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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】三次元計測方法及び三次元計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20220722BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20220722BHJP
   A61C 19/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
G01B11/24 A
A61C19/00 A
A61C19/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021022827
(22)【出願日】2021-02-16
(62)【分割の表示】P 2017558302の分割
【原出願日】2016-12-22
(65)【公開番号】P2021090790
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2015251341
(32)【優先日】2015-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】鍛治 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】西村 巳貴則
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524724(JP,A)
【文献】特表2015-527896(JP,A)
【文献】特開平08-327338(JP,A)
【文献】特開2012-016573(JP,A)
【文献】特開2012-066072(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0146142(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
G01B 11/24
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内を三次元計測する三次元計測方法であって、
前記口腔内を三次元計測する際の計測精度の設定を受け付ける計測精度受付工程と、
前記計測精度受付工程で受け付けられた計測精度で、前記口腔内を三次元計測する三次元計測工程と、
前記三次元計測工程の計測結果が、前記計測精度受付工程で受け付けられた前記計測精度を満足しているか否かを検出する計測精度不足箇所検出工程と、
前記計測精度不足箇所検出工程において、前記計測精度を満足しないことが検出された場合にユーザへ報知する報知工程とを行う
三次元計測方法。
【請求項2】
口腔内を三次元計測する三次元計測装置であって、
前記口腔内を三次元計測する際の計測精度の設定を受け付ける計測精度受付部と、
前記計測精度受付部で受け付けられた計測精度で、前記口腔内を三次元計測する三次元計測部と、
前記三次元計測部の計測結果が、前記計測精度受付部で受け付けられた前記計測精度を満足しているか否かを検出する計測精度不足箇所検出部と、
計測不足箇所検出部において、前記計測精度を満足しないことが検出された場合にユーザへ報知する報知部とが備えられた
三次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、口腔内をスキャニングして、計測対象箇所の三次元形状を計測する三次元計測方法及び三次元計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、口腔内における歯牙の欠損部分に義歯、クラウンあるいはブリッジなどの補綴物を埋植する補綴治療、インプラント治療あるいはデンチャーの作製、さらには矯正治療などの歯科治療では、当該部位のみならずその周辺部分や噛み合わせ部分の立体形状を正確に捉える必要がある。
【0003】
昨今の歯科技術及び計測技術の発展により、口腔内における所望の箇所をスキャニングすることによって、その三次元形状(立体形状)を計測する三次元計測装置が用いられている。
しかし、このような三次元計測装置による立体形状の計測では、施術者の計測スキルや計測の仕方によって計測結果の精度が異なる、つまり高精度な三次元の計測結果を得ることができないことがあり、例えば、特許文献1では、計測対象箇所に対するスキャニングの順序や方向をガイド(案内)する計測システムが提案されている。
【0004】
特許文献1に開示の計測システムでは、ガイドに従ってスキャニングすることで容易に計測できるものの、計測対象である歯牙や歯牙の欠損部分は立体形状であるため、一方向からのスキャニングでは計測できない部分もあり、例えば、計測対象である歯牙に対して複数の方向からのスキャニングが必要となる場合がある。
【0005】
このような場合、所望の計測対象箇所を含む計測範囲における歯牙をひとつずつ複数方向からスキャニングすることでより高精度な計測結果を得ることができるものの、スキャニングに時間が係って患者負担が増大するため、計測対象箇所を含む計測範囲に対して複数の方向からスキャニングすることが一般的に行われている。
【0006】
しかし、一方向からのスキャニングで計測範囲における大部分が計測できる場合、つまり計測範囲において一部分のみの計測が不足している場合などにおいては、計測範囲全体を複数方向からスキャニングするとその計測結果であるデータ量が増大し、演算処理などの処理負担が増大するおそれがある。
【0007】
逆に、計測不足箇所のみを再スキャニングする場合、データ量及び処理負担の増大を防止できるものの、最初にスキャニングした際の計測結果(以下において当初計測結果という)に対して、計測不足箇所のみを再スキャニングした計測結果(以下において再計測結果という)を合成する、つまり当初計測結果への再計測結果の合成精度が低下し、その結果、精度のよい計測結果を得ることが難しい場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2008-537494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上述した問題を鑑み、データ量及び処理負担の増大を防止するとともに、精度のよい計測結果を得ることができる三次元計測方法及び三次元計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、口腔内を三次元計測する三次元計測方法であって、前記口腔内を三次元計測する際の計測精度の設定を受け付ける計測精度受付工程と、前記計測精度受付工程で受け付けられた計測精度で、前記口腔内を三次元計測する三次元計測工程と、前記三次元計測工程の計測結果が、前記計測精度受付工程で受け付けられた前記計測精度を満足しているか否かを検出する計測精度不足箇所検出工程と、前記計測精度不足箇所検出工程において、前記計測精度を満足しないことが検出された場合にユーザへ報知する報知工程とを行うことを特徴とする。
【0011】
またこの発明は、口腔内を三次元計測する三次元計測装置であって、前記口腔内を三次元計測する際の計測精度の設定を受け付ける計測精度受付部と、前記計測精度受付部で受け付けられた計測精度で、前記口腔内を三次元計測する三次元計測部と、前記三次元計測部の計測結果が、前記計測精度受付部で受け付けられた前記計測精度を満足しているか否かを検出する計測精度不足箇所検出部と、計測不足箇所検出部において、前記計測精度を満足しないことが検出された場合にユーザへ報知する報知部とが備えられたことを特徴とする。
【0012】
またこの発明の態様として、前記三次元計測工程の前記計測結果に基づき、特徴箇所を検出し、検出された前記特徴箇所を含む範囲を計測情報不足箇所の再計測を開始する再計測開始位置に指定する再計測開始位置指定工程を行い、前記報知工程は、前記再計測開始位置を報知することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記再計測開始位置から前記計測情報不足箇所を含めて再計測する再計測工程と、該再計測工程で再計測した再計測結果、及び前記三次元計測工程の前記計測結果を、それぞれの計測結果における、特徴情報を有する前記特徴箇所を適合させて、計測範囲の三次元計測情報を作成する三次元計測情報作成工程とを行うことができる。
【0014】
この発明は、口腔内における所望の計測範囲を三次元計測する三次元計測方法であって、前記計測範囲を三次元計測する三次元計測工程と、該三次元計測工程の計測結果において計測情報が不足している計測情報不足箇所を検出する不足箇所検出工程と、前記三次元計測工程の前記計測結果に基づき、特徴箇所を検出し、検出された前記特徴箇所を含む範囲を前記計測情報不足箇所の再計測を開始する再計測開始位置に指定する再計測開始位置指定工程と、再計測開始位置を報知する再計測開始位置報知工程と、前記再計測開始位置から前記計測情報不足箇所を含めて再計測する再計測工程と、該再計測工程で再計測した再計測結果、及び前記三次元計測工程の前記計測結果を、それぞれの計測結果における、特徴情報を有する前記特徴箇所を適合させて、前記計測範囲の三次元計測情報を作成する三次元計測情報作成工程とを行うことを特徴とする。
【0015】
またこの発明は、口腔内における所望の計測範囲を三次元計測する三次元計測装置であって、前記計測範囲を三次元計測する三次元計測部と、該三次元計測部の前記計測結果において計測情報が不足している計測情報不足箇所を検出する不足箇所検出部と、該不足箇所検出部で検出された前記計測情報不足箇所の再計測を開始する再計測開始位置を報知する再計測開始位置報知部と、前記三次元計測部による計測済みの前記計測結果に基づき、特徴箇所を検出し、検出された前記特徴箇所を含む範囲を前記計測情報不足箇所の再計測を開始する前記再計測開始位置に指定する再計測開始位置指定部と、前記三次元計測部で前記再計測開始位置から前記計測情報不足箇所を含めて再計測した再計測結果と、前記三次元計測部による計測済みの前記計測結果とを、それぞれの計測結果における、特徴情報を有する特徴箇所を適合させて、前記計測範囲の三次元計測情報を作成する三次元計測情報作成部とが備えられたことを特徴とする。
【0016】
上述の計測情報が不足している計測情報不足箇所は、計測範囲において計測されていない未計測箇所、計測されているが部分的に計測情報が欠落している部分欠落箇所、あるいは、計測されているものの、所望の計測精度を満足していない箇所、さらにはこれらの組み合わせとすることができる。
【0017】
上記計測範囲は、上下顎のいずれかあるいは両方、さらには歯列全体あるいは歯列における一部分とすることができる。
上記再計測開始位置は、歯牙のみならず、歯牙の一部や特徴を有する歯肉部分などを含むものとする。
【0018】
上述の特徴情報を有する特徴箇所を適合させるとは、例えば、画像認識による適合のみならず、抽出された特徴箇所についての認識技術に基づいて適合させることも含むものとする。さらには、適合判定に加え、適合する情報の大きさや向きを合わせる処理を行ってもよい。
上述の三次元計測情報は、計測結果の数値データのみならず、これらの数値データに基づいて形成される画像データを含むものとする。
【0019】
上述の再計測開始位置の報知は、モニタなどの表示部に表示する画像による報知表示、音声や音による報知、発光部材の発光や発光パターンによる報知、あるいは振動などの通常時とは異なる駆動による報知などを含むものとする。
【0020】
上述の適合性が高い前記特徴箇所とは、対象部位の特徴箇所を抽出した際に、特徴箇所における特徴部分の個数や特徴箇所の箇所数、あるいは適合しやすい特徴部分の形状、あるいは特徴箇所の認識度合などに基づいて適合性が高いことをいう。
【0021】
これらの発明により、データ量及び処理負担の増大を防止するとともに、精度のよい計測結果を得ることができる。
詳述すると、三次元計測工程の前記計測結果において計測情報が不足している計測情報不足箇所の再計測を開始する再計測開始位置を報知するため、報知された前記再計測開始位置から前記計測情報不足箇所を含めて再計測することができる。したがって、計測情報不足箇所を含めて確実に再計測することができる。
【0022】
また、再計測した再計測結果と計測済みの前記計測結果とを、それぞれの計測結果における、特徴情報を有する特徴箇所を適合させて、前記計測範囲の三次元計測情報を作成するため、再計測結果と計測済みの前記計測結果とに基づいて、計測範囲の三次元計測情報を精度よく作成することができる。
【0023】
また、より高精度の三次元計測情報を作成することができる。
詳述すると、適合性の高い特徴箇所を再計測開始位置に指定するため、再計測結果と計測済みの前記計測結果とを、再計測開始位置として指定された適合性の高い特徴箇所に基づいて合成して、高精度の三次元計測情報を作成することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、指定操作を受け付けて前記再計測開始位置を指定する再計測開始位置指定工程を行うことができる。
この発明により、施術者は、再計測を開始しやすい位置から再計測を開始することができ、スムーズに再計測することができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記計測範囲において計測精度の設定を受け付ける計測精度設定工程を行い、前記不足箇所検出工程では、設定された前記計測精度に基づいて、該当箇所の計測済みの前記計測結果における前記計測情報の不足を検出することができる。
【0026】
上述の計測範囲における計測精度の設定は、単位面積当たりの測点数や画像表示した場合におけるdpiなどとすることができ、また、計測範囲全体を一括設定すること、計測範囲における一部に対して設定することを含むものとする。
【0027】
この発明により、所望の精度の三次元計測情報を作成することができる。詳述すると、計測範囲において既に計測された箇所であっても所望の計測精度を満足していない場合には再計測するため、所望の精度の三次元計測情報を作成することができる。
【0028】
また、仮に、計測範囲における治療対象箇所の計測精度を他の部分に比べて部分的に高精度に設定した場合、計測範囲全体を高精度に設定した場合に比べて、データ量を低減でき、処理負担の増大を抑制することができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記再計測工程における再計測の方法を案内する再計測方法案内工程を行うことができる。
上述の再計測の方法は、再計測する際の計測場所、計測方向、計測速度及び計測経路などのうちいずれか、あるいはそれらの組み合わせとすることができる。
【0030】
この発明により、より正確に、また無駄なく再計測することができる。したがって、例えば、無駄な経路を通る再計測の場合に比べて、データ量を低減できるとともに、処理負担の増大を抑制しながら、より正確かつ効率的に再計測することができる。
【0031】
なお、この発明の態様として、前記計測結果を表示する計測結果表示部を備え、前記再計測方法案内部は、前記計測結果表示部に案内内容を表示する構成とする場合、施術者に対して案内内容をより明確に報知することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記口腔内において前記計測範囲の設定、あるいは計測不要箇所を指定して前記計測範囲の設定を受け付ける計測範囲設定工程を行うことができる。
この発明により、所望の計測範囲のみを計測できるため、データ量を低減できるとともに、処理負担の増大を抑制しながら、より正確かつ効率的に再計測することができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明により、上述した問題を鑑み、データ量及び処理負担の増大を防止するとともに、精度のよい計測結果を得ることができる三次元計測方法及び三次元計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】三次元計測システムの概略図。
図2】三次元計測システムのブロック図。
図3】三次元計測器の説明図。
図4】三次元計測のフローチャート。
図5】三次元計測の概略説明図。
図6】計測情報不足箇所についての概略説明図。
図7】三次元計測画面の概略図。
図8】三次元計測画面の概略図。
図9】三次元計測画面の概略図。
図10】三次元計測画面の概略図。
図11】別の実施形態の三次元計測画面における案内表示部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は三次元計測システム1の概略図を示し、図2は三次元計測システム1のブロック図を示し、図3はスキャナ10の説明図を示している。詳しくは、図3(a)はスキャナ10の平面図を示し、図3(b)はスキャナ10の正面図を示し、図3(c)はスキャナ10の底面図を示している。
【0036】
また、図4は三次元計測システム1を用いた三次元計測のフローチャートを示し、図5は三次元計測の概略説明図を示し、図6は計測情報不足箇所Lm,Lnについての概略説明図を示している。
詳しくは、図5(a)は計測対象である下顎UJの概略斜視図を示し、図5(b)は下顎UJをスキャナ10で左の大臼歯方向から前歯部を経由して右の大臼歯にかけて計測している状況の概略斜視図を示し、図5(c)はスキャナ10によって下顎UJの左の半分程度計測した状態の三次元計測画像311を示し、図5(d)はスキャナ10による下顎UJの計測完了時の三次元計測画像311の概略図を示している。
なお、図5(c)及び図5(d)において、計測対象範囲Hにおける計測していない箇所(以下において未計測箇所Ln)については便宜上破線で図示している。
【0037】
また、図6(a)は計測範囲Hにおける下顎UJの平面図を示し、図6(b)は未計測箇所Lnを破線で示した計測結果画像を示し、図6(c)は未計測箇所Lnに対して再計測開始位置Rsと再計測範囲H2とをガイド表示した平面図を示しており、図6(d)は部分欠落箇所Lmを破線で示した計測結果画像を示し、図6(e)は部分欠落箇所Lmに対して再計測開始位置Rsと再計測範囲H2とをガイド表示した平面図を示している。
【0038】
図7乃至図10は三次元計測画面300の概略図を示している。詳しくは、図7は三次元計測画面300の各要素を説明するための概略図を示し、図8は計測範囲設定時の三次元計測画面300の概略図を示し、図9は部分欠落箇所Lmを再計測する際の三次元計測画面300の概略図を示し、図10は未計測箇所Lnを再計測する際の三次元計測画面300の概略図を示している。なお、図11は別の実施形態の三次元計測画面300における案内表示部の説明図を示している。
【0039】
図1及び図2に示すように、三次元計測装置に対応する三次元計測システム1は、三次元計測装置本体20と、三次元計測装置本体20に接続され、三次元計測部に対応するスキャナ10とで構成し、口腔内における下顎UJや上顎(図示省略)における所望の計測対象箇所をスキャニングすることによって、その計測対象箇所の三次元形状を計測する計測システムである。
【0040】
スキャナ10は、図3に示すように、略円柱状の本体部10aと、本体部10aの先端側において、先端側に向かってわずかに先細り且つ扁平状となる先端側挿入部10bとで構成している。また、先端側挿入部10bにおける先端側の底面には照射窓部10cを備えており、本体部10aの上面側には操作ボタン10dを備え、接続ケーブル10eによって三次元計測装置本体20に接続されている。
【0041】
また、スキャナ10は、図2に示すように、制御部11、三次元計測部12、操作部13及び検出部14を内蔵している。
三次元計測部12は、計測対象箇所に向かって照射窓部10cより照射する光を発光する発光部121と、照射された光が計測対象箇所で反射して反射光として照射窓部10cから入射されて受光する受光部122とを備えている。
【0042】
なお、照射窓部10cと三次元計測部12との間には図示省略する導光路が設けられており、発光部121で発光した光は導光路で導光されて照射窓部10cから照射でき、照射窓部10cから入射した反射光は導光路で導光されて受光部122で受光することができる。
【0043】
三次元計測及び再計測の開始及び終了を操作する計測操作部131及び計測範囲H(図6(a)参照)を指定する計測範囲指定操作部132として少なくとも機能する操作部13は、上述の操作ボタン10dで構成している。
【0044】
このように各要素が構成されたスキャナ10は、三次元計測部12、操作部13及び検出部14が制御部11に接続されるとともに、制御部11によって制御されている。
このように構成されたスキャナ10の先端側挿入部10bを口腔内に挿入するとともに、照射窓部10cを計測対象箇所に対向させ、操作ボタン10dを押下操作することで、三次元計測部12の発光部121から光を発光して照射窓部10cから照射するとともに、照射窓部10cから入射された反射光を受光部122で受光することで、計測対象箇所をスキャニングすることができる。
【0045】
そして、制御部11は後述する三次元計測装置本体20の制御部21と通信可能に接続され、制御部21の制御によって、計測結果を制御部21に送信することができるように構成されている。
【0046】
図1に示すように、三次元計測装置本体20は、マウス20a、キーボード20b及び液晶等のモニタ20cが接続されたコンピュータである。また、図2に示すように、三次元計測装置本体20を機能的ブロックとして捉えると、三次元計測装置本体20は制御部21及び記憶部22を内蔵するとともに、操作部23及び出力部24が接続されて構成されている。そして、記憶部22、操作部23及び出力部24並びにスキャナ10の制御部11は制御部21に接続され、制御部21によって制御されている。
【0047】
制御部21は、CPUで構成され、演算処理部210として機能する。
より詳しくは、制御部21は、三次元計測情報作成部211、計測案内作成部212、計測情報不足箇所検出部213及び設定処理部214を実行する演算処理部210として機能する。
【0048】
三次元計測情報作成部211は、スキャナ10でスキャニングした計測結果に基づいて計測対象箇所の三次元計測情報の作成処理を実行する作成処理部である。
計測案内作成部212は、後述する再計測開始位置指定部212a、再計測範囲指定部212b、あるいは、再計測経路方向指定部212cとして機能して、再計測時における計測範囲、計測経路や計測方向、計測速度などの再計測方法についてのガイド情報を作成する作成処理部である。
【0049】
詳述すると、再計測開始位置指定部212aは、再計測時の再計測開始位置Rs(図6(c),(e)参照)を指定処理する処理部であり、再計測範囲指定部212bは、再計測時の計測範囲(以下において再計測範囲H2という)を指定処理するとともに、咬合方向案内表示部320Aの歯列イラスト321(図7参照)に対して再計測範囲H2の表示処理を実行する処理部である。
【0050】
また、再計測経路方向指定部212cは、再計測時の計測経路や計測方向、計測速度を指定し、計測方向Dや計測経路Xなどのガイド情報を咬合方向案内表示部320Aの歯列イラスト321(図7参照)や断面方向案内表示部320Bの断面イラスト323(図7参照)に対して表示処理する処理部である。
【0051】
計測情報不足箇所検出部213は、スキャナ10による計測結果に基づいて計測情報の不足箇所を検出する検出処理部である。
設定処理部214は、後述する計測範囲Hや計測精度などの計測条件に関する設定情報を設定する設定処理部である。
なお、CPU等で構成する制御部21は、後述する記憶部22に記憶した各種プログラムと協働して演算処理部210として機能する。
【0052】
記憶部22は、HDDやSSDなどで構成する記憶装置であり、計測結果記憶部221、再計測結果記憶部222、三次元計測情報記憶部223及び設定情報記憶部224として機能するとともに、上述のような処理を実行するための実行プログラムや、制御部11に接続された各種機器を制御するための制御プログラムなどを記憶している。
【0053】
計測結果記憶部221はスキャナ10による最初の三次元計測時の計測情報を記憶し、再計測結果記憶部222はスキャナ10による再計測時の計測情報を記憶し、三次元計測情報記憶部223は三次元計測情報作成部211で作成された三次元計測情報を記憶し、設定情報記憶部224は設定処理部214によって設定された設定情報を記憶する。
【0054】
操作部23は、計測範囲設定操作部231a及び計測精度設定操作部231bとして機能するモニタ231(20c)と、上述のマウス232a(20a)やキーボード232b(20b)で構成する入力装置232とがある。なお、モニタ231(20c)は、後述するように、モニタ231に表示する三次元計測画面300における設定操作部330を押下操作するスキャナ10の操作ボタン10d、マウス20aあるいはキーボード20bと協働して計測範囲設定操作部231a及び計測精度設定操作部231bとして機能する。
【0055】
出力部24は、計測結果表示部24a、計測案内部24b及び計測開始位置報知部24cとして機能するモニタ241(20c)、光出力部242及び音声出力部243で構成されている。
【0056】
なお、モニタ241(20c)は、後述するように、モニタ241に表示する三次元計測画面300における計測結果画像表示部310(図7参照)によって計測結果表示部24aとして機能し、三次元計測画面300における案内表示部320(図7参照)によって計測案内部24b及び計測開始位置報知部24cとして機能している。
【0057】
また、光出力部242及び音声出力部243は、出力部24として、三次元計測装置本体20に接続されるように図2では図示しているが、スキャナ10に備えてもよいし、三次元計測装置本体20に備えてもよい。
【0058】
このように構成した三次元計測システム1を用いた三次元計測について図5とともに説明する。なお、この図5を用いた三次元計測の概略説明では、図5(a)に示すように、下顎UJの全体を計測対象とする。
【0059】
下顎UJ全体を計測する場合、図5(b)に示すように、スキャナ10の先端側挿入部10bを口腔内に挿入するとともに、照射窓部10cから歯牙Tや歯肉Gなどの計測対象部位に対して光を発光部121で照射しながら、歯列に沿ってスキャナ10を移動させる。
【0060】
光が照射された計測対象部位からの反射光を照射窓部10cから入射させて受光部122で受光するとともに、制御部11を介して受光した計測情報を制御部21に送信し、受信した計測情報に基づいて制御部21は三次元計測情報作成部211で三次元計測情報を作成し、図5(d)に示すように、三次元計測画像311を計測結果画像表示部310に表示することができる。
【0061】
なお、図5(d)において便宜上破線で示すような未計測箇所Lnについては、計測情報が得られていないため表示されない。また、三次元計測情報作成部211で作成された三次元計測情報や三次元計測画像311の画像情報は記憶部22の三次元計測情報記憶部223に記憶され、制御部21が受信した計測情報は計測結果記憶部221に記憶される。
【0062】
例えば、スキャナ10の移動が歯列の半分程度までであれば、三次元計測情報作成部211では計測対象である下顎UJの半分程度までの計測情報しか得られていないため、計測情報が得られた下顎UJの半分程度の三次元計測情報が作成され、図5(c)に示すように、対応する半分程度の三次元計測画像311が計測結果画像表示部310に表示されることになる。なお、図5(c)において、未計測箇所Lnについては便宜上破線で図示しているが、実際には表示されない。
【0063】
続いて、三次元計測システム1を用いた三次元計測において、例えば、上述の未計測箇所Lnを検出する計測情報不足箇所検出及び再計測ガイドについて図6とともに説明する。なお、この図6を用いた三次元計測における計測情報不足箇所検出及び再計測ガイドの概略説明では、図6(a)に示すように、下顎UJの一部を計測対象とする。
【0064】
まず、スキャナ10の計測範囲指定操作部132と操作部23の計測範囲設定操作部231aとが協働して下顎UJの一部を指定すると、制御部11は設定処理部214により設定された範囲に対して計測範囲Hを設定するとともに、設定情報として設定情報記憶部224に記憶する。このように下顎UJに対して指定された計測範囲Hをスキャナ10でスキャニングした計測情報を制御部21で受信するとともに、受信した計測情報に対して、制御部11は計測情報不足箇所検出部213により計測情報の計測情報不足箇所を検出する。
なお、計測範囲Hの設定は、スキャニング後にしても良い。この場合には、
計測状況不足箇所は、計測範囲Hでスキャニング後に指定した大きさにより異なってくる。
【0065】
具体的には、図6(b)に示すように計測範囲Hの一部が計測されていない、つまり未計測である場合、計測情報不足箇所検出部213は計測範囲Hの計測情報に対して未計測箇所Lnを検出する。この場合、制御部21は、未計測箇所Lnを再計測で計測するために、再計測開始位置指定部212aで再計測開始位置Rsを指定するとともに、再計測開始位置Rsから開始して未計測箇所Ln全体が収まる再計測範囲H2を再計測範囲指定部212bで指定する。このとき、再計測経路方向指定部212cで後述する計測方向Dや計測経路Xを指定してもよい。
【0066】
なお、再計測開始位置Rsは、再計測結果に対応する再計測情報との適合性が高い計測情報の特徴箇所を指定する。そのため、図6(c)に示すように、未計測箇所Lnの隣の歯牙Tよりも適合性が高い別の歯牙Tを再計測開始位置Rsとして指定することもある。ここでいう適合性の高い特徴箇所とは、計測結果に対応する計測情報において抽出した特徴部分の個数や特徴箇所の箇所数、あるいは適合しやすい特徴部分の形状、あるいは特徴箇所の認識度合などに基づいて判定する。
【0067】
また、別の計測情報不足箇所としては、計測情報に基づいて計測範囲H全体が計測されているものの、その一部の情報が部分的に欠落して不足している場合、計測情報不足箇所検出部213は計測範囲Hに対して部分欠落箇所Lmを検出する。
【0068】
この場合、制御部21は、部分欠落箇所Lmを再計測で計測するために、再計測開始位置指定部212aで再計測開始位置Rsを指定するとともに、再計測開始位置Rsから開始して部分欠落箇所Lmを含む再計測範囲H2を再計測範囲指定部212bで指定する。
【0069】
なお、再計測範囲H2は、図6(e)に示すように、再計測開始位置Rsから部分欠落箇所Lmまでを含む範囲であればよいが、三次元計測情報作成部211による三次元計測情報を作成する際に、計測情報と再計測情報とを精度よく合成するために、部分欠落箇所Lmを超えた歯牙Tまでを含む範囲を再計測範囲H2として指定することもある。
【0070】
上述のように、計測情報不足箇所検出部213で検出する計測情報不足箇所としては、未計測箇所Lnや部分欠落箇所Lm以外にも、設定された計測精度を満足しない計測精度不足箇所も検出することとなる。
【0071】
次に、上述のように構成されるとともに、上述のように三次元計測する三次元計測システム1において、三次元計測時にモニタ20cに表示する三次元計測画面300について説明する。
三次元計測画面300には、左上の計測結果画像表示部310と、右側の案内表示部320と、左下の設定操作部330とが表示されている。
【0072】
計測結果表示部に対応する計測結果画像表示部310は、三次元計測情報作成部211で作成した三次元計測情報を画像表示(以下において三次元計測画像311という)するとともに、図8に示すように、計測時において計測状況を画像表示(以下において計測状況画像312という)する計測状況表示部310aとしても機能する。
【0073】
再計測開始位置報知部および再計測方法案内部に対応する案内表示部320は、右上の咬合方向案内表示部320Aと右下の断面方向案内表示部320Bとで構成され、計測時のガイド表示や計測範囲を設定するために用いられる。
そのため、咬合方向案内表示部320Aは、後述する計測対象顎選択部350で選択された上顎または下顎のいずれかの咬合方向の歯列のイラスト321(以下において歯列イラスト321という)が表示されるとともに、歯列イラスト321に対して計測範囲を設定するためのカーソル322、計測範囲H、再計測範囲H2、再計測開始位置Rs、計測経路Xなどを表示することができる。なお、図7乃至図10においては、下顎の歯列の歯列イラスト321を咬合方向案内表示部320Aに表示している。
【0074】
また、断面方向案内表示部320Bは、選択された上顎または下顎のおける計測範囲Hの歯牙Tの断面方向のイラスト323(以下において断面イラスト323という)が表示されるとともに、断面イラスト323に対して計測方向Dなどを表示することができる。なお、図7乃至図10においては下顎の歯牙Tの断面イラスト323を断面方向案内表示部320Bに表示している。
【0075】
三次元計測画面300の左下に表示する設定操作部330は、計測選択部340、計測対象顎選択部350、計測精度設定部360、計測範囲設定部370及びガイド表示操作ボタン380を上から順に配置して構成している。
【0076】
計測選択部340は、これから行うスキャニングが最初の三次元計測である場合に押下操作するMeasurementボタン341と、再計測の場合に押下操作するRe-measurementボタン342とで構成している。
計測対象顎選択部350は、計測する対象が上顎である場合に押下操作するupper jawボタン351と、下顎である場合に押下操作するlower jawボタン352とで構成している。
【0077】
計測精度設定部(Precision setting)360は、計測範囲Hを三次元計測する際の計測精度を設定するためのスクロールバー361が表示され、スクロールバー361に対して、入力装置232や操作ボタン10dでスクロールボタン362を左右に操作して計測精度を設定する。なお、本実施形態において、スクロールボタン362を右側にスクロールするほど計測精度は高精度化し、左側にスクロールすることで低精度化する構成であり、左右方向の中央をデフォルト設定している。また、計測範囲Hにおいて計測精度を部分的に変更させて設定できるように構成してもよい。
【0078】
計測範囲設定部370は計測範囲Hを任意の範囲に設定する際に押下操作するRange settingボタン371と、計測範囲を歯列全体とする際に押下操作するEntire rangeボタン372とで構成されている。
【0079】
ガイド表示操作ボタン380は、案内表示部320にガイド表示(Rs,X,H2、D)を表示するために押下操作するボタンである。なお、後述するように計測情報不足箇所が複数ある場合、別の計測情報不足箇所を再計測するためのガイド表示を表示するためのNextボタン382が表示される(図9図10参照)。
【0080】
続いて、モニタ20cに三次元計測画面300が表示された三次元計測システム1で下顎UJを三次元計測する場合の計測方法について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
まず、三次元計測する際に、図8に示すように、計測範囲指定操作部132として機能する操作ボタン10dや入力装置232によって、計測範囲設定操作部231aとして機能するRange settingボタン371が押下操作されるとともに、咬合方向案内表示部320Aに表示される歯列イラスト321に対してカーソル322で下顎UJにおける計測範囲が設定されている場合(ステップs1:Yes)、設定処理部214は指定された範囲を計測範囲Hとして設定するとともに設定情報記憶部224に記憶する(計測範囲設定工程に対応する計測範囲設定処理:ステップs2)。
【0081】
逆に、三次元計測する際に、計測範囲指定操作部132として機能する操作ボタン10dや入力装置232によって、計測範囲設定操作部231aとして機能するEntire rangeボタン372が押下操作された場合(ステップs1:No)、設定処理部214は下顎UJ全体を計測範囲Hとする。
【0082】
また、操作ボタン10dや入力装置232によって、計測精度設定操作部231bとして機能する計測精度設定部360のスクロールボタン362が左右方向に移動操作された場合(ステップs3:Yes)、設定処理部214は指定された計測精度を設定するとともに設定情報記憶部224に記憶する(計測精度設定工程に対応する計測精度設定処理:ステップs4)。
逆に、計測精度設定操作部231bとして機能する計測精度設定部360が操作されない場合(ステップs3:No)、設定処理部214はデフォルト設定された計測精度とする。
【0083】
このようにして計測条件の設定完了後、入力装置232によってMeasurementボタン341が押下操作されたうえで、先端側挿入部10bを口腔内に挿入し、計測範囲Hの歯牙Tや歯肉Gに照射窓部10cを対向させ、計測操作部131として機能する操作ボタン10dが押下されることで三次元計測を開始する(ステップs5)。
【0084】
このステップS5では、制御部11によって発光部121で光を発光し、発光部121で発光された光は上述の導光路を導光して照射窓部10cから計測範囲Hの歯牙Tや歯肉Gに向かって照射され、歯牙Tや歯肉Gで反射した反射光は照射窓部10cからスキャナ10に入射するとともに、導光路を導光して受光部122で受光する。
【0085】
そして、受光部122による反射光の受光情報を計測情報として制御部11を介して制御部21に送信し、制御部21は受信した計測情報に基づいて、図8に示すように計測状況表示部310aに計測状況画像312を表示するとともに、受信した計測情報を計測結果記憶部221に記憶する(計測情報取得処理:ステップs5A)。
【0086】
このような三次元計測は、計測操作部131として機能する操作ボタン10dが再度押下操作されるまで継続し、操作ボタン10dの押下操作によって三次元計測が終了すると、制御部11は受信した計測情報から計測情報不足箇所(Lm,Ln)を検出する(計測情報不足箇所検出処理:ステップs6)
【0087】
この計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)において、計測情報不足箇所検出部213は上述したように、受信した計測情報から未計測箇所Lnを検出する未計測箇所検出処理(ステップs6A)、受信した計測情報から部分欠落箇所Lmを検出する部分欠落箇所検出処理(ステップs6B)、あるいは設定された計測精度を満足しない計測精度不足箇所を受信した計測情報から検出する計測精度不足検出処理(ステップs6C)を実行する。
【0088】
計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)において未計測箇所検出処理(ステップs6A)、部分欠落箇所検出処理(ステップs6B)、及び計測精度不足検出処理(ステップs6C)を実行した結果、部分欠落箇所Lmや未計測箇所Lnあるいは計測精度不足箇所などの計測情報不足箇所が検出されなかった場合(ステップs7:No)、制御部21は受信した計測情報に基づいて、三次元計測情報作成部211により三次元計測情報を作成するとともに、三次元計測情報記憶部223に記憶し、さらに、三次元計測画像311として計測結果画像表示部310に画像表示する(三次元計測情報作成工程に対応する三次元計測情報作成処理:ステップs8)。
【0089】
逆に、計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)において計測情報不足箇所が検出された場合(ステップs7:Yes)、制御部21は、計測案内作成部212により再計測開始位置Rs、計測範囲H、計測経路Xあるいは計測方向Dなどのガイド表示を設定するための再計測ガイド指定表示処理を実行する(ステップs9)。
【0090】
なお、以下の説明では、計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)において部分欠落箇所Lmと未計測箇所Lnのふたつの計測情報不足箇所が検出されたとして説明する。より具体的には、図9に基づいて、右側の歯牙Tの頬側の一部に部分欠落箇所Lmが検出された場合のガイド表示について説明し、図10に基づいて、左側の奥歯側の複数本の歯牙Tの未計測箇所Lnが検出された場合のガイド表示について説明する。
【0091】
再計測方法案内工程に対応する再計測ガイド指定表示処理(ステップs9)では、再計測開始位置指定部212aにより、受信した計測情報から特徴箇所を抽出する特徴箇所抽出処理を行い、再計測時の再計測開始位置Rsを指定する再計測開始位置指定表示処理(ステップs9A:再計測開始位置報知工程に対応)、再計測範囲指定部212bにより再計測範囲H2を指定する再計測範囲指定表示処理(ステップs9B)、再計測経路方向指定部212cによって再計測時の計測経路を指定する再計測経路指定表示処理(ステップs9C)、再計測経路方向指定部212cによって再計測時の計測方向を指定する再計測方向指定表示処理(ステップs9D)、及び再計測時の計測速度を指定する再計測速度指定表示処理(ステップs9E)を実行し、三次元計測画面300の咬合方向案内表示部320Aの歯列イラスト321に対して再計測開始位置Rs、再計測範囲H2及び計測経路Xを表示するとともに、断面方向案内表示部320Bの断面イラスト323に対して計測方向Dを表示する。
【0092】
例えば、図9に示すように、右側の奥側から2本目と3本目の歯牙Tにおける頬側の一部に部分欠落箇所Lmが検出された場合には、右側の最も奥側の歯牙Tを再計測開始位置Rsとして表示するとともに、再計測開始位置Rsから歯列における正中側(正面側)に向かって4本の歯牙Tが含まれる範囲を再計測範囲H2として設定し、表示する。
【0093】
さらには、奥側から正中側(正面側)に向かう矢印で図示する計測経路Xをガイド表示として、咬合方向案内表示部320Aの歯列イラスト321に対して表示する。また、計測経路Xに沿って再計測する際の計測方向を示す計測方向Dを断面方向案内表示部320Bの断面イラスト323に対して表示する。
【0094】
次に、図10に示すように、左側の奥歯側の4本の歯牙Tの未計測箇所Lnが検出された場合には、図9に示す部分欠落箇所Lmに対するガイド表示が表示された三次元計測画面300におけるNextボタン382を押下操作することで、図10に示す未計測箇所Lnに対するガイド表示が表示された状態に移行することができる。
【0095】
左側の奥歯側の4本の歯牙Tの未計測箇所Lnが検出されており、咬合方向に加え、計測しにくい頬側及び舌側からの計測も必要となるため、この場合は、咬合方向案内表示部320Aの歯列イラスト321に対して3本の計測経路Xを表示するとともに、断面方向案内表示部320Bの断面イラスト323に対して3方向の計測方向Dを表示することとなる。さらには、その計測経路X及び計測方向Dに対して計測順序を示す番号表示も表示することになる。
【0096】
このようにして、再計測ガイド指定表示処理(ステップs9)において、咬合方向案内表示部320Aの歯列イラスト321に対する再計測開始位置Rs、再計測範囲H2及び計測経路Xのガイド表示、並びに断面方向案内表示部320Bの断面イラスト323に対する計測方向Dがガイド表示された状態で、入力装置232によってRe-measurementボタン342が押下操作されたうえで、先端側挿入部10bを口腔内に挿入し、再計測範囲H2の歯牙Tや歯肉Gに照射窓部10cを対向させ、計測操作部131として機能する操作ボタン10dが押下されることで再計測を開始する(ステップs10)。
【0097】
このステップS10では、計測情報取得処理(ステップs5A)と同様に、再計測範囲H2の歯牙Tや歯肉Gに向かって光を照射するとともに、受光部122で受光した反射光の受光情報を計測情報として制御部11を介して制御部21に送信し、制御部21は受信した再計測情報を再計測結果記憶部222に記憶する(再計測情報取得処理:ステップs10A)。
【0098】
そのうえで、制御部21が受信した再計測情報について、ステップs6に戻り、計測情報不足箇所(Lm,Ln)を検出する計測情報不足箇所検出処理を実行する。再計測情報に計測情報不足箇所が検出されない場合は、制御部21は計測結果記憶部221に記憶した計測情報と、受信した再計測情報に基づいて、三次元計測情報作成部211により三次元計測情報を作成するとともに、三次元計測情報記憶部223に記憶し、さらに、三次元計測画像311として計測結果画像表示部310に画像表示して(三次元計測情報作成処理:ステップs8)、三次元計測を終了する。
【0099】
逆に、再計測情報に計測情報不足箇所が検出された場合は、ステップs9及びs10に移行して再々計測を行う。これを計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)で計測情報不足箇所が検出されなくなるまで繰り返す。
【0100】
このように、計測範囲Hを三次元計測するスキャナ10と、スキャナ10による計測情報において計測情報が不足している計測情報不足箇所Lm,Lnを検出する計測情報不足箇所検出部213と、計測情報不足箇所検出部213で検出された計測情報不足箇所Lm,Lnの再計測を開始する再計測開始位置Rsを表示する案内表示部320と、スキャナ10で再計測開始位置Rsから計測情報不足箇所Lm,Lnを含めて再計測した再計測情報、及び計測済みの計測情報を、それぞれの計測情報における、特徴情報を有する特徴箇所を適合させて、計測範囲Hの三次元計測情報を作成する三次元計測情報作成部211とが備えられた三次元計測システム1を用いた三次元計測方法として、計測範囲Hを三次元計測する三次元計測工程(ステップs5)と、三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報において計測情報が不足している計測情報不足箇所Lm,Lnを検出する計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)と、計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)で検出された計測情報不足箇所Lm,Lnの再計測を開始する再計測開始位置Rsを表示する再計測開始位置指定表示処理(ステップs9A)と、再計測開始位置Rsから計測情報不足箇所Lm,Lnを含めて再計測する再計測工程(ステップs10)と、再計測工程(ステップs10)で再計測した再計測情報、及び三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報を、それぞれの計測情報における、特徴情報を有する特徴箇所を適合させて、計測範囲Hの三次元計測情報を作成する三次元計測情報作成処理(ステップs8)とを行うことにより、データ量及び処理負担の増大を防止するとともに、精度のよい計測情報を得ることができる。
【0101】
詳述すると、三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報において計測情報が不足している計測情報不足箇所Lm,Lnの再計測を開始する再計測開始位置Rsを案内表示部320に表示するため、表示された再計測開始位置Rsから計測情報不足箇所Lm,Lnを含めて再計測することができる。したがって、確実に、計測情報不足箇所Lm,Lnを含めて再計測することができる。
【0102】
本発明は、計測情報不足箇所Lm,Lnを三次元画像として表示する。この表示には、測定済みの箇所から計測不足箇所の形状を類推して表示するだけでなく、計測情報不足箇所Lm,Lnをいち早く再測定するために再計測する際のスキャニング方向や位置の他、範囲をも表示するものである。
【0103】
また、ステップs10で再計測した再計測情報と三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報とを、それぞれの計測情報における、特徴情報を有する特徴箇所を適合させて、計測範囲Hの三次元計測情報を作成するため、再計測情報と三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報とに基づいて、計測範囲Hの三次元計測情報を精度よく作成することができる。
【0104】
また、再計測開始位置指定表示処理(ステップs9A)において、三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報に基づき、適合性が高い特徴箇所を検出し、再計測開始位置Rsに指定するため、より高精度な三次元計測情報を作成することができる。
【0105】
詳述すると、適合性の高い特徴箇所を再計測開始位置Rsに指定するため、再計測情報と三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報とを、再計測開始位置Rsとして指定された適合性の高い特徴箇所に基づいて合成して、高精度の三次元計測情報を作成することができる。
【0106】
また、計測精度設定処理(ステップs4)において計測精度の設定を受け付け、計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)では、設定された計測精度に基づいて、該当箇所の三次元計測工程(ステップs5)で取得した計測情報における計測情報の不足を検出するため、所望の精度の三次元計測情報を作成することができる。詳述すると、計測範囲Hにおいて既に計測された箇所であっても所望の計測精度を満足していない場合には再計測するため、所望の精度の三次元計測情報を作成することができる。
【0107】
また、仮に、計測範囲Hにおける治療対象箇所の計測精度を他の部分に比べて部分的に高精度に設定した場合、計測範囲H全体を高精度に設定した場合に比べて、データ量を低減でき、処理負担の増大を抑制することができる。
【0108】
また、再計測ガイド指定表示処理(ステップs9)において、再計測工程(ステップs10)における再計測の方法として計測方向Dや計測経路Xなどのガイド表示によって案内するため、より正確に、また無駄なく再計測することができる。したがって、例えば、無駄な経路を通る再計測の場合に比べて、データ量を低減できるとともに、処理負担の増大を抑制しながら、より正確かつ効率的に再計測することができる。
【0109】
また口腔内における計測範囲Hの設定を受け付けるため、所望の計測範囲Hのみを計測できるため、データ量を低減できるとともに、処理負担の増大を抑制しながら、より正確かつ効率的に再計測することができる。
【0110】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の不足箇所検出工程は計測情報不足箇所検出処理(ステップs6)に対応し、
以下同様に、
再計測開始位置報知工程は再計測開始位置指定表示処理(ステップs9A)に対応し、
再計測結果は再計測情報に対応し、
計測結果は計測情報に対応し、
三次元計測情報作成工程は三次元計測情報作成処理(ステップs8)に対応し、
計測精度設定工程は計測精度設定処理(ステップs4)に対応し、
再計測方法案内工程は再計測ガイド指定表示処理(ステップs9)に対応し、
計測範囲設定工程は計測範囲設定処理(ステップs2)に対応し、
三次元計測装置は三次元計測システム1に対応し、
三次元計測部はスキャナ10に対応し、
不足箇所検出部は計測情報不足箇所検出部213に対応し、
再計測開始位置報知部は案内表示部320に対応し、
再計測方法案内部は案内表示部320に対応し、
計測結果表示部は計測結果画像表示部310に対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0111】
例えば、上述の説明では、再計測開始位置指定部212aで再計測開始位置Rsを指定したが、再計測開始位置指定操作部として機能する操作ボタン10dや入力装置232を用いて施術者によって再計測開始位置Rsを指定してもよく、この場合、再計測を開始しやすい位置から再計測を開始することができ、スムーズに再計測することができる。
【0112】
また、上述の説明では、カーソル322を操作して計測範囲Hを指定したが、計測範囲Hとして設定しない範囲をカーソル322で指定することで、指定されていない範囲を計測範囲Hとして設定するように構成してもよい
【0113】
また、図2において破線で示すように、スキャナ10の姿勢を検出する姿勢検出部141及びスキャナ10の移動速度を検出する移動速度検出部142として少なくとも機能する検出部14をスキャナ10に備えてもよく、これにより計測時のスキャナ10の移動姿勢や移動速度を検出することができる。
【0114】
これにより、図11に示すように、案内表示部320の歯列イラスト321や断面イラスト323に対して、スキャナ10の先端側挿入部10bをイラスト化して、イラスト化された先端側挿入部10bを用いて計測経路Xaや計測方向Daを表示するとともに、上述のように、検出部14でスキャナ10の姿勢や移動速度を検出しながら、適切な計測経路Xaや計測方向Daを表示することができる。
【0115】
さらには、スキャナ10の移動速度を検出部14で検出する場合、ガイド表示として、スキャナ10の移動速度をガイドする速度ガイドYを歯列イラスト321に対して表示してもよい。この場合、移動速度を速める場合は矢印の長さや大きさを大きく表示したり、警告音や音声で表示してもよい。移動速度を遅くする場合には矢印の長さや大きさを小さくしたり、警告音や音声で表示するとよい。
【0116】
また、再計測開始位置Rsの報知としては、音声出力部243の音声や音による報知、光出力部242の発光や発光パターンによる報知でもよいし、本体部10aを振動させるなどの通常時とは異なる駆動による報知などであってもよい
【0117】
さらにまた、上述の説明では、計測情報不足箇所として、未計測である未計測箇所Ln及び部分的に計測情報が欠落している部分欠落箇所Lm、あるいは設定された計測精度を満足していない計測精度不足箇所を計測情報不足箇所としたが、例えば、計測情報の部分的な欠落と計測精度不足となどを組み合わせて計測情報不足箇所として検出してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…三次元計測システム
10…スキャナ
211…三次元計測情報作成部
212a…再計測開始位置指定部
213…計測情報不足箇所検出部
310…計測結果画像表示部
320…案内表示部
360…計測精度設定部
370…計測範囲設定部
H…計測範囲
Lm…部分欠落箇所
Ln…未計測箇所
Rs…再計測開始位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11