(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】電力制御装置及び電力制御方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
H05B3/00 310C
(21)【出願番号】P 2020562324
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025874
(87)【国際公開番号】W WO2020136958
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/047469
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250317
【氏名又は名称】理化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】万木 則和
(72)【発明者】
【氏名】村田 徹也
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-178855(JP,A)
【文献】実開平4-78796(JP,U)
【文献】国際公開第2017/109954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、前記複数の負荷のそれぞれに対する電力供給の制御を行う電力制御装置であって、
前記複数の負荷に流れる電流が合成された合成電流値を測定する電流検出器と、
前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記電流検出器によって得られる合成電流値で除算した値である補正値を算出し、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記補正値の積である補正操作出力値に基づいて前記負荷のそれぞれに対する電力供給制御を行う出力演算部と、
を備えることを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
所定サイクル毎に、該当サイクルより前のサイクルの前記補正値と、所定の値と、の積によって、前記補正値を更新する更新処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の電力制御装置。
【請求項3】
前記所定の値が、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記電流検出器によって得られる合成電流値で除算した値であることを特徴とする請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項4】
前記所定の値が、前記補正値の増加減分の割合と調整係数との積に、1を加算した値であることを特徴とする請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項5】
前記所定の値が、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記電流検出器によって得られる合成電流値で除算した値に調整係数を乗じた値と、前記調整係数に対する補数と、の和であることを特徴とする請求項2に記載の電力制御装置。
【請求項6】
ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、前記複数の負荷のそれぞれに対する電力供給の制御を行う電力制御方法であって、
前記複数の負荷に流れる電流が合成された合成電流値を測定するステップと、
前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記合成電流値で除算した値である補正値を算出するステップと、
前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記補正値の積である補正操作出力値に基づいて前記負荷のそれぞれに対する電力供給制御を行うステップと、
を備えることを特徴とする電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、前記複数の負荷のそれぞれに対する電力供給の制御を行う電力制御装置及び電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータ等の加熱用の負荷やペルチェ素子等の冷却用の負荷を用いて、各種のワークの加熱や冷却が行われている。負荷を用いた加熱または冷却をより正確に行うための要素の1つとして、負荷特性等の変動への対応がある。即ち、負荷特性等が変動した場合においても、正確な出力が得られるように、負荷特性等の変動の影響を除去若しくは低減さることが望まれている。
これに関する技術として、炊飯器において、ヒータのばらつきや電源電圧のばらつきによる発熱量の変化によって、炊飯量の誤判定を改善する技術が、特許文献1によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
システムによって、加熱または冷却のための負荷が複数設けられているものがある。
このようなシステムにおいて、特許文献1のような従来技術によって負荷特性の変動への対応をしようとした場合、各負荷の電流値を測定するために電流検出器を複数設ける必要があり、また、制御処理としても複雑となるものであった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、負荷特性の変動の影響を低減させた出力操作を比較的簡素な構成によって実現可能な電力制御装置及び電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、前記複数の負荷のそれぞれに対する電力供給の制御を行う電力制御装置であって、前記複数の負荷に流れる電流が合成された合成電流値を測定する電流検出器と、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記電流検出器によって得られる合成電流値で除算した値である補正値を算出し、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記補正値の積である補正操作出力値に基づいて前記負荷のそれぞれに対する電力供給制御を行う出力演算部と、を備えることを特徴とする電力制御装置。
【0007】
(構成2)
所定サイクル毎に、該当サイクルより前のサイクルの前記補正値と、所定の値と、の積によって、前記補正値を更新する更新処理を行うことを特徴とする構成1に記載の電力制御装置。
【0008】
(構成3)
前記所定の値が、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記電流検出器によって得られる合成電流値で除算した値であることを特徴とする構成2に記載の電力制御装置。
【0009】
(構成4)
前記所定の値が、前記補正値の増加減分の割合と調整係数との積に、1を加算した値であることを特徴とする構成2に記載の電力制御装置。
【0010】
(構成5)
前記所定の値が、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記電流検出器によって得られる合成電流値で除算した値に調整係数を乗じた値と、前記調整係数に対する補数と、の和であることを特徴とする構成2に記載の電力制御装置。
【0011】
(構成6)
前記合成電流値の変動量が、所定値を超える場合には、前記補正値の更新を行わないことを特徴とする構成2から5の何れかに記載の電力制御装置。
【0012】
(構成7)
前記更新処理によって算出された補正値が、所定範囲内に無い場合には、前記補正値の更新を行わない若しくは前記補正値にリミットを設けることを特徴とする構成2から6の何れかに記載の電力制御装置。
【0013】
(構成8)
過去のサイクルの複数の前記補正値を使用して移動平均を算出し、当該算出された値を該当サイクルの補正値とすることを特徴とする構成2から7の何れかに記載の電力制御装置。
【0014】
(構成9)
ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、前記複数の負荷のそれぞれに対する電力供給の制御を行う電力制御方法であって、前記複数の負荷に流れる電流が合成された合成電流値を測定するステップと、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記負荷のそれぞれの定格電流値のそれぞれの積の合計値を前記合成電流値で除算した値である補正値を算出するステップと、前記負荷のそれぞれに対する操作出力値と前記補正値の積である補正操作出力値に基づいて前記負荷のそれぞれに対する電力供給制御を行うステップと、を備えることを特徴とする電力制御方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電力制御装置によれば、ワークを複数の負荷によって加熱または冷却するシステムにおいて、負荷特性の変動の影響を低減させた出力操作を、比較的簡素な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施形態の加熱システムの本発明に関する構成の概略を示すブロック図
【
図2】実施形態の電力制御装置の処理動作の概略を示すフローチャート
【
図3】実施形態の電力制御装置に関する補正処理機能をオフにした実験結果を示す図
【
図4】実施形態の電力制御装置に関する補正処理機能をオンにした実験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0018】
<実施形態1>
図1は、本実施形態のシステムの本発明に関する構成の概略を示すブロック図である。
本実施形態のシステムは、プレート21に積載されるワーク(特に図示せず)の加熱を行うものであり、プレート21に対して4つのヒータ(負荷1~負荷4)が埋め込まれた構成となっている。即ち、プレートに積載されるワークを複数のヒータによって加熱するシステムである。プレート21は熱伝導率の高い素材で形成されており、負荷1~負荷4は熱的に接続されている。
【0019】
本実施形態のシステムは、負荷1~負荷4が埋め込まれたプレート21と、各負荷へ電力を供給する直流電源Pと、各負荷への電力供給をオン/オフするスイッチング素子SW1~SW4と、直流電源Pから各負荷への電力供給路上に設けられる電流検出器31と、各スイッチング素子のオン/オフ制御により各負荷への電力供給を制御する電力制御装置100と、を備えている。
各負荷は直流電源Pに対して並列に接続されており、電流検出用抵抗器である電流検出器31は、直流電源Pと各負荷の並列接続回路との間の電力供給路上に設けられる。従って、電流検出器31は、全ての負荷1~負荷4に流れる電流が合成された合成電流値を測定する電流検出器である。
【0020】
電力制御装置100は、温度調節器等の他の装置から操作出力値MVの入力を受けて、当該操作出力値MVに基づくPWM制御によって、スイッチング素子SW1~SW4のオン/オフ制御を行うものであり、PWM制御等の各種の演算処理を行う出力演算部11と、電流検出器31から負荷1~負荷4に流れる電流が合成された合成電流値iを得る電流検出部12と、温度調節器等の他の装置との間の情報の送受信を行う通信部13と、を備える。
以下、負荷1~負荷4の別を“チャンネル”と称し、チャンネル1に対応する操作出力値をMV(1)、チャンネルchに対応する操作出力値をMV(ch)等と表記する。
【0021】
本実施形態のシステムは、プレート21に積載されるワークの加熱を行うものであるが、ヒータである負荷1~負荷4は、その抵抗値が温度依存性を有しており、温度が高くなるにつれて抵抗値が上昇する。これにより、例えば、操作出力値MV(ch)が80%で一定であったとしても、温度が低い場合に比べて、温度が高い場合は、実際に出力される電力が低下してしまう。抵抗値の上昇により、電流値が低下するためである。即ち、温度が高くなると、例えば本来80%の電力を出力したい所だが、実際には80%の出力が得られない状況となる。
このような問題に対し、本実施形態の電力制御装置100では、各操作出力値MV(ch)と各負荷の定格電流値I(ch)のそれぞれの積の合計値を、電流検出器31によって得られる合成電流値iで除算した値である補正値mcを算出し(数1)、各操作出力値MV(ch)と補正値mcの積である補正操作出力値に基づいて各チャンネルの電力供給制御を行うことを基本とし、これにより、各負荷の抵抗値の変化によって生じる出力電力のずれが、適正な値に近づくように補正される。
【0022】
【0023】
上記の数1の分子で示される各操作出力値MV(ch)と各定格電流値I(ch)のそれぞれの積の合計値は、出力を制御して各負荷に意図して流そうとしている電流の合成値、すなわち目標とする合成電流値に該当する。
これに対して、数1の分母iは実際に測定された合成電流値である。
即ち、補正値mcは、目標とする合成電流値と、実際に測定された合成電流値の比である。
【0024】
本実施形態の電力制御装置100では、制御サイクルごとに、合成電流値iを電流検出器31から取得し、次のサイクルで使用する補正値の算出と更新を行う。次のサイクルで使用する補正値MCn+1は、上記基本概念を用いた上で、数2に示されるように、現在のサイクルでの各操作出力値MV(ch)nと各定格電流値I(ch)のそれぞれの積の合計値を電流検出器31によって得られる合成電流値inで除算した値と、現在のサイクルで使用している補正値MCnとの積から算出する。即ち、次のサイクルの補正値MCn+1は、現在のサイクルの補正値MCnに、新たに算出した補正値mcを掛けたものである。
【0025】
【数2】
なお、数2では、制御サイクルごとのデータの区別を、添え字のnやn+1で表記している。以降も同様の表記を用いる。
【0026】
次に、本実施形態の電力制御装置100の本発明に関する部分の処理動作の概略を、
図2を参照しつつ説明する。
【0027】
初期化処理として、出力演算部11において、nに0を代入した上でステップ201において補正値MCn(即ちMC0)に1を代入する。
【0028】
続くステップ202では、出力演算部11が、通信部13から各操作出力値MV(ch)nを取得する処理を行う。温度調節器等の他の装置から各負荷に対応する各操作出力値MV(ch)nを取得するものである。
ステップ203では、出力演算部11によって、各操作出力値MV(ch)nと補正値MCnの積(補正操作出力値)に比例するPWM信号を算出し、当該PWM信号によって各スイッチング素子SW(ch)のオン/オフ制御を行う。サイクルn=0の場合には、MC0=1であるため、通信部13から得られた各操作出力値の初期値MV(ch)0がそのまま使用される結果となる。
【0029】
ステップ204、205では、出力演算部11が、電流検出部12に電流の測定処理を行わせ、これによって合成電流値inを取得する処理を行う。
続くステップ206では、出力演算部11において、上述した数2に基づく演算を行い、次サイクルの補正値MCn+1を算出する。なお、各負荷の定格電流値I(ch)は、装置の出荷時に設定されている若しくはユーザによって入力されている等により、装置に予め設定されているものである。
【0030】
ステップ206における補正値MCn+1の算出後は、nをインクリメントした上でステップ202へと戻って、上記処理を繰り返す。
【0031】
図3、
図4には、本実施形態の電力制御装置100において、上記説明した補正値MCを用いた操作出力値MVに対する補正処理機能を、オフにした場合とオンにした場合の比較実験の結果を示した。
当該実験は、電力制御装置100において、操作出力値MV(ch)を以下のように設定して行ったものである。
MV(1):10%と90%を約10秒ごとに変更
MV(2):20%固定
MV(3):50%固定
MV(4):20%固定
【0032】
図3は補正処理機能をオフにした場合、
図4は補正処理機能をオンにした場合の結果を示すグラフである。
図3、4の(a)のグラフは、当該実験においてプレート21の中央付近に設置した温度センサから得られた測定温度T1を示したグラフである。
図3、4の(b)のグラフは、実際に算出された補正値MC
nの変化状態を示すグラフである。補正処理機能オフの場合は、
図3(b)に示されるように、補正値が常に1(100%)であるのと同義である。
図3、4の(c)のグラフは、電流検出器31によって測定された合成電流値を示すグラフである。
図3、4の(d)のグラフは、
図3、4の(c)のグラフの860mA付近(電流値の最大値付近)を拡大した図である。
図3、4の(e)のグラフは、
図3、4の(c)のグラフの480mA付近(電流値の最小値付近)を拡大した図である。
図3、
図4から理解されるように、補正処理機能をオフにした場合(
図3(c)~(e))には、経過時間と共に電流値が低下している。即ち、時間経過にともなって温度が上昇し、各負荷の抵抗値が大きくなることによって電流値が低下していることが示されている。
これに対し、補正処理機能をオンにした場合(
図4(c)~(e))には、補正処理機能がオフである場合に見られるような電流値の落ち込みは無く、従って、出力しようと意図した通りの出力が維持されていることが示されている。
【0033】
以上のごとく、本実施形態の電力制御装置100によれば、ワークを複数の負荷によって加熱するシステムにおいて、温度の変動によって負荷特性が変動した場合においても、これが出力に影響されないようにすることができる。また当該機能を簡素な構成によって実現することができる。即ち、本実施形態によれば、複数の負荷を備えている場合においても電流検出器は1つでよく、簡素な構成によって実現することができる。電流検出器31や電流検出部12等の構成は、断線検知等の他の目的のために元々装置に備えられているものを利用することができ、従って本機能を低コストにて実現することができる。
【0034】
<実施形態2>
実施形態2として、実施形態1のシステムにおける補正強度を変更可能とする方法について説明する。
基本的な概念は実施形態1と同様であるため、重複する説明は省略し、主に実施形態1と異なる点について以下説明する。
【0035】
実施形態1の電力制御装置においては、目標とする合成電流値と、実際に測定された合成電流値の比(数1で示される補正値mc)のみで補正が行われる。これに対して、補正値mcとともに調整係数を使用して、補正強度を変更できるようにしたものが本実施形態の電力制御装置である。なお、電力制御装置の構成は実施形態1の電力制御装置100と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0036】
本実施形態の電力制御装置では、調整係数αを使用した下記の数3によって、補正値MCを算出、更新する処理を行う。即ち、
図2のステップ206の処理において、数2に替えて数3に基づいて補正値MC
n+1を算出する。
【0037】
【数3】
なお、調整係数αは0から1の間の値をとり、装置の出荷時に設定されている若しくはユーザによって入力されている等により、装置に設定されているものである。
【0038】
例えば、mc(数1)が10/9であった場合、実施形態1の数2では、補正値MCn+1は補正値MCnの1.111倍となる。一方、数3では、{1+(0.111)α}倍となる。つまり、補正値の増加減の割合(上記の例では0.111増加)と、0から1の間の値をとる調整係数αによって補正強度を任意に設定することができる。
制御サイクルごとの補正量を抑制したい場合等において有用である。
なお、αが1の場合は実施形態1と同様の結果となり、αが0の場合には補正動作は行われない。
数3は、補正値MCnと“所定の値”との積を、次のサイクルの補正値MCn+1とする処理において、“所定の値”が「前記補正値の増加減分の割合と調整係数との積に1を加算した値」であるものである。
【0039】
なお、数3を変形すると下記の数4となる。
【0040】
【数4】
調整係数αは0から1の間の値をとるため、(1-α)は調整係数αに対する補数である。
よって、数4(即ち数3)は、補正値MC
nと“所定の値”との積を、次のサイクルの補正値MC
n+1とする処理において、“所定の値”が「各操作出力値MV(ch)と各負荷の定格電流値I(ch)のそれぞれの積の合計値を、電流検出器31によって得られる合成電流値iで除算した値に調整係数αを乗じた値と、調整係数αに対する補数との和」である
【0041】
なお、ここでは数3(及びこれを変形した数4)を一例としているが、本発明をこれに限るものではなく、「補正値mcによる補正強度を変更可能とする調整係数を使用して、補正値MCを更新する」ものであればよい。
【0042】
各実施形態では、負荷がヒータであり、基本的に昇温制御を行うものを例としたが、冷却素子を用いて冷却制御を行うもの等であっても構わない。
なお、ペルチェ素子等の半導体素子においては、温度上昇に伴って電流値が増加する特性を示すが、概念としては各実施形態で説明したものをそのまま適用することができる。
また、各実施形態では、電源が直流電源であるものを例としているが、交流電源に対しても本発明を適用することができる。
【0043】
各実施形態では、補正値の更新処理を、電力供給制御の制御サイクル毎に毎回行うものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、補正値の更新処理は任意のタイミングで行うものであってもよい。ただし、負荷の温度変化が早い場合には、更新サイクルまたは更新タイミングの間隔を短くする方が好適である。
また、所定の条件下においては補正値の更新を行わないようなものとしてもよい。その一例として、算出された補正値の変動量(MCn+1とMCnの差)や合成電流値の変動量(例えば、inとin-1の差)が所定値を超える場合には、補正値の更新を行わないようにしてもよい。
また、負荷の温度特性を考慮したうえで、補正値の適用範囲に制限(例えば、0.8~1.2)を設けても良い。
また、必要以上に補正値が変動しないように、算出された複数のサイクルの補正値MC(例えば直近の5サイクル分の補正値MCn-3~MCn+1)を用いて、これらの移動平均値を算出し、これを最新の補正値MCn+1として使用するものであってもよい。この際に、移動平均値を最新の補正値MCn+1として置き換えるようにしてもよいし、補正値MCn+1自体はそのままとし、移動平均値を操作出力値にかけた補正操作出力値によって負荷への電力供給制御を行うようにしてもよい。
なお、単純な移動平均ではなく、直近のサイクル程重みづけがされるような加重平均等としてもよく、各種の算出方法によって平均値を算出してよい。
各実施形態のシステムでは、プレートまたはワークの温度変化が比較的緩やかなものであるため、急激な温度変化は生じ難く、従って正常な処理下においては補正値が急激に変化することはない。これらの処理により、ノイズなどの影響に対して、補正値の過敏な反応を抑制することができる。
【0044】
上記において、補正値の変動量が大きい状態や、補正値が所定範囲内に無い状態が、所定回数又は所定期間以上続く場合には、警報情報を出力し、負荷への電力の出力動作を停止するようにしてもよい。
【0045】
また、操作出力値が所定値以下であるときや、電流検出器によって得られる合成電流値が所定値以下であるときは、補正値として初期値を使用する、若しくは補正処理機能を自動的にオフするようにしてもよい。これにより、合成電流値inの測定分解能が低い場合に、補正値が過大な反応をしてしまう問題を低減させることができる。また、補正値の初期値は1(100%)でなく、0.8や1.2などの任意の値や、ユーザによって入力できる設定値としてもよい。
【0046】
各実施形態では、各負荷の定格電流値I(ch)が装置に予め設定されているものを例としているが、各負荷の定格抵抗値R(ch)および電源の定格電圧値Vが、装置の出荷時に設定されている若しくはユーザによって入力されている等により装置に予め設定されており、定格電圧値Vを定格抵抗値R(ch)で除算することによって定格電流値I(ch)を算出し、これを使用するものであってもよい。また、マイコンなどの動作に必要なメモリを削減するため、定格電流値I(ch)や定格抵抗値R(ch)を、すべてのチャンネルで共通化した値(例えば定格電流値I、定格抵抗値R)としてもよい。
【0047】
各実施形態では、電力制御装置が、出力演算部11と、電流検出部12と、通信部13を備えるものとして説明したが、各機能部がハード的に個別に構成されることに限定するものではなく、例えば、マイコンなどの1つのデバイス上で全ての機能がソフトウェア的に実装されるもの等であってもよい。逆に、各機能部の何れか若しくは全てをハード的に(専用回路等によって)実装するものであってもよく、各実施形態において出力演算部11上でソフトウェア的に実行される処理として説明した機能の一部若しくは全部をハード的に実装するものであってもよい。
【0048】
各実施形態では、サイクルnで使用した補正値MCnと、サイクルnで新たに算出した補正値mc(および調整係数α)に基づき、次サイクルであるサイクルn+1の補正値MCn+1を算出するものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。例えば、サイクルnで使用する補正値MCnを、前サイクルの補正値MCn-1とサイクルnで新たに算出した補正値mc(および調整係数α)に基づいて算出するもの等であってよく、サイクルの前後のズレ等は、概念としての違いを与えるものではない。
また、実施形態では、該当サイクルの補正値の算出において、直近のサイクルの補正値を利用するものを例としているが、本発明はこれに限らない。例えば2サイクル前の補正値MCn-2とサイクルnで新たに算出した補正値mc(および調整係数α)に基づいて該当サイクルの補正値を算出するもの等であっても、十分な効果を得ることができる。
なお、“該当サイクル”とは、更新された補正値が使用されるサイクルを示すものである。即ち、「所定サイクル毎に、該当サイクルより前のサイクルの前記補正値と、所定の値と、の積によって、前記補正値を更新する更新処理を行う」とは、所定サイクル毎(サイクル間隔は任意)に、該当サイクル(更新された補正値が使用されるサイクル)よりも前のサイクル(何サイクル前かも任意)の補正値と、“所定の値(上記実施例で説明した値等)”の積によって、補正値を更新するものである。
【符号の説明】
【0049】
100...電力制御装置
11...出力演算部
12...電流検出部
13...通信部
21...プレート
31...電流検出器
1~4...負荷(ヒータ)