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特許7109684含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/04 20060101AFI20220722BHJP
   A61K 31/506 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 35/04 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 31/04 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20220722BHJP
   A61P 1/18 20060101ALN20220722BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
A61K31/506
A61P35/04
A61P35/02
A61P35/00
A61P31/04
A61P13/12
A61P9/10
A61P1/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021553686
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(86)【国際出願番号】 JP2020040661
(87)【国際公開番号】W WO2021085540
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019199807
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145313
【氏名又は名称】ユニマテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】清野 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】青津 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小金 敬介
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-506746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0018353(US,A1)
【文献】国際公開第2020/116296(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 405/04
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)または(2)で表される、含フッ素ピリミジン化合物。
【化1】

(上記一般式(1)および(2)において、
Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ニトロ基、-SO(mは0~3の整数である)、または-COOA を表し、 は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基を表す。)
【請求項2】
(a)下記一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(4)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、または
【化2】

(b)下記一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(5)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(2)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、
【化3】

(上記一般式(1)~(5)において、
Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ニトロ基、-SO(mは0~3の整数である)、または-COOA を表し、 は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基を表す。)
を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【請求項3】
(c)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(4)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、または
【化4】

(d)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(5)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(2)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、
【化5】

(上記一般式(1)~(2)および(4)~(6)において、
Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ニトロ基、-SO(mは0~3の整数である)、または-COOA を表し、
Zは、ハロゲン原子、-OA 、-SO (mは0~3の整数である)、または-NA を表し、
は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、またはt-ブチル基を表し、
、A はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ピリミジン化合物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、含フッ素ピリミジン化合物は種々の生物活性を有することが報告されている。なかでも、ピリミジン環の2位にフラン環構造を有する化合物について、医薬・農薬分野においての使用が有望視されている。
【0003】
より具体的には、非特許文献1には2-(2-フラニル)-ピリミジン構造を有する化合物が抗菌活性を有することが報告されており、非特許文献2には2-(2-フラニル)-ピリミジン構造を有する化合物が心不全や腎不全の治療に有効であることが報告されている。また、非特許文献3には2-(2-フラニル)-ピリミジン構造を有する化合物が急性骨髄性白血病の進行抑制や腫瘍の転移抑制に有効であること、非特許文献4には2-(2-フラニル)-ピリミジン構造を有する化合物が抗腫瘍活性を有することが報告されている。
【0004】
非特許文献5および6、ならびに特許文献1には2-(3-フラニル)-ピリミジン構造を有する化合物が抗腫瘍活性を有することが報告され、特許文献2には2-(3-フラニル)-ピリミジン構造を有する化合物が膵炎の治療に有効であることが報告されている。
【0005】
従来から、ピリミジン環の5位にトリフルオロメチル基を有し、4位および6位に置換基を有するピリミジン化合物の合成法が検討されている。より具体的には、非特許文献7にはトリフルオロヨードメタンを使用した合成法、非特許文献8にはトリフルオロ酢酸を使用した合成法、非特許文献9には5-(トリフルオロメチル)ジベンゾチオフェニウム塩(梅本試薬)を使用した合成法が報告されている。また、非特許文献10にはトリフルオロメタンスルホン酸誘導体を使用した合成法、特許文献3にはトリフルオロメタンスルフィン酸ナトリウム(Langlois試薬)を使用した合成法、特許文献4には(トリフルオロメチル)トリメチルシラン(Ruppert試薬)を使用した合成法が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第108503623号明細書
【文献】中国特許出願公開第108299465号明細書
【文献】中国特許出願公開第107286146号明細書
【文献】中国特許出願公開第108218793号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Journal of Heterocyclic Chemistry,2019年、56巻、485~492頁
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2019年、29巻、563~569頁
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2018年、61巻、6518~6545頁
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2018年、26巻、4234~4239頁
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2019年、62巻、1577~1592頁
【文献】Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry,2018年、33巻、1089~1094頁
【文献】Chemical Communications,2018年、54巻、13662~13665頁
【文献】ACS Catalysis,2018年、8巻、2839~2843頁
【文献】Organic Letters,2018年、20巻、1693~1697頁
【文献】Nature,2011年、480巻、224~228頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
2-フラニル-ピリミジン構造を有する化合物について、その生物活性や構造拡張性の更なる向上を目的としてピリミジン環構造の4位、5位、および6位に置換基を有する化合物が有望視されている。
【0009】
しかし、従来、反応性や選択性の面から、5位に含フッ素置換基を、2位に置換基として複素環を有し、4位および6位に置換基を有する含フッ素ピリミジン化合物の製造は困難であり、このような含フッ素ピリミジン化合物は報告されていなかった。このため、4位、5位、および6位に置換基を有し、2位にフラン環構造を有する含フッ素ピリミジン化合物、およびその製造方法を確立することが望まれていた。
【0010】
そこで、本発明者らは、特定の原料を反応させることにより、ピリミジン環上の2つの窒素原子の間の2位にフラン環構造を導入できることを発見し、本発明を完成させるに至ったものである。すなわち、本発明は、従来から知られていなかった、4位、5位、および6位に置換基を有し、2位に置換基としてフラン環構造を有する新規な含フッ素ピリミジン化合物、および、該含フッ素ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]下記一般式(1)または(2)で表される、含フッ素ピリミジン化合物。
【化1】
(上記一般式(1)および(2)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOA、または-CONAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
[2]前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、上記[1]に記載の含フッ素ピリミジン化合物。
[3](a)下記一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(4)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、または
【化2】
(b)下記一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(5)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(2)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、
【化3】
(上記一般式(1)~(5)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOA、または-CONAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
[4](c)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(4)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、または
【化4】
(d)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(5)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(2)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、
【化5】
(上記一般式(1)~(2)および(4)~(6)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOA、または-CONAを表し、
Zは、ハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、
、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
を有する、含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
[5]前記Rは、炭素数1~10のアルキル基である、上記[3]または[4]に記載の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
4位、5位、および6位に置換基を有し、2位に置換基としてフラン環構造を有する、新規な含フッ素ピリミジン化合物、および、該含フッ素ピリミジン化合物を簡易的に製造することが可能な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(含フッ素ピリミジン化合物)
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物は下記一般式(1)または(2)で表される。
【化6】
(上記一般式(1)および(2)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOA、または-CONAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)。一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物ではピリミジン環の2位に置換基として、単環のフリル基が存在しても良いし、フラン環を一部に含む縮合複素環基が存在してもよい。
【0014】
Rは炭素数1~12の、炭素原子および水素原子からなる炭化水素基であれば特に限定されず、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基などを挙げることができる。鎖状炭化水素基は合計の炭素数が1~12であれば特に限定されず、分岐した鎖状炭化水素基であっても、分岐していない鎖状炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は合計の炭素数が5~12であれば特に限定されず、置換基を有する芳香族炭化水素基であっても、置換基を有さない芳香族炭化水素基であってもよい。また、芳香族炭化水素基は、縮合多環構造を有していてもよい。脂環式炭化水素基は合計の炭素数が3~12であれば特に限定されず、置換基を有する脂環式炭化水素基であっても、置換基を有さない脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は、橋かけ環構造を有していてもよい。
【0015】
鎖状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等のアルキニル基等を挙げることができる。
【0016】
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0017】
脂環式炭化水素基としては、飽和又は不飽和の環状の炭化水素基が挙げられ、環状の炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等を挙げることができる。
【0018】
好ましくはRは、炭素数1~10のアルキル基であるのがよい。Rが炭素数1~10のアルキル基であることにより、含フッ素ピリミジン化合物の原料である一般式(3)のフルオロイソブチレン誘導体、および一般式(6)のフルオロイソブタン誘導体を容易に調製することができる。
【0019】
X、Yであるハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iを挙げることができる。X、Yである-OA、-SO(mは0~3の整数である)に含まれるAは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。X、Yである-NAに含まれるA、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A、Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。より具体的には、-SOは、メタンスルフォニル基とすることができる。
【0020】
X、Yである-COOAに含まれるAは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基であり、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。より具体的には、-COOAは、メトキシカルボニル基とすることができる。
【0021】
X、Yである-CONAに含まれるA、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。A、Aが炭素数1~10の炭化水素基を表す場合、例えば、上記Rの中で炭素数が1~10の炭化水素基とすることができる。XおよびYは水素原子であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)および(2)において、フラン環構造上に置換基として存在するX、Yが隣接する場合、XとYが互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成しても良い。XとYが結合して環を形成する場合には、ピリミジン環上の2位に置換基として、酸素原子を含む縮合複素環基が存在する含フッ素ピリミジン化合物を挙げることができる。この場合、ピリミジン環上の2位に存在する置換基としては、ベンゾフラニル基を挙げることができる。一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物は、ピリミジン環の2位に特定の置換基(フリル基またはフラン環を一部に含む縮合複素環基)、ピリミジン環の4位、5位、および6位上に特定の置換基(-OR、-CF、-F)を有するため、構造拡張性の観点から優れた効果を有することができる。特に、所望の生物活性(例えば、ホルモンや酵素の阻害活性、殺菌活性、殺虫活性、除草活性)を期待できる。ピリミジン環の2位上に位置するフラン環構造は2-フリル基、3-フリル基、またはフラン環を一部に含む縮合複素環基として存在し、該フラン環構造はさらに置換基を有していても、有していなくてもよい。フラン環構造が置換基を有することにより、一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物に更なる特性を付与することができる。また、ピリミジン環の4位および6位上の置換基は異なる基(-ORと-F)であるため、非対称な構造へ容易に誘導体化を行うことができ、中間体としての使用も期待することができる。より具体的には、酸性条件下で含フッ素ピリミジン化合物を反応させることにより-ORを修飾して誘導体を得ることができる。また、塩基性条件下で含フッ素ピリミジン化合物を反応させることにより-Fを修飾して誘導体を得ることができる。一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物は例えば、有機半導体、液晶などの電子材料の分野において有用である。
【0023】
(含フッ素ピリミジン化合物の製造方法)
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法は、
(a)下記一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(4)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、または
【化7】
(b)下記一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、下記一般式(5)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(2)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、
【化8】
(上記一般式(1)~(5)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOA、または-CONAを表し、A、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
を有する。
【0024】
上記一般式(1)~(3)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。また、工程(a)および(b)の一般式(1)、(2)、(4)および(5)において、上述したように、XおよびYが隣接する場合には、XおよびYは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
【0025】
一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(4)で表される化合物との、上記(a)の反応は、下記反応式(A)として表される。
【化9】
【0026】
一般式(3)で表されるフルオロイソブチレン誘導体と、一般式(5)で表される化合物との、上記(b)の反応は、下記反応式(B)として表される。
【化10】
【0027】
上記反応式(A)および(B)において、一般式(4)および(5)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(4)および(5)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0028】
一実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法では例えば、ハロゲン化水素捕捉剤の存在下で上記(a)および(b)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)および(2)の含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記(a)および(b)の反応では、フルオロイソブチレン誘導体と、一般式(4)および(5)の化合物のアミジノ基との間で環状のピリミジン構造が形成される。該ピリミジン構造の2位には、一般式(4)および(5)の化合物のフラン環構造に由来する基が位置する。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブチレン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0029】
ハロゲン化水素捕捉剤は、上記(A)および(B)の反応式において一般式(4)および(5)の化合物中のアミジノ基に由来する水素原子と、(3)のフルオロイソブチレン誘導体に由来するフッ素原子とから形成されるフッ化水素(HF)を捕捉する機能を有する物質である。ハロゲン化水素捕捉剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムや、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、メチルトリアザビシクロデセン、ジアザビシクロオクタンといった有機窒素誘導体を用いることができる。
【0030】
上記(a)および(b)の反応時の反応温度は、0~80℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~25℃がさらに好ましい。上記(a)および(b)の反応時の反応時間は、8~72時間が好ましく、12~48時間がより好ましく、16~36時間がさらに好ましい。
【0031】
上記(a)および(b)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(a)および(b)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0032】
他の実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法は、
(c)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(4)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(1)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、または
【化11】
(d)下記一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、下記一般式(5)で表される化合物またはその塩とを反応させることにより、下記一般式(2)で表される含フッ素ピリミジン化合物を得る工程、
【化12】
(上記一般式(1)~(2)および(4)~(6)において、
Rは炭素数1~12の炭化水素基を表し、
XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、-C2n+1(nは1~10の整数である)、ニトロ基、ボロン酸基、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、-NA、-COOA、または-CONAを表し、
Zは、ハロゲン原子、-OA、-SO(mは0~3の整数である)、または-NAを表し、
、Aはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を表す。)
を有する。
【0033】
上記工程(c)および(d)の一般式(1)~(2)および(4)~(6)の化合物におけるA、Aとしては具体的に、上記工程(a)および(b)の一般式(1)および(2)の化合物におけるA、Aと同様のものとすることができる。
【0034】
上記一般式(1)、(2)および(6)におけるRは炭素数1~10のアルキル基を表すことが好ましい。また、工程(c)および(d)の一般式(1)、(2)、(4)および(5)において、上述したように、XおよびYが隣接する場合には、XおよびYは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。
【0035】
一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(4)で表される化合物との、上記(c)の反応は、下記反応式(C)として表される。
【化13】
【0036】
一般式(6)で表されるフルオロイソブタン誘導体と、一般式(5)で表される化合物との、上記(d)の反応は、下記反応式(D)として表される。
【化14】
【0037】
上記反応式(C)~(D)において、一般式(4)および(5)の化合物はそれぞれ、塩の形態であってもよい。塩の形態となる場合、一般式(4)および(5)の化合物のアミジノ基を構成するアミノ部分(-NH)およびイミノ部分(=NH)のうち少なくとも一方の部分が、カチオン化され(-NH )および(=NH )となり、対イオンと塩を形成する形態を挙げることができる。対イオンは1価のアニオンであれば特に限定されず、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物イオンを挙げることができる。
【0038】
他の実施形態の含フッ素ピリミジン化合物の製造方法では例えば、上記(C)および(D)の反応を一段階で行うことができる。このため、簡易的に上記一般式(1)および(2)の含フッ素ピリミジン化合物を得ることができる。なお、上記(c)および(d)の反応では、フルオロイソブタン誘導体と、一般式(4)および(5)の化合物のアミジノ基との間で環状のピリミジン構造が形成される。該ピリミジン構造の2位には、一般式(4)および(5)の化合物のフラン環構造に由来する基が位置する。また、該ピリミジン構造の4位、5位および6位にはそれぞれ、フルオロイソブタン誘導体に由来する-OR、CF、およびFが位置する。
【0039】
上記(c)および(d)の反応時の反応温度は、0~80℃が好ましく、5~50℃がより好ましく、10~25℃がさらに好ましい。上記(c)および(d)の反応時の反応時間は、8~72時間が好ましく、12~48時間がより好ましく、16~36時間がさらに好ましい。上記(c)および(d)の反応では、上記(a)および(b)と同様のハロゲン化水素捕捉剤を使用できる。
【0040】
上記(c)および(d)の反応で使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、ジメチルエチレン尿素、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、スルホランといった非プロトン性極性溶媒、または、水といったプロトン性極性溶媒とジクロロメタン、トルエン、ジエチルエーテルといった非水溶性溶媒との二相系溶媒などを挙げることができる。また、上記(c)および(d)の反応の触媒として、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドといった第四級アンモニウムハライド、第四級ホスホニウムハライド、クラウンエーテル類などを使用することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0042】
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、ジクロロメタン75g、水75gに2-アミジノフラン塩酸塩25g(0.15mol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン25g(0.12mol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないように5N 水酸化ナトリウム水溶液(ハロゲン化水素捕捉剤)120ml(0.60mol)を滴下し、室温まで昇温した。約16時間撹拌した後、有機相を分取した。有機相のジクロロメタンを減圧留去後、酢酸エチルに溶解させた溶液のカラム精製を行い、下記式(E)で表される目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)4.6gを得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は14%であった。
【化15】
【0044】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):262([M]
H-NMR(300MHz、CDCl) δppm:7.68(s,1H)、7.45(d,1H)、7.26(s,1H)、4.20(s,3H)19F-NMR(300MHz、C) δppm:-58.44(d,3F)、-61.22(dd,1F)
【0045】
(実施例2)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、ジクロロメタン75g、水75gに3-アミジノフラン塩酸塩10g(61mmol)、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン11g(55mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないように5N 水酸化ナトリウム水溶液(ハロゲン化水素捕捉剤)48ml(0.24mol)を滴下し、室温まで昇温した。約16時間撹拌した後、有機相を分取した。有機相のジクロロメタンを減圧留去後、酢酸エチルに溶解させた溶液のカラム精製を行い、下記式(F)で表される目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)2.0gを得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は14%であった。
【化16】
【0046】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCl、m/z):262([M]
H-NMR(300MHz、CDCl) δppm:8.29(s,1H)、7.50(s,1H)、7.01(d,1H)、4.17(s,3H)19F-NMR(300MHz、C) δppm:-58.43(d,3F)、-62.14(dd,1F)
【0047】
(実施例3)
実施例1の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、ジクロロメタン75g、水75gに2-アミジノフラン塩酸塩25g(0.15mol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン28g(0.12mol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないように5N 水酸化ナトリウム水溶液(ハロゲン化水素捕捉剤)150ml(0.75mol)を滴下し、室温まで昇温した。約16時間撹拌した後、有機相を分取した。有機相のジクロロメタンを減圧留去後、酢酸エチルに溶解させた溶液のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例1の生成物と同様であった。
【0048】
(実施例4)
実施例2の1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペンの代わりに、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパンを使用した、6-フルオロ-4-メトキシ-2-(3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
氷水冷下、ジクロロメタン75g、水75gに3-アミジノフラン塩酸塩10g(61mmol)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロ-3-メトキシ-2-トリフルオロメチル-プロパン13g(55mmol)を加えた。続いて、内温が10℃を越えないように5N 水酸化ナトリウム水溶液(ハロゲン化水素捕捉剤)62ml(0.31mol)を滴下し、室温まで昇温した。約16時間撹拌した後、有機相を分取した。有機相のジクロロメタンを減圧留去後、酢酸エチルに溶解させた溶液のカラム精製を行った。得られた化合物の分析結果は、実施例2の生成物と同様であった。
【0049】
(実施例5)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-クロロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
5-クロロフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.7g(3.8 mmol)をアセトニトリル38mlに溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.9g(4.2mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン2.6g(20.1mmol)を加え室温で16.5時間撹拌して、下記式(G)で表される式により、5-クロロフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-クロロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.8g(2.7mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-クロロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-クロロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は72.1%であった。
【化17】
【0050】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):296.0[M+H]
H-NMR(400MHz、CDCl) δ7.42(d,J=3.7Hz,1H)、6.41(d,J=3.4Hz,1H)、4.19(s,3H)
【0051】
(実施例6)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ブロモ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
5-ブロモフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.6g(2.7mmol)をアセトニトリル27ml中に溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.7g(3.3mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.8g(13.9mmol)を加え室温で20.7時間撹拌して、下記式(H)で表される式により、5-ブロモフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ブロモ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.7g(2.0mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ブロモ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ブロモ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は75.3%であった。
【化18】
【0052】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):339.9[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl) δ7.39(d,J=3.4Hz,1H)、6.55(d,J=3.7Hz,1H)、4.19(s,3H)
【0053】
(実施例7)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メチル-3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
2-メチルフラン-3-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.3g(1.8mmol)をアセトニトリル18ml中に溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.4g(1.9mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.2g(9.3mmol)を加え室温で23.7時間撹拌して、下記式(I)で表される式により、2-メチルフラン-3-カルボキシイミドアミド塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メチル-3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.02g(0.05mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メチル-3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メチル-3-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は3.0%であった。
【化19】
【0054】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):277.0[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl) δ7.32(d,J=2.1Hz,1H)、6.97(d,J=4.1Hz,1H)、4.16(s,3H)、2.77(s,3H)
【0055】
(実施例8)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ニトロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
5-ニトロフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.6g(3.2mmol)をアセトニトリル34ml中に溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.8g(3.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン2.3g(17.8mmol)を加え室温で23.8時間撹拌して、下記式(J)で表される式により、5-ニトロフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ニトロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.4g(1.1mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ニトロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ニトロ-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は34.1%であった。
【化20】
【0056】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):306.8[M-H]
H-NMR(400MHz,CDCl) δ7.54(d,J=3.7Hz,1H)、7.44(d,J=4.0Hz,1H)、4.26(s,3H)
【0057】
(実施例9)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-メタンスルフォニル-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
5-メタンスルフォニルフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.5g(2.3mmol)をアセトニトリル23ml中に溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.5g(11.6mmol)を加え室温で23.5時間撹拌して、下記式(K)で表される式により、5-メタンスルフォニルフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-メタンスルフォニル-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.4g(1.2mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-メタンスルフォニル-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-メタンスルフォニル-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は50.9%であった。
【化21】
【0058】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):341.2[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl) δ7.49(d,J=3.7Hz,1H)、7.31(d,J=3.7Hz,1H)、4.23(s,3H)、3.27(s,3H)
【0059】
(実施例10)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メトキシカルボニル-4-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
5-カルバムイミドイルフラン-2-カルボン酸メチル塩酸塩0.6g(3.0mmol)をアセトニトリル30ml中に溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.7g(3.3mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン2.0g(15.5mmol)を加え室温で16時間撹拌して、下記式(L)で表される式により、5-カルバムイミドイルフラン-2-カルボン酸メチル塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メトキシカルボニル-4-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.2g(0.5mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メトキシカルボニル-4-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(2-メトキシカルボニル-4-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は16.2%であった。
【化22】
【0060】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):321.5[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl) δ8.38(d,J=1.0Hz,1H)、7.76(d,J=0.8Hz,1H)、4.19(s,3H)、3.95(s,3H)
【0061】
(実施例11)
6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ヨード-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの製造
5-ヨードフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩0.5g(1.9mmol)をアセトニトリル26ml中に溶解させてアセトニトリル溶液を調製した。該アセトニトリル溶液中に1,3,3,3-テトラフルオロ-1-メトキシ-2-トリフルオロメチル-1-プロペン0.6g(2.8mmol)とN,N-ジイソプロピルエチルアミン1.7g(13.2mmol)を加え室温で16.7時間撹拌して、下記式(M)で表される式により、5-ヨードフラン-2-カルボキシイミドアミド塩酸塩から6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ヨード-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンを得た。この後、反応後の液をカラム精製して、0.5g(1.2mmol)の目的物(6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ヨード-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジン)を得た。6-フルオロ-4-メトキシ-2-(5-ヨード-2-フラニル)-5-トリフルオロメチルピリミジンの単離収率は66.3%であった。
【化23】
【0062】
得られた目的物の分析結果は、下記の通りであった。
マススペクトル(APCIMS、m/z):387.6[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl) δ7.32(d,J=3.7Hz,1H)、6.78(d,J=3.4Hz,1H)、4.19(s,3H)