(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】木炭燃料ユニット
(51)【国際特許分類】
A47J 37/07 20060101AFI20220725BHJP
F24B 1/182 20060101ALI20220725BHJP
F24B 3/00 20060101ALI20220725BHJP
C10L 5/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A47J37/07
F24B1/182
F24B3/00 A
C10L5/00
(21)【出願番号】P 2018000126
(22)【出願日】2018-01-04
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】515066210
【氏名又は名称】上海奥一貿易有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI OUYI TRADE ENTERPRISES CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】24D YUHUA BUILDING, NO.366 ZHAO JIABANG ROAD, SHANGHAI, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100094215
【氏名又は名称】安倍 逸郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189865
【氏名又は名称】下田 正寛
(72)【発明者】
【氏名】王 偉
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03279900(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1754221(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第00380086(EP,A1)
【文献】特開昭63-010697(JP,A)
【文献】実開昭50-036776(JP,U)
【文献】米国特許第02981249(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/12
F24B 1/00-15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙袋に、含浸用着火剤が含浸された複数の成形木炭および流動パラフィンを含浸した着火シートを含む着火剤が装填された木炭燃料パックと、
該木炭燃料パックの収納空間を有する金属箔トレイと、
該金属箔トレイを、その開口した上面を水平な状態で持ち上げて支持するスタンドとを備えた木炭燃料ユニットであって、
前記紙袋は
、矩形状のもので、
前記各成形木炭は、
オガクズを加熱圧縮して製造した成型薪を炭化させたオガ炭であり、
このオガ炭は、端面正方形の中空材であって、前記紙袋の全体に
縦横整列状態で
詰め込まれ、
前記着火剤は、平坦で矩形状の吸液性硬質シート材に、流動パラフィンが含浸された前記着火シートであり、
この吸液性硬質シート材は、詰め込まれた各オガ炭の上面を一括して被うサイズであって、前記紙袋に装填された全ての前記オガ炭の上面に載置される木炭燃料ユニット。
【請求項2】
紙袋に、含浸用着火剤が含浸された複数の成形木炭および流動パラフィンを含浸した着火シートを含む着火剤が装填された木炭燃料パックと、
該木炭燃料パックの収納空間を有する金属箔トレイと、
該金属箔トレイを、その開口した上面を水平な状態で持ち上げて支持するスタンドとを備えた木炭燃料ユニットであって、
前記スタンドは、金属線材製の平面視して矩形状をした環状枠である線状スタンドで、
該線状スタンドは、該線状スタンドの下部を構成する台枠の各上端部と、前記線状スタンドの上部を構成して前記金属箔トレイを支持する支持枠の各下端部とを、複数の高さ調整ジョイント管を介して、それぞれ高さ調整可能に連結したもので、
該各高さ調整ジョイント管は、前記金属線材より熱膨張率の低い金属、または、前記成形木炭の燃焼熱の作用で、前記台枠の上端部と前記支持枠の下端部との連結力を高めるように変形する形状記憶合金からなる木炭燃料ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は木炭燃料ユニット、詳しくは成形木炭(オガ炭)を使用し、屋外で加熱調理をする際に使用される木炭燃料ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、屋外でバーベキューをする際に使用する固形燃料として、黒炭を紙袋に収納した紙袋入り黒炭(木炭燃料パック)が知られている。火熾し時には、黒炭の火熾しを短時間で確実に行うため、火熾し器、または、非特許文献1に記載された固形着火剤や、ジェル状着火剤などを用いる場合が多い。具体的には、紙袋入り黒炭をバーベキューグリルの底部に載置し、その横に固形着火剤を配して着火する。または、紙袋の上にジェル状着火剤を塗布して火を点ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】[平成29年12月23日検索]、インターネット<URL:https://search.rakuten.co.jp/search/mall/着火剤/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、紙袋入り黒炭の場合、このように短時間で確実に火熾しするには、火熾し器や着火剤を別に用意する必要があった。また、着火剤の使用時、特にジェル状着火剤の使用時には、チューブの吐出口から漏れた着火剤により、手が汚れるおそれがあった。
さらに、紙袋入り黒炭を使用してバーベキューを行った場合、使用後、バーベキューグリルの底面に、焦げ付いた炭が大量に残る。そのため、この焦げを?き取るための後始末が必要であった。
さらにまた、バーベキューグリルは、同一の金網を使用可能な開口サイズが同じものでも、製品の種類(型式)ごとに、深さが異なることが多い。その結果、同じ開口サイズでありながら、製品の種類ごとに紙袋入り木炭の使用量が異なっていた。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、着火剤を紙袋内に収納すれば、火熾し器や着火剤を別途用意する必要がなく、また火熾し時、着火剤によって手を汚すこともなく、しかも黒炭に代えて成形木炭を紙袋に収納した木炭燃料パックを使用すれば、黒炭より高い火力を長時間維持できることを知見し、この発明を完成させた。
また、発明者は、鋭意研究の結果、木炭燃料パックを使い捨て可能な金属箔トレイに収納し、この金属箔トレイをスタンドに載置して所定の高さまで持ち上げ可能とすれば、利用されるグリルの深さに関係なく、少量の成形木炭でもって食材を加熱調理できることを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
すなわち、この発明は、火熾し時に火熾し器や着火剤を別途用意する必要がなく、着火剤による手の汚れも発生せず、黒炭より高火力を長時間維持することができ、さらには使用後の後始末も容易でグリルが汚れにくく、開口サイズが同じグリルであれば、グリルの深さに関係なく少量の成形木炭を使用して食材を加熱調理することができる木炭燃料ユニットを提供することを目的としている。
また、この発明は、火熾し時に火熾し器や着火剤を別途用意する必要がなく、着火剤による手の汚れも生じることがなく、黒炭より高火力を長時間維持することができる木炭燃料パックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、紙袋に、含浸用着火剤が含浸された複数の成形木炭および流動パラフィンを含浸した着火シートを含む着火剤が装填された木炭燃料パックと、該木炭燃料パックの収納空間を有する金属箔トレイと、該金属箔トレイを、その開口した上面を水平な状態で持ち上げて支持するスタンドとを備えた木炭燃料ユニットであって、前記紙袋は、矩形状のもので、前記各成形木炭は、オガクズを加熱圧縮して製造した成型薪を炭化させたオガ炭であり、このオガ炭は、端面正方形の中空材であって、前記紙袋の全体に縦横整列状態で詰め込まれ、前記着火剤は、平坦で矩形状の吸液性硬質シート材に、流動パラフィンが含浸された前記着火シートであり、この吸液性硬質シート材は、詰め込まれた各オガ炭の上面を一括して被うサイズであって、前記紙袋に装填された全ての前記オガ炭の上面に載置される木炭燃料ユニットである。
【0008】
ここでいう木炭燃料パックとは、紙袋の中に、含浸用着火剤付きの複数の成形木炭と、着火剤とを収納したものである。
紙袋の素材は、可燃性の紙であれば任意である。
紙袋の形状は、例えば、縦長または横長の矩形状などを採用することができる。
紙袋のサイズも、袋内に複数の成形木炭と着火剤を収納できれば任意である。
【0009】
含浸用着火剤の種類は、成形木炭に含浸可能であれば任意である。例えば、流動パラフィンや、アルコール系のジェル状着火剤でもよい。
成形木炭とは、オガクズを加熱圧縮して製造した成型薪(オガライト)を炭化させたオガ炭(成形備長炭)をいう。その性質は白炭(備長炭)に似て燃焼臭が少なく、高火力を長時間安定して持続する。
成形木炭の形状は、中空状のものとする。
成形木炭の長さは任意である。例えば、長さ2~3cmのものが取り扱い易い。
【0010】
着火シートとは、例えば、布帛(織布、不織布、網布)からなる基材シートに、流動パラフィンを含浸させたものなどを採用することができる。基材シートは湾曲しにくい硬質のものとする。
金属箔の素材は任意である。例えば、アルミニウム箔などを採用することができる。
【0011】
金属箔トレイの形状は限定されない。例えば、矩形容器状、円形容器状、楕円容器などを採用することができる。
金属箔トレイのサイズも任意である。木炭燃料パックを内部空間に収納可能であれば限定されない。
スタンドの種類は限定されない。例えば、金属線材からなるものでも、金属製の板材や棒材からなるものでもよい。
スタンドの形状は、金属箔トレイの形状に応じて適宜変更される。例えば、矩形枠状でもよい。
スタンドのサイズも金属箔トレイのサイズに応じて適宜変更される。
【0012】
紙袋の内面に積層される合成樹脂膜の素材は任意である。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを採用することができる。ただし、成形木炭に含浸された含浸用着火剤の袋外への漏出を防止可能な、耐薬品性の高いものが好ましい。
ここでいう「成形木炭が紙袋の全体に並列状態で装填される」とは、紙袋の内部空間に複数の成形木炭を、縦横整列状態で詰め込むことをいう。
吸液性硬質シート材としては、流動パラフィンの吸液性を有した各種の硬質の織布、各種の硬質の不織布などを採用することができる。
ここでの硬質の程度”は、吸液性硬質シート材を縦置きしたとき、容易には崩れ落ちない程度の硬度をいう。
【0013】
請求項2に記載の発明は、紙袋に、含浸用着火剤が含浸された複数の成形木炭および流動パラフィンを含浸した着火シートを含む着火剤が装填された木炭燃料パックと、該木炭燃料パックの収納空間を有する金属箔トレイと、該金属箔トレイを、その開口した上面を水平な状態で持ち上げて支持するスタンドとを備えた木炭燃料ユニットであって、前記スタンドは、金属線材製の平面視して矩形状をした環状枠である線状スタンドで、該線状スタンドは、該線状スタンドの下部を構成する台枠の各上端部と、前記線状スタンドの上部を構成して前記金属箔トレイを支持する支持枠の各下端部とを、複数の高さ調整ジョイント管を介して、それぞれ高さ調整可能に連結したもので、該各高さ調整ジョイント管は、前記金属線材より熱膨張率の低い金属、または、前記成形木炭の燃焼熱の作用で、前記台枠の上端部と前記支持枠の下端部との連結力を高めるように変形する形状記憶合金からなる木炭燃料ユニットである。
【0014】
金属線材としては、例えば、各種の針金(鉄製針金、アルミニウム製針金など)を採用することができる。
金属線材の太さは、木炭燃料パックを支持可能な強度を得られれば任意である。例えば、直径2mm程度でもよい。
環状枠とは、1本の金属線材の両端を連結して無端状とした枠である。
台枠の形状は、線状スタンドの下部を構成可能な形状であれば任意である。
また、支持枠の形状も、線状スタンドの上部を構成し、金属箔トレイを支持可能な形状であれば任意である。
台枠の上端部および支持枠の下端部の各本数は任意である。線状スタンドが矩形状の環状枠であるため、一般的にはそれぞれ4本である。
【0015】
高さ調整ジョイントは、成形木炭の燃焼熱により変形することで、台枠の上端部と前記支持枠の下端部との連結力を高める部材である。
「高さ調整ジョイント管が、金属線材より熱膨張率の低い金属からなる」とは、高さ調整ジョイント管の金属素材の線膨張率が、線状スタンド用の金属線材の線膨張率より低いことを意味する(バイメタルを含む)。具体的には、高さ調整ジョイント管が線膨張率10.4×10-6/Kのステンレス鋼(SUS410)で、線状スタンド用の金属線材が線膨張率19×10-6/Kの黄銅である場合などがこれに該当する。その他、高さ調整ジョイント管が線膨張率10.8×10-6/Kの炭素鋼で、線状スタンド用の金属線材が線膨張率23×10-6/Kのアルミニウムでもよい。
【0016】
また、「成形木炭の燃焼熱により、台枠の上端部と支持枠の下端部との連結力を高めるように変形する形状記憶合金」とは、高さ調整ジョイント管が所定温度以上に加熱された時、高さ調整ジョイント管における台枠の上端部の挿入部分と、支持枠の下端部の挿入部分とが、例えば、縮径または適宜形状に屈曲(湾曲)することをいう。
形状記憶合金は、変態点以上の温度では、変形を受けてもすぐさま元の形状を回復する性質(超弾性)を有する。
形状記憶合金の素材としては、チタン‐ニッケルとの合金が一般的である。その他、鉄‐マンガン‐ケイ素合金(鉄系形状記憶合金)などを採用することができる。組成を変更することで、任意の温度以上になった時、あらかじめ設定した形状に変形する性質(マルテンサイト変態)を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1,2に記載の発明によれば、例えば、屋外でのバーベキュー時には、まずバーベキューグリルの底部に木炭燃料ユニットを載置する。このとき、バーベキューグリルの深さが深い場合には、金属箔トレイをスタンドに載置し、木炭燃料ユニットを所定の高さまで持ち上げる。これにより、少量の成形木炭であっても、食材を載置した金網に火元の各成形木炭を近づけて、食材の加熱調理をすることができる。
その後、マッチなどで木炭燃料パックの紙袋に着火する。これにより、紙袋の全体に火が燃え広がり、袋内の着火剤に引火して各成形木炭に火が点く。本来、成形木炭は黒炭に比べて着火しにくい。しかしながら、あらかじめ各成形木炭には含浸用着火剤が含浸されているため、紙袋に収納された着火剤が燃焼する短時間の低い火力であっても、成形木炭に着火することができる。
【0018】
また、このように着火剤を紙袋に収納したため、火熾し時に火熾し器や着火剤を別途用意する必要がなく、かつ着火剤によって手を汚すこともない。
さらに、従来の黒炭に代えて成形木炭を採用したため、黒炭より高い火力を長時間維持することができる。
さらにまた、この木炭燃料パックを、使い捨て可能な金属箔トレイに収納したため、使用後は焼却灰を金属箔トレイごと廃棄することができる。その結果、使用したグリルが汚れにくく後片づけが容易となる。
【0019】
特に、請求項1に記載の発明によれば、横長な矩形状の紙袋の全体に、複数の成形木炭が並列状態(平置き状態)で装填されている。また、全ての成形木炭の上面には、吸液性硬質シート材に流動パラフィンが含浸された平坦で矩形状の着火シートが載置されている。したがって、仮に木炭燃料パックを縦置き状態で移送しても、吸液性硬質シート材をベースとした型崩れしにくい着火シートが、各成形木炭の全体をそれらの表面側から支持する。これにより、各成形木炭の紙袋内での整列状態は維持される。
【0020】
しかも、このように着火シートが大判の吸液性硬質シート材からなるため、着火シートは常に全ての成形木炭の上面と接触している。これにより、木炭燃料パックの使用時に紙袋に点けた火は、この着火シートを介して、各成形木炭の上面に燃え移る。よって、着火直後より金属箔トレイの開口全域から高い火力が得られる。
【0021】
以上の点は、木炭燃料パックが単独で流通(販売)される場合に、その効果が顕著となる。すなわち、木炭燃料パックが単独で販売される際には、紙袋が破れないように、単にプラスチック袋に入れて販売されることが一般的である。このとき、仮に着火シートとして軟質シート材を採用したならば、流通段階で、着火シートが自重により紙袋内の一箇所に偏在する可能性が高い。それに対して、本発明の着火シートは、各成形木炭の上面を一括して被うサイズの吸液性硬質シート材を基材としているため、仮に木炭燃料パックが、流通段階で粗雑に扱われたとしても、着火シートは紙袋内の一箇所に偏在せず、上述した効果は常に確保される。
その後、各成形木炭の上面に均等に移った火は、徐々に各成形木炭の下面へ向かって燃え広がって行く。そのため、黒炭に比べて高い火力を長時間維持することができる。
【0022】
なお、仮に着火シートとして前記軟質シートを採用して、木炭燃料パックを縦置き状態で移送した場合には、下向きとなった紙袋の端部に、着火シートが自重で垂れ落ちる。このように、着火シートが垂れ落ちれば、紙袋に火を点けた際に、着火シートと接する一部の成形木炭だけしか着火することができず、着火直後は、金属箔トレイの開口全域から高い火力を得ることができない。
【0023】
また、紙袋は内面に合成樹脂膜が積層されているため、流動パラフィンは袋の外へ漏れない。そのため、木炭燃料パックの取り扱い時、漏出した流動パラフィンにより手が汚れることはない。しかも、一部の流動パラフィンが各成形木炭の上面に吸着されるため、各成形木炭の着火性をさらに高めることができる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明によれば、例えば、バーベキューグリルの底部に木炭燃料パックを載置する際に、高さ調整ジョイント管を利用し、バーベキューグリルの深さに応じて、金属箔トレイを支持する支持枠の高さを調整することができる。具体的には、バーベキューグリルの開口を塞ぐ金網上の食材を加熱調理するのに好適な火力が得られるように、高さ調整ジョイント菅にそれぞれ差し込まれる線状スタンドの台枠の上端部と、線状スタンドの支持枠の下端部との各差し込み長さを調整する。
【0025】
その後、各成形木炭を燃やして食材を加熱調理すれば、その熱が、金属箔トレイから金属線材製の線状スタンドの支持枠を経て高さ調整ジョイント管に伝達される。このとき、高さ調整ジョイント菅が、金属線材より熱膨張率の低い金属からなる場合には、支持枠の温度(成形木炭の燃焼温度)が高まるほど、線状スタンドと高さ調整ジョイントとの熱膨張率の差が大きくなり、高さ調整ジョイント管による台枠の上端部と支持枠の下端部との連結力が増大する。
または、高さ調整ジョイント管が形状記憶合金からなる場合には、高さ調整ジョイント管が、成形木炭の燃焼熱で、その変態点以上の温度に到達した時、高さ調整ジョイント管が台枠の上端部と支持枠の下端部との連結力を高めるように変形する。
以上の結果、スタンドとして、金属線材を単に環状に折り曲げて作製された極めて簡単で安価な線状スタンドを採用したとき、その価格の高騰を招くことなく、線状スタンドの高さを調整可能で、しかも成形木炭の燃焼熱を利用し、無動力で各連結部分の連結強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明の実施例1に係る木炭燃料ユニットの組立状態を示す斜視図である。
【
図2】この発明の実施例1に係る木炭燃料ユニットの分解斜視図である。
【
図3】この発明の実施例1に係る木炭燃料ユニットに組み込まれる木炭燃料パックの縦断面図である。
【
図4】この発明の実施例1に係る木炭燃料ユニットに組み込まれる別のスタンドの斜視図である。側面図である。
【
図5】この発明の実施例1に係る木炭燃料ユニットによる食材の加熱調理状態を示す縦断面図である。
【
図6】この発明の実施例2に係る木炭燃料ユニットに組み込まれる木炭燃料パックの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施例の木炭燃料ユニットおよび木炭燃料パックを、図面を参照して具体的に説明する。なお、ここでは屋外でバーベキューをする際に、バーベキューグリルの燃料として使用される場合を例にとる。
【実施例】
【0028】
図1および
図2において、10はこの発明の実施例1に係る木炭燃料ユニットで、この木炭燃料ユニット10は、紙袋11に、流動パラフィン(含浸用着火剤)が含浸された複数のオガ炭12(成形木炭)、および、流動パラフィンを含浸した着火シート13(着火剤)が装填された木炭燃料パック14と、木炭燃料パック14の収納空間を有するアルミニウム箔(金属箔)製のアルミ箔トレイ15(金属箔トレイ)と、アルミ箔トレイ15を、その開口した上面を水平な状態で持ち上げて支持する針金(金属線材)製の線状スタンド(スタンド)16とを備えている。
【0029】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
図1~
図3に示すように、木炭燃料パック14の外装材となる紙袋11は、内面に耐油性の合成樹脂膜11aが積層された縦22cm、横27cmの矩形状で可燃性の紙製の袋である。
オガ炭12(成形備長炭)は、オガクズを加熱圧縮して製造した成型薪(オガライト)を炭化させた一辺が約4cmの端面正方形で、長さが2~3cmの中空の成形木炭である。その性質は、白炭(備長炭)に似て燃焼臭が少なく、高火力を長時間安定して持続する。各オガ炭12は、紙袋11の全体に並列状態で500g分が装填されている。
【0030】
着火シート13は、縦20cm、横25cm、厚さ数mmの湾曲自在な可燃性の不織布を基材シート13aとし、基材シート13aに流動パラフィンを含浸させたものである。このサイズであるため、着火シート13は、紙袋11に装填された全てのオガ炭12の上面に載置される。
着火シート13に含浸された含浸用着火剤は、流動パラフィンである。
アルミ箔トレイ15は、アルミニウム箔をプレス成型した縦22cm、横27cm、深さ5cmの横長な角形容器である。アルミ箔トレイ15の上面の開口部には、矩形枠状の外フランジ15aが同一素材で一体形成されている。また、アルミ箔トレイ15は、上方へ向かって徐々に口が広がった矩形ラッパ状の使い捨て火皿である。アルミ箔トレイ15の底部には、通気孔が存在しない。そのため、焼却灰やごみがこの底部から零れ落ちない。
【0031】
線状スタンド16は、直径2mmの1本のアルミニウム製の針金を適宜屈曲して付形した、平面視して矩形状の環状枠台である。線状スタンド16は、その四隅に配される脚部16aと、アルミ箔トレイ15の底板15aの長さ方向の両端部を下方支持する左右一対の底板支持部16bと、アルミ箔トレイ15の前板15cと後板15dとを挟持する一対の周壁支持部16cとを有している。各底板支持部16bの上枠部分と各周壁支持部16cの上枠部分とは、それぞれ水平配置されている。
【0032】
なお、
図4に示すように、この線状スタンド16を、下部を構成する一対の台枠17と、上部を構成してアルミ箔トレイ15を支持する一対の支持枠18とにより上下分割し、さらに台枠17の上方方向へ延びる4本の上端部17aと、支持枠18の下方へ延びる4本の下端部18aとを、アルミニウム(23×10
-6/K)製の針金より線膨張率の低い炭素鋼(10.8×10
-6/K)からなる4つの高さ調整ジョイント管19を介して、それぞれ高さ調整可能に連結した線状スタンド16Aに変更してもよい。
【0033】
こうすれば、例えば、バーベキューグリル20のより深い底部に木炭燃料パック14を載置する際に、高さ調整ジョイント管19を利用し、バーベキューグリル20の深さに応じて、各高さ調整ジョイント管19に差し込まれる線状スタンド16の台枠17の上端部と、線状スタンド16の支持枠18の下端部との各差し込み長さ、すなわち、アルミ箔トレイ15を支持する各支持枠18の高さを調整することができる。その結果、バーベキューグリル20の底部がさらに深くても、バーベキューグリル20の開口に置かれた金網21上の食材を加熱調理するのに好適な火力を得ることができる。
【0034】
各オガ炭12を燃やして食材を加熱調理したとき、その熱が、アルミ箔トレイ15から線状スタンド16の各支持枠18を経て、各高さ調整ジョイント管19に伝達される。このとき、高さ調整ジョイント管19が、アルミニウム製の針金より熱膨張率の低い金属からなるため、支持枠18の温度が高まるほど、線状スタンド16と高さ調整ジョイント管19との熱膨張率の差が大きくなり、高さ調整ジョイント管19による台枠17の上端部と支持枠18の下端部との連結力が堅固となる。そのため、加熱調理中に、木炭燃料ユニット10の自重の作用で、各高さ調整ジョイント管19による各台枠17の上端部と各支持枠18の下端部との連結が緩み、木炭燃料パック14の高さが低くなることがない。
なお、各高さ調整ジョイント管19は、オガ炭12の燃焼熱の作用で、各台枠17の上端部と各支持枠18の下端部との連結力を高めるように変形する形状記憶合金からなる高さ調整ジョイント管19Aを採用してもよい。形状記憶合金は、チタン‐ニッケル合金で、例えば200℃以上になった時、あらかじめ設定した微小な波打ち形状に変形する。
このように、スタンドとして、金属線材を単に環状に折り曲げて作製された極めて簡単で安価な線状スタンド16を採用したとき、その価格の高騰を招くことなく、線状スタンド16の高さを調整可能で、しかもオガ炭12の燃焼熱を利用して、台枠17の各上端部と支持枠18の各下端部との連結部分の連結強度を無動力で高めることができる。
【0035】
次に、
図1~
図3、
図5を参照して、この発明の実施例1に係る木炭燃料ユニット10のバーベキューでの使用方法を説明する。
図1~
図3、
図5に示すように、屋外でのバーベキュー時には、まず、アルミ箔トレイ15に木炭燃料パック14が収納された木炭燃料ユニット10を、支脚が付いた矩形容器状のバーベキューグリル20の底部に載置する。ここでは、バーベキューグリル20の開口サイズに合わせて、木炭燃料パック14を2つ使用する。
このとき、バーベキューグリル20の深さが深いため、アルミ箔トレイ15を線状スタンド16に載置し、アルミ箔トレイ15をバーベキューグリル20の金網21が配された開口部付近まで持ち上げる。これにより、紙袋11内に装填された少量(500g×2)のオガ炭12であっても、バーベキューの食材を載置した金網21に火元の各オガ炭12を近づけ、高い火力で食材を加熱調理することが可能となる。
【0036】
次に、マッチを使用し、紙袋11に着火する。これにより、紙袋11の全体に火が燃え広がり、袋内の着火シート13に引火して各オガ炭12に火が点く。このオガ炭12は、従来品の黒炭に比べて着火しにくい。しかしながら、あらかじめオガ炭12の全体に流動パラフィンが含浸されているため、紙袋11に収納した着火シート13が燃焼する短時間の小さな火力でも、各オガ炭12に着火することができる。その後、各成形木炭の上面に均等に移った火は、徐々に各オガ炭12の下面へ向かって燃え広がって行く。そのため、この高い火力を長時間維持することができる。
【0037】
このように、着火シート13を紙袋11に収納したため、火熾し時、火熾し器や着火剤を別途用意する必要がなく、かつ着火剤(特にジェル状着火剤)によって手を汚すこともない。
さらに、従来の黒炭に代えてオガ炭12を採用したため、黒炭に比べて高い火力を長時間(例えば2時間以上)維持することができ、しかも臭いもほとんどしない。
さらにまた、この木炭燃料パック14を、底部に通気孔が存在しない使い捨てタイプのアルミ箔トレイ15に収納したため、使用後は焼却灰を通気孔から零すことなく、アルミ箔トレイ15(木炭燃料ユニット10)ごと廃棄することができる。その結果、使用したグリルが汚れにくく後片づけが容易となる。
【0038】
次に、
図6を参照してこの発明の実施例2に係る木炭燃料ユニットおよび木炭燃料パックを説明する。
図6に示すように、実施例2の木炭燃料ユニット10Aの特徴は、木炭燃料パック15Aの着火シート13Aとして、紙袋11に装填された全てのオガ炭12の上面に載置される吸液性硬質シート材22に流動パラフィンが含浸された平坦で矩形状のものを採用した点である。
吸液性硬質シート材22は、硬質の合成繊維をバインダにより固めた硬質不織布である。その硬さは段ボール程度である。
【0039】
このように、全てのオガ炭12の上面に、吸液性硬質シート材22に流動パラフィンが含浸された平坦で矩形状の着火シート13Aを載置するように構成したため、仮に木炭燃料パック14Aを縦置き状態で移送しても、吸液性硬質シート材22をベースとした型崩れしにくい着火シート13Aが、各オガ炭12の全体をそれらの表面側から支持する。これにより、各オガ炭12の紙袋11内での整列状態は維持される。
しかも、このように着火シート13Aが大判の吸液性硬質シート材22からなるため、着火シート13Aは常に全てのオガ炭12の上面と接触している。これにより、木炭燃料パック14Aの使用時に紙袋11に点けた火は、この着火シート13Aを介して、各オガ炭12の上面に燃え移る。よって、着火直後よりアルミ箔トレイ15の開口全域から高い火力が得られる。
【0040】
以上の点は、木炭燃料パック14Aが単独で流通(販売)される場合に、その効果が顕著となる。すなわち、木炭燃料パック14Aが単独で販売される際には、紙袋11が破れないように、プラスチック袋に入れて販売されることが一般的である。このとき、仮に着火シート13Aとして軟質シート材を採用したならば、流通段階で、着火シート13Aが自重により紙袋11内の一箇所に偏在する可能性が高い。それに対して、実施例2の着火シート13Aは、各オガ炭12の上面を一括して被うサイズの吸液性硬質シート材22を基材としているため、仮に木炭燃料パック14Aが、流通段階で粗雑に扱われたとしても、着火シート13Aは紙袋11内の一箇所に偏在せず、上述した効果は常に確保される。
【0041】
なお、仮に軟質の着火シート13Aを採用して、この木炭燃料パック14Aを縦置き状態で移送した場合には、下向きとなった紙袋11の端部に、着火シート13Aが自重で垂れ落ちる。このように、着火シート13Aが垂れ落ちれば、紙袋11に火を点けた際に、着火シート13Aと接する一部のオガ炭12だけしか着火できず、着火直後は、アルミ箔トレイ15の開口全域から高い火力を得ることができない。
また、紙袋11は内面に合成樹脂膜11aが積層されているため、流動パラフィンは袋の外へ漏れない。これにより、木炭燃料パック14Aの取り扱い時、漏出した流動パラフィンによって手が汚れることはない。しかも、一部の流動パラフィンが各オガ炭12の上面に吸着されるため、各オガ炭12の着火性をさらに高めることができる。
その他の構成、作用および効果は、実施例1と略同じであるため、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、成形木炭を使用し、屋外で加熱調理をする際に使用される木炭燃料ユニットの技術として有用である。
【符号の説明】
【0043】
10,10A 木炭燃料ユニット、
11 紙袋、
11a 合成樹脂膜、
12 オガ炭(成形木炭)、
13,13A 着火シート、
14,14A 木炭燃料パック、
15 アルミ箔トレイ(金属箔トレイ)、
16 線状スタンド(スタンド)、
17 台枠、
17a 上端部、
18 支持枠、
18a 下端部、
19,19A 高さ調整ジョイント管、
22 吸液性硬質シート材。