(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/08 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
B60N2/08
(21)【出願番号】P 2019110894
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 史朗
(72)【発明者】
【氏名】原 健太
(72)【発明者】
【氏名】松井 健
(72)【発明者】
【氏名】黒木 和博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利一
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171163(JP,A)
【文献】特開2017-144867(JP,A)
【文献】特開2018-144693(JP,A)
【文献】特開2010-052609(JP,A)
【文献】特開2016-188061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07-2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート本体と、前記シート本体を支持するスライドレールと、車室フロア上で前記スライドレールをスライド可能に支持する固定レールと、前記固定レールに対するスライドレールのスライドを禁止するスライドロック機構と、前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備えている車両用シート装置であって、
前記スライドロック機構は、スライド方向に等間隔で並んだ状態で前記固定レールに形成されたロック歯と、前記スライドレールに収納されて前記ロック歯と係合する方向にバネ力が付勢されているバネ材とを備えており、
前記ロック解除機構は、ロック解除方向の操作力を受けて、前記スライドレール内で前記バネ材を前記ロック歯から外れる位置まで移動させる解除部材を備えており、
前記ロック解除方向の操作力が解除されて、前記バネ材がバネ力で前記解除部材を押圧しつつ前記ロック歯と係合する位置まで戻る際、前記バネ材と前記ロック歯との係合を保持するロック補助機構が設けられている車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用シート装置であって、
前記ロック補助機構は、ロック解除操作がされている時に前記解除部材をシート本体、あるいは前記固定レールに固定する車両用シート装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両用シート装置であって、
前記ロック補助機構は、磁力を利用して前記解除部材をシート本体、あるいは前記固定レールに固定する車両用シート装置。
【請求項4】
請求項3に記載された車両用シート装置であって、
前記ロック補助機構は、前記解除部材側に設けられて、前記解除部材と共に水平面に対して所定角度範囲内で傾斜可能に構成された可動部と、
前記シート本体、あるいは前記固定レールに設けられて、磁力により前記可動部に吸着される固定受け部と、
を備えている車両用シート装置。
【請求項5】
請求項4に記載された車両用シート装置であって、
前記可動部、あるいは固定受け部には、前記可動部の吸着面と前記固定受け部の吸着面とが平行な状態で面接触可能なように、姿勢を調整可能な機構が設けられている車両用シート装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両用シート装置であって、
前記ロック解除機構は、前記シート本体に設けられた操作レバーと、前記操作レバーと前記解除部材間に設けられたクラッチ機構とを備えており、
前記クラッチ機構は、前記解除部材が前記操作レバーの操作力を受けて前記バネ材を前記ロック歯から外している状態で、前記シート本体が所定位置までスライドしたときに、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達を解除する車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート本体と、前記シート本体を支持するスライドレールと、車室フロア上で前記スライドレールを往復スライド可能に支持する固定レールと、前記固定レールに対するスライドレールのスライドを禁止するスライドロック機構と、前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備えている車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。特許文献1の車両用シート装置は、
図12に示すように、車室フロア上に固定される固定レール101を備えている。固定レール101には、スライド方向に等間隔で並んだ状態でスライドロック機構のロック歯101sが形成されている。固定レール101には、シート本体(図示省略)を支持するスライドレール103がスライド可能に連結されている。スライドレール103には、スライドロック機構のバネ材104が収納されている。そして、バネ材104のバネ力が固定レール101のロック歯101sと係合する方向に付勢されている。即ち、スライドレール103のバネ材104がバネ力で固定レール101のロック歯101sと係合することで、固定レール101に対するスライドレール103のスライドが禁止される。
【0003】
また、スライドレール103には、バネ材104をバネ力に抗して固定レール101のロック歯101sから外れる位置まで移動させる解除部材105が収納されている。解除部材105は、ロック解除機構の構成部材であり、シート本体に設けられた操作レバー107の操作力を受けてバネ材104をバネ力に抗してロック歯101sから外れる位置まで移動させる。即ち、操作レバー107の操作力が解除部材105を介してバネ材104に加わることで、バネ材104がバネ力に抗して固定レール101のロック歯101sから外れ、スライドロックが解除される。このため、操作レバー107によりスライドロックを解除して、シート本体をスライドさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した車両用シート装置では、シート本体をスライドさせている途中で操作レバー107の操作力を解除し(手を離し)、シート本体のスライドをロックすることがある。しかし、操作レバー107の操作力を急に解除すると、バネ材104がバネ力でロック歯101sと係合する位置まで戻り、さらにバネ材104はバネ力で振動する。そして、バネ材104の振動により、バネ材104が瞬間的にロック歯101sから外れることがある。この結果、シート本体のスライドが止まる過程で歯飛びが発生し、シート本体の停止位置が希望位置から位置ずれすることがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シート本体のスライド途中でロック解除方向の操作力が解除されても、シート本体をその位置でスライドロックできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、シート本体と、前記シート本体を支持するスライドレールと、車室フロア上で前記スライドレールをスライド可能に支持する固定レールと、前記固定レールに対するスライドレールのスライドを禁止するスライドロック機構と、前記スライドロック機構のロック動作を解除するロック解除機構とを備えている車両用シート装置であって、前記スライドロック機構は、スライド方向に等間隔で並んだ状態で前記固定レールに形成されたロック歯と、前記スライドレールに収納されて前記ロック歯と係合する方向にバネ力が付勢されているバネ材とを備えており、前記ロック解除機構は、ロック解除方向の操作力を受けて、前記スライドレール内で前記バネ材を前記ロック歯から外れる位置まで移動させる解除部材を備えており、前記ロック解除方向の操作力が解除されて、前記バネ材がバネ力で前記解除部材を押圧しつつ前記ロック歯と係合する位置まで戻る際、前記バネ材と前記ロック歯との係合を保持するロック補助機構が設けられている。
【0008】
本発明によると、ロック解除方向の操作力が解除されて、バネ材がバネ力でロック歯と係合する位置まで戻る際、ロック補助機構の働きでバネ材とロック歯との係合が保持される。これにより、バネ材の振動が抑えられる。この結果、シート本体のスライド途中でロック解除方向の操作力が急に解除されても、前記バネ材が前記ロック歯に対して歯飛びすることがなく、シート本体を狙いの位置でスライドロックできるようになる。
【0009】
第2の発明によると、ロック補助機構は、ロック解除操作がされている時に解除部材をシート本体、あるいは固定レールに固定する。ここで、シート本体には、シート本体と一体で移動できる部材も含むものとする。また、固定レールには、その固定レールが固定されている部材も含むものとする。このように、スライドレール内のバネ材の振動を直接的に抑えるのではなく、バネ材と共に振動する解除部材の振動を抑える構成のため、バネ材の振動を抑える機構が簡単になる。
【0010】
第3の発明によると、ロック補助機構は、磁力を利用して解除部材をシート本体、あるいは固定レールに固定する。即ち、磁力によりバネ材の振動が抑えられる。
【0011】
第4の発明によると、ロック補助機構は、解除部材側に設けられて、前記解除部材と共に水平面に対して所定角度範囲内で傾斜可能に構成された可動部と、シート本体、あるいは固定レールに設けられて、磁力により前記可動部に吸着される固定受け部とを備えている。
【0012】
第5の発明によると、可動部、あるいは固定受け部には、可動部の吸着面と固定受け部の吸着面とが平行な状態で面接触可能なように、姿勢を調整可能な機構が設けられている。このため、磁力による吸着力を最大限に利用できる。
【0013】
第6の発明によると、ロック解除機構は、シート本体に設けられた操作レバーと、前記操作レバーと前記解除部材間に設けられたクラッチ機構とを備えており、前記クラッチ機構は、前記解除部材が前記操作レバーの操作力を受けて前記バネ材を前記ロック歯から外している状態で、前記シート本体が所定位置までスライドしたときに、前記解除部材に対する前記操作レバーの力伝達を解除する。即ち、操作レバーをロック解除方向に操作していても、シート本体が所定位置までスライドしたときに自動的にスライドロックとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、シート本体のスライド途中でロック解除方向の操作力が解除されても、シート本体をその位置でスライドロックできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の模式側面図である。
【
図2】前記車両用シート装置の前後スライド機構、多段式ロック機構、ロック解除機構等を表す斜視図である。
【
図3】前記多段式ロック機構、及び前記ロック解除機構の解除部材の動作を表す縦断面図(
図2のIII-III矢視断面図)である。
【
図4】前記ロック解除機構のクラッチ機構、及びロック補助機構の斜視図である。
【
図5】前記ロック解除機構のクラッチ機構、及びロック補助機構の斜視図(
図4のV矢視図)である。
【
図6】前記ロック解除機構のクラッチ機構、及びロック補助機構の平面図である。
【
図7】前記ロック補助機構を前方から見た縦断面図(
図4のVII-VII矢視図)である。
【
図8】前記ロック補助機構を左方から見た縦断面図(
図4のVIII-VIII矢視図)である。
【
図9】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【
図10】前記ロック解除機構のクラッチ機構の動作を表す平面図である。
【
図11】変更例に係るロック補助機構の斜視図である。
【
図12】従来の車両用シート装置の多段式ロック機構、ロック解除機構等を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、
図1~
図11に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート装置10は、車両の車室内に設置されるシート装置である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、車両用シート装置10を備える車両の前後左右及び上下に対応している。
【0017】
<車両用シート装置10の概要について>
車両用シート装置10は、
図1等に示すように、乗員が着座するシート本体12と、そのシート本体12を車両前向きの着座位置とドア開口部側(図示省略)を向く乗降位置間で移動させるシート移動装置20とから構成されている。シート移動装置20は、車室フロアF上に設置される前後スライド機構30と、その前後スライド機構30の前後スライドベース35上に設置される回転機構40とを備えている。
【0018】
前後スライド機構30は、
図1、
図2に示すように、車室フロアF上に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール32と、左右一対のロアレール32に沿って前後スライドする左右の一対のアッパレール33とを備えている。そして、左右の一対のアッパレール33が前後スライドベース35(
図1参照)の下面に固定されている。ここで、アッパレール33は、多段式ロック機構50(後記する)の働きにより、ロアレール32に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。なお、
図2では、車両左側のアッパレール33は図示省略されている。
【0019】
回転機構40は、シート本体12を車両前向きの着座位置とドア開口部側を向く乗降位置との間で約90°水平回転させる機構である。回転機構40は、
図1に示すように、前後スライドベース35上に固定された内輪41と、内輪41に対して回転可能に支持された外輪43と、外輪43上に固定された回転テーブル45とを備えている。そして、回転機構40の回転テーブル45上にシート本体12が設置されている。上記構成により、シート本体12を手動で車両前後方向に所定位置までスライドさせ、さらに前記シート本体12を着座位置と乗降位置間で水平回転させることが可能になる。
【0020】
<多段式ロック機構50について>
多段式ロック機構50は、
図1、
図3に示すように、ロアレール32に形成されたロック歯52と、アッパレール33内に設けられ、前記ロック歯52の歯溝に対して係合可能に構成されたロックスプリング53とから構成されている。ここで、ロアレール32は、
図3に示すように、アッパレール33を幅方向両側から挟んでスライド方向にガイドする左右のガイド壁部32wを備えている。そして、左右のガイド壁部32wの下端位置には、前記ロック歯52がスライド方向に等ピッチで多数形成されている(
図1参照)。即ち、多段式ロック機構50のロック歯52は、ロアレール32を介して車室フロアF側に設けられている。
【0021】
多段式ロック機構50のロックスプリング53は、
図2に示すように、左右対称に形成された棒状のバネであり、上記したように、アッパレール33内に収納されている。ロックスプリング53は、途中位置に二対の角形係合部53kを備えており、それらの角形係合部53kがアッパレール33の側面開口33h(
図3参照)から左右方向に突出している。ロックスプリング53は、そのロックスプリング53の角形係合部53kがアッパレール33の側面開口33hの上部位置に保持されるように付勢された状態で、アッパレール33内に保持されている。そして、多段式ロック機構50がロック動作状態では、
図3に示すように、アッパレール33内の左右のロックスプリング53の角形係合部53kが付勢力でロアレール32の左右のガイド壁部32wのロック歯52に対して下方から係合している。多段式ロック機構50がロック動作すると、シート本体12の前後スライドが禁止される。
【0022】
<ロック解除機構60について>
ロック解除機構60は、多段式ロック機構50のロック動作を解除する機構である。ロック解除機構60は、
図1、
図2に示すように、例えば、シート本体12に着座している乗員が上方に引き操作可能なループハンドル状の操作レバー61と、その操作レバー61の操作力を多段式ロック機構50の左右のロックスプリング53に伝達する左右の解除部材63とを備えている。また、ロック解除機構60の操作レバー61の左端部と車両左側の解除部材63との間には、
図2に示すように、クラッチ機構70とロック補助機構90とが設けられている。
【0023】
<解除部材63について>
ロック解除機構60の解除部材63は、
図2、
図3に示すように、アッパレール33内に収納されてロックスプリング53上に配置される上下動アーム65と、その上下動アーム65の基端部(前端部)に固定されて、アッパレール33から前方に突出する接続アーム64とから構成されている。そして、
図2に示すように、操作レバー61の右端部が右側の解除部材63の接続アーム64に接続されている。また、操作レバー61の左端部が前記クラッチ機構70、ロック補助機構90を介して左側の解除部材63の接続アーム64に接続されている。
【0024】
解除部材63の上下動アーム65は、
図2に示すように、その上下動アーム65の中央部分に上方に突出する支点部65cを備えており、この支点部65cがアッパレール33の天井面(図示省略)に当接している。また、上下動アーム65の先端部(後端部)には、ロックスプリング53の角形係合部53kに対応する位置に押圧部65pが設けられている。
【0025】
上記構成により、ロック解除機構60の操作レバー61が上方に引き操作されて、その操作レバー61の操作力が解除部材63の接続アーム64に加わると、上下動アーム65の基端部側が支点部65cを中心に所定角度だけ引き上げられる。これにより、上下動アーム65の先端の押圧部65pが支点部65cを中心に押し下げられ、前記押圧部65pがロックスプリング53の角形係合部53kを付勢力に抗して下方に押圧する。この結果、ロックスプリング53の角形係合部53kが、
図3の点線に示すように、ロアレール32のガイド壁部32wのロック歯52から外れ、多段式ロック機構50のロック動作が解除される。ここで、ロック解除機構60の操作レバー61と解除部材63とは、アッパレール33、前後スライドベース35等を介してシート本体12側に設けられている。
【0026】
<クラッチ機構70について>
クラッチ機構70は、ロック解除機構60の操作レバー61の操作力を左側の解除部材63の接続アーム64に伝達し、あるいはその力伝達を解除する機構である。クラッチ機構70は、
図2に示すように、クラッチ本体部70aとカム80とを備えている。クラッチ本体部70aは、ロック補助機構90と共にロック解除機構60の操作レバー61と解除部材63間に設けられて、前後スライドベース35の下面に取付けられている。カム80は、車室フロアF側に設けられて、前記クラッチ本体部70aをシート本体12の回転位置、即ち、スライド中間位置で動作させる部材である。
【0027】
<クラッチ本体部70aについて>
クラッチ本体部70aは、
図2、及び
図4~
図6に示すように、前後スライドベース35(シート本体12側)の下面に固定される下側ベース部75を備えている。また、クラッチ本体部70aは、下側ベース部75に対して上下回動可能な状態で連結された第1連結板71と第2連結板72と、前記下側ベース部75に対して水平回動可能な状態で連結されたカムフォロア74とを備えている。
【0028】
<下側ベース部75について>
クラッチ本体部70aの下側ベース部75は、
図4~
図6に示すように、前後スライドベース35の下面に固定される略台形状のベース本体部75bと、ベース本体部75bの左右端で略直角下方に折り曲げられた右板部75rと左板部75sとを備えている。下側ベース部75の右板部75rと左板部75sとは、ベース本体部75bから前方に張り出しており、右板部75rの先端部と左板部75sの途中部位とに、
図6に示すように、左右一対の連結軸78を水平に支持する軸受部75jが同軸に設けられている。
【0029】
また、下側ベース部75の左板部75sの上端には、
図4~
図6に示すように、その左板部75sの軸受部75jよりも前側に、前後スライドベース35の下面に固定されるフランジ部75fがベース本体部75bと等しい高さで形成されている。さらに、下側ベース部75の左板部75sの前端位置には、
図5に示すように、ロック補助機構90の受け板部92(後記する)がその左板部75sの左方向に張り出すように設けられている。また、下側ベース部75の後端部には、
図4、
図6に示すように、カムフォロア74を水平回動可能に支持する軸受部75xが設けられている。
【0030】
<第1連結板71について>
クラッチ本体部70aの第1連結板71は、
図2に示すように、ロック解除機構60の操作レバー61の左端部が固定される固定板部71fと、
図4に示すように、固定板部71fの左端で略直角下方に折り曲げられ、さらに固定板部71fの後端から後方に張り出す第1クラッチ板部71cとを備えている。そして、第1連結板71の第1クラッチ板部71cが厚み方向から下側ベース部75の左板部75sに重ねられている。また、第1連結板71は、
図6に示すように、固定板部71fの右端で略直角下方に折り曲げられ、さらに固定板部71fの後端から後方に張り出す支持板71sを備えている。
【0031】
そして、第1連結板71の支持板71sと第1クラッチ板部71cとに、
図4、
図6に示すように、前記左右一対の連結軸78がそれぞれ通される軸受部(図番省略)が同軸に形成されている。即ち、第1連結板71は、下側ベース部75に対して連結軸78を中心に上下回動可能な状態で連結されている。また、第1連結板71の第1クラッチ板部71cには、
図4、
図9に示すように、連結軸78の軸受部を挟んで一対の貫通穴71kが形成されている。そして、一対の貫通穴71kには、カムフォロア74に連結されたU字形のピン状部材76(後記する)の先端が挿入されている。
【0032】
<第2連結板72について>
第2連結板72は、
図4~
図6に示すように、第1連結板71の第1クラッチ板部71cと下側ベース部75の左板部75sとの間に挟まれる縦板状の第2クラッチ板部72cを備えている。第2連結板72の第2クラッチ板部72cには、左側の連結軸78が通される軸受部(図番省略)が形成されている。また、第2クラッチ板部72cには、
図9、
図10に示すように、前記第1連結板71の一対の貫通穴71kに対応する位置にU字形のピン状部材76の先端が抜差しされる一対の貫通穴72kが形成されている。
【0033】
そして、
図10に示すように、第1連結板71の一対の貫通穴71kから第2連結板72の一対の貫通穴72kまでU字形のピン状部材76の先端が挿入されている状態で、第2連結板72は第1連結板71と一体で下側ベース部75に対して連結軸78を中心に回動するようになる。また、
図9に示すように、第2連結板72の一対の貫通穴72kからU字形のピン状部材76の先端が抜けると、第2連結板72は単独で下側ベース部75に対して連結軸78を中心に回動できるようになる。
【0034】
第2連結板72の第2クラッチ板部72cの前端部には、
図4~
図6に示すように、上端位置から左方向に張り出す水平な円盤状平板部72fが設けられている。そして、円盤状平板部72fの左端部には、下方に折り曲げられた左縦板部72tが設けられており、その左縦板部72tが解除部材63の接続アーム64に固定されている。これにより、第2連結板72の貫通穴72kに対してU字形のピン状部材76の先端が挿入されている状態で、操作レバー61がロック位置(下端位置)から上方に引き上げられると、操作レバー61の操作力が第1連結板71を介して第2連結板72に加わるようになる。この結果、第2連結板72が連結軸78を中心に上回動し、ロック解除機構60の解除部材63(接続アーム64)が所定角度だけ上方に引き上げられて、多段式ロック機構50のロック動作が解除される。
【0035】
<ロック補助機構90について>
ロック補助機構90は、シート本体12のスライド途中で、クラッチ機構70が後記するように操作レバー61の操作力の伝達を解除して、多段式ロック機構50が短時間でロック動作したときのロックスプリング53の振動を抑える機構である。ロック補助機構90は、
図5、及び
図7、
図8に示すように、第2連結板72の円盤状平板部72fの下面に固定された磁石保持部91と、下側ベース部75の左板部75sの前端部に取付けられた受け板部92とを備えている。磁石保持部91は、浅い円筒容器状の磁石収納ケース91cと、その磁石収納ケース91cに同軸に収納される円板形磁石91m(永久磁石)とから構成されている。そして、磁石保持部91の磁石収納ケース91cが第2連結板72の円盤状平板部72fの下面にほぼ同軸の状態で固定ピン93により取付けられている。
【0036】
受け板部92は、第2連結板72の磁石保持部91が吸着される部材であり、
図5等に示すように、下側ベース部75の左板部75sの前端部において磁石保持部91が重ねられる位置に取付けられている。受け板部92は、
図7に示すように、下側ベース部75の左板部75sに対して左側から重ねられる縦板部92tと、縦板部92tの上端位置で左方向に水平に折り曲げられた円板状板部92eとにより、側面形状が略逆L字形に形成されている。そして、受け板部92の円板状板部92eに対して第2連結板72の磁石保持部91が重ねられる。
【0037】
受け板部92の縦板部92tは、
図7、
図8に示すように、カシメ材94によってそのカシメ材94の軸心回りに回動可能な状態で下側ベース部75の左板部75sに取付けられている。また、下側ベース部75の左板部75sの下部には、
図8に示すように、下側で開放する切欠部75kが形成されており、その切欠部75kに受け板部92の縦板部92tの下端に形成された鉤部92kが挿入されている。これにより、受け板部92は、鉤部92kと切欠部75k間の隙間分だけ、カシメ材94の軸心回りに回動が可能になる。そして、受け板部92をカシメ材94の軸心回りに回動させることで、水平面に対する受け板部92の円板状板部92eの傾きを調整できる。これにより、磁石保持部91の吸着面と受け板部92の円板状板部92eの吸着面とを互いに平行な状態で面接触させることができ、円板形磁石91mの磁力を有効に利用できる。
【0038】
第2連結板72の磁石保持部91が受け板部92の円板状板部92eに吸着されている状態では、
図2に示すように、第2連結板72と共に解除部材63(接続アーム64)が下限位置に保持されており、多段式ロック機構50のロックスプリング53はロック歯52と係合している(ロック動作)。即ち、多段式ロック機構50のロックスプリング53を押さえる解除部材63が磁石保持部91と受け板部92とを介して前後スライドベース35(シート本体12側)の下側ベース部75に固定されている。即ち、多段式ロック機構50のロック動作時にロックスプリング53が振動しようとしても、そのロックスプリング53を押さえる解除部材63が固定されるため、ロックスプリング53の振動が抑えられる。これにより、ロックスプリング53が振動により、ロック歯52から瞬間的に外れるような不具合が生じない。
【0039】
<カムフォロア74について>
クラッチ本体部70aのカムフォロア74は、
図9等に示すように、カム80(後記する)にガイドされて移動することにより、U字形のピン状部材76の先端を第2連結板72の一対の貫通穴72kに対して抜差しする部材である。カムフォロア74は、横板部74yの後端部が下側ベース部75の軸受部75x(
図6参照)に対して連結軸75cにより水平回動可能に連結されている。また、カムフォロア74の横板部74yの左辺における前端位置には、
図9に示すように、半円状の突起物であるカムフォロア本体部74cが左方向に突出するように設けられている。
【0040】
また、カムフォロア74の横板部74yの右端には、
図9に示すように、縦板部74tが設けられており、その縦板部74tが横板部74yの前端から前方に突出している。そして、カムフォロア74の縦板部74tの前端部左側には、U字形のピン状部材76が連結ピン76pによりその縦板部74tに沿って上下回動可能な状態で連結されている。ここで、カムフォロア74は、
図10に示すように、連結ピン76pの頭部が連結軸78の右端面に当接する位置まで水平に左回動が可能なように構成されている。そして、カムフォロア74が左回動限位置にある状態で、カムフォロア74の縦板部74t、及び横板部74yの左辺は前後方向に延びるように配置される。
【0041】
カムフォロア74の縦板部74tのピン状部材76は、カムフォロア74が左回動限位置にある状態で、
図10等に示すように、そのピン状部材76の先端が第1連結板71と第2連結板72との一対の貫通穴71k,72kの双方に挿入可能になる。さらに、カムフォロア74の縦板部74tと第1連結板71の支持板71sとの間には、カムフォロア74を左回動限位置に付勢するためのコイルバネ77が装着されている。そして、カムフォロア74がコイルバネ77のバネ力に抗して左回動限位置から右回動することで、
図9に示すように、ピン状部材76の先端が第2連結板72の一対の貫通穴72kから抜けるようになる。
【0042】
<カム80について>
カム80は、シート本体12がスライド中間の回転位置近傍の所定範囲をスライドする際に、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cをガイドすることで、そのカムフォロア74をコイルバネ77のバネ力に抗して右回動させる部材である。カム80は、
図6、
図9、
図10に示すように、断面逆U字形に形成されたカムベース85と、そのカムベース85の右側で水平回動可能な状態で支持された第1カム片81と第2カム片82とを備えている。カム80のカムベース85は、シート本体12の回転位置で前後スライド機構30のロアレール32を下側から覆った状態で車室フロアF上に固定されている。
【0043】
第1カム片81は、シート本体12が後方にスライドする際、
図9に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが前方から当接する円弧状のカム面81cを備えている。そして、第1カム片81のカム面81cの円弧中心位置にカムベース85に設けられた回転中心軸83が通されている。これにより、第1カム片81は回転中心軸83を中心に水平回動が可能になる。また、第1カム片81には、
図6に示すように、カムベース85の縦壁面に当接することで、その第1カム片81の右回動を禁止する回動ストッパ部81sが設けられている。
【0044】
シート本体12が後方にスライドする際、第1カム片81のカム面81cに対してカムフォロア74のカムフォロア本体部74cが前方から当接すると、第1カム片81には右回動方向に力が加わる。しかし、第1カム片81の回動ストッパ部81sがカムベース85の縦壁面に当接することで、第1カム片81の右回動が禁止される。この結果、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81のカム面81cに沿って右後方に移動し、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力に抗して右回動するようになる。
【0045】
また、カム80には、回転中心軸83の回りに、第1カム片81を使用位置方向(右回動方向)に付勢するバネ材(図番省略)が装着されている。さらに、第1カム片81には、
図6等に示すように、円弧状のカム面81cの後側に段差状の凹面81kが形成されている。第1カム片81の凹面81kは、シート本体12が後退限位置から前方にスライドする際、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが後方から当接する面である。カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81の凹面81kに後方から当接すると、シート本体12が前方にスライドする過程で第1カム片81には左回動方向に力が加わる。これにより、第1カム片81はバネ材の力に抗して左回動し、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cは第1カム片81の凹面81kから外れるようになる。
【0046】
第2カム片82は、
図6等に示すように、第1カム片81と前後方向において対称に形成されており、第1カム片81に対して上から重ねられた状態で回転中心軸83により水平回動可能な状態でカムベース85に連結されている。第2カム片82は、シート本体12が前方にスライドする際、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが後方から当接する円弧状のカム面82cを備えている。また、第2カム片82には、回動ストッパ部82sが設けられており、カム面82cに対して後方からカムフォロア74のカムフォロア本体部74cが当接しても、第2カム片82の左回動が禁止される。このため、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが後方から第2カム片82のカム面82cに当接すると、カムフォロア本体部74cはカム面82cに沿って右前方に移動し、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力に抗して右回動するようになる。
【0047】
また、カム80には、回転中心軸83の回りに、第2カム片82を使用位置方向(左回動方向)に付勢するバネ材(図番省略)が装着されている。さらに、第2カム片82には、
図9等に示すように、円弧状のカム面82cの前側に段差状の凹面82kが形成されている。そして、シート本体12の後方スライド過程で、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第2カム片82の凹面82kに前方から当接すると、第2カム片82がバネ材の力に抗して右回動し、カムフォロア本体部74cは凹面82kから外れるようになる。
【0048】
<車両用シート装置10の動作について>
次に、車両用シート装置10の動作について説明する。シート本体12が前進限位置にある状態で(
図6参照)、ロック解除機構60の操作レバー61をロック位置(下端位置)から上方の解除位置まで引き上げると、操作レバー61の操作力が第1連結板71、第2連結板72を介して解除部材63の接続アーム64に加わるようになる。これにより、解除部材63の上下動アーム65の基端部側が支点部65c(
図2参照)を中心に引き上げられ、その上下動アーム65の先端の押圧部65pが、
図3に示すように、ロックスプリング53の角形係合部53kを押し下げる。この結果、多段式ロック機構50のロック動作が解除され、シート本体12の後方スライドが可能になる。
【0049】
そして、操作レバー61が解除位置にある状態で、シート本体12を後方にスライドさせて、シート本体12がスライド中間位置である回転位置の近傍まで到達すると、
図9に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81のカム面81cに当接する。この状態で、シート本体12がさらに後方にスライドすると、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81のカム面81cに沿って右後方に移動し、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力に抗して右回動するようになる。これにより、カムフォロア74のU字形のピン状部材76の先端が第2連結板72の貫通穴72kから抜け、第2連結板72と第1連結板71間の力伝達が解除される。
【0050】
この結果、操作レバー61が解除位置(上限位置)にある状態で、第2連結板72が自重で下側ベース部75の連結軸78を中心に下回動し、第2連結板72の円盤状平板部72fに設けられた磁石保持部91が下側ベース部75の受け板部92の円板状板部92eに吸着される。即ち、第2連結板72がロック位置(下端位置)まで戻されることで、解除部材63の接続アーム64がロック位置に戻され、上下動アーム65の押圧部65pが上方に移動して、
図3に示すように、ロックスプリング53の角形係合部53kがバネ力でロック歯52と係合する。このとき、ロックスプリング53は、バネ力で上下振動しようとする。しかし、ロックスプリング53と共に上下振動しようとする解除部材63が第2連結板72、磁石保持部91、受け板部92を介してシート本体12側の前後スライドベース35の下側ベース部75に固定されるため、ロックスプリング53の振動が抑えられる。これにより、ロックスプリング53が振動により、ロック歯52から瞬間的に外れるような不具合が生ることがなく、シート本体12がスライド途中であっても歯飛びを防止することができる。即ち、シート本体12を確実にスライド中間位置(回転位置)でスライドロックできる。
【0051】
さらに、シート本体12が回転位置に到達すると、
図10に示すように、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81の凹面81kと第2カム片82の凹面82kの間に嵌り込み、カムフォロア74はコイルバネ77のバネ力で左回動限位置に戻される。このため、操作レバー61をロック位置(下端位置)まで戻すと、カムフォロア74のピン状部材76の先端がコイルバネ77のバネ力で第1連結板71の第1クラッチ板部71cの貫通穴71kから第2連結板72の第2クラッチ板部72cの貫通穴72kまで挿入される。このように、シート本体12が回転位置でスライドロックされるため、シート本体12を回転位置で水平回動させることができる。
【0052】
シート本体12を回転位置から前方スライドさせる場合には、操作レバー61をロック位置(下端位置)から解除位置まで上方に引き上げて、上記したように、多段式ロック機構50のロック動作を解除する。シート本体12が前方にスライドする過程で、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cは、
図10に示す状態から第1カム片81の凹面81kを後方から押圧し、第1カム片81をバネ力に抗して左回動させる。これにより、カムフォロア74のカムフォロア本体部74cが第1カム片81の凹面81kから外れるようになる。なお、シート本体12を後端位置から前方にスライドさせる際は、カム80の第2カム片82が使用される。
【0053】
<本実施形態で使用した用語と本発明における用語との対応>
本実施形態の前後スライド機構30のロアレール32が本発明の固定レールに相当し、アッパレール33が本発明のスライドレールに相当する。また、多段式ロック機構50が本発明のスライドロック機構に相当する。さらに、多段式ロック機構50のロックスプリング53が本発明のバネ材に相当する。また、ロック補助機構90の磁石保持部91が本発明の可動部に相当し、受け板部92が本発明の固定受け部に相当する。さらに、受け板部92を下側ベース部75に取付けるカシメ材94と、下側ベース部75の切欠部75k、及び受け板部92の鉤部92kとが本発明の姿勢を調整可能な機構に相当する。
【0054】
<本実施形態に係る車両用シート装置10の長所について>
本実施形態に係る車両用シート装置10によると、ロック解除方向の操作力が解除されて、ロックスプリング53(バネ材)がバネ力でロック歯52と係合する位置まで戻る際、ロック補助機構90の働きでロックスプリング53の振動が抑えられ、ロックスプリング53とロック歯52との係合が保持される。このため、シート本体12のスライド途中でロック解除方向の操作力が急に解除されても(多段式ロック機構50がロック動作しても)、ロックスプリング53がロック歯52に対して歯飛びすることがなく、シート本体12を狙いの位置でスライドロックできるようになる。また、アッパレール33(スライドレール)内のロックスプリング53の振動を直接的に抑えるのではなく、ロックスプリング53と共に振動する解除部材63の振動を抑える構成のため、ロックスプリング53の振動を抑える機構が簡単になる。
【0055】
また、ロック補助機構90の受け板部92(固定受け部)には、磁石保持部91(可動部)の吸着面と受け板部92の円板状板部92eの吸着面とが平行な状態で面接触可能なように、カシメ材94、切欠部75k、及び鉤部92k(姿勢を調整可能な機構)が設けられている。このため、磁力による吸着力を最大限に利用できる。
【0056】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、クラッチ機構70を備える車両用シート装置10において、ロック補助機構90をロック解除機構60の操作レバー61と解除部材63との間に設ける例を示した。即ち、ロックスプリング53のバネ力でロックスプリング53と共に上下振動しようとする解除部材63を第2連結板72、ロック補助機構90の磁石保持部91、受け板部92を介してシート本体12側の下側ベース部75に固定する例を示した。しかし、
図11に示すように、クラッチ機構70を有しない車両用シート装置10においてロック補助機構90を使用することも可能である。
【0057】
即ち、
図11に示す車両用シート装置10では、ロック解除機構60の操作レバー61が連結板62を介して解除部材63の接続アーム64に連結されている。即ち、操作レバー61の操作力が直接的に解除部材63の接続アーム64に加わるようになる。そして、連結板62の後方突出板部62tの下面にロック補助機構90の磁石保持部91が取付けられている。また、車室フロアF上には、ロアレール32に沿って帯板状の受け板部92が設けられている。これにより、操作レバー61を解除位置まで引き上げてシート本体12をスライドさせ、所定位置で操作レバー61から手を離すと、操作レバー61と共に連結板62及び解除部材63がロック位置まで戻される。そして、ロック補助機構90の磁石保持部91が帯板状の受け板部92に吸着される。即ち、ロックスプリング53のバネ力でロックスプリング53と共に上下振動しようとする解除部材63が連結板62、磁石保持部91、受け板部92を介してロアレール32、車室フロアFに固定される。これにより、ロックスプリング53の振動が抑えられ、ロックスプリング53の振動による歯飛びを防止できる。
【0058】
また、本実施形態では、円板形の磁石保持部91を例示したが、磁石保持部91の形状は適宜変更可能である。さらに、本実施形態では、磁石保持部91の円板形磁石91mとして永久磁石を使用する例を示したが、電磁石を使用することも可能である。また、磁石を使用する代わりに、例えば、マジックファスナ等により第2連結板72の円盤状平板部72fと受け板部92とを固定する構成でも可能である。また、本実施形態では、ロック補助機構90によりロックスプリング53と共に上下振動する解除部材63をシート本体12側、あるいはロアレール32側に固定して、ロックスプリング53の振動を抑える例を示した。しかし、ロックスプリング53を直接的に磁力によりロアレール32に固定して、振動を抑える構成でも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10・・・車両用シート装置
12・・・シート本体
32・・・ロアレール(固定レール)
33・・・アッパレール(スライドレール)
50・・・多段式ロック機構(スライドロック機構)
52・・・ロック歯
53・・・ロックスプリング(バネ材)
60・・・ロック解除機構
61・・・操作レバー
63・・・解除部材
70・・・クラッチ機構
70a・・クラッチ本体部(クラッチ機構)
75・・・下側ベース部
75k・・切欠部(姿勢を調整可能な機構)
90・・・ロック補助機構
91・・・磁石保持部(可動部)
92・・・受け板部(固定受け部)
92k・・鉤部(姿勢を調整可能な機構)
94・・・カシメ材(姿勢を調整可能な機構)