(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】床材固定部材と床材固定方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20220725BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20220725BHJP
E01D 22/00 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E04B1/58 601E
E01D22/00 A
(21)【出願番号】P 2019109640
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 佳尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】家久 侑大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 開道
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-140724(JP,A)
【文献】特開2018-204321(JP,A)
【文献】特開平11-241312(JP,A)
【文献】実開昭58-072303(JP,U)
【文献】特開2006-274625(JP,A)
【文献】特開2003-096915(JP,A)
【文献】特開平04-203614(JP,A)
【文献】実開平04-043595(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 21/00
E04B 1/58
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口部を具える箱形の本体、前記本体から外側に水平に延び、該本体の上面を構成する床材係止縁部、及び前記本体の底面に設けられた直線状のスライダ孔を具えた床材係止部材と、
下方に係止爪を有する係止板、及び前記係止板の上方に向けて延び、前記スライダ孔に遊嵌しているねじ軸を具えた梁材係止部材と、
前記ねじ軸に螺合し、前記底面に係合するナット部材を有することを特徴とする、
床材固定部材。
【請求項2】
前記ねじ軸が、前記ナット部材を該ねじ軸に対して最もねじ込んだときに、前記床材係止縁部よりも突出しない寸法を有する、請求項1の床材固定部材。
【請求項3】
前記ナット部材が前記ねじ軸から外れることを防止する脱落防止機構をさらに具える、請求項1又は2の床材固定部材。
【請求項4】
前記本体が、前記梁材係止部材の前記ねじ軸を中心とする回転を防止する回転防止機構を具える、請求項1から3のいずれかの床材固定部材。
【請求項5】
梁材の上側に載置した床材を床材固定部材によって固定する方法であって、
前記梁材は、水平方向に延出するフランジ部を具え、
前記床材は、垂直方向に貫通している取付孔を具え、
前記床材固定部材は、上方に開口部を具える箱形の本体、前記本体から外側に水平に延び、該本体の上面を構成する床材係止縁部、及び前記本体の底面に設けられた直線状のスライダ孔を具えた床材係止部材と、
下方に係止爪を有する係止板、及び前記係止板の上方に向けて延び、前記スライダ孔に遊嵌しているねじ軸を具えた梁材係止部材と、
前記ねじ軸に螺合し、前記底面に係合するナット部材から構成され、
前記床材を前記梁材の上側に載置し、
前記床材係止縁部の下面が前記床材の上面に接するように前記本体を前記取付孔に嵌込み、前記係止爪を前記床材の下方に露出させ、
前記ねじ軸を前記スライダ孔に沿って移動させるとともに、前記係止爪を前記フランジ部に係合可能な位置まで移動させ、
前記ナット部材を締め付けることにより、前記床材と梁材を締結することを特徴とする、
床材固定方法。
【請求項6】
前記ねじ軸が、前記ナット部材を該ねじ軸に対して最もねじ込んだときに、前記床材係止縁部よりも突出しない寸法を有する、請求項5の床材固定方法。
【請求項7】
前記ナット部材が前記ねじ軸から外れることを防止する脱落防止機構をさらに具える、請求項5又は6の床材固定方法。
【請求項8】
前記本体が、前記梁材係止部材の前記ねじ軸を中心とする回転を防止する回転防止機構を具える、請求項5から7のいずれかの床材固定方法。
【請求項9】
前記本体の側面のいずれが前記取付孔の側面に接した場合でも前記床材係止縁部の下面が前記床材の上面に接するように、前記本体、床材係止縁部、及び取付孔の寸法が構成されている、請求項5から8のいずれかの床材固定方法。
【請求項10】
前記取付孔の1単位が、隣接する2枚以上の床材に設けられた切欠きが組み合わされることにより形成されている、請求項5から9のいずれかの床材固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面U字状又はH字状等の梁材の上に床材を固定するための部材(以下、「床材固定部材」という。)及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等の高架式道路においては、道路の下側に排水管等が配設されており、下側が剥き出しであると美観を損ねるため、吊り下げ固定した梁材に板状のルーバを垂直状に多数並べて配設し、美観を維持することが行われている。
【0003】
ところで、上記の排水管のメンテナンスなど、高架式道路の下側における作業を行う場合、作業員が使用する足場を設置する必要がある。そこで、足場となる床材を梁材の上に設置することが行われている。ここで、床材を高架式道路の下側から設置しようとする場合、高所作業車を使用する必要があり、ルーバの取外しも必要になるなど、工数が掛かるという問題がある。そこで、床材を梁材に固定する部材も開発されており、その例として、特許文献1、2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-140724号公報
【文献】特開2018-204321号公報
【0005】
特許文献1には、コ字状の切欠きと、ボルト孔を具えた、位置を変更できる水平板を有する下押え金具、挿通孔を具えた上押え金具、及び、上押え金具の挿通孔と下押え金具のボルト孔を貫通する連結ボルトで構成された鋼製床材固定金具が開示されている。
【0006】
これによれば、梁材であるH型鋼のフランジに下押え金具の切欠きを嵌め合わせて取付け、そのフランジ上に鋼製床材を載置し、床材の上面から上押え金具を当て、上押え金具の挿通孔から挿入した連結ボルトを下押え金具のボルト孔にねじ込むことにより、鋼製床材をH型鋼のフランジに締め付け、固定することができるとされている。
【0007】
また、別の実施形態として、それぞれ、コ字状の切欠きと鋼製床材に係合するフックを具えた一対のL字型鋼板、及びこれら一対のL字型鋼板を連結させる連結ボルトで鋼製された鋼製床材固定金具も開示されている。
【0008】
これによれば、鋼製床材を隣接させて載置した後、その下方から、鋼製床材固定金具の切欠きを梁材であるH型鋼のフランジに嵌め合わせるとともに、フックを鋼製床材に係合させることにより、隣接する鋼製床材を1つの固定金具で固定できるとされている。
【0009】
特許文献2には、床材に設けられた開口部に挿入され、その開口部を跨ぐように上方から係止する固定側係止部材と、梁材であるU型鋼のフランジ部などに係止する可動側係止部材と、固定側係止部材と可動側係止部材の距離を調節する締付けボルトを有する固定部材が開示されている。
【0010】
これによれば、梁材に床材を載置し、床材の開口部に固定部材を嵌め込み、可動側係止部材を梁材に係止させた状態で締付けボルトを締めるだけで床材を固定することができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、梁材の上に床材を固定するための固定部材が開発されているが、床材の下方からの作業を要する場合、高所作業車が必要になるなど、床材の固定作業に工数が掛かり、危険も伴う。すなわち、床材を簡便且つ安全に設置することができる固定部材が望まれている。一方で、床材の設置作業時などに固定部材が落下すること、及びこれによる事故を防止することも重要である。
【0012】
そこで、本発明は、前述した事情に鑑み、床材を簡便且つ安全に設置することができる床材固定部材を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上方に開口部を具える箱形の本体、前記本体から外側に水平に延び、該本体の上面を構成する床材係止縁部、及び前記本体の底面に設けられた直線状のスライダ孔を具えた床材係止部材と、
下方に係止爪を有する係止板、及び前記係止板の上方に向けて延び、前記スライダ孔に遊嵌しているねじ軸を具えた梁材係止部材と、
前記ねじ軸に螺合し、前記底面に係合するナット部材を有することを特徴とする床材固定部材、
又は、
梁材の上側に載置した床材を床材固定部材によって固定する方法であって、
前記梁材は、水平方向に延出するフランジ部を具え、
前記床材は、垂直方向に貫通している取付孔を具え、
前記床材固定部材は、上方に開口部を具える箱形の本体、前記本体から外側に水平に延び、該本体の上面を構成する床材係止縁部、及び前記本体の底面に設けられた直線状のスライダ孔を具えた床材係止部材と、
下方に係止爪を有する係止板、及び前記係止板の上方に向けて延び、前記スライダ孔に遊嵌しているねじ軸を具えた梁材係止部材と、
前記ねじ軸に螺合し、前記底面に係合するナット部材から構成され、
前記床材を前記梁材の上側に載置し、
前記床材係止縁部の下面が前記床材の上面に接するように前記本体を前記取付孔に嵌込み、前記係止爪を前記床材の下方に露出させ、
前記ねじ軸を前記スライダ孔に沿って移動させるとともに、前記係止爪を前記フランジ部に係合可能な位置まで移動させ、
前記ナット部材を締め付けることにより、前記床材と梁材を締結することを特徴とする床材固定方法によって前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の床材固定部材及び方法によれば、水平方向に延出するフランジ部を具えた梁材の上側に、垂直方向に貫通している取付孔を具えた床材を載置し、床材の上側から取付孔に床材固定部材の本体を嵌込み、係止爪を床材の下方に露出させ、ねじ軸をスライダ孔に沿って移動させるとともに、係止爪をフランジ部に係合可能な位置まで移動させ、ナット部材を締め付けることにより、床材と梁材を締結することができる。よって、床材の下方からの作業は不要なので、床材を簡便且つ安全に設置することができる。
【0015】
また、ナット部材をねじ軸に対して最もねじ込んだときにねじ軸が床材係止縁部よりも突出しない構成とすれば、床材の上を移動する使用者が躓くことを防止できる、安全性の高い床材固定部材及び方法とすることができる。
【0016】
また、ナット部材がねじ軸から外れることを防止する脱落防止機構を具えた構成とすれば、ナット部材がねじ軸から外れ、梁材係止部材が落下するという問題を防止することができるので、安全性をさらに高めることができる。
【0017】
また、梁材係止部材のねじ軸を中心とする回転を防止する回転防止機構を本体が具える構成とすることにより、係止爪がフランジ部に係合し得る位置に合わせ易いので、設置作業を容易にすることができる。
【0018】
また、本体の側面のいずれが取付孔の側面に接した場合でも床材係止縁部の下面が床材の上面に接するように、本体、床材係止縁部、及び取付孔の寸法を構成することにより、床材固定部材の位置がずれて床材の取付孔を通じて落下してしまうことを防止することができる。
【0019】
また、取付孔の1単位を隣接する2枚以上の床材に設けられた切欠きが組み合わされることにより形成すれば、1つの床材固定部材で複数の床材と梁材を締結することができるので、設置作業をさらに容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図1の床材固定部材を設置したときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を
図1~4を参照して説明する。但し、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
【0022】
図1に示す床材固定部材10は、主として、床材係止部材12と梁材係止部材20で構成されている。床材係止部材12は、上方に開口部14を具える箱形の本体15と、本体15から外側に向けて水平に延びる床材係止縁部16を有している。図示しているように、床材係止縁部16は、本体15の上面を構成している。また、本体15の底面11には、直線状のスライダ孔18が設けられている。なお、本体15は、全体として箱形であれば、水平方向全てに側壁を有していなくともよい(
図2参照)。
【0023】
梁材係止部材20は、係止板26と、係止板26の下方に設けられている係止爪22、係止板26の上方に向けて延びるねじ軸24で構成されている。係止爪22は、係止板26と略平行な面を有するフックであり、後述するように、梁材30のフランジ部32(
図3参照)に係合可能に構成されている。ねじ軸24は、床材係止部材12のスライダ孔18に遊嵌するように挿通されている。ここで、スライダ孔18は、ねじ軸24をスライダ孔18に沿って移動させたときに、係止爪22がフランジ部32に係合可能な位置と、係合不能な位置とで移動できる範囲で設けられている。
【0024】
ねじ軸24には、ナット部材Nが螺合しており、床材係止部材12の本体15の底面を係止板26とナット部材Nで挟むようにして、床材係止部材12と梁材係止部材20は一体化されている。よって、ナット部材Nを締めることにより、床材係止部材12の本体15の底面と梁材係止部材20の係止板26は接近する。なお、ナット部材Nと本体15の底面の間にはワッシャを介在させてもよい。
【0025】
ここで、ねじ軸24の長さは、ナット部材Nを最もねじ込んだときに、床材係止縁部16よりも突出しない寸法とするのがよい。本構成とすれば、床材40a,40b(
図3参照)の上を移動する使用者がねじ軸24に躓くことを防止でき、安全性を高めることができるからである。また、ねじ軸24は、ナット部材Nを緩めたときにナット部材Nがねじ軸24から外れることを防止する脱落防止機構(図示省略)を具えることが望ましい。脱落防止機構としては、例えば、ナット部材Nを内側に環状の弾性体を具えた緩み止めナットとすることや、ねじ軸24の先端の径方向に貫通するピンを取付けるというようなものが挙げられる。脱落防止機構を具えることにより、ナット部材Nがねじ軸24から外れ、梁材係止部材20が落下するという問題を防止することができるので、安全性をさらに高めることができる。
【0026】
また、床材係止部材12の本体15は、回転防止機構13を具えるのがよい。回転防止機構13は、梁材係止部材20のねじ軸24を中心とする回転を防止する機構である。これは、例えば、床材係止部材12の本体15から下方へ延びる突起(床材固定部材10では板状)とすることができる。床材固定部材10の場合、梁材係止部材20がねじ軸24を中心に回転したとき、回転防止機構13に接触して、それ以上の回転が防止される。本構成により、係止爪22が梁材30のフランジ部32(
図3参照)に係合し得る位置に合わせ易いので、設置作業を容易にすることができる。なお、回転防止機構13によって、係止爪22が、常に、梁材30のフランジ部32に係合可能な方向に向くように構成するのがよい。
【0027】
次に、
図3,4を参照して、床材固定部材10によって、梁材30の上側に載置した隣接する一対の床材40a,40bを固定する方法を説明する。梁材30は、例えば、U型鋼やH型鋼であり、水平方向に延出するフランジ部32を有する。まず、梁材30のフランジ部32の上側に、床材40a,40bを載置する。床材40a,40bには、それぞれ、垂直方向に貫通する切欠き42a,42bが設けられている。ここで、切欠き42a,42bが組み合わされることにより、床材固定部材10の1単位の取付孔44が梁材30のフランジ部32を跨ぐような位置に形成される(
図4も参照)。
【0028】
上記のように形成された取付孔44に、上述した床材固定部材10の床材係止縁部16の下面が床材40a,40bの上面に接するように、本体15を嵌込み、係止爪22を床材40a,40bの下方に露出させる。このとき、ナット部材Nは、ねじ軸24をスライダ孔18に対して移動させることができる程度の緩さでねじ軸24に螺合しており、前述した嵌込み作業は、係止爪22がフランジ部32に当たらない様、ねじ軸24をスライダ孔18の範囲内で移動させた上で行われる。次に、係止爪22がフランジ部32に係合可能な位置まで、ねじ軸24をスライダ孔18に沿って移動させる。そして、ナット部材Nを締め付け、床材401,40bと梁材30を締結することにより、一対の床材40a,40bは、梁材30の上に固定される。
【0029】
このように、本発明の床材固定部材10を用いた床材固定方法によれば、床材固定部材10の垂直方向上側からの作業のみで床材40a,40bを梁材30に固定することができ、床材40a,40bの下方からの作業は不要なので、床材40a,40bを簡便且つ安全に設置することができる。また、1つの床材固定部材10で複数の床材40a,40bと梁材30を締結することができるので、設置作業をさらに容易にすることができる。なお、取付孔44は、その1単位が、1つの床材(例えば、床材40aのみ)に設けられた貫通孔であってもよく、隣接する4枚の床材にそれぞれ設けられた切欠きが組み合わされることにより形成されるようにしてもよい。
【0030】
また、本体15n側面のいずれが取付孔44の側面に接した場合でも、床材係止縁部16の下面が床材40a,40bの上面に接するように、本体15、床材係止縁部16、取付け孔44の各寸法が構成されているのがよい。本構成によれば、床材固定部材10の位置がずれて床材40a,40bの取付孔44を通じて床材固定部材10が落下してしまうことを防止することができる。
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、床材を簡便且つ安全に設置することができる床材固定部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 床材固定部材
11 底面
12 床材係止部材
13 回転防止機構
14 開口部
15 本体
16 床材係止縁部
18 スライダ孔
20 梁材係止部材
22 係止爪
24 ねじ軸
26 係止板
30 梁材
32 フランジ部
40a,40b 床材
44 取付孔
N ナット部材