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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】機械加工装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/04 20060101AFI20220725BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20220725BHJP
   B23Q 1/70 20060101ALI20220725BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20220725BHJP
   B25J 17/02 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
B24B41/04
B23B19/02 A
B23Q1/70
B24B27/00 A
B25J17/02 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018025919
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019141924
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-10-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社アイテックは、発明の発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書に記載のとおり、2017年11月29日~2017年12月2日開催のの展示会「2017国際ロボット展」にて、本件発明の実施品を展示公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】518055936
【氏名又は名称】株式会社アイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 清
(72)【発明者】
【氏名】松永 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀大
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00692341(EP,A1)
【文献】特開昭62-024960(JP,A)
【文献】特開平03-281189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/04
B23B 19/02
B23Q 1/70
B24B 27/00
B25J 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に設けられた加工工具を作動させるための加工軸を、フローティング構造によって、所定の圧力で前記加工軸のスラスト方向に付勢して工作物に対する機械加工を行うようにした加工装置において、
前記加工工具の加工軸を前記スラスト方向と直交する平面に沿ってラジアル方向へ移動可能に支持し、前記ラジアル方向への移動の際に前記加工工具を押し戻す力を前記加工軸に与えて付勢する構造を備えたものであり、
第一要素、第二要素、第三要素及び第四要素を備え、
前記第一要素は、産業用ロボットのアームに対して固定されて一体的に動く要素であり、前記アームに対する接続部材と、これに固定されたフローティング構造のエアシリンダのシリンダボディとを備え、
前記第二要素は、第一要素に対してスラスト方向に移動可能な要素であり、前記フローティング構造の筒状ピストンと、前記筒状ピストンの先端側の取付け部と、前記取付け部に支持された加圧部のエアアクチュエータのシリンダ本体を備え、
前記取付け部の先端には、筒状のケーシングの先端が固定されており、前記筒状のケーシングは後端側の前記接続部材付近にまで伸びているが、前記接続部材とは固定されていないものであり、
前記シリンダ本体に、環状の板材である前後2つの案内部材が、固定され、
前記第三要素は、前記第二要素に対してラジアル方向に移動可能な要素であり、前記アームに対してはスラスト方向とラジアル方向に移動するものであり、前記エアアクチュエータの前記シリンダ本体から出没する複数のピストンと、前記ピストンによってラジアル方向に付勢された加工用ツールと、前後2つの基準部材とを備え、
前記加工用ツールのボディは、前記筒状ピストンの筒内にスラスト方向及びラジアル方向へ移動可能に挿通されており、
前後2つの前記基準部材は、前後2つの前記案内部材に対応して、前記加工用ツールに固定され、
前記基準部材は、ラジアル方向に沿った環状の平面である基準面を備え、
前記シリンダ本体は、前後2つの前記基準部材のそれぞれの前記基準面に挟まれた状態で、前記加工用ツールに対してラジアル方向に沿って相対的に移動可能であり、
前記第四要素は、前記加工用ツールの出力軸である加工軸を備え、
前記加工用ツールの前記出力軸は、前記第三要素に対しては加工のための動き行う要素であり、前記アームに対しては、スラスト方向とラジアル方向に移動して付勢されながら機械加工のための直接の動きをなすように構成されたことを特徴とする機械加工装置。
【請求項2】
前記ピストンからの力によって、前記加工軸が前記ラジアル方向と直交する状態を保って、前記ラジアル方向へ移動可能に付勢されるよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の機械加工装置。
【請求項3】
前記加圧部は、前記加工軸の周囲に放射状に配置された複数の前記エアアクチュエータと、前記エアアクチュエータにより加えられるラジアル方向の力を調整する圧力調整部とを備えたことを特徴とする請求項2記載の機械加工装置。
【請求項4】
前記フローティング構造は、前記アームに支持された前記エアシリンダと、前記エアシリンダ内に摺動可能に挿入された前記筒状ピストンとを備えることを特徴とする請求項3に記載の機械加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工装置、特に研磨や研削加工に適する機械加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日は研磨や研削などの機械加工は、回転や前後動を行うエアツールなどの加工用ツールの加工軸の先端に加工工具を着脱可能に取り付け、その加工軸を、フローティング構造によって、所定の圧力で前記加工軸のスラスト方向に付勢して工作物に対する機械加工を行うようにした機械加工装置が広く用いられている。
【0003】
特許文献1にあっては、ロボットの手首部先端に取付けられた工具によって、工作物を加工する作業工具装置であって、前記ロボットの手首部に取付けられた筒体と、この筒体内部に摺動可能に嵌挿された摺動部材と、この摺動部材を所定押圧力で付勢する付勢手段と、前記摺動部材に取付けられたフレームと、このフレームに固定された球面軸受と、この球面軸受によって傾動可能に支持された工具ホルダと、この工具ホルダに取り付けられた工具ならびにこの工具を回転駆動する駆動装置と、前記工具ホルダが傾動する角度を制限する第1ストッパと、前記工具ホルダが前記工具の軸方向と同じ軸回りに回転する角度を制限する第2ストッパとを備えたことを特徴とする機械加工装置が提案されており、これを改良するものとして特許文献2に示される提案もなされている。
【0004】
特許文献1の提案がなされた段階の従来の機械加工装置(作業工具装置)は、特許文献1の第6図に示されたように、「先端に取付けられた回転砥石(工具)27を駆動モータ60によって駆動し、フローティング構造26によって、回転砥石27を所定の圧力で工作物50に押しつけて工作物50の研磨作業を行う。ここでフローティング構造26は、空気の圧力によってピストン61を押圧することにより回転砥石27を所定押圧力で一定方向に付勢して保持すると同時に、工作物50の形状の誤差、工作物毎に変化する加工面の状態、工作物50を設置する位置のずれ等から、工作物50が基準工作物との間に生じる変位を、回転砥石27がピストン61の移動する方向にフローティングすることによって吸収する効果も兼ね備えていた」(特許文献1の発明の詳細な説明〈従来の技術〉参照)ものであり、ピストンの軸方向であるスラスト方向の自由度のみが与えられていたに止まる。
【0005】
特許文献1は、この課題を解決するもので、その発明の詳細な説明〈発明が解決しようとする課題〉に示されているように、「かかる従来の技術の様な作業工具装置では、工作物50の加工面におけるピストン61が移動する方向と同方向の変位は吸収できるが、自動車のボディの様な自由曲面を研磨する時には、変位が多方向に生じているため、これら全ての変位を吸収することはできない。このため回転砥石27の回転中心軸101と加工面の法線102の方向が同一方向でない状態、即ち、回転砥石27の砥石面90が工作物50の目的とする加工位置に適切に面接触していない状態となり易く、加工後の工作物50の加工状態が不均一となったり、工作物50を必要以上に加工して品質が劣化するという問題があった。また、このような問題を避けるために自由曲面に合わせた加工軌跡をロボットに教示することが行われるが、この作業は非常に時間を要する反面、十分な効果が得られていない」点に着目し、球面軸受によって傾動可能に支持された工具ホルダを用いることで、その課題を解決するものであった。
具体的には、特許文献1は、その図1図5に示されているように、付勢状態下で加工軸を軸方向(スラスト方向)に移動させるフローティング構造を採ることに加えて、付勢状態下で加工軸を傾斜させる構造を併用することによって、自由曲面を研磨するときにも、工具を適切に工作物の加工面に倣わせて移動することができるようにしたものであった。
【0006】
ところが、このように加工軸を傾斜揺動させる特許文献1や2の機械加工装置では、工作物の被加工面が曲面であれば有利ではあるが、垂直な平面の場合には、逆に次のような問題が生じる。
垂直面に対しての研磨などの機械加工について産業用ロボットでのティーチングを行う場合、図5(A)に示す加工工具(研磨材)101を被加工面102に対して平行に持っていくと、図5(B)に示すように、点あたりになってしまう。その結果、図1(C)に示すように、あらかじめ角度を考慮してティーチングする必要が生じてしまう。このためティーチング作業が煩雑になり、多くの時間がかかってしまうという課題が生じる。さらに、図1(D)(E)に示すように、ー般に加工工具(研磨材)101の研磨材は被加工面と接触したところから磨耗していく。特許文献1や2の機械加工装置では、研磨材が傾斜揺動するため斜めに減って、図1(D)(E)の先端側のB寸法部が早く滅ってしまう。このため、まだ使える後端側のA寸法部を残して研磨材を交換することになり、研磨材の無駄使いから加工コスト高を招く結果となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平3-281189号公報
【文献】特許第6041317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、垂直面などの平面の被加工面に対して適正な動きを実現し、また、そのティーチングを効率的に行うことができる機械加工装置の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、加工工具を平面移動可能に支持し、平面移動の際に研磨工具を押し戻す力を与える手段を備えた機械加工装置を提供することによって上記の課題を解決する。
即ち、先端に設けられた加工工具を作動させるための加工軸を、フローティング構造によって、所定の圧力で前記加工軸のスラスト方向に付勢して工作物に対する機械加工を行うようにした加工装置において、前記加工軸と直交するラジアル方向に沿って移動可能に前記加工軸を支持する支持部と、前記加工軸に対してその周囲の複数方向から前記ラジアル方向の力を加える加圧部とを備え、前記加圧部からの力によって、前記加工軸が前記ラジアル方向と直交する状態を保って、前記ラジアル方向へ移動可能に付勢されるよう構成されたことを特徴とする機械加工装置を提供する。
【0010】
前記加圧部は、前記加工軸の周囲に放射状に配置された複数の流体圧アクチュエータと、前記流体圧アクチュエータにより加えられるラジアル方向の力を調整する圧力調整部とを備えたものとして実施することができる。
前記支持部は、前記ラジアル方向に沿った基準面を備えた基準部材と、前記基準面に沿って相対的にラジアル方向へ移動する案内部材と、前記基準部材と前記案内部材との間に配置された滑動部材とを備え、前記基準部材と前記案内部材との何れか一方が前記加工軸を支持することにより、前記加工軸が前記ラジアル方向へ移動するように構成することができる。
【0011】
より具体的には、前記加工軸は、加工用ツールに備えられた回転もしくは前後動をなす前記加工用ツールの出力軸であり、前記支持部は、前記加工用ツールのボディを前記ラジアル方向に沿って移動可能に支持することによって、前記加工軸を支持するものであり、前記加圧部は、前記加工用ツールの前記ボディに対してその周囲の複数方向から前記ラジアル方向の力を加えることによって、前記加工軸に対して前記ラジアル方向の力を加えるものであり、前記フローティング構造は、産業用ロボットのアームに支持されたエアシリンダと、前記エアシリンダ内に摺動可能に挿入された筒状ピストンとを備え、前記加工用ツールの前記ボディが前記筒状ピストンの筒内に前記スラスト方向及び前記ラジアル方向へ移動可能に挿通されている機械加工装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、垂直面などの平面の被加工面に対して適正な動きを実現することができる機械加工装置を提供することができたものである。
また本発明は、このような適切な動きを実現するティーチングを効率的に行うことができる機械加工装置を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る機械加工装置の正面図。
図2】同機械加工装置の縦断面図。
図3図1の矢視断面図。
図4】同機械加工装置の要部斜視図。
図5】従来の機械加工装置を示すもので、(A)は正面図、(B)は使用状態を示す要部正面図、(C)は適正なティーチングを行うための使用状態を示す要部正面図、(D)は同使用状態の課題を示す正面図、(E)は同使用状態の課題を示す要部正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
(概要)
この実施の形態にかかる機械加工装置10は、先端に設けられた研磨具などの加工工具42を作動させるための加工軸41を、フローティング構造によって、所定の圧力で加工軸41のスラスト方向に付勢して、研磨や研削などの機械加工を行うようにした加工装置である。
【0015】
この機械加工装置10は、手で持つことも可能であるが、この例では、図1に示すように、産業用ロボットのアーム11などの加工用マシーンに取り付けられて使用されるものとして説明する。
この機械加工装置10は、アーム11に対して、加工軸41及び加工工具42を、付勢状態下で軸方向(スラスト方向Z)に移動させるフローティング構造を採ることに加えて、付勢状態下で加工軸を水平移動(スラスト方向Zと直交する方向であるラジアル方向XY)に移動させる構造を併用するもので、スラスト方向Zとラジアル方向XYとの二つの方向に付勢されながら移動可能な状態を保つことによって、工作物51の垂直な被加工面52に加工工具42を加工できるようにティーチングさせるようにしたものである。このように加工工具42は、上記二つの方向に付勢状態下で移動可能としながら、エアツールなどの加工用ツール32によって、被加工面52の研磨や研削のための回転や前後動を行うことで、被加工面52に対して機械加工を行うものである。
【0016】
(動きの要素)
この機械加工のための動きは、次の四つの動きによって実現される。
第一要素(図2の右上がり細斜線にてその主要部分を示す)
第一要素は、産業用ロボットのアーム11に対して固定されてこれと一体的に動く要素であり、アーム11に対して不動であって、アーム11共に移動する。
【0017】
具体的にはアーム11に対する接続部材12と、これに固定されたフローティング構造13のエアシリンダ14(シリンダボディ)である。
【0018】
第二要素 (図2の右下がり太斜線にてその主要部分を示す)
第二要素は、第一要素に対してスラスト方向Zに移動可能な要素である。
具体的にはフローティング構造13の筒状ピストン21と、筒状ピストン21の先端側に固定された取付け部22と、取付け部22に固定されて支持された加圧部23のエアアクチュエータ24のシリンダ本体25)である。なお、取付け部22の先端には、筒状のケーシング20の先端が固定されており、この筒状のケーシング20は後端側の接続部材12付近にまで伸びているが、接続部材12とは固定されていない。
【0019】
第三要素 (図2の右下がり細斜線にてその主要部分を示す)
第三要素は、第二要素に対してラジアル方向XYに移動可能な要素であり、機械加工装置10のアーム11に対してはスラスト方向Zとラジアル方向XYに移動する。
具体的には、エアアクチュエータ24のシリンダ本体25から出没するピストン31と、ピストン31によって付勢された加工用ツール32である。
【0020】
第四要素(図2の右上がり太斜線にてその主要部分を示す)
第四要素は、具体的には前述した加工用ツール32の出力軸である加工軸41と加工工具42であり、第三要素に対しては加工のための動き(回転や前後動)を行う要素である。従って、アーム11に対しては、スラスト方向Zとラジアル方向XYに移動して付勢されながら工作物51の被加工面52に対する機械加工のための直接の動きをなす。
【0021】
次にこれらの各要素について順に説明する。
(第一要素について)
まず第一要素は、アーム11に対する接続部材12と、これに固定されたフローティング構造13のエアシリンダ14(シリンダボディ)である。エアシリンダ14は、内部のシリンダ空間15にエアを供給するための供給路16を備えており、供給路16から筒状ピストン21を作動するための所定圧力のエアが供給される。
【0022】
(第二要素について)
第二要素は、フローティング構造13の筒状ピストン21と、筒状ピストン21の先端側に固定された取付け部22と、取付け部22に固定されて支持された加圧部23を構成する複数のエアアクチュエータ24のシリンダ本体25である。
【0023】
筒状ピストン21は、第一要素の供給路16からの加圧エアによってシリンダ空間15内の圧力が高まることで先端方向に付勢されるものである。筒状ピストン21のストロークは加工工具42の付勢のためのものであり、工具の大きさにもよるが、わずかな寸法で足りる。具体的には3~10mm程度であれば良い。
【0024】
供給路16は、図示は省略するが、圧力調整バルブなどの圧力調整部を備えたコンプレッサなどのエア供給源に接続されており、所定の値に設定されたエアが供給される。エアによる付勢の圧力は、加工工具42による研磨や研削が有効に行える程度の力であればよい。具体的には0.1MPa~0.2MPa程度であればよく、圧力調整部はこの圧力を可変に調整できるものであることも好ましい。
【0025】
筒状ピストン21は、その先端がエアシリンダ14から突出しており、この先端に取付け部22を介して加圧部23が取り付けられている。加圧部23は、図3及び図4に示すように、複数のエアアクチュエータ24が加工用ツール32の周囲に放射状に配置されたもので、各エアアクチュエータ24により加えられるラジアル方向XYの力により、加工用ツール32をラジアル方向XYに付勢された状態で同方向に移動可能に支持するものである。エアアクチュエータ24の数は、円滑にラジアル方向XYに付勢する観点から3つ以上であればよいが、6つ以上が好ましく、図の例では12個が設けられている。これらのエアアクチュエータ24のシリンダ本体25は、例えばリングシリンダのような1つの部材に複数のシリンダ空間26を放射状に設けたものとして実施することもできる。
それぞれのエアアクチュエータ24は、シリンダ本体25の内部のシリンダ空間26にエアを供給するための供給路27を備えており、供給路27からピストン31を作動するための所定圧力のエアが供給される。
【0026】
また、加工用ツール32をラジアル方向XYに確実に移動させるために、支持部を備えたものとすることが好ましい。図2に示すように、支持部は、第二要素としての案内部材28と、第三要素としての基準部材33を備える。
案内部材28は、この例では環状の板材として実施されており、その後端側の面がシリンダ本体25に固定されている。そしてこれらの案内部材28は、その先端側の面または後端側の面に円滑な移動を促すための滑動部材としてベアリング29を備えている。
【0027】
(第三要素について)
第三要素は、第二要素のエアアクチュエータ24のシリンダ本体25から突出して摺動するピストン31と、ピストン31によって付勢された加工用ツール32と、基準部材33を含む。
【0028】
加工用ツール32には、上記の案内部材28に対応して、基準部材33が固定されており、基準部材33及び加工用ツール32は、案内部材28によって案内されながら、ラジアル方向XYに移動する。具体的には、基準部材33は環状の板材として実施されており、ベアリング29に対向して接している面(後端側の面または先端側の面)が基準面となっている。この基準面はラジアル方向XYに沿った環状の平面であり、この基準面に沿って、加工用ツール32は確実且つ円滑にラジアル方向XYに移動することができる。
なお基準面を設ける部材は、案内部材28などの第二要素側の部材であってもよい。また滑動部材は、ベアリング29の他、滑り性の良い材質で構成しても構わない。
【0029】
ピストン31は、供給路27からのエアによってシリンダ空間26内の圧力が高まることで、シリンダ本体25から突出した先端が、加工用ツール32をラジアル方向XYに付勢するものである。ピストン31のストロークは加工工具42の付勢のためのものであり、工具の大きさにもよるが、わずかな寸法で足りる。具体的には3~10mm程度であれば良い。供給路27は、図示は省略するが、圧力調整バルブなどの圧力調整部を備えたコンプレッサなどのエア供給源に接続されており、所定の値に設定されたエアが供給される。エアによる付勢の圧力は、加工工具42による研磨や研削が有効に行える程度の力であればよく、具体的には0.1MPa~0.2MPa程度であれば良く、圧力調整部はこの圧力を可変に調整できるものであることも好ましい。なお、加工用ツール32と前述の第一要素、第二要素の各部材との間には上記の動きを実現するクリアランスが設けられている。
【0030】
加工用ツール32には、スピンドルエアモーターなどのエア工具を採用することができるほか、電動工具であってもよく、前後に繰り返し摺動する工具であってもよい。なお加工用ツール32の形状は問わないが、ピストン31の先端に当接する部分は断面真円形状であったり正多角形であることがラジアル方向XYへ均等な動きを実現する点で好ましい。
【0031】
(第四要素について)
第四要素は、加工用ツール32の出力軸である加工軸41と、加工軸41に対してチャックなどの取付部材を介して設けられた加工工具42である。加工軸41は前述の加工用ツール32の具体的な工具の種類に応じた形態と動きを示すものが採用される。加工工具42には砥石や研磨ペーパーなどの研磨用工具や、切削能力を備えた刃物などが採用される。
【0032】
(変更例)
本発明は種々変更して実施することができるものであり、上記の実施の形態ではスラスト方向Zに移動可能な第二要素の次に、ラジアル方向XYに移動可能な第三要素を設けたが、第二要素を第一要素に対してラジアル方向XYへ移動可能なものとし、第三要素をスラスト方向Zへ移動可能なものとしても構わない。またフローティング構造13のエアシリンダ14や加圧部23エアアクチュエータ24などの付勢手段は、流体圧を用いた流体圧アクチュエータが圧力の可変的な調整を行える点で有利であるが、その他バネなどの弾性変形による付勢、磁石などの磁力による付勢などの手段に変更したり併用したりしても構わない。
【0033】
(使用方法)
この実施の形態に係る機械加工装置10にあっては、加工工具42をラジアル方向XYへ平面移動可能に支持したため、工作物51の垂直な被加工面52に対して面直に 、ティーチングする場合、加工工具42を被加工面52と平行に接近させるようにすることができる。これによって、研磨材はその全体が被加工面52に対してほぼ均等に当たるようになり、ティーチング作業が簡易になり、時間短縮、ティーチングコストの削減が可能となる。また従来のように研磨材が斜めに減るのではなく、平行して減っていくので、減りムラがなく、研磨材が無駄なく使えるため、研磨材のコストを減らすことができる。
【符号の説明】
【0034】
10 機械加工装置
11 アーム
12 接続部材
13 フローティング構造
14 エアシリンダ
15 シリンダ空間
16 供給路
20 ケーシング
21 筒状ピストン
22 取付け部
23 加圧部
24 エアアクチュエータ
25 シリンダ本体
26 シリンダ空間
27 供給路
28 案内部材
29 ベアリング
31 ピストン
32 加工用ツール
33 基準部材
41 加工軸
42 加工工具
50 工作物
52 被加工面
Z スラスト方向
XY ラジアル方向
図1
図2
図3
図4
図5