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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】保護シート剥離装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 41/00 20060101AFI20220725BHJP
   B65H 23/198 20060101ALI20220725BHJP
   B65H 23/182 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B65H41/00 Z
B65H23/198
B65H23/182
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018163336
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033171
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正樹
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-208986(JP,A)
【文献】特開平04-248097(JP,A)
【文献】特開2001-315981(JP,A)
【文献】特開平11-292327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 23/18-23/198
B65H 26/00-26/08
B65H 37/00-37/06
B65H 41/00
B65H 45/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の粘着テープを取付け可能かつ回転自在な供給ユニットと、前記供給ユニットから粘着テープを繰り出し可能な往復移動手段と、繰り出された粘着テープを巻き取り可能な巻取ユニットと、前記往復移動手段および巻取ユニットを駆動制御可能な制御装置とを備えて成る保護シート剥離装置において、
前記巻取ユニットは、前記粘着テープを巻回する巻取リールと、この巻取リールを回転駆動するトルクモータとを備え、
前記トルクモータは、その出力軸の回転を規制するブレーキ機能を有して成り、
前記供給ユニットは、これに取り付けた供給リールの回転を規制するブレーキ手段に接するように配置され、
前記ブレーキ手段は、前記制御装置に接続されて成り、
前記制御装置は、前記トルクモータのブレーキ機能を有効にした後、前記往復移動手段を作動するよう駆動制御して成ることを特徴とする保護シート剥離装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ブレーキ手段を作動した後、予め設定された設定トルクに達するまで前記トルクモータを回転駆動制御して成ることを特徴とする請求項1に記載の保護シート剥離装置。
【請求項3】
前記トルクモータは、これに電力を供給すれば前記ブレーキ機能が無効となる一方、供給しなければ有効になるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の保護シート剥離装置。
【請求項4】
前記制御装置は、別途設置される回収装置を接続して成り、当該回収装置から粘着テープに吸着された保護シートを回収し、この回収完了信号を受け取ると、当該回収完了信号の受信回数を記憶し、この記憶した受信回数と予め設定されている設定回数とを比較し一致していれば、前記トルクモータの回転駆動を実行処理して成ることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載の保護シート剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに配された保護シートを粘着テープにより剥離する保護シート剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保護シート剥離装置は、特許文献1に開示されており、ロール状の粘着テープを回転自在に軸支するリールから繰り出す往復移動手段と、繰り出された粘着テープを昇降させ保護シートへ接着するアクチュエータと、前記保護シートを接着した粘着テープを下流へ送るガイドローラと、このガイドローラを一定速度により回転駆動可能なスピードコントロールモータと、このスピードコントロールモータの回転駆動により下流へ送りられた粘着テープを前記保護シートとともに巻き取るトルクモータとから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-208986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の保護シート剥離装置は、保護シートを1枚剥離する度に所定量の粘着テープを消費しなければならず、粘着テープのコストが掛かるという問題があった。また、従来の保護シート剥離装置は、2つのモータを具備しているので、製作コストが増大するという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ロール状の粘着テープを取付け可能かつ回転自在な供給ユニットと、前記供給ユニットから粘着テープを繰り出し可能な往復移動手段と、繰り出された粘着テープを巻き取り可能な巻取ユニットと、前記往復移動手段および巻取ユニットを駆動制御可能な制御装置とを備えて成る保護シート剥離装置において、前記巻取ユニットは、前記粘着テープを巻回する巻取リールと、この巻取リールを回転駆動するトルクモータとを備え、前記トルクモータは、その出力軸の回転を規制するブレーキ機能を有して成り、前記供給ユニットは、これに取り付けた供給リールの回転を規制するブレーキ手段に接するように配置され、前記ブレーキ手段は、前記制御装置に接続されて成ることを特徴とする。なお、前記制御装置は、前記トルクモータのブレーキ機能を有効にした後、前記往復移動手段を作動するよう駆動制御して成ることが望ましい。また、前記制御装置は、前記ブレーキ手段を作動した後、予め設定された設定トルクに達するまで前記トルクモータを回転駆動制御して成ることが望ましい。さらに、前記トルクモータは、これに電力を供給すれば前記ブレーキ機能が無効となる一方、供給しなければ有効になるよう構成されていることが望ましい。また、前記制御装置は、別途設置される回収装置を接続して成り、当該回収装置から粘着テープに吸着された保護シートを回収し、この回収完了信号を受け取ると、当該回収完了信号の受信回数を記憶し、この記憶した受信回数と予め設定されている設定回数とを比較し一致していれば、前記トルクモータの回転駆動を実行処理して成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る保護シート剥離装置は、回転駆動源の一例であるトルクモータを1つ搭載する装置構成のため、複数台のモータを具備していた従来のものに比べて、製作コストを削減できるという利点がある。また、本発明に係る保護シート剥離装置は、前記ブレーキ機能を有効にして巻取リールを回転不能にした後、往復移動手段を作動するので、回転自在な供給リールから粘着テープを所定量繰り出すことができるという利点もある。さらに、本発明に係る保護シート剥離装置は、ブレーキ手段を作動して供給リールに回転規制をかけつつ、トルクモータを設定トルクに到達するまで回転駆動するので、往復移動手段の復動によって弛んだ粘着テープを張った状態にすることができる。これにより、本発明に係る保護シート剥離装置は、供給リールから繰り出された粘着テープの繰り出し長さに見合った分、つまり、粘着テープの弛み分をほぼ正確に巻き取ることができるので、粘着テープを過剰に巻き取り難く無駄な消費を抑制できるという利点もある。また、本発明に係る保護シート剥離装置は、電力供給の有無によってブレーキ機能の無効または有効が決定されるトルクモータを搭載するので、出力軸のロック状態を保持するための特別な信号などを必要としないという利点もある。さらに、本発明に係る保護シート剥離装置は、これに剥離されたワークの保護シートを取り除き別途回収する回収装置から、保護シートの回収を終えた旨の回収完了信号をカウントして記憶する。また、この記憶した記憶受信回数と予め設定されている設定回数とを比較し一致していれば巻取リールの回転を実行処理するので、設定回数を増やすことで粘着テープの粘着力がある程度低下するまで当該粘着テープの巻き取りを行わないようにできる。これにより、本発明に係る保護シート剥離装置は、粘着テープの消費をより抑制できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る保護シート剥離装置を示す概略説明図である。
図2図1に示す保護シート剥離装置の動作前の状態を示す動作説明図である。
図3図2の状態から動作が進み、粘着テープが保護シートに当接した直後の状態を示す動作説明図である。
図4図3の状態から動作が進み、プレートを斜め上方へ移動し始めた状態を示す動作説明図である。
図5図4の状態から動作が進み、保護シートをワークから完全に剥離した状態を示す動作説明図である。
図6図5の状態から動作が進み、往復移動手段を復動させた状態を示す動作説明図である。
図7図6の状態から動作が進み、粘着テープの弛みを解消し終えた状態を示す動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る保護シート剥離装置1は、薄い保護シートSを粘着テープ2の接着面2aに貼り付けてワークWから剥離するものであり、図1ないし図7に示すように、粘着テープ2を回転自在に軸支する供給ユニット10と、前記粘着テープ2の非接着面2bに接触するよう配され往復移動する往復移動手段20と、前記粘着テープ2を巻き取る巻取ユニット30と、前記往復移動手段20および巻取ユニット30を駆動制御する制御装置40とを備えて成る。
【0009】
前記供給ユニット10、往復移動手段20、巻取ユニット30、後記ブレーキ手段50は、何れも移載手段の一例である多関節ロボットの先端に取り付けられたプレートPに配置されており、前記ワークWの上方に位置している。また、前記ワークWは、その上面に保護シートSを配しており、図示しないクランプなどによって固定されている。
【0010】
前記供給ユニット10は、前記プレートPに取り付けられた回転自在な供給リール11と、この供給リール11に嵌め込まれた粘着テープ2を側方から外れないようガイドするガイド板12と、このガイド板12を供給リール11の側面に取り付ける取っ手付きボルト13とを備えて成る。また、この供給ユニット10の近傍には、供給リール11に取り付けられた粘着テープ2を回転規制可能なブレーキ手段50が配置されている。
【0011】
前記ブレーキ手段50は、前記プレートPに取り付けられたエアシリンダ51と、このエアシリンダ51の可動部に固定されたブレーキ部材52と、エアシリンダ51へ供給する圧縮エアの経路を切り替える電磁弁53とを備える。また、前記エアシリンダ51と電磁弁53との間に図示しない減圧弁を配して後記押圧力を調整可能にしてもよい。
【0012】
前記往復移動手段20は、プレートPに固定されたシリンダ取付台23と、このシリンダ取付台23に配置され往復移動可能な直動シリンダ21と、この直動シリンダ21の可動部に固定された繰出部材22と、直動シリンダ21へ供給する圧縮エアの経路を切り替える電磁弁24とを備える。
【0013】
前記巻取ユニット30は、供給リール11から繰り出された粘着テープ2を巻き取る巻取リール32と、この巻取リール32に接続された出力軸31aを備えるトルクモータ31と、このトルクモータ31の出力軸31aの実測回転数および実測トルクを検出しフィードバック制御するモータ駆動部33とを備える。
【0014】
前記トルクモータ31は、六角支柱31bを介してプレートPに固定されており、前記モータ駆動部33の指令に基づき出力軸31aを回転不能に保つことを可能にするブレーキ機能を備えて成る。
【0015】
前記ブレーキ機能は、前記モータ駆動部33からの入力信号によって当該ブレーキ機能の有効または無効を切り替え可能に構成されるものであって、有効時には出力軸31aを回転不能な状態にする一方、無効時には回転自在な状態にする。
【0016】
また、前記入力信号は、出力軸31aを回転駆動するために必要な電力へ置き替えてもよい。これにより、トルクモータ31への電力供給がなされる時には前記ブレーキ機能が無効となる一方、電力供給がなされない時には有効となって出力軸31aをロック状態に保つことができる。つまり、出力軸31aを回転自在な状態またはロック状態へ切り替えるための入力信号がブレーキ機能の切り替えのみならず出力軸の回転駆動を行う前記電力となるので、トルクモータ31の制御に係る入力信号の数を低減できるという利点もある。
【0017】
前記モータ駆動部33は、前記トルクモータ31から送信された出力軸31aの実測回転数および実測トルクを前記制御装置40へ送信可能に構成されており、制御装置40に予め設定されている各種設定値に基づいてトルクモータ31をフィードバック制御可能に構成されている。
【0018】
前記制御装置40は、往復移動手段20の電磁弁24およびブレーキ手段50の電磁弁53を接続し、巻取ユニット30のモータ駆動部33を接続した上、前記プレートPを取り付けた前記多関節ロボットおよび図示しない回収装置をそれぞれ接続して成る。
【0019】
前記回収装置は、粘着テープ2に貼り付けられワークWから剥離された保護シートSを当該粘着テープ2から剥ぎ取って別途回収するよう構成されており、この保護シートSの回収を完了すれば、制御装置40へ回収完了信号を送信して成る。
【0020】
また、前記制御装置40は、前記トルクモータ31の駆動制御に必要な設定回転数および設定トルクなどの各種設定情報を保存している設定情報部と、前記往復移動手段20、巻取ユニット30、ブレーキ手段50などの動作プログラムを保存している動作プログラム部と、前記回収装置などから出力される信号を受け取って記憶する記憶部と、前記動作プログラムに基づき往復移動手段20や前記多関節ロボットなどへ動作指令を送る指令部とを備える。
【0021】
前記記憶部は、前記回収完了信号の受信回数を記憶可能であり、前記指令部は、設定情報部、動作プログラム部、記憶部に接続されるとともに、前記巻取ユニット30や回収装置などにも接続されて成る。また、前記設定情報部は、これに予め設定され前記受信回数と比較する設定回数を記憶して成り、これに設定されている前記設定トルクは、図6の前記ブレーキ手段50の押圧力を受けつつ弛み状態の粘着テープ2の巻き取りに必要なトルクよりも高く、かつ、図7の前記ブレーキ手段50の押圧力を受けつつ弛みを解消した以降の粘着テープ2の巻き取りに必要なトルクよりも低い値に設定されている。
【0022】
このように構成された本発明に係る保護シート剥離装置1の作用を以下に説明する。まず、保護シート剥離装置1は、常時は図1および図2に示すように、ワークWに被せられた保護シートSの上方に位置しており、ブレーキ手段50が前記ブレーキ部材52を引き込ませ、往復移動手段20が前記繰出部材22を下方へ突き出し、巻取ユニット30のブレーキ機能が有効となっている。
【0023】
ここから図示しない作業者のボタン操作などによってスタート信号が前記指令部へ送信されることで、前記指令部が、動作ブログラム部の動作プログラムを処理し始めて前記ブレーキ手段50の電磁弁53へ作動指令を送る。これにより、前記ブレーキ部材52は、引き込んだ状態から図3に示す突き出し状態となり、粘着テープ2に当接し当該粘着テープ2の外周を所定の押圧力によって押圧する。よって、これまで回転自在だった供給リール11の回転は、前記ブレーキ部材52の押圧の程度に応じて規制されるものであって、完全にロックされ回転不能な状態に保つものではない。
【0024】
このように、図1および図2の状態から前記ブレーキ部材52を突き出し、供給リール11を回転規制すれば、前記指令部から前記多関節ロボットへ下降動作指令が発せられる。これを受けた多関節ロボットは、プレートPを図1および図2の位置から図3に示す位置まで下降させて前記繰出部材22の先端に位置する粘着テープ2の接着面2aに前記保護シートSを当接させる。
【0025】
この後、多関節ロボットは、前記プレートPを斜め上方へ順に移動して図5に示す位置までプレートPを移動し終え、ワークWから保護シートSを完全に剥離し、前記指令部へ移動完了信号を送信する。
【0026】
前記指令部は、前記回収装置へ動作開始指令を送る。これを受けた回収装置は、図5に示す状態の前記保護シートSを図示しない別の場所へ回収し終えると、回収完了信号を指令部へ送る。
【0027】
ここで、指令部は、これまで受信した前記回収完了信号をカウントし、このカウント数である受信回数を前記記憶部へ書き込むとともに、前記受信回数と前記設定情報部に記憶されている設定回数とを比較して一致するか否か判定する。
【0028】
前記指令部は、前述の判定結果が一致の場合、前記受信回数をリセットするとともに前記直動シリンダ21を復動させるために前記電磁弁24へ作動指令を送る。これにより、前記繰出部材22が上昇するので、粘着テープ2は図6に示すように弛みを生じる。指令部は、直動シリンダ21の復帰後、前記ブレーキ機能を無効にするとともに設定情報部に記憶した前記設定トルクに基づいて当該トルクモータ31を回転駆動するようモータ駆動部33へ指令を送る。
【0029】
前記トルクモータ31は、弛んだ状態の粘着テープ2を巻取リール32側へ回収し始め、徐々に弛みのあった図6の状態から弛みを解消した図7の状態となり前記実測トルクが設定トルクに達するまで回転駆動する。これにより、本発明に係る保護シート剥離装置1は、粘着テープ2の弛みが解消された直後にトルクモータ31の回転駆動を停止するので、粘着テープ2の過剰な消費を抑制できる。
【0030】
一方、指令部は、前述の判定結果が不一致の場合、前記受信回数をリセットすることなく多関節ロボットへ動作指令を送り図2に示す位置までプレートPを移動して次の動作に備える。これにより、本発明に係る保護シート剥離装置1は、ワークWから保護シートSを剥離する度に粘着テープを繰り出さないので、粘着テープの消費をより抑制できるという利点もある。
【符号の説明】
【0031】
1 … 保護シート剥離装置
2 … 粘着テープ
10 … 供給ユニット
20 … 往復移動手段
30 … 巻取ユニット
31 … トルクモータ
40 … 制御装置
50 … ブレーキ手段
S … 保護シート
W … ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7