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/679,133号、2018年6月1日に出願された米国仮特許出願第62/679,286号、および2018年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/680,256号の優先権を主張する。米国仮特許出願第62/679,133号、62/679,286号および62/680,256号の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示の主題は、LC-MS/MSプロテオーム遺伝子型解析のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
医療分野において、特定の遺伝子座における遺伝子型を決定することがしばしば必要とされる。例えば、G1およびG2と称されるアポリポタンパク質L1の2つの遺伝的改変体(ApoL1)は、アフリカ系アメリカ人の集団の大多数に存在する。2つのApoL1リスク改変体(G1/G1、G2/G2、またはG1/G2)を有する個体は、非糖尿病性の腎疾患を発症するリスクが高い。さらに、腎臓移植レシピエントは、2つのApoL1リスク改変体を有するアフリカ系アメリカ人からのドナー臓器を使用する場合、大抵、早期の同種移植の失敗を経験することが実証された。プロテオーム方法によるタンパク質配列決定は、目的の遺伝子によってコードされた対応するタンパク質改変体を同定することによって遺伝子型を同定でき、これは、従来の遺伝子(DNA)配列決定および転写(RNA)配列決定に比べて実用的な利益を有し得る。これは、タンパク質改変体を含有する体液のプロテオーム分析によって達成することができる。しかしながら、遠隔または自己試料収集が有利な場合、プロテオーム分析のための体液からの乾燥検体の生産が好ましい場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の実施形態において、本開示の主題は、試料中の目的の遺伝子型のプロテオーム決定のための方法およびシステムを提供する。本方法は、様々な方法で具体化することができる。
【0005】
例えば、対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するための方法であって、対象から生体試料を提供するステップ;および質量分析を使用して、試料中に存在する少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド(すなわち、プロテオームのプロファイル)に基づいて、遺伝子型を決定するステップを含む、方法が開示される。一実施形態において、本方法は、対象からの体液を提供するステップであって、体液は、目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する、ステップ;体液を、固体担体上に堆積させるステップであって、体液を、乾燥させて乾燥検体を生産する、ステップ;乾燥検体を消化して、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するステップ;質量分析によって、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在(すなわち、プロテオームのプロファイル)に基づいて、体液の遺伝子型を決定するステップを含んでいてもよい。一実施形態において、質量分析は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)を含む。一部の実施形態において、液体クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。
【0006】
本方法は、生体試料中の目的の遺伝子由来のタンパク質またはペプチドを消化して、対立遺伝子によってコードされたタンパク質改変体(すなわち、遺伝子型)に特異的な、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するステップであって、サロゲートペプチドは、プロテオームのプロファイルを含む、ステップを含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、本方法は、目的の遺伝子の対立遺伝子によってコードされた全てのタンパク質改変体に共通の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在を検出するステップをさらに含んでいてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、プロテアーゼ消化は、その遺伝子に関して存在する様々な対立遺伝子に共通の、共通サロゲートペプチド(または認定ペプチド(qualifying peptide))を生産することができる。一実施形態において、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在は、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答と比較することによって決定される。
【0007】
一部の実施形態において、消化するステップは、プロテアーゼであるトリプシンを使用して実行することができる。または、他のプロテアーゼまたはタンパク質の加水分解のための化学物質を使用してもよい。また一部の実施形態において、目的の遺伝子由来のタンパク質は、消化を容易にするために、消化の前に変性される。
【0008】
一部の実施形態において、内部標準は、検出された1つまたは複数のペプチドに対して使用することができる。例えば、遺伝子型に特異的な対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在は、サロゲートペプチドの測定された応答を、個体の試料に添加されるその内部標準の応答と比較することによって決定することができる。一部の実施形態において、内部標準は、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体である。加えて、および/または代替として、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在または非存在は、サロゲートペプチドの測定された応答を、個体の試料に内部標準として添加されたその安定同位体で標識された類似体の応答と比較することによって決定することができる。
【0009】
一実施形態において、測定された応答は、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である。加えて、および/または代替として、測定された応答は、共通サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比であり得る。例えば、一実施形態において、フラグメントイオンは、MS/MSの間に、ペプチドのそれぞれに対して生産される。フラグメントイオンがC末端由来である場合、フラグメントイオンは、「y」と示すことができる。フラグメントイオンがN末端由来である場合、フラグメントイオンは、「b」と示すことができる。加えて、フラグメントイオンは、アミノ酸残基の数によって同定することができる。例えば、配列LNILNNNYK(配列番号4)を有するペプチドの場合、フラグメントイオンy4は、配列NNYKを有すると予想される。一実施形態において、結果は、軽い(非標識)ペプチド(例えば、タンパク質のトリプシン消化の後)の、重い(安定同位体で標識された)ペプチドのPARに対するピーク面積の比(PAR)として報告することができる。これは、非標識のトリプシンにより生じたペプチドに対して正規化した応答を提供することができる。
【0010】
本方法は、あらゆるタンパク質に適用することができる。一実施形態において、タンパク質は、ApoL1である。例えば、ApoL1の場合、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドは、野生型対立遺伝子(配列番号1)由来のアミノ酸配列LNILNNNYK(配列番号4)を有していてもよいし、またはG1対立遺伝子(配列番号2)由来のアミノ酸配列LNMLNNNYK(配列番号5)を有していてもよいし、またはG2対立遺伝子(配列番号3)由来のアミノ酸配列LNILNNK(配列番号6)を有していてもよい。またApoL1の場合、共通サロゲートペプチドは、SETAEELK(配列番号7)および/またはVAQELEEK(配列番号8)のアミノ酸配列を有していてもよく、共通サロゲートペプチドは、野生型、G1またはG2対立遺伝子のそれぞれに存在する。これらのペプチドの測定のために、質量分析は、表3の遷移の少なくとも1つを測定することができる。またApoL1の場合、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在は、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの、表2に列挙した安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定することができる。
【0011】
本明細書で開示されたように、対象からの様々な体液は、目的の遺伝子の対立遺伝子によってコードされたタンパク質改変体を含有し得る。一部の場合において、体液は、乾燥させた血漿または乾燥させた赤血球であり、これらは、赤血球を固定する担体に血液を添加して、血漿を分離させることによって生産される。一部の実施形態において、生体試料は、好適な担体上で収集された、乾燥させた血液、乾燥させた尿、または乾燥させた唾液である。
【0012】
また、本明細書で開示されたプロテオーム方法を実行するためのシステムも開示される。例えば、対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するためのシステムであって、目的の遺伝子由来のタンパク質を含む乾燥させた体液を提供するためのデバイス;乾燥させた体液を消化に供して、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドを生成するためのステーション;必要に応じて、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じた少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの少なくとも1つの安定同位体で標識された類似体の、クロマトグラフィーによる精製のためのステーション;ならびに少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを質量分析によって分析して、生体試料中の少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または量を決定するためのステーションを含む、システムが開示される。
【0013】
一実施形態において、乾燥させた体液を提供するためのデバイスは、担体上で血漿からの赤血球を固定および分離するためのデバイスを含む。また一実施形態において、システムは、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドのための、安定同位体で標識された内部標準を添加するためのステーションをさらに含んでいてもよい。また一部の場合において、質量分析のためのステーションは、タンデム質量分析計を含み、および/またはクロマトグラフィーのためのステーションは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。システムは、ハイスループットの性質を有していてもよい。また一部の場合において、ステーションの少なくとも1つは、コンピューターによって制御される。
【0014】
このように本発明を一般論として説明したが、ここで非限定的な添付の図面について述べるが、これらは必ずしも原寸通りの縮尺で描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ApoL1野生型(配列番号1)、G1(配列番号2)、およびG2(配列番号3)タンパク質改変体、加えて、本開示の実施形態による各タンパク質改変体のトリプシン消化によって生産された対立遺伝子特異的サロゲートペプチドのアミノ酸配列を示す。野生型(WT)特異的サロゲートペプチドは、LNILNNNYK(配列番号4)である。G1特異的サロゲートペプチドは、LNMLNNNYK(配列番号5)である。G2特異的サロゲートペプチドは、LNILNNK(配列番号6)である。
【0016】
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に従ってWT、G1およびG2改変体のトリプシン消化によって生産されたある特定のApoL1の共通サロゲートペプチドを示す。認定ペプチド1は、SETAEELK(配列番号7)である。認定ペプチド2は、VAQELEEK(配列番号8)である。
【0017】
【
図3】
図3は、乾燥させた血漿を生産するための、層流紙(laminar flow paper)担体上における全血の堆積から赤血球および血漿を分離および乾燥するためのある特定の方法、加えて、本開示の実施形態による全血の収集および乾燥(すなわち乾燥させた血液スポット)にかかる時間経過を示す。
【0018】
【
図4】
図4は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の決定のための方法を示す。
【0019】
【
図5-1】
図5は、本開示の実施形態によるハイスループットプロテオーム遺伝子型解析のためのシステムを示す。
【
図5-2】
図5は、本開示の実施形態によるハイスループットプロテオーム遺伝子型解析のためのシステムを示す。
【
図5-3】
図5は、本開示の実施形態によるハイスループットプロテオーム遺伝子型解析のためのシステムを示す。
【0020】
【
図6】
図6は、本開示の実施形態によるApoL1対立遺伝子のサロゲートペプチドの検出パターンを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。
【0021】
【
図7-1】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。この図において、q1およびq2は、認定ペプチドを表す。
【
図7-2】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。この図において、q1およびq2は、認定ペプチドを表す。
【
図7-3】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。この図において、q1およびq2は、認定ペプチドを表す。
【
図7-4】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。この図において、q1およびq2は、認定ペプチドを表す。
【
図7-5】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。この図において、q1およびq2は、認定ペプチドを表す。
【
図7-6】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示し、丸は、陽性を示し、ひし形または白抜きの四角は、陰性を示す。この図において、q1およびq2は、認定ペプチドを表す。
【0022】
【
図8】
図8は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の半定量的評価を示す。
【0023】
【
図9】
図9は、血液のサンガーDNA配列決定と比較した、乾燥させた血漿および液体血漿を使用したプロテオーム遺伝子型解析の比較を示す。
【0024】
【
図10】
図10は、本開示の実施形態による増加するヘモグロビン濃度の関数としてのApoL1野生型(WT)ペプチドの評価を示す。野生型(WT)ペプチドおよび重い安定同位体内部標準(IS)のプロットの上に示したように、5mg/dLのヘモグロビン、518mg/dLのヘモグロビン、2073mg/dLのヘモグロビンおよび8300mg/dLのヘモグロビンを有する試料の評価を実行した。
【0025】
【
図11】
図11は、本開示の実施形態による層流紙上に固定され、1/4インチのパンチから回収された乾燥させた血漿に対する、ApoL1 WT、G1およびG2ペプチドの滴定を示す。x軸は、試料が液体血漿(20uL)であるか、または固体担体を使用して単離された乾燥させた血漿であるかを示し、サンプリング担体(すなわち、「パンチ」)のおよそのサイズおよび形状が示される。
【0026】
【
図12】
図12は、本開示の実施形態による、液体血漿(黒丸)または乾燥させた血漿(灰色の丸)のいずれかを使用して認定ペプチドおよび対立遺伝子特異的ペプチドを生成するための、トリプシン消化の時間経過を示す。30分タイムポイントにおける消化の量は、垂直の陰影で示される。
【0027】
【
図13】
図13は、本開示の実施形態による、28日まで23℃または37℃のいずれかで貯蔵された乾燥血漿中の野生型および対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定性を示す。
【0028】
【
図14】
図14は、本開示の実施形態によるLC-MS/MSによるプロテオーム遺伝子型解析のためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで本開示の主題を、添付の説明および図面を参照しながら以下でより詳細に説明するが、本開示の主題の実施形態の全てではなく一部が示される。本開示の主題は、多くの様々な形態で具体化でき、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、この開示が適用可能な法的な必要条件を満たすように提供されたものである。全体にわたり、類似の数値は類似の要素を指す。
【0030】
前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を受ける本開示の主題の関連分野の当業者であれば、本明細書に記載された本開示の主題の多くの改変および他の実施形態を思い付くものと予想される。それゆえに、本開示の主題は、開示された具体的な実施形態に限定されず、改変および他の実施形態が添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解されると予想される。本明細書において特定の用語が採用されるが、それらは、総称的に、単に説明的な意味でのみ使用され、限定する目的はない。本開示は、以下に示す略語を利用する。
【表6-1】
【表6-2】
【0031】
定義
以下の用語は、当業者によって十分理解されると考えられるが、本開示の主題の記載を容易にするために以下の定義を明示する。他の定義は、本明細書にわたり見出される。別段の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、この本明細書に記載される主題が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0032】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターは近似値であるが、具体的な例に記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、本来的に、それらそれぞれの試験測定で見出される標準偏差の結果として必然的に生じる一定の誤差を含有する。さらに、本明細書で開示される全ての範囲は、そこに含まれるありとあらゆる部分範囲を包含することが理解されるものとする。例えば、「1から10」と述べられた範囲は、最小値の1から最大値の10の間(それらの値を含めて)のありとあらゆる部分範囲;すなわち、最小値の1またはそれより大きい値から始まる部分範囲、例えば1から6.1、および最大値の10またはそれより小さい値で終わる部分範囲、例えば5.5から10の全ての部分範囲を含むとみなされるものとする。加えて、「本明細書に組み込まれる」と称される全ての参考文献は、その全体が組み込まれると理解されるものとする。
【0033】
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、特許請求の範囲を含めて本出願において使用される場合、「1つまたは複数の」を指す。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、文脈上明らかに、その逆であること(例えば、複数の細胞)などを示していない限り、複数のこのような細胞を含む。
【0034】
用語「バイオマーカー」または「目的のバイオマーカー」は、本明細書で使用される場合、生物の生理学的な状態に関する生物学的な情報を提供する可能性があるあらゆる生体分子である。ある特定の実施形態において、バイオマーカーの存在または非存在は、情報を与え得る。他の実施形態において、バイオマーカーのレベルは、情報を与え得る。一実施形態において、目的のバイオマーカーは、ペプチド、ホルモン、核酸、脂質またはタンパク質を含み得る。または他のバイオマーカーが測定されてもよい。一実施形態において、バイオマーカーは、ApoL1由来のペプチドを含み得る。様々な実施形態において、ペプチドは、野生型ペプチド、G1改変体、またはG2改変体であり得る。
【0035】
用語「体液」は、本明細書で使用される場合、生物学的な源、例えば、これらに限定されないが、動物、細胞培養物、臓器培養物などから得られた液体試料を指す。好適な試料としては、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙、髄液、または他の液体吸引物が挙げられ、これらは全て、収集および乾燥のために担体上に堆積させることが可能である。一実施形態において、体液は、乾燥の前に、担体上で分離することができる。例えば、血液は、紙担体および/または層流デバイス上に堆積させることができ、これは、分析のための乾燥させた血漿試料を生産するために、赤血球の移動を制限して、乾燥の前に血漿画分の分離を可能にする。
【0036】
用語「個体」および「対象」は、本明細書で使用される場合、同義的に使用される。対象は、動物を含み得る。したがって、一部の実施形態において、生体試料は、これらに限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、サルを含む哺乳動物から得られる。一部の実施形態において、生体試料は、ヒト対象から得られる。一部の実施形態において、対象は、患者であり、すなわち、疾患または状態の診断、予後診断、または処置に関する臨床的な環境に自ら現れる生きている人である。
【0037】
対象は、本明細書で使用される場合、動物を含み得る。したがって、一部の実施形態において、生体試料は、これらに限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、サルを含む哺乳動物から得られる。一部の実施形態において、生体試料は、ヒト対象から得られる。一部の実施形態において、対象は、患者であり、すなわち、疾患または状態の診断、予後診断、または処置に関する臨床的な環境に自ら現れる生きている人である。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「精製する」もしくは「分離する」またはそれらの派生語は、必ずしも、試料マトリックスからの目的の分析物以外の全ての材料の除去を指すとは限らない。その代わりに、一部の実施形態において、用語「精製する」または「分離する」は、試料マトリックス中に存在する1つまたは複数の他の成分に比べて、1つまたは複数の目的の分析物の量を高める手順を指す。一部の実施形態において、「精製」または「分離」手順は、目的のバイオマーカーの検出に干渉する可能性がある試料の1つまたは複数の成分、例えば、質量分析による分析物の検出に干渉する可能性がある1つまたは複数の成分を除去するのに使用することができる。
【0039】
「クロマトグラフィー」は、本明細書で使用される場合、液体またはガスによって運ばれる化学混合物が、静止している液相または固相の周りまたはその上にそれらが流動するときに化学実体が差次的に分配される結果として、成分に分離されるプロセスを指す。
「液体クロマトグラフィー」(LC)は、本明細書で使用される場合、流体が微粉化した物質のカラムを通って、またはキャピラリーの通路を通って均一に浸透するときの、流体溶液の1つまたは複数の成分の選択的な遅延のプロセスを意味する。遅延は、1つまたは複数の固定相とバルクの流体(すなわち、移動相)との間に混合物の成分が、この流体が固定相に対して移動するときに分配されることに起因する。「液体クロマトグラフィー」としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
用語「HPLC」または「高速液体クロマトグラフィー」は、本明細書で使用される場合、加圧下で移動相を固定相に、典型的には高密度に充填されたカラムに押し通すことによって分離の程度を増加させる液体クロマトグラフィーを指す。
【0040】
クロマトグラフィーのカラムは、典型的には、化学部分の分離(すなわち、分画)を容易にするための媒体(すなわち、充填材料)を含む。媒体は、微細な粒子を含んでいてもよい。このような粒子は、本明細書に記載の実験で定量化されるバイオマーカー分析物などの様々な化学部分と相互作用して化学部分の分離を容易にする結合表面を含んでいてもよい。1つの好適な結合表面は、疎水性の結合表面、例えばアルキル結合表面である。アルキル結合表面は、C-4、C-8、またはC-18の結合アルキル基、好ましくはC-18の結合基を含んでいてもよい。クロマトグラフィーのカラムは、試料を受け取るための入口ポート、および分画された試料を含む流出物を放出するための出口ポートを含んでいてもよい。本方法において、試料(または精製前の試料)は、入口ポートでカラムに適用され、溶媒または溶媒混合物で溶出させ、出口ポートで放出させることができる。異なる目的の分析物を溶出させるために、異なる溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、均一モード、または複合型(polytyptic)(すなわち混合)モードを使用して実行することができる。一実施形態において、HPLCは、C18固相を有する多重分析HPLCシステムで、移動相として水:メタノールを用いた均一分離を使用して実行することができる。
【0041】
用語「分析カラム」は、本明細書で使用される場合、試験試料マトリックスの成分の分離を実行するのに十分なクロマトグラフィープレートを有するクロマトグラフィーカラムを指す。好ましくは、分析カラムから溶出させた成分は、目的の分析物の存在または量の決定が可能になるような方法で分離される。一部の実施形態において、分析カラムは、約5μmの平均直径を有する粒子を含む。一部の実施形態において、分析カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばフェニル-ヘキシル官能化分析カラムである。
【0042】
分析カラムは、保持された材料を保持されていない材料から分離または抽出して、さらなる精製または分析のための「精製した」試料を得るために通常使用される「抽出カラム」と区別することができる。一部の実施形態において、抽出カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばPoroshell SBC-18カラムである。
【0043】
用語「ハートカット」は、クロマトグラムにおいて目的の領域を選択し、その目的の領域内で溶出する分析物を、第2の分離、例えば二次元目における分離に供することを指す。
【0044】
用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」、または「MALDI」は、本明細書で使用される場合、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、それにより試料中の分析物を脱離させ、光イオン化、プロトン付加、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む様々なイオン化経路によってイオン化する方法を指す。MALDIの場合、試料は、分析物分子の脱離を容易にするエネルギー吸収マトリックスと混合される。
【0045】
用語「表面増強レーザー脱離イオン化」、または「SELDI」は、本明細書で使用される場合、不揮発性試料をレーザー照射に曝露し、それにより試料中の分析物を脱離させ、光イオン化、プロトン付加、脱プロトン化、およびクラスター崩壊を含む様々なイオン化経路によってイオン化する別の方法を指す。SELDIの場合、試料は、典型的には、1つまたは複数の目的の分析物を優先的に保持する表面に結合される。MALDIの場合と同様に、このプロセスも、イオン化を容易にするために、エネルギー吸収材料を採用する場合がある。
【0046】
用語「エレクトロスプレーイオン化」、または「ESI」は、本明細書で使用される場合、溶液を長さが短い毛細管に沿って通過させて、その末端に高い正または負電位を適用する方法を指す。管の末端に到達したら、溶液を気化させて(霧状にして)、溶媒蒸気中の非常に小さい溶液の液滴のジェットまたはスプレーにすることができる。この液滴のミストは、液化を防ぎ、溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱された蒸発チャンバーを通って流動させることができる。液滴が小さくなるにつれて、電気的な表面電荷密度は、類似の電荷間の自然の反発がイオンに加えて中性分子の放出を引き起こすような時点まで増加する。
【0047】
用語「イオン化」および「イオン化する」は、本明細書で使用される場合、1またはそれより高い電子単位に等しい正味の電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを指す。陰イオンは、1つまたはそれより高い電子単位の正味の負電荷を有するイオンであり、一方で陽イオンは、1つまたはそれより高い電子単位の正味の正電荷を有するイオンである。
【0048】
用語「脱離」は、本明細書で使用される場合、表面から分析物が除去されること、および/または分析物が気相に入ることを指す。
【0049】
用語「溶血した」は、本明細書で使用される場合、赤血球膜が破裂して、血漿または血清にヘモグロビンと他の細胞内容物の放出が起こることを指し、用語「脂肪血症の」は、血液中の脂肪または脂質が過剰であることを指す。
【0050】
「液体血漿」は、本明細書で使用される場合、患者からの採血から得られた血漿であって、赤血球から分離されているが液体状態のままのものである。液体血漿は、一般的に、静脈切開または静脈穿刺によって対象から得られる。
【0051】
「乾燥させた血漿」は、本明細書で使用される場合、乾燥させた血漿である。乾燥させた血漿は、より詳細に本明細書に記載されるように、細胞の移動を制限する固体担体の孔を通る血漿の移動によって(例えば、層流によって)赤血球から分離した後に生産することができる。
【0052】
「サンプリング紙」または「フィルター」または「フィルター膜」または「層流紙」または「層流デバイス」は、本明細書で使用される場合、乾燥させた血液および血漿の収集のための固体担体を指すのに同義的に使用される用語であり、その上に血液をスポッティングでき、実質的に血漿である領域が生じるように赤血球から離れる血漿の移動を可能にし、乾燥させると乾燥させた血漿の試料を提供する濾紙または膜を含み得る。
【0053】
「遺伝子型」は、本明細書で使用される場合、タンパク質配列をコードし得る遺伝子中に存在する2つの対立遺伝子のDNA配列である。
【0054】
「サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、タンパク質から得られ、タンパク質に関する配列情報を提供するペプチドである。用語「改変体特異的サロゲートペプチド」および/または「対立遺伝子特異的サロゲートペプチド」および/または「遺伝子型特異的サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、タンパク質から得られ、そのタンパク質をコードする遺伝子のDNA配列に直接起因する可能性がある固有のアミノ酸配列を有するペプチドである。対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの配列の決定は、遺伝子の少なくとも1つの対立遺伝子の遺伝子型を推測するのに使用することができる。したがって、「対立遺伝子特異的サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、タンパク質をコードする対立遺伝子に関する配列情報を提供するペプチドである。例えば、ApoL1の場合、野生型サロゲートペプチドは、タンパク質が野生型対立遺伝子由来であることを示し、それに対してG1サロゲートペプチドは、タンパク質がG1対立遺伝子由来であることを示し、G2サロゲートペプチドは、タンパク質がG2対立遺伝子由来であることを示す。
【0055】
「共通サロゲート」ペプチドまたは「認定ペプチド」または「認定サロゲートペプチド」は、本明細書で使用される場合、目的の遺伝子座におけるDNA配列が変動し得る場合でも変動しない固有のアミノ酸配列を有するペプチドである。したがって、「共通サロゲートペプチド」または「認定ペプチド」は、本明細書で使用される場合、野生型対立遺伝子に加えて照合される対立遺伝子の全てに共通のペプチド配列を含む。共通サロゲートペプチドの配列の決定は、目的の遺伝子座における遺伝子型の変化に応じて変動しないと予想され、したがって、試料処理誤差から真の負のシグナルを区別するための内部対照として使用することができる。
【0056】
「タンパク質改変体」は、本明細書で使用される場合、最も一般的な、または野生型配列と異なるアミノ酸配列を有するタンパク質である。
【0057】
「プロテオームのプロファイル」は、本明細書で使用される場合、目的の遺伝子座における個体の遺伝子型を決定するのに使用することができるサロゲートペプチドのプロファイルである。
LC-MS/MSによるApoL1遺伝子型の分析
【0058】
したがって、本発明の実施形態は、遺伝子型のプロテオーム分析のための方法およびシステムに関する。本発明は、様々な方法で具体化することができる。
LC-MS/MSによる対立遺伝子特異的なプロテオームのプロファイルの分析のための方法
【0059】
一実施形態において、本発明は、対象の遺伝子型を決定するための方法であって、担体上に体液を提供し、乾燥させるステップ;乾燥体液を消化に供して、そこに含有されるタンパク質改変体から対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生産するステップ;質量分析を使用して、試料中に存在する対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および対立遺伝子特異的サロゲートペプチドのプロテオームのプロファイルに基づいて、遺伝子型を決定するステップを含む、方法を含む。したがって、一実施形態において、対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するための方法であって、対象からの体液を提供するステップであって、体液は、目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する、ステップ;体液を、固体担体上に堆積させるステップであって、体液を、乾燥させて乾燥検体を生産する、ステップ;乾燥検体を消化して、タンパク質の、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するステップ;質量分析を使用して、消化された試料中に存在する、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在もしくは非存在または量に基づいて、対象の遺伝子型を決定するステップを含む、方法が提供される。一実施形態において、本方法は、目的の遺伝子の各遺伝子型に共通の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの量を測定するステップをさらに含んでいてもよい。また一実施形態において、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドは、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析される。ある特定の実施形態において、本方法は、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの検出によって、目的の遺伝子の対立遺伝子によってコードされたタンパク質改変体の量を測定するステップをさらに含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、本方法は、目的の遺伝子の対立遺伝子によってコードされた全てのタンパク質改変体に共通の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在を検出するステップをさらに含んでいてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、プロテアーゼ消化は、その遺伝子に関して存在する様々な対立遺伝子に共通の、共通サロゲートペプチド(または認定ペプチド)を生産することができる。一実施形態において、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在は、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答と比較することによって決定される。
【0060】
一部の実施形態において、消化は、プロテアーゼであるトリプシンを用いて実行される。またはタンパク質の加水分解のための他のプロテアーゼおよび化学物質を使用してもよい。また一部の実施形態において、目的の遺伝子由来のタンパク質は、消化を容易にするために、消化の前に変性される。
【0061】
一部の場合において、内部標準を使用することができる。内部標準は、一部の実施形態において、消化のステップの前に添加されてもよい。例えば、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在は、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、試料に添加された少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定することができる。加えて、および/または代替として、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在または非存在は、共通サロゲートペプチドの測定された応答を、安定同位体で標識された共通サロゲートペプチドの応答と比較することによって決定することができる。
【0062】
一実施形態において、フラグメントイオンは、MS/MSの間に、ペプチドのそれぞれに対して生産される。フラグメントイオンがC末端由来である場合、フラグメントイオンは、「y」と示すことができる。フラグメントイオンがN末端由来である場合、フラグメントイオンは、「b」と示すことができる。加えて、フラグメントイオンは、アミノ酸残基の数によって同定することができる。例えば、配列LNILNNNYK(配列番号4)を有するペプチドの場合、フラグメントイオンy4は、配列NNYKを有すると予想される。一実施形態において、結果は、軽い(非標識)ペプチド(例えば、タンパク質のトリプシン消化の後)の、重い(安定同位体で標識された)ペプチドのPARに対するピーク面積の比(PAR)として報告することができる。これは、非標識のトリプシンにより生じたペプチドに対して正規化した応答を提供することができる。
【0063】
本方法は、あらゆるタンパク質に適用することができる。一実施形態において、タンパク質は、ApoL1である。例えば、ApoL1の場合、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドは、野生型対立遺伝子(配列番号1)由来のアミノ酸配列LNILNNNYK(配列番号4)を有していてもよいし、またはG1対立遺伝子(配列番号2)由来のアミノ酸配列LNMLNNNYK(配列番号5)を有していてもよいし、またはG2対立遺伝子(配列番号3)由来のアミノ酸配列LNILNNK(配列番号6)を有していてもよい。またApoL1の場合、共通サロゲートペプチドは、SETAEELK(配列番号7)および/またはVAQELEEK(配列番号8)のアミノ酸配列を有していてもよく、共通サロゲートペプチドは、野生型、G1またはG2対立遺伝子のそれぞれに存在する。これらのペプチドの測定のために、質量分析は、表3の遷移の少なくとも1つを測定することができる。またApoL1の場合、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在は、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの、表2に列挙した安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定することができる。
【0064】
本明細書で開示されたように、様々な体液を使用することができる。一部の場合において、体液は、血漿または血液であり得る。一部の実施形態において、体液は、乾燥させた血漿を生産するのに使用することができる。または体液は、乾燥させた血液、乾燥させた尿または乾燥させた唾液の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0065】
また一部の実施形態において、試料は、質量分析のためのイオン化の前に、精製ステップに供してもよい。精製ステップは、クロマトグラフィーを含んでいてもよい。本明細書で論じられるように、ある特定の実施形態において、クロマトグラフィーは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む。LCステップは、1つのLC分離、または複数のLC分離を含んでいてもよい。一実施形態において、クロマトグラフィーによる分離は、抽出および分析のための液体クロマトグラフィーを含む。加えて、または代替として、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)(ハイスループット液体クロマトグラフィーとしても公知)を使用してもよい。
【0066】
精製は、HPLC、または他のタイプのクロマトグラフィーによる分離技術に加えて、ステップを含んでいてもよい。代替の実施形態において、本方法は、液体-液体抽出、保持型液体抽出または希釈の少なくとも1つを含んでいてもよい。一実施形態において、試料は、LCおよび/またはMS(例えば、LC-MS/MSまたは2D-LC-MS/MS)に使用することができる溶媒または溶媒混合物に希釈される。
【0067】
非限定的な例として、本開示の方法は、ApoL1遺伝子型のプロテオーム分析に適用されている。野生型(WT)対立遺伝子およびリスク改変体対立遺伝子(G1およびG2)は、384位または388~389位に固有のアミノ酸配列を有するApoL1をコードする(
図1)。ApoL1がトリプシン消化されると(例えば、
図1および2)、各改変体形態は、その結果として、残基382から390(またはG2欠失の場合、382から388)由来の別個のタンパク質分解ペプチドを生産し、これらは、対応するApoL1改変体の存在のサロゲートとして、LC-MS/MSによって検出することができる(
図6および
図7)。したがって、本明細書で開示されたシステムおよび方法を使用して、ApoL1の3つの遺伝的改変体、すなわち、野生型(WT)、G1、およびG2は、乾燥させた血液または乾燥させた血液画分の分析によって、全血中に循環するApoL1のタンパク質配列中の対応する変異を同定することによって決定することができる(
図3)。
【0068】
図3は、乾燥させた血液スポットを有するが、血液から分離された血漿を有さない紙と比較した、血漿セパレーターストリップを使用して単離された乾燥させた赤血球および乾燥させた血漿のゾーンを有する担体を示す(
図3の左のパネルの、それぞれ上と下を参照)。
図3の右側は、経時的な分離の程度を示す。臨床的な分析において、乾燥させた血液スポットが一般的に使用される検体であるが、分析は、赤血球(例えば、ヘモグロビン)によって生じる干渉に悩む場合がある。層流紙は、紙を通る血漿および細胞の差次的な移動によって細胞成分から堆積した血液の血漿画分を分離するのに使用することができ、その結果として、乾燥およびアッセイが可能な無細胞血漿画分が得られる。
【0069】
サロゲートペプチドの同定は、まず乾燥させた血液画分(すなわち、乾燥させた血漿)を変性させ、続いてトリプシン消化を行い、ApoL1の3つの改変体形態に特異的なタンパク質分解サロゲートペプチドを生産することによって達成することができる(
図4)。次いで消化された血漿をLC-MS/MSによって直接分析して、それぞれのサロゲートペプチドの存在または非存在を決定することにより、関連するApoL1改変体の存在または非存在を推測することができる(
図4および
図5)。
【0070】
全ての3つの(すなわち、WT、G1およびG2)ApoL1改変体に共通する2つの共通サロゲートペプチド(すなわち、認定ペプチド)も、認定試料の処理のためにモニタリングすることができる(
図2)。例えば、残基382または390の間に異なるアミノ酸変異をコードする別の現時点でまだ知られていないApoL1改変体が存在し得ることが考えられる。個体がこの変異に関してホモ接合型である(または2つのこのような知られていない変異に関してヘテロ接合型である)場合、これは、検出可能な改変体特異的サロゲートペプチドをもたらさないと予想される。これを試料処理誤差と区別するために、トリプシン消化によって生産された、改変体特異的サロゲートペプチドに隣接する2つの追加のサロゲートペプチドがモニタリングされ、このようなサロゲートペプチドは、ApoL1改変体に関係なく、全ての適切に処理された試料において検出可能と予想される。したがって、処理された検体の完全性に関する懸念なしに改変体特異的サロゲートペプチド検出の確信のある解釈が得られるように、これらの2つの「認定サロゲートペプチド」の1つまたは複数の検出は、適した試料処理を確認する。
【0071】
サロゲートペプチド(改変体または認定)の存在または非存在は、サロゲートペプチドの測定された応答を、トリプシン消化の前に試料アリコートに内部標準として添加される、その安定同位体で標識された類似体の応答と比較することによって決定することができる。検出されたサロゲートペプチドのパターンに基づいて、検体/個体の遺伝子型を決定することができる。
【0072】
図4は、本開示の実施形態による紙担体(例えば、サンプリング紙)からの乾燥させた血漿(3×内径1/4’’の円形パンチ)を使用するApoL1遺伝子型の決定のための方法を示す。試料(すなわち、乾燥させた血漿)は、消化緩衝剤に添加されてもよい。試料中に存在するタンパク質を変性させるための上昇させた温度での短いインキュベーションの後(例えば、56℃で30分)、トリプシンおよび内部標準を添加してもよく、そのまま消化を進行させる(例えば、37℃で30分)。次に、ギ酸を添加して、トリプシン消化を終わらせ、酸不溶性材料(すなわち、デオキシコレート)を沈殿させ、上清のアリコートをLC-MS/MSシステムに添加することができる。
【0073】
次いで試料は、ハイスループットLC-MS/MSによって分析することができる。
図5は、ハイスループットプロテオーム遺伝子型解析のためのシステムを示す。一実施形態において、LC方法のパラメーターを最適化して、各サロゲートペプチドの同重体干渉のクロマトグラフィーによる分離を確実にし、それにより、総稼働時間が3.5分のLC方法を得た。ARI Transcent(商標)TLX-4などの多重化LCシステムで採用される場合、質量分析のデューティサイクルを改善するために、注入は、注入が1.5分毎に時間がずれるように平行して行うことができる。
【0074】
図6は、本開示の実施形態によるApoL1のサロゲートペプチドの検出パターンを示す。したがって、ホモ接合型の野生型(WT/WT)である対象は、WTペプチドに加えて、2つの共通ペプチド(SETAEELKおよびVAQELEEK)を有すると予想される。同様に、G1対立遺伝子(G1/G1)またはG2対立遺伝子(G2/G2)のいずれかに関してホモ接合型である対象は、それぞれG1またはG2ペプチドに加えて、2つの共通ペプチド(SETAEELKおよびVAQELEEK)を有すると予想される。WT、G1またはG2に関してヘテロ接合型である対象は、示されたパターンを表すと予想される(
図6)。
【0075】
図7は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の定性的な割り当てを示す。全ての6つの可能性のある遺伝子型を有する個体から得られたクロマトグラムの例を示す。全ての5つのサロゲートペプチドは、2つのSRM遷移を使用して検出される。ApoL1改変体が個体中に存在する場合、対応する改変体特異的サロゲートペプチドは、クロマトグラムにおいて明確に視認できる/検出される。ApoL1改変体が個体中に存在しない場合、対応する改変体特異的サロゲートペプチドは、クロマトグラムにおいて明確に視認できない/検出されない。注目すべきことに、2つの認定サロゲートペプチドは、遺伝子型に関係なく全ての6つの個体中に存在する。
【0076】
図8は、本開示の実施形態によるApoL1遺伝子型の半定量的評価を示す。この実験において、数百の検体および検体プールを液体血漿として分析し、対応するクロマトグラムの目視での解釈に基づき、所与の改変体特異的サロゲートペプチドにつき陰性(三角形/ひし形)または陽性(丸)として定性的に割り当てた。関連する陰性検体で測定された重い同位体で標識された対立遺伝子特異的ペプチド(軽いペプチド:重いペプチドのピーク面積の比、PAR)と比較した、非標識対立遺伝子特異的ペプチドのフラグメント(例えば野生型対立遺伝子特異的ペプチドのy
6+またはy
5+)のピーク面積の比としてy軸に示された各遷移の正規化した応答に基づいて、検出限界を、平均の正規化した応答として計算し、加えて、それ未満だと試料が確実に陰性として分類されると予想される4つの標準偏差も計算した。改変体特異的サロゲートペプチドの決定的な陽性検出のための閾値を、関連する陰性検体における平均の正規化した応答として計算し、加えて、12個の標準偏差を計算した。
【0077】
図9は、乾燥させた血漿、それに対して液体血漿である生体試料を使用した、DNA配列決定およびプロテオーム遺伝子型解析の比較を示す。プロテオーム分析のための一致させた液体および乾燥血漿検体を、サンガー配列決定のための全血と共に、209人のアフリカ系アメリカ人ドナーから得た。サンガー配列決定によって決定された各ドナーの遺伝子型は、液体および乾燥血漿検体の両方からのプロテオーム分析によって割り当てられた遺伝子型と完全に一致したことから、プロテオームのプロファイリングが、目的のバイオマーカーのLC-MS/MS/分析のための実現性のある選択肢であることが示される。
【0078】
図10は、本開示の実施形態によるヘモグロビン濃度に関連するApoL1野生型(WT)ペプチドの評価を示す。一部の実施形態において、ヘモグロビンは、2つの重要な方法で目的のバイオマーカーの検出に干渉する可能性がある。第1に、より高い濃度のヘモグロビンで、同重体干渉物質が、WT-サロゲートペプチドの2つのSRM遷移のうち1つで観察されたことから、WT-陰性遺伝子型を有する検体の解釈(すなわち、G1/G1、G2/G2またはG1/G2)が混乱した。第2に、イオン抑制によるより低い分析応答を引き起こすマトリックスの作用を観察した。
【0079】
図11は、本開示の実施形態による濾紙に固定され、1/4インチのパンチから回収された乾燥させた血漿に対する、ApoL1 WT、G1およびG2ペプチドの滴定を示す。液体および乾燥血漿の両方からの等価なアッセイ性能を確実にするために、液体血漿に対する等価な分析応答を提供するのに必要な乾燥血漿パンチの断面および数を評価した。どれが96-ウェルプレートフォーマットでのインプリメンテーションのために最も実用的であるかを決定するために、様々な断面が検討された。3人の個体を、以下の遺伝子型:WT/WT、WT/G1、およびWT/G2で評価した。液体血漿に関連して、各サロゲートペプチドの相対的な応答は、個体および遺伝子型にわたり一致していたことから、乾燥血漿における応答の回復は、分析された総表面積にのみ関連することが示された。これらの分析に基づいて、20uLの液体血漿の等価な分析応答は、野生型ペプチド(WT)、加えてG1およびG2につき、96~126mm
2の間の乾燥血漿から得ることができると結論付けた。WTグラフは、使用することができる他の切り抜き形状の例を示す。シグナルは、一般的に、試料毎の使用される切り抜きの量に比例する。
【0080】
図12は、本開示の実施形態による液体血漿または乾燥させた血漿のいずれかを使用したトリプシン消化の時間経過を示す。液体および乾燥血漿の消化中の各サロゲートペプチドの形成を、0~120分の間の時間経過分析で評価した。液体血漿消化の試料を、3~120分の間の9つのタイムポイントで収集した。このプロファイルは、各ApoL1改変体の消化が、液体および乾燥血漿検体の両方から類似の方式で進行することを示す。したがって、約2時間後、実質的に100%の消化が起こる。
【0081】
図13は、本開示の実施形態による乾燥血漿からのタンパク質改変体の測定の安定性を示す。試料が、セ氏23度(通常の貯蔵条件)またはセ氏37度のいずれにおいても、28日後でさえもサロゲートペプチドの類似した測定された応答を提供することを見ることができる。
LC-MS/MSプロテオーム遺伝子型解析のためのシステム
【0082】
他の開示された実施形態は、システムを含む。例えば、対象における目的の遺伝子型のプロテオームのプロファイルを決定するためのシステムであって、目的の遺伝子座由来のタンパク質または対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを含む試験試料を提供するためのデバイス;試料をプロテアーゼ消化に供して、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するためのステーション;必要に応じて、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドのクロマトグラフィーによる精製のためのステーション;および生体試料中の対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または量を決定するための、質量分析によって対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを分析するためのステーションを含む、システムが開示される。一実施形態において、対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するためのシステムであって、目的の遺伝子由来のタンパク質を含む乾燥させた体液を提供するためのデバイス;乾燥させた体液を消化に供して、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドを生成するためのステーション;必要に応じて、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドのクロマトグラフィーによる精製のためのステーション;ならびに少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを質量分析によって分析して、生体試料中の少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または量を決定するためのステーションを含む、システムが開示される。一実施形態において、タンパク質は、ApoL1である。
【0083】
ある特定の実施形態において、生体試料を提供するためのデバイスは、担体上で血漿からの赤血球を固定および分離するためのデバイスを含んでいてもよい。システムは、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドのための、安定同位体で標識された内部標準を添加するためのステーションをさらに含んでいてもよい。
【0084】
また、以下で詳細に説明されるように、質量分析のためのステーションは、タンデム質量分析計を含んでいてもよい。一実施形態において、質量分析は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)モードで操作される。
【0085】
またクロマトグラフィーのためのステーションは、これらに限定されないが、液体-液体クロマトグラフィー、および/または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、および/または本明細書に記載される他のタイプのクロマトグラフィーなどの様々な種類のクロマトグラフィーを、別々に含んでいてもよいし、または一緒に使用してもよい。
【0086】
またある特定の実施形態において、ステーションの少なくとも1つは、コンピューターによって自動化および/または制御される。例えば、本明細書に記載されるように、ある特定の実施形態において、ステップの少なくとも一部は、手作業の介入がほとんど必要ないように自動化される。
【0087】
一実施形態において、クロマトグラフィーによる分離のためのステーションは、液体クロマトグラフィー(LC)を実行するための少なくとも1つの装置を含む。一実施形態において、液体クロマトグラフィーのためのステーションは、抽出クロマトグラフィーのためのカラムを含む。加えて、または代替として、液体クロマトグラフィーのためのステーションは、分析クロマトグラフィーのためのカラムを含む。ある特定の実施形態において、抽出クロマトグラフィーおよび分析クロマトグラフィーのためのカラムは、単一のステーションまたは単一のカラムを含む。例えば、一実施形態において、試料中の他の成分から目的のバイオマーカーを精製するために、試料の抽出または希釈後に目的のバイオマーカーを一緒に精製する液体クロマトグラフィーが使用される。
【0088】
またシステムは、試験試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの存在または量を決定するための、クロマトグラフィーによって分離された1つまたは複数の目的のバイオマーカーを質量分析によって分析するためのステーションを含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、タンデム質量分析(MS/MS)が使用される。例えば、ある特定の実施形態において、タンデム質量分析のためのステーションは、Applied Biosystems API5500もしくはAPI6500トリプル四重極またはサーモQ-Exactive質量分析計を含む。
【0089】
システムはまた、生体試料からペプチドおよび/もしくはタンパク質を部分的に精製する、または試料を変性させる、および/もしくは希釈するためのステーションを含んでいてもよい。一実施形態において、抽出のためのステーションは、タンパク質改変体または得られたサロゲートペプチドの免疫親和性強化のためのステーションを含む。免疫親和性強化のためのステーションは、免疫親和性試薬と結合している固体吸着剤の操作、洗浄、およびストリッピングのための器具および試薬を含んでいてもよい。一部の場合において、同位体で標識された内部標準は、手順中に生じる可能性があるバイオマーカーの喪失を標準化するために使用される。
【0090】
ある特定の実施形態において、本発明の方法およびシステムは、複数の液体クロマトグラフィーステップを含んでいてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、2次元液体クロマトグラフィー(LC)手順が使用される。例えば、一実施形態において、本発明の方法およびシステムは、試料または試料由来のペプチドを、LC抽出カラムから分析カラムに移動させることを含んでいてもよい。一実施形態において、抽出カラムから分析カラムへの移動は、ハートカット技術によってなされる。別の実施形態において、抽出カラムから分析カラムへの移動は、クロマトフォーカシング技術によってなされる。代替として、抽出カラムから分析カラムへの移動は、カラムスイッチング技術によってなされてもよい。これらの移動ステップは、手動でなされてもよいし、またはオンラインシステムの一部であってもよい。
【0091】
抽出または分析のための液体クロマトグラフィーに使用できる固定相および移動相を含む様々なカラムが本明細書に記載される。抽出液体クロマトグラフィーに使用されるカラムは、目的のバイオマーカーに応じて変更することができる。一部の実施形態において、抽出カラムは、官能化したシリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくは一体構造のシリカ固定相、例えばPoroshell SBC-18カラムである。分析のための液体クロマトグラフィーに使用されるカラムは、抽出液体クロマトグラフィーステップに使用された分析物および/またはカラムに応じて変更することができる。例えば、ある特定の実施形態において、分析カラムは、約5μmの平均直径を有する粒子を含む。
【0092】
本明細書で述べられるように、ある特定の実施形態において、質量分析計は、タンデム質量分析計(MS/MS)を含み得る。例えば、本発明の方法およびシステムの一実施形態において、タンデム質量分析は、トリプル四重極タンデム質量分析計を含む。他の実施形態において、タンデム質量分析計は、ハイブリッド質量分析計、例えば四重極-オービトラップまたは四重極-飛行時間型質量分析計であり得る。
【0093】
タンデムMS/MSは、様々なモードで操作することができる。一実施形態において、タンデムMS/MS分析計は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)モードで操作される。一部の実施形態において、分析物および内部標準の定量化は、選択反応モニタリングモード(SRM)で実行される。
【0094】
本発明のシステムおよび方法は、ある特定の実施形態において、多重化またはハイスループットアッセイをもたらすことができる。例えば、本発明のある特定の実施形態は、プロテオーム分析のための、多重化液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)または2次元またはタンデム液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC)-LC-MS/MS)方法を含んでいてもよい。
【0095】
一部の実施形態において、タンデムMS/MSシステムが使用される。当業者公知のように、タンデムMS分光分析において、イオン化後に前駆体イオンを選択し、その前駆体イオンをフラグメント化に供して、生成物(すなわち、フラグメント)イオンを生成し、それによって1つまたは複数の生成物イオンが、検出のための質量分析の第2の段階に供される。それゆえに、ペプチドは、タンデム質量分析手法において異なる前駆体および生成物イオン(すなわち、異なる遷移)を有するため、1つより多くの遺伝子型に対応するペプチド(すなわち、ApoL1の場合、WT、G1、G2および共通ペプチド)ごとに試料を分析することができる。
【0096】
次いで目的の分析物は、タンデムMSによって測定された特徴的な遷移の量に基づいて検出することができる。一部の実施形態において、タンデム質量分析計は、トリプル四重極型質量分析計を含む。一部の実施形態において、タンデム質量分析計は、陽イオンエレクトロスプレーイオン化(ESI)モードで操作される。またはイオン化の他の方法、例えばマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)が、イオン化に使用することができる。一部の実施形態において、分析物および内部標準の検出は、選択反応モニタリングモード(SRM)で実行される。
【0097】
他の実施形態において、あらゆるステップにおける不完全な消化および/または試料の喪失を修正するために、重い安定同位体で標識されたサロゲートペプチドが手順中の適切なポイントで(例えば、消化の前に)試料に添加される。
【0098】
代替の実施形態において、イオン化中に試料を加熱するための温度は、100℃から約1000℃の範囲であってもよく、それに含まれる全ての範囲を含む。一実施形態において、500℃±100℃でのエレクトロスプレーモードにおいて採用される質量分析計のインターフェース内で、脱水ステップが実行される。一実施形態において、脱水を起こすために、試料は、インターフェースで数マイクロ秒にわたり加熱される。代替の実施形態において、加熱するステップは、1秒未満、または100ミリ秒(msec)未満、または10msec未満、または1msec未満、または0.1msec未満、または0.01msec未満、または0.001msec未満でなされる。
【0099】
図14は、本発明のシステムの実施形態を示す。
図14で示されるように、システムは、試料を処理するためのステーション(104)を含んでいてもよく、このステーションは、サンプリング容器(例えば、96ウェルのマイクロタイターアッセイウェル)に目的のバイオマーカーを含んでいてもよい。一実施形態において、プロテアーゼによる消化および/もしくは強化ならびに/または試料の希釈を容易にするために、試料は、1つまたは複数の容器に等分される。等分するためのステーションは、生体試料の分析で使用されない部分を捨てるための入れ物を含んでいてもよい。
【0100】
システムは、試料に内部標準を添加するためのステーション(108)をさらに含んでいてもよい。一実施形態において、内部標準は、重い安定同位体で標識された目的のバイオマーカーを含む。したがって、内部標準を添加するためのステーションは、同位体標識された内部標準溶液の試料への添加を容易にするための安全機構を含んでいてもよい。システムはまた、一部の実施形態において、試料の強化、タンパク質沈殿および/または希釈のためのステーション(110)を含んでいてもよい。
【0101】
システムはまた、試料の液体クロマトグラフィー(LC)のためのステーションを含んでいてもよい。本明細書に記載されるように、一実施形態において、液体クロマトグラフィーのためのステーションは、抽出液体クロマトグラフィーカラム(112)を含んでいてもよい。液体クロマトグラフィーのためのステーションは、固定相を含むカラム、加えて、移動相として使用される溶媒を含む容器または入れ物を含んでいてもよい。一実施形態において、移動相は、メタノールおよび水、アセトニトリルおよび水、または水性揮発性緩衝液との他の混和性溶媒の勾配を含む。したがって、一実施形態において、ステーションは、1つまたは複数のカラムに適用される個々の溶媒の量を調整するための適切なラインおよびバルブを含んでいてもよい。またステーションは、目的のバイオマーカーを含まないLCからの画分を除去し捨てるための手段を含んでいてもよい。一実施形態において、目的のバイオマーカーを含有しない画分は、カラムから連続的に除去され、汚染除去のための廃棄物の入れ物に送られ、これは、捨てられることになる。
【0102】
システムはまた、分析LCカラム(114)を含んでいてもよい。分析カラムは、さらなる特徴付けおよび定量化に必要となる可能性がある場合、目的のバイオマーカーのさらなる精製および濃縮を容易にすることができる。
【0103】
またシステムは、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの特徴付けおよび定量化のためのステーションを含んでいてもよい。一実施形態において、システムは、バイオマーカーのインソースイオン化のためのステーション(115)および質量分析(MS)のためのステーション(116)を含んでいてもよい。一実施形態において、質量分析のためのステーションは、タンデム質量分析(MS/MS)のためのステーションを含む。また特徴付けおよび定量化のためのステーションは、データ分析のためのステーション(118)ならびに/またはMS/MS結果の分析のためのコンピューター(102)およびソフトウェアを含んでいてもよい。一実施形態において、分析は、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの同定および定量化の両方を含む。
【0104】
一部の実施形態において、精製または分離ステップの1つまたは複数は、「オンライン」で実行されてもよい。用語「オンライン」は、本明細書で使用される場合、システムの様々な構成要素が操作可能に接続されており、一部の実施形態において互いに流体連通しているシステムに、試験試料を入れる、例えば注入するような方法で実行される精製または分離ステップを指す。オンラインシステムは、1つの容器から試料のアリコートを除去し、このようなアリコートを別の容器に移動させるためのオートサンプラーを含んでいてもよい。例えば、オートサンプラーは、抽出の後にLC抽出カラム上に試料を移動させるのに使用することができる。加えて、または代替として、オンラインシステムは、LC抽出カラムから単離した画分をLC分析カラム上に注入するための1つまたは複数の注入ポートを含んでいてもよい。加えて、または代替として、オンラインシステムは、LCによって精製した試料をMSシステムに注入するための1つまたは複数の注入ポートを含んでいてもよい。したがって、オンラインシステムは、これらに限定されないが、HTLC抽出カラム、および一部の実施形態において、分析カラムを含む抽出カラムを含む1つまたは複数のカラムを含んでいてもよい。加えて、または代替として、システムは、検出システム、例えば質量分析計システムを含んでいてもよい。オンラインシステムはまた、1つまたは複数のポンプ;1つまたは複数のバルブ;および必要な配管を含んでいてもよい。このような「オンライン」システムにおいて、試験試料および/または目的の分析物は、システムを出ずに、例えば収集し、次いでシステムの別の構成要素に入れる必要なしに、システムの1つの構成要素から別の構成要素に通過させることができる。
【0105】
一部の実施形態において、オンラインの精製または分離方法は、自動化されていてもよい。このような実施形態において、ステップは、プロセスが一度構築され開始されたら、オペレーターの介入を必要とすることなく実行することができる。したがって、様々な実施形態において、システムまたはシステムの一部は、1つまたは複数のコンピューター(102)によって制御されてもよい。したがって、ある特定の実施形態において、本発明は、ポンプ、バルブ、オートサンプラーなどを含むシステムの様々な構成要素を制御するためのソフトウェアを含んでいてもよい。このようなソフトウェアは、試料および溶質の付加の正確なタイミングならびに流速を介して抽出プロセスを最適化するのに使用することができる。
【0106】
方法におけるステップおよびシステムを含むステーションの一部または全てがオンラインであってもよいが、ある特定の実施形態において、ステップの一部または全てが「オフライン」で実行されてもよい。用語「オフライン」は、用語「オンライン」とは対照的に、前の、および/または後続の精製もしくは分離ステップおよび/または分析ステップとは別々に実行される精製、分離、または抽出手順を指す。このようなオフライン手順において、目的の分析物は、典型的には、例えば抽出カラムで、または液体/液体抽出によって、試料マトリックス中の他の成分から分離され、次いで、それに続く別のクロマトグラフィーまたは検出器システムへの導入のために収集される。オフライン手順は、典型的には、オペレーター側で手作業の介入を必要とする。
【0107】
ある特定の実施形態において、液体クロマトグラフィーは、高乱流液体クロマトグラフィーまたはハイスループット液体クロマトグラフィー(HTLC)を含み得る。例えば、Zimmer et al., J. Chromatogr. A 854:23-35 (1999)を参照されたい;また、米国特許第5,968,367号;5,919,368号;5,795,469号;および5,772,874号も参照されたい。従来のHPLC分析は、カラム充填材に頼っており、それにおいて、カラムを介した試料の層流が、試料から目的の分析物を分離するための基礎となっている。このようなカラムにおいて、分離は、拡散プロセスである。乱流、例えばHTLCカラムおよび方法によって提供されるものなどは、物質移動の速度を強化することができ、提供された分離特徴を改善する。一部の実施形態において、高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)は、単独で、または1つまたは複数の精製方法と組み合わせて、質量分析の前に、目的のバイオマーカーを精製するのに使用することができる。このような実施形態において、試料は、分析物を捕獲するHTLC抽出カートリッジを使用して抽出し、次いで溶出させ、イオン化の前に、第2のHTLCカラムで、または分析HPLCカラム上でクロマトグラフィーにかけることができる。これらのクロマトグラフィー手順に関与するステップは、自動的に連結させることができるため、分析物精製中のオペレーター関与の要求を最小化することができる。また一部の実施形態において、高乱流液体クロマトグラフィー試料調製方法の使用は、液体-液体抽出を含む他の試料調製方法への必要性をなくすことができる。したがって、一部の実施形態において、試験試料、例えば生体液は、高乱流液体クロマトグラフィーシステム上に直接入れてもよく、例えば注入されてもよい。
【0108】
例えば、典型的な高乱流または乱流液体クロマトグラフィーシステムにおいて、試料は、大きい(例えば、>25ミクロンの)粒子が充填された、狭い(例えば、内径0.5mmから2mm×長さ20から50mm)カラム上に直接注入することができる。流速(例えば、3~500mL/分)がカラムに適用される場合、カラムの相対的に狭い幅は、移動相の速度の増加を引き起こす。カラム中に存在する大きい粒子は、速度の増加が逆圧を発生させることを防ぎ、カラム内で乱流を作り出す粒子間の揺らめく渦の形成を促進することができる。
【0109】
高乱流液体クロマトグラフィーにおいて、分析物分子は、粒子と迅速に結合することができ、典型的には、カラムの長さ方向に拡がらない、または拡散しない。この縦方向の拡散の減少は、典型的には、試料マトリックスからの目的の分析物のより優れた、より迅速な分離をもたらす。さらに、カラム内の乱流は、典型的には分子が粒子を通り過ぎるときに起こる分子上の摩擦を低減させる。例えば、従来のHPLCにおいて、粒子の最も近くを移動する分子は、粒子間の通路の中心部を通って流動する分子よりゆっくりとカラムに沿って移動する。この流速の差が、カラムの長さ方向に沿って分析物分子が拡がる原因となる。乱流がカラムに導入される場合、粒子からの分子上の摩擦はごくわずかであり、縦方向の拡散を低減させる。
【0110】
本発明の方法およびシステムは、目的のバイオマーカーを検出および定量するのに、質量分析を使用することができる。用語「質量分析」または「MS」は、本明細書で使用される場合、一般的に、その質量対電荷比または「m/z」に基づいて、イオンをフィルタリング、検出、および測定する方法を指す。MS技術において、目的の1つまたは複数の分子がイオン化され、その後イオンは、質量分析計に導入され、ここで電場の組合せにより、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存するスペース中の通路を進む。
【0111】
ある特定の実施形態において、質量分析計は、「四重極」システムを使用する。「四重極」または「四重極イオントラップ」質量分析計において、振動高周波(RF)場のイオンは、電極間に適用された直流(DC)電位、RFシグナルの振幅、およびm/zに釣り合った力を受ける。電圧および振幅は、特定のm/zを有するイオンのみが四重極の長さ方向に移動するが、他の全てのイオンは偏向するように選択することができる。したがって、四重極機器は、機器に注入されるイオンの「質量フィルター」と「質量検出器」の両方として機能し得る。
【0112】
ある特定の実施形態において、タンデム質量分析が使用される。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」というタイトルの米国特許第6,107,623号を参照されたい。さらに、MS技術の選択性は、「タンデム質量分析」、または「MS/MS」を使用することによって強化することができる。タンデム質量分析(MS/MS)は、試料から生成した「親または前駆体」イオンをフラグメント化して、1つまたは複数の「フラグメントまたは生成物」イオンを得、これをその後、第2のMS手順によって質量分析する質量分析方法の群に与えられた名称である。MS/MS方法は、部分的に、複雑な混合物、特に生体試料の分析に有用であり、これはなぜなら、MS/MSの選択性が、分析前の大規模な試料の清浄化への必要性を最小化できるためである。MS/MS方法の一例において、前駆体イオンを試料から生成し、第1の質量フィルターを通過させて、特定の質量対電荷比を有するイオンを選択する。次いでこれらのイオンを、典型的には、好適なイオン封じ込めデバイス中で中性ガス分子と衝突させることによってフラグメント化して、生成物(フラグメント)イオンを得、その質量スペクトルを電子倍増検出器によって記録する。このようにして生産された生成物イオンスペクトルは、前駆体イオンの構造を示し、二段階の質量フィルタリングは、複雑な混合物の従来の質量スペクトル中に存在する干渉種からのイオンを消去することができる。
【0113】
一実施形態において、本発明の方法およびシステムは、トリプル四重極MS/MSを使用する(例えば、Yost, Enke in Ch. 8 of Tandem Mass Spectrometry, Ed. McLafferty,pub. John Wiley and Sons, 1983を参照)。トリプル四重極MS/MS機器は、典型的には、フラグメント化手段によって分離された2つの四重極質量フィルターからなる。一実施形態において、この機器は、イオン封じ込めまたは伝達デバイスとして、RFのみのモードで操作される四重極質量フィルターを含んでいてもよい。一実施形態において、四重極は、1~10ミリトルの間の圧力で、衝突ガスをさらに含んでいてもよい。他の多くのタイプの「ハイブリッド」タンデム質量分析計も公知であり、オービトラップ分析器および四重極フィルターの様々な組合せを含む本発明の方法およびシステムで使用することができる。これらのハイブリッド機器は、質量分析の第2の段階のための高分解能オービトラップ分析器(例えば、HuQ, Noll RJ, Li H, Makarov A, Hardman M, Graham Cooks R. The Orbitrap: a newmass spectrometer. J Mass Spectrom. 2005;40(4):430-443を参照)を含むことが多い。高分解能質量分析計の使用は、化学的なノイズを非常に低いレベルに低減させることにおいて極めて有効であり得る。
【0114】
本発明の方法およびシステムに関して、イオンは、これらに限定されないが、電子イオン化、化学イオン化、高速原子衝撃、電界脱離、およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)、表面増強レーザー脱離イオン化(「SELDI」)、光子イオン化、エレクトロスプレーイオン化、および誘導結合プラズマを含む様々な方法を使用して生産することができる。
【0115】
これらの実施形態において、例えば、さらなるフラグメント化のために前駆体イオンが単離されるMS/MSにおいて、衝突誘起解離(「CID」)を使用して、さらなる検出のためにフラグメントイオンを生成することができる。CIDにおいて、前駆体イオンは、不活性ガスとの衝突を介してエネルギーを獲得し、その後「単分子分解」と称されるプロセスによってフラグメント化される。イオン内の一定の結合を振動エネルギーの増加により破壊できるように、前駆体イオン中に十分なエネルギーを堆積させなければならない。
【0116】
一部の実施形態において、必要な分析選択性および感受性を達成するために、ここで開示された2D-LC-MS/MS方法は、多重化した試料調製手順を含む。例えば、ある特定の実施形態において、試料の透析は、各ウェル中に透析膜を有するか、または複数の試料チューブを有する96ウェルプレートを使用して実行される。加えて、または代替として、多重システムは、互い違いの多重化LCおよびMS試料入口システムを含んでいてもよい。また本発明の方法およびシステムは、MS検出の前に、複数のカラムスイッチングプロトコール、および/またはハートカット(LC-LCまたは2D-LC)技術、および/またはLC分離を含んでいてもよい。一部の実施形態において、本発明の方法およびシステムは、タンデム質量分析計(MS/MS)システムとカップリングされた多重化2次元液体クロマトグラフィーシステム、例えばトリプル四重極MS/MSシステムを含んでいてもよい。このような実施形態は、MSシステムへの時間をずらした平行試料入力をもたらす。
【0117】
したがって、複数の試料をそれぞれ、個々の抽出カラムに適用することができる。試料がそれぞれ抽出カラムに流れると、それらはそれぞれ、直接的に(例えば、カラムスイッチングによって)第2のセットの分析カラムに移行させることができる。各試料が分析カラムから溶出すると、それを同定および定量化のための質量分析計に移行させることができる。
【0118】
複数の分析物は、ここで開示されたLC-MS/MSおよび2D-LC-MS/MS方法によって、同時に、または逐次的に分析することができる。ここで開示された方法による分析に適応させることができる例示的な分析物としては、これらに限定されないが、ペプチド、ステロイドホルモン、核酸、ビタミンなどが挙げられる。当業者は、本開示の主題を検討すれば、本明細書で開示された方法およびシステムによって他の類似の分析物を分析できることを理解すると予想される。したがって、代替の実施形態において、本方法およびシステムは、ステロイドホルモン、タンパク質およびペプチドホルモン、ペプチドおよびタンパク質バイオマーカー、乱用される薬物ならびに治療薬物を定量するのに使用することができる。例えば、高度に調整された生物学的分析アッセイを提供するために、各分析物の主要なパラメーターの最適化は、モジュラー方法の開発戦略を使用して実行することができる。したがって、ある特定のステップは、本明細書で開示されたように測定される分析物に応じて変更することができる。
【0119】
また本発明の方法およびシステムの実施形態は、より一層少ない試料を使用して測定される分析物の多くで達成可能な等価な感度も提供することができる。例えば、この最適化手順を使用すれば、乾燥させた血漿の約10ナノモル/LのApoL1のLLOQは、約20μLの液体血漿に対応する。このような小さい試料サイズは、サンプリング(しばしば指先穿刺による)をより一層利用しやすくする。
【実施例】
【0120】
以下の実施例に、本開示の方法に関する分析検証からの追加のデータおよび標準的な操作手順を記載する。
【0121】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するための当業者への指針を提供するために記載されたものである。本開示および当技術分野における能力の一般的なレベルの観点から、当業者は、以下の実施例が、単なる例示的であることが意図されており、多数の変化、改変、および変更が、本開示の主題の範囲から逸脱することなく採用できることを認識することができる。
(実施例1)
ApoL1遺伝子型解析のためのLC-MS/MS
【0122】
G1およびG2と呼ばれるApoL1の2つの遺伝的改変体、加えて野生型対立遺伝子を、LC-MS/MSによって測定した。
【0123】
標準的な血清および血漿検体に加えて、遺伝学的試験は、担体上に血液を堆積させる血液収集デバイスで獲得した検体を利用する。これらの収集デバイスは、血漿分離ストリップ上に既定の体積の血液をスポットする計量メカニズムを提供する。この自動化は、より簡単なサンプリングメカニズムを患者に提供することが意図されている。乾燥させた血液は、血清または血漿チューブの静脈穿刺収集の代わりに、指穿刺および血漿セパレーターストリップを利用する代替検体収集プロセスである。収集ストリップの機能的なコアは、血漿を側方流動させながら適用部位からの細胞の移動を制限する、特殊化された血液セパレーター材料である。この選択的な移動は、血清セパレーターチューブの遠心分離によって達成された分離に類似して、側方流動材料内で細胞および血漿を分離する。確立された実験手順を使用する液体血漿または血清の代わりに、分離材料の標準化されたパンチが開けられたセクションからの乾燥させた血漿を分析することができる。
【0124】
ApoL1の3つの遺伝的改変体、すなわち野生型(WT)、G1、およびG2を、全血中に循環するApoL1のタンパク質配列中の対応する変異を同定することによって決定した。これは、まず血清または血漿試料を変性させ、続いてトリプシン消化を行って、ApoL1の3つの改変体形態に特異的なタンパク質分解サロゲートペプチドを生産することによって達成された。次いで消化された血漿をLC-MS/MSによって直接分析して、それぞれのサロゲートペプチドの存在または非存在を決定することにより、関連するApoL1改変体の存在または非存在を推測した。全ての3つのApoL1改変体に共通する2つのサロゲートペプチドも、認定試料の処理のためにモニタリングした。サロゲートペプチドの存在または非存在を、サロゲートペプチドの測定された応答を、トリプシン消化の前に試料アリコートに内部標準として添加された、その安定同位体で標識された類似体の応答と比較することによって決定した。検出されたサロゲートペプチドのパターンに基づいて、検体/個体の遺伝子型を決定した。
アッセイの要約およびサロゲートペプチドの特異性
表1 -サロゲートペプチドの特異性
【表1】
* G1リスク対立遺伝子は、2つの単一ヌクレオチド改変体である1024A>G(Ser342Gly)および1152T>G(Ile384Met)で構成され、これらは、ほぼ完全な不均衡の状態にある(すなわち圧倒的に大多数の場合において一緒に生じる)。このLC-MS/MSアッセイは1024A>G(Ser342Gly)の存在について試験しない。
ストック内部標準溶液
【0125】
以下の合成の安定な同位体で標識されたペプチドのストック内部標準材料を、アミノ酸分析を含む0.1mg(100μg、正味)の乾燥アリコートとして商業的に購入した(New England Peptide)。
表2 -内部標準ペプチド
【表2】
【0126】
0.1%ギ酸を含む0.4mLの0.001%双性イオン性界面活性剤3-16を、単一の0.1mgバイアルに直接添加し、約200μg/mLの溶液を生産することによって、個々のストック内部標準溶液を調製した。これらの内部標準ストック溶液を、使用前に15分インキュベートし、4時間以内に使用されない場合、-70℃で凍結した。
【0127】
使用前に、正確な濃度の各ストック溶液を、340nmでベースライン補正したNanoDrop(商標)2000c分光光度計を205nmで使用して、UV吸光度によって割り当てた。各ストックを、0.1%ギ酸を含む0.001%双性イオン性表面活性剤3-16でブランク処理した後、NanoDrop(商標)ペデスタルで少なくとも10連で測定した。平均吸光度(A
205)は、3%未満のCVで0.3~1.2の間と予想され、これを使用して、ストック濃度(C
stock)を、以下の方程式に従って、0.1cmのパス長(b)および0.031mL/μg/cmの吸光係数(ε
205)に基づき計算した:
【数1】
【0128】
対照の調製
陰性対照 - 陰性対照は、30mg/mLのヒト血清アルブミン(HSA)であった。
【0129】
陽性対照 陽性対照は、男性血漿のプール(Golden West Biologicals、カタログ番号MSG15000M)であった。この対照を、WT改変体に対する陽性対照として、ならびにG1およびG2改変体の両方に対する「弱い陽性」対照として役立てた。
【0130】
WT/G1 EDTA血漿対照A WT/WT、G1/G1、およびWT/G1個体からのEDTA血漿検体をプールして、G1およびWT改変体の比を確実に釣り合わせた。この対照を、WTおよびG1改変体の両方に対する陽性対照として役立て、同時にG2改変体に対する陰性対照として役立てた。
【0131】
WT/G2 EDTA血漿対照B WT/WT、G2/G2、およびWT/G2個体からのEDTA血漿検体をプールして、G2およびWT改変体の比を確実に釣り合わせた。この対照を、WTおよびG2改変体の両方に対する陽性対照として役立て、同時にG1改変体に対する陰性対照として役立てた。
【0132】
G1/G2 EDTA血漿対照C G1/G1、G2/G2、およびG1/G2個体からのEDTA血漿検体をプールして、G1およびG2改変体の比を確実に釣り合わせた。この対照を、G1およびG2改変体の両方に対する陽性対照として役立て、同時にWT改変体に対する陰性対照として役立てた。以下の全血QC試料のそれぞれの少なくとも1つの複製を、血漿からの乾燥させた血液細胞の分離のために、側方流動担体上に180μLを堆積させた後の少なくとも2時間に生産された乾燥パンチとしてアッセイ間の再現性を確立するのに使用された最初の20個のバッチのそれぞれに入れた。
【0133】
WT/G1 LiHep全血対照A WT/WT、G1/G1、およびWT/G1個体からのリチウムヘパリン全血試料をプールして、G1およびWT改変体の比を確実に釣り合わせた。この対照は、WTおよびG1改変体の両方に対する陽性対照として役立て、同時にG2改変体に対する陰性対照として役立てることになる。
【0134】
WT/G2 LiHep全血対照B WT/WT、G2/G2、およびWT/G2個体からのリチウムヘパリン検体をプールして、G2およびWT改変体の比を確実に釣り合わせた。この対照を、WTおよびG2改変体の両方に対する陽性対照として役立て、同時にG1改変体に対する陰性対照として役立てた。
【0135】
G1/G2 LiHep全血対照C G1/G1、G2/G2、およびG1/G2個体からのリチウムヘパリン全血検体をプールして、G1およびG2改変体の比を確実に釣り合わせた。この対照は、G1およびG2改変体の両方に対する陽性対照として役立て、同時にWT改変体に対する陰性対照として役立てることになる。
アッセイ手順
【0136】
対照、試料、消化緩衝剤、および作業用内部標準(IS)を室温(20~25℃)で融解させた。対照および試料のアリコート(例えば、20μL)をピペットで取って2mLの96-ディープウェルプレート中のウェルに入れた。陰性対照は、2つのアリコートを受け入れた。乾燥させた血漿試料の場合、20μLの液体試料の代わりに、側方流動担体からの乾燥血漿の全体的に直径3つの1/4’’のパンチを使用した。次に、180μLの消化緩衝剤(50mMのTris-HCl、0.675mMのDTT、6.75mg/mLのDOC、pH8.0)を、ウェルのそれぞれに添加した。次いでプレートウェルをシールし、5~30秒遠心分離した後、プレートを、サーモミキサーで、56℃および1500rpmで30分インキュベートした(タンパク質の変性および乾燥させた血漿の抽出が起こるように)。
【0137】
この時点で、各ウェルにペプチドのそれぞれの内部標準を添加した(ただし20μLの0.001%双性イオン性表面活性剤3-16を受けた二重の陰性対照を除く)。各ウェルにトリプシン溶液(50mM酢酸中の32mg/mLトリプシン)のアリコート(25μL)を添加し、ウェルのそれぞれをシールした後、プレートを5~30秒遠心分離し、次いでサーモミキサーで、37℃および1500rpmで30分インキュベートして、消化を起こさせた。消化が完了した後(30分)、各ウェルに、1000μLのクエンチ緩衝剤(2%ギ酸を含む0.001%(w/v)双性イオン性表面活性剤3-16)を添加する。次いでウェルをホイルでシールし、試料を、1500~3500rpmで1分混合した。遠心分離(3500rpmで10分)の後、200uLの上清を、新しい1mLの96-ディープウェルプレート中のウェルに移行させ、試料をLC-MS/MSのために処理した。
HPLC-MS/MS
【0138】
8つの1200SLシリーズバイナリーポンプおよび4つの1200シリーズ真空脱気装置からなり、水およびアセトニトリル中のギ酸の勾配を採用したAria Transcend TX4システム(Thermo-Fischer)を使用して、HPLCを実行した。選択反応モニタリング(SRM、すなわちMS/MS)は、API5500タンデム質量分析計(Sciex、Toronto Canada)およびTurbo V(商標)エレクトロスプレーイオン源を採用した。以下の表3に、生成した様々なフラグメントイオンのSRM遷移を示す。例えば、非標識認定ペプチド1の場合、一次遷移として453.724→690.367の遷移が測定され、二次遷移として453.724→217.082m/zの遷移が測定された。より大きい分子(タンパク質やペプチドのように)は、しばしば1より大きい電荷を有するため(典型的には、トリプシンにより生じたペプチドの場合、2または3)、Q1におけるペプチドが、より小さい質量(m)対電荷(z)の比(すなわち、z=2)を有することは珍しくないが、Q3がより大きいm/z(すなわち、z=1)を単離するように、フラグメント化中に電荷を喪失する。
表3 - SRM遷移
【表3】
【0139】
サンガー配列決定
ゲノムDNAのサンガー配列決定では、以下のプライマーが採用された。
PCR増幅
ApoL1 F2 5’-CGACCTGGTCATCAAAAGCCTTGAC-3’(配列番号9)
ApoL1 R2 5’-GGAGGCAGAGCTTGCAGTGAGCTG-3’(配列番号10)
配列決定反応
ApoL1 F1 5’- AGACGAGCCAGAGCCAATC-3’(配列番号11)
ApoL1 R1 5’- CTGCCAGGCATATCTCTCCT-3’(配列番号12)。
【0140】
ゲノムDNAを、66℃のアニーリング温度を使用して、30サイクルでPCR増幅した。増幅した生成物をアガロースゲル電気泳動によって単離し、DNAを、配列決定のためにエビアルカリホスファターゼ/エキソヌクレアーゼIで処理した。
データ分析
全てのクロマトグラフィーのピークを統合した後(例えば、分析者内で)、測定したままの分析応答(ピーク面積)を各検体につき以下のように処理した:
【0141】
1.各サロゲートペプチドの一次遷移の応答を、一致する標識された内部標準ペプチドの一次遷移の応答で割る。これは、一次分析物:内部標準ピーク面積の比(一次PAR)である。
【0142】
2.各サロゲートペプチドの二次遷移の応答を、一致する標識された内部標準ペプチドの二次遷移の応答で割る。これは、二次分析物:内部標準ピーク面積の比(二次PAR)である。
【0143】
3.各サロゲートペプチドに関して一次PARおよび二次PARをPAR閾値表内の値と比較して、PAR分類を決定する。
表4
PAR閾値表
【表4-1】
【表4-2】
【0144】
検体で観察されたサロゲートペプチドのパターンに基づいて(陽性=1、陰性=0)、検体の遺伝子型は、パターン表(表5)を使用して定義することができる。検体中で検出されたおよび検出されていないサロゲートペプチドのパターンが、パターン表中に見出されない場合、遺伝子型は、決定的ではないとみなされ、抽出された検体を再注入してもよいし、および/または元の検体を再抽出してもよい。結果を、サンガー配列決定による結果と比較した。
表5
パターン表
【表5】
【0145】
(実施例2)
実施形態
【0146】
本開示は、以下の非限定的な実施形態を参照することにより、よりよく理解することができる。
【0147】
A1.対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するための方法であって、
対象からの体液を提供するステップであって、体液は、目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する、ステップ;
体液を、固体担体上に堆積させるステップであって、体液は、乾燥させて乾燥検体を生産する、ステップ;
乾燥検体を消化して、タンパク質の、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するステップ;
質量分析を使用して、消化された試料中に存在する、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および
少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在もしくは非存在または量に基づいて、対象の遺伝子型を決定するステップ
を含む、方法。
【0148】
A2.消化ステップが、プロテアーゼであるトリプシンを用いて実行される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0149】
A3.目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する乾燥検体が、消化の前に変性される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0150】
A4.少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドが、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0151】
A5.目的の遺伝子の各遺伝子型に共通の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの量を測定するステップをさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0152】
A6.少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答と比較することによって決定される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0153】
A7.少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0154】
A8.少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在または非存在が、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0155】
A9.少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体が、内部標準として添加される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0156】
A10.少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体が、内部標準として添加される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0157】
A11.対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答が、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答に正規化される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0158】
A12.共通サロゲートペプチドの測定された応答が、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答に正規化される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0159】
A13.対立遺伝子特異的サロゲートペプチドのための内部標準が、消化のステップの前に添加される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0160】
A14.共通サロゲートペプチドのための内部標準が、消化のステップの前に添加される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0161】
A15.測定された応答が、対立遺伝子特異的サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0162】
A16.測定された応答が、共通サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0163】
A17.タンパク質が、ApoL1である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0164】
A18.対立遺伝子特異的サロゲートペプチドが、野生型対立遺伝子(配列番号1)由来のアミノ酸配列LNILNNNYK(配列番号4)を有するか、またはG1対立遺伝子(配列番号2)由来のアミノ酸配列LNMLNNNYK(配列番号5)を有するか、またはG2対立遺伝子(配列番号3)由来のアミノ酸配列LNILNNK(配列番号6)を有する、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0165】
A19.SETAEELK(配列番号7)またはVAQELEEK(配列番号8)のアミノ酸配列を有する共通サロゲートペプチドの量を決定するステップをさらに含み、共通サロゲートペプチドは、野生型、G1またはG2対立遺伝子のそれぞれに存在する、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0166】
A20.質量分析が、表3の遷移の少なくとも1つを測定する、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0167】
A21.少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの、表2に列挙した安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0168】
A22.液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0169】
A23.乾燥させた検体が、分離した全血からの乾燥させた血漿である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0170】
A24.乾燥させた検体が、分離した全血からの乾燥させた赤血球である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0171】
A25.乾燥させた検体が、乾燥させた血液、乾燥させた尿または乾燥させた唾液の少なくとも1つである、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載の方法。
【0172】
B1.対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するためのシステムであって、
目的の遺伝子由来のタンパク質を含む体液を提供し、乾燥させるためのデバイス;
乾燥体液を消化に供して、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドを生成するためのステーション;
必要に応じて、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じた少なくとも1つの共通サロゲートペプチドのクロマトグラフィーによる精製のためのステーション;ならびに
少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを質量分析によって分析して、生体試料中の少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または量を決定するためのステーション
を含む、システム。
【0173】
B2.生体試料を提供するためのデバイスが、担体上で血漿からの赤血球を固定および分離するためのデバイスを含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
【0174】
B3.少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドのための、安定同位体で標識された内部標準を添加するためのステーションをさらに含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム
【0175】
B4.質量分析のためのステーションが、タンデム質量分析計を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
【0176】
B5.クロマトグラフィーのためのステーションが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
【0177】
B6.ステーションの少なくとも1つが、コンピューターによって制御される、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
【0178】
B7.タンパク質が、ApoL1である、前記のまたはそれに続く実施形態のいずれかに記載のシステム。
【0179】
本明細書で参照された全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれる。記載された本発明の実施形態への様々な改変およびバリエーションは、本発明の範囲および本質から逸脱することなく、当業者には明らかであると予想される。本発明を具体的な好ましい実施形態と関連して説明したが、特許請求された発明は、このような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるものとする。実際に、当業者には明らかな記載された本発明を行う様式の様々な改変は、本発明に含まれることが意図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するための方法であって、
前記対象からの体液を提供するステップであって、前記体液は、前記目的の遺伝子由来のタンパク質を含有する、ステップ;
前記体液を、固体担体上に堆積させるステップであって、前記体液を、乾燥させて乾燥検体を生産する、ステップ;
前記乾燥検体を消化して、前記タンパク質の、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを生成するステップ;
質量分析を使用して、消化された試料中に存在する、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを検出するステップ;および
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在もしくは非存在または量に基づいて、前記対象の前記遺伝子型を決定するステップ
を含む、方法。
(項目2)
前記消化するステップが、プロテアーゼであるトリプシンを用いて実行される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記目的の遺伝子由来の前記タンパク質を含有する前記乾燥検体が、消化の前に変性される、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドが、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記目的の遺伝子の各遺伝子型に共通の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの量を測定するステップをさらに含む、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答と比較することによって決定される、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの測定された応答を、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体が、内部標準として添加される、項目7または8に記載の方法。
(項目10)
前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体が、内部標準として添加される、項目7から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記測定された応答が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体の前記測定された応答に正規化される、項目7から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記共通サロゲートペプチドの前記測定された応答が、前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの前記安定同位体で標識された類似体の前記測定された応答に正規化される、項目7から11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記内部標準が、消化のステップの前に添加される、項目9に記載の方法。
(項目14)
前記内部標準が、消化のステップの前に添加される、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記測定された応答が、前記対立遺伝子特異的サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である、項目6から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記測定された応答が、前記共通サロゲートペプチドから生成した少なくとも1つのフラグメントイオンに特有のMS/MS遷移についてのピーク面積の比である、項目6から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記タンパク質が、ApoL1である、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記対立遺伝子特異的サロゲートペプチドが、野生型対立遺伝子(配列番号1)由来のアミノ酸配列LNILNNNYK(配列番号4)を有するか、またはG1対立遺伝子(配列番号2)由来のアミノ酸配列LNMLNNNYK(配列番号5)を有するか、またはG2対立遺伝子(配列番号3)由来のアミノ酸配列LNILNNK(配列番号6)を有する、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
SETAEELK(配列番号7)および/またはVAQELEEK(配列番号8)のアミノ酸配列を有する共通サロゲートペプチドの量を決定するステップをさらに含み、前記共通サロゲートペプチドは、前記野生型、G1またはG2対立遺伝子のそれぞれに存在する、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記質量分析が、表3の遷移の少なくとも1つを測定する、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または非存在が、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの測定された応答を、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの、表2に列挙した安定同位体で標識された類似体の測定された応答と比較することによって決定される、項目1から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記液体クロマトグラフィーが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、項目4に記載の方法。
(項目23)
乾燥させた検体が、分離した全血からの乾燥させた血漿である、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
乾燥させた検体が、分離した全血からの乾燥させた赤血球である、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
乾燥させた検体が、乾燥させた血液、乾燥させた尿または乾燥させた唾液の少なくとも1つである、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
対象における目的の遺伝子の遺伝子型を決定するためのシステムであって、
前記目的の遺伝子由来のタンパク質を含む乾燥させた体液を提供するためのデバイス;
前記乾燥させた体液を消化に供して、少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、前記タンパク質の少なくとも1つの共通サロゲートペプチドを生成するためのステーション;
必要に応じて、前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じた前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドの少なくとも1つの安定同位体で標識された類似体の、クロマトグラフィーによる精製のためのステーション;ならびに
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドを質量分析によって分析して、生体試料中の前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチドの存在または量を決定するためのステーション
を含む、システム。
(項目27)
前記乾燥させた体液を提供するためのデバイスが、担体上で血漿からの赤血球を固定および分離するためのデバイスを含む、項目26に記載のシステム。
(項目28)
前記少なくとも1つの対立遺伝子特異的サロゲートペプチド、および必要に応じて、前記タンパク質の前記少なくとも1つの共通サロゲートペプチドのための、安定同位体で標識された内部標準を添加するためのステーションをさらに含む、項目26または27に記載のシステム。
(項目29)
質量分析のための前記ステーションが、タンデム質量分析計を含む、項目26から28のいずれか一項に記載のシステム。
(項目30)
クロマトグラフィーのための前記ステーションが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、項目26から29のいずれか一項に記載のシステム。
(項目31)
前記ステーションの少なくとも1つが、コンピューターによって制御される、項目26から30のいずれか一項に記載のシステム。
(項目32)
前記タンパク質が、ApoL1である、項目26から31のいずれか一項に記載のシステム。
【配列表】