(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】画像処理装置およびその方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20220725BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220725BHJP
G06T 3/00 20060101ALI20220725BHJP
B60R 1/20 20220101ALN20220725BHJP
【FI】
H04N7/18 J
G06T1/00 330A
G06T3/00 700
G06T3/00 780
B60R1/20
(21)【出願番号】P 2017206032
(22)【出願日】2017-10-25
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 哲也
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207605(JP,A)
【文献】特開2006-151370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06T 1/00
G06T 3/00
B60R 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する車両の外部において予め決められた範囲に対応する画像データを、予め決められた時間間隔で取得する取得装置と、
取得された複数の前記画像データから生成され、前記車両の外部の画像を表示する表示画像データを複数、前記時間間隔ごとに順次、記憶する記憶装置と、
最も新しく取得された前記画像データを処理して、前記範囲の俯瞰画像に対応する俯瞰画像データを生成する第1の処理装置と、
記憶された複数の前記表示画像データから車両速度に応じて選択された画像を処理して、前記範囲以外に対応する部分を、生成された前記俯瞰画像データに適合させる第2の処理装置と、
前記生成された俯瞰画像データと、この俯瞰画像データに適合させられた前記表示画像データの部分とを合成して、最も新しい前記表示画像データを生成する生成装置と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記第2の処理装置は、パラメータを用いて前記表示画像データの部分を処理して前記生成された俯瞰画像データに適合させ、
前記記憶装置は、前記最も新しい表示画像データと、この表示画像データの処理に用いられた前記パラメータとを対応づけて記憶する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記
表示画像データそれぞれの前記範囲以外に対応する部分を少なくとも変換し、前記
表示画像データの生成に用いられた前記俯瞰画像データに適合させる処理のために用いられる
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換は、アフィン変換である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記記憶された表示画像データに対応づけられたパラメータに基づいて、前記記憶された表示画像データのいずれかを選択する選択装置
をさらに有する請求項2~4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記選択装置は、前記記憶された表示画像データそれぞれに対応づけられた前記パラメータを処理して、前記記憶された表示画像データそれぞれが生成されたときの前記車両の位置と、最も新しく表示画像データが生成されるときの前記車両の位置との間の距離を算出し、算出された前記距離が、予め決められた閾値を最も少なく超える前記表示画像データを選択する
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成装置は、前記最も新しく生成された俯瞰画像データと、この俯瞰画像に適合された前記表示画像データの部分とを接合する処理をして、最も新しい前記表示画像データを生成する
請求項1~6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成装置は、前記最も新しく生成された俯瞰画像データと、この俯瞰画像に適合された前記表示画像データの部分とを、これらの対応点で接合する処理をする
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記生成装置は、前記最も新しく生成された俯瞰画像データから、前記表示画像データに接合される部分を除いてから、この俯瞰画像データと前記表示画像データとを接合する処理をする
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記生成装置は、実際に表示される画像よりも大きい画像に対応する前記表示画像データを生成する
請求項1~9のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
移動する車両の外部において予め決められた範囲に対応する画像データを、予め決められた時間間隔で取得し、
取得された複数の前記画像データから生成され、前記車両の外部の画像を表示する表示画像データを複数、前記時間間隔ごとに順次、記憶し、
最も新しく取得された前記画像データを処理して、前記範囲の俯瞰画像に対応する俯瞰画像データを生成し、
記憶された複数の前記表示画像データから車両速度に応じて選択された画像を処理して、前記範囲以外に対応する部分を、生成された前記俯瞰画像データに適合させ、
前記生成された俯瞰画像データと、この俯瞰画像データに適合させられた前記表示画像データの部分とを合成して、最も新しい前記表示画像データを生成する
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行状態を示すパラメータを用いて過去の画像を変形し、最新の時刻に得られた画像と合成することにより、最新の時刻の車両下、車両の後方およびその他車両の死角領域を含む車両周辺画像を生成して表示する装置が知られている。しかしながら、常に近い過去の1フレーム分前の時刻における表示画像を用いて、最新の時刻における表示画像を生成すると、多くの回数、変形された領域を含む表示画像から、最新の表示画像が生成されることとなる。従って、このように表示画像を生成すると、最新の表示画像において、多くの回数、変形された領域に対応する部分に不明瞭さ(ボケ)の欠陥が生じてしまう。一方、表示画像の生成のために常に遠いフレーム分前の表示画像を用いると、車度が速いときには、最新の表示画像において、古い表示画像に対応する領域と最新の時刻に得られた画像との間に不整合(ガタ)の欠陥が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4696691号公報
【文献】特開2014-207605号公報
【文献】特開2016-66855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施形態は、最新の時刻に得られた画像と、過去の時刻において表示された車両外部画像とを適切に合成することにより、欠陥が低減された車両周辺画像を生成できる画像処理装置およびその方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に記載された課題を解決するために、一実施形態にかかる画像処理装置は、移動する車両の外部において予め決められた範囲に対応する画像データを、予め決められた時間間隔で取得する取得装置と、取得された複数の前記画像データから生成され、前記車両の外部の画像を表示する表示画像データを複数、前記時間間隔ごとに順次、記憶する記憶装置と、最も新しく取得された前記画像データを処理して、前記範囲の俯瞰画像に対応する俯瞰画像データを生成する第1の処理装置と、記憶された複数の前記表示画像データから車両速度に応じて選択された画像を処理して、前記範囲以外に対応する部分を、生成された前記俯瞰画像データに適合させる第2の処理装置と、前記最も新しく生成された俯瞰画像データと、この俯瞰画像データに適合させられた前記表示画像データの部分とを合成して、最も新しい前記表示画像データを生成する生成装置とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施形態が適用される自動車と、自動車が駐車される駐車場とを例示する側面図である。
【
図2】
図1に示され自動車および駐車場の俯瞰図である。
【
図3】直線上を後方に移動する時刻t-1,tにおける自動車の位置と、自動車の後方に設けられたカメラが撮影する撮影範囲と、自動車の移動により定義される速度vおよび移動量Transを例示する図である。
【
図5】
図5は、点C(C
x,C
y)を中心とする半径r(mm)の円上を後方に等速で移動する時刻t-1,tにおける自動車1の位置と、自動車1の後方に設けられたカメラが撮影する撮影範囲と、自動車の移動により定義される回転角θ
tを例示する図である。
【
図6】
図5に示した自動車の時刻t-1,tにおけるカメラの撮影範囲を例示する図である。
【
図7】
図6に示した時刻tにおける俯瞰画像データtと、変換後の表示画像データt-1とから、最新の表示画像データtを生成する第1の方法を例示する図である。
【
図8】時刻t-3~tまでの各時刻における自動車1の速度、角速度、旋回半径および旋回中心を例示する図である。
【
図9】時刻tにおいて生成された表示画像データtの生成に用いられた表示画像データt-iを例示する図である。
【
図10】
図3,
図7,
図9などを参照して説明された方法により各時刻における表示画像データを生成して表示する表示画像データ生成装置の構成を示す図である。
【
図11】旋回半径を計算するための座標系を例示する図である。
【
図12】
図10に示した表示画像選択装置の処理(S10)を示すフローチャートである。
【
図13】
図10に示した表示画像データ生成装置の処理(S12)を示すフローチャートである。
【
図14】時刻tにおける俯瞰画像データtと、変換後の表示画像データt-iとから、最新の表示画像データtを生成する方法を例示する図である。
【
図15】
図10に示した表示画像データ生成装置を実現するためのコンピュータの構成を示す図である。
【
図16】常に時刻tに近い時刻t-i(例えば、t-1)の表示画像データt-iを用いて得られた最新の時刻tにおける表示画像データtを例示する図である。
【
図17】常に時刻tから遠い時刻t-i(例えば、t-N)の表示画像データt-Nを用いて得られた最新の時刻tにおける表示画像データtを例示する図である。
【
図18】変換後の表示画像データt-iの一部と、時刻tの画像データtから得られた俯瞰画像データtとを合成して最新の表示画像データtを生成する第2の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態が、図面への参照とともに詳細に説明される。なお、実施形態において、同一の構成部分には同一の符号が付されている。
【0008】
[自動車1の撮影範囲と表示画像データ生成の概要]
まず、自動車の撮影範囲と表示画像データ生成の概要を説明する。
図1は、一実施形態が適用される自動車1と、自動車1が駐車される駐車場とを例示する側面図である。
図2は、
図1に例示された自動車1および駐車場の俯瞰図である。
図1,
図2に示されるように、自動車1(車両)の後方には、予め決められた時間間隔で撮影範囲の画像を撮影して画像データとして出力するカメラ10が備えられる。また、過去の表示画像データt-i(ただし、Nは1以上の整数、iは1~Nの整数)を選択するための座標として、例えば、自動車1の後輪の車軸の中心が(R
x,R
y)として設定される。
【0009】
駐車場は、アスファルトで舗装された地面100に設けられる。駐車場には、障がい者用駐車スペースと、一般駐車スペースとが設けられ、これらの駐車スペースの間には白線が引かれる。駐車場の駐車スペース以外の自動車1が走行可能な範囲は、自動車走行路とされ、自動車1が走行不可能な範囲には、車止めと、支柱と手すりとを含む柵とが設けられ、さらに、車止めの外部は草地とされている。
【0010】
図3は、直線上を後方に移動する時刻t-1,tにおける自動車1の位置と、自動車1の後方に設けられたカメラ10が撮影する撮影範囲と、自動車1の移動により定義される速度vおよび移動量Transを例示する図である。
図4は、自動車1の車両周辺画像を例示する図である。
【0011】
図3に示すように、自動車1が移動すると、時刻t-1,tにおけるカメラ10の撮影範囲も移動する。自動車1が、比較的、速い速度vで直線上を後退しているときに、自動車1の真下、自動車1の後方などの運転手の死角の画像を含む最新の車両周辺画像を示す表示画像データtは、以下のように得られる。
【0012】
まず、時刻tにおいてカメラ10により撮影された画像データから俯瞰画像データtが生成される。さらに、例えば、時刻t-1において生成された表示画像データt-1が、表示画像データtの生成のために取得される。さらに、俯瞰画像データtと、表示画像データt-1とを接合するために、俯瞰画像データtと表示画像データt-1との重複部分が削除され、合成されて、時刻tにおける表示画像データtが生成される。
【0013】
図5は、点C(C
x,C
y)を中心とする半径r(mm)の円上を後方に等速で移動する時刻t-1,tにおける自動車1の位置と、自動車1の後方に設けられたカメラ10が撮影する撮影範囲と、自動車1の移動により定義される回転角θ
tとを例示する図である。
図5に示すように、円上を移動する自動車1の座標(R
x,R
y)の移動に応じて、速度v(km/h)、移動量Trans(mm/フレーム)、自動車1が半径r(mm)の円上を移動するときの回転角θ
t(degree)が定義される。
【0014】
図6は、
図5に示した自動車1の時刻t-1,tにおけるカメラ10の撮影範囲を例示する図である。
図5に示したように、自動車1は点C(C
x,C
y)を中心とする半径r(mm)の円上を移動する。従って、時刻t-1における車両外部画像の表示画像データt-1は、時刻tにおける俯瞰画像データtに対してそれぞれ角度θ
tだけ傾いている。つまり、表示画像データt-1のいずれかから一部を取得して、そのまま俯瞰画像データtと接合して合成すると、これらの間の傾きに起因する欠陥が表示画像データtに現れてしまう。
【0015】
図7は、
図6に示した時刻tにおける俯瞰画像データtと、変換後の表示画像データt-1とから、最新の表示画像データtを生成する第1の方法を例示する図である。
図7に示されるように、まず、表示画像データtの生成に用いられる表示画像データt-1が、取得される。
【0016】
取得された表示画像データt-1は、式2を参照して後述されるように、点C(Cx,Cy)を中心として回転角θtが補償される。つまり、表示画像データt-1にアフィン変換が行われる。このように、アフィン変換された表示画像データt-1の内、俯瞰画像データtと接合される一部が取り出され、俯瞰画像データtと合成されて、時刻tにおける表示画像データtが生成される。
【0017】
図8は、時刻t-3~tまでの各時刻における自動車1の速度、角速度、旋回半径および旋回中心を例示する図であり、自動車1は時刻t-3~時刻t-2では直進、時刻t-2~時刻tの間ではハンドル舵角を変化させながら旋回している場合を示している。なお、
図3,
図5には、以上の説明においては、自動車1が等速直線運動をするときと、同一円周上を等角速度運動するときとが具体例とされ、表示画像データtの生成のために、俯瞰画像データtと、表示画像データt-1が用いられる場合が説明された。しかしながら、自動車1の速度、角速度および回転中心は、実際には、アクセル、ブレーキおよびハンドル操作などにより変化する。従って、
図8を参照して説明されるように、自動車1は時刻の間において、等速直線運動もしくは等角速度運動していると仮定される。また、
図9,
図10,
図14などを参照して下記に詳細に説明されるように、最新の表示画像データtは、俯瞰画像データtと、適応的に選択された過去の表示画像データt-iとから生成される。さらに、表示画像データtを求めるために、表示画像データt-iは、時刻t-i~tまでの各フレームにおける速度、角速度、旋回半径、旋回中心を用いてアフィン変換される。
【0018】
図9は、時刻tにおいて生成された表示画像データtの生成に用いられた表示画像データt-iを例示する図である。最新の表示画像データtの生成に用いられる過去の表示画像データt-iは、自動車1の速度に応じて選択される。
図9に示されるように、自動車1の速度が速いときには、表示画像データtの生成のために、記憶されたN個の表示画像データt-N~t-1の内、例えば、直前の時刻t-1に生成された表示画像データt-1が用いられる。一方、自動車1の速度が遅いときには、表示画像データtの生成のために、例えば、時刻t-4に生成された表示画像データt-4が用いられる。
【0019】
なお、記憶される過去の表示画像データt-N~t-1の数(N)は、記憶に必要なメモリ量と、表示画像データtの画質のトレードオフを考慮して決定される。例えば、
図10を参照して後述される表示画像データ生成装置12のメモリが大きければ大きいほどNの値は大きされ得る。
【0020】
しかしながら、Nの値が大きくされ得るからといって、表示画像データtの生成に用いられる表示画像データt-iを示すiの値を不必要に大きくすると、表示画像データtが、不必要に古い表示画像データを用いて生成されることになってしまう。つまり、表示画像データtの生成のために過去の古すぎる表示画像データを用いると、例えば、既に通過した他の自動車が表示されたり、逆に、接近してきた物体が表示されなかったりする不具合が生じてしまう。
【0021】
[表示画像データ生成装置12の構成]
図10は、
図3,
図7,
図9などを参照して説明された方法により各時刻における表示画像データを生成して表示する表示画像データ生成装置12の構成を示す図である。表示画像データ生成装置12は、基本的に、自動車1が後退するときに、自動車1の下、自動車1の後方およびその他の死角部分を含む車両周辺画像を生成する。ただし、表示画像データ生成装置12は、例えば、自動車1の運転手が、駐車場の駐車位置に正しい向きで停車するための切り返しを行う際に、自動車1を前進させるときにも、上記車両周辺画像を生成することができる。
【0022】
図10に示されるように、表示画像データ生成装置12は、
図1,
図2などに示されたカメラ10が、
図2,
図3などに示された撮影範囲を撮影して得た画像データを、30フレーム/秒で取得する画像取得装置120を備える。また、表示画像データ生成装置12は、画像取得装置120に接続される最新画像処理装置122と、最新画像処理装置122に接続される表示画像生成装置132とをさらに備える。また、表示画像データ生成装置12は、表示画像生成装置132に接続されるパラメータ生成装置126と、表示画像・パラメータ記憶装置128と、過去画像処理装置130と、表示画像選択装置134とをさらに備える。
【0023】
また、表示画像データ生成装置12は、パラメータ生成装置126に接続される走行情報取得装置124をさらに備える。
【0024】
[表示画像データ生成装置12の構成要素]
以下、表示画像データ生成装置12の構成要素を詳細に説明する。表示画像データ生成装置12において、最新画像処理装置122(第1の処理装置)は、画像取得装置120から入力される最新の画像データtを処理し、
図5,
図6に示した撮影範囲から俯瞰画像データtを生成して表示画像生成装置132に出力する。
【0025】
走行情報取得装置124は、自動車1のハンドルの舵角、速度およびシフトレバーの状態(走行情報)を検出し、検出された走行情報を、表示画像データtの生成のたびにパラメータ生成装置126に出力する。パラメータ生成装置126は、走行情報取得装置124から入力された走行情報を処理して、最新の表示画像データtの生成のためにアフィン変換に用いられる平行移動行列Ttと回転行列Rtとを他の構成要素に出力する。なお、以下、平行移動行列Tt-N~Ttおよび回転行列Rt-N~Rtは、パラメータt-N~tとも略記される。
【0026】
表示画像・パラメータ記憶装置128は、表示画像・パラメータ記憶装置128は、要素数N+1のリングバッファの構成を採る。つまり、表示画像・パラメータ記憶装置128は、
図9を参照して説明したように、N+1個の表示画像データt-N~tと、表示画像データt-N~tの生成に用いられた平行移動行列T
t-N~T
tおよび回転行列R
t-N~R
tとを対応づけて記憶する。
【0027】
また、表示画像・パラメータ記憶装置128は、最新の表示画像データtおよびそのパラメータtとを記憶すると、それまでの表示画像データt-(N-1)~tおよびそれらのパラメータt-(N-1)~tを、表示画像データt-N~t-1およびそれらのパラメータt-N~t-1として記憶する。さらに、表示画像・パラメータ記憶装置128は、最新の表示画像データtおよびそのパラメータtとを記憶すると、それまでの最古の表示画像データt-Nおよびパラメータt-Nを削除する。なお、表示画像・パラメータ記憶装置128は、表示画像選択装置134により選択された過去の表示画像データt-iと、これに対応するパラメータtを過去画像処理装置130に出力する。
【0028】
表示画像選択装置134は、表示画像・パラメータ記憶装置128に記憶された過去の表示画像データt-N~t-1から、時刻tの表示画像データの生成に用いられる表示画像データを選択する。表示画像選択装置134は、選択した過去の表示画像データを、表示画像・パラメータ記憶装置128に通知する。なお、表示画像選択装置134の処理内容は、下式5,6を参照してさらに詳細に後述される。
【0029】
過去画像処理装置130(第2の処理装置)は、表示画像・パラメータ記憶装置128から入力された過去の表示画像データを処理して変換し、表示画像生成装置132に出力する。表示画像生成装置132は、変換後の過去の表示画像データを俯瞰画像と合成して車両周辺の俯瞰画像とし、最新の表示画像データとして出力する。
【0030】
[パラメータ生成装置126]
以下、パラメータ生成装置126の処理をさらに詳細に説明する。時刻tにおいて得られた俯瞰画像データtに含まれる画素の座標(xt,yt)を、直前の時刻t-1における表示画像データt-1の座標(xt-1,yt-1)に変形するためのアフィン変換は、平行移動行列Ttおよび回転行列Rt(パラメータt)を用いて、下式1により表される。
【0031】
【0032】
パラメータ生成装置126は、過去画像処理装置130におけるアフィン変換処理において用いられるパラメータを、
図3に示したように自動車1が直線上を移動するときと、
図5に示したように円上を移動するときとでは異なる方法で算出する。時刻t-1,tの期間において、自動車1が、
図5に示したように、旋回運動するときには、円周上を等角速運動していると仮定して、パラメータ生成装置126は、下式2により平行移動行列T
tおよび回転行列R
t(パラメータt)を算出する。ただし、下式2において、θ
tは、
図5に示されたθ
t-1に対応する。
【0033】
上式1における回転半径rは、自動車1が横滑りしないときには、ハンドルの舵角と車種に応じて一意に決まるので、ハンドルの舵角と回転半径rとの関係を予め測定すれば、これらを対応付けたテーブルが作成されうる。測定された舵角を用いて、このように作成されたテーブルを参照することにより、回転半径rが求められ得る。また、自動車1の舵角により一意に定められるタイヤ角αと、既知の自動車1のホイールベースWおよびトレッドTにより、回転半径rは、r=W/tanα+T/2と求められる。
【0034】
図11は、旋回半径を計算するための座標系を例示する図である。ここで、座標系を
図11に示すように定義する。このとき、上記式3における円の中心座標C(C
x,C
y)の内、座標C
xは、C
x=r(ハンドルを左に曲げたとき)、または、C
x=-r(ハンドルを右に曲げたとき)と求められる。また、座標C
yは、C
y=L
roh(L
rohはリアオーバーハング)と求められる。なお、
図11においては、
図5,
図8においてとは異なり、自動車1の最後部の中心が座標系の原点とされている。
【0035】
【0036】
図5に示されたように自動車1が旋回運動するときには、円周上を等角速運動していると仮定して、パラメータ生成装置126は、時刻t-1,tの期間における
図1などに示した自動車1の回転角θ(degree)および移動量Trans(mm/フレーム)を、下式3により算出する。なお、上式3において、Shift=Reverseは、自動車1が後退していることを示し、Shift≠Reverseは、自動車1が前進していることを示す。
【0037】
【0038】
また、1000000vを3600FrameRateで除算して得られる値の単位は、mm/フレームである。また、上式3において、Transは変更後のフレームに対応する長さ(mm/frame)であり、rは円の半径である。
【0039】
なお、
図3に示したように、自動車1が直線上を等速で移動しているときには、パラメータ生成装置126は、時刻t-1,tの期間における自動車1の移動量Trans(mm/フレーム)を、下式4により生成する。ただし、下式4において、fは、表示画像データt-1の1ピクセル分に対応する長さである。なお、fは、表示画像データに含まれるピクセルの縦横比と、表示画像データに対応する画像の長さの縦横比が同じであれば、(f=表示画像データに対応する画像の縦(または横)の長さ(mm))/表示画像データの縦(または横)のピクセル数)として求められる。
【0040】
【0041】
[表示画像選択装置134]
以下、表示画像選択装置134の動作をさらに詳細に説明する。時刻t-iの表示画像データt-iを用いて時刻tの表示画像データtを生成するアフィン変換のための平行移動行列Tt,iおよび回転行列Rt,i(パラメータt,i)は、下式5により計算される。ただし、i=1~N-1である。
【0042】
【0043】
上式5において、常にi=1とすると、時刻tの表示画像データtの生成のために、常に多くの回数の変形を経た時刻t-1の表示画像データt-1が使用される。従って、時刻tの表示画像データtにボケが生じてしまう。一方、このようなボケの発生を防ぐために、上式5において、常にi=j(jは2~N-1の整数)とすることも考えられる。このとき、自動車1の速度が速いと、表示画像生成装置132における時刻tの俯瞰画像データと、時刻t-jの表示画像データが変換されて得られた表示画像データとを合成するための接合がうまくゆかず、接合部分に不整合(ズレ)が生じてしまうことがある。
【0044】
表示画像選択装置134は、上述したボケおよびズレを防ぐために、各時刻tの表示画像データを生成するために最適な時刻t-iの表示画像データt-iを選択する。このような最適な選択のために、表示画像選択装置134は、
図2,
図3に示された自動車1の座標(R
x,R
y)の時刻t-i~tの移動量D
iを、下式6に示されるように算出し、最小のD
i>閾値Thを与える時刻iの表示画像データを選択する。
【0045】
【0046】
以下、表示画像選択装置134の処理をさらに詳細に説明する。
図12は、
図10に示した表示画像選択装置134の処理(S10)を示すフローチャートである。表示画像選択装置134は、ステップS100において、S102~S106の処理のループを、変数iを1からインクリメントさせながらN回、繰り返すことを宣言する(i=1~N)。
【0047】
ステップS102において、表示画像選択装置134は、パラメータ生成装置126を制御して、時刻tの表示画像データの生成のために、時刻t-iの表示画像データを用いるためのパラメータRt,i,Tt,iを、上式5により算出させる。ステップS104において、表示画像選択装置134は、上式6を用いて、パラメータRt,i,Tt,iから移動量Diを算出する。
【0048】
ステップS106において、表示画像選択装置134は、S102の処理により算出された移動量Diが、予め実験またはシミュレーションにより決められた閾値Thよりも大きいか否かを判断する。表示画像選択装置134は、移動量Diが、閾値Thよりも大きいとき(S106の処理においてY)にはS110の処理に進み、これ以外のとき(S106の処理においてN)にはS100の処理に戻る。
【0049】
ステップS110において、表示画像選択装置134は、移動量Di>閾値Thを与える時刻iの表示画像データt-iを、時刻tにおける表示画像データtの生成に用いるように選択する。なお、i=1~Nの全てにおいて、移動量Di≦閾値Thであったときには、表示画像選択装置134は、時刻t-Nの表示画像データt-Nを、時刻tにおける表示画像データtの生成に用いるように選択する。
【0050】
[表示画像データ生成装置12の全体的処理]
以下、
図10に示した表示画像データ生成装置12の全体的な処理を説明する。
図13は、
図10に示した表示画像データ生成装置12の処理(S12)を示すフローチャートである。ステップS120において、画像取得装置120は、
図1,
図2に示したカメラ10から時刻tにおける撮影範囲の画像データtを1フレーム分、取得する。
【0051】
ステップS122において、最新画像処理装置122は、S120において取得された画像データtから俯瞰画像データtを生成する。ステップS124において、走行情報取得装置124は、式5に示した時刻tの表示画像データの生成に必要なパラメータt(式5;Tt,i,Rt,i)を算出するために必要な走行情報を取得する。
【0052】
ステップS126において、表示画像選択装置134は、時刻t-iの表示画像データt-iを用いて時刻tの表示画像データtを生成するために必要なパラメータt,i(T
t,i,R
t,i)を、上式5により順次、生成させる。ステップS128において、表示画像選択装置134は、
図12を参照して説明されたように、時刻tの表示画像データを生成するために用いられる過去の時刻t-iの表示画像データを選択する。
【0053】
図14は、時刻tにおける俯瞰画像データtと、変換後の表示画像データt-iとから、最新の表示画像データtを生成する方法を例示する図である。ステップS130において、過去画像処理装置130は、パラメータ生成装置126により生成されたパラメータt(T
t,i,R
t,i)を用いて、時刻t-iの表示画像データt-iを処理する。つまり、過去画像処理装置130は、時刻t-iの表示画像データt-iの内、時刻tの表示画像データtを、図*3および上式5の最下行に示したように変換する。ステップS132において、最新画像処理装置122は、
図7に示したように、時刻tにおいて取得された画像データtから俯瞰画像データtを生成する。
【0054】
ステップS132において、表示画像生成装置132は、過去画像処理装置130により処理された表示画像データt-iの内、俯瞰画像データtと重複しない部分と、最新画像処理装置122により生成された俯瞰画像データtとを、
図7に示したように接合して合成し、時刻tにおける表示画像データtを生成する。ステップS134において、表示画像・パラメータ記憶装置128は、S132の処理において生成された最新の時刻tの表示画像データおよびそのパラメータT
t,R
tを記憶し、最古の表示画像データおよびそのパラメータを削除する。
【0055】
[ハードウェア構成]
図15は、
図10に示した表示画像データ生成装置12を実現するためのコンピュータ14の構成を示す図である。
図15に示されるように、コンピュータ14は、表示画像データをユーザに表示する表示装置140と、CPUおよびその周辺回路を含むCPU142と、ROMおよびRAMを含むメモリ144と、走行情報計器からのデータを受けるI/O回路146とを備える。また、コンピュータ14は、カメラ10からの画像データを受けるカメラインターフェース(IF)150と、HDD、DVD、フラッシュメモリなどの不揮発性記録媒体との間でデータの書き込みおよび読み出しを行う記録装置148とをさらに備える。
【0056】
これらコンピュータ14の各構成要素は、バス152を介して互いに接続される。つまり、コンピュータ14は、情報の取得、処理および表示が可能な一般的なコンピュータとしての構成要素を備える。
図10に示した表示画像データ生成装置12の各構成要素それぞれは、ハードウェアおよびソフトウェアまたはこれらのいずれかにより実現され得る。従って、表示画像データ生成装置12の構成要素の内、ソフトウェアにより実現される構成要素は、メモリ144にロードされたプログラムの実行により実現される。
【0057】
図16は、常に時刻tに近い時刻t-i(例えば、t-1)の表示画像データt-iを用いて得られた最新の時刻tにおける表示画像データtを例示する図である。最新の時刻tに近い時刻t-i(例えば、t-1)の表示画像データt-iを用いて最新の時刻tにおける表示画像データtを生成すると、上式5を参照して説明したように、
図16に示されるように表示画像データtにボケが生じてしまう。一方、
図10に示された表示画像データ生成装置12によれば、最新の時刻tにおける表示画像データtの生成に用いられる画像データt-iが、
図12を参照して説明されたように適応的に選択されるので、表示画像データtに生じるボケを低減することができる。
【0058】
図17は、常に時刻tから遠い時刻t-i(例えば、t-N)の表示画像データt-Nを用いて得られた最新の時刻tにおける表示画像データtを例示する図である。最新の時刻tから遠い時刻t-i(例えば、t-N)の表示画像データt-iを用いて最新の時刻tにおける表示画像データtを生成すると、
図17に示されるように、表示画像データt-iから得られた部分と、俯瞰画像データtとの接合部分にガタつきが生じてしまう。一方、
図10に示された表示画像データ生成装置12によれば、最新の時刻tにおける表示画像データtの生成に用いられる画像データt-iが、
図12を参照して説明されたように適応的に選択されるので、表示画像データtに生じるガタつきを低減することができる。
【0059】
[変形例]
図18は、変換後の表示画像データt-iの一部と、時刻tの画像データtから得られた俯瞰画像データtとを合成して最新の表示画像データtを生成する第2の方法を説明する図である。
図18に示すように、まず、
図7に示された表示画像データ生成装置12の表示画像生成装置132が、最新の時刻tの俯瞰画像データの内、変換後の表示画像データの一部と接合される部分を、数ライン分、削除する。さらに、表示画像生成装置132が、このように接合部分のデータが削除された俯瞰画像データと、変換処理後の表示画像データt-iとを接合して合成する。このようにことにより、写り込んだバンパーなどの自動車1の部分の画像が排除される。従って、このような表示画像生成装置132の処理により、表示画像データの画質が改善される。
【0060】
なお、表示画像・パラメータ記憶装置128に記憶される表示画像データt-N~tは、実際に表示される画像よりも大きい画像に対応するように生成されるとよりよい。このようにすると、表示画像データtの生成に用いられる表示画像データt-iの情報量が大きいため、画像の変形とそれに伴う補間処理による情報の損失の影響が相対的に小さくなる。従って、表示画像データtの生成に用いられるときに、変形の蓄積の影響を軽減できる。従って、実際に表示される画像よりも大きい画像に対応するように生成された表示画像データt-iを用いて最新の表示画像データtを生成すると、ボケの発生を軽減することができる。また、表示画像生成装置132が、最新の時刻tの俯瞰画像データと、処理後の時刻t-iの表示画像データとの対応点を検出する処理をさらに行い、俯瞰画像データと処理後の時刻t-iの表示画像データとの対応点を合わせるように接合すると、表示画像データに生じるズレを改善できる。
【0061】
また、表示画像生成装置132が、表示画像データに写り込んだ自動車1のバンパーなどの部分を検出する処理をさらに行い、検出された自動車1の部分を除いた表示画像データを生成すると、表示画像データの品質をさらに高めることができる。また、カメラ10の撮影範囲は、自動車1の後方でなくてもよく、自動車1において、その運転手の死角となりうる範囲であればどのような範囲でもよい。また、自動車1の前方にカメラ10を増設することにより、切り返しなどの際に自動車1が前進するときの死角保障ができる。なお、自動車1の前方にカメラ10が元々、設けられているときには、このようなカメラ10を用いて前進の際の死角を保証できる。
【0062】
本発明の実施形態が説明されたが、この実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 自動車
10 カメラ
100 地面
12 表示画像データ生成装置
120 画像取得装置
122 最新画像処理装置
124 走行情報取得装置
126 パラメータ生成装置
128 表示画像・パラメータ記憶装置
130 過去画像処理装置
132 表示画像生成装置
134 表示画像選択装置
14 コンピュータ
140 表示装置
142 CPU
144 メモリ
146 I/O回路
148 記録装置
150 カメラIF
152 バス