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  • 特許-熱剥離型粘着テープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】熱剥離型粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20220722BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220722BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220722BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20220722BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220722BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20220722BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20220722BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20220722BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20220722BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220722BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220722BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C09J7/20
C09J7/38
C09J7/29
C09J7/25
C09J201/00
C09J7/24
C09J133/00
C09J133/02
C09J5/06
C09J11/08
C09J11/04
B32B27/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022506513
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2021032343
【審査請求日】2022-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145079
【氏名又は名称】株式会社寺岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】木本 嶺
(72)【発明者】
【氏名】森木 翼
(72)【発明者】
【氏名】工藤 衛一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 靖史
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/114956(WO,A1)
【文献】特開2012-167178(JP,A)
【文献】国際公開第2008/133120(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3228693(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00,133/00
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂の群から選択される少なくとも1種以上の樹脂を主成分として含む樹脂 基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に熱剥離性粘着層と、を備える熱剥離型粘着テープであって、
前記樹脂基材の、
(a)厚み800μm、幅25mm、長さ100mmの前記樹脂基材を23℃,50%RH、掴み具間距離30mm、試験速度300mm/minの条件で引張った際の、100%伸び率における引張強さが0.9MPa以下であり、
(b)30mm角の前記樹脂基材を積層し、厚さ12mmの積層体とし、23℃,50%RH、試験速度10mm/minの条件で圧縮した際の50%圧縮時における圧縮応力が2.0MPa以下であり、
(c)周波数10Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる、100℃以上の該熱剥離型粘着テープの使用時の最大温度におけるtanδの値が0.80以下であり、
前記熱剥離性粘着層が、
(d)発泡開始温度が前記使用時の最大温度+15℃以上である熱膨張性小球を含み、前記熱膨張性小球の含有量が、前記熱剥離性粘着層を形成する粘着剤成分100質量部に対して6質量部以上50質量部以下の範囲であることを特徴とする熱剥離型粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤成分が、主成分として(メタ)アクリル系共重合体を含む、請求項1に記載の熱剥離型粘着テープ。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系共重合体がアクリル酸を由来とする構成単位を含み、前記アクリル酸を由来とする構成単位の含有量が、前記(メタ)アクリル系共重合体を構成する全モノマー単位100質量%に対して、2質量%以上である、請求項に記載の熱剥離型粘着テープ。
【請求項4】
前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に、前記樹脂基材とは異なる樹脂フィルムを支持層として備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱剥離型粘着テープ。
【請求項5】
前記樹脂フィルムに含まれる樹脂が、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリシクロオレフィン樹脂の群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の熱剥離型粘着テープ。
【請求項6】
前記樹脂基材の一方の面側に形成される前記熱剥離性粘着層を第1粘着層とし、前記樹脂基材の前記一方の面とは異なる他方の面側に第2粘着層を備え、前記第2粘着層が前記第1粘着層と同一又は異なる構成の粘着層である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱剥離型粘着テープ。
【請求項7】
表面に凹凸のある部材の製造工程用に用いられることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の熱剥離型粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱剥離型粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体部品の製造工程を含む各種製造工程では、粘着テープとして、該粘着テープを構成する粘着層に熱膨張性微小球が含有され、加熱することにより粘着力が低減して剥離し得る熱剥離型粘着テープを使用する技術が知られている。近年、半導体素子の電極部に、基板配線部との接続に用いるはんだバンプや金属ピンを設けるタイプが増加している。はんだバンプや金属ピンを有する半導体素子の表面への追従性を改善するため、特許文献1には、基材として多孔質基材を用いることが提案されている。特許文献1では、多孔質基材の一方の側の面に熱剥離性粘着層A、他方の側の面に粘着層Bが設けられた熱剥離性両面粘着シートであって、多孔質基材が密度0.9g/cm3以下で且つ引張り弾性率20MPa以下であることを特徴とし、表面最大凹凸差が10μm以上である面を有する被加工体を加工できるとしている。
【0003】
また、特許文献2には、基材の少なくとも片方の面に、ゴム状有機弾性層を介して熱膨張性微小球を含有する熱膨張性粘着層が積層された熱剥離型粘着シートが開示されている。この熱剥離型粘着シートは、ゴム状有機弾性層と熱膨張性粘着層を特定の厚み及び厚み比にすることで、凹凸面に対する追従性に優れるとされている。このような追従性により被着体の被着面が粗面であっても十分な接着力を発現し、封止樹脂等の粗面を有する半導体基板のダイシング用粘着シートとして使用した際にも、チップ飛びが発生しにくく、かつ、加工終了後は加熱により被着体にストレスを与えることなく、容易に剥離することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-115272号公報
【文献】特開2014-037539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2において、加工後の剥離のための加熱処理条件として、100~250℃の温度とすることが開示されている。しかしながら、昨今の半導体製造工程においては、粘着シートを接着させた状態で熱処理されることが多くなり、100℃以上の温度でも剥がれることなく、さらに加熱して容易に剥離できる熱剥離型粘着テープが求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子部品や半導体部品の加熱工程に使用される粘着テープにおいて、高温での加熱工程で好適に使用でき、かつ加熱工程で使用後にさらに高温で加熱すると粘着層の接着性が著しく低減され、被着体上での糊残りなく容易に剥離でき、被着体の凹凸への追従性に優れる熱剥離型粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂の群から選択される少なくとも1種以上の樹脂を主成分として含む樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に熱剥離性粘着層と、を備える熱剥離型粘着テープであって、
前記樹脂基材の、
(a)厚み800μm、幅25mm、長さ100mmの前記樹脂基材を23℃,50%RH、掴み具間距離30mm、試験速度300mm/minの条件で引張った際の、100%伸び率における引張強さが0.9MPa以下であり、
(b)30mm角の前記樹脂基材を積層し、厚さ12mmの積層体とし、23℃,50%RH、試験速度10mm/minの条件で圧縮した際の50%圧縮時における圧縮応力が2.0MPa以下であり、
(c)周波数10Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる、100℃以上の該熱剥離型粘着テープの使用時の最大温度におけるtanδの値が0.80以下であり、
前記熱剥離性粘着層が、
(d)発泡開始温度が前記使用時の最大温度+15℃以上である熱膨張性小球を含み、前記熱膨張性小球の含有量が、前記熱剥離性粘着層を形成する粘着剤成分100質量部に対して6質量部以上50質量部以下の範囲であることを特徴とする熱剥離型粘着テープが、上記課題を解決するために非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱剥離型粘着テープは、電子部品や半導体部品の製造工程を含む各種製造工程における、高温工程でも剥がれることなく好適に使用でき、かつ同工程で使用後に更に高温に加熱することにより接着性が著しく低減され、糊残りなく容易に剥離でき、被着体の凹凸への追従性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る熱剥離型粘着テープの層構成の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許文献1及び2では、粘着シートの剥離温度が100~120℃である例が示されているが、その場合の使用温度は当然であるが100℃よりも低く、特に記載されていないことから室温(25℃前後)であると考えられる。したがって、100℃以上の高温での使用や、さらに高温での剥離に関して十分な開示がなされていない。被着体の凹凸への追従性では基材が柔らかい材料であることが好ましいが、耐熱性が十分でないと熱剥離時に糊残りが生じたり、基材が柔らかくなりすぎて剥離自体が困難になったりすることがある。
そこで、本発明では、基材として柔軟性と耐熱性を兼ね備えたものを使用し、100℃以上の高温での使用時に剥離せず、使用温度よりさらに高温に加熱することで容易に剥離できるように、熱剥離性粘着層に使用温度よりも高い温度で発泡を開始する熱膨張性小球を所定量含むものを組み合わせることで、本発明の目的を達成できることを見出した。
【0011】
以下、本発明に係る熱剥離型粘着テープについて、詳細に説明する。
本発明に係る熱剥離型粘着テープの層構成について、図1に示す概略断面図を用いて説明する。
【0012】
図1(A)は、最小の層構成である基材1と熱剥離性粘着層2の積層構成を示し、図1(B)はさらに基材1の熱剥離性粘着層2が形成される面の反対面に支持層3を積層した構成を示している。図1(C)は、基材1の熱剥離性粘着層2が形成される面に中間支持層4を設けた例を示しており、ここでは図1(B)の層構成に中間支持層4を追加した例であるが、図1(A)の層構成に中間支持層4を追加してもよい。図1(D)は、基材1の両面に粘着層を設けた両面粘着テープの層構成を示し、一方の面に熱剥離性粘着層2が設けられ、他方の面に第2粘着層5が設けられた層構成を示している。第2粘着層5、通常の粘着層とすることも、熱剥離性粘着層とすることもいずれも可能である。第2粘着層5を熱剥離性粘着層とする場合、剥離のための加熱温度は、熱剥離性粘着層2と同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
熱剥離性粘着層の粘着面及び支持層のない基材表面には、テープとして巻回する際に隣り合う層同士が粘着することを防止するため、不図示の離型フィルムを設けることができる。離型フィルムとしては、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート:PET)製フィルムなどの樹脂フィルムの一方又は両面に離型処理を施したものが使用できる。
【0014】
以下、本発明に係る熱剥離型粘着テープの各層について説明する。
<基材>
本発明に係る熱剥離型粘着テープの基材は、以下の(a)~(c)の条件を同時に満たすものである。
(a)100%伸び率における引張強さが0.9MPa以下であり、
(b)50%圧縮時における圧縮応力が2.0MPa以下であり、
(c)周波数10Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる、100℃以上の該熱剥離型粘着テープの使用時の最大温度におけるtanδの値が0.80以下である。
【0015】
(a)の引張強さは、試験片(厚み800μm、幅25mm、長さ100mm)を23℃、50%RHの環境下、つかみ具間距離30mm、300mm/minの速度で引張り、伸び率が100%の時点での引張強さを測定する。測定には市販の引張り試験機を用いることができる。引張強さは、0.9MPa以下であり、0.8MPa以下であることが好ましい。
【0016】
(b)の圧縮応力は、試験片(30mm×30mm×12mm)を23℃、50%RHの環境下、10mm/minの速度で圧縮し、50%変形時の圧縮応力を測定する。測定には市販の圧縮試験機を用いることができる。圧縮応力は、2.0MPa以下であり、1.5MPa以下であることが好ましい。
【0017】
(c)のtanδ(損失正接)は、試験片(10mm×10mm×2mm)に動的粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hzのせん断歪みを加えながら、昇温速度10℃/minで、-50℃~250℃の範囲において貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を測定する。100℃以上の該熱剥離型粘着テープの使用時の最大温度におけるG”/G’からtanδを求めることで得られる。ここで、「100℃以上の該熱剥離型粘着テープの使用時の最大温度」とは、100℃以上であって、熱剥離型粘着テープを実際に使用する際の最大温度を意味し、この最大温度は、熱剥離性粘着層に含まれる熱膨張性小球の発泡開始温度よりも15℃以上低い温度に設定される。したがって、同じ基材を用いても、組み合わせる熱剥離性粘着層によって、tanδの測定温度が変わることを意味する。tanδの値は、0.80以下であり、0.70以下が好ましい。
【0018】
基材の材料としては、上記条件(a)~(c)を満たす限り、いずれの材料も使用できるが、ベース樹脂(主成分)として、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂の何れかであることが好ましい。これらの樹脂からは、上記条件(a)及び(b)で規定される引張強度及び圧縮応力を満足することができ、上記条件(c)のtanδの値を0.80以下とするに十分な耐熱性を備えている材料を選択できる。
【0019】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー成分として主として含み、これと共重合可能なビニル系モノマーを組み合わせてアクリル系共重合体樹脂を含むアクリル樹脂組成物とすることができる。
【0020】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルエステル部分の炭素数が1~20のものが挙げられ、該炭素数が1~12であることが好ましく、該炭素数が1~8であるものがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは全モノマー中、50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上であることが最適である。
【0021】
共重合可能なビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸含有(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールとのモノエステルなどの水酸基を含有する共重合性モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN-アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルなどの窒素含有アクリルモノマー、酢酸ビニル等のビニルモノマーなどが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。中でもアクリル酸を含むことが好ましく、アクリル酸は、全モノマー中、1~20質量%含むことが好ましく、4.75~19質量%含むことがより好ましい。
【0022】
アクリル樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとアクリル酸を重合させてアクリルシロップを調製した後、さらにアクリルシロップのその他のモノマーや添加剤を添加してアクリル樹脂組成物を得ることができる。このアクリル樹脂組成物を離型性のある支持体上に塗布し、UV硬化などにより硬化させて基材を作製することができる。
【0023】
樹脂組成物への添加剤としては、樹脂バルーンやガラスバルーンなどの中空粒子、ウレタンビーズなどの樹脂粒子、エポキシ系、イソシアネート系、多官能アクリレート系の架橋剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、重合開始剤、連鎖移動剤など公知の添加剤を添加することができる。
【0024】
シリコーン系樹脂やウレタン系樹脂についても、テープ用基材として使用できる原料及び材料を組み合わせて、上記条件(a)~(c)を満たすものを選択すればよい。シリコーン系樹脂の場合、シロキサン化合物の脱水縮合を促進する白金系の触媒を併用することが好ましい。ウレタン系樹脂では、エポキシ系、イソシアネート系などの架橋剤を併用することが好ましい。
また、基材は、テープ用基材として市販されているものの中から上記条件(a)~(c)を満たすものを選択してもよい。その際、ウレタンフォームなど多孔質体として製造された製品を使用することもできる。
【0025】
基材の厚みは使用目的に合わせて、凹凸への追従性を満足する厚みであれば特に制限されるものではないが、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、厚みの上限は2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。
【0026】
<熱剥離性粘着層>
本発明に係る熱剥離性粘着層は、粘着剤と熱膨張性小球を含み、熱膨張性小球の含有量が、熱剥離性粘着層を形成する粘着剤成分100質量部に対して6質量部以上50質量部以下の範囲である。熱膨張性小球の発泡開始温度は、前記条件(c)で規定した使用時の最大温度+15℃以上の温度である。
【0027】
本発明に使用する熱膨張性小球は、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻(シェル)内に内包させた微小球が挙げられる。シェルは、熱溶融性物質や熱膨張により破壊する物質で形成される場合が多い。シェルを形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。発泡開始温度は、主にシェルの厚みで制御でき、厚みが厚いほど発泡開始温度は高くなる傾向にある。例えば、シェルの膜厚は2~15μm、平均粒子径が5~50μmであるマツモトマイクロスフェアー(登録商標)F、FNシリーズなどが松本油脂製薬株式会社から市販されており、好適に使用することができる。熱膨張性小球はその発泡開始温度と発泡倍率を目安に選択すればよい。
【0028】
熱剥離性粘着層を形成する粘着剤成分としては、使用温度で十分な粘着力を有し、さらに高温で加熱して熱膨張性小球の発泡による剥離が可能な粘着剤成分であればいずれも使用することができる。具体的には、(メタ)アクリル系共重合体、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などが挙げられる。特に基材との密着性の点で、基材を構成する樹脂と同種の樹脂を選択することも好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル系共重合体としては、基材に使用したビニル系モノマーを組み合わせて使用することができる。中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを由来とする構成単位の1種以上を主成分とし、アクリル酸を由来とする構成単位を含むことが好ましい。また、アクリル酸を由来とする構成単位は全モノマー単位100質量%に対して2質量%以上含むことが好ましく、5質量%以上含むことがより好ましい。アクリル酸を由来とする構成単位は全モノマー単位100質量%に対して2質量%以上であれば、使用温度が150℃の高温であっても、加熱後の段差追従性に優れる。また、粘着力を高める点では、水酸基含有のアクリル酸エステルを合わせて用いることも好ましい態様である。
【0030】
熱膨張性小球の含有量は、熱剥離性粘着層を形成する粘着剤成分100質量部に対して6質量部以上50質量部以下の範囲であるが、好ましくは6質量部以上40質量部以下である。熱膨張性小球の含有量が6質量部未満であると、熱膨張性小球の発泡による熱剥離性が十分発揮できなくなる。また熱膨張性小球の含有量が50質量部を越えると、粘着剤成分の相対量が減少し、所望する粘着力が得られなくなる。
【0031】
また、熱膨張性小球の発泡開始温度が前記条件(c)で規定した使用時の最大温度に対して15℃未満であると、加熱使用時に剥離したり、熱剥離性が低下し、熱剥離温度に加熱後、常温に戻して剥離する際に粘着力が十分に低下せず、剥離が困難になることがある。
【0032】
熱剥離性粘着層には、上記粘着剤成分と熱膨張性小球以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤を添加することができる。添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、各種フィラーなどが挙げられる。
【0033】
熱剥離性粘着層の厚みは、添加される熱膨張性小球の粒径よりも大きい厚みであり、基材による凹凸追従性を損なわない範囲であればよい。例えば、10~100μmの範囲で、基材の厚みや熱膨張性小球の粒径から選択すればよい。なお、熱膨張性小球の粒径は、市販品の場合、平均粒子径(カタログ値)から最大粒径を予測して、設定してもよいし、篩い分け等により大粒子を除去して、その篩いの目度を設定粒径としてもよい。
【0034】
<支持層>
本発明に係る熱剥離型粘着テープには、図1(B)や(C)に示すように基材1の少なくとも一方の面側に、基材1とは異なる樹脂フィルムを支持層3あるいは中間支持層4として備えることができる。本発明で使用する基材は、タック性を有する場合があり、また、基材の厚みが薄い場合に強度が十分得られない場合がある。そこで、支持層3あるいは中間支持層4として、樹脂フィルムを設けておくことが好ましい。
【0035】
この樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、基材よりもタック性が低く、耐熱性を有し、強度に優れることが好ましく、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びポリシクロオレフィン樹脂の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。中でもポリイミド樹脂およびポリエチレンテレフタレート(PET)であることが好ましい。
【0036】
支持層3の厚みとしては、適度に強度を付与する観点から、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。上限としては、基材の厚みや熱剥離型粘着テープ全体の厚みを考慮して設定すればよい。中間支持層4の厚みは、厚くなるほど基材による段差追従性が得られなくなることから、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。加減は特に制限はないが、中間支持層4を設ける意味合いから、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。
【0037】
<両面粘着テープ>
本発明に係る熱剥離型粘着テープは、図1(D)に示すように、熱剥離性粘着層2の形成面とは反対の基材面に第2粘着層5を設けた両面粘着テープとすることができる。この時、第2粘着層5に対して、熱剥離性粘着層2を第1粘着層と呼ぶことがある。第1粘着層は本発明に係る熱剥離性粘着層であるが、第2粘着層は熱剥離性粘着層であっても通常の粘着層であってもよい。第2粘着層が熱剥離性粘着層である場合、第1粘着層の熱剥離性粘着層と同じであっても、異なっていてもよい。つまり、第1粘着層より高温又は低温で熱剥離する熱剥離性粘着層としてもよい。そうすれば、両面粘着テープのそれぞれの面に貼り付ける部材を引き剥がす温度をそれぞれに設定できる。
【0038】
<熱剥離型粘着テープの使用方法>
本発明に係る熱剥離型粘着テープは表面に凹凸のある部材の製造工程用に用いられる。表面に凹凸のある部材としては、半導体基板や電子部品などが挙げられる。
特に本発明で対象とする被着体は、100℃以上の温度を要する製造に使用される部材である。例えば、半田リフローなどの工程では150~200℃程度の温度が付加されることがある。本発明では、このような製造工程における最高到達温度を熱剥離型粘着テープの使用時の最大温度(使用温度)とする。
熱剥離性粘着層に含まれる熱膨張性小球は、この使用温度よりも15℃以上高い温度範囲に発泡開始温度を有しているため、使用温度では発泡せずに粘着力を保持することができる。
その後剥離する場合に、その発泡開始温度以上の温度に加熱することで、熱膨張性小球が膨張発泡し、熱剥離性粘着層を被着体から引き離す作用を生じる。この時の加熱温度を熱剥離温度と呼び、前記の通り発泡開始温度以上であればよいが、発泡が完了するまでの時間は熱剥離温度が発泡開始温度より高くなるほど速くなる。そのため、熱剥離温度は発泡開始温度よりも30℃以上高い温度であることが好ましく、40℃以上高い温度であることがより好ましい。又、熱剥離時の時間は、熱剥離温度と発泡開始温度との温度差や、熱膨張性小球のシェル材質、シェル厚み、内包される気化物の種類にもより適宜設定できる。
また、剥離する際は、熱膨張性小球の残渣や粘着剤残渣が被着体に残る、いわゆる糊残りを避けるために、冷却してから剥離することが好ましい。剥離の際の温度は、使用温度よりも低い温度であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下の温度であり、室温(25℃前後)まで冷却して剥離してもよい。
【実施例
【0039】
以下、実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、実施例および比較例における「部」又は「%」は、特に断りがない限り、質量基準の値を示す。
【0040】
[基材作製方法]
・アクリルシロップ調製方法
撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素ガス導入口を備えたフラスコに表1に示す組成を投入し、窒素雰囲気下で紫外線照射装置(パナソニック社製:商品名「Aicure UP50」)を用い、照射強度800~1,200mW/cm(アイテックシステム社製:光量計UVM-100を用い測定)の紫外線を8~12分間照射して光重合させることにより、アクリルシロップを得た。
【0041】
【表1】
【0042】
・アクリル基材作製
得られたシロップ1~4の夫々に、表2に示す組成で材料を加え均一に混合して、基材組成物を得た。
片面がシリコーン離型処理された厚み50μmのPET離型フィルム(藤森工業社製、商品名「フィルムバイナ(登録商標)KF#50」)の離型処理面に基材組成物を塗布し、同じく離型処理されたPET離型フィルムの離型処理面を基材組成物上に配置し、2枚のPET離型フィルムに挟まれたものを作製した。照射強度3.0~5.0mW/cmの蛍光ランプ(東芝社製:FL20S W)を両面から塗布厚さに応じ30秒~2分間照射し基材組成物を硬化させて、アクリル基材を得た。アクリル基材の厚さは50μm~800μmになるように調整した。
【0043】
【表2】
【0044】
表2中の材料の詳細は以下の通り:
・樹脂バルーン:松本油脂製薬社製 商品名「F-80DE」
・ガラスバルーン:ポッターズ・バロティーニ社製 商品名「34P30T」
・ウレタンビーズ:根上工業社製 商品名「アートパールP-800T」
・α-ヒドロキシアセトフェノン:IGM Resins社製 商品名「Omnirad1173」
【0045】
[基材の物性評価]
得られた基材に対して以下の方法で、引張強さ、圧縮応力、tanδを測定した。
・基材の引張強さ
厚み800μm、幅25mm、長さ100mmの基材を、引張り試験機(東洋精機製作所社製:ストログラフV-1C)を用いて23℃,50%RH、掴み具間距離30mm、試験速度300mm/minの条件で引張り、100%伸び率における引張強さを測定した。
【0046】
・基材の圧縮応力
30mm角の基材を積層し、厚さ12mmの積層体を形成した。この積層体を圧縮試験機(島津製作所社製:AG-50kNX Plus)を用いて23℃,50%RH、試験速度10mm/minの条件で圧縮し、50%変形時における圧縮応力を測定した。
【0047】
・基材のtanδ
10mm角の基材を積層し、厚さ2mmの積層体を形成した。この積層体を動的粘弾性測定装置(TA Instruments社製:ARES-G2)を用いて、周波数10Hzのせん断ひずみを加えながら、昇温速度10℃/分で、-50℃~250℃の範囲において貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)を測定した。貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)から、各温度における損失正接tanδを以下の計算式により算出した。
tanδ=損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)
以上の結果を表3に示す。また、市販のシリコーン基材及びウレタン基材についても同様にして評価した。
【0048】
【表3】
【0049】
表3中の基材名は、以下の通りである。
Si:シリコーン基材、商品名「ユニコンUT-30」、コテック社製
PU:ウレタン基材、商品名「PureCell(登録商標)UC150PR」、イノアックコーポレーション製
上記において、色つきの部分は本発明に係る条件を満たしていない部分を示しており、以下の表でも同様である。基材AS9は、本発明に係る条件(a)及び(b)を満たさず、基材AS10は本発明に係る条件(c)を満たしていない基材である。残りのAS1~AS8、Si、PU基材については100~180℃のいずれの使用温度にも対応できる基材である。
【0050】
[熱剥離性粘着層作製方法]
・ベースポリマー(アクリル系共重合体)調製方法
表4に示すとおりの組成のアクリル系共重合体Ac1~Ac4を重合した。
表4における各成分の配合比は、合計を100部とした場合の割合を示す。参考として各アクリル系共重合体の理論Tg及び重量平均分子量(Mw)を表3に併記した。理論TgはFOXの式により算出した値であり、アクリルモノマーの組成を適宜選定することで調整可能である。また、この重量平均分子量(Mw)は、GPC法により測定した値であり、アクリル系共重合体の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を以下の測定装置及び条件にて測定した。
・装置:LC-2000シリーズ(日本分光社製)
・カラム:ShodexKF-806M×2本、ShodexKF-802×1本
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:10mL/分
・カラム温度:40℃
・注入量:100μL
・検出器:屈折率計(RI)
・測定サンプル:アクリル系ポリマーをTHFに溶解させ、アクリル系ポリマーの濃度が0.5%の溶液を作製し、フィルターによるろ過でゴミを除去したもの。
【0051】
重量平均分子量(Mw)は、アクリル系共重合体の重合に際し、重合開始剤の種類と量(例えばアクリルモノマー100部に対してラウリルパーオキサイドを0.1部)、連鎖移動剤の種類と量(例えばアクリルモノマー100部に対してn-ドデカンチオールを0.1部)、重合開始濃度(例えば50%)等を適宜選定することで調整可能である。
【0052】
【表4】
【0053】
[粘着剤組成物調製方法]
各粘着剤の固形分100部に対して、下記の表5に示す組成で材料を加え均一に混合し熱剥離性粘着剤組成物を得た。
【0054】
【表5】
【0055】
表5中、使用した材料は以下の通り:
・シリコーン粘着剤:信越化学工業社製、商品名「KR-3700」及び「X-40-3306」混合物(質量比率80/20)
・ポリエステル粘着剤:三菱ケミカル社製、商品名「NP-110S50」
・FN-190SSD:商品名「マツモトマイクロスフィアー(登録商標) FN-190SSD」、松本油脂製薬社製、発泡開始温度171℃
・F-260D:商品名「マツモトマイクロスフィアー(登録商標) F-260D」、松本油脂製薬社製、発泡開始温度198℃
・FN-100MD:商品名「マツモトマイクロスフィアー(登録商標) FN-100MD」、松本油脂製薬社製、発泡開始温度119℃
・F-50D:商品名「マツモトマイクロスフィアー(登録商標) F-50D」、松本油脂製薬社製、発泡開始温度112℃
・E-5CM:商品名、綜研化学社製、エポキシ系架橋剤、固形分5%
・L-45E:商品名、東ソー社製、イソシアネート系架橋剤、固形分45%
・CAT-PL-50T:商品名、信越化学工業社製、白金系触媒
・イルガノックス1010:商品名、BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤
【0056】
実施例1~22、比較例1~4
[粘着テープ作製方法]
上記で得られた粘着剤組成物を、シリコーン離型処理された厚み50μmのPET離型フィルム(藤森工業社製、商品名「フィルムバイナ(登録商標)KF#50」)上に、粘着層厚みが50μmとなるように塗布した。次いで、乾燥機(エスペック社製:PHH-201)に入れ50~110℃で希釈溶剤を乾燥すると共に架橋反応させて、熱膨張性粘着層を形成した。基材両面のPET離型フィルムを剥がし、基材の片面に熱膨張性粘着層を転写し、もう片面に厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー#50-S10」)を貼り合わせ、40℃で3日間養生して粘着テープを得た。表6に示す基材と粘着剤の組み合わせで図1(B)に示す層構成の熱剥離性粘着テープを作製した。また、以下の方法で測定した基材の物性及び熱膨張性小球の発泡開始温度、それに基づく試験温度(粘着テープの使用温度)、熱剥離温度及び試験温度における基材のtanδの値を表6に合わせて示した。
【0057】
[粘着層物性評価]
・熱膨張性小球の発泡開始温度の測定方法
熱膨張性小球の発泡開始温度は熱分析装置TMA(株式会社日立ハイテクサイエンス社製:TMA7100)を使用することで求めることができる。熱膨張性小球の発泡開始温度は、5mmφのアルミ製のパンに熱膨張性小球を入れて内蓋をし、圧縮モード(L組み立て制御、昇温速度:10℃/分)で分析したとき、測定端子の垂直方向における変位が上がり始めた温度とした。
【0058】
【表6】
【0059】
上記表6中、試験温度が150℃である例について段差追従性を評価した。
・段差追従性
ガラス板に厚さ90μm、寸法5mm×30mmのポリイミドテープ(寺岡製作所社製、品名「No.6544」)を貼り付け、試験用の疑似段差を有する段差付きガラスを作製した。20mm角の粘着テープの熱膨張性粘着層側を段差付きガラスの上に乗せ、5kgゴムローラーで300mm/minで1往復し、貼り付け試験片を作製した。マイクロスコープ(キーエンス社製:VHX-6000)を用いて、段差周囲に生じている気泡幅を5mm間隔で3点測定し、平均値を算出した。
試験片を乾燥機に入れ、試験温度150℃で30分間加熱後、同様に気泡幅を算出した。
段差追従性について以下の基準で評価した。
A:気泡幅1mm未満
B:気泡幅1mm以上5mm未満
C:気泡が繋がった又は試験片から粘着テープが剥離した。
【0060】
【表7】
【0061】
比較例1では、基材が本発明の上記条件(a)及び(b)を満たさないAS9の基材を使用しているため、柔軟性が低く、段差追従性に劣ることが確認された。実施例2~4に示すように、基材厚みの影響はほとんどないことが分かる。
【0062】
耐熱性
上記条件(c)における基材tanδの影響を評価した。具体的には、基材厚みが200μmのアクリル系基材の例において、20mm角に粘着テープを切り、厚み(ピーコック社製:ダイヤルシックネスゲージG-6)、寸法(キーエンス社製:VHX-6000)を測定した。厚さ1.0mm、50mm×125mmのアルミ板(A1050P)に20mm角の粘着テープを置き、重さ20g(厚さ2.8mm、50mm×60mm)のフロートガラス板(R 3202)を粘着テープの上に乗せた。これを乾燥機(エスペック社製:PHH-201)に入れ表5に記載した試験温度で30分間加熱後、粘着テープの厚み、寸法を測定した。
厚みはテープの中心を測定し、寸法はテープの幅方向・長さ方向の長さを5mm間隔で各3点、計6点測定し平均値を算出した。
耐熱性について以下の基準で評価した。
A:加熱前後の厚み減少が15%未満、または寸法変化が0.5mm未満
C:加熱前後の厚み減少が15%以上、または寸法変化が0.5mm以上
結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
以上の表8から明らかなように、基材の加工温度におけるtanδが0.80以下であることにより、加工中の変形を抑えることができた。tanδが0.80を越える比較例2は寸法変化が大きくなった。その他、シリコーン基材を用いた実施例11、ウレタン基材を用いた実施例12においてもtanδが0.80以下であり、加工中の変形が抑えられた。
【0065】
次に、粘着力及び熱剥離性について評価した。
・初期粘着力
厚さ1.0mm、50mm×125mmのアルミ板(A1050P)に幅10mm、長さ100mmの粘着テープを貼り合わせた。5kgローラーで速度300mm/minで1往復し圧着させた後、23℃,50%RHで20~40分放置した。引張試験機を用いて、23℃,50%RH、試験速度300mm/min、剥離角度90°で粘着層の剥離力を測定し、初期粘着力とした。
【0066】
・加熱後粘着力
初期粘着力の測定と同様にして、粘着テープの貼り合わせ、圧着を行った後、乾燥機に入れ表6に記載した試験温度で30分間加熱した。乾燥機から取り出し23℃,50%RHで20~40分放置した後、引張試験機を用いて、23℃,50%RH、試験速度300mm/min、剥離角度90°でテープの剥離力を測定した。
【0067】
・熱剥離性
加熱後粘着力と同様に試験温度で加熱し、乾燥機から取り出し23℃,50%RHで20~40分放置した後、表6に記載した熱剥離温度に設定した乾燥機に入れ5分間加熱した。乾燥機から取り出し23℃,50%RHで20~40分放置した。その際、自然剥離したものを「A」とした。自然剥離しなかったものについては、剥離力を上記粘着力と同様にして評価し、剥離力が1.0N/10mm未満を「B」、1.0N/10mm以上を「C」とした。結果を表9に示す。
【0068】
【表9】
【0069】
実施例23
基材の熱膨張性粘着層を形成した面と反対の面に、支持層としてのPETフィルムの代わりにシリコーン離型処理された厚み50μmのPET離型フィルム(藤森工業社製、品名「フィルムバイナ(登録商標)KF#50」)に変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。PET離型フィルムを除く層構成は図1(A)に示すものである。
尚、段差追従性試験の際には、PET離型フィルムを剥がした状態で加熱し、粘着力測定時にはPET離型フィルムを剥がし、50μmのPETフィルム(東レ社製、品名「ルミラー#50-S10」)を貼り付け測定した。
【0070】
実施例24
熱膨張性粘着層と反対面のPETフィルムを厚さ50μmのPIフィルム(東レデュポン社製、品名「カプトン100H」)に変更した以外は実施例1と同様にして粘着テープを得た。
【0071】
実施例25
粘着剤組成物AD1を、厚さ12μmのPETフィルム(東レ社製、品名「ルミラー#12-S10」)からなる中間支持層上に、粘着層厚みが50μmとなるように塗布した。次いで、乾燥機に入れ50~110℃で希釈溶剤を乾燥すると共に架橋反応させて、熱膨張性粘着層を形成した。アクリル基材1の片面のPET離型フィルムを剥がし、熱膨張性粘着層を塗布したPETフィルムのPETフィルム面に基材を貼り付けた。基材のもう片方のPETフィルムを剥がし、厚さ50μmのPETフィルムを貼り付け、40℃で3日間養生して、図1(C)に示す層構成の粘着テープを得た。
【0072】
実施例26
粘着剤組成物AD1を、シリコーン離型処理された厚み50μmのPET離型フィルム(藤森工業社製、品名「フィルムバイナ(登録商標)KF#50」)上に、粘着層厚みが50μmとなるように塗布した。次いで、乾燥機に入れ50~110℃で希釈溶剤を乾燥すると共に架橋反応させて、熱膨張性粘着層を形成したフィルムを2枚作製した。基材片面のPET離型フィルムを剥がし、1枚目の熱膨張性粘着層を転写して、第1粘着層を形成した。第1粘着層上には上記PET離型フィルムを離型処理面側で貼り合わせた。さらに基材のもう一方の面のPET離型フィルムを剥がし、2枚目の熱膨張性粘着層を転写し第2粘着層を形成し、第2粘着層上には上記PET離型フィルムを離型処理面側で貼り合わせた。その後、40℃で3日間養生して粘着テープを得た。
尚、段差追従性試験の際には、粘着面と反対面のPET離型フィルムも剥がした状態で加熱し、粘着力測定時には粘着面と反対面のPET離型フィルムを剥がし、50μmのPETフィルム(東レ社製、品名「ルミラー#50-S10」)を貼り付け測定した。
以上の実施例23~26の結果を表10に示す。
【0073】
【表10】
【0074】
以上の表10から明らかなように、テープ構成が異なっても段差追従性や熱剥離性を発現できる。また、両面に熱膨張性粘着剤層を設けることで、両面に熱剥離性を付与することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 基材
2 熱剥離性粘着層
3 支持層
4 中間支持層
5 第2粘着層
【要約】
高温での加熱工程で好適に使用でき、かつ加熱工程で使用後にさらに高温で加熱すると粘着層の接着性が著しく低減され、被着体上での糊残りなく容易に剥離でき、被着体の凹凸への追従性に優れる熱剥離型粘着テープを提供するため、基材の少なくとも一方の面側に熱剥離性粘着層を備え、基材の(a)100%伸び率における引張強さが0.9MPa以下、(b)50%圧縮時における圧縮応力が2.0MPa以下、(c)周波数10Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる100℃以上の該粘着テープの使用時の最大温度におけるtanδの値が0.80以下であり、熱剥離性粘着層2は、発泡開始温度が前記使用時の最大温度+15℃以上である熱膨張性小球を熱剥離性粘着層を形成する粘着剤成分100質量部に対して6質量部以上50質量部以下の範囲で含む熱剥離型粘着テープとする。
図1