(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】シート束取扱装置およびシート束取扱方法
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
B65H7/12
(21)【出願番号】P 2018008448
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2020-12-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 シート束取扱装置を含む新聞広告中入れ機「DI-80」を株式会社デュプロによって平成29年7月21日にデュプロ販売株式会社およびデュプロ株式会社に販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100093908
【氏名又は名称】松本 研一
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】井村 良太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 利浩
【審査官】沖 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-301576(JP,A)
【文献】特開2001-122475(JP,A)
【文献】特開2017-210363(JP,A)
【文献】特開2015-107879(JP,A)
【文献】特開平07-200906(JP,A)
【文献】実開昭61-050468(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記重送検知手段は、所定時点で前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みを基準厚みとして取得する基準厚み取得手段をさらに有し、
前記閾値変更判定手段は、前記所定時点以降に前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みを第1所定量下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定するシート束取扱装置。
【請求項2】
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記重送検知手段は、所定時点で前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みを基準厚みとして取得する基準厚み取得手段をさらに有し、
前記閾値変更判定手段は、前記所定時点以降に前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みを第1所定量下回った回数が第1回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定するシート束取扱装置。
【請求項3】
前記閾値変更判定手段は、連続して前記第1所定量下回った回数が前記第1回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する請求項2に記載のシート束取扱装置。
【請求項4】
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記閾値変更判定手段は、所定時点
以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時
点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記
所定閾値を変更すると判定するとともに、所定時点
以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時
点に計測されたシート束の厚みを上回った回数が所定回数を超えた場合、前記
所定閾値を変更すると判定するシート束取扱装置。
【請求項5】
前記重送検知手段は、所定時点で前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みを基準厚みとして取得する基準厚み取得手段をさらに有し、
前記閾値変更判定手段は、前記所定時点以降に前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みを第2所定量上回った回数が第2回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する請求項4に記載のシート束取扱装置
【請求項6】
前記閾値変更判定手段は、連続して前記第2所定量を上回った回数が前記第2回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する請求項5に記載のシート束取扱装置。
【請求項7】
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記閾値変更判定手段は、給紙されてくるシート束の厚みの増減に応じて、前記所定閾値を変更するか否かを判定
し、所定時点以降で計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った場合、前記所定閾値を変更しないと判定するシート束取扱装置。
【請求項8】
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙ステップと、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測ステップと、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知ステップと、
を含み、
前記重送検知ステップにおいて、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定ステップと、
前記閾値変更判定ステップにより、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更ステップと、
を含み、
前記閾値変更ステップは、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記
所定閾値を変更するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った回数が所定回数を超えた場合、前記
所定閾値を変更するシート束取扱い方法。
【請求項9】
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙ステップと、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測ステップと、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知ステップと、
を含み、
前記重送検知ステップにおいて、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定ステップと、
前記閾値変更判定ステップにより、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更ステップと、
を含み、
前記閾値変更判定ステップは、給紙されてくるシート束の厚みの増減に応じて、前記所定閾値を変更するか否かを判定
し、所定時点以降で計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った場合、前記所定閾値を変更しないと判定するシート束取扱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート束取扱装置、シート束取扱方法およびシート束取扱プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、軸位置が固定された基準ローラと軸位置が変位する変位ローラとを圧接して構成され、基準ローラと変位ローラとの間をシート束が通過したときの変位ローラの変位量に基づいて重送を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、給紙されるシート束の厚みが増減する場合に給紙異常を確実に検知することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート束取扱装置は、
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記重送検知手段は、所定時点で前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みを基準厚みとして取得する基準厚み取得手段をさらに有し、
前記閾値変更判定手段は、前記所定時点以降に前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みを第1所定量下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定する。
上記目的を達成するため、本発明に係るシート束取扱装置は、
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記重送検知手段は、所定時点で前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みを基準厚みとして取得する基準厚み取得手段をさらに有し、
前記閾値変更判定手段は、前記所定時点以降に前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みを第1所定量下回った回数が第1回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート束取扱装置は、
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記閾値変更判定手段は、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った回数が所定回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する。
上記目的を達成するため、本発明に係るシート束取扱装置は、
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有し、
前記閾値変更判定手段は、給紙されてくるシート束の厚みの増減に応じて、前記所定閾値を変更するか否かを判定し、所定時点以降で計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った場合、前記所定閾値を変更しないと判定する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート束取扱装置は、
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙ステップと、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測ステップと、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知ステップと、
を含み、
前記重送検知ステップにおいて、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定ステップと、
前記閾値変更判定ステップにより、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更ステップと、
を含み、
前記閾値変更ステップは、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記所定閾値を変更するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った回数が所定回数を超えた場合、前記所定閾値を変更する。
上記目的を達成するため、本発明に係るシート束取扱装置は、
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙ステップと、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測ステップと、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知ステップと、
を含み、
前記重送検知ステップにおいて、
計測された前記シート束の厚みの前記シート束間の変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定ステップと、
前記閾値変更判定ステップにより、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更ステップと、
を含み、
前記閾値変更判定ステップは、給紙されてくるシート束の厚みの増減に応じて、前記所定閾値を変更するか否かを判定し、所定時点以降で計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定するとともに、所定時点以降に計測されたシート束の厚みが、前記所定時点に計測されたシート束の厚みを上回った場合、前記所定閾値を変更しないと判定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給紙されるシート束の厚みが増減する場合に給紙異常を確実に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシート束取扱装置の構成を説明するブロック図である。
【
図2A】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置の全体構成の一例を示す外観斜視図である。
【
図2B】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置の全体構成の他の例を示す外観斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置の備える給紙部の構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置の備える閾値変更テーブルの一例を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6A】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置による基準厚み取得および所定閾値算出の手順を説明するフローチャートである。
【
図6B】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置による厚み計測の方法を説明する図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置の備える厚み計測部による給紙異常を検知する手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して、例示的に詳しく説明記載する。ただし、以下の実施の形態に記載されている、構成、数値、処理の流れ、機能要素などは一例に過ぎず、その変形や変更は自由であって、本発明の技術範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのシート束取扱装置100について、
図1を用いて説明する。シート束取扱装置100は、丁合装置や中入れ機などのシート束を取り扱う装置である。
【0013】
図1に示すように、シート束取扱装置100は、給紙部101と、厚み計測部102と、重送検知部103と、を備える。重送検知部103は、閾値変更判定部131と、閾値変更部132と、を有する。給紙部101は、複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する。厚み計測部102は、給紙されたシート束の厚みを計測する。重送検知部103は、計測されたシート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙されたシート束が重送されていることを検知する。閾値変更判定部131は、計測されたシート束の厚みの変化に基づいて、所定閾値を変更するか否かを判定する。閾値変更部132は、閾値変更判定部131により、所定閾値を変更すると判定された場合、所定閾値を変更する。
【0014】
本実施形態によれば、給紙されるシート束の厚みが増減する場合に給紙異常を確実に検知することができる。
【0015】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るシート束取扱装置について、
図2A乃至
図7を用いて説明する。
図2Aは、本実施形態に係るシート束取扱装置の全体構成の一例を示す外観斜視図である。
図2Bは、本実施形態に係るシート束取扱装置の全体構成の他の例を示す外観斜視図である。
【0016】
<前提技術>
図2Aに示したように、シート束取扱装置200は、いわゆる丁合装置であり、新聞販売店などにおいて、広告などのシート束を配達単位の束にまとめるために用いられる装置である。また、
図2Bに示したように、シート束取扱装置210は、いわゆる、中入れ装置であり、シート束取扱装置200で丁合されたシート束を、新聞などに中入れするための装置である。
【0017】
例えば、シート束取扱装置200は、広告などの種類別のシートとして納品される広告などを、複数設けられた給紙部201に積載して、1枚ずつ取り出して重ね合わせたものを、二つ折りした親紙の内側に挟んで配達単位のシート束とする。給紙部201は、1枚の用紙(広告、新聞など)のほか、いったんシート束取扱装置200で作成された配達単位のシート束を積載して1部ずつ取り出すこともでき、この場合、取り出されたシート束は、他の給紙部201から取り出された広告などと重ね合わせられる(再丁合)。また、例えば、シート取扱装置210は、いったんシート束取扱装置200で作成された配達単位のシート束を給紙部211の一方に積載し、1部ずつ取り出し、他方の給紙部211から1部ずつ取り出された新聞に挿入する。給紙部201の各々または給紙部211の一方は、シート束を1部ずつ送り出す際に、例外的に2部以上のシート束を送り出してしまう重送(給紙エラー)を起こしてしまうこともある。
【0018】
例えば、給紙部201には、軸位置が固定され位置が動かない基準ローラと、軸位置が変位可能な変位ローラと、が接するように配置されている。そして、基準ローラと変位ローラとの間にシート束を通過させてシート束の厚みを計測する厚み検知部を有する。この厚み検知部は、基準ローラと変位ローラとの間をシート束が通過したときの変位ローラの変位量に基づいて、給紙されているシート束の厚みを検知する。そして、検知した厚みを閾値と比較することによって、給紙されているシート束が重送されているか否かを検知している。この厚み検知部においては、最初にシート束を1部通過させたときに計測されるシート束の厚みの値に、所定の余裕値を加えた値を重送検知の閾値として決定する。そして、厚み検知部は、次回以降に計測された厚みが、重送検知の閾値を上回っていれば重送していると判断する。このような厚み検知部によれば、送り出されたシート束が1部であるか、2部以上重なっているかを検知することができる。
【0019】
しかしながら、近年では、広告主が広告費を抑制するために、広告部数が新聞の配達戸数に満たない広告を複数種類含めて丁合して広告束(シート束)とすることが多くなってきている。つまり、配達単位の広告束(シート束)の作成を配達戸数分繰り返し行っていくうちに、広告が積載された給紙部201の数が徐々に減っていくので、丁合が進むにつれて、1つの広告束に含まれる広告の種類が減っていく。その結果、丁合が進むにつれて、1つの広告束の厚さが減っていく。
【0020】
こうして出来上がった広告束を再度丁合するために給紙部201に積載して再丁合を行うと、丁合の初めに測定された広告束の厚さに応じて重送検知のために設定された閾値は厚い広告束を基準に設定されたものとなっている。しかしながら、丁合が進むにつれて広告束の厚みが減っていく。よって、丁合の初めに給紙された広告束よりも厚みが薄い広告束が重送されても、設定された閾値を超えることがないので、シート束取扱装置200は、重送を検知することができなくなることがあった。シート取扱装置210の給紙部211の一方に広告束を積載して新聞に挿入する場合も同様である。
【0021】
<本実施形態の技術>
図3は、本実施形態に係るシート束取扱装置200(210)の備える給紙部の構成を示す側面図である。本実施形態に係るシート束取扱装置200(210)の備える給紙部は、
図2に示したシート束取扱装置200(210)の給紙部201を給紙部300に置き換えたものである。また、
図3では、図が煩雑になるのを避けるため、シート束取扱装置200(210)の全体図の図示は省略している。なお、
図3では、シート束が横積みされている例を示しているが、シート束が縦積みされていても同様である。以下の説明ではシート束取扱装置200を用いて説明をするが、シート束取扱装置210であっても同様である。
【0022】
給紙部300は、厚み計測部301を有する。厚み計測部301は、給紙ローラ302の下流側(
図3の左側)に設けられる。厚み計測部301は、基準ローラ303と変位ローラ304とを有する。変位ローラ304は、基準ローラ303に対して上方から当接する。基準ローラ303の基準ローラ軸331は、基準ローラブラケット332に固定される。変位ローラ304の変位ローラ軸341は、変位レバー305の一端に固定される。変位レバー305の他端側は、フレーム(不図示)に固定された支点軸(不図示)に回動可能に支持されている。そのため、変位ローラ304は、基準ローラ303に対して相対的に変位可能となっている。変位レバー305の一端部には、検知面351が形成されており、この検知面351に変位センサ306の回動レバー361の回動端が当接している。
【0023】
シート束308が、基準ローラ303と変位ローラ304との間を通過するとき、シート束308の厚みの分だけ変位ローラ304の変位ローラ軸341が上昇し、これに伴って検知面351も上昇する。検知面351が上昇すると回動レバー361が回動する。変位センサ306は、回動レバー361の変位角を検出することにより、検知面351の上昇量、すなわち、基準ローラ303と変位ローラ304との間を通過したシート束308の厚みを検出する(計測する)(厚み計測部301)。制御部310は、給紙部300による給紙動作を制御する。そして、厚み取得部311は、厚み計測部301が計測したシート束308の厚みを取得する。
【0024】
重送検知部380は、変位センサ306によって検出されたシート束308の厚みに基づいて、重送の発生の有無を検知する。重送検知部380は、例えば、計測されたシート束308の厚みを所定閾値と比較して、給紙されたシート束308が重送されているか否かを判定し、重送検知を行う。例えば、計測されたシート束308の厚みが所定閾値を超えていた場合、給紙されたシート束308が重送されたと判断する。
【0025】
なお、変位レバー305は、引きバネ307により付勢されているため、シート束308が通過していない間は、引きバネ307の付勢力により、変位ローラ304は、基準ローラ303に圧接する。
【0026】
また、重送検知部380は、さらに、閾値変更判定部381と、閾値変更部382と、基準厚み取得部383と、記憶部384と、閾値算出部385と、を有する。閾値変更判定部381は、計測されたシート束の厚みの変化に基づいて、所定閾値を変更するか否かを判定する。閾値変更部382は、閾値変更判定部381により、所定閾値を変更すると判定された場合、所定閾値を変更する。
【0027】
基準厚み取得部383は、所定時点で厚み取得部311に取得されたシート束308の厚みを取得して、基準厚みとする。すなわち、基準厚み取得部383は、所定時点で基準ローラ303と変位ローラ304とを有する厚み計測部301により計測されたシート束308の厚みを基準厚みとして取得する。
【0028】
そして、閾値変更判定部381は、所定時点以降に計測されたシート束308の厚みが、基準厚みを所定量(第1所定量)下回った場合、所定閾値を変更すると判定する。また、閾値変更判定部381は、所定時点以降に計測されたシート束308の厚みが、基準厚みを所定量下回った回数が所定回数(第1回数)を超えた場合、所定閾値を変更すると判定してもよい。なお、シート束308の厚みが、基準厚みを所定量下回った回数は、連続して下回った回数が所定回数(第1回数)に到達した場合であっても、トータルの回数が所定回数(第1回数)に到達した場合であってもよい。なお、所定時点は、例えば、所定閾値の設定をした時点や所定閾値の変更をした時点などであるが、これらには限定されない。
【0029】
また、閾値変更判定部381は、所定時点以降に計測されたシート束308の厚みが、基準厚みを所定量(第2所定量)上回り、かつ、所定量を上回った回数が所定回数(第2回数)を超えた場合、所定閾値を変更すると判定する。給紙されるシート束308の厚みが増加していく場合、閾値変更判定部381は、このような閾値変更の要否の判定を行う。なお、シート束308の厚みが、基準厚みを上回った回数は、連続して上回った回数が所定回数(第2回数)に到達した場合であっても、トータルの回数が所定回数(第2回数)に到達した場合であってもよい。
【0030】
そして、閾値変更部382は、閾値変更判定部381により、所定閾値を変更すると判定された場合、所定閾値を変更する。所定閾値の変更は、当該所定閾値が小さくなるように変更しても、大きくなるように変更してもよい。このように所定閾値を変更するので、給紙されてくるシート束の厚みの増減に応じて、適宜閾値が変更(更新)されるので、シート束の厚みが増減しても確実にシート束の重送を検知することができる。なお、閾値変更判定部381は、所定時点以降に計測されたシート束308の厚みが、基準厚みを所定量(第1所定量)下回った場合(丁合が進むにつれて、1つの広告束の厚さが減っていく場合)だけ、所定閾値を変更すると判定し、基準厚みを所定量上回った場合(丁合が進むにつれて、1つの広告束の厚さが増えていく場合)については、所定閾値を変更しないように構成してもよい。丁合が進むにつれて、1つの広告束の厚さが減っていく場合に、これに応じて所定閾値を変更しなければ、所定閾値は、広告束の厚さに対しての最適値よりも高めになるため、重送していても検知できない可能性が生じる。これに対し、丁合が進むにつれて、1つの広告束の厚さが増えていく場合は、これに応じて所定閾値を変更しなくても、所定閾値が広告束の厚さに対しての最適値よりも低めになる結果、重送していないものを重送として検知してしまう可能性があるが、重送したものは確実に検知することができるからである。
【0031】
記憶部384は、重送検知に用いる所定閾値や、閾値変更判定部381により所定閾値を変更すると判定された場合の変更後の閾値などを記憶する。そして、閾値変更判定部381が所定閾値を変更すると判定した場合、閾値変更部382は該判定に基づいて、変更前の所定閾値に上書きして、変更後の所定閾値を記憶部384に記憶する。
【0032】
閾値算出部385は、基準厚み取得部383が取得した基準厚みに基づいて、所定閾値を算出する。
【0033】
給紙停止部390は、重送検知部380により重送が検知された場合、シート束308の給紙を停止させる。
【0034】
また、給紙停止部390は、計測されたシート束308の厚みが、基準厚みに対して、第1所定量よりも小さい第3所定量を下回った場合、シート束308の給紙を停止させる。すなわち、給紙されているシート束308の厚みが急激に小さくなった場合には、例えば、枚数が極端に少ない異常なシート束が給紙された可能性があるので、給紙停止部390は、給紙を停止する。計測されたシート束308の厚みが、基準厚みに対して第3所定量を下回ったか否かは、例えば、基準厚みに対して第3所定量だけ低い第2所定閾値をあらかじめ記憶しておき、計測されたシート束308の厚みが、第2所定閾値を下回った場合に、給紙停止部390が給紙を停止する。第2所定閾値は、閾値変更判定部381が所定閾値を変更すると判定した場合、閾値算出部385は所定閾値の算出と同時に、計測された厚みに基づいて、第2所定閾値を算出し、記憶されている第2所定閾値を上書きしてもよい。
【0035】
図4は、本実施形態に係るシート束取扱装置200の備える記憶部384に記憶される閾値変更テーブル401の一例を示す図である。閾値変更テーブル401は、シート束厚み411に関連付けて基準厚み412、所定量413および閾値414を記憶する。シート束厚み411は、給紙されたシート束308の厚みである。基準厚み412は、シート束308の厚みに基づいて取得した、閾値変更の判定基準となる値である。所定量413は、閾値変更の判定や給紙停止の判定などに用いられる値である。閾値414は、重送検知に用いる所定閾値と所定閾値を変更した後の変更後閾値とである。シート束取扱装置200は、例えば、閾値変更テーブル401を参照して、閾値変更の要否や給紙停止の要否などを判定する。
【0036】
図5は、本実施形態に係るシート束取扱装置のハードウェア構成を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)510は演算制御用のプロセッサであり、プログラムを実行することで
図3のシート束取扱装置200の機能構成部を実現する。ROM(Read Only Memory)520は、初期データおよびプログラムなどの固定データおよびその他のプログラムを記憶する。また、ネットワークインタフェース530は、ネットワークを介して他の装置などと通信する。なお、CPU510は1つに限定されず、複数のCPUであっても、あるいは画像処理用のGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。また、ネットワークインタフェース530は、CPU510とは独立したCPUを有して、RAM(Random Access Memory)540の領域に送受信データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。また、RAM540とストレージ550との間でデータを転送するDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けるのが望ましい(図示なし)。さらに、入出力インタフェース560は、CPU510とは独立したCPUを有して、RAM540の領域に入出力データを書き込みあるいは読み出しするのが望ましい。したがって、CPU510は、RAM540にデータが受信あるいは転送されたことを認識してデータを処理する。また、CPU510は、処理結果をRAM540に準備し、後の送信あるいは転送はネットワークインタフェース530やDMAC、あるいは入出力インタフェース560に任せる。
【0037】
RAM540は、CPU510が一時記憶のワークエリアとして使用するランダムアクセスメモリである。RAM540には、本実施形態の実現に必要なデータを記憶する領域が確保されている。計測シート束厚み541は、計測されたシート束308の厚みである。基準厚み542は、所定時点で計測されたシート束の厚みである。閾値543は、重送検知に用いるために設定した所定閾値や、所定閾値を変更した場合の変更後閾値などである。所定量544は、閾値変更の要否の判定や給紙停止の要否の判定に用いる量である。回数545は、所定閾値の変更の判定に用いられる、基準厚みを上回った回数や、下回った回数である。
【0038】
入出力データ546は、入出力インタフェース560を介して入出力されるデータである。パルス数547は、シート束270の厚み計測に用いられる。基準値低下フラグ履歴548は、基準値が低下したことを示すフラグの履歴を表す。
【0039】
ストレージ550には、データベースや各種のパラメータ、あるいは本実施形態の実現に必要な以下のデータまたはプログラムが記憶されている。ストレージ550は、閾値変更テーブル401を格納する。閾値変更テーブル401は、
図4に示した、シート束厚み411と、基準厚み412や閾値414などとの関係を管理するテーブルである。ストレージ550は、さらに、厚み取得モジュール551、重送検知モジュール552、閾値変更判定モジュール553、閾値変更モジュール554、基準厚み取得モジュール555、閾値算出モジュール556および給紙停止モジュール557を格納する。また、ストレージ550は、パルス数閾値559を格納する。
【0040】
厚み取得モジュール551は、給紙されたシート束308の厚みを取得するモジュールである。重送検知モジュール552は、計測されたシート束308の厚みを所定閾値と比較して、給紙されたシート束308が重送されていることを検知するモジュールである。閾値変更判定モジュール553は、計測されたシート束308の厚みの変化に基づいて、所定閾値を変更するか否かを判定するモジュールである。閾値変更モジュール554は、所定閾値を変更すると判定された場合に、所定閾値を変更するモジュールである。基準厚み取得モジュール555は、所定時点で計測されたシート束308の厚みを基準厚みとして取得するモジュールである。閾値算出モジュール556は、取得した基準厚みに基づいて、所定閾値を算出するモジュールである。給紙停止モジュール557は、給紙されたシート束308が重送されていた場合、または計測されたシート束308の厚みが急激に減少する場合に、シート束308の給紙を停止させるモジュールである。これらのモジュール551~557は、CPU510によりRAM540のアプリケーション実行領域(不図示)に読み出され、実行される。制御プログラム558は、シート束取扱装置200(210)の全体を制御するためのプログラムである。パルス数閾値559は、カウントされるパルス数の閾値である。
【0041】
入出力インタフェース560は、入出力機器との入出力データをインタフェースする。入出力インタフェース560には、給紙部インタフェース565、表示部561、操作部562、が接続される。また、入出力インタフェース560には、さらに、記憶媒体564が接続されてもよい。さらに、音声出力部であるスピーカ563や、音声入力部であるマイクが接続されてもよい。給紙部インタフェース565には、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末との接続をインタフェースする。なお、
図5に示したRAM540やストレージ550には、シート束取扱装置200(210)が有する汎用の機能や他の実現可能な機能に関するプログラムやデータは図示されていない。
【0042】
図6Aは、本実施形態に係るシート束取扱装置200による基準厚み取得および所定閾値算出の手順を説明するフローチャートである。このフローチャートは、CPU510がRAM540を使用して実行し、
図3のシート束取扱装置200(210)の機能構成部を実現する。なお、シート束取扱装置200(210)は、シート束308の基準厚みおよび所定閾値を第1回目の給紙で設定するが、これには限定されず、必要に応じて2回目以降の給紙で設定してもよい。なお、以下の説明ではシート束取扱装置200を例に説明をするが、シート束取扱装置210でも同じである。
【0043】
ステップS601において、シート束取扱装置200は、シート束308の先端を検知したか否かを判定する。シート束308の先端が検知されない場合(ステップS601のNO)、シート束取扱装置200は、シート束308の先端を検知するまで待機する。シート束308の先端が検知された場合(ステップS601のYES)、シート束取扱装置200は、次のステップへ進む。なお、シート束308の先端の検知は、シート束308の先端が、厚み計測部301に突入した時点で検知されるが、シート束308の先端の検知方法は、これには限定されず、例えば、シート束308の先端検知用のセンサなどにより検知してもよい。
【0044】
ステップS603において、シート束取扱装置200は、パルス数Pをゼロにセットする。ステップS605において、シート束取扱装置200は、メインパルスを受信するごとにパルス数Pを1ずつインクリメントする。メインパルスは、シート束取扱装置200の駆動系に設けられたエンコーダから受信する。すなわち、シート束308の先端が、厚み計測部301に突入したことをトリガとして、メインパルスの計数を0から開始する。
【0045】
ステップS607において、シート束取扱装置200は、パルス数Pが50を超えたか否かを判定する。パルス数Pが50を超えていない場合(ステップS607のNO)、シート束取扱装置200は、ステップS605以降のステップを繰り返す。パルス数Pが50を超えた場合(ステップS607のYES)、シート束取扱装置200は次のステップに進む。
【0046】
ステップS609において、シート束取扱装置200は、計測値D(P)を記憶する。ステップS611において、シート束取扱装置200は、パルス数Pが80を超えたか否かを判定する。パルス数Pが80を超えていない場合(ステップS611のNO)、シート束取扱装置200は、ステップS605に戻る。パルス数Pが80を超えた場合(ステップS611のYES)、シート束取扱装置200は、次のステップに進む。つまり、シート束取扱装置200は、パルス数Pの累計値が50を超えると、80に達するまで、厚み計測部301で計測された計測値D(P)を順次記憶する。
【0047】
ステップS613において、シート束取扱装置200は、記憶された30個の計測値D(51)~D(80)の平均値(AV)を算出する。平均値(AV)は、記憶されたD(51)~D(80)の30個の数値から大きい方の数値17個と小さい方の数値2個を削除し、残った11個の数値から平均値(AV)を算出する。なお、平均値の算出方法は、これには限定されず、D(1)~D(80)までの平均値としてもよい。
【0048】
ステップS615において、シート取扱装置200は、ステップS613で算出した平均値AVを基準値(R)に設定する。そして、例えば、設定された基準値(R)を基準厚みとする。
【0049】
ステップS617において、シート束取扱装置200は、基準値(R)から重送検知閾値(SD)(所定閾値)や、薄い検知閾値(ST)(第2所定閾値)を算出する。なお、重送検知閾値(SD)は、例えば、給紙されるシート束308が重送しているか否かを判断するための閾値であり、薄い検知閾値(ST)は、給紙されるシート束308の厚みが急激に減少しているか否かを判断するための閾値である。
【0050】
図6Bは、本実施形態に係るシート束取扱装置200による厚み計測の方法を説明する図である。なお、シート束308は、
図6Bに示した矢印方向へ給紙される。
図6AのステップS607~ステップS611で説明したように、本実施形態においては、シート束308の先端を検知してから、最初の50パルス分(エリアA630)の計測値は記憶しない。そして、その後に続く30パルス分(エリアB640)を計測値D(P)として記憶する。
【0051】
エリアA630を計測値として使用しない理由は、分厚いシート束308が基準ローラ303と変位ローラ304との間に突入してから間もないうちは、変位ローラ304が跳ねたりするので、挙動が安定しないためである。
【0052】
また、シート束308は、親紙650と呼ばれる二つ折りのシートの内側にシート束を挿入した形であり、親紙650が存在するエリアと存在しないエリアとではシート束308の厚みに差が生じる。したがって、親紙650が存在するエリアであっても、できるだけシート束308の先端660から遠いエリアを計測エリアとして使用する。
【0053】
シート束308の先端660から遠いエリアであっても、変位ローラ304の挙動は必ずしも安定はしていないので、記憶した30個の計測値D(P)のうち、数値の大きい方の大半は基準厚み算出のためのデータとしては使用しない。なぜならば、実際のシート束308の厚みよりも計測値が小さくなることはほとんどないので、数値が小さい方が信頼のできる数値だからである。このように、シート束308の厚みを計測するようにしたので、基準ローラ303と変位ローラ304との間に分厚いシート束308を高速で通過させても、安定してシート束308の厚みを計測することができる。
【0054】
図7は、本実施形態に係るシート束取扱装置200による給紙異常を検知する手順を説明するフローチャートである。このフローチャートは、CPU510がRAM540を使用して実行し、
図3のシート束取扱装置200の機能構成部を実現する。シート束取扱装置200は、例えば、第1回目の給紙で決定した重送検知閾値SDおよび薄い検知閾値STとシート束308の厚みの計測値とを比較して、重送やシート束308の急激な厚みの減少などによる給紙異常を検知する。
【0055】
ステップS701において、シート束取扱装置200は、基準値低下フラグFを0に設定する。その後、ステップS703において、シート束取扱装置200は、
図6Aに示したステップS601~ステップS613のステップを実行して、平均値AVを算出する。
【0056】
ステップS705において、シート束取扱装置200は、平均値AVが重送検知閾値SDを超えているか否かを判断する。平均値AVが重送検知閾値SDを超えていると判断した場合(ステップS705のYES)、シート束取扱装置200は、重送が発生していると判断し、ステップS709に進み、シート束取扱装置200を停止させて必要なエラー表示を行う。そして、平均値AVが重送検知閾値SDを超えていないと判断した場合(ステップS705のNO)、シート束取扱装置200は、ステップS707へ進む。
【0057】
ステップS707において、シート束取扱装置200は、平均値AVが薄い検知閾値STを下回っているか否かを判断する。平均値AVが薄い検知閾値STを下回っていると判断した場合(ステップS707のYES)、シート束取扱装置200は、シート束308の厚みが急激に薄くなっていると判断し、ステップS709に進み、シート束取扱装置200を停止させて必要なエラー表示を行う。そして、平均値AVが薄い検知閾値STを下回っていないと判断した場合(ステップS707のNO)、シート束取扱装置200は、ステップS711へ進む。
【0058】
ステップS711において、シート束取扱装置200は、平均値AVが基準値Rを所定量下回っているか否かを判断する。平均値AVが基準値Rを所定量下回っていると判断した場合(ステップS711のYES)、シート束取扱装置200は、ステップS713へ進む。ステップS713において、シート束取扱装置200は、基準値低下フラグFを1に設定し、フラグを立てる。平均値AVが基準値Rを下回っていないと判断した場合(ステップS711のNO)、シート束取扱装置200は、ステップS715へ進む。そして、ステップS715において、シート束取扱装置200は、基準値低下フラグFを0にして、ステップS703へと戻る。
【0059】
ステップS717において、シート束取扱装置200は、前回、前々回の基準値低下フラグFが全て1か否かを判断する。全て1ではないと判断した場合(ステップS717のNO)、シート束取扱装置200は、ステップS703に戻る。全て1であると判断した場合(ステップS717のYES)、シート束取扱装置200は、ステップS719に進む。
【0060】
ステップS719において、シート束取扱装置200は、基準値R=平均値AVmaxとする。ここで、平均値AVmaxは、今回、前回、前々回に計測された平均値AVのうち最大値を示す平均値AVである。すなわち、今回、前回、前々回の連続3回、算出した平均値AVが基準値Rを所定量下回っていた場合、この3回のうちの最大の平均値AVを基準値Rに更新する。
【0061】
ステップ721において、シート束取扱装置200は、基準値Rの更新に合わせ、重送検知閾値SDおよび薄い検知閾値STも更新する。つまり、シート束取扱装置200は、重送検知閾値SD=更新された基準値R×1.5とし、薄い検知閾値ST=更新された基準値R/1.5として、重送検知閾値SDおよび薄い検知閾値STを更新する。なお、ステップS711において、シート束取扱装置200は、平均値AVが基準値Rを所定量下回っているか否かを判断すると同時に、平均値AVが基準値Rを所定量上回っているか否かを判断してもよい。そして、平均値AVが基準値Rを所定量上回っていると判断した場合は、基準値低下フラグFとは別に設けた基準値上昇フラグを1に設定する。そして、ステップS717において、シート束取扱装置200は、前回、前々回の基準値低下フラグFが全て1か否かを判断すると同時に、前回、前々回の基準値上昇フラグが全て1か否かを判断する。基準値上昇フラグが全て1ではないと判断した場合、ステップS703に戻り、全て1であると判断した場合、ステップS719に進み、重送検知閾値SDおよび薄い検知閾値STを更新してもよい。
【0062】
本実施形態によれば、給紙されるシート束の厚みが増減する場合に重送などの給紙異常を確実に検知することができる。また、重送検知などの閾値を適宜変更して更新するので、より確実に重送検知などの給紙異常を検知することができる。
【0063】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0064】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
本願出願当初の特許請求の範囲に記載した態様を以下に記載する。
[態様1]
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙手段と、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測手段と、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知手段と、
を備え、
前記重送検知手段は、
計測された前記シート束の厚みの変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定手段と、
前記閾値変更判定手段により、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更手段と、
を有する、シート束取扱装置。
[態様2]
前記重送検知手段は、所定時点で前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みを基準厚みとして取得する基準厚み取得手段をさらに有し、
前記閾値変更判定手段は、前記所定時点以降に前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みを第1所定量下回った場合、前記所定閾値を変更すると判定する態様1に記載のシート束取扱装置。
[態様3]
前記閾値変更判定手段は、前記第1所定量下回った回数が第1回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する態様2に記載のシート束取扱装置。
[態様4]
前記閾値変更判定手段は、連続して前記第1所定量下回った回数が前記第1回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する態様3に記載のシート束取扱装置。
[態様5]
前記閾値変更判定手段は、前記基準厚みを第2所定量上回り、かつ、前記第2所定量上回った回数が第2回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する態様2乃至4のいずれか1つに記載のシート束取扱装置。
[態様6]
前記閾値変更判定手段は、連続して前記第2所定量を上回った回数が前記第2回数を超えた場合、前記所定閾値を変更すると判定する態様5に記載のシート束取扱装置。
[態様7]
前記重送検知手段は、前記基準厚み取得手段が取得した前記基準厚みに基づいて、前記所定閾値を算出する閾値算出手段をさらに有する態様2乃至6のいずれか1つに記載のシート束取扱装置。
[態様8]
前記厚み計測手段により計測されたシート束の厚みが、前記基準厚みに対して、前記第1所定量よりも小さい第3所定量を下回った場合、シート束の給紙を停止させる給紙停止手段をさらに備える態様2乃至7のいずれか1つに記載のシート束取扱装置。
[態様9]
前記所定時点は、前記所定閾値を変更した時点である請求項2乃至8のいずれか1つに記載のシート束取扱装置。
[態様10]
複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙ステップと、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測ステップと、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知ステップと、
を含み、
前記重送検知ステップにおいて、
計測された前記シート束の厚みの変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定ステップと、
前記閾値変更判定ステップにより、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更ステップと、
を含む、シート束取扱い方法。
[態様11]
複数のシート束から最先のシート束を1部ずつ取り出して、給紙する給紙ステップと、 複数のシート束からシート束を一部ずつ給紙する給紙ステップと、
給紙された前記シート束の厚みを計測する厚み計測ステップと、
計測された前記シート束の厚みを所定閾値と比較することによって、給紙された前記シート束が重送されていることを検知する重送検知ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記重送検知ステップにおいて、
計測された前記シート束の厚みの変化に基づいて、前記所定閾値を変更するか否かを判定する閾値変更判定ステップと、
前記閾値変更判定ステップにより、前記所定閾値を変更すると判定された場合、前記所定閾値を変更する閾値変更ステップと、
をコンピュータに実行させるシート束取扱いプログラム。