(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】楔式ロープ端末部品の据付治具及び据付方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/08 20060101AFI20220722BHJP
F16G 11/04 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B66B7/08 Z
F16G11/04 C
(21)【出願番号】P 2021521588
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020878
(87)【国際公開番号】W WO2020240656
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】春山 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸明
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-330487(JP,A)
【文献】特開平05-296295(JP,A)
【文献】実開昭52-054773(JP,U)
【文献】特開平02-085546(JP,A)
【文献】米国特許第04536921(US,A)
【文献】実開昭50-134570(JP,U)
【文献】米国特許第06058575(US,A)
【文献】実開昭60-002042(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/08
F16G 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェッジとソケットとを有するロープを固定する楔式ロープ端末部品に、ロープが巻き掛けられた状態の前記ウェッジを前記ソケットの内部に引き込む楔式ロープ端末部品の据付治具であって、
前記ロープの無負荷側を保持するロープ保持部材と、前記ロープ保持部材を引っ張る引張部材と、前記ウェッジの位置を決定するウェッジ位置決め部材と、前記ソケットの位置を決定するソケット位置決め部材と、前記ソケットを保持するソケット保持部材と、
前記引張部材、前記ウェッジ位置決め部材、前記ソケット位置決め部材、前記ソケット保持部材を固定するベース部材と、有することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付治具。
【請求項2】
請求項1に記載の楔式ロープ端末部品の据付治具であって、
前記ソケットの設置高さを調整するソケット設置高さ調整部材を有することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付治具。
【請求項3】
請求項1に記載の楔式ロープ端末部品の据付治具であって、
前記ソケットを拘束するソケット拘束部材を有することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付治具。
【請求項4】
請求項
1に記載の楔式ロープ端末部品の据付治具であって、
前記ベース部材には、前記ウェッジを、前記ソケット内に引き込む際に、前記ウェッジ位置決め部材の取り付け位置の基準となる切欠きを有することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付治具。
【請求項5】
請求項1に記載の楔式ロープ端末部品の据付治具であって、
前記ソケット保持部材は、3方向から前記ソケットを保持することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付治具。
【請求項6】
請求項
1に記載の楔式ロープ端末部品の据付治具であって、
前記ウェッジ位置決め部材は、前記ウェッジの先端部に接触する接触具と、前記接触具を前記ベース部材に固定する締付具と、前記締付具が貫通する長円孔と、を有することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付治具。
【請求項7】
ウェッジとソケットとを有するロープを固定する楔式ロープ端末部品に、ロープが巻き掛けられた状態の前記ウェッジを前記ソケットの内部に引き込む楔式ロープ端末部品の据付方法であって、
ロープ保持部材にて前記ロープの無負荷側を保持し、引張部材にて前記ロープ保持部材を引っ張り、ウェッジ位置決め部材にて前記ウェッジの位置を決定し、ソケット位置決め部材にて前記ソケットの位置を決定し、ソケット保持部材にて前記ソケットを保持することを特徴とする楔式ロープ端末部品の据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターなどで使用するロープの端部を楔式ロープ端末部品に固定するための楔式ロープ端末部品の据付治具及び据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2012-96907号公報(特許文献1)がある。この特許文献1には、留め金具に主ロープを締結する挿入装置が記載されている。特許文献1に記載される挿入装置は、主ロープの負荷側及び端部側に固定される把持具と、把持具と開口を形成するソケットの一端部との間に配置される受け具と、把持具に設置される押圧具と、を備えている。そして、特許文献1には、受け具は、その中空部に主ロープの負荷側及び端部側の双方が貫通した状態で配置され、受け具のソケット側への変位はソケットの一端部に規制され、押圧具は、この受け具をソケットの一端部側に押圧することが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、楔式の留め金具(楔式ロープ端末部品)に、主ロープの端部を締結(固定)する際に、ロープが巻き付けられた状態のウェッジを、ソケットの内部の適切な位置までに引き込むことができる挿入装置(楔式ロープ端末部品の据付治具)が記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1には、押圧具を締め込み、ソケットの内部にウェッジを引き込む際、把持具をガイドする部材については記載されていない。特許文献1に記載される挿入装置の場合、把持具をガイドする部材が無い場合には、受け具が、主ロープと直交する方向にずれる可能性があり、主ロープを局部的に傷付ける可能性がある。また、特許文献1に記載される挿入装置では、押圧具を締め込むと、受け具と把持具との間の寸法が大きくなり、押圧具と受け具とがずれ、最終的に押圧することができなくなる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、楔式ロープ端末部品に、エレベーターなどで使用するロープの端部を固定する際、ロープの品質を確保すると共に、ロープが巻き掛けられた状態のウェッジを、ソケットの内部の適切な位置まで引き込むことができる楔式ロープ端末部品の据付治具及び据付方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の楔式ロープ端末部品の据付治具は、ウェッジとソケットとを有するロープを固定する楔式ロープ端末部品に、ロープが巻き掛けられた状態のウェッジをソケットの内部に引き込む楔式ロープ端末部品の据付治具であって、ロープの無負荷側を保持するロープ保持部材と、ロープ保持部材を引っ張る引張部材と、ウェッジの位置を決定するウェッジ位置決め部材と、ソケットの位置を決定するソケット位置決め部材と、ソケットを保持するソケット保持部材と、引張部材、ウェッジ位置決め部材、ソケット位置決め部材、ソケット保持部材を固定するベース部材と、有することを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本発明の楔式ロープ端末部品の据付方法は、ウェッジとソケットとを有するロープを固定する楔式ロープ端末部品に、ロープが巻き掛けられた状態のウェッジをソケットの内部に引き込む楔式ロープ端末部品の据付方法であって、ロープ保持部材にてロープの無負荷側を保持し、引張部材にてロープ保持部材を引っ張り、ウェッジ位置決め部材にてウェッジの位置を決定し、ソケット位置決め部材にてソケットの位置を決定し、ソケット保持部材にてソケットを保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、楔式ロープ端末部品に、エレベーターなどで使用するロープの端部を固定する際、ロープの品質を確保すると共に、ロープが巻き掛けられた状態のウェッジを、ソケットの内部の適切な位置まで引き込むことができる楔式ロープ端末部品の据付治具及び据付方法を提供することができる。
【0010】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、下記する実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】高層建物に設置されるエレベーター装置を説明する説明図である。
【
図2】ロープ径12mm以下のロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する説明図である。
【
図3】ロープ径16mm以上の主ロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する説明図である。
【
図4】ロープ径16mm以上のコンペンロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する説明図である。
【
図5】本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する平面図である。
【
図6】本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する側面図である。
【
図7】本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の
図5に示すA-Aの矢印方向から見たA-A矢視図である。
【
図8】本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の
図5に示すB-Bの矢印方向から見たB-B矢視図である。
【
図9】本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具と作業台とを組み合わせた状態を説明する斜視図である。
【
図10】本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の解体時における楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を使用して説明する。なお、実質的に同一又は類似の構成には同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0013】
まず、高層建物に設置されるエレベーター装置を説明する。
【0014】
図1は、高層建物に設置されるエレベーター装置を説明する説明図である。
【0015】
本実施例に記載される高層建物に設置されるエレベーター装置は、乗りかご2、つり合いおもり3、主ロープ4、巻上機5、コンペンロープ6、コンペンプーリー7、を有する。そして、エレベーター装置は、乗りかご2とつり合いおもり3とが、巻上機5を介して、主ロープ4により連結され、また、乗りかご2とつり合いおもり3とが、コンペンプーリー7を介して、コンペンロープ6により連結され、昇降路1の内部を昇降する。
【0016】
そして、主ロープ4やコンペンロープ6は、乗りかご2やつり合いおもり3と連結される際には、楔式ロープ端末部品を使用して、その端部が固定される。
【0017】
次に、ロープ径12mm以下のロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する。
【0018】
図2は、ロープ径12mm以下のロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する説明図である。
【0019】
本実施例に記載する楔式ロープ端末部品8は、ウェッジ9やソケット10を有する。ウェッジ9は、その外側面にV字状の傾斜が形成される。ソケット10は、ウェッジ9を収納する収納部が設置され、その収納部を設置するため、その内側面の一部に、ウェッジ9のV字状の傾斜に合わせた楔受け面10aが形成される。
【0020】
ロープ径12mm以下のロープの場合、こうした楔式ロープ端末部品8は、主ロープ4及びコンペンロープ6に使用される。
【0021】
主ロープ4及びコンペンロープ6の端部を楔式ロープ端末部品8に固定する場合には、以下の手順が実行される。
【0022】
(1)先ず、ロープの一端(主ロープ4の無負荷側4b又はコンペンロープ6の無負荷側6b)を、ソケット10の先端部に形成される開口部10bから、ソケット10の収納部の内部に挿入し、開口部10bの反対側に形成された開口部10c(開口部10bよりも開口が大きい)から、ロープの一端を引き出す。
【0023】
(2)次に、開口部10cから引き出したロープを、ウェッジ9の外周部分に巻き掛けて折り返し、その状態のまま、ウェッジ9を、その先端部9aからソケット10の収納部の内部に挿入する。
【0024】
(3)次に、開口部10bからソケット10の外部に延びた2本のロープ(主ロープ4の無負荷側4bと主ロープ4の負荷側4a又はコンペンロープ6の無負荷側6bとコンペンロープ6の負荷側6a)をソケット10の反対方向(
図2の上方向)に引っ張り、ウェッジ9をソケット10の収納部の内部に設置する。
【0025】
次に、ロープ径16mm以上の主ロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する。
【0026】
図3は、ロープ径16mm以上の主ロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する説明図である。
【0027】
特に、主ロープ4の径が16mm以上と太い場合には、主ロープ4をウェッジ9の外周部分に巻き掛ける作業や折り返す作業は人力でも可能であるが、ウェッジ9を主ロープ用ソケット12内に引き込む作業は、人力のみでは不可能であった。このことから、特に、主ロープ4の径が16mm以上と太い場合には、主ロープ4が巻き掛けられ折り返された状態のウェッジ9を、主ロープ用ソケット12内の適切な位置まで引き込むことができる冶具(装置)が必要であった。
【0028】
次に、ロープ径16mm以上のコンペンロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する。
【0029】
図4は、ロープ径16mm以上のコンペンロープが楔式ロープ端末部品に固定された状態を説明する説明図である。
【0030】
特に、コンペンロープ6の径が16mm以上と太い場合には、コンペンロープ6をウェッジ9の外周部分に巻き掛ける作業や折り返す作業は人力でも可能であるが、ウェッジ9をコンペンロープ用ソケット13内に引き込む作業は、人力のみでは不可能であった。このことから、特に、コンペンロープ6の径が16mm以上と太い場合には、コンペンロープ6が巻き掛けられ折り返された状態のウェッジ9を、コンペンロープ用ソケット13内の適切な位置まで引き込むことができる冶具(装置)が必要であった。
【0031】
次に、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する。
【0032】
図5は、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する平面図である。
【0033】
図6は、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する側面図である。
【0034】
本実施例では、特に、ロープ径16mm以上の主ロープ4を、ウェッジ9や主ロープ用ソケット12を有する楔式ロープ端末部品8に固定する場合を説明する。
【0035】
本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具17は、主ロープ4の無負荷側4bを保持するロープ保持部材18と、ロープ保持部材18を引っ張る引張部材19と、ウェッジ9の位置を決定するウェッジ位置決め部材20と、主ロープ用ソケット12の位置を決定するソケット位置決め部材21と、主ロープ用ソケット12を保持するソケット保持部材22と、主ロープ用ソケット12の設置高さを調整するソケット設置高さ調整部材23と、ロープ保持部材18、引張部材19、ウェッジ位置決め部材20、ソケット位置決め部材21、ソケット保持部材22、ソケット設置高さ調整部材23を設置するベース部材24と、を有する。
【0036】
引張部材19は、ロープ保持部材18に連結される。そして、引張部材19は、一方がロープ保持部材18に固定され、他方が引張部材19のボルト19bに設置されるL形金具19aと、ベース部材24に固定され、引張部材19のボルト19bが貫通する孔が形成される固定金具19cと、L形金具19aに設置され、固定金具19cに形成される孔を貫通するボルト19bと、を有する。
【0037】
また、引張部材19は、固定金具19cのL形金具19a側に、ボルト19bに嵌合するナット19dを有する。なお、ナット19dは固定金具19cに溶接される。そして、ボルト19bを回転させることにより、ナット19dとの作用により、ボルト19bを移動(
図5中、右側から左側へ移動)させることができる。これにより、ロープ保持部材18を引っ張ることができ、主ロープ4が巻き掛けられ折り返された状態のウェッジ9を、主ロープ用ソケット12内の適切な位置まで引き込むことができる。
【0038】
ウェッジ位置決め部材20は、ウェッジ9の先端部9aに接触する接触具20bと、この接触具20bをベース部材24に固定する締付具20aと、を有する。つまり、締付具20aを使用して、接触具20bをベース部材24に固定することができる。
【0039】
ウェッジ位置決め部材20を設置することにより、引張部材19を使用して、ウェッジ9を、主ロープ用ソケット12内に引き込む際に、ウェッジ9の先端部9aが、接触具20bに押し当たり、ウェッジ9の引込み寸法を均一化することができる。
【0040】
なお、接触具20bには、締付具20aが貫通する長円孔20cが形成される。接触具20bは、長円孔20cを介して、締付具20aにより、ベール部材24に固定される。これにより、ウェッジ位置決め部材20は、長円孔20cの長さ方向の距離に対応して、様々な位置にて、固定することができる。
【0041】
また、ベース部材24には、引張部材19、ウェッジ位置決め部材20、ソケット保持部材22、ソケット設置高さ調整部材23が、ボルトにより、固定される。
【0042】
また、ベース部材24には、切欠き27が形成される。この切欠き27は、ウェッジ9を、引張機材19により、主ロープ用ソケット12内に引き込む際に、ウェッジ位置決め部材20の取り付け位置の基準となる。なお、本実施例では、切欠き27により、2つの基準となる取り付け位置を設定することができる。この基準となる取り付け位置を設定する場合、切欠き27に限定されるものではなく、ベース部材24に、切削や記載により、基準となる取り付け位置をしるすこともできる。
【0043】
また、ソケット位置決め部材21は、主ロープ用ソケット12の位置を決定する部材であり、ベース部材24に溶接される。そして、ソケット位置決め部材21は、ウェッジ9を、引張機材19により、主ロープ用ソケット12内に引き込む際に、主ロープ用ソケット12の、ロープ側(
図5中、左側)への移動を、規制する部材である。
【0044】
また、ソケット設置高さ調整部材23は、主ロープ用ソケット12の設置高さを調整する部材である。これにより、主ロープ用ソケット12を水平に維持し、主ロープ4を水平に維持することができる。
【0045】
次に、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の
図5に示すA-Aの矢印方向から見た場合について説明する。
【0046】
図7は、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の
図5に示すA-Aの矢印方向から見たA-A矢視図である。
【0047】
ロープ保持部材18は、主ロープ4の無負荷側4bを保持する部材であり、主ロープ4の無負荷側4bを保持する保持金具18aと、保持金具18aを固定する締付具18bと、を有する。なお、本実施例では、締付具18bはボルトとナットとを有する。
【0048】
ロープ保持部材18は、主ロープ用ソケット12の開口部12a(
図3参照)の近傍にて、主ロープ用ソケット12の開口部12aから主ロープ用ソケット12の外部に延びた主ロープ4の無負荷側4bに固定される。本実施例では、主ロープ4の無負荷側4bを保持する2枚の保持金具18aと、保持金具18aを上下で固定する2つの締付具18bと、を有する。これにより、確実に、主ロープ4の無負荷側4bを固定することができる。
【0049】
次に、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の
図5に示すB-Bの矢印方向から見た場合について説明する。
【0050】
図8は、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具の
図5に示すB-Bの矢印方向から見たB-B矢視図である。
【0051】
ソケット保持部材22は、ウェッジ9を、引張機材19により、主ロープ用ソケット12内に引き込む際に、主ロープ用ソケット12の位置ずれを防止し、サイズや形状が相違する主ロープ用ソケット12に合わせ調整することができる。
【0052】
そして、ソケット保持部材22は、3方向から主ロープ用ソケット12を保持することができる3つの保持具22aを有する。これにより、主ロープ用ソケット12の位置ずれが防止され、可動する3つの保持具22aを有することにより、サイズや形状が相違する主ロープ用ソケット12に合わせ調整することができる。
【0053】
更に、ソケット保持部材22は、ベース部材24に締付具22bにより固定される。なお、本実施例では、締付具22bはボルトを使用する。
【0054】
そして、ソケット設置高さ調整部材23により、主ロープ用ソケット12の設置高さが調整される。これにより、主ロープ用ソケット12を水平に維持し、主ロープ4を水平に維持することができる。
【0055】
また、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具17を使用して、主ロープ4の端部を楔式ロープ端末部品8に据え付ける方法を、以下、説明する。
【0056】
(1)まず、主ロープ用ソケット12を、ソケット設置高さ調整部材23に設置し、ソケット位置決め部材21に押し当て、可動する3方向の保持具22aを有するソケット保持部材22により、主ロープ用ソケット12を固定し、主ロープ用ソケット12の位置ずれを防止する。
【0057】
(2)次に、主ロープ4の一端(主ロープ4の無負荷側4b)を、主ロープ用ソケット12の先端部に形成される開口部12a(
図3参照)から、主ロープ用ソケット12の収納部の内部に挿入し、開口部12aの反対側に形成された開口部12b(開口部12aよりも開口が大きい)(
図3参照)から、主ロープ4の無負荷側4bを引き出す。
【0058】
(3)次に、開口部12bから引き出した主ロープ4の無負荷側4bを、ウェッジ9の外周部分に巻き掛けて折り返し、その状態のまま、ウェッジ9を、その先端部9aから主ロープ用ソケット12の収納部の内部に挿入する。
【0059】
(4)次に、開口部12aから主ロープ用ソケット12の外部に延びた2本の主ロープ4の内、無負荷側ロープ4bを、ロープ保持部材18を使用して固定する。つまり、2枚の保持金具18aで挟み込み、上下で固定する2つの締付具18bを使用して固定する。
【0060】
(5)次に、ロープ保持部材18に連結される引張部材19を使用して、主ロープ4の無負荷側4bを引っ張る。つまり、L型金具19aを介してロープ保持部材18に連結されるボルト19bを、スパナなど(図示なし)を使用して回転させ、主ロープ4の無負荷側4bを、ウェッジ9の先端部9aがウェッジ位置決め部材20に押し当たるまで、引き込む。
【0061】
これにより、主ロープ4を局部的に傷付けることがなく、安定した状態でウェッジ9を主ロープ用ソケット12の収納部に適切に設置することができる。
【0062】
なお、本実施例では、特に、ロープ径16mm以上の主ロープ4を、ウェッジ9や主ロープ用ソケット12を有する楔式ロープ端末部品に固定する場合を説明したが、これに限定されるものではない。ロープ径16mm以上のコンペンロープ6を、ウェッジ9やコンペンロープ用ソケット13を有する楔式ロープ端末部品に固定する場合やロープ径12mm以下の主ロープ4やコンペンロープ6をウェッジ9やソケット10を有する楔式ロープ端末部品に固定する場合も、同様に、本実施例を使用することができる。
【0063】
このように、本実施例によれば、楔式ロープ端末部品8に、エレベーターなどで使用する主ロープ4の端部やコンペンロープ6の端部を固定する際、これらロープを局部的に傷付けることがなく、これらロープの品質を確保することができる。そして、これらロープが巻き掛けられた状態のウェッジ9を、ソケット(10、12、13)の内部の適切な位置まで引き込むことができる楔式ロープ端末部品の据付治具17を提供することができる。
【0064】
そして、特に、ロープ径16mm以上の太い主ロープ4の端部やロープ径16mm以上の太いコンペンロープ6の端部を固定する場合であっても、これらロープが巻き掛けられた状態のウェッジ9を、ソケット(12、13)の内部の適切な位置まで引き込むことができる。
【0065】
次に、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具と作業台とを組み合わせた状態を説明する。
【0066】
図9は、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具と作業台とを組み合わせた状態を説明する斜視図である。
【0067】
本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の据付治具17は、作業台25に設置される。これにより、作業者の身体に掛ける負担を軽減することができる。なお、ベース部材24と作業台25とは、ボルト28(
図5参照)にて、本実施例では2箇所で固定される。
【実施例2】
【0068】
次に、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の解体時における楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する。
【0069】
図10は、本実施例に記載する楔式ロープ端末部品の解体時における楔式ロープ端末部品の据付治具の要部を説明する平面図である。
【0070】
本実施例では、特に、ロープ径16mm以上の主ロープ4を、ウェッジ9や主ロープ用ソケット12を有する楔式ロープ端末部品8から取り外す場合を説明する。
【0071】
楔式ロープ端末部品8から主ロープ4を取り外す場合には、主ロープ用ソケット12を拘束し、ウェッジ9を移動(
図10中、左側から右側へ移動)させることが好ましい。
【0072】
そこで、本実施例では、まず、ソケット拘束部材26にて、主ロープ用ソケット12を拘束する。次に、引張部材19のボルト19bをウェッジ位置決め部材20の接触具20bに接触させるように、引張部材19をベース部材24に固定する。
【0073】
次に、ウェッジ位置決め部材20の締付具20aを弛緩させる。これにより、ウェッジ位置決め部材20の接触具20bは、ウェッジ位置決め部材20の長円孔20cの長さ方向に移動することができる。
【0074】
次に、ウェッジ位置決め部材20に接触する引張部材19を使用して、ウェッジ位置決め部材20を押し込む。つまり、ボルト19bを、スパナなど(図示なし)を使用して回転させ、ウェッジ位置決め部材20を移動させ、ウェッジ9の先端部9aを押し込む。
【0075】
これにより、主ロープ用ソケット12からウェッジ9を安全に取り外すことができる。
【0076】
なお、本実施例では、特に、ロープ径16mm以上の主ロープ4を、ウェッジ9や主ロープ用ソケット12を有する楔式ロープ端末部品から取り外す場合を説明したが、これに限定されるものではない。ロープ径16mm以上のコンペンロープ6を、ウェッジ9やコンペンロープ用ソケット13を有する楔式ロープ端末部品から取り外す場合やロープ径12mm以下の主ロープ4やコンペンロープ6をウェッジ9やソケット10を有する楔式ロープ端末部品から取り外す場合も、同様に、本実施例を使用することができる。
【0077】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、詳細かつ具体的に、説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成要件を有するものに限定されない。また、ある実施例の構成要件の一部を、他の実施例の構成要件の一部に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成要件に他の実施例の構成要件を加えることも可能である。また、各実施例の構成要件の一部について、他の構成要件の一部を、追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…昇降路、2…乗りかご、3…つり合いおもり、4…主ロープ、4a…負荷側、4b…無負荷側、5…巻上機、6…コンペンロープ、6a…負荷側、6b…無負荷側、7…コンペンプーリー、8…楔式ロープ端末部品、9…ウェッジ、9a…先端部、10…ソケット、12…主ロープ用ソケット、13…コンペンロープ用ソケット、17…楔式ロープ端末部品の据付治具、18…ロープ保持部材、19…引張部材、20…ウェッジ位置決め部材、21…ソケット位置決め部材、22…ソケット保持部材、23…ソケット設置高さ調整部材、24…ベース部材、25…作業台、26…ソケット拘束部材、27…切欠き、28…ボルト。