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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】無重力空間において使用可能なハンガー
(51)【国際特許分類】
   A47G 25/48 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A47G25/48
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022026030
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2022-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522070949
【氏名又は名称】辻 紅那
(72)【発明者】
【氏名】辻 紅那
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-27853(JP,A)
【文献】実開平6-65436(JP,U)
【文献】実開平5-53579(JP,U)
【文献】実開昭53-114420(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 25/00-25/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類用ハンガーにおいて、
ハンガー本体と、
当該ハンガー本体の左右の肩先底面に下向きに接続され、長さ調節手段を有する左右一対の縦軸と、
当該縦軸の下方先端部に嵌合手段により左右の端部が取り付けられた横軸と、
当該横軸に、その挟持部がハンガー本体方向に向いて、摺動可能に挿着された左右一対クリップと、
当該ハンガー本体の首元部と当該クリップの挟持部外側の同一方向の面で、壁面などの取付面に当該ハンガーを係止するため、当該首元部の少なくとも正面又は背面のいずれか一方と当該挟持部外側の片面又は両面に止着された係止手段と、を備えることを特徴とする無重力空間において使用可能なハンガー。
【請求項2】
前記ハンガー本体は、
前記左右の肩先底面において、前記縦軸の一方の下方先端部が他方の縦軸の方向に90度回動して折り畳めるように当該縦軸の上方先端部を回動自在に接続する左右の接続部と、
当該縦軸の一方の上方先端部と下方先端部を当該縦軸の長さが前記長さ調節手段により最短にされた状態でそれぞれ嵌め入れて収納でき、当該ハンガー本体の底面において中央方向に向かって深さが浅くなるように当該左右の肩先底面に設けられた略溝状の凹部と、
収納時に前記ハンガーから前記嵌合手段により取り外された横軸を嵌めて差し込むために当該ハンガー本体中央の首元部上部の凸状部を横切るよう凹設された溝部と、を備え、
当該接続部の一方が当該略溝状の凹部内の肩先端部側に、他方が当該略溝状の凹部外側の肩先端部側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の無重力空間においても使用可能なハンガー。
【請求項3】
前記ハンガー本体の肩先底面に設けられた前記縦軸との接続部は、前記ハンガー本体の左右の肩先底面にそれぞれ凸状に設けられた先端が略半円形状の各2枚の突起片であり、当該縦軸の上方先端部に凸状に設けられた先端が略半円形状の突起片の先端を挿入できるように当該2枚の突起片間の間隔が開けられ、当該2枚の突起片の間に当該縦軸側の突起片を回動可能に挿入するためジョイントボルトで各突起片を螺着し、且つ当該肩先底面に設けられた突起片と当該縦軸側の突起片に当該縦軸が当該肩先底面に対し90度の位置で保持されるようにストッパーが設けられたことを特徴とする請求項2に記載の無重力空間においても使用可能なハンガー。
【請求項4】
前記縦軸が中空円筒状の外軸と当該外軸に挿通される内軸からなり、前記長さ調節手段は、当該外軸の外面に軸方向に一定間隔に設けられた複数の係合孔と、内軸の先端近傍に弾性部材により付勢可能に取り付けられた係合ピンとを含み、内軸を外軸内でスライドし当該係合ピンを当該複数の係合孔の内特定の位置にある係合孔に合わせて係合することで当該縦軸の長さを調節することを特徴とする請求項1または2に記載の無重力空間においても使用可能なハンガー。
【請求項5】
前記係止手段が面ファスナーであることを特徴とする請求項1に記載の無重力空間においても使用可能なハンガー。
【請求項6】
前記横軸と縦軸の嵌合手段は、前記左右一対の縦軸の先端に形成されたフック形状の凹部と、当該横軸の両端に形成され、当該凹部に嵌合により着脱が容易にできる軸径を有する断面円形状の嵌合軸と、
当該嵌合軸の先端に設けられた縦軸からの脱離防止用の略球形状の突起部と、を特徴とする請求項1または2に記載の無重力空間においても使用可能なハンガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無重力空間においても使用可能なハンガーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際宇宙ステーション(以下「ISS」という。)は寒さに強い欧米のクルーが多いため空調の気温設定が低くなっているので、フリースやパーカーなどの上着等の衣類を着る宇宙飛行士がいる。そのようなクルーは衣類を脱ぎ着することが多く、そのたびに収納庫に収納することができないので、一時的に簡単に使用でき狭い船内で邪魔にならないハンガーのような収納具が必要である。また、当該収納具も宇宙飛行士毎に船内に持ち込むことも、運搬、収納上制約があり、一台で多くの宇宙飛行士が利用できるものが望まれる。
【0003】
地上、即ち重力下で通常使用されているハンガーは、中央の略山形状の首元部と首元部から左右対称に延在する着衣掛け部(以下、「肩」又は「肩部」という。)と首元部の頂部に取り付けられてハンガーをハンガーポール等に吊す吊り金具(以下、「フック」という。)からなり、フックによりハンガーポール等に懸架したハンガーに掛けられた上着等の衣類は重力により下方に引っ張られるため、特別に外力が働かない限り安定して上着など一時収納が可能である。
【0004】
ISS等の無重力空間では、たとえハンガーポールのようなハンガーを掛けられる突起部を船内に設けて、ハンガーのフックを突起部に懸架しても、ハンガーが浮遊してしまい衣類の一時収納には不向きである。現時点で宇宙用のハンガーは作られておらず、国際宇宙ステーションでは衣類は使い捨てにされている。
【0005】
特許文献1では、フックが使用できないような自動車内の壁面等にハンガーを取り付けることができるハンガーの係止手段について開示されている。本考案に係るハンガーをISS等の無重力空間で利用すれば、ハンガー本体は船内の壁面等に係止されて浮遊防止が可能である。
【0006】
しかし、フリース等の衣類を装着した前記ハンガーをISS等の船内の壁に係止した場合に、ハンガー本体やハンガーに装着した衣類の上部の肩部付近は船内の壁面に固定されるも、無重力下では衣類の胴部や裾部は浮いて動くため、ハンガーの係止状態が不安定になり、且つ上着の胴部や裾部が動くことはISS等の船内での活動に支障を来すおそれがある。
【0007】
特許文献2では、シャツとスカートを同時にかける、ハンガー本体とクリップが一体になったハンガーが開示されている。これは2本の縦部材にクリップを付けた横棒を取り付けられたハンガーである。ただしこの機構ではかさばってしまい、未使用時の収納がしにくいという問題があった。また、特許文献2に係るハンガーは、地上、即ち重力空間で使用するものであり、重力により下向きの力が働くため、衣類を装着したハンガーをフックによりハンガーパイプに懸架して係止できるが、無重力空間ではこのような衣類の係止手段は使用できず、ハンガー懸架用のフックも無重力空間では衣類を装着したハンガーの係止手段としては適していないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開平5-53579号公報
【文献】特開平08-070977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
宇宙空間では重力がないので地上と同じハンガーは使用できない。そこで、挟持手段で下部から衣類を引っ張る機構を備えたハンガーが求められる。
【0010】
従来のクリップ付きのハンガーは大きく、持ち運びや輸送に適していない。また、組立方法が複雑だと組立時間がかかってしまい、使用者の負担になる。したがって、ハンガー及びその部品等をまとめて収納でき持ち運び容易なハンガーが求められる。
【0011】
無重力下ではハンガーが宇宙船内で浮遊してしまい、諸活動の邪魔になる。そこで、ハンガーの宇宙船内での浮遊を防止する手段が設けられたハンガーが必要である。
【0012】
従来の縦軸付きのハンガーは、ハンガーの長さなどサイズ調節が出来ず、一定サイズの服しかかけられないので、サイズ分のハンガーを製作する必要がある。そこで、長さなどハンガーのサイズを容易に変更できるハンガーが求められる。
【0013】
そこで、本発明は、無重力空間でハンガー自体が浮遊せず、ハンガーに装着した衣類の裾などが動かず、衣類のサイズに対応し、長さなどハンガーのサイズを容易に変更でき、ハンガー本体と部品等をまとめて収納でき持ち運び容易なハンガーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は前記課題を解決するために、ハンガー本体の肩先底面に、折りたたみ可能で長さが調節可能な左右一対の縦軸が接続され、左右の縦軸の下方先端部に左右一対クリップが挿嵌された横軸がその両端で嵌合され、ハンガー本体の首元部と当該クリップ挟持部外側に衣類を装着したハンガーを壁面に止める係止手段が設けられ、当該ハンガー本体の左右の肩先底面側に折り畳まれた当該縦軸の一方の一部を挿入して収納する略溝状の凹部と首元部上部に横軸を挿通して収納する溝部が設けられたハンガーにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
なお、宇宙のような無重力空間では「上下」はないが、本発明に係るハンガーの説明上、ハンガー本体から見て前記左右の縦軸や横軸方向を下の方向とし、当該縦軸や横軸側から見てハンガー本体は上の方向とする。
【0016】
即ち、本発明は、衣類用ハンガーにおいて、ハンガー本体と、当該ハンガー本体の左右の肩先底面に接続され、長さ調節手段を有する左右一対の縦軸と、当該縦軸の下方先端部に嵌合手段により左右の端部が取り付けられた横軸と、当該横軸にその挟持部がハンガー本体方向に向いて、摺動可能に挿嵌された一対のクリップと、当該ハンガー本体の首元部と当該クリップの挟持部外側の同一方向の面で、壁面などのハンガー取付面に当該ハンガーを係止するため当該首元部の少なくとも正面又は背面のいずれか一方と当該挟持部外側の片面又は両面に止着された係止手段と、を備えることを特徴とする無重力空間において使用可能なハンガーである。
【0017】
更に、本発明は、前記ハンガー本体は、前記左右の肩先底面において前記縦軸のうち一方の下方先端部が他方の縦軸の方向に90度回動して折り畳めるように当該縦軸の上方先端部を回動自在に接続する接続部と、当該縦軸の一方の上方先端部と下方先端部を当該縦軸の長さが前記長さ調節手段により最短にされた状態でそれぞれ嵌め入れて収納でき、当該ハンガー本体の底面における中央方向に向かって深さが浅くなるように当該左右の肩先底面に設けられた略溝状の凹部と、収納時に前記ハンガーから前記嵌合手段により取り外された横軸を嵌め差し込むために当該ハンガー本体中央の首元部上部の凸状部を横切るよう凹設された溝部と、を備え、当該接続部の一方が当該略溝状の凹部内の肩先端部側に、他方が当該略溝状の凹部外側の肩先端部側に設けられたことを特徴とする無重力空間においても使用可能なハンガーである。
【0018】
また、本発明は 前記ハンガー本体の肩先底面に設けられた前記縦軸との接続部は、前記ハンガー本体の左右の肩先底面にそれぞれ凸状に設けられた先端が略半円形状の各2枚の突起片であり、当該縦軸の上方先端部に凸状に設けられた先端が略半円形状の突起片の先端を挿入できるように当該2枚の突起片間の間隔が開けられ、当該2枚の突起片の間に当該縦軸側の突起片を回動可能に挿入するためジョイントボルトで各突起片を螺着し、且つ当該肩先底面に設けられた突起片と当該縦軸側の突起片に当該縦軸が当該肩先底面に対し90度の位置で保持されるようにストッパーが設けられたことを特徴とする無重力空間においても使用可能なハンガーである。
【0019】
更にまた、本発明は、前記縦軸が中空円筒状の外軸と当該外軸に挿通される内軸からなり、前記長さ調節手段は、当該外軸の外面に軸方向に一定間隔に設けられた複数の係合孔と、内軸の先端近傍に弾性部材により付勢可能に取り付けられた係合ピンとを含み、内軸を外軸内でスライドし当該係合ピンを当該複数の係合孔の内特定の位置にある係合孔に合わせて係合することで当該縦軸の長さを調節することを特徴とする無重力空間においても使用可能なハンガーである。
【0020】
また、本発明によれば、ハンガー本体の肩先底部に接続された左右一対の縦軸の下方先端部にその両端が嵌合された横軸に摺動可能に挿嵌された左右一対のクリップにより、本発明に係るハンガーに掛けられた衣類の裾を挟持することができる。更に左右一対の縦軸の長さ調節手段を利用して当該縦軸の長さを本ハンガーに装着した衣類の身丈に合わせて調節し、当該裾を下方に引っ張るようにクリップで挟持できるので、当該ハンガーをISS内の壁などに係止したときに、当該ハンガーに装着した衣類の胴部や裾が無重力空間で浮遊しないようにすることができ、また、当該縦軸の長さ調節手段により衣類の大小に対応して、当該ハンガー全体の長さを調節できるので、異なるサイズの衣類でも一つのハンガーで対応できる。
【0021】
更に、本発明によれば、本発明に係るハンガーは、前記ハンガー本体の左右の肩先底面の縦軸との接続部周辺に設けられた肩先方向に深くなる溝状の凹部に、長さ調節手段により最短の長さとなった一方の縦軸の下方先端部とハンガー本体と接続する上方先端部を、当該縦軸の折りたたみ時にそれぞれ嵌め込むことができ、一対の縦軸が相互に干渉せず邪魔にならずに、収納時に左右一対の縦軸をハンガー本体の底面下に折り畳むことができる。また、本発明に係るハンガーは、当該ハンガー本体の首元部の上部の凸状部に横切るように凹設された断面凹形状の溝部に、収納時にハンガー本体から取り外された横軸を差し込み収納できる。更に横軸から取り外された一対のクリップは、当該溝部に挿嵌された横軸の下側と左右のハンガー本体の左右の肩部上側のハンガー正面視略三角形状二つの空間にそれぞれ嵌挿して収納できる。
【0022】
本発明によれば、首元部の少なくとも正面又は背面のいずれか一方と、当該左右一対のクリップの挟持部外側の片面又は両面の少なくとも三箇所に設けた係止手段によって、ISS内の壁面に上着等の衣類を装着したハンガー全体を係止することにより、フックを係止手段とする通常のハンガーではできない浮遊防止を可能とし、ハンガー本体の首元部のみに壁面との係止部を設けたハンガーに比べ、ハンガー本体以外の部分がISS内等の無重力空間で壁面から浮くことなく固定できる。
【0023】
前記縦軸の外軸太軸に複数の穴を開けておくことにより、縦軸の長さを調整でき、様々な大きさのシャツに対応することができる。クリップの位置は横軸の範囲を自由に動かせるため、袖を挟んだり、様々な形状の服に対応できたりする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るハンガーの係止手段と、ハンガー本体に衣類をかけ、縦軸の長さ調節手段を用いて横軸に挿嵌されたクリップで裾を引っ張ることで、無重力下でもハンガーや衣類の浮遊を防ぎ、本発明に係る衣類ハンガーの使用が可能になる。今後は宇宙旅行産業がより活発化していくと考えられている。その中で身だしなみの確保や好きな衣類を着たいという人がいるかもしれないが、この発明によってしわの付きやすい衣類が宇宙に持ち込めたり、宇宙に持ち出せる衣類の種類を増やしたりすることが出来る。
【0025】
本発明に係るハンガーの縦軸及び横軸は収納や分解が可能なためコンパクトに持ち運びができるので、宇宙船等の使用場所までの輸送費が削減でき、且つ未使用時の保管が容易になる。また、軸を回動させて伸ばすだけで組み立てられるので、組み立ての手順が簡単で手間をかけずに組み立てられる。
【0026】
縦軸の長さ調節機能により、ハンガー本体とクリップ部の距離を変えることができる。これにより、1つのハンガーで様々なサイズの衣類に対応し、複数人の服や多種多様な衣類をかけられる。
【0027】
ハンガー本体の首元部の少なくとも正面又は背面のいずれか一方と、左右一対のクリップの挟持部外側の片面又は両面に、係止手段を取り付けている。これにより上着を装着したハンガーが、浮遊して邪魔になることを防止する。また、係止手段が一個所のみであるとハンガーが動いてしまい無重力空間で使用ができないが、係止手段が三か所に取り付けられ3点支持となっているため、衣類を装着したハンガー全体の宇宙船内での係止状態が安定し、本発明に係るハンガーが無重力空間で使用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は本発明に係るハンガーの使用時の形態を示す斜視図である。
図2図2は本発明に係るハンガーの収納時の形態を示す斜視図である。
図3図3はハンガー本体を切り取った断面図である。
図4図4はハンガー本体と縦軸を接続するハンガー正面に向かって左側の接続部周辺を示した斜視図である。
図5図5はハンガー正面に向かって左側の縦軸を構成する外軸の詳細を示した説明図である。
図6図6は縦軸の詳細を示した説明図である。
図7図7は縦軸の内部構造で弾性部材により付勢される係合ピンを示した説明図である。
図8図8は横軸周辺の詳細を示した斜視図である。
図9図9はハンガー本体肩先底面のハンガー正面に向かって左側の接続部の突起片と略溝状の凹部等の周辺の詳細を示した説明図である。
図10図10はハンガー正面に向かって左側の縦軸の外軸のハンガー本体と接続する上方先端部の突起片等周辺を示した説明図である。
図11図11(A)~(E)は収納順序を示した説明図である。
図12図12(A)~(E)は組立順序を示した説明図である。
図13図13は実施例2のハンガー正面に向かって左側の縦軸の外軸と位置固定ボルトを示した説明図である。
図14図14は実施例2の使用時の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の好ましい一実施例を示す図面を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明ハンガーの使用時の形態を示す。図2は、本発明ハンガーの収納時の形態を示す。図3はハンガー本体を切り取った断面図である。図4はハンガー本体と縦軸を接続するハンガー正面に向かって左側の接続部(以下、「接続部左」という。)周辺を示した説明図である。図5はハンガー正面に向かって左側の縦軸(以下、「縦軸左」という。)を構成する外軸の詳細を示した説明図である。図6は当該縦軸の内軸の詳細を示した説明図である。図7は縦軸の内軸の内部構造で弾性部材により付勢される係合ピンを示した説明図である。図8は横軸周辺の詳細を示した説明図である。図9はハンガー本体肩先底面の接続部左の突起片と略溝状凹部等の周辺の詳細を示した説明図である。図10はハンガー正面に向かって左側の縦軸(以下、「縦軸左」という。)の外軸のハンガー本体と接続する上方先端部の突起片等周辺を示した説明図である。図11(A)~(E)は収納順序を示した説明図である。図12(A)~(E)は組立順序を示した説明図である。
【0031】
図中1はハンガー本体、2は縦軸左の外軸、3はハンガー正面に向かって右側の縦軸(以下、「縦軸右」という。)の外軸、4は左右の縦軸の内軸、5はクリップ、6は横軸、7は首元部の係止手段、8はクリップの挟持部外側の係止手段、9はハンガー本体と縦軸左を繋ぐ接続部左、10はハンガー本体と縦軸右を繋ぐハンガー正面に向かって右側の接続部(以下、「接続部右」という。)、11は縦軸と横軸の嵌合手段、12は収納時縦軸の一部が入る略溝状の凹部、13は収納時横軸が入る溝部、14は縦軸の回動を抑制するストッパー、15は縦軸の外軸に開けられた係合孔、16は15の係合孔に入る係合ピン、17は16の係合ピンを付勢する弾性部材、18は接続部でハンガー本体と縦軸を接続するのに用いるジョイントボルトである。
【0032】
図1は使用時のハンガー全体の形態を示している。ハンガー本体の肩先底面に、長さ調節可能な縦軸2、3、4が接続してあり、その先にクリップ5を有した横軸6が取り付けられている。
【0033】
図3に示すようにハンガー本体1は、ハンガー本体1の左右の肩先底面に左右の肩先から中央方向に向かって深さが浅くなるように設けられた略溝状の凹部12と、収納時にハンガーから取り外された横軸を挿嵌するためにハンガー本体中央の首元部上部の凸状部を横切るよう凹設された溝部13を有する。
【0034】
図1に示すように、縦軸2~4はハンガー本体の左右の肩先底面に接続され、長さ調節手段を有する左右一対の縦軸である。このうち、縦軸2、3は図5に示すように中空円筒状の外軸である。当該外軸の外面に軸方向に一定間隔で設けられた複数の係合孔14を持つ。縦軸4は図6に示すように外軸に挿通される内軸である。
当該内軸4の先端近傍には図7に示すように内軸内に取り付けられた圧縮コイルバネ等の弾性部材17により付勢可能に取り付けられた係合ピン15を有し、内軸4を外軸2、3内でスライドし係合ピンを特定の前記係合孔の位置に合わせて係合することで長さを調節できる。前記弾性部材としては、特に限定はないが圧縮コイルバネ、ラバースプリング、板バネなどが好ましく、圧縮コイルバネであればさらに好ましい。
【0035】
図4に示すように、接続部左9、接続部右10は縦軸とハンガー本体を接続する接続部である。図9に示すように、ハンガー本体の左側の肩先底面に設けられた、ハンガー本体の正面側を上、背面側を下とする上下2枚の先端が半円形の突起片9Aは、図10に示す縦軸2の上方先端部に凸状に設けられた同一形状の突起片9Bの先端を挿入できるように上下2枚の突起片9Aの間隔が開けられている。図4に示すように縦軸3の突起片9Bとハンガー本体の突起片9Aとを回動可能に接続するためジョイントボルト18で螺着されている。右側のハンガー本体の肩先部底面と縦軸3の上方端部の接続においても、突起片10Aと10Bが同様の態様で接続される。図3に示すように、この接続部左9即ち突起片9Aと接続部右10即ち突起片10Aは、突起片9Aが当該略溝状の凹部12外側の肩先端部側に、突起片10Aが略溝状の凹部12内の肩先端部側に設けられており、図2に示すように折り畳み時に突起片10Aと接続する縦軸3の突起片10Bを含む上方先端部がハンガー本体の右側肩先底面の略溝状の凹部12内に収納され、縦軸3の下方先端部がハンガー本体の左側肩先底面の略溝状の凹部12に収納されるので、縦軸2をハンガー本体底面側に折り畳んでも折り畳まれた縦軸3と干渉することなく、両縦軸をハンガー本体の底面に沿わせてコンパクトに収納できる。
またこの接続部9、10には、縦軸が90度回動した後その位置を保持できるようにストッパー14Aが設けられている。このストッパー14Aは、図9に示すようにハンガー本体側の突起片9Aの、縦軸2側の突起片9Bに対向する面に設けられたT字形状の凸部であり、図10に示すストッパー14Bは、縦軸2側の突起片9Bにストッパー14Aの凸部に対向する面に設けられたT字形状の凹部である。ストッパー14Aの凸部とストッパー14Bの凹部がT字形状に形成されているので、縦軸左、即ち縦軸2の下方先端部が縦軸右即ち縦軸3の方向に90度回動して、ハンガー本体の接続部右の位置近傍に到達すると、ストッパー14Bの凹部のL字形状の部分とストッパー14Aの凸部のL字形状の部分どうしが嵌合し縦軸2の動きを止めハンガー本体の底面に沿った状態で位置を維持する。この縦軸2の回動を逆に戻しても、ストッパー14A、BのT字形状の形成された凹、凸部は、縦軸2の下方先端部が90度回動後、縦軸2が元の位置に来ると、再び嵌合して回動が止まり縦軸2はその位置を維持できる。
【0036】
図8は、左、右の内軸4の下方先端部において縦軸と横軸の嵌合手段11により両端が嵌合された横軸6に摺動可能に挿嵌された左右一対のクリップ5を示す。ハンガーに装着した衣類の幅に合わせて左右一対クリップ5の横軸6への取り付け間隔を調整できるので、ハンガー本体1の方向に向いている挟持部により、衣類のサイズに拘わらず衣類の裾を引っ張って本ハンガーに衣類を装着できる。
また、図8に示す縦軸と横軸の嵌合手段11は、縦軸4の下方先端部に形成されたフック形状の凹部と、横軸6の左右の端部に形成された当該凹部に嵌合により着脱が容易にできる軸径を有する断面円形状の嵌合軸と、当該嵌合軸の先端に設けられた縦軸4からの脱離防止用の略球形状の突起部を備えているので、横軸6の縦軸4への着脱容易が容易であり、且ついったん横軸6の両端が縦軸4のフック形状の凹部に嵌合されると容易に脱離しない。したがって、無重力空間で、横軸6が脱離することなく、装着した衣類が動いたり、浮遊したりすることがない。また、本発明に係るハンガーの組み立て、解体、収納が容易になる。
【0037】
図1に示すように、係止手段7はハンガー本体1の首元部の少なくとも正面又は背面のいずれか一方に止着され、係止手段8は横軸6に挿嵌された一対のクリップ5の挟持部外側片面又は両面に止着されている。図1に示す三箇所の係止手段7、8を用いることで、ISS等の宇宙船の無重力空間で船内の物品固定区画の当該係止手段が使用できる壁等の取付面に衣類を装着した本ハンガーの全体を浮遊させずに係止できる。係止手段としては、限定はないが、面ファスナー、磁石又は吸盤などが挙げられる。また、当該面ファスナー等の係止手段の首元部等への止着方法としては、接着剤、両面接着テープ等を用いる方法が挙げられる。
ISS等の宇宙船内で使用する際は、磁気の影響がある場合を考慮すると面ファスナーが好ましい。なお、係止手段7、8に面ファスナーを使用する場合は前記ISS内の壁等の取り付け面側にも面ファスナーを止着しておく必要がある。
また、通常ISS等の船内の物品固定区画では、面ファスナーを使用することが多いので、この点においても、面ファスナーは係止手段7,8に好適な手段である。
【0038】
収納方法は、図11に示したとおりである。図11(A)に示すのが使用時の形態である。まず図11(B)に示すように縦軸の内軸4から横軸6とクリップ5を取り外す。そして図11(C)に示すように左右の縦軸の内軸4をそれぞれの縦軸の外軸2、3の中に挿通し縦軸全体を最短まで縮める。図11(D)に示すように接続部9、10を中心に左右それぞれの縦軸を90度回動させハンガー本体1の底面の下側に折りたたむ、図11(E)に示すように横軸6をハンガー本体の溝部13に嵌めて差し込み、クリップ5をハンガー本体1と溝部13に嵌めて差し込まれた横軸6の間に置く。以上の流れで収納を行う。以上のように本発明に係るハンガーは、解体用の道具などを要さず、簡易に短時間でハンガーに解体と収納ができるので、ISSなどで使用するのに適している。
【0039】
組立方法は、図12に示したとおりである。図12(A)に示すのが収納時の形態である。まず図12(B)に示すようにハンガー本体1から横軸6とクリップ5を取り外す。そして図12(C)に示すように左右の縦軸を接続部中心に互いの軸が平行になるように回動させる。図12(D)に示すように左右の縦軸の内軸4をそれぞれの縦軸の外軸2、3の中から引き出し縦軸の長さ調節手段により、左右の縦軸全体の長さがハンガーに装着する衣類のサイズ・長さに合わせて決まる。次に図12(E)に示すように横軸6にクリップ5を取り付け、左右の縦軸4の下方先端部と横軸6の両端を接続する。以上の流れで組立を完了する。以上により本発明に係るハンガーは、組み立て用の道具などを要さず、簡易に短時間で組み立てできるので、ISSなどで使用するのに適している。
【実施例2】
【0040】
実施例2は、前記縦軸の長さ調節手段にかわって縦軸長さ調節手段である位置固定ボルトを用いた無重力空間において使用可能なハンガーである。
図13は実施例2の縦軸左2と縦軸長さ調節手段である位置固定ボルト19を示した説明図である。図14は実施例2の使用時の形態を示す斜視図である。
【0041】
図13に示す位置固定ボルト19を用いた縦軸の長さ調節方法は、開口部先端近くの一箇所に雌ネジが切られた穴を有する外軸2に前記の穴と同じ大きさの位置固定ボルト19を回し入れて取り付けられている。内軸を縦軸の外軸2の内部に挿通し目的の位置まで内軸4を引き出してから、外軸2に取り付けられた位置固定ボルト19を締めて内軸4の外側面にボルト19の先端を内軸4の中心方向に応力が加わるように当接することで内軸4を所定の位置で外軸2の内側で固定することで、縦軸の長さの調節ができる。
本長さ調節機構は、左右の縦軸の外軸2,3に内軸4の出し入れにより、所定の長さ位置でボルト19を締めるだけで縦軸の長さが決められるので、実施例1の長さ調節手段と同様に簡易な機能であり、取り扱いも簡単で本発明に係るハンガーに好適に採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
地上で本発明に係るハンガーを使用すると、下方から裾を引っ張る機構により、濡れた衣類を下部から引っ張りながら乾かすことが出来たり、しわの付きやすい衣類を伸ばしながら保管したりすることが出来る。
【符号の説明】
【0043】
1 ハンガー本体
2 縦軸左の外軸
3 縦軸右の外軸
4 縦軸左、右の内軸
5 クリップ
6 横軸
7 首元部の係止手段
8 クリップの挟持部外側の係止手段
9 接続部左
10 接続部右
11 縦軸と横軸の嵌合手段
12 略溝状の凹部
13 溝部
14 ストッパー
15 係合孔
16 係合ピン
17 弾性部材
18 ジョイントボルト
19 位置固定ボルト
【要約】
【課題】無重力空間でハンガー自体が浮遊せず、ハンガーに装着した衣類の裾などが動かず、衣類のサイズに対応して長さなどハンガーのサイズを容易に変更でき、ハンガー本体及びその部品等をまとめて収納でき、持ち運び容易な無重力空間で使用可能なハンガーを提供すること。
【解決手段】ハンガー本体1の肩先底面に折りたたみ可能で、長さが調節可能な左右一対の縦軸2、3、4が接続され、左右の縦軸の下方先端に左右一対クリップ5が挿嵌された横軸6がその両端で嵌合され、ハンガー本体の首元部と当該クリップ挟持部外側に衣類を装着したハンガーを壁面に止める係止手段7、8が設けられ、当該ハンガー本体の左右の肩先底面側に折り畳まれた当該縦軸の一方の一部を挿入して収納する略溝状の凹部12と首元部上部に当該横軸を挿通して収納する溝部13が設けられた無重力空間において使用可能なハンガー。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14