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特許7109716パラ-アラミド粒子を含む耐切創性コーティングを有する生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】パラ-アラミド粒子を含む耐切創性コーティングを有する生地
(51)【国際特許分類】
   D06M 23/08 20060101AFI20220725BHJP
   D06M 15/31 20060101ALI20220725BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20220725BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20220725BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20220725BHJP
   D03D 15/513 20210101ALI20220725BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20220725BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20220725BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
D06M23/08
D06M15/31
D06M15/564
D06M15/59
D06M15/693
D03D15/513
D03D15/47
D04B1/16
D04B21/16
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019521769
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 US2017051110
(87)【国際公開番号】W WO2018080651
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】62/413,467
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】アフシャリ メヘディー
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/142340(WO,A1)
【文献】特開2009-040871(JP,A)
【文献】国際公開第2012/149172(WO,A1)
【文献】特開2005-113318(JP,A)
【文献】国際公開第2006/137394(WO,A1)
【文献】特開昭51-077682(JP,A)
【文献】特開昭60-075675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00-16/00,
19/00-23/18
D06N 1/00- 7/06
D04B 1/00- 1/28,
21/00-21/20
D03D 1/00-27/18
A41D 19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐切創性の編み生地であって、
該耐切創性の編み生地の表面にポリマーコーティングを含み、
前記ポリマーコーティングはエラストマー材料及び1~10重量%のパラ-アラミド粒子からなり、前記パラ-アラミド粒子が20~500ミクロンの平均粒径を有する、耐切創性の編み生地。
【請求項2】
前記耐切創性の編み生地が、パラ-アラミド繊維、メタ-アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、又はこれらの任意の混合物の糸を含む、請求項1に記載の耐切創性の編み生地。
【請求項3】
前記パラ-アラミド繊維がポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)繊維である、請求項2に記載の耐切創性の編み生地。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の耐切創性の編み生地を含む耐切創性の物品であって、該耐切創性の物品は、手袋、エプロン、又は袖である、耐切創性の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野。本発明は、驚くべき改善された切創性能を有する生地のためのコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明。エラストマーコーティングを有する手袋などの耐切創性物品が知られている。更に、Zhouらの国際公開第2015/142340号又はGhazalyらの国際公開第2012/149172号に開示されているような無機粒子を含むコーティングを有する物品が知られている。
【0003】
シリカ及び様々な炭化物などの無機粒子は硬い材料であることが知られており、このような材料が手袋などの耐切創性物品用のコーティングに配合された場合、これらの無機粒子は自動車のボンネットのように微細に仕上げられた部品などの取り扱われる品物に引っ掻き傷の原因をもたらすと考えられている。物品の耐切創性を改善することができ、そして引っ掻き傷の可能性も減少させる何らかの特徴が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、1~10重量%のパラ-アラミド粒子を含むポリマーコーティングを含む生地であって、粒子が20~500ミクロンの平均粒径を有する生地に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、パラアラミド耐切創性粒子を含むコーティングを含む耐切創性生地及び/又は物品に関する。生地は、パラアラミド、メタアラミド、又はブレンドの繊維から製造することができ、また脂肪族ポリアミド(ナイロン)、ポリオレフィン、又はポリエステルなどの他の繊維を含んでいてもよい。
【0006】
いくつかの好ましい実施形態では、耐切創性生地はパラ-アラミドから製造される。特に、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,DEから入手可能なKevlar(登録商標)ブランドのパラ-アラミド繊維などのパラ-アラミド繊維は、その優れた切創保護のため生地及び手袋などの物品において望ましい。
【0007】
驚くべきことに、このような生地又は物品のコーティングへパラ-アラミド粒子をわずか1%添加すると、耐切創性の測定可能な改善、通常耐切創性の5%以上の改善、好ましくは10%以上の改善が得られることが見出された。実用上の観点からは、最大約10%のパラ-アラミド粒子の添加が望ましい。そのようなより多量のパラ-アラミド粒子は、最大約50%程度耐切創性を改善することが示された。
【0008】
粒子の平均直径は、20~500ミクロン(マイクロメートル)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、この範囲内の粒子の平均直径は50ミクロン以上であり、いくつかの他の実施形態では、この範囲内の粒子の平均直径は75ミクロン以上である。いくつかの実施形態では、この範囲内の粒子の平均直径は120ミクロン以上である。いくつかの実施形態では、この範囲内の粒子の平均直径は250ミクロン以下であり、いくつかの実施形態では、この範囲内の粒子の平均直径は120ミクロン以下である。いくつかの実施形態では、パラ-アラミド粒子はフィブリルを含まず、比較的小さい表面積を有する。個々の粒子は通常丸みを帯びた形状をしており、「フィブリルを含まない」という用語は、これらが多量のフィブリル又は触糸(tentacle)を含まないことを意味する。コーティング全体に実質的に均一に分散されたアラミド粒子は、粒子の化学組成のため、コーティング及び物品に改善された耐切創性を付与すると考えられている。
【0009】
コーティングの粒子成分は、約1~10重量%のアラミド粒子である。最も好ましいパラ-アラミド粒子はポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)を含む。これらは実質的にフィブリルを含まないため、アラミド粒子は、耐切創性生地上に均一で凝集のないコーティングを付与することができる。
【0010】
パラ-アラミド粒子は、パラ-アラミドポリマーを望みのサイズに粉砕することによって製造することができる。例えば、米国特許第3,063,966号明細書及び同第4,308,374号明細書の教示に従って製造されたパラ-アラミドポリマーは、水で濡れたクラムの形態で仕上げられ、これは乾燥されてから50~500ミクロンの平均直径までハンマーミルで粉砕することができる。乾燥及び粉砕の後、パラ-アラミド粒子は分級することができ、望みのサイズ範囲の粒子を使用のために単離することができる。
【0011】
好ましくは、アラミド粒子は、比較的小さい表面積(1グラム当たり2平方メートル未満、最小0.2平方メートル)を有し、これは、フィブリルを有する高表面積のパルプ状粒子とフィブリルを含まないパラ-アラミド粒子との間の違いを意味している。フィブリルを有するパルプ状アラミド粒子は、通常、1グラム当たり5平方メートルを超える、1グラム当たり10平方メートル程度の表面積を示す。
表面積は、窒素を使用するB.E.T.法により決定される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書においてパラアラミド粒子でコーティングされた生地及び物品は、一般的にフィラメント当たり100%の1.5デニール(フィラメント当たり1.7dtex)のパラ-アラミド繊維糸を使用して製造された生地と同等かそれより大きい耐切創性を有することなどの、更に大きい利点を有する。つまり、いくつかの実施形態では、100%パラ-アラミド繊維生地の耐切創性は、パラ-アラミド粒子を有するがより少ない量のパラ-アラミド繊維を有するコーティングされた生地によって再現することができる。すなわち、生地又は物品は、より低い重量で同等の性能を有し、これは使用時の快適性の改善につながる。
【0013】
本明細書において、「生地」という言葉は、任意の織られた、編まれた、又は不織層の構造などを含むことが意図されている。好ましい生地は、糸から製造された織り生地又は編み生地である。「糸」とは、一緒に紡糸されるか又は撚り合わされて連続ストランドを形成する繊維の集合体を意味する。本明細書においては、糸は、通常、織り及び編みのような操作に好適な繊維製品材料の最も簡単なストランドである、単糸として当該技術分野で知られているものを意味し、あるいはこれは諸撚糸を意味していてもよい。紡糸ステープル糸は、多少の撚りを有するステープル繊維から形成することができ、連続マルチフィラメント糸は撚りの有無に関わらず形成することができる。撚りが単糸に存在する場合、それは全て同じ方向にある。本明細書中で使用される「諸撚糸(ply yarn及びplied yarn)」という語句は、互換的に使用することができ、撚り合わされている又は重ね合わせられている2本以上の単糸を指す。
【0014】
糸は、ステープルファイバーの均質ブレンドを含んでいてもよい。「均質ブレンド」とは、様々なステープルファイバーがステープル糸の束の中に均一に分布していることを意味する。いくつかの実施形態で使用されるステープルファイバーは、2~20センチメートルの長さを有する。ステープルファイバーは、短ステープル若しくは綿系の糸システム、長ステープル若しくは羊毛系のシステム、又はけん切糸システムを使用して糸へと紡糸されてもよい。いくつかの実施形態では、ステープルファイバーの切断長さは、特には綿系の紡糸システムにおいて使用されるステープルについて、好ましくは3.5~6センチメートルである。いくつかの他の実施形態では、ステープルファイバーの切断長さは、特には長ステープル若しくは羊毛系の紡糸システムにおいて使用されるステープルについて、好ましくは3.5~16センチメートルである。多くの実施形態で使用される個々のステープルファイバーは、5~30マイクロメートルの直径、及びフィラメント当たり約0.5~6.5デニール(フィラメント当たり0.56~7.2dtex)の範囲、好ましくはフィラメント当たり1.0~5.0デニール(フィラメント当たり1.1~5.6dtex)の範囲の線密度を有する。
【0015】
「織られた」は、織り加工によって、すなわち、典型的には直角に少なくとも2本の糸を織り合わせるか織り交ぜることによって、製造された任意の生地を含むことが意図されている。通常、そのような生地は、縦糸と呼ばれる1組の糸を、緯糸又は横糸と呼ばれる別の組の糸と織り合わせることによって製造される。織り生地は、平織り、千鳥綾織り、篭目織り、サテン織り、綾織り、アンバランスな織りなどの本質的に任意の織りを有していてもよい。平織りが最も一般的である。「編まれた」は、縦編み(例えば、トリコット、ミラニーズ、又はラッセル)及び横編み(例えば、円形又は扁平)などの、針又はワイヤによって1本以上の糸の一連のループを連結することによって製造可能な構造を含むことが意図されている。「不織」は、織りや編みなしで製造可能であり、かつ(i)少なくとも一部の繊維を機械的に絡まり合わせること、(ii)少なくとも一部の複数の繊維を融着すること、又は(iii)バインダー材料の使用によって少なくとも一部の繊維を接着すること、のいずれかによって一体に保持される可撓性シート材料を形成する繊維の網状構造を含むことが意図されている。糸を利用する不織生地は主に一方向生地を含むが、他の構造も可能である。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、生地は、任意の適切な編みパターン及び従来の編み機を使用した編み生地である。耐切創性及び快適性は編み生地のきつさに影響され、そのきつさは任意の具体的な要求を満たすように調節することができる。耐切創性と快適性の非常に効果的な組み合わせは、例えばシングルジャージーニットパターン及びテリーニットパターンで見出されている。いくつかの実施形態では、生地は、3~30oz/yd2(100~1000g/m2)、好ましくは5~25oz/yd2(170~850g/m2)の坪量を有し、坪量範囲の上端において、生地はより大きい切創からの保護を与える。
【0017】
生地は、切創からの保護を与えるために物品において利用することができる。有用な物品としては、限定するものではないが、手袋、エプロン、及び袖が挙げられる。ある好ましい実施形態では、物品は編まれた、好ましくは糸のスプールから直接編まれた耐切創性の手袋である。
【0018】
いくつかの実施形態では、脂肪族ポリアミド繊維とは、ナイロンポリマー又はコポリマーを含む任意の種類の繊維を指す。ナイロンは、ポリマー鎖の不可欠な部分としての繰り返しアミド基(-NH-CO-)を有する長鎖合成ポリアミドであり、ナイロンの2つの一般的な例は、ナイロン66(ポリヘキサメチレンジアミンアジパミド)及びナイロン6(ポリカプロラクタム)である。他のナイロンとしては、11-アミノ-ウンデカン酸から製造されるナイロン11、及びヘキサメチレンジアミンとセバシン酸との縮合生成物から製造されるナイロン610を挙げることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン繊維とは、ポリプロピレン又はポリエチレンから製造された繊維を指す。ポリプロピレンはプロピレンのポリマー又はコポリマーから製造される。1つのポリプロピレン繊維は、Phillips FibersからMarvess(登録商標)の商品名で市販されている。ポリエチレンは、100モル%のポリマーを基準として少なくとも50モル%のエチレンを有するエチレンのポリマー又はコポリマーから製造され、溶融物から紡糸することができる。しかしながら、いくつかの好ましい実施形態では、繊維はゲルから紡糸される。有用なポリエチレン繊維は、高分子量ポリエチレン又は超高分子量ポリエチレンのいずれかから製造することができる。高分子量ポリエチレンは、通常約40,000超の重量平均分子量を有する。1つの高分子量溶融紡糸ポリエチレン繊維は、Fibervisions(登録商標)から市販されている。ポリオレフィン繊維は、様々なポリエチレン及び/又はポリプロピレンの鞘芯構造又はサイドバイサイド構造を有する二成分繊維も含んでいてもよい。市販の超高分子量ポリエチレンは、通常、約100万以上の重量平均分子量を有する。1つの超高分子量ポリエチレン又は延長された鎖のポリエチレンの繊維は、通常、米国特許第4,457,985号明細書に説明されている通りに調製することができる。このタイプのゲル紡糸繊維は、DSM及び東洋紡株式会社から入手可能なDyneema(登録商標)及びHoneywellから入手可能なSpectra(登録商標)の商品名で市販されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリエステル繊維とは、少なくとも85重量%の、二価アルコールとテレフタル酸とのエステルからなる任意の種類の合成ポリマー又はコポリマーを指す。ポリマーは、エチレングリコールとテレフタル酸又はその誘導体との反応によって製造することができる。いくつかの実施形態では、好ましいポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)である。ポリエステル配合物は、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリ(エチレングリコール)、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸などのような様々なコモノマーを含んでいてもよい。これらのコモノマーに加えて、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンのような分岐剤、並びにペンタエリスリトールを使用してもよい。PETは、テレフタル酸又はその低級アルキルエステル(例えばジメチルテレフタレート)、及びエチレングリコール又はこれらのブレンドもしくは混合物のいずれかから公知の重合技術によって得ることができる。有用なポリエステルとしては、ポリエチレンナフタレート(PEN)も挙げることができる。PENは、2,6ナフタレンジカルボン酸及びエチレングリコールから公知の重合技術によって得ることができる。
【0021】
いくつかの他の実施形態では、好ましいポリエステルはサーモトロピック溶融挙動を示す芳香族ポリエステルである。これらとしては、Kurarayから入手可能なVectran(登録商標)の商品名で入手可能なものなどの液晶性又は異方性の溶融ポリエステルが挙げられる。いくつかの他の実施形態では、米国特許第5,525,700号明細書に記載されているものなどの、完全に芳香族の溶融加工可能な低融点の液晶性ポリエステルポリマーが好ましい。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態では、生地はアラミド繊維から製造され、これは好ましくはパラ-アラミド繊維及び/又はメタ-アラミド繊維であってもよい。ポリマーは、アミド(-CONH-)結合の少なくとも85%が2つの芳香族環に直接結合している、主として芳香族であるポリアミドのホモポリマー、コポリマー、及びこれらの混合物を含んでいてもよい。環は、無置換であっても置換されていてもよい。パラ-アラミド繊維はパラ-配向の合成芳香族ポリアミドポリマーを含む一方で、メタ-アラミド繊維はメタ-配向の合成芳香族ポリアミドポリマーを含む。すなわち、ポリマーは、2つの環又はラジカルが分子鎖に沿って互いに対してパラ配向している場合にはパラ-アラミドであり、2つの環又はラジカルが分子鎖に沿って互いに対してメタ配向している場合には、ポリマーはメタ-アラミドである。好ましくは、ポリマーは、ポリマーの形成において使用される第一級ジアミンが10%以下のその他のジアミンで置き換えられるか、又はポリマーの形成において使用される第一級二酸塩化物が10%以下のその他の二酸塩化物で置き換えられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、好ましいアラミド繊維はパラ-アラミド繊維である。ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(PPD-T)及びそれらのコポリマーが好ましいパラ-アラミドである。PPD-Tとは、p-フェニレンジアミンとテレフタロイルクロリドとの等モルでの重合から得られるホモポリマー、並びに、p-フェニレンジアミンと共に少量の他のジアミンを、及びテレフタロイルクロリドと共に少量の他の二酸塩化物を配合することにより得られるコポリマーを意味する。通常は、他のジアミン及び他の二酸塩化物は、他のジアミン及び二酸塩化物が重合反応を妨げる反応性基を持たないことのみを条件として、p-フェニレンジアミン又はテレフタロイルクロリドの最大約10モルパーセント、あるいはそれよりわずかに多い量で使用することができる。PPD-Tは、他の芳香族ジアミン及び他の芳香族二酸塩化物がパラ-アラミドの特性に悪影響を有さない量で存在することのみを条件として、他の芳香族ジアミン及び他の芳香族二酸塩化物(例えば2,6-ナフタロイルクロリド又はクロロ-もしくはジクロロテレフタロイルクロリド等)の配合により得られるコポリマーも意味する。
【0024】
パラ-アラミド繊維は、通常、凝固浴の中へのキャピラリーを通したパラ-アラミド溶液の押出により紡糸することができる。ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)の場合、溶液の溶媒は通常濃硫酸であり、押出は通常低温の水性凝固浴の中へエアギャップを通して行われる。そのような方法は周知であり、一般的には、米国特許第3,063,966号明細書;同第3,767,756号明細書;同第3,869,429号明細書;及び同第3,869,430号明細書の中に開示されている。パラ-アラミド繊維は、E.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能なKevlar(登録商標)ブランドの繊維、及び帝人株式会社から入手可能なTwaron(登録商標)ブランドの繊維として市販されている。
【0025】
好ましいメタ-アラミドはポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)及びそのコポリマーである。1つのそのようなメタ-アラミド繊維は、Wilmington,DEのE.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能なNomex(登録商標)アラミド繊維であるが、メタ-アラミド繊維は、東京の帝人株式会社から入手可能なConex(登録商標);大阪のユニチカ株式会社から入手可能なApyeil(登録商標);中国山東省のYantai Spandex Co.Ltdから入手可能なNew Star(登録商標)メタ-アラミド;中国広東省XinhuiのGuangdong Charming Chemical Co.Ltdから入手可能なChinfunex(登録商標)Alamid1313の商標の下、様々な種類で入手可能である。メタ-アラミド繊維は本質的に難燃性であり、任意の数のプロセスを用いて乾式又は湿式紡糸によって紡糸することができる。しかしながら、米国特許第3,063,966号明細書;同第3,227,793号明細書;同第3,287,324号明細書;同第3,414,645号明細書;同第5,667,743号明細書は、使用することができるアラミド繊維を製造するための有用な方法の実例である。
【0026】
本明細書で説明される任意の繊維、又はこれらの繊維と組み合わされる他の繊維は、これらの繊維を染色又は着色するために使用される当該技術分野で周知の従来の手法を使用して色が付与されてもよい。あるいは、多くの様々な供給業者から多くの着色繊維を商業的に入手することができる。着色されたアラミド繊維を製造する1つの代表的な方法は、Leeの米国特許第5,114,652号明細書及び同第4,994,323号明細書に開示されている。本明細書で説明した繊維又はその繊維と組み合わせた他の繊維のいずれも、例えばLaNieveらの米国特許第6,162,538号明細書に開示されているような他の切断促進添加剤又は充填剤の耐切創性を改善するための強化粒子を有していてもよい。
【0027】
生地及び物品をコーティングするために適した有用な高分子化合物としては、限定するものではないが、ポリウレタンエラストマー、ニトリルゴム、ビニルゴム、ポリイソプレン、ネオプレン、クロロプレン、ポリクロロプレン、アクリロニトリルブタジエン、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、スチレン-ブタジエン、エチレン酢酸ビニル、又はこれらのいくつかの組み合わせなどの天然及び合成のゴムが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマー化合物は、フッ素含有ポリマーなどの、生地の表面でのコーティング及び使用に適したエラストマー挙動を有する他の材料を含む。エラストマー材料は、ラテックス、溶液、溶融物、モノマー-ポリマー混合物、又は任意の他の液体の形態として生地に塗布することができる。ポリマー化合物とパラアラミド粒子との好適な混合物は、ポリマー化合物中でのパラアラミド粒子の均一な分散が形成されるまでパラ-アラミド粒子と液体ポリマー化合物とを混合又は混錬することによって形成される。
【0028】
生地及び物品は、生地又は物品を混合物に浸漬すること、生地又は物品の表面に混合物を溶液コーティング又は溶融コーティングすること、混合物を生地又は物品の表面に噴霧又は吹付けることなどの意図により、あるいは生地又は物品の表面に混合物を含有する泡を塗布することにより、ポリマー化合物とパラ-アラミド粒子との混合物でコーティングすることができる。
【実施例
【0029】
試験方法
耐切創性。切創性能を決定するために、ASTM規格F1790-97の「Standard Test Method for Measuring Cut Resistance of Materials Used in Protective Clothing」を使用した。試験の実施に際しては、特定の力の下で、刃物の先端がマンドレル上に取り付けられた試料を横切って一回引かれる。複数の異なる力で、最初の接触からカットスルーまでに引かれた距離が記録され、グラフはカットスルーまでの距離の関数としての力から構成される。グラフから、25ミリメートルの距離でのカットスルーについての力が決定され、供給刃物の一貫性を検証するために正規化される。正規化された力は、耐切創力として報告される。
【0030】
刃物の先端は、長さ70ミリメートルの鋭い先端を有するステンレス鋼のナイフの刃である。試験の開始時及び終了時にネオプレン校正材料に400gの荷重をかけて供給刃物を校正する。各切創試験のために新しい刃物の先端を使用する。マンドレルは半径38ミリメートルの丸い導電性の棒であり、試料は両面テープを使用してこれに取り付けられる。刃物の先端は、マンドレルの長手方向軸と直角にマンドレル上の生地を横切って引かれる。刃物の先端がマンドレルと電気的に接触した時にカットスルーが記録される。
【0031】
平均粒径。粒径、分布、及び平均粒径を測定及び決定するために、Coulter LS200を使用する。装置は、粒子サイズについての主な情報源として、粒子によるレーザー光(750nm)の回折を使用する。
【0032】
実施例1
撚り合わせたステープルを主体とする16/2綿番手糸(合計約665デニール(760dtex))のポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(PPD-T)繊維を使用して、8枚の編み生地試料をコーティング試験用に製造した。
それぞれの編み生地試料は、20グラム/平方メートルの坪量を有していた。次いで、PPD-T樹脂粒子をポリウレタン(LubrizolからのSancure(登録商標)2710)と混合することによって、7種の異なるコーティング混合物を製造した。PPD-T粒子は、120及び500マイクロメートルのいずれかの平均粒径を有していた。ポリウレタンと混合したPPD-T樹脂粒子の量は、樹脂の重量を基準にして1~10重量%の範囲で様々であった。具体的な粒径及び配合量を表に示す。対照生地として使用した1枚の生地試料はポリウレタンのみでコーティングされており、粒子を含んでいなかった。
【0033】
その後、PPD-T粒子を含むある量の液体樹脂を生地表面に注いでからスクイージーでコーティングを滑らかにすることによって、編み生地の片面を手作業でコーティングした。その後、コーティングを室温で一晩生地の上で硬化させた。
【0034】
その後、各コーティングされた生地試料の切創性能を測定した。結果を表に示す。わずか数パーセントのPPD-T樹脂粒子をコーティングに添加することにより、切創性能の大幅な改善が見出された。
【0035】
同様に、手袋を最初に糸から編み、次いでPPD-T粒子を含有する液体樹脂中に手袋を浸漬し、使用した材料に応じてコーティングを自然に硬化させるか硬化することによって、手袋をコーティングすることができる。
【0036】
【表1】
NA - 該当なし
【0037】
実施例2
PPD-T樹脂粒子をポリウレタンではなくニトリルゴムコーティングと混合したこと以外は実施例2を繰り返した。PPD-T粒子を含有するコーティングは、耐切創性において実施例1と同様の改善を生地にもたらす。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1.1~10重量%のパラ-アラミド粒子を含むポリマーコーティングを含む生地であって、前記粒子が20~500ミクロンの平均粒径を有する、生地。
2.前記粒子が120~500ミクロンの平均粒径を有する、上記1に記載の生地。
3.前記パラ-アラミド粒子がポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)粒子である、上記1又は2に記載の生地。
4.前記生地が、パラ-アラミド繊維、メタ-アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、又はこれらの任意の混合物の糸を含む、上記1~3のいずれか1つに記載の生地。
5.前記パラ-アラミド繊維がポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)繊維である、上記4に記載の生地。
6.前記生地が編み物である、上記1~5のいずれか1つに記載の生地。
7.前記ポリマーコーティングが、ポリウレタンエラストマー、ニトリルゴム、ビニルゴム、ポリイソプレン、ネオプレン、クロロプレン、ポリクロロプレン、アクリロニトリルブタジエン、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、スチレン-ブタジエン、エチレン酢酸ビニル、又はこれらのいくつかの組み合わせである、上記1~6のいずれか1つに記載の生地。
8.前記ポリマーコーティングがポリウレタンである、上記7に記載の生地。
9.前記ポリマーコーティングがニトリルゴムである、上記7に記載の生地。
10.1平方メートル当たり100~1000グラム(1平方ヤード当たり3~30オンス)の坪量を有する、上記1~9のいずれか1つに記載の生地。
11.1平方メートル当たり170~850グラム(1平方ヤード当たり5~25オンス)の坪量を有する、上記10に記載の生地。