(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】融合タンパク質を使用したTCRの再プログラム化のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220725BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220725BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220725BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220725BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220725BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220725BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220725BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220725BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220725BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20220725BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
(21)【出願番号】P 2019505451
(86)(22)【出願日】2017-08-02
(86)【国際出願番号】 US2017045159
(87)【国際公開番号】W WO2018026953
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-29
(32)【優先日】2016-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519032826
【氏名又は名称】ティーシーアール2 セラピューティクス インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ボーエルレ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シェクズキーヴィッチ,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ホフマイスター,ロバート
【審査官】北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/014565(WO,A2)
【文献】特表2018-515123(JP,A)
【文献】産業医科大学雑誌,1998年,Vol.20, No.2, p.153-162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする組換え核酸分子であって、前記TFPが:
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、
(ii)TCRの膜貫通ドメイン、及び
(iii)CD3ε、CD3γ、又はCD3δの細胞内シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン、
を含むTCRサブユニット;並びに
(b)配列番号25の重鎖CDR1、配列番号26の重鎖CDR2、及び配列番号27の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域か;又は配列番号29の重鎖CDR1、配列番号30の重鎖CDR2、及び配列番号31の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域を含む
、V
H
Hドメインである抗BCMA結合ドメインを含む抗体ドメイン、
を含み、
TCRサブユニット及び抗体ドメインは作動可能に連結され、
TFPは、T細胞で発現される際に内因性TCR複合体に統合され、
(i)、(ii)、及び(iii)は、同じTCRサブユニットに由来し、同じTCRサブユニットは、CD3γ鎖、CD3δ鎖、及びCD3ε鎖からなる群より選択される、
前記組換え核酸分子。
【請求項2】
抗体ドメインが、ヒト化抗体ドメインである、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項3】
抗体ドメインが、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている、請求項1又は2に記載の組換え核酸分子。
【請求項4】
リンカー配列が、(G
4S)
n(式中、n=1~4)を含む、請求項3に記載の組換え核酸分子。
【請求項5】
重鎖可変領域が、配列番号24又は28の配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項6】
TCRサブユニットが、CD3ε又はCD3γの細胞内シグナル伝達ドメインから選択される刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項7】
TCRの細胞内ドメインが、CD3εの細胞内シグナル伝達ドメインに由来する刺激ドメインを含み、同じTCRサブユニットがCD3ε鎖である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項8】
重鎖可変領域が、配列番号24と90~100%同一の配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項9】
重鎖可変領域が、配列番号28と90~100%同一の配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項10】
重鎖可変領域が、配列番号24又は配列番号28と少なくとも80%同一の配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換え核酸分子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組換え核酸分子を含む、ヒトT細胞。
【請求項12】
T細胞がCD8
+又はCD4
+T細胞である、請求項11に記載のヒトT細胞。
【請求項13】
細胞内シグナル伝達ドメインからの陽性シグナルを含む第2のポリペプチドに会合した、抑制分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含む抑制分子をコードする核酸をさらに含む、請求項11又は12に記載のヒトT細胞。
【請求項14】
抑制分子が、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチド、並びに共刺激ドメイン及び1次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドを含む、請求項13に記載のヒトT細胞。
【請求項15】
中皮腫、乳頭漿液性卵巣腺癌、明細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞濾胞性リンパ腫、大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、ワルデンストレームマクログロブリン血症、前白血病卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、膵臓腺癌、膵管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃腺癌、食道腺癌、結腸直腸腺癌、及び乳腺腺癌からなる群より選択される癌を患う哺乳動物を処置する方法に使用するための、請求項11~14のいずれか1項に記載のヒトT細胞を含む医薬組成物。
【請求項16】
抑制分子を阻害する薬剤をさらに含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抑制分子がPD1である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
薬剤が、抑制分子に結合する抗体又は抗体フラグメントである、請求項16に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2016年8月2日に出願された米国仮出願第62/370,189号の利益を主張し、それはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
血液悪性腫瘍または末期の固形腫瘍を有するほとんどの患者は、標準的治療では治癒不可能である。また、伝統的な治療選択肢はしばしば、重篤な副作用を有する。がん性細胞を排斥するための患者の免疫系を関わらせる多くの試み、すなわち、がん免疫療法と集合的に称されるアプローチがなされてきた。しかしながら、いくつかの障害が、臨床効果の達成をやや困難にしている。何百ものいわゆる腫瘍抗原が特定されてきたが、これらはしばしば、自己由来であるため、がん免疫療法を健康な組織に向かわせる可能性があるか、または免疫原性に乏しい。更に、がん細胞は複数の機構を使用してそれら自身を見えなくするか、またはがん免疫療法による免疫攻撃の開始及び伝播に敵対する。
【0003】
がん細胞上の好適な細胞表面分子に遺伝子操作されたT細胞を向け直すことに頼るキメラ抗原受容体(CAR)修飾自己T細胞療法を使用する最近の発展は、がんを治療するために免疫系の力を利用する際に期待できる結果を示している。例えば、B細胞成熟抗原(BCMA)特異的CAR T細胞を用いた進行中の治験からの臨床結果は、いくつかの多発性骨髄腫の患者において部分寛解を示した(1つのそのような治験は、clinicaltrials.govの識別番号NCT02215967を介して見ることができる)。代替的なアプローチは、自己T細胞を遺伝子操作するための腫瘍関連ペプチド抗原のために選択されたT細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ鎖の使用である。これらのTCR鎖は、完全なTCR複合体を形成し、T細胞に第2の定義された特異性のためのTCRを提供する。滑膜癌を有する患者においてNY-ESO-1特異的TCRアルファ及びベータ鎖を発現する改変された自己T細胞を用いて有望な結果が得られた。
【0004】
CARまたは第2のTCRを発現する遺伝子組み換えT細胞がインビトロ/エキソビボでそれぞれの標的細胞を認識及び破壊する能力に加えて、改変T細胞での成功裏での患者の治療は、T細胞に強力な活性化、増殖、経時的な持続性の能力があること、及び再発性疾患の場合、「記憶」反応を可能にすることを必要とする。CAR T細胞の高く管理可能な臨床的効力は、現在、メソテリン陽性B細胞悪性腫瘍及び、HLA-A2を発現するNY-ESO-1ペプチド発現滑膜肉腫患者に限られる。遺伝子操作されたT細胞を様々なヒトの悪性腫瘍に対してより広く作用するように改善する明確な必要性が存在する。CD3イプシロン、CD3ガンマ及びCD3デルタを含むTCRサブユニット、ならびに既存のアプローチの限界を克服する潜在性を有する細胞表面抗原に特異的な結合ドメインを有するTCRアルファ及びTCRベータ鎖の新規な融合タンパク質が本明細書に記載されている。CARよりも効率的に標的細胞を殺傷するが、同等のまたはより少ないレベルの炎症性サイトカインを放出する新規な融合タンパク質が本明細書に記載されている。これらのサイトカインのレベルの上昇は、養子CAR-T療法についての用量制限毒性と関連しているため、これらの融合タンパク質及びそれらの使用方法は、CARに対するTFPの利点を表す。
【発明の概要】
【0005】
BCMA結合タンパク質、ならびにそのようなBCMA結合タンパク質を含む抗体及びT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)が本明細書で提供される。また、1つ以上のTFPを発現するように改変されたT細胞、及び疾患の治療のためのその使用方法が提供される。
【0006】
1つの態様において、TCRサブユニットと、抗BCMA結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインとを含むT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0007】
1つの態様において、BCMA結合領域を含む抗体、例えば、二重特異性抗体をコードする単離された組み換え核酸分子(複数可)が本明細書で提供される。いくつかの例において、抗体は親和性成熟抗体である。いくつかの例において、BCMA結合タンパク質は、ラクダ科または単一ドメイン抗体(sdAb)である。いくつかの例において、抗体は、配列番号24を含むVHH領域を有する。他の例において、抗体は、配列番号28を含むVHH領域を有する。いくつかの例において、抗体は、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27に記載のCDR配列を有する単一ドメイン抗体である。いくつかの例において、抗体は、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31に記載のCDR配列を有する単一ドメイン抗体である。
【0008】
1つの態様において、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、そのTFPが、TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及びCD3イプシロンの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、TCRサブユニット及び抗体ドメインが作動可能に連結され、TFPが、T細胞で発現される際にTCRに合体する、単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0009】
1つの態様において、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、そのTFPが、TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及びCD3ガンマの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、TCRサブユニット及び抗体ドメインが作動可能に連結され、TFPが、T細胞で発現される際にTCRに合体する、単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0010】
1つの態様において、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、そのTFPが、TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及びCD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、TCRサブユニット及び抗体ドメインが作動可能に連結され、TFPが、T細胞で発現される際にTCRに合体する、単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0011】
1つの態様において、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、そのTFPが、TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及びTCRアルファの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、TCRサブユニット及び抗体ドメインが作動可能に連結され、TFPが、T細胞で発現される際にTCRに合体する、単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0012】
1つの態様において、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、そのTFPが、TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及びTCRベータの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含むTCRサブユニット、ならびに抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインを含み、TCRサブユニット及び抗体ドメインが作動可能に連結され、TFPが、T細胞で発現される際にTCRに合体する、単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0013】
1つの態様において、TCRサブユニットと、抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインとを含むT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子が本明細書で提供される。
【0014】
いくつかの例において、TCRサブユニット及び抗体ドメインは作動可能に連結されている。いくつかの例において、TFPは、T細胞で発現される際にTCRに合体する。いくつかの例において、コードされた抗原結合ドメインは、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている。いくつかの例において、コードされたリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~4)を含む。いくつかの例において、TCRサブユニットは、TCRの細胞外ドメインを含む。いくつかの例において、TCRサブユニットは、TCRの膜貫通ドメインを含む。いくつかの例において、TCRサブユニットは、TCRの細胞内ドメインを含む。いくつかの例において、TCRサブユニットは、(i)TCRの細胞外ドメイン、(ii)TCRの膜貫通ドメイン、及び(iii)TCRの細胞内ドメインを含み、(i)、(ii)、及び(iii)のうちの少なくとも2つが同じTCRサブユニット由来である。いくつかの例において、TCRサブユニットは、CD3イプシロン、CD3ガンマもしくはCD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそれに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾を有するアミノ酸配列から選択される刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含む。いくつかの例において、TCRサブユニットは、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン及び/またはCD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメイン、またはそれらに対して少なくとも1つの修飾を有するアミノ酸配列から選択される刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含む。いくつかの例において、ヒトまたはヒト化抗体ドメインは抗体フラグメントを含む。いくつかの例において、ヒトまたはヒト化抗体ドメインはscFvまたはVHドメインを含む。いくつかの例において、単離された核酸分子は、(i)それぞれ本明細書で提供される抗BCMA軽鎖結合ドメインの軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2及びLC CDR3に対して70~100%の配列同一性を有する抗BCMA軽鎖結合ドメインのアミノ酸配列の軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2及びLC CDR3、及び/または(ii)それぞれ本明細書で提供される抗BCMA重鎖結合ドメインの重鎖(HC)CDR1、HC CDR2及びHC CDR3に対して70~100%の配列同一性を有する抗BCMA重鎖結合ドメインのアミノ酸配列の重鎖(HC)CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をコードする。いくつかの例において、単離された核酸分子は、軽鎖可変領域をコードし、その軽鎖可変領域は、本明細書で提供される軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つから最大30までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供される軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。いくつかの例において、単離された核酸分子は、重鎖可変領域をコードし、その重鎖可変領域は、本明細書で提供される重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つから最大30までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供される重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0015】
いくつかの例において、TFPは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRサブユニットの細胞外ドメインを含む。いくつかの例において、コードされたTFPは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。いくつかの例において、コードされたTFPは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、TCRゼータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。いくつかの例において、単離された核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列を更に含む。いくつかの例において、共刺激ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び4-1BB(CD137)、ならびにそれらに対して少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質から得られる機能的シグナル伝達ドメインである。いくつかの例において、単離された核酸分子は、リーダー配列を更に含む。いくつかの例において、単離された核酸分子はmRNAである。
【0016】
いくつかの例において、TFPは、CD3ゼータのTCRサブユニット、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、TCRゼータ鎖、Fcイプシロン受容体1鎖、Fcイプシロン受容体2鎖、Fcガンマ受容体1鎖、Fcガンマ受容体2a鎖、Fcガンマ受容体2b1鎖、Fcガンマ受容体2b2鎖、Fcガンマ受容体3a鎖、Fcガンマ受容体3b鎖、Fcベータ受容体1鎖、TYROBP(DAP12)、CD5、CD16a、CD16b、CD22、CD23、CD32、CD64、CD79a、CD79b、CD89、CD278、CD66d、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までのそれらに対して修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)またはその一部を含むTCRサブユニットのITAMを含む。いくつかの例において、そのITAMは、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはCD3イプシロンのITAMと置き換わる。いくつかの例において、そのITAMは、CD3ゼータのTCRサブユニット、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択され、CD3ゼータのTCRサブユニット、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択される異なるITAMと置き換わる。
【0017】
いくつかの例において、核酸はヌクレオチド類似体を含む。いくつかの例において、ヌクレオチド類似体は、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、修飾された2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、及び2’-フルオロN3-P5’-ホスホルアミダイトからなる群から選択される。
【0018】
1つの態様において、本明細書で提供される核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチド分子が本明細書で提供される。
【0019】
1つの態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む単離された組み換えTFP分子が本明細書で提供される。
【0020】
1つの態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離されたTFP分子であって、そのTFP分子が、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、単離されたTFP分子が本明細書で提供される。
【0021】
1つの態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離されたTFP分子であって、そのTFP分子が、内因性TCR複合体に機能的に統合することが可能である、単離されたTFP分子が本明細書で提供される。
【0022】
いくつかの例において、単離されたTFP分子は、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む抗体または抗体フラグメントを含む。いくつかの例において、抗BCMA結合ドメインは、scFvまたはVHドメインである。いくつかの例において、抗BCMA結合ドメインは、本明細書で提供される重鎖のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有する重鎖、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、抗BCMA結合ドメインは、本明細書で提供される軽鎖のアミノ酸配列の95~100%の同一性を有する軽鎖、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む。いくつかの例において、単離されたTFP分子は、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRの細胞外ドメインを含む。いくつかの例において、抗BCMA結合ドメインは、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている。いくつかの例において、リンカー領域は、(G4S)n(式中、n=1~4)を含む。
【0023】
いくつかの例において、単離されたTFP分子は、共刺激ドメインをコードする配列を更に含む。いくつかの例において、単離されたTFP分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列を更に含む。いくつかの例において、単離されたTFP分子は、リーダー配列を更に含む。
【0024】
1つの態様において、本明細書で提供されるTFPをコードする核酸分子を含むベクターが本明細書で提供される。いくつかの例において、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)ベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群から選択される。いくつかの例において、ベクターはプロモーターを更に含む。いくつかの例において、ベクターはインビトロで転写されたベクターである。いくつかの例において、ベクターにおける核酸配列は、ポリ(A)尾部を更に含む。いくつかの例において、ベクターにおける核酸配列は、3’UTRを更に含む。
【0025】
1つの態様において、本明細書で提供されるベクターを含む細胞が本明細書で提供される。いくつかの例において、細胞はヒトT細胞である。いくつかの例において、T細胞はCD8+またはCD4+T細胞である。いくつかの例において、細胞は、細胞内シグナル伝達ドメインからの陽性シグナルを含む第2のポリペプチドに会合した、抑制分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含む抑制分子をコードする核酸を更に含む。いくつかの例において、抑制分子は、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドならびに共刺激ドメイン及び一次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドを含む。
【0026】
1つの態様において、少なくとも2つのTFP分子を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞であって、TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み、TFP分子が、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の中で、その細胞において及び/またはその細胞の表面上で、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、ヒトCD8+またはCD4+T細胞が本明細書で提供される。
【0027】
1つの態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメイン、ならびに少なくとも1つの内因性TCR複合体を含むTFP分子を含むタンパク質複合体が本明細書で提供される。
【0028】
いくつかの例において、TCRは、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含む。いくつかの例において、抗BCMA結合ドメインは、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている。いくつかの例において、リンカー領域は、(G4S)n(式中、n=1~4)を含む。
【0029】
いくつかの例において、TFP分子は、複数のTCRまたはCD3サブユニット由来の配列を含む1つ以上のキメラドメインを含む。いくつかの例において、キメラTFPは、遺伝子編集技術により改変される。
【0030】
1つの態様において、本明細書に記載のタンパク質複合体当たり少なくとも2つの異なるTFPタンパク質を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞が本明細書で提供される。
【0031】
1つの態様において、本明細書で提供されるベクターでT細胞を形質導入することを含む、細胞の作製方法が本明細書で提供される。
【0032】
1つの態様において、インビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞の集団を生成する方法であって、そのRNAが、本明細書で提供されるTFP分子をコードする核酸を含む、方法が本明細書で提供される。
【0033】
1つの態様において、哺乳類において抗腫瘍免疫を提供する方法であって、有効量の本明細書で提供されるTFP分子を発現するか、または本明細書で提供されるポリペプチド分子を発現する細胞を哺乳類に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0034】
いくつかの例において、細胞は自己T細胞である。いくつかの例において、細胞は同種異系T細胞である。いくつかの例において、哺乳類はヒトである。
【0035】
1つの態様において、BCMAの発現に関連する疾患を有する哺乳類を治療する方法であって、有効量の本明細書で提供されるTFP分子、本明細書で提供される細胞、または本明細書で提供されるポリペプチド分子を哺乳類に提供することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの例において、BCMA発現に関連する疾患は、増殖性疾患、がん、悪性腫瘍、及びBCMAの発現に関連する非がん関連症状、例えば、全身性エリテマトーデス、高血圧、腎障害からなる群から選択される。いくつかの例において、疾患は、腎細胞癌、多発性骨髄腫、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頸癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、子宮内膜癌、及び胃癌からなる群から選択されるがんである。
【0036】
いくつかの例において、疾患は、形質細胞障害、B細胞癌、白血病、リンパ腫、またはBCMA発現に関連する疾患、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるがんである。
【0037】
いくつかの例において、TFP分子を発現する細胞は、TFP分子を発現する細胞の効力を増加させる薬剤と組み合わせて投与される。そのような薬剤は、例えば、化学療法剤及び/または哺乳類における1つの腫瘍または複数の腫瘍の透過性を増加させることによってTFP分子を発現する細胞の効力を増加させる薬剤であり得る。いくつかの例において、TFP分子を発現する細胞の効力を増加させる薬剤は、シクロホスファミドである。いくつかの例において、抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を発現する有効量のT細胞が投与された哺乳類と比較して、より少ないサイトカインが哺乳類で放出される。いくつかの例において、TFP分子を発現する細胞は、TFP分子を発現する細胞の投与に関連する1つ以上の副作用を改善する薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの例において、TFP分子を発現する細胞は、BCMAに関連する疾患を治療する薬剤と組み合わせて投与される。
【0038】
1つの態様において、本明細書で提供される単離された核酸分子、本明細書で提供される単離されたポリペプチド分子、本明細書で提供される単離されたTFP、本明細書で提供される複合体、本明細書で提供されるベクター、または本明細書で提供される細胞は、薬剤としての使用のためのものである。
【0039】
1つの態様において、BCMAの発現に関連する疾患を有する哺乳類を治療する方法であって、有効量の本明細書で提供されるTFP分子、本明細書で提供される細胞、または本明細書で提供されるポリペプチド分子を哺乳類に提供することを含み、抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を発現する有効量のT細胞が投与された哺乳類と比較して、より少ないサイトカインが哺乳類で放出される、方法が本明細書で提供される。
【0040】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての出版物、特許、及び特許出願は、各々の個々の出版物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的且つ個別的に示されているのと同じ程度まで参照によって本明細書に組み込まれる。
【0041】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記述されている。本発明の特徴及び利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される具体的な実施形態を記述する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明のT細胞受容体融合ポリペプチド(TFP)の使用を示す概略図である。例示的なTFPは、(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMAscFv及び完全長CD3イプシロンポリペプチドを含有する。T細胞によって産生されるかまたはそれに導入される場合、TFPは、内因性T細胞受容体(TCR)(2つのCD3イプシロンポリペプチド、1つのCD3ガンマポリペプチド、1つのCD3デルタポリペプチド、2つのCD3ゼータポリペプチド、1つのTCRアルファサブユニット及び1つのTCRベータサブユニットを含むことが示されており、水平の灰色セグメントは細胞膜を表す)の他のポリペプチドと会合して再プログラム化されたTCRを形成し、その場合、内因性CD3イプシロンポリペプチドの一方または両方はTFPによって置換される。
【
図2A】本発明の再プログラム化されたT細胞受容体融合ポリペプチド(TFP)の例示的な変形例を示す概略図を表す。
【
図2B】i)(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMA V
HH及び完全長TCR Vαポリペプチド及びii)(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMA V
HH及び完全長TCR Vβポリペプチドを含む抗BCMA TFPを含有するTFPを含有する例示的な再プログラム化されたTCRを示す。
【
図2C】i)(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMA V
HH及び欠失(Δ)TCRポリペプチド及びii)(G
4S)
3リンカー配列を介して融合したBCMA V
HH及び完全長CD3イプシロンポリペプチドを含む複数のTFPを含有する例示的な再プログラム化されたTCRを示す。欠失(Δ)TCRポリぺプチドは、Vαの削除によって欠失している。
【
図2D】i)(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMA V
HH及び欠失(Δ)TCR Vαポリペプチド及びii)(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMA V
HH及び欠失(Δ)TCR Vβポリペプチドを含む複数のTFPを含有する例示的な再プログラム化されたTCRを示す。欠失(Δ)TCRポリぺプチドは、Vβの削除によって欠失している。
【
図3】本発明のT細胞受容体融合ポリペプチド(TFP)の使用を示す概略図である。例示的なTFPは、(G
4S)
3リンカー配列を介して融合した抗BCMA V
Hドメイン及び完全長CD3イプシロンポリペプチドを含有する。T細胞によって産生されるかまたはT細胞に導入される場合、TFPは、内因性T細胞受容体(TCR)(2つのCD3イプシロンポリペプチド、1つのCD3ガンマポリペプチド、1つのCD3デルタポリペプチド、2つのCD3ゼータポリペプチド、1つのTCRアルファサブユニット及び1つのTCRベータサブユニットを含むことが示されており、水平の灰色セグメントは細胞膜を表す)の他のポリペプチドと会合して再プログラム化されたTCRを形成し、その場合、内因性CD3イプシロンポリペプチドの一方または両方はTFPによって置換される。
【
図4】様々なTFPをコードするDNA構築物を示す一連の概略図である。
【
図5】レンチウイルス形質導入後のT細胞上での抗BCMA TFPの表面発現を図示する例示的な棒グラフである。エフェクターT細胞は、形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFP構築物のいずれかで形質導入されたかのいずれかであった。IL-2中で10日間増殖させた後、それらの表面TFP発現がフローサイトメトリーによって決定された。
【
図6】抗BCMA TFPによるBCMA発現RPMI8226標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されたエフェクターT細胞を12日間増殖させてから、1×10
4個のRPMI8226標的細胞と共に10:1、または5:1のE:T比で4時間インキュベートした。細胞傷害性率は、フローサイトメトリー細胞傷害性アッセイで決定された。
【
図7A】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図7B】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図7C】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図7D】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図7E】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図7F】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図7G】経時的な抗BCMA TFPによるBCMA形質導入HeLa標的細胞の殺傷を図示する例示的な棒グラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。細胞傷害性を示す細胞指数は、RTCAアッセイで決定された。そのアッセイを、形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの抗BCMA V
HH2(配列番号28)で5:1(
図7B)、1:1(
図7C)及び1:5(
図7D)のE:T比で;ならびにLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、及びHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で5:1(
図7E)、1:1(
図7F)及び1:5(
図7G)のE:T比で繰り返した。
【
図8A】BCMAを有する標的細胞に反応した抗BCMA TFPで形質導入されたT細胞によるIL-2の放出を図示する例示的なグラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。IL-2の産生は2プレックスLuminexによって決定された。
【
図8B】BCMAを有する標的細胞に反応した抗BCMA TFPで形質導入されたT細胞によるIFN-γの放出を図示する例示的なグラフである。形質導入されなかったか、または抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を7日間増殖させてから、1×10
4個のHeLaまたはHeLa-BCMAのいずれかの標的細胞と共にインキュベートした。IFN-γの産生は2プレックスLuminexによって決定された。
【
図9】BCMAを有する標的細胞に反応した抗BCMA TFPで形質導入されたT細胞の脱顆粒を図示する例示的なグラフである。形質導入されなかったか、または50MOIの抗BCMA-CD3εもしくは抗BCMA-CD3γ TFPのいずれかで形質導入されたかのいずれかであったエフェクターT細胞を13日間増殖させてから、1×10
4個の示されたBCMA+ve RPMI8226標的細胞と共にインキュベートした。CD3+CD8+ゲートにおけるCD107+細胞の百分率が決定された。
【
図10-1】細胞活性化によるTFP発現の検証を示す一連のグラフである。レンチウイルスの形質導入またはmRNAのエレクトロポレーションに続いて、抗BCMA TFPによる標的細胞の活性化をフローサイトメトリーによって確認する。CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFV(配列番号45)、ならびに形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した。形質導入されたT細胞及びBCMA陽性K562標的細胞(灰色棒)を1:1の比で一晩共培養した。形質導入していないBCMA陽性T細胞培養物(NT)と同様に、BCMA陰性K562細胞(黒色棒)を陰性対照として使用した。細胞をCD25(10のA)及びCD69(10のB)について染色した。
図10のC(CD25陽性細胞)及び10のD(CD69陽性細胞)は、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)を有するTFP T細胞についての同様の結果を示している。全てのTFP(いずれの配置でも)は、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)を活性化することができたが、BCMA陰性細胞(黒色棒)を活性化することはできなかった。
図10のEでは、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv(配列番号45)、及び形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した;
図10のFでは、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で細胞を形質導入した。図に示されているように、陰性対照を除く全てのTFP T細胞は、BCMA陰性細胞(黒色棒)と比較して、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)と接触した後に、上昇したレベルのグランザイムBを有していた;
図10のG(E:T 3:1)及び
図10のH(E:T 1:3)では、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv1(配列番号45)、形式CD3ε、CD3γ、TCRβの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)、及びLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTFRβの抗BCMA scFV2(配列番号43)で細胞を形質導入した。両方の10のGに示されるように、空ベクターを除く全ての構築物は、3:1のT細胞に対するエフェクター細胞の比において腫瘍細胞の数を減少させるのに十分であった。1:3のT細胞に対するエフェクター細胞の比では(10のH)、全ての構築物は、わずかにより多様な効力で腫瘍細胞の数を減少させることができた。中実棒はBCMA陰性HeLa細胞を表し、空の棒はBCMA陽性細胞を表す。
【
図10-2】細胞活性化によるTFP発現の検証を示す一連のグラフである。レンチウイルスの形質導入またはmRNAのエレクトロポレーションに続いて、抗BCMA TFPによる標的細胞の活性化をフローサイトメトリーによって確認する。CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFV(配列番号45)、ならびに形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した。形質導入されたT細胞及びBCMA陽性K562標的細胞(灰色棒)を1:1の比で一晩共培養した。形質導入していないBCMA陽性T細胞培養物(NT)と同様に、BCMA陰性K562細胞(黒色棒)を陰性対照として使用した。細胞をCD25(10のA)及びCD69(10のB)について染色した。
図10のC(CD25陽性細胞)及び10のD(CD69陽性細胞)は、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)を有するTFP T細胞についての同様の結果を示している。全てのTFP(いずれの配置でも)は、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)を活性化することができたが、BCMA陰性細胞(黒色棒)を活性化することはできなかった。
図10のEでは、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv(配列番号45)、及び形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した;
図10のFでは、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で細胞を形質導入した。図に示されているように、陰性対照を除く全てのTFP T細胞は、BCMA陰性細胞(黒色棒)と比較して、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)と接触した後に、上昇したレベルのグランザイムBを有していた;
図10のG(E:T 3:1)及び
図10のH(E:T 1:3)では、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv1(配列番号45)、形式CD3ε、CD3γ、TCRβの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)、及びLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTFRβの抗BCMA scFV2(配列番号43)で細胞を形質導入した。両方の10のGに示されるように、空ベクターを除く全ての構築物は、3:1のT細胞に対するエフェクター細胞の比において腫瘍細胞の数を減少させるのに十分であった。1:3のT細胞に対するエフェクター細胞の比では(10のH)、全ての構築物は、わずかにより多様な効力で腫瘍細胞の数を減少させることができた。中実棒はBCMA陰性HeLa細胞を表し、空の棒はBCMA陽性細胞を表す。
【
図10-3】細胞活性化によるTFP発現の検証を示す一連のグラフである。レンチウイルスの形質導入またはmRNAのエレクトロポレーションに続いて、抗BCMA TFPによる標的細胞の活性化をフローサイトメトリーによって確認する。CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFV(配列番号45)、ならびに形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した。形質導入されたT細胞及びBCMA陽性K562標的細胞(灰色棒)を1:1の比で一晩共培養した。形質導入していないBCMA陽性T細胞培養物(NT)と同様に、BCMA陰性K562細胞(黒色棒)を陰性対照として使用した。細胞をCD25(10のA)及びCD69(10のB)について染色した。
図10のC(CD25陽性細胞)及び10のD(CD69陽性細胞)は、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)を有するTFP T細胞についての同様の結果を示している。全てのTFP(いずれの配置でも)は、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)を活性化することができたが、BCMA陰性細胞(黒色棒)を活性化することはできなかった。
図10のEでは、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv(配列番号45)、及び形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した;
図10のFでは、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で細胞を形質導入した。図に示されているように、陰性対照を除く全てのTFP T細胞は、BCMA陰性細胞(黒色棒)と比較して、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)と接触した後に、上昇したレベルのグランザイムBを有していた;
図10のG(E:T 3:1)及び
図10のH(E:T 1:3)では、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv1(配列番号45)、形式CD3ε、CD3γ、TCRβの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)、及びLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTFRβの抗BCMA scFV2(配列番号43)で細胞を形質導入した。両方の10のGに示されるように、空ベクターを除く全ての構築物は、3:1のT細胞に対するエフェクター細胞の比において腫瘍細胞の数を減少させるのに十分であった。1:3のT細胞に対するエフェクター細胞の比では(10のH)、全ての構築物は、わずかにより多様な効力で腫瘍細胞の数を減少させることができた。中実棒はBCMA陰性HeLa細胞を表し、空の棒はBCMA陽性細胞を表す。
【
図11-1】抗BCMA scFv1 TFP T細胞のインビトロ分析及びインビボ多発性骨髄腫モデルにおけるそれらの効力を示す一連のグラフである。CD3ε形式のTFP T細胞またはCD28ζもしくは41BBζ形式のCAR T細胞を、ルシフェラーゼを発現するHeLa-CD19(陰性対照)またはHeLa-BCMA腫瘍標的細胞と共に3:1(
図11のA)または1:3(
図11のB)比の標的細胞に対するエフェクターの比でT細胞を24時間培養することによってそれらの細胞溶解活性について試験した。ルシフェラーゼアッセイを実施し、殺傷%を標的細胞単独と比較して計算した(形質導入していないT細胞または空のベクターT細胞によって証明される)。TFPまたはCAR T細胞をまた、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)によって細胞溶解機能について試験した。T細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性腫瘍標的(HeLa-CD19)と1:3(
図11のC)または1:3(
図11のD)のE:T比で共培養した。細胞指数値によって示される細胞インピーダンスを測定して細胞傷害性の潜在性を決定した。形質導入されなかったまたは上記の抗BCMA TFPまたはCAR構築物で形質導入されたエフェクターT細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性標的細胞(HeLa-CD19)と3:1及び1:3のE:T比で上述したRTCAにおいてインキュベートした。細胞上清中に放出されたサイトカインIFN-γ(
図11のE)及びIL-2(
図11のF)を測定した。
【
図11-2】抗BCMA scFv1 TFP T細胞のインビトロ分析及びインビボ多発性骨髄腫モデルにおけるそれらの効力を示す一連のグラフである。CD3ε形式のTFP T細胞またはCD28ζもしくは41BBζ形式のCAR T細胞を、ルシフェラーゼを発現するHeLa-CD19(陰性対照)またはHeLa-BCMA腫瘍標的細胞と共に3:1(
図11のA)または1:3(
図11のB)比の標的細胞に対するエフェクターの比でT細胞を24時間培養することによってそれらの細胞溶解活性について試験した。ルシフェラーゼアッセイを実施し、殺傷%を標的細胞単独と比較して計算した(形質導入していないT細胞または空のベクターT細胞によって証明される)。TFPまたはCAR T細胞をまた、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)によって細胞溶解機能について試験した。T細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性腫瘍標的(HeLa-CD19)と1:3(
図11のC)または1:3(
図11のD)のE:T比で共培養した。細胞指数値によって示される細胞インピーダンスを測定して細胞傷害性の潜在性を決定した。形質導入されなかったまたは上記の抗BCMA TFPまたはCAR構築物で形質導入されたエフェクターT細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性標的細胞(HeLa-CD19)と3:1及び1:3のE:T比で上述したRTCAにおいてインキュベートした。細胞上清中に放出されたサイトカインIFN-γ(
図11のE)及びIL-2(
図11のF)を測定した。
【
図11-3】抗BCMA scFv1 TFP T細胞のインビトロ分析及びインビボ多発性骨髄腫モデルにおけるそれらの効力を示す一連のグラフである。CD3ε形式のTFP T細胞またはCD28ζもしくは41BBζ形式のCAR T細胞を、ルシフェラーゼを発現するHeLa-CD19(陰性対照)またはHeLa-BCMA腫瘍標的細胞と共に3:1(
図11のA)または1:3(
図11のB)比の標的細胞に対するエフェクターの比でT細胞を24時間培養することによってそれらの細胞溶解活性について試験した。ルシフェラーゼアッセイを実施し、殺傷%を標的細胞単独と比較して計算した(形質導入していないT細胞または空のベクターT細胞によって証明される)。TFPまたはCAR T細胞をまた、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)によって細胞溶解機能について試験した。T細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性腫瘍標的(HeLa-CD19)と1:3(
図11のC)または1:3(
図11のD)のE:T比で共培養した。細胞指数値によって示される細胞インピーダンスを測定して細胞傷害性の潜在性を決定した。形質導入されなかったまたは上記の抗BCMA TFPまたはCAR構築物で形質導入されたエフェクターT細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性標的細胞(HeLa-CD19)と3:1及び1:3のE:T比で上述したRTCAにおいてインキュベートした。細胞上清中に放出されたサイトカインIFN-γ(
図11のE)及びIL-2(
図11のF)を測定した。
【
図11-4】抗BCMA scFv1 TFP T細胞のインビトロ分析及びインビボ多発性骨髄腫モデルにおけるそれらの効力を示す一連のグラフである。CD3ε形式のTFP T細胞またはCD28ζもしくは41BBζ形式のCAR T細胞を、ルシフェラーゼを発現するHeLa-CD19(陰性対照)またはHeLa-BCMA腫瘍標的細胞と共に3:1(
図11のA)または1:3(
図11のB)比の標的細胞に対するエフェクターの比でT細胞を24時間培養することによってそれらの細胞溶解活性について試験した。ルシフェラーゼアッセイを実施し、殺傷%を標的細胞単独と比較して計算した(形質導入していないT細胞または空のベクターT細胞によって証明される)。TFPまたはCAR T細胞をまた、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)によって細胞溶解機能について試験した。T細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性腫瘍標的(HeLa-CD19)と1:3(
図11のC)または1:3(
図11のD)のE:T比で共培養した。細胞指数値によって示される細胞インピーダンスを測定して細胞傷害性の潜在性を決定した。形質導入されなかったまたは上記の抗BCMA TFPまたはCAR構築物で形質導入されたエフェクターT細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性標的細胞(HeLa-CD19)と3:1及び1:3のE:T比で上述したRTCAにおいてインキュベートした。細胞上清中に放出されたサイトカインIFN-γ(
図11のE)及びIL-2(
図11のF)を測定した。
【
図11-5】抗BCMA scFv1 TFP T細胞のインビトロ分析及びインビボ多発性骨髄腫モデルにおけるそれらの効力を示す一連のグラフである。CD3ε形式のTFP T細胞またはCD28ζもしくは41BBζ形式のCAR T細胞を、ルシフェラーゼを発現するHeLa-CD19(陰性対照)またはHeLa-BCMA腫瘍標的細胞と共に3:1(
図11のA)または1:3(
図11のB)比の標的細胞に対するエフェクターの比でT細胞を24時間培養することによってそれらの細胞溶解活性について試験した。ルシフェラーゼアッセイを実施し、殺傷%を標的細胞単独と比較して計算した(形質導入していないT細胞または空のベクターT細胞によって証明される)。TFPまたはCAR T細胞をまた、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)によって細胞溶解機能について試験した。T細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性腫瘍標的(HeLa-CD19)と1:3(
図11のC)または1:3(
図11のD)のE:T比で共培養した。細胞指数値によって示される細胞インピーダンスを測定して細胞傷害性の潜在性を決定した。形質導入されなかったまたは上記の抗BCMA TFPまたはCAR構築物で形質導入されたエフェクターT細胞を、BCMA陽性標的細胞(HeLa-BCMA)またはBCMA陰性標的細胞(HeLa-CD19)と3:1及び1:3のE:T比で上述したRTCAにおいてインキュベートした。細胞上清中に放出されたサイトカインIFN-γ(
図11のE)及びIL-2(
図11のF)を測定した。
【
図12A】scFv2(HL形式)及びV
HH2 TFP T細胞のインビボでの効力を示す一連のグラフである。マウスにRPMI-8226腫瘍細胞を接種し、次いで陰性対照として空ベクターT細胞及び陽性対照としてscFv1-CD3εTFP T細胞(
図12A);イプシロン、ガンマ、及びベータ形式のV
HH2 TFP T細胞(
図12B)、及びイプシロン、ガンマ及びベータ形式のscFv2 TFP T細胞(
図12C)を使用して処置した。各グラフにおける各線は1匹のマウスを表す。データは、数日にわたって経時的なmm3での腫瘍体積を表している。0日目は、腫瘍細胞の接種から3週間後の処置の開始の日を表す。
【
図12B】scFv2(HL形式)及びV
HH2 TFP T細胞のインビボでの効力を示す一連のグラフである。マウスにRPMI-8226腫瘍細胞を接種し、次いで陰性対照として空ベクターT細胞及び陽性対照としてscFv1-CD3εTFP T細胞(
図12A);イプシロン、ガンマ、及びベータ形式のV
HH2 TFP T細胞(
図12B)、及びイプシロン、ガンマ及びベータ形式のscFv2 TFP T細胞(
図12C)を使用して処置した。各グラフにおける各線は1匹のマウスを表す。データは、数日にわたって経時的なmm3での腫瘍体積を表している。0日目は、腫瘍細胞の接種から3週間後の処置の開始の日を表す。
【
図12C】scFv2(HL形式)及びV
HH2 TFP T細胞のインビボでの効力を示す一連のグラフである。マウスにRPMI-8226腫瘍細胞を接種し、次いで陰性対照として空ベクターT細胞及び陽性対照としてscFv1-CD3εTFP T細胞(
図12A);イプシロン、ガンマ、及びベータ形式のV
HH2 TFP T細胞(
図12B)、及びイプシロン、ガンマ及びベータ形式のscFv2 TFP T細胞(
図12C)を使用して処置した。各グラフにおける各線は1匹のマウスを表す。データは、数日にわたって経時的なmm3での腫瘍体積を表している。0日目は、腫瘍細胞の接種から3週間後の処置の開始の日を表す。
【
図13-1】上記の
図11で使用されたTFP及びCAR T細胞のインビボでの効力を示す一連のグラフである。TFP対CARの効力を評価するために、RPMI8226多発性骨髄腫細胞及びNSGマウスモデルを使用した。T細胞注射後8日目からTFP及びCAR T群において腫瘍体積の有意な減少が観察された(
図13のA)。腫瘍の平均放射輝度によって評価される腫瘍荷重は、対照と比較して全ての群において有意に減少した(
図13のB)。また、TFP及び41BBζCAR T細胞群は、CD28ζCAR T群と比較して増加した生存率を示した(
図13のC)。
【
図13-2】上記の
図11で使用されたTFP及びCAR T細胞のインビボでの効力を示す一連のグラフである。TFP対CARの効力を評価するために、RPMI8226多発性骨髄腫細胞及びNSGマウスモデルを使用した。T細胞注射後8日目からTFP及びCAR T群において腫瘍体積の有意な減少が観察された(
図13のA)。腫瘍の平均放射輝度によって評価される腫瘍荷重は、対照と比較して全ての群において有意に減少した(
図13のB)。また、TFP及び41BBζCAR T細胞群は、CD28ζCAR T群と比較して増加した生存率を示した(
図13のC)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
1つの態様において、TCRサブユニットと、抗BCMA結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインとを含むT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された核酸分子が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、TCRサブユニットは、TCRの細胞外ドメインを含む。他の実施形態において、TCRサブユニットは、TCRの膜貫通ドメインを含む。また他の実施形態において、TCRサブユニットは、TCRの細胞内ドメインを含む。更なる実施形態において、TCRサブユニットは、(i)TCRの細胞外ドメイン、(ii)TCRの膜貫通ドメイン、及び(iii)TCRの細胞内ドメインを含み、(i)、(ii)、及び(iii)のうちの少なくとも2つが同じTCRサブユニット由来である。また更なる実施形態において、TCRサブユニットは、CD3イプシロン、CD3ガンマもしくはCD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそれに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾を有するアミノ酸配列から選択される刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含む。また更なる実施形態において、TCRサブユニットは、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン及び/またはCD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメイン、またはそれらに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾を有するアミノ酸配列から選択される刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化抗体ドメインは抗体フラグメントを含む。いくつかの実施形態において、ヒトまたはヒト化抗体ドメインはscFvまたはVHドメインを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、(i)本明細書で提供される任意の抗BCMA軽鎖結合ドメインのアミノ酸配列の軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2及びLC CDR3、及び/または(ii)本明細書で提供される任意の抗BCMA重鎖結合ドメインのアミノ酸配列の重鎖(HC)CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は、本明細書で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大30、20または10までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供されるアミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。他の実施形態において、重鎖可変領域は、本明細書で提供される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大30、20または10までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供されるアミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0047】
いくつかの実施形態において、TFPは、T細胞受容体のアルファもしくはベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、もしくはCD3ガンマ、もしくはそれらの機能的フラグメント、またはそれらに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大20、10または5つまでの修飾を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRサブユニットの細胞外ドメインを含む。他の実施形態において、コードされたTFPは、TCRのアルファ、ベータ鎖もしくはTCRサブユニットのCD3イプシロン、CD3ガンマ、及びCD3デルタ、もしくはそれらの機能的フラグメント、またはそれらに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大20、10または5つまでの修飾を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、コードされたTFPは、TCRのアルファ、ベータもしくはゼータ鎖もしくはCD3イプシロン、CD3ガンマ及びCD3デルタ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137及びCD154、もしくはそれらの機能的フラグメント、またはそれらに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大20、10または5つまでの修飾を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、コードされた抗BCMA結合ドメインは、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている。いくつかの例において、コードされたリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~4)を含む。いくつかの例において、コードされたリンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、コードされた長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、コードされたリンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、コードされた短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列を更に含む。いくつかの例において、共刺激ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び4-1BB(CD137)、またはそれらに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大20、10または5までの修飾を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質から得られる機能的シグナル伝達ドメインである。
【0051】
いくつかの実施形態において、単離された核酸分子は、リーダー配列を更に含む。
【0052】
また、前述の核酸分子のいずれかによってコードされた単離されたポリペプチド分子が本明細書で提供される。
【0053】
また別の態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む単離されたT細胞受容体融合タンパク質(TFP)分子が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、単離されたTFP分子は、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む抗体または抗体フラグメントを含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、抗BCMA結合ドメインは、scFvまたはVHドメインである。他の実施形態において、抗BCMA結合ドメインは、本明細書で提供されるアミノ酸配列、もしくはその機能的フラグメント、もしくは本明細書で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大30、20または10までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供されるアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列の軽鎖及び重鎖を含む。いくつかの実施形態において、単離されたTFP分子は、T細胞受容体のアルファもしくはベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、もしくはCD3ガンマ、またはそれらに対して少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾から最大20、10または5つの修飾を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRの細胞外ドメインを含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、抗BCMA結合ドメインは、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている。いくつかの例において、リンカー領域は、(G4S)n(式中、n=1~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、単離されたTFP分子は、共刺激ドメインをコードする配列を更に含む。他の実施形態において、単離されたTFP分子は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列を更に含む。また他の実施形態において、単離されたTFP分子は、リーダー配列を更に含む。
【0057】
また、前述のTFP分子のいずれかをコードする核酸分子を含むベクターが本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ベクターはプロモーターを更に含む。いくつかの実施形態において、ベクターはインビトロで転写されたベクターである。いくつかの実施形態において、ベクターにおける核酸配列は、ポリ(A)尾部を更に含む。いくつかの実施形態において、ベクターにおける核酸配列は、3’UTRを更に含む。
【0058】
また、記載されたベクターのいずれかを含む細胞が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、細胞はヒトT細胞である。いくつかの実施形態において、細胞はCD8+またはCD4+T細胞である。他の実施形態において、細胞は、細胞内シグナル伝達ドメインからの陽性シグナルを含む第2のポリペプチドに会合した、抑制分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含む抑制分子をコードする核酸を更に含む。いくつかの例において、抑制分子は、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドならびに共刺激ドメイン及び一次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドを含む。
【0059】
別の態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離されたTFP分子であって、そのTFP分子が、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、単離されたTFP分子が本明細書で提供される。
【0060】
別の態様において、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離されたTFP分子であって、そのTFP分子が、内因性TCR複合体に機能的に統合することが可能である、単離されたTFP分子が本明細書で提供される。
【0061】
別の態様において、少なくとも2つのTFP分子を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞であって、TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み、TFP分子が、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の中で、その細胞において及び/またはその細胞の表面上で、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、ヒトCD8+またはCD4+T細胞が本明細書で提供される。
【0062】
別の態様において、i)ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含むTFP分子、及びii)少なくとも1つの内因性TCR複合体を含むタンパク質複合体が本明細書で提供される。
【0063】
いくつかの実施形態において、TCRは、T細胞受容体のアルファもしくはベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、またはCD3ガンマからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含む。いくつかの実施形態において、抗BCMA結合ドメインは、リンカー配列によってTCRの細胞外ドメインに接続されている。いくつかの例において、リンカー領域は、(G4S)n(式中、n=1~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。
【0064】
また、記載されたタンパク質複合体のいずれか当たり少なくとも2つの異なるTFPタンパク質を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞が本明細書で提供される。
【0065】
別の態様において、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、その集団のT細胞が、少なくとも2つのTFP分子を個別的にまたは集合的に含み、TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み、TFP分子が、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の中で、その細胞において及び/またはその細胞の表面上で、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団が本明細書で提供される。
【0066】
別の態様において、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、その集団のT細胞が、本明細書に記載の単離された核酸分子によってコードされた少なくとも2つのTFP分子を個別的または集合的に含む、ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団が本明細書で提供される。
【0067】
別の態様において、記載されたベクターのいずれかでT細胞を形質導入することを含む、細胞の作製方法が本明細書で提供される。
【0068】
別の態様において、インビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞の集団を生成する方法であって、そのRNAが、記載されたTFP分子のいずれかをコードする核酸を含む、方法が本明細書で提供される。
【0069】
別の態様において、哺乳類において抗腫瘍免疫を提供する方法であって、有効量の記載されたTFP分子のいずれかを発現する細胞を哺乳類に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、細胞は自己T細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は同種異系T細胞である。いくつかの実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0070】
別の態様において、BCMAの発現に関連する疾患を有する哺乳類を治療する方法であって、有効量の記載されたTFP分子のいずれかを含む細胞を哺乳類に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、BCMA発現に関連する疾患は、がんもしくは悪性腫瘍または前がん状態、例えば骨髄異形成、骨髄異形成症候群もしくは前白血病などの増殖性疾患から選択されるか、またはBCMAの発現に関連する非がん関連症状である。いくつかの実施形態において、疾患は、B細胞急性リンパ性白血病(「B-ALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「T-ALL」)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)を含むがこれらに限定されない1つ以上の急性白血病;慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)を含むがこれらに限定されない1つ以上の慢性白血病;B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞もしくは大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、形質細胞性白血病、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、ワルデンストレームマクログロブリン血症、及び骨髄血液細胞の無効な産生(または異形成)によってまとめられる多様な血液学状態の集合である「前白血病」を含むがこれらに限定されない更なる血液がんまたは血液学状態、及びBCMAを発現する非定型及び/または非古典的がん、悪性腫瘍、前がん状態もしくは増殖性疾患を含むがこれらに限定されないBCMAの発現に関連する疾患;ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される血液がんである。
【0071】
いくつかの実施形態において、記載されたTFP分子のいずれかを発現する細胞は、TFP分子を発現する細胞の投与に関連する1つ以上の副作用を改善する薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、記載されたTFP分子のいずれかを発現する細胞は、BCMAに関連する疾患を治療する薬剤と組み合わせて投与される。
【0072】
薬剤としての使用のための記載された単離された核酸分子のいずれか、記載された単離されたポリペプチド分子のいずれか、記載された単離されたTFPのいずれか、記載されたタンパク質複合体のいずれか、記載されたベクターのいずれかまたは記載された細胞のいずれかが本明細書で提供される。
【0073】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0074】
用語「a」及び「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「an element(要素)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0075】
本明細書で使用される場合、「約」は、状況及び当業者が知るまたは知り得ることに応じて、プラスまたはマイナス1パーセント未満もしくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30パーセント、または30パーセント超を意味し得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「対象(subject)」または「対象(subjects)」または「個体」には、ヒトなどの哺乳類または非ヒト哺乳類、例えば、家畜、農業用または野生の動物、ならびに鳥、及び水生動物が含まれ得るがこれらに限定されない。「患者」は、疾患、障害または状態に罹患しているかもしくは発症の危険性があるか、またはそうでなければ本明細書で提供される組成物及び方法を必要としている対象である。
【0077】
本明細書で使用される場合、「治療すること」または「治療」は、疾患または状態の治療または改善における任意の成功の兆候を指す。治療することには、例えば、疾患もしくは状態の1つ以上の症状の重症度を低下させること、遅らせることまたは軽減することが含まれ得るか、または疾患、不具合、障害、または悪条件などの症状を患者が経験する頻度を低下させることが含まれ得る。本明細書で使用される場合、「治療または予防」は、疾患もしくは状態のいくらかのレベルの治療または改善をもたらす方法を指すために本明細書で時に使用され、状態の予防を含むがこれに完全に限定されるわけではないその目的に向けられた様々な結果を企図する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「予防すること」は、患者における疾患または状態、例えば、腫瘍形成の予防を指す。例えば、腫瘍または他の形態のがんの発症の危険性がある個体が本発明の方法で治療され、後に腫瘍または他の形態のがんを発症しない場合、そのときは疾患はその個体において少なくともある期間にわたって予防されている。
【0079】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、組成物が投与される個体に対して有益な効果を提供するのに、またはそうでなければ有害な有益でない事象を減少させるのに十分な組成物またはその活性成分の量である。「治療有効用量」は、本明細書では、1つ以上の所望のまたは望ましい(例えば、有益な)効果を生み出すために投与される用量を意味し、そのような投与は所与の期間にわたって1回以上存在する。正確な用量は、治療の目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって解明可能である(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3,1992);Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);及びPickar,Dosage Calculations(1999)を参照されたい)。
【0080】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体(TCR)融合タンパク質」または「TFP」は、一般にi)標的細胞上の表面抗原に結合すること、及びii)典型的にはT細胞内またはその表面上で共に配置された場合に、無傷のTCR複合体の他のポリペプチド成分と相互作用することが可能なTCRを含む様々なポリペプチドに由来する組み換えポリペプチドを含む。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「B細胞 本明細書で使用される場合、用語「BCMA」は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)としても知られるB細胞成熟抗原」または「BCMA」または「BCM」を指し、分化抗原群269タンパク質(CD269)、またはTNFRSF13Aは、TNFRSF17遺伝子によってヒトにおいてコードされるタンパク質である。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)を認識するTFN受容体スーパーファミリーの細胞表面受容体である。その受容体は、成熟Bリンパ球で優先的に発現し、B細胞発生及び自己免疫反応にとって重要であり得る。この受容体は、腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリー、メンバー13b(TNFSF13B/TALL-1/BAFF)に特異的に結合すること、及びNF-カッパB及びMAPK8/JNK活性化につながることが示されている。それは、リガンドBAFF及びAPRILのための非グリコシル化膜内在性受容体である。BCMAのリガンドはまた、更なる受容体:APRIL及びBAFFを結合させるTACI(膜貫通活性化因子及びカルシウム調節因子及びシクロフィリンリガンド相互作用因子);ならびにBAFFに対して制限されるが高い親和性を示すBAFF-R(BAFF受容体またはBR3)を結合させ得る。同時に、これらの受容体及びそれらの対応するリガンドは、液性免疫、B細胞発生及びホメオスタシスの異なる側面を調節する。
【0082】
BCMAの発現は典型的にはB細胞系統に限られ、最終的なB細胞分化が増加することが報告されている。BCMAは、ヒト形質芽球、扁桃腺由来の形質細胞、脾臓及び骨髄によってだけでなく、扁桃腺記憶B細胞によって及びTACI-BAFFR低表現型を有する胚中心B細胞によっても発現される(Darce et al,2007)。BCMAは、ナイーブ及びメモリーB細胞では実質的に存在しない(Novak et al.,2004a及びb)。BCMA抗原は、細胞表面上に発現されるので抗体に近接可能であるがゴルジ中にも発現される。その発現プロファイルによって示唆されるように、典型的にはB細胞の生存及び増殖と関連するBCMAシグナル伝達は、B細胞分化の後期段階、ならびに長寿命骨髄形質細胞(O’Connor et al.,2004)及び形質芽球(Avery et al.,2003)の生存において重要である。更に、BCMAはAPRILと高い親和性で結合するので、BCMA-APRILシグナル伝達軸は、おそらく最も生理学的に関連性のある相互作用である、B細胞分化の後期段階で優位を占めることが示唆される。
【0083】
ヒト及びマウスのアミノ酸及び核酸配列は、公共のデータベース、例えば、GenBank、UniProt及びSwiss-Protで見つけることができる。例えば、ヒトBCMAのアミノ酸配列は、UniProt/Swiss-Protアクセッション番号Q02223で見つけることができる。ヒトBCMAポリペプチドの標準的な配列は、UniProtアクセッション番号Q02223-1(本明細書では、配列番号42、付録Aを参照されたい)。
【0084】
本明細書で使用される用語「抗体」は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質、またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル起源の無傷の免疫グロブリン、またはそのフラグメントであり得るか、または天然源もしくは組み換え源に由来し得る。
【0085】
用語「抗体フラグメント」または「抗体結合ドメイン」は、抗原結合ドメイン、すなわち、無傷の抗体の抗原決定可変領域を含有し、且つ標的、例えば、抗原及びその定義されたエピトープに対する抗体フラグメントの認識及び特異的結合を付与するのに十分である抗体の少なくとも一部、またはその組み換え変異体を指す。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、一本鎖(sc)Fv(「scFv」)抗体フラグメント、線状抗体、単一ドメイン抗体(「sdAb」と略される)(VLまたはVHのいずれか)、ラクダ科VHHドメイン、ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれるがこれらに限定されない。
【0086】
用語「scFv」は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメント及び重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントを含む融合タンパク質であって、その軽鎖及び重鎖の可変領域が、短い可動性ポリペプチドリンカーを介して隣接して連結され、単一ポリペプチド鎖として発現することが可能である、融合タンパク質を指し、scFvは、それが由来する無傷の抗体の特異性を保持している。
【0087】
抗体に関する「重鎖可変領域」または「VH」(または、単一ドメイン抗体の場合は、例えば、ナノ抗体「VHH」)は、フレームワーク領域として知られるフランキングストレッチ間に介在する3つのCDRを含有する重鎖のフラグメントを指し、これらのフレームワーク領域は一般に、CDRよりも高度に保存され、CDRを支持するための骨格を形成する。
【0088】
指定されない限り、本明細書で使用される場合、scFvは、VL及びVH領域を、例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に関していずれの順序で有してもよく、すなわち、scFvは、VL-リンカー-VHを含み得るか、またはVH-リンカー-VLを含み得る。
【0089】
抗体またはその抗体フラグメントを含む本発明のTFP組成物の部分は、例えば、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)または重鎖抗体HCAb242:423-426を含む隣接ポリペプチド鎖の一部として抗原結合ドメインが発現する様々な形態で存在し得る。1つの態様において、本発明のTFP組成物の抗原結合ドメインは、抗体フラグメントを含む。更なる態様において、TFPは、scFvまたはsdAbを含む抗体フラグメントを含む。
【0090】
用語「抗体重鎖」は、抗体分子中にそれらの天然に存在する立体配座で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの大きい方を指し、それは通常、抗体が属するクラスを決定する。
【0091】
用語「抗体軽鎖」は、抗体分子中にそれらの天然に存在する立体配座で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖のアイソタイプを指す。
【0092】
用語「組み換え抗体」は、組み換えDNA技術を使用して生成された抗体、例えば、バクテリオファージまたは酵母の発現系によって発現される抗体を指す。その用語はまた、抗体をコードし、抗体タンパク質を発現するDNA分子、または抗体を特定するアミノ酸配列の合成によって生成された抗体を意味するものと解釈されるべきであり、この場合、DNAまたはアミノ酸配列は、当該技術分野で利用可能でよく知られている組み換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られたものである。
【0093】
用語「抗原」または「Ag」は、抗体によって特異的に結合され得る、または他の場合には免疫反応を誘発する分子を指す。この免疫反応は、抗体産生、もしくは特異的な免疫適格細胞の活性化のいずれか、またはその両方を含み得る。
【0094】
当業者は、実質的に全てのタンパク質またはペプチドを含む任意のマクロ分子が抗原の役割を果たし得ることを理解する。更に、抗原は組み換えまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者は、そのため、免疫反応を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的なヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、「抗原」を、その用語が本明細書で使用される場合、コードすることを理解する。更に、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要はないことを理解する。本発明が、限定されないが、複数の遺伝子の部分的なヌクレオチド配列の使用を含み、これらのヌクレオチド配列が、所望の免疫反応を誘発するポリペプチドをコードする様々な組み合わせで配置されることは直ちに明らかである。その上、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解する。抗原は生成されて合成されてもよいし、生体試料に由来してもよいし、ポリペプチドに加えてマクロ分子の場合もあることは直ちに明らかである。そのような生体試料には、組織試料、腫瘍試料、細胞または他の生物学的成分を有する流体が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0095】
用語「抗腫瘍効果」は、様々な手段によって明らかにされ得る生物学的効果を指し、それには、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の増加、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存率の低下、またはがん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善が含まれるがこれらに限定されない。「抗腫瘍効果」はまた、第1に腫瘍の発生の予防における本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞及び抗体の能力によって明らかにされ得る。
【0096】
用語「自己」は、任意の材料であって、それが後に個体に再導入されるのと同じ個体に由来するものを指す。
【0097】
用語「同種異系」は、任意の材料であって、同じ種の異なる動物またはその材料が導入される個体とは異なる患者に由来するものを指す。遺伝子が1つ以上の遺伝子座で同一ではない場合、2つ以上の個体は互いに同種異系であると言われる。いくつかの態様において、同じ種の個体由来の同種異系材料は、抗原的に相互作用するのに十分に遺伝学的に異なり得る。
【0098】
用語「異種」は、異なる種の動物に由来する移植片を指す。
【0099】
用語「がん」は、異常細胞の急速且つ制御されない成長によって特徴付けられる疾患を指す。がん細胞は、局所的にまたは血流及びリンパ系を介して身体の他の部分に広がり得る。様々ながんの例は、本明細書に記載されており、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳腫瘍、リンパ腫、白血病、肺癌などを含むがこれらに限定されない。
【0100】
「BCMAの発現に関連する疾患」という成句には、BCMAの発現に関連する疾患またはBCMAを発現する細胞に関連する状態(例えば、がんもしくは悪性腫瘍もしくは前がん状態などの増殖性疾患、またはB細胞発生/免疫グロブリン産生の欠陥(免疫不全)を含む)が含まれるがこれらに限定されない。1つの態様において、がんは、非ホジキンリンパ腫、B細胞白血病、ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、非分泌性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、POEMS症候群/骨硬化性黒色腫、BCMAの発現に関連する非がん関連症状(例えば、自己免疫疾患(例えば、狼瘡、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、大腸炎、I型及びII型クリオグロブリン血症、軽鎖沈着症、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、急性糸球体腎炎、天疱瘡及び類天疱瘡障害、または後天性表皮水疱症)、炎症性障害(アレルギー及び喘息)、及び移植を含むがこれらに限定されない)である。
【0101】
用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含有する抗体または抗体フラグメントの結合特性に大きく影響しないかまたはそれを大きく変化させないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾には、アミノ酸の置換、付加、及び欠失が含まれる。修飾は、当該技術分野で知られている標準的技術、例えば、部位特異的突然変異誘発法及びPCR媒介突然変異誘発法によって本発明の抗体または抗体フラグメントに導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のアミノ酸が含まれる。それ故、本発明のTFP内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えられ得、変更されたTFPは、本明細書に記載の機能アッセイを使用して試験され得る。
【0102】
用語「刺激」は、刺激ドメインまたは刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がその同種リガンドと結合し、それによって、限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達などのシグナル伝達事象を媒介することによって誘導される一次応答を指す。刺激は、所定の分子の変化した発現、及び/または細胞骨格構造の再編成などを媒介し得る。
【0103】
用語「刺激分子」または「刺激ドメイン」は、T細胞のシグナル伝達経路の少なくともある性状についてTCR複合体の一次活性化を刺激的方法で調節する一次細胞質シグナル伝達配列(複数可)を提供するT細胞によって発現される分子またはその一部を指す。1つの態様において、一次シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体が、ペプチドを担持するMHC分子と結合することによって開始され、これが、増殖、活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞反応の媒介につながる。刺激的様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも称される)は、免疫受容体チロシン活性化モチーフまたは「ITAM」として知られるシグナル伝達モチーフを含有し得る。本発明において特に使用される一次細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例には、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」としても知られる)及びCD66dに由来するものが含まれるがこれらに限定されない。
【0104】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、その表面上の主要組織適合複合体(MHC)で複合化された外来抗原を提示するアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞など)などの免疫系細胞を指す。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識し得る。APCは、抗原を処理し、それらをT細胞に提示する。
【0105】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、その用語が本明細書で使用される場合、分子の細胞内部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、TFP含有細胞、例えば、TFP発現T細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。例えば、TFP発現T細胞における免疫エフェクター機能の例には、細胞溶解活性及びTヘルパー細胞活性(サイトカインの分泌を含む)が含まれる。実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。例示的な一次細胞内シグナル伝達ドメインには、一次刺激、または抗原依存性刺激に関与する分子に由来するものが含まれる。実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含み得る。例示的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインには、共刺激シグナル、または抗原非依存性刺激に関与する分子に由来するものが含まれる。
【0106】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAM(「免疫受容体チロシン活性化モチーフ」)を含み得る。一次細胞質シグナル伝達配列を含有するITAMの例には、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、ならびにCD66d DAP10及びDAP12に由来するものが含まれるがこれらに限定されない。
【0107】
用語「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合し、それによって、限定されないが増殖などのT細胞による共刺激反応を媒介する、T細胞上の同種結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫反応に必要とされる、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子には、MHCクラス1分子、BTLA及びTollリガンド受容体、ならびにOX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)及び4-1BB(CD137)が含まれるがこれらに限定されない。共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であり得る。共刺激分子は、以下のタンパク質ファミリーで表され得る:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、及び活性化NK細胞受容体。そのような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、及びCD83に特異的に結合するリガンドなどが含まれる。細胞内シグナル伝達ドメインは、それが由来する分子の細胞内部分全体、もしくは天然細胞内シグナル伝達ドメイン全体、またはそれらの機能的フラグメントを含み得る。用語「4-1BB」は、GenBankアクセッション番号AAA62478.2として提供されたアミノ酸配列、または、非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿など由来の同等の残基を有するTNFRスーパーファミリーのメンバーを指し、「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBankアクセッション番号AAA62478.2のアミノ酸残基214~255、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿など由来の同等の残基として定義される。
【0108】
用語「コードすること」は、定義されたヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNA及びmRNA)または定義されたアミノ酸配列のいずれか及びそれに起因する生物学的特性を有する生物学的プロセスにおいて他のポリマー及びマクロ分子の合成用の鋳型の役割を果たすための遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチドにおけるヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。それ故、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に提供されるコード鎖、及び遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると見なされ得る。
【0109】
別段指定されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重型であり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という成句はまた、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかの型の場合、1つ以上のイントロンを含有し得る程度までイントロンを含み得る。
【0110】
用語「有効量」または「治療有効量」は、本明細書において交換可能に使用され、特定の生物学的または治療上の結果を達成するのに有効な本明細書に記載される化合物、配合物、材料、または組成物の量を指す。
【0111】
用語「内因性」は、有機体、細胞、組織または系に由来するか、またはその内部で産生される任意の材料を指す。
【0112】
用語「外因性」は、有機体、細胞、組織または系から導入されるか、またはその外部で産生される任意の材料を指す。
【0113】
用語「発現」は、プロモーターによって動作される特定のヌクレオチド配列の転写及び/または翻訳を指す。
【0114】
用語「転移ベクター」は、単離された核酸を含み、且つ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る物質の組成物を指す。線状ポリヌクレオチド、イオン性もしくは両親媒性化合物に会合したポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスが含まれるがこれらに限定されない多くのベクターが当該技術分野で知られている。それ故、用語「転移ベクター」には、自己複製プラスミドまたはウイルスが含まれる。その用語はまた、細胞内への核酸の転移を促進する非プラスミド及び非ウイルス性化合物、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどを更に含むことが解釈されるべきである。ウイルス性転移ベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0115】
用語「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に作動可能に連結した発現制御配列を含む組み換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシスエレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現系で供給され得る。発現ベクターには、組み換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸のまたはリポソームに含まれる)及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野で知られている全てのものが含まれる。
【0116】
用語「レンチウイルス」は、レトロウイルス科の属を指す。レンチウイルスは、レトロウイルスの中でも非分裂細胞に感染することができることで独特である;それらは、宿主細胞のDNAに大量の遺伝情報を送達することができるので、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、及びFIVは全てレンチウイルスの例である。
【0117】
用語「レンチウイルスベクター」は、特に、Milone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)に示されるように、自己不活性化レンチウイルスベクターを含むレンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指す。臨床で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例には、例えば、Oxford BioMedicaのLENTIVECTOR(商標)遺伝子導入技術、LentigenのLENTIMAX(商標)ベクターシステムなどが含まれるがこれらに限定されない。非臨床型のレンチウイルスベクターもまた利用可能であり、当業者に知られているであろう。
【0118】
用語「相同」または「同一性」は、2つのポリマー分子間、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子などの2つの核酸分子間、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つの分子の両方のサブユニット部分が同じモノマーサブユニットによって占められている場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占められている場合、そのときはそれらはその位置で相同または同一である。2つの配列間の相同性は、一致または相同位置の数の一次関数であり、例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さ10サブユニットのポリマー中5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10のうちの9)が一致または相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0119】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体及びその抗体フラグメントは、ヒト免疫グロブリン(レシピエントの抗体または抗体フラグメント)であって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置き換えられているものである。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。更に、ヒト化抗体/抗体フラグメントは、レシピエントの抗体にも、取り込まれたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体または抗体フラグメントの性能を更に洗練及び最適化し得る。一般に、ヒト化抗体またはその抗体フラグメントは、少なくとも1つ及び典型的には2つの可変ドメインを実質的に全て含み、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的な部分は、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体または抗体フラグメントはまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含み得る。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525,1986;Reichmann et al.,Nature,332:323-329,1988;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596,1992を参照されたい。
【0120】
「ヒト」または「完全ヒト」は、抗体または抗体フラグメントなどの免疫グロブリンであって、分子全体がヒト起源のものであるか、または抗体もしくは免疫グロブリンのヒト型に対して同一のアミノ酸配列からなるものを指す。
【0121】
用語「単離された」は、自然状態から変更または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは、「単離された」ものではないが、その自然状態の共存物質から部分的にもしくは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離された」ものである。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば、宿主細胞などの非天然環境中に存在し得る。
【0122】
本発明の文脈において、一般に存在する核酸塩基について以下の略語が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0123】
用語「作動可能に連結された」または「転写制御」は、調節配列と異種核酸配列の間の機能的連結を指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は、互いに隣接することができ、例えば、2つのタンパク質のコード領域を結合するために必要な場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0124】
免疫原性組成物の「非経口」投与という用語には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、もしくは胸骨内注射、腫瘍内、または注入技術が含まれる。
【0125】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかのデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)及びそれらのポリマーを指す。特に限定されない限り、その用語は、参照の核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然のヌクレオチドの既知の類似体を含有する核酸を包含する。別段示されない限り、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列だけでなく、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、及び相補的配列も暗黙的を包含する。特に、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって達成され得る(Batze et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0126】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」は、交換可能に使用され、ペプチド結合で共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有していなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限は設けられていない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で使用される場合、その用語は、当該技術分野で一般的に、例えば、ペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも称される短鎖、ならびに当該技術分野で一般に、多くのタイプがあるタンパク質と称される長鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組み換えペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0127】
用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するのに必要とされる、細胞の転写機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列を指す。
【0128】
用語「プロモーター/調節配列」は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結した遺伝性産物の発現に必要とされる核酸配列を指す。いくつかの例において、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の例において、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列及び他の調節エレメントも含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0129】
用語「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、細胞のほとんどまたは全ての生理条件下で、細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0130】
用語「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードまたは特定するポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、実質的に、プロモーターに対応する誘導因子が細胞に存在する場合にのみ、細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0131】
用語「組織特異的」プロモーターは、遺伝子によってコードまたは特定されるポリヌクレオチドと作動可能に連結された場合に、実質的に、細胞がプロモーターに対応する組織型の細胞の場合にのみ、細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0132】
scFvの文脈で使用される用語「リンカー」及び「可動性ポリペプチドリンカー」は、可変重鎖及び可変軽鎖領域を合わせて連結するために単独でまたは組み合わせて使用されるグリシン及び/またはセリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。1つの実施形態において、可動性ポリペプチドリンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser)n(nは1以上の正の整数である)を含む。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9及びn=10。一実施形態において、可動性ポリペプチドリンカーには、(Gly4Ser)4または(Gly4Ser)3が含まれるがこれらに限定されない。別の実施形態において、リンカーには、(Gly2Ser)、(GlySer)または(Gly3Ser)の複数の繰り返しが含まれる。また、本発明の範囲内には、WO2012/138475(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のリンカーが含まれる。いくつかの例において、リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。
【0133】
本明細書で使用される場合、5’キャップ(RNAキャップ、RNA7-メチルグアノシンキャップまたはRNAm7Gキャップとも称される)は、転写開始の直後に真核生物のメッセンジャーRNAの「前」または5’末端に付加された修飾グアニンヌクレオチドである。5’キャップは、最初に転写されたヌクレオチドに連結された末端基からなる。その存在は、リボソームによる認識及びRNアーゼからの保護に重要である。キャップの付加は転写と結び付けられ、各々が他方に影響を与えるように同時転写的に起こる。転写開始の直後、合成されているmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼと会合したキャップ合成複合体によって拘束される。この酵素複合体は、mRNAのキャッピングに必要とされる化学反応を触媒する。合成は、多段階の生化学反応として進行する。キャッピング部分は、mRNAの機能、例えば、その安定性または翻訳の効率を調節するために修飾され得る。
【0134】
本明細書で使用される場合、「インビトロで転写されたRNA」は、インビトロで合成されたRNA、好ましくはmRNAを指す。一般に、インビトロで転写されたRNAは、インビトロ転写ベクターから生成される。インビトロ転写ベクターは、インビトロで転写されたRNAを生成するために使用される鋳型を含む。
【0135】
本明細書で使用される場合、「ポリ(A)」は、ポリアデニル化によってmRNAに結合される一連のアデノシンである。一過性発現用の構築物の好ましい実施形態において、ポリAは、50~5000であり、好ましくは64より多く、より好ましくは100より多く、最も好ましくは300または400より多い。ポリ(A)配列は、局在化、安定性または翻訳の効率などのmRNAの機能を調節するために化学的または酵素的に修飾され得る。
【0136】
本明細書で使用される場合、「ポリアデニル化」は、メッセンジャーRNA分子に対するポリアデニリル部分、またはその修飾変異体の共有結合を指す。真核生物では、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は3’末端でポリアデニル化される。3’ポリ(A)尾部は、酵素であるポリアデニレートポリメラーゼの作用を介してプレmRNAに付加された長い配列のアデニンヌクレオチド(しばしば数百)である。高等真核生物では、ポリ(A)尾部は、特定の配列のポリアデニル化シグナルを含有する転写産物に付加される。ポリ(A)尾部及びそれに結合したタンパク質は、エキソヌクレアーゼによる分解からのmRNAの保護に役立つ。ポリアデニル化はまた、転写の終結、核からのmRNAの取り出し、及び翻訳にとって重要である。ポリアデニル化は、DNAのRNAへの転写の直後、核内で起こるが、後に細胞質内でも更に起こり得る。転写が終結した後、mRNA鎖は、RNAポリメラーゼと会合したエンドヌクレアーゼ複合体の作用を介して切断される。切断部位は、通常、切断部位近傍の塩基配列AAUAAAの存在によって特徴付けられる。mRNAが切断された後、アデノシン残基が切断部位の遊離3’末端に付加される。
【0137】
本明細書で使用される場合、「一過性」は、統合していない導入遺伝子の数時間、数日または数週間の期間の発現を指し、この場合、発現の期間は、ゲノムに統合された場合または宿主細胞における安定なプラスミドレプリコン内に含まれた場合の遺伝子の発現のための期間より短い。
【0138】
用語「シグナル伝達経路」は、細胞の1つの部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達に関与する様々なシグナル伝達分子間の生化学的関係を指す。成句「細胞表面受容体」には、シグナルを受け取り、細胞膜を越えてシグナルを伝達することが可能な分子及び分子の複合体が含まれる。
【0139】
用語「対象」は、免疫反応が誘発され得る生体(例えば、哺乳類、ヒト)を含むことが意図される。
【0140】
用語「実質的に精製された」細胞は、他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。実質的に精製された細胞はまた、その天然に存在する状態では通常会合している他の細胞型から分離された細胞を指す。いくつかの例において、実質的に精製された細胞の集団は、均質な細胞の集団を指す。他の例において、この用語は単に、それらがそれらの天然の状態で自然に会合している細胞から分離された細胞を指す。いくつかの態様において、細胞は、インビトロで培養される。他の態様において、細胞はインビトロでは培養されない。
【0141】
本明細書で使用される用語「療法的」は、治療を意味する。治療効果は、疾患状態の低下、抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0142】
本明細書で使用される用語「予防」は、疾患または疾患状態の防止またはそれらのための保護的治療を意味する。
【0143】
本発明の文脈において、「腫瘍抗原」または「過剰増殖性障害抗原」または「過剰増殖性障害に関連する抗原」は、特定の過剰増殖性障害に共通の抗原を指す。所定の態様において、本発明の過剰増殖性障害抗原は、原発性または転移性黒色腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、NHL、白血病、子宮癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎臓癌及び腺癌、例えば、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌などを含むがこれらに限定されないがんに由来する。
【0144】
用語「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性の核酸でトランスフェクトされた、形質転換されたまたは形質導入されたものである。細胞は初代対象細胞及びその後代を含む。
【0145】
用語「特異的に結合する」は、試料中に存在する同種結合パートナー(例えば、BCMA)を認識し、それに結合するが、必ずしも実質的に試料中の他の分子を認識しないしそれに結合もしない抗体、抗体フラグメントまたは特定のリガンドを指す。
【0146】
範囲:本開示を通して、本発明の様々な態様は、範囲の形式で示され得る。範囲の形式での記述は、便宜及び簡潔さのためのものにすぎず、本発明の範囲に対する不動の制限と解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、具体的に開示された全ての可能な部分的範囲を有すると見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのように具体的に開示される部分的範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6を有すると見なされるべきである。別の例として、95~99%の同一性などの範囲は、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するものを含み、且つ、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%及び98~99%の同一性などの部分的範囲を含む。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0147】
詳細な説明
T細胞受容体(TCR)融合タンパク質を使用するがんなどの疾患の治療のための物質の組成物及び使用方法が本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「T細胞受容体(TCR)融合タンパク質」または「TFP」は、概して、i)標的細胞上の表面抗原に結合すること、及びii)典型的にはT細胞内またはその表面上で共に配置された場合に、無傷のTCR複合体の他のポリペプチド成分と相互作用することが可能なTCRを含む様々なポリペプチドに由来する組み換えポリペプチドを含む。本明細書で提供されるように、TFPは、キメラ抗原受容体と比較して、かなりの利益を提供する。用語「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」は、scFvの形態で細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び以下に定義される刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも称される)を含む組み換えポリペプチドを指す。一般に、CARの中心細胞内シグナル伝達ドメインは、通常TCR複合体と会合して見出されるCD3ゼータ鎖に由来する。CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27及び/またはCD28などの少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインと融合され得る。
【0148】
T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)
本発明は、TFPをコードする組み換えDNA構築物であって、そのTFPが、BCMA、例えば、ヒトBCMAに特異的に結合する抗体フラグメントを含み、その抗体フラグメントの配列が、TCRサブユニットまたはその一部をコードする核酸配列と隣接し、且つそれと同じリーディングフレーム内にある、組み換えDNA構築物を包含する。本明細書で提供されるTFPは、機能的TCR複合体を形成するために、1つ以上の内因性(または代替的に、1つ以上の外因性、もしくは内因性及び外因性の組み合わせ)TCRサブユニットと会合することが可能である。
【0149】
1つの態様において、本発明のTFPは、他に抗原結合ドメインと称される標的特異的結合因子を含む。部分の選択は、標的細胞の表面を決定する標的抗原の種類と数に依存する。例えば、抗原結合ドメインは、特定の疾患状態と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用する標的抗原を認識するように選択され得る。それ故、本発明のTFPにおける抗原結合ドメインについての標的抗原として作用し得る細胞表面マーカーの例には、ウイルス、細菌及び寄生虫感染症;自己免疫疾患;ならびにがん性疾患(例えば、悪性疾患)に関連するものが含まれる。
【0150】
1つの態様において、TFP媒介T細胞反応は、所望の抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインをTFPに操作することによって目的の抗原に向けられ得る。
【0151】
1つの態様において、抗原結合ドメインを含むTFPの部分は、BCMAを標的とする抗原結合ドメインを含む。1つの態様において、抗原結合ドメインは、ヒトBCMAを標的とする。
【0152】
抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、及びそれらの機能的フラグメント(単一ドメイン抗体、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)及びラクダ科由来ナノボディの可変ドメイン(VHH)、ならびに抗原結合ドメインとして機能することが当該技術分野で知られる代替骨格、例えば、組み換えフィブロネクチンドメイン、アンチカリン、DARPINなどが含まれるがこれらに限定されない)を含むがこれらに限定されない抗原に結合する任意のドメインであり得る。同様に、標的抗原を特異的に認識し、結合する天然または合成リガンドが、TFPのための抗原結合ドメインとして使用され得る。いくつかの例において、抗原結合ドメインは、TFPが最終的に使用されるのと同じ種由来であることが有益である。例えば、ヒトでの使用については、TFPの抗原結合ドメインが、抗体または抗体フラグメントの抗原結合ドメインのためのヒトまたはヒト化残基を含むことが有益であり得る。
【0153】
それ故、1つの態様において、抗原結合ドメインは、ヒト化もしくはヒト抗体もしくは抗体フラグメント、またはマウス抗体もしくは抗体フラグメントを含む。1つの実施形態において、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインは、本明細書に記載のヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、及び軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1つ以上(例えば、3つ全て)、及び/または本明細書に記載のヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つ以上(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインは、1つ以上、例えば、3つ全てのLC CDR及び1つ以上、例えば、3つ全てのHC CDRを含む。1つの実施形態において、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインは、本明細書に記載のヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、及び重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つ以上(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインは、2つの可変重鎖領域を有し、各々が本明細書に記載のHC CDR1、HC CDR2及びHC CDR3を含む。1つの実施形態において、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインは、本明細書に記載のヒト化またはヒト軽鎖可変領域及び/または本明細書に記載のヒト化またはヒト重鎖可変領域を含む。1つの実施形態において、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインは、本明細書に記載のヒト化重鎖可変領域、例えば、少なくとも2つの本明細書に記載のヒト化またはヒト重鎖可変領域を含む。1つの実施形態において、抗BCMA結合ドメインは、本明細書で提供されるアミノ酸配列の軽鎖及び重鎖を含むscFvである。実施形態において、抗BCMA結合ドメイン(例えば、scFvまたはVHHnb)は、本明細書で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾(例えば、置換)から最大30、20または10までの修飾(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供されるアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;及び/または本明細書で提供される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つまたは3つの修飾(例えば、置換)から最大30、20または10までの修飾(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供されるアミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。1つの実施形態において、ヒト化またはヒト抗BCMA結合ドメインはscFVであり、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、リンカー、例えば、本明細書に記載のリンカーを介して、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に結合される。1つの実施形態において、ヒト化抗BCMA結合ドメインは、(Gly4-Ser)nリンカー(nは1、2、3、4、5、または6、好ましくは3または4である)を含む。scFVの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域は、例えば、次の配置:軽鎖可変領域-リンカー重鎖可変領域または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域のいずれかであり得る。いくつかの例において、リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。
【0154】
いくつかの態様において、非ヒト抗体はヒト化され、その抗体の特定の配列または領域は、ヒトにおいて自然に産生される抗体またはそのフラグメントとの類似性を増加させるように修飾される。1つの態様において、抗原結合ドメインはヒト化される。
【0155】
ヒト化抗体は、CDR移植(例えば、欧州特許第EP239,400号、国際公開第WO91/09967号、ならびに米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、及び第5,585,089号(これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、ベニアリングまたはリサーフェーシング(例えば、欧州特許第EP592,106号及び第EP519,596号、Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489-498、Studnicka et al.,1994,Protein Engineering,7(6):805-814及びRoguska et al.,1994,PNAS,91:969-973(これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、鎖シャフリング(例えば、米国特許第5,565,332号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)、及び例えば、米国特許出願公開第20050042664号、米国特許出願公開第20050048617号、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開第WO9317105号、Tan et al.,J.Immunol.,169:1119-25(2002),Caldas et al.,Protein Eng.,13(5):353-60(2000),Morea et al.,Methods,20(3):267-79(2000),Baca et al.,J.Biol.Chem.,272(16):10678-84(1997),Roguska et al.,Protein Eng.,9(10):895-904(1996),Couto et al.,Cancer Res.,55(23 Supp):5973s-5977s(1995),Couto et al.,Cancer Res.,55(8):1717-22(1995),Sandhu J S,Gene,150(2):409-10(1994),及びPedersen et al.,J.Mol.Biol.,235(3):959-73(1994)(これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている技術を含むがこれらに限定されない当該技術分野で知られている様々な技術を使用して生成され得る。しばしば、フレームワーク領域内のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換されて抗原結合を変更、例えば、改善する。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野でよく知られている方法によって、例えば、CDR及びフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって特定されて、抗原結合及び配列比較に重要なフレームワーク残基を特定し、特定の位置で他とは異なるフレームワーク残基を特定する(例えば、Queen et al.,米国特許第5,585,089号;及びRiechmann et al.,1988,Nature,332:323(これらはそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0156】
ヒト化抗体または抗体フラグメントは、非ヒトの起源由来のそれに残る1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「取り込み」可変ドメインから取り出される「取り込み」残基と称される。本明細書で提供される場合、ヒト化抗体または抗体フラグメントは、非ヒト免疫グロブリン分子及びフレームワーク領域由来の1つ以上のCDRを含み、フレームワークを構成するアミノ酸残基は、完全にまたは大部分がヒト生殖細胞系に由来する。抗体または抗体フラグメントのヒト化のための多数の技術が当該技術分野でよく知られており、Winter及び同僚(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988))の方法に従って、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることによって、すなわち、CDR移植で本質的に実施され得る(EP239,400;PCT公開第WO91/09967号;及び米国特許第4,816,567号;第6,331,415号;第5,225,539号;第5,530,101号;第5,585,089号;第6,548,640号(これらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。そのようなヒト化抗体及び抗体フラグメントにおいて、非ヒト種由来の対応する配列による置換は、無傷のヒト可変ドメインよりかなり少ない。ヒト化抗体はしばしば、いくつかのCDR残基及び場合によりいくつかのフレームワーク(FR)残基がげっ歯類抗体における類似部位由来の残基によって置換されているヒト抗体である。抗体及び抗体フラグメントのヒト化はまた、ベニアリングもしくはリサーフェーシング(EP592,106;EP519,596;Padlan,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489-498;Studnicka et al.,Protein Engineering,7(6):805-814(1994);及びRoguska et al.,PNAS,91:969-973(1994))または鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)(これらの内容はそれらの全体が参照により本明書に組み込まれる)によって達成され得る。
【0157】
ヒト化抗体の作製に使用される軽及び重の両方のヒト可変ドメインの選択は抗原性を低下させることである。いわゆる「最良適合」法によれば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリに対してスクリーニングされる。げっ歯類のものに最も近いヒト配列は、次いでヒト化抗体用のヒトフレームワーク(FR)として認められる(Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987)(これらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定の亜群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用され得る(例えば、Nicholson et al.Mol.Immun.34(16-17):1157-1165(1997);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)(これらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域のフレームワーク領域、例えば、4つの全てのフレームワーク領域は、VH4-4-59生殖細胞系列配列に由来する。1つの実施形態において、フレームワーク領域は、例えば、対応するマウス配列におけるアミノ酸から、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの修飾、例えば、置換を含み得る。1つの実施形態において、フレームワーク領域、例えば、軽鎖可変領域の4つの全てのフレームワーク領域は、VK3-1.25生殖細胞系列配列に由来する。1つの実施形態において、フレームワーク領域は、例えば、対応するマウス配列におけるアミノ酸から、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの修飾、例えば、置換を含み得る。
【0158】
いくつかの態様において、抗体フラグメントを含む本発明のTFP組成物の部分は、標的抗原に対する高い親和性及び他の有益な生物学的特性を保持しながらヒト化される。本発明の一態様によれば、ヒト化抗体及び抗体フラグメントは、親及びヒト化配列の3次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析のプロセスによって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。コンピュータプログラムが利用可能であり、これは、選択された候補の免疫グロブリン配列の推定される3次元立体配座構造を説明及び表示する。これらの表示の調査は、候補の免疫グロブリン配列の機能性における残基の可能性のある役割の分析、例えば、候補の免疫グロブリンが標的抗原を結合させる能力に影響を与える残基の分析を可能にする。このように、FR残基は、所望の抗体または抗体フラグメントの特性、例えば、標的抗原に対する親和性の増加が達成されるように、レシピエント及び取り込み配列から選択され、組み合わされ得る。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接且つ最も実質的に関与している。
【0159】
ヒト化抗体または抗体フラグメントは、元の抗体と同様の抗原特異性、例えば、本発明では、ヒトBCMAに結合する能力を保持し得る。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体または抗体フラグメントは、ヒトBCMAに対する結合の親和性及び/または特異性を改善した場合がある。
【0160】
1つの態様において、抗BCMA結合ドメインは、抗体または抗体フラグメントの特定の機能的特徴または特性によって特徴付けられる。例えば、1つの態様において、抗原結合ドメインを含む本発明のTFP組成物の部分は、ヒトBCMAに特異的に結合する。1つの態様において、本発明は、抗体または抗体フラグメント(例えば、VHH)を含む抗原結合ドメインに関し、その抗体結合ドメインは、BCMAタンパク質またはそのフラグメントに特異的に結合し、その抗体または抗体フラグメントは、本明細書で提供されるアミノ酸配列を含む可変軽鎖及び/または可変重鎖を含む。所定の態様において、scFvは、リーダー配列に隣接し、且つそれと同じリーディングフレーム内にある。
【0161】
1つの態様において、抗BCMA結合ドメインは、フラグメント、例えば、一本鎖可変フラグメント(scFv)またはラクダ科重鎖(VHH)である。1つの態様において、抗BCMA結合ドメインは、Fv、Fab、(Fab’)2、または2官能性(例えば、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol.17,105(1987))である。1つの態様において、本発明の抗体及びそのフラグメントは、野生型または向上した親和性を有するBCMAタンパク質に結合する。
【0162】
標的抗原(例えば、BCMAまたは融合部分結合ドメインの標的について本明細書の他の箇所に記載される任意の標的抗原)に特異的な抗体抗原結合ドメインを得るための方法も本明細書で提供され、その方法は、本明細書に記載のVH(またはVHH)ドメインのアミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、置換または挿入によってVHドメインのアミノ酸配列の変異体であるVHドメインを提供すること、そのように提供されたVHドメインを1つ以上のVLドメインと任意に組み合わせること、及びVHドメインまたはVH/VL組み合わせ(複数可)を試験して、特異的結合メンバーまたは目的の標的抗原(例えば、BCMA)に特異的で任意に1つ以上の所望の特性を有する抗体抗原結合ドメインを特定することを含む。
【0163】
いくつかの例において、VHドメイン及びscFvは、当該技術分野で知られている方法に従って調製され得る(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)。scFv分子は、VH及びVL領域を、可動性ポリペプチドリンカーを使用して互いに連結させることによって産生され得る。scFv分子は、最適化された長さ及び/またはアミノ酸組成を有するリンカー(例えば、Ser-Glyリンカー)を含む。リンカーの長さは、scFvの可変領域の折りたたみ方及び相互作用のし方に大きく影響し得る。実際、短いポリペプチドリンカーが用いられる場合(例えば、5~10個のアミノ酸)、鎖内の折りたたみが防止される。鎖間の折りたたみもまた、2つの可変領域を一緒にして機能的エピトープ結合部位を形成するために必要とされる。いくつかの例において、リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。リンカーの配置及びサイズの例については、例えば、参照により本明細書に組み込まれるHollinger et al.1993 Proc Natl Acad.Sci.U.S.A.90:6444-6448,米国特許出願公開第20050100543号及び第20050175606号、米国特許第7,695,936号、ならびにPCT公開第WO2006/020258号及び第WO2007/024715号を参照されたい。
【0164】
scFvは、そのVL及びVH領域間に約10、11、12、13、14、15または15を超える残基のリンカーを含み得る。リンカー配列は、任意の天然に存在するアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、アミノ酸のグリシン及びセリンを含む。別の実施形態において、リンカー配列は、(Gly4Ser)n(nは1以上の正の整数である)などのグリシン及びセリンの繰り返しの組を含む。1つの実施形態において、リンカーは、(Gly4Ser)4または(Gly4Ser)3であり得る。リンカーの長さの変動は、活性を保持または向上させ得、活性研究における優れた効力を生じさせる。いくつかの例において、リンカー配列は、長いリンカー(LL)配列を含む。いくつかの例において、長いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=2~4)を含む。いくつかの例において、リンカー配列は、短いリンカー(SL)配列を含む。いくつかの例において、短いリンカー配列は、(G4S)n(式中、n=1~3)を含む。
【0165】
安定性及び変異
抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFv分子(例えば、可溶性scFv)の安定性は、従来の対照scFv分子または完全長抗体の生物物理学的特性(例えば、熱安定性)に関して評価され得る。1つの実施形態において、ヒト化またはヒトscFvは、記載されたアッセイにおいて、親のscFvより、約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10セルシウス度、約11セルシウス度、約12セルシウス度、約13セルシウス度、約14セルシウス度、または約15セルシウス度よりも高い熱安定性を有する。
【0166】
抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFvの熱安定性の改善は、続いてBCMA-TFP構築物全体にもたらされ、抗BCMA TFP構築物の治療特性の改善につながる。抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFvの熱安定性は、従来の抗体と比較して少なくとも約2℃または3℃改善され得る。1つの実施形態において、抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して1℃改善された熱安定性を有する。別の実施形態において、抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFvは、従来の抗体と比較して2℃改善された熱安定性を有する。別の実施形態において、scFvは、従来の抗体と比較して4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃、10℃、11℃、12℃、13℃、14℃、または15℃改善された熱安定性を有する。比較は、例えば、本明細書に開示されるscFv分子と、そのscFvのVH及びVLが由来した抗体のscFv分子またはFabフラグメントとの間でなされ得る。熱安定性は、当該技術分野で知られている方法を使用して測定され得る。例えば、1つの実施形態において、TMが測定され得る。TMを測定するための方法及びタンパク質安定性を決定する他の方法が以下に記載されている。
【0167】
scFvにおける変異(可溶性scFvのヒト化または変異誘発を介して生じる)は、scFvの安定性を変化させ、scFv及び抗BCMA TFP構築物の全体的な安定性を改善する。ヒト化scFvの安定性は、TM、温度変性及び温度凝集などの測定結果を使用してマウスscFvに対して比較される。1つの実施形態において、抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFvは、変異したscFvが抗BCMA TFP構築物に改善した安定性を付与するように、ヒト化プロセスから生じる少なくとも1つの変異を含む。別の実施形態において、BCMA結合ドメイン、例えば、scFvは、変異したscFvがBCMA-TFP構築物に改善した安定性を付与するように、ヒト化プロセスから生じる少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の変異を含む。
【0168】
1つの態様において、TFPの抗原結合ドメインは、本明細書に記載の抗原結合ドメインのアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含み、抗原結合ドメインは、本明細書に記載の抗BCMA抗体フラグメントの所望の機能特性を保持する。1つの特定の態様において、本発明のTFP組成物は抗体フラグメントを含む。更なる態様において、その抗体フラグメントはscFvを含む。
【0169】
様々な態様において、TFPの抗原結合ドメインは、一方または両方の可変領域(例えば、VH及び/またはVL)内、例えば、1つ以上のCDR領域内及び/または1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上のアミノ酸を修飾することによって改変される。1つの特定の態様において、本発明のTFP組成物は抗体フラグメントを含む。更なる態様において、その抗体フラグメントはscFvを含む。
【0170】
当業者は、本発明の抗体または抗体フラグメントが、それらがアミノ酸配列の点では変わる(例えば、野生型から)が、所望の活性の点では変わらないように更に修飾され得ることを理解する。例えば、「非必須」アミノ酸残基でアミノ酸置換をもたらす追加のヌクレオチド置換がタンパク質に施され得る。例えば、分子内の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えられ得る。別の実施形態において、一連のアミノ酸を、側鎖ファミリーのメンバーの順序及び/または組成が異なる構造的に同様の一連のもので置き換えることができ、例えば、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる保存的置換が行われ得る。
【0171】
同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0172】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において同一性率は、同じである2つ以上の配列を指す。2つの配列が、比較ウィンドウ、または以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用してもしくはマニュアルアラインメント及び目視調査によって測定される指定された領域にわたって最大一致のために比較及び整列された場合、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドを特定の割合有する場合は2つの配列は「実質的に同一」である(例えば、特定の領域にわたって、または特定されていない場合、全配列にわたって60%同一、任意に70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一)。任意に、同一性は、少なくとも長さ約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)の領域にわたって、またはより好ましくは、長さ100~500もしくは1000以上のヌクレオチド(または20、50、200もしくはそれ以上のアミノ酸)の領域にわたって存在する。
【0173】
配列比較については、典型的には、1つの配列が参照配列の役割を果たし、これに対して試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータが使用され得るか、または別のパラメータが指定され得る。次いで配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性率を計算する。比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith and Waterman,(1970)Adv.Appl.Math.2:482cの局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch,(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似方法の検索によって、これらアルゴリズムのコンピュータによる実施(GAP,BESTFIT,FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.)によって、または、マニュアルアラインメント及び目視調査(例えば、Brent et al.,(2003)Current Protocols in Molecular Biologyを参照されたい)によって行われ得る。配列同一性及び配列類似性率を決定するのに好適なアルゴリズムの2つの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.,(1977)Nuc.Acids Res.25:3389-3402;及びAltschul et al.,(1990)J.Mol.Biol.215:403-410に記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationにより公共に利用可能である。
【0174】
1つの態様において、本発明は、機能的に等価な分子を生成する出発抗体またはフラグメント(例えば、scFv)のアミノ酸配列の修飾を企図する。例えば、TFPに含まれる抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFVのVHまたはVLは、抗BCMA結合ドメイン、例えば、scFvの出発VHまたはVLフレームワーク領域の少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を保持するように修飾され得る。本発明は、機能的に等価な分子を生成するために、TFP構築物全体の修飾、例えば、TFP構築物の様々なドメインの1つ以上のアミノ酸配列における修飾を企図する。TFP構築物は、出発TFP構築物の少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を保持するように修飾され得る。
【0175】
細胞外ドメイン
細胞外ドメインは、天然または組み換え起源のいずれかに由来し得る。起源が天然である場合、ドメインは、膜結合または膜貫通タンパク質以外の任意のタンパク質に由来し得る。1つの態様において、細胞外ドメインは、膜貫通ドメインと会合することが可能である。本発明における特定の用途の細胞外ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、またはCD3イプシロン、CD3ガンマ、もしくはCD3デルタ、または代替的な実施形態において、CD28、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の少なくとも細胞外領域(複数可)を含み得る。
【0176】
膜貫通ドメイン
一般に、TFP配列は、単一のゲノム配列によってコードされる細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含有する。代替的な実施形態において、TFPは、TFPの細胞外ドメインに対して異種の膜貫通ドメインを含むように設計され得る。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接した1つ以上の追加のアミノ酸、例えば、膜貫通が由来したタンパク質の細胞外領域と会合する1つ以上のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または最大15のアミノ酸)及び/または膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域と会合する1つ以上の追加のアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または最大15のアミノ酸)を含み得る。1つの態様において、膜貫通ドメインは、TFPの他のドメインの1つと会合するものが使用される。いくつかの例において、膜貫通ドメインは、そのようなドメインが同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを回避するように、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするように選択され得るかまたはアミノ酸置換によって修飾され得る。1つの態様において、膜貫通ドメインは、TFP-T細胞表面上の別のTFPとホモ二量化することが可能である。異なる態様において、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、同じTFPに存在する天然の結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小にするように修飾または置換され得る。
【0177】
膜貫通ドメインは、天然または組み換え起源のいずれかに由来し得る。起源が天然の場合、ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得る。1つの態様において、膜貫通ドメインは、TFPが標的に結合した場合はいつでも、細胞内ドメイン(複数可)にシグナル伝達することが可能である。本発明において、特定の用途の膜貫通ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の少なくとも膜貫通領域(複数可)を含み得る。
【0178】
いくつかの例において、膜貫通ドメインは、TFPの細胞外領域、例えば、TFPの抗原結合ドメインに、ヒンジ、例えば、ヒトタンパク質由来のヒンジを介して結合され得る。例えば、1つの実施形態において、ヒンジは、ヒト免疫グロブリン(Ig)ヒンジ、例えば、IgG4ヒンジ、またはCD8aヒンジであり得る。
【0179】
リンカー
任意に、長さ2~10アミノ酸の短いオリゴまたはポリペプチドリンカーは、TFPの膜貫通ドメインと細胞質領域と間の連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレットは、特に好適なリンカーを提供する。例えば、1つの態様において、リンカーはGGGGSGGGGS(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGTGGCGGAGGTTCTGGAGGTGGAGGTTCC(配列番号4)のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0180】
細胞質ドメイン
TFPの細胞質ドメインは、TFPがCD3ガンマ、デルタまたはイプシロンポリペプチドを含有する場合、細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る;TCRアルファ及びTCRベータサブユニットは一般に、シグナル伝達ドメインを欠いている。細胞内シグナル伝達ドメインは一般に、TFPが導入された免疫細胞の標準的エフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊な機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。それ故、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能のシグナルを伝達し、細胞に特殊な機能を行うように指示するタンパク質の部分を指す。通常は細胞内シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される限りにおいて、そのような切断部分は、それがエフェクター機能のシグナルを伝達する限り、無傷の鎖の代わりに使用され得る。それ故、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能のシグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことが意図されている。
【0181】
本発明のTFPに使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例には、抗原受容体係合後にシグナル伝達を開始するために同時に作用するT細胞受容体(TCR)及び共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変異体及び同じ機能を有する任意の組み換え配列が含まれる。
【0182】
TCRのみを介して生成されるシグナルは、ナイーブT細胞の完全な活性化には不十分であること、及び二次及び/または共刺激シグナルが必要であることが知られている。それ故、ナイーブT細胞の活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを介して抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)及び抗原非依存性様式で作用して二次または共刺激シグナルを提供するもの(二次細胞質ドメイン、例えば、共刺激ドメイン)によって媒介されると言える。
【0183】
一次シグナル伝達ドメインは、刺激的方法、または抑制的方法のいずれかでTCR複合体の一次活性化を調節する。刺激的手法で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)として知られるシグナル伝達モチーフを含有し得る。
【0184】
本発明において特に使用される一次細胞内シグナル伝達ドメインを含有するITAMの例には、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dのものが含まれる。1つの実施形態において、本発明のTFPは、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3イプシロンの一次シグナル伝達ドメインを含む。1つの実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMドメイン、例えば、天然のITAMドメインと比較して変化した(例えば、増加または減少した)活性を有する変異したITAMドメインを含む。1つの実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化された及び/または切断されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多いITAMモチーフを含む。
【0185】
TFPの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータシグナル伝達ドメインをそれだけで含み得るか、または本発明のTFPとの関連で有用な任意の他の所望の細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)と組み合わされ得る。例えば、TFPの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3イプシロン鎖部分及び共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むTFPの部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な反応に必要とされる抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例には、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83に特異的に結合するリガンドなどが含まれる。例えば、CD27の共刺激は、インビトロでのヒトTFP-T細胞の増殖、エフェクター機能、及び生存率を向上させることが実証されており、インビボでのヒトT細胞の持続及び抗腫瘍活性を増大させる(Song et al.Blood.2012;119(3):696-706)。
【0186】
本発明のTFPの細胞質部分内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムまたは特定の順序で互いに連結され得る。任意に、例えば、長さ2~10アミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸)の短いオリゴまたはポリペプチドリンカーは、細胞内シグナル伝達配列間の連結を形成し得る。
【0187】
1つの実施形態において、グリシン-セリンダブレットが好適なリンカーとして使用され得る。1つの実施形態において、単一のアミノ酸、例えば、アラニン、グリシンが好適なリンカーとして使用され得る。
【0188】
1つの態様において、本明細書に記載のTFP発現細胞は、第2のTFP、例えば、同じ標的(BCMA)または異なる標的(例えば、CD123)に対する異なる抗原結合ドメインを含む第2のTFPを更に含み得る。1つの実施形態において、TFP発現細胞が2つ以上の異なるTFPを含む場合、異なるTFPの抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインが互いに相互作用しないようなものであり得る。例えば、第1及び第2のTFPを発現する細胞は、例えば、第2のTFPの抗原結合ドメインと会合しないフラグメント、例えば、scFvとして第1のTFPの抗原結合ドメインを有し得、例えば、第2のTFPの抗原結合ドメインはVHHである。
【0189】
別の態様において、本明細書に記載のTFP発現細胞は、別の作用物質、例えば、TFP発現細胞の活性を向上させる作用物質を更に発現し得る。例えば、1つの実施形態において、作用物質は、抑制分子を阻害する作用物質であり得る。抑制分子、例えば、PD1は、いくつかの実施形態において、TFP発現細胞が免疫エフェクター反応を開始する能力を低下させ得る。抑制分子の例には、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及びTGFRベータが含まれる。1つの実施形態において、抑制分子を阻害する作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、陽性シグナルを細胞に提供する第2のポリペプチド、例えば、本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインに会合した抑制分子を含む。1つの実施形態において、作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、PD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4及びTIGIT、またはこれらのいずれかのフラグメント(例えば、これらのいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)などの抑制分子のもの、ならびに本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、4-1BB、CD27またはCD28、例えば、本明細書に記載のもの)及び/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載のCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む)である第2のポリペプチドを含む。1つの実施形態において、作用物質は、PD1の第1のポリペプチドまたはそのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)、及び本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインの第2のポリペプチド(例えば、本明細書に記載のCD28シグナル伝達ドメイン及び/または本明細書に記載のCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む。PD1は、CD28、CTLA-4、ICOS、及びBTLAも含む受容体のCD28ファミリーの抑制性メンバーである。PD-1は、活性化したB細胞、T細胞及び骨髄細胞上で発現される(Agata et al.1996 Int.Immunol 8:765-75)。PD1に対する2つのリガンド、すなわち、PD-L1及びPD-L2が、PD1への結合時、T細胞の活性化を下方制御することが示されている(Freeman et al.2000 J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al.2001 Nat Immunol 2:261-8;Carter et al.2002 Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1は、ヒトのがんにおいて豊富である(Dong et al.2003 J Mol Med 81:281-7;Blank et al.2005 Cancer Immunol.Immunother 54:307-314;Konishi et al.2004 Clin Cancer Res 10:5094)。免疫抑制は、PD1とPD-L1の局所的相互作用を阻害することによって覆され得る。
【0190】
1つの実施形態において、作用物質は、抑制分子の細胞外ドメイン(ECD)を含み、例えば、プログラム死1(PD1)は、膜貫通ドメインならびに任意に細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、41BB及びCD3ゼータと融合され得る(本明細書ではPD1 TFPとも称される)。1つの実施形態において、PD1 TFPは、本明細書に記載の抗BCMA TFPと組み合わせて使用される場合、T細胞の持続性を向上させる。1つの実施形態において、TFPは、PD 1の細胞外ドメインを含むPD1 TFPである。代替的には、プログラム死-リガンド1(PD-L1)またはプログラム死-リガンド2(PD-L2)に特異的に結合するscFvなどの抗体または抗体フラグメントを含有するTFPが提供される。
【0191】
別の態様において、本発明は、TFP発現T細胞、例えば、TFP-T細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態において、TFP発現T細胞の集団は、異なるTFPを発現する細胞の混合物を含む。例えば、1つの実施形態において、TFP-T細胞の集団は、本明細書に記載の抗BCMA結合ドメインを有するTFPを発現する第1の細胞、及び異なる抗BCMA結合ドメイン、例えば、第1の細胞によって発現されるTFP内の抗BCMA結合ドメインとは異なる本明細書に記載の抗BCMA結合ドメインを有するTFPを発現する第2の細胞を含み得る。別の例として、TFP発現細胞の集団は、例えば、本明細書に記載の抗BCMA結合ドメインを含むTFPを発現する第1の細胞、及びBCMA以外の標的(例えば、別の腫瘍関連抗原)に対する抗原結合ドメインを含むTFPを発現する第2の細胞を含み得る。
【0192】
別の態様において、本発明は、細胞の集団であって、その集団内の少なくとも1つの細胞が、本明細書に記載の抗BCMA結合ドメインを有するTFPを発現し、第2の細胞が、別の作用物質、例えば、TFP発現細胞の活性を向上させる作用物質を発現する、細胞の集団を提供する。例えば、1つの実施形態において、作用物質は、抑制分子を抑制する作用物質であり得る。抑制分子は、例えば、いくつかの実施形態において、TFP発現細胞が免疫エフェクター反応を開始する能力を低下させ得る。抑制分子の例には、PD1、PD-L1、PD-L2、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及びTGFRベータが含まれる。1つの実施形態において、抑制分子を阻害する作用物質は、第1のポリペプチド、例えば、陽性シグナルを細胞に提供する第2のポリペプチド、例えば、本明細書に記載の細胞内シグナル伝達ドメインに会合した抑制分子を含む。
【0193】
TFPをコードするインビトロで転写されたRNAを産生するための方法が本明細書で開示される。本発明はまた、細胞に直接トランスフェクトすることができるTFPをコードするRNA構築物を含む。トランスフェクションで使用するためのmRNAを生成するための方法は、特別に設計されたプライマーでの鋳型のインビトロ転写(IVT)に続いてポリAの付加を含み、3’及び5’非翻訳配列(「UTR」)、5’キャップ及び/または内部リボソーム進入部位(IRES)、発現される核酸、及び典型的には50~2000塩基の長さのポリA尾部を含有する構築物を産生し得る。このように産生されたRNAは、異なる種類の細胞を効率的にトランスフェクトすることができる。1つの態様において、鋳型はTFPのための配列を含む。
【0194】
1つの態様において、抗BCMA TFPは、メッセンジャーRNA(mRNA)によってコードされる。1つの態様において、抗BCMA TFPをコードするmRNAは、TFP-T細胞の産生のため、T細胞に導入される。1つの実施形態において、インビトロで転写されたRNA TFPは、一過性トランスフェクションの形態として細胞に導入され得る。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成される鋳型を使用するインビトロ転写によって産生される。任意の起源由来の目的のDNAは、適切なプライマー及びRNAポリメラーゼを使用してPCRによってインビトロmRNA合成用の鋳型に直接変換され得る。DNAの起源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列、または任意の他の適切なDNA起源であり得る。インビトロ転写用の所望の鋳型は、本発明のTFPである。1つの実施形態において、PCRに使用されるDNAは、オープンリーディングフレームを含有する。DNAは、有機体のゲノム由来の天然に存在するDNA配列由来であり得る。1つの実施形態において、核酸は、5’及び/または3’非翻訳領域(UTR)の一部または全部を含み得る。核酸はエキソン及びイントロンを含み得る。1つの実施形態において、PCRに使用されるDNAは、ヒト核酸配列である。別の実施形態において、PCRに使用されるDNAは、5’及び3’UTRを含むヒト核酸配列である。DNAは、代替的に、天然に存在する有機体で通常発現されない人工DNA配列であり得る。例示的な人工DNA配列は、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成するために合わせて連結される遺伝子の部分を含有するものである。一緒に結合されるDNAの部分は、単一の有機体由来または複数の有機体由来であり得る。
【0195】
PCRは、トランスフェクションに使用されるmRNAのインビトロ転写用の鋳型を生成するために使用される。PCRを実施するための方法は、当該技術分野でよく知られている。PCRで使用するためのプライマーは、PCR用の鋳型として使用されるDNAの領域に実質的に相補的な領域を有するように設計される。本明細書で使用される「実質的に相補的」とは、プライマー配列における塩基の大部分または全てが相補的であるか、または1つ以上の塩基が非相補的、もしくは不一致であるヌクレオチドの配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRに使用されるアニーリング条件下で、アニーリングまたは意図されるDNA標的とのハイブリッド形成が可能である。プライマーは、DNA鋳型の任意の部分に対して実質的に相補的になるように設計され得る。例えば、プライマーは、5’及び3’UTRを含む、細胞内で通常転写される核酸の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計され得る。プライマーはまた、目的の特定のドメインをコードする核酸の部分を増幅するように設計され得る。1つの実施形態において、プライマーは、5’及び3’UTRの全てまたは一部を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当該技術分野でよく知られている合成方法によって生成され得る。「フォワードプライマー」は、増幅されるDNA配列の上流のDNA鋳型上のヌクレオチドに対して実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「上流」は、コード鎖に関して増幅されるDNA配列に対する5の位置を指すために本明細書で使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるDNA配列の下流の二本鎖DNA鋳型に対して実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「下流」は、コード鎖に関して増幅されるDNA配列に対する3’の位置を指すために本明細書で使用される。
【0196】
PCRに有用な任意のDNAポリメラーゼは、本明細書に開示される方法で使用され得る。試薬及びポリメラーゼは、多数の供給源から商業的に利用可能である。
【0197】
安定性及び/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用され得る。RNAは好ましくは5’及び3’UTRを有する。1つの実施形態において、5’UTRは、1~3000ヌクレオチドの長さである。コード領域に付加される5’及び3’UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニーリングするPCR用のプライマーを設計することを含むがこれに限定されない異なる方法によって変更され得る。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクションに続いて、最適な翻訳効率を達成するために必要とされる5’及び3’UTRの長さを変更することができる。
【0198】
5’及び3’UTRは、目的の核酸のための天然に存在する内因性5’及び3’UTRであり得る。代替的には、目的の核酸に対して内因性でないUTR配列は、UTR配列をフォワード及びリバースプライマーに組み込むことによって、または鋳型の任意の他の修飾によって付加され得る。目的の核酸に対して内因性でないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/または翻訳効率を変更するために有用であり得る。例えば、3’UTR配列におけるAUリッチ要素は、mRNAの安定性を低下させ得ることが知られている。そのため、3’UTRは、当該技術分野でよく知られているUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を増加させるように選択または設計され得る。
【0199】
1つの実施形態において、5’UTRは、内因性核酸のコザック配列を含有し得る。代替的には、目的の核酸に対して内因性ではない5’UTRが上述のようにPCRによって付加されている場合、コンセンサスコザック配列は、5’UTR配列を付加することによって再設計され得る。コザック配列は、いくつかのRNA転写産物の翻訳効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするために全てのRNAに必要ではないようである。多くのmRNAのためのコザック配列の必要性は当該技術分野で知られている。他の実施形態において、5’UTRは、RNAゲノムが細胞内で安定であるRNAウイルスの5’UTRであり得る。他の実施形態において、様々なヌクレオチド類似体が3’または5’UTRに使用されてmRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げることができる。
【0200】
遺伝子クローニングを必要とせずに、DNA鋳型からのRNA合成を可能にするために、転写のプロモーターが、転写される配列の上流のDNA鋳型に取り付けられるべきである。RNAポリメラーゼのためのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5’末端に付加される場合、RNAポリメラーゼのプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に組み込まれる。1つの好ましい実施形態において、プロモーターは、本明細書の他の箇所に記載のT7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、T3及びSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。T7、T3、及びSP6プロモーターのためのコンセンサスヌクレオチド配列は当該技術分野で知られている。
【0201】
好ましい実施形態において、mRNAは、5’末端上のキャップ及び3’ポリ(A)尾部の両方を有し、これらは細胞内でのリボソーム結合、転写の開始、及びmRNAの安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えば、プラスミドDNA上で、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現に好適ではない長い鎖状体産物を産生する。3’UTRの末端で線状化したプラスミドDNAの転写は、通常のサイズのmRNAをもたらすが、これは、転写後にポリアデニル化されても真核生物のトランスフェクションには有効ではない。
【0202】
線状DNA鋳型上で、ファージT7 RNAポリメラーゼは、転写産物の3’末端を鋳型の最後の塩基を越えて延長することができる(Schenborn and Mierendorf,Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985);Nacheva and Berzal-Herranz,Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003)。
【0203】
DNA鋳型内へのポリA/Tストレッチの従来の統合方法は、分子クローニングである。しかしながら、プラスミドDNA内に統合されたポリA/T配列は、プラスミドの不安定性を引き起こし得、このことは細菌の細胞から得られたプラスミドDNA鋳型がしばしば、欠失及び他の異常で高度に不純である理由である。これは、クローニング手順を面倒で時間がかかるものにするだけでなく、しばしば信頼できないものにする。それが、クローニングすることなくポリA/T3’ストレッチを有するDNA鋳型の構築を可能にする方法が非常に望ましい理由である。
【0204】
転写DNA鋳型のポリA/Tセグメントは、ポリT尾部、例えば、100T尾部(サイズは50~5000Tであり得る)を含有するリバースプライマーを使用することによってPCR中に、またはDNA連結反応もしくはインビトロの組み換えを含むがこれらに限定されない任意の他の方法によってPCR後に産生され得る。ポリ(A)尾部はまた、RNAに安定性を提供し、それらの分解を減少させる。一般に、ポリ(A)尾部の長さは、転写されたRNAの安定性と正の相関がある。1つの実施形態において、ポリ(A)尾部は、100~5000アデノシンである。
【0205】
RNAのポリ(A)尾部は、ポリ(A)ポリメラーゼ、例えば、E.coliのポリAポリメラーゼ(E-PAP)を使用してインビトロ転写後に更に延長され得る。1つの実施形態において、ポリ(A)尾部の長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドまで増加させることは、RNAの翻訳効率の約2倍の増加をもたらす。また、3’末端への異なる化学基の結合は、mRNAの安定性を増加させ得る。そのような結合は、修飾/人工ヌクレオチド、アプタマー及び他の化合物を含有し得る。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)尾部にATP類似体が組み込まれ得る。ATP類似体は、RNAの安定性を更に増大させる。
【0206】
5’キャップを付けることはまた、RNA分子に安定性を提供する。好ましい実施形態において、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5’キャップを含む。5’キャップは、当該技術分野で知られており且つ本明細書に記載されている技術を使用して提供される(Cougot,et al.,Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001);Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001);Elango,et al.,Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005))。
【0207】
本明細書に開示される方法によって産生されるRNAはまた、内部リボソーム進入部位(IRES)の配列を含有し得る。IRES配列は、任意のウイルスの、染色体のまたは人工的に設計された配列であり得、これがmRNAに対するキャップ非依存性リボソーム結合を開始させ、翻訳の開始を促す。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、酸化防止剤、及び界面活性剤などの、細胞の透過性及び生存能力を促進する因子を含有し得る細胞のエレクトロポレーションに好適な任意の溶質が含まれ得る。
【0208】
RNAは、多数の異なる方法、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems,Cologn,Germany))、(ECM 830(BTX)(Harvard Instruments,Boston,Mass.)もしくはGene Pulser II(BioRad,Denver,Colo.)、Multiporator(Eppendort,Hamburg Germany)、リポフェクションを使用するカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、または微粒子銃粒子送達システム、例えば、「遺伝子銃」(例えば、Nishikawa,et al.Hum Gene Ther.,12(8):861-70(2001)を参照されたい)を含むがこれらに限定されない商業的に利用可能な方法のいずれかを使用して標的細胞に導入され得る。
【0209】
TFPをコードする核酸構築物
本発明はまた、本明細書に記載の1つ以上のTFP構築物をコードする核酸分子を提供する。1つの態様において、核酸分子は、メッセンジャーRNA転写物として提供される。1つの態様において、核酸分子は、DNA構築物として提供される。
【0210】
所望の分子をコードする核酸配列は、当該技術分野で知られている組み換え法を使用して、例えば、遺伝子を発現する細胞からライブラリをスクリーニングすることによって、それを含むことが知られているベクターから遺伝子を誘導することによって、またはそれを含有する細胞及び組織から直接単離することによって、標準的な技術を使用して得ることができる。代替的には、目的の遺伝子は、クローニングされるのではなく、合成で産生され得る。
【0211】
1つの実施形態において、TFP構築物の1つ以上のドメイン(例えば、細胞外、膜貫通、及び細胞内シグナル伝達ドメイン)は、クラスター化等間隔短鎖回文リピート(CRISPR(登録商標)、例えば、米国特許第8,697,359号を参照されたい)、転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN、例えば、米国特許第9,393,257号を参照されたい)、メガヌクレアーゼ(12~40塩基対の二本鎖DNA配列を含む大きな認識部位を有する天然に存在するエンドデオキシリボヌクレアーゼ)、またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN、例えば、Urnov et al.,Nat.Rev.Genetics(2010)v11,636~646を参照されたい)などの遺伝子編集技術を使用して改変される。このようにして、キメラ構築物は、立体配座またはシグナル伝達能力などの各サブユニットの望ましい特徴を組み合わせるように改変され得る。参照により本明細書に組み込まれるSander & Joung,Nat.Biotech.(2014)v32,347-55も参照されたい。
【0212】
本発明はまた、本発明のDNAが挿入されているベクターを提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルスに由来するベクターは、それらが導入遺伝子の長期間にわたる安定した統合及び娘細胞におけるその増殖を可能にするので、長期間にわたる遺伝子導入を達成するのに好適なツールである。レンチウイルスベクターは、それらが肝細胞などの非増殖性細胞を形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルスに由来するベクターに対して追加された利点を有する。それらはまた、追加された低免疫原性の利点を有する。
【0213】
別の実施形態において、本発明の所望のTFPをコードする核酸を含むベクターは、アデノウイルスベクター(A5/35)である。別の実施形態において、TFPをコードする核酸の発現は、スリーピングビューティー、クリスパー、CAS9、及びジンクフィンガーヌクレアーゼなどのトランスポゾンを使用して達成され得る(参照により本明細書に組み込まれるJune et al.2009 Nature Reviews Immunol.9.10:704-716を参照されたい)。
【0214】
本発明の発現構築物はまた、標準的な遺伝子導入プロトコルを使用して、核酸免疫付与及び遺伝子療法に使用され得る。遺伝子導入のための方法は、当該技術分野で知られている(例えば、米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。別の実施形態において、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0215】
核酸は、多数の種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングされ得る。特に興味深いベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが含まれる。
【0216】
更に、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は、当該技術分野でよく知られており、例えば、Sambrook et al.,2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NY)、及び他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが含まれるがこれらに限定されない。一般に、好適なベクターは、少なくとも1つの有機体で機能的である複製起点、プロモーター配列、好都合な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含有する(例えば、WO01/96584;WO01/29058;及び米国特許第6,326,193号)。
【0217】
多数のウイルスに基づくシステムが、哺乳類細胞への遺伝子導入のために開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子導入システムに都合の良いプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、ベクターに挿入され、当該技術分野で知られている技術を使用してレトロウイルス粒子内にパッケージングされ得る。次いで組み換えウイルスは単離され、インビボまたはエキソビボのいずれかで対象の細胞に導入され得る。多数のレトロウイルスシステムが当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが当該技術分野で知られている。1つの実施形態において、レンチウイルスベクターが使用される。
【0218】
追加のプロモーター要素、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置しているが、多数のプロモーターが開始部位の下流に同様に機能要素を含有することが示されている。要素が互いに反転または互いに対して移動される場合にプロモーターの機能が保存されるように、プロモーター要素間の間隔はしばしば柔軟である。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始める前に50bp離れるまで増加し得る。プロモーターに応じて、個々の要素は、協調的または独立的に機能して転写を活性化し得ると思われる。
【0219】
哺乳類のT細胞においてTFP導入遺伝子を発現することが可能なプロモーターの例は、EF1aプロモーターである。天然EF1aプロモーターは、アミノアシルtRNAのリボソームへの酵素的導入に関与する伸長因子1複合体のアルファサブユニットの発現を動作させる。EF1aプロモーターは、哺乳類の発現プラスミドに広く用いられており、レンチウイルスベクターにクローニングされた導入遺伝子からのTFP発現を動作させるのに有効であることが示されてきた(例えば、Milone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。プロモーターの別の例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を動作させることが可能な強力な構成的プロモーター配列である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子のプロモーター、例えば、限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターを含むがこれらに限定されない他の構成的プロモーター配列もまた使用され得る。更に、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現を、そのような発現が望まれる場合にオンにすること、または発現が望まれない場合には発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例には、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリン調節プロモーターが含まれるがこれらに限定されない。
【0220】
TFPポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターはまた、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれかまたはその両方を含有することで、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染がなされようとする細胞の集団からの発現細胞の特定及び選択を促進することができる。他の態様において、選択マーカーは、DNAの別々の片上に担持され、同時トランスフェクション法に使用され得る。選択マーカーとレポーター遺伝子の両方が、宿主細胞内での発現を可能にするために適切な調節配列に隣接され得る。有用な選択マーカーには、例えば、抗生物質抵抗性遺伝子、例えば、neoなどが含まれる。
【0221】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を特定するため、及び調節配列の機能を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエントの有機体または組織内に存在しないかまたはそれらによって発現されず、且つ、発現が、いくらか容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時点でアッセイされる。好適なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリフォスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。好適な発現系はよく知られており、既知の技術を使用して調製され得るか、または商業的に入手され得る。一般に、最も高いレポーター遺伝子の発現レベルを示す最小の5’隣接領域を有する構築物は、プロモーターとして特定される。そのようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーターに動作される転写を調節する能力について作用物質を評価するために使用され得る。
【0222】
細胞内に遺伝子を導入及び発現させる方法は、当該技術分野で知られている。発現ベクターとの関連では、ベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳類、細菌、酵母、または昆虫の細胞に、当該技術分野における任意の方法によって容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移入され得る。
【0223】
宿主細胞内へポリヌクレオチドを導入するための物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクター及び/または外因性核酸を含む細胞を産生するための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Sambrook et al.,2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Press,NYを参照されたい)。宿主細胞内へのポリヌクレオチドの導入のための一つの方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0224】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞内に導入するための生物学的方法は、DNA及びRNAベクターの使用を含む。ウイルスベクター、及び特にレトロウイルスベクターは、哺乳類、例えば、ヒトの細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法となってきた。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る(例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照されたい)。
【0225】
宿主細胞内へポリヌクレオチドを導入するための化学的手段には、コロイド分散系、例えば、マクロ分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。他の最先端の核酸の標的化送達の方法、例えば、標的化ナノ粒子または他の好適なサブミクロンサイズの送達システムでのポリヌクレオチドの送達が利用可能である。
【0226】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞内への核酸の導入(インビトロ、エキソビボ、またはインビボ)が企図される。別の態様において、核酸は、脂質と会合され得る。脂質に会合した核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在され、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方に会合した連結分子を介してリポソームに付着され、リポソーム内に封入され、リポソームと複合化され、脂質含有溶液に分散され、脂質と混合され、脂質と組み合わされ、脂質中に懸濁液として含有され、ミセルと共に含有もしくは複合化され、または他の場合には脂質と会合される場合がある。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中でいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは二層構造で、ミセルとして、または「崩壊した」構造で存在し得る。それらはまた、単に溶液に散在されてもよく、サイズも形も均一でない凝集体を形成すると思われる。脂質は、天然に存在するかまたは合成の脂質であり得る脂肪性の物質である。例えば、脂質には、細胞質に天然に存在する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドを含有する化合物のクラスが含まれる。
【0227】
使用に好適な脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St Louis,Moから入手することができ;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview,N.Y.)から入手することができ;コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手することができ;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,Ala.)から入手することができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存され得る。クロロホルムは、メタノールより容易に蒸発するので、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単一及び多重膜の脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重膜及び内側の水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けられ得る。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁された場合に自然に形成する。脂質成分は、自己再編成を経てから、閉鎖構造を形成し、脂質二重層間に水及び溶解した溶質を封入する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、通常の小胞構造とは溶液中での構造が異なる組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとり得るか、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。また、リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0228】
宿主細胞内に外因性核酸を導入するためにまたは他の場合には本発明の阻害剤に細胞を暴露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞内での組み換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイが実施され得る。そのようなアッセイには、例えば、当業者によく知られている「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザン及びノーザンブロット法、RT-PCR及びPCR;「生化学的」アッセイ、例えば、特定のペプチドの有無を、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット法)によってまたは本明細書に記載のアッセイによって検出して、本発明の範囲内に含まれる作用物質を特定することが含まれる。
【0229】
本発明は、TFPをコードする核酸分子を含むベクターを更に提供する。1つの態様において、TFPベクターは、細胞、例えば、T細胞に直接形質導入され得る。1つの態様において、ベクターは、クローニングまたは発現ベクター、例えば、1つ以上のプラスミド(例えば、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルス及びレンチウイルスベクター構築物を含むがこれらに限定されないベクターである。1つの態様において、ベクターは、哺乳類のT細胞においてTFP構築物を発現することが可能である。1つの態様において、哺乳類のT細胞はヒトT細胞である。
【0230】
T細胞源
増殖及び遺伝子組み換えの前に、T細胞源を対象から入手する。用語「対象」は、免疫反応が誘発され得る生体(例えば、哺乳類)を含むことが意図されている。対象の例には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、及びそれらのトランスジェニック種が含まれる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含む多数の源から入手することができる。本発明の所定の態様において、当該技術分野で入手可能な多数のT細胞株が使用され得る。本発明の所定の態様において、T細胞は、当業者に知られる多数の技術、例えば、Ficoll(商標)分離を使用して対象から採取された血液の単位から入手することができる。1つの好ましい態様において、個体の循環血液由来の細胞は、アフェレーシスによって入手される。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞を含むリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含有する。1つの態様において、アフェレーシスによって採取された細胞は、血漿画分を除去するため、及び細胞をその後の処理工程のために適切な緩衝液または媒体に配するために洗浄され得る。本発明の1つの態様において、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替的な態様において、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、且つマグネシウムを欠き得るか、または2価カチオンの全てではないがその多くを欠き得る。カルシウムの非存在下での最初の活性化工程は、活性化の拡大につながり得る。当業者には容易に理解されるように、洗浄工程は当業者に知られる方法によって、例えば、半自動の「フロースルー」遠心分離(例えば、Cobe 2991セルプロセッサー、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を製造者の指示に従って使用することによって達成され得る。洗浄後、細胞を様々な生体適合性緩衝液、例えば、CaフリーでMgフリーのPBS、PlasmaLyte A、または、緩衝液を含むもしくは含まない他の生理食塩水に再懸濁され得る。代替的には、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培地に直接再懸濁してもよい。
【0231】
1つの態様において、T細胞は、赤血球を溶解し、単球を、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離によってまたは向流遠心エルトリエーションによって枯渇させることによって末梢血リンパ球から単離される。T細胞の特定の亜集団、例えば、CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及びCD45RO+T細胞は、正または負の選択技術によって更に単離され得る。例えば、1つの態様において、T細胞は、抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)結合ビーズ、例えば、DYNABEADS(商標)M-450 CD3/CD28 Tと共に、所望のT細胞の正の選択に十分な期間インキュベートすることによって単離される。1つの態様において、その期間は約30分である。更なる態様において、その期間は、30分から36時間またはそれ以上及びその間の全ての整数値に及ぶ。更なる態様において、その期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。更に別の好ましい態様において、その期間は、10~24時間である。1つの態様において、インキュベート期間は24時間である。腫瘍組織または免疫不全の個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離するような、他の細胞型と比較してT細胞が少ない任意の状況でT細胞を単離するために、より長いインキュベート時間が使用され得る。更に、より長いインキュベート時間を使用することで、CD8+T細胞の捕捉の効率を増加させることができる。それ故、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる時間を単に短縮または延長することによって、及び/または(本明細書で更に記載されるように)T細胞に対するビーズの比を増加または減少させることによって、培養開始時またはプロセス中の他の時点でT細胞の亜集団が優先的に選択または反選択され得る。また、ビーズもしくは他の表面上で抗CD3及び/または抗CD28抗体の比を増加または減少させることによって、T細胞の亜集団は、培養開始時または他の所望の時点で優先的に選択または反選択され得る。当業者は、本発明に照らして複数の選択期間もまた使用され得ることを認識するであろう。所定の態様において、選択手順を実施し、「選択されていない」細胞を活性化及び増殖プロセスで使用することが望ましい場合がある。「選択されていない」細胞はまた、更なる選択期間に供され得る。
【0232】
負の選択によるT細胞集団の濃縮は、負に選択された細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせを用いて達成され得る。1つの方法は、負に選択された細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負磁気免疫接着またはフローサイトメトリーを介した細胞選別及び/または選択である。例えば、負の選択によってCD4+細胞を濃縮するために、モノクローナル抗体カクテルは典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含む。所定の態様において、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、及びFoxP3+を発現する調節性T細胞を濃縮または正に選択することが望ましい場合がある。代替的には、所定の態様において、調節性T細胞は、抗C25結合ビーズまたは他の同様の選択方法によって枯渇される。
【0233】
1つの実施形態において、IFN-γ、TNF-α、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、及びパーフォリン、または他の適切な分子、例えば、他のサイトカインのうちの1つ以上を発現するT細胞集団が選択され得る。細胞発現のスクリーニングのための方法は、例えば、PCT公開第WO2013/126712号に記載の方法によって決定され得る。
【0234】
正または負の選択による所望の細胞集団の単離のため、細胞濃度及び表面(例えば、ビーズなどの粒子)は変更され得る。所定の態様において、ビーズと細胞が一緒に混合される体積を大幅に減少させて(例えば、細胞濃度を増加させて)、細胞とビーズの最大接触を確保することが望ましい場合がある。例えば、1つの態様において、20億個の細胞/mLの濃度が使用される。1つの態様において、10億個の細胞/mLの濃度が使用される。更なる態様において、1億個を超える細胞/mLが使用される。更なる態様において、1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個の細胞/mLの細胞濃度が使用される。更に1つの態様において、7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個の細胞/mLからの細胞濃度が使用される。更なる態様において、1億2500万または1億5000万個の細胞/mLの濃度が使用され得る。高い濃度の使用は、細胞収率、細胞活性化、及び細胞増殖の増加をもたらし得る。更に、高い細胞濃度の使用は、目的の標的抗原を弱く発現し得る細胞、例えば、CD28陰性T細胞、または多くの腫瘍細胞が存在する試料(例えば、白血病血液、腫瘍組織など)からの細胞のより効率的な捕捉を可能にする。そのような細胞集団は、治療的価値を有し得、得ることが望ましいであろう。例えば、高い細胞濃度の使用は、通常はより弱いCD28の発現を有するCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0235】
関連する態様において、より低い濃度の細胞を使用することが望ましい場合がある。T細胞と表面(例えば、ビーズなどの粒子)の混合物を大幅に希釈することによって、粒子と細胞との間の相互作用が最小化される。これは、粒子に結合される多量の所望の抗原を発現する細胞を選択する。例えば、CD4+T細胞は、高レベルのCD28を発現し、希釈濃度においてCD8+T細胞より効率的に捕捉される。1つの態様において、使用される細胞の濃度は5×106/mLである。他の態様において、使用される濃度は約1×105/mL~1×106/mL、及びその間の任意の整数値であり得る。他の態様において、細胞は、回転装置上で様々な長さの時間、様々な速度で、2~10℃または室温のいずれかでインキュベートされ得る。
【0236】
刺激用のT細胞はまた、洗浄工程の後、凍結され得る。理論に拘束されることを望むものではないが、凍結及びその後の解凍工程は、細胞集団における顆粒球及びある程度の単球を除去することによってより均一な産物を提供する。血漿及び血小板を除去する洗浄工程の後、細胞は、凍結溶液に懸濁され得る。多くの凍結溶液及びパラメータが当該技術分野で知られており、この文脈で有用であるが、1つの方法は、20%DMSO及び8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン及び7.5%DMSO、または31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40及び5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、及び7.5%DMSOを含有する培地、または例えば、Hespan及びPlasmaLyte Aを含有する他の好適な細胞凍結培地の使用を含み、細胞は次いで-80℃に毎分1の速度で凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相中で保存される。他の制御凍結方法は、-20℃でのまたは液体窒素中での非制御即時凍結と同様に使用され得る。所定の態様において、凍結保存細胞は、本明細書に記載のように解凍及び洗浄され、室温で1時間静置されてから本発明の方法を使用して活性化される。
【0237】
また本発明に照らして企図されるものは、本明細書に記載の増殖した細胞が必要とされ得るときの前の期間における対象からの血液試料またはアフェレーシス産物の採取である。このように、増殖される細胞源は、任意の必要な時点で採取することができ、所望の細胞、例えば、T細胞は、T細胞療法から利益を受けるであろうあらゆる疾患または状態、例えば、本明細書に記載のもののためのT細胞療法における後の使用のために単離及び凍結される。1つの態様において、血液試料またはアフェレーシスは、概して健康な対象から採取される。所定の態様において、血液試料またはアフェレーシスは、疾患の発症の危険性があるがまだ疾患を発症していない概して健康な対象から採取され、目的の細胞は、後の使用のために単離及び凍結される。所定の態様において、T細胞は、増殖され、凍結され、その後使用され得る。所定の態様において、試料は、本明細書に記載の特定の疾患の診断の直後であるが任意の治療の前に患者から採取される。更なる態様において、細胞は、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、及びFK506、抗体、または他の免疫消失剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、ならびに放射線照射などの作用物質での治療を含むがこれらに限定されないあらゆる関連する治療様式に先立って、対象からの血液試料またはアフェレーシスから単離される。
【0238】
本発明の更なる態様において、T細胞は、対象に機能的T細胞を残す治療の後に、患者から直接採取される。この点に関して、所定のがん治療の後、免疫系に損傷を与える薬物での特定の治療において、治療の直後で、患者が治療から通常回復するであろう期間中に、得られたT細胞の品質は、エキソビボでのそれらの増殖能が最適であり得るか、または改善され得ることが観察された。同様に、本明細書に記載の方法を使用するエキソビボ操作の後、これらの細胞は、生着及びインビボ増殖の向上に好ましい状態にあり得る。それ故、本発明の文脈の範囲内で、T細胞を含む血液細胞、樹状細胞、または造血系の他の細胞をこの回復期に採取することが企図される。更に、所定の態様において、動員(例えば、GM-CSFでの動員)及び前処置レジメンを使用して、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生、及び/または増殖が促進される対象における、特に治療後の所定の時間窓での条件を作成することができる。例示的な細胞タイプには、T細胞、B細胞、樹状細胞、及び免疫系の他の細胞が含まれる。
【0239】
T細胞の活性化及び増殖
T細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号;第6,534,055号;第6,905,680号;第6,692,964号;第5,858,358号;第6,887,466号;第6,905,681号;第7,144,575号;第7,067,318号;第7,172,869号;第7,232,566号;第7,175,843号;第5,883,223号;第6,905,874号;第6,797,514号;第6,867,041号;及び第7,572,631号に記載されている方法を一般に使用して活性化及び増殖され得る。
【0240】
一般に、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質を付着された表面及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとの接触によって増殖され得る。特に、T細胞集団は、本明細書に記載のように、例えば、抗CD3抗体、もしくはその抗原結合フラグメント、もしくは表面上に固定化された抗CD2抗体との接触によって、またはカルシウムイオノフォアと組み合わせてプロテインキナーゼC活性化剤(例えば、ブリオスタチン)との接触によって刺激され得る。T細胞表面上のアクセサリー分子の共刺激については、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するために適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触され得る。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するためには、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。抗CD28抗体の例には、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone,Besancon,France)が含まれ、当該技術分野で一般的に知られている他の方法が使用され得る(Berg et al.,Transplant Proc.30(8):3975-3977、1998;Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):13191328,1999;Garland et al.,J.Immunol.Meth.227(1-2):53-63,1999)。
【0241】
多様な刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特性を呈し得る。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスされた末梢血の単核細胞産物は、ヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有し、これは細胞傷害性またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)より多い。CD3及びCD28受容体を刺激することによるT細胞のエキソビボでの増殖は、約8~9日目より前には、主にTH細胞からなるT細胞の集団を産生するが、約8~9日目より後は、T細胞の集団は次第に増加するTC細胞の集団を含む。したがって、治療の目的に応じて、主にTH細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが有利な場合がある。同様に、抗原特異的なTC細胞のサブセットが単離された場合、このサブセットをより高い程度まで増殖させることが有益な場合がある。
【0242】
更に、CD4及びCD8マーカーに加えて、他の表現型マーカーは、細胞増殖プロセスの過程の間に、大幅に、しかし大部分は再現可能に変化する。それ故、そのような再現性は、活性化されたT細胞産物を特定の目的のために調整する能力を可能にする。
【0243】
抗BCMA TFPが構築されると、様々なアッセイを使用して、限定されないが、抗原刺激後のT細胞を増殖する能力、再刺激の非存在下でT細胞増殖を持続する能力、及び適切なインビトロ及び動物モデルでの抗がん活性などの分子の活性を評価することができる。抗BCMA TFPの効果を評価するアッセイを以下に更に詳細に説明する。
【0244】
一次T細胞におけるTFP発現のウェスタンブロット分析を使用して、モノマー及びダイマーの存在を検出することができる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。極めて簡潔には、TFPを発現するT細胞(CD4+及びCD8+T細胞の1:1混合物)を、インビトロで10日より長い間増殖させ、続いて溶解し、還元条件でSDS-PAGEを行う。TFPは、TCR鎖に対する抗体を使用してウェスタンブロットによって検出される。同じT細胞のサブセットを、非還元条件でのSDS-PAGE分析に使用して共有結合ダイマー形成の評価を可能にする。
【0245】
抗原刺激後のTFP+T細胞のインビトロでの増殖は、フローサイトメトリーによって測定され得る。例えば、CD4+及びCD8+T細胞の混合物を、アルファCD3/アルファCD28及びAPCで刺激し、続いて分析されるプロモーターの制御下で、GFPを発現するレンチウイルスベクターで形質導入する。例示的なプロモーターには、CMV IE遺伝子、EF-1α、ユビキチンC、またはホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターが含まれる。GFPの蛍光は、CD4+及び/またはCD8+T細胞のサブセット中での培養の6日目にフローサイトメトリーによって評価される(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。代替的には、CD4+及びCD8+T細胞の混合物をアルファCD3/アルファCD28被覆磁気ビーズで0日目に刺激し、1日目に、TFPを発現するバイシストロニックなレンチウイルスベクターを使用して、eGFPと共に2Aリボソームスキッピング配列を使用してTFPで形質導入する。培養物を、BCMA+K562細胞(K562-BCMA)、野生型K562細胞(K562野生型)または抗CD3及び抗CD28抗体の存在下でhCD32及び4-1BBLを発現するK562細胞(K562-BBL-3/28)のいずれかで洗浄後に再刺激する。外因性IL-2を培養物に1日おきに100IU/mLで添加する。GFP+T細胞は、ビーズに基づく計数を使用してフローサイトメトリーによって数えられる(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。
【0246】
再刺激の非存在下で持続するTFP+T細胞の増殖もまた測定され得る(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。簡潔には、アルファCD3/アルファCD28被覆磁気ビーズで0日目に刺激し、示されたTFPで1日目に形質導入した後、培養の8日目に平均T細胞体積(fl)をCoulter Multisizer III粒子カウンターを使用して測定する。
【0247】
動物モデルを使用してTFP-T活性を測定することもできる。例えば、免疫不全マウスにおいてがんを治療するためのヒトBCMA特異的TFP+T細胞を使用した異種移植モデルである(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。極めて簡潔には、がんの定着後、マウスを治療群に応じてランダム化する。異なる数の改変T細胞を1:1の比でがんを有するNOD/SCID/γ-/-マウスに同時注射する。マウス由来の脾臓DNAにおける各ベクターのコピー数を、T細胞注射後の様々な時点で評価する。動物を1週間間隔でがんについて評価する。末梢血BCMA+がん細胞数を、アルファBCMA-ゼータTFP+T細胞またはmock形質導入T細胞が注射されたマウスで測定する。その群についての生存曲線を、ログランク検定を使用して比較する。また、NOD/SCID/γ-/-マウスにおけるT細胞注射の4週間後の末梢血CD4+及びCD8+T細胞の絶対数も分析され得る。マウスにがん細胞を注射し、3週間後、eGFPに連結されたTFPをコードするバイシストロニックなレンチウイルスベクターによってTFPを発現するように改変されたT細胞を注射する。T細胞は、注射の前に、mock形質導入細胞と混合することによって、45~50%入力GFP+T細胞に正規化され、フローサイトメトリーによって確認される。動物を1週間間隔でがんについて評価する。TFP+T細胞群についての生存曲線を、ログランク検定を使用して比較する。
【0248】
用量依存的なTFP治療反応が評価され得る(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。例えば、末梢血を、21日目にTFP T細胞、同数のmock形質導入T細胞が注射された、またはT細胞が注入されなかったマウスにおいて、がんの定着後35~70日で採取する。35日目及び49日目に、末梢血BCMA+がん細胞数の決定のために各群のマウスをランダムに採血し、次いで殺処分する。残りの動物は57日目及び70日目に評価する。
【0249】
細胞増殖及びサイトカイン産生の評価は、例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)で先行して記載されている。簡潔には、TFP媒介増殖の評価は、マイクロタイタープレートにおいて、洗浄したT細胞を、BCMAまたはCD32及びCD137を発現する細胞(KT32-BBL)と、最終的なT細胞:BCMAを発現する細胞の比が2:1になるように混合することによって実施される。BCMA細胞を発現する細胞は、使用前にガンマ線が照射される。抗CD3(クローンOKT3)及び抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体を、KT32-BBL細胞を有する培養物に加えてT細胞増殖を刺激するための陽性対照として機能させるが、これは、これらのシグナルが長期的なCD8+T細胞のエキソビボでの増殖をサポートするためである。CountBright(商標)蛍光ビーズ(Invitrogen)及びフローサイトメトリーを使用して製造者によって記載されているように培養物中のT細胞を数える。TFP+T細胞は、eGFP-2Aが連結されたTFP発現レンチウイルスベクターで改変されたT細胞を使用してGFPの発現によって特定される。GFPを発現しないTFP+T細胞については、TFP+T細胞は、ビオチン化組み換えBCMAタンパク質及び二次アビジン・PE複合体で検出される。T細胞上でのCD4+及びCD8+の発現はまた、特定のモノクローナル抗体(BD Biosciences)で同時に検出される。サイトカインの測定は、ヒトTH1/TH2サイトカインサイトメトリービーズアレイキット(BD Biosciences)を使用して製造者の指示に従って再刺激の24時間後に採取された上清について実施する。蛍光は、FACScaliburフローサイトメーターを使用して評価し、データを製造者の指示に従って分析する。
【0250】
細胞傷害性は、標準的な51Cr放出アッセイによって評価され得る(例えば、Milone et al.,Molecular Therapy 17(8):1453-1464(2009)を参照されたい)。簡潔には、標的細胞に、37℃で2時間、頻繁に撹拌しながら51Cr(NaCrO4として、New England Nuclear)を担持させ、完全RPMI中で2度洗浄し、マイクロタイタープレートに播種する。エフェクターT細胞を、ウェル内で完全RPMI中で標的細胞と様々なエフェクター細胞:標的細胞比(E:T)で混合する。培地のみを含有する(自然放出、SR)またはトリトン-X100洗浄剤の1%溶液を含有する(総放出、TR)追加のウェルも用意する。37℃で4時間のインキュベート後、各ウェルから上清を採取する。次いで放出された51Crをガンマパーティクルカウンター(Packard Instrument Co.,Waltham,Mass.)を使用して測定する。各条件を少なくとも三連で実施し、溶解率を式:溶解%=(ER-SR)/(TR-SR)(式中、ERは各実験条件について放出された平均51Crを表す)を使用して計算する。
【0251】
撮像技術を使用して、腫瘍を有する動物モデルにおけるTFPの特異的輸送及び増殖を評価することができる。そのようなアッセイは、例えば、Barrett et al.,Human Gene Therapy 22:1575-1586(2011)に記載されている。簡潔には、NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにがん細胞を静脈内注射し、続いて7日後にTFP構築物でのエレクトロポレーションの4時間後にT細胞を静脈内注射する。T細胞は、ホタルルシフェラーゼを発現させるためにレンチウイルス構築物で安定的にトランスフェクトされ、マウスは生物発光について撮像される。代替的には、がん異種移植モデルにおけるTFP+T細胞の単回注射の治療効力及び特異性は以下の通りに測定され得る:NSGマウスに、ホタルルシフェラーゼを安定的に発現するように形質導入されたがん細胞を注射し、続いて7日後にBCMA TFPをエレクトロポレーションしたT細胞を単回尾静脈注射する。動物を注射後の様々な時点で撮像する。例えば、5日目(処置の2日前)及び8日目(TFP+PBLの24時間後)に代表的なマウスにおけるホタルルシフェラーゼ陽性がんの光子密度ヒートマップが生成され得る。
【0252】
本明細書の実施例の節に記載のもの及び当該技術分野で知られているものを含む他のアッセイもまた、本発明の抗BCMA TFP構築物を評価するために使用され得る。
【0253】
治療適用
BCMA関連疾患及び/または障害
1つの態様において、本発明は、BCMA発現に関連する疾患を治療するための方法を提供する。1つの態様において、本発明は、疾患を治療するための方法であって、腫瘍の一部がBCMAに陰性であり、腫瘍の一部がBCMAに陽性である、方法を提供する。例えば、本発明の抗体またはTFPは、上昇したBCMAの発現に関連する疾患のための治療を受けた対象を治療するのに有用であり、上昇したレベルのBCMAのための治療を受けた対象は、上昇したレベルのBCMAに関連する疾患を呈する。
【0254】
1つの態様において、本発明は、哺乳類のT細胞での発現用のプロモーターに作動可能に連結された抗BCMA抗体またはTFPを含むベクターに関する。1つの態様において、本発明は、BCMA発現腫瘍を治療する際に使用するためのBCMA TFPを発現する組み換えT細胞を提供し、BCMA TFPを発現する組み換えT細胞は、BCMA TFP-Tと称される。1つの態様において、本発明のBCMA TFP-Tは、TFP-Tが腫瘍細胞を標的とし、腫瘍の成長が阻害されるように、腫瘍細胞を、その表面上で発現する本発明の少なくとも1つのBCMA TFPと接触させることが可能である。
【0255】
1つの態様において、本発明は、BCMA発現腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、TFP-Tが抗原に反応して活性化され、がん細胞を標的化するように腫瘍細胞を本発明のBCMA抗体またはTFP-T細胞と接触させることを含み、腫瘍の成長が阻害される、方法に関する。
【0256】
1つの態様において、本発明は、対象におけるがんを治療する方法に関する。その方法は、がんが対象において治療されるように、本発明のBCMA抗体、二重特異性抗体、またはTFP-T細胞を対象に投与することを含む。本発明のBCMA TFP T細胞によって治療可能ながんの例は、BCMAの発現に関連するがんである。1つの態様において、がんは骨髄腫である。1つの態様において、がんはリンパ腫である。1つの態様において、がんは結腸癌である。
【0257】
いくつかの実施形態において、BCMA抗体またはTFP治療は、1つ以上の追加の治療と組み合わせて使用され得る。いくつかの例において、そのような追加の治療は、化学療法剤、例えば、シクロホスファミドを含む。いくつかの例において、そのような追加の治療は、外科的切除または放射線治療を含む。
【0258】
1つの態様において、細胞療法の方法であって、T細胞がTFPを発現するように遺伝子組み換えされ、そのTFP発現T細胞がそれを必要とするレシピエントに注入される、方法が本明細書で提供される。注入された細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を殺傷することが可能である。抗体療法とは異なり、TFP発現T細胞は、インビボで複製することが可能であり、継続した腫瘍制御につながり得る長期持続をもたらす。様々な態様において、患者に投与されたT細胞、またはそれらの後代は、患者へのT細胞の投与後、少なくとも4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年、または5年間、患者内で存続する。
【0259】
いくつかの例において、T細胞が、TFPを一過性に発現するように、例えば、インビトロで転写されたRNAによって修飾され、TFP発現T細胞が、それを必要とするレシピエントに注入される、一種の細胞療法が本明細書で提供される。注入された細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を殺傷することが可能である。それ故、様々な態様において、患者に投与されたT細胞は、患者へのT細胞の投与後、1ヶ月未満、例えば、3週間、2週間、または1週間存在する。
【0260】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、TFP発現T細胞によって誘発される抗腫瘍免疫反応は、能動でも受動免疫反応でもよく、代替的には、直接対間接免疫反応によってもよい。1つの態様において、TFPで形質導入されたT細胞は、BCMA抗原を発現するヒトがん細胞に反応して特定の炎症性サイトカイン分泌及び強力な細胞溶解活性を呈し、可溶性BCMA阻害に耐性であり、バイスタンダー殺傷を媒介し、及び/または定着したヒト腫瘍の退行を媒介する。例えば、BCMA発現腫瘍の異種フィールド内の抗原のない腫瘍細胞は、隣接する抗原陽性がん細胞に対してすでに反応しているBCMA再指向性T細胞による間接的な破壊に対して敏感であり得る。
【0261】
1つの態様において、本発明のヒトTFP修飾T細胞は、哺乳類におけるエキソビボでの免疫付与及び/またはインビボ治療用の一種のワクチンであり得る。1つの態様において、哺乳類はヒトである。
【0262】
エキソビボでの免疫付与に関しては、細胞を哺乳類に投与する前に、以下のうちの少なくとも1つがインビトロで行われる:i)細胞の増殖、ii)TFPをコードする核酸の細胞への導入またはiii)細胞の凍結保存。
【0263】
エキソビボ手順は、当該技術分野でよく知られており、以下により詳細に論述する。簡潔には、細胞を哺乳類(例えば、ヒト)から単離し、本明細書に開示されるTFPを発現するベクターで遺伝子組み換えする(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。TFP修飾細胞を哺乳類のレシピエントに投与し、治療的利益を提供することができる。哺乳類のレシピエントは、ヒトでよく、TFP修飾細胞は、レシピエントに関して自己移植であり得る。代替的には、細胞は、レシピエントに関して同種異系、同系または異種であり得る。
【0264】
造血幹及び前駆細胞のエキソビボでの増殖のための手順は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,199,942号に記載されており、本発明の細胞に適用され得る。他の好適な方法は当該技術分野で知られており、そのため、本発明は、細胞の任意の特定のエキソビボでの増殖方法に限定されない。簡潔には、T細胞のエキソビボでの培養及び増殖は:(1)末梢血採取または骨髄外植片から哺乳類由来のCD34+造血幹及び前駆細胞を採取すること;及び(2)そのような細胞をエキソビボで増殖させることを含む。米国特許第5,199,942号に記載の細胞成長因子に加えて、flt3-L、IL-1、IL-3及びc-kitリガンドなどの他の因子が細胞の培養及び増殖のために使用され得る。
【0265】
エキソビボでの免疫付与に関して細胞ベースのワクチンの使用に加えて、本発明はまた、患者において抗原に対する免疫反応を誘発するインビボでの免疫付与のための組成物及び方法を提供する。
【0266】
一般に、本明細書に記載の活性化及び増殖された細胞は、免疫不全の個体で生じる疾患の治療及び予防に利用され得る。特に、本発明のTFP修飾T細胞は、BCMAの発現に関連する疾患、障害及び状態の治療に使用される。所定の態様において、本発明の細胞は、BCMAの発現に関連する疾患、障害及び状態を発症する危険性がある患者の治療に使用される。それ故、本発明は、BCMAの発現に関連する疾患、障害及び状態の治療または予防のための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本発明のTFP修飾T細胞を投与することを含む、方法を提供する。
【0267】
1つの態様において、本発明の抗体またはTFP-T細胞は、がんまたは悪性腫瘍などの増殖性疾患または前がん状態を治療するために使用され得る。1つの態様において、がんは骨髄腫である。1つの態様において、がんはリンパ腫である。1つの態様において、がんは結腸がんである。更に、BCMA発現に関連する疾患には、例えば、非定型及び/または非古典的がん、悪性腫瘍、前がん状態またはBCMAを発現する増殖性疾患が含まれるがこれらに限定されない。BCMAの発現に関連する非がん関連症状には、例えば、自己免疫疾患(例えば、狼瘡)、炎症性障害(アレルギー及び喘息)及び移植が含まれるがこれらに限定されない。
【0268】
本発明の抗体またはTFPで修飾されたT細胞は、単独で、または希釈剤及び/または他の成分、例えば、IL-2もしくは他のサイトカインまたは細胞集団と組み合わされた薬学的組成物としてのいずれかで投与され得る。
【0269】
本発明はまた、BCMA発現細胞集団の増殖を阻害するためのまたはその集団を減少させるための方法を提供し、その方法は、BCMA発現細胞を含む細胞の集団を、BCMA発現細胞に結合する本発明の抗BCMA TFP-T細胞と接触させることを含む。特定の態様において、本発明は、BCMAを発現するがん細胞の集団の増殖を阻害するためのまたはその集団を減少させるための方法を提供し、その方法は、BCMA発現がん細胞集団を、BCMA発現細胞に結合する本発明の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞と接触させることを含む。1つの態様において、本発明は、BCMAを発現するがん細胞の集団の増殖を阻害するためのまたはその集団を減少させるための方法を提供し、その方法は、BCMA発現がん細胞集団を、BCMA発現細胞に結合する本発明の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞と接触させることを含む。所定の態様において、本発明の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞は、細胞及び/またはがん細胞の分量、数、量または割合を、多発性骨髄腫またはBCMA発現細胞に関連する別のがんを有する対象またはその動物モデルにおいて、陰性対照と比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%低下させる。1つの態様において、対象はヒトである。
【0270】
本発明はまた、BCMA発現細胞に関連する疾患(例えば、BCMAを発現するがん)を予防、治療及び/または管理するための方法を提供し、その方法は、BCMA発現細胞に結合する本発明の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞を、必要とする対象に投与することを含む。1つの態様において、対象はヒトである。BCMA発現細胞に関連する障害の非限定的な例には、自己免疫障害(狼瘡など)、炎症性疾患(アレルギー及び喘息など)及びがん(BCMAを発現する血液がんまたは非定型がんなど)が含まれる。
【0271】
本発明はまた、BCMA発現細胞に関連する疾患を予防、治療及び/または管理するための方法を提供し、その方法は、BCMA発現細胞に結合する本発明の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞を、必要とする対象に投与することを含む。1つの態様において、対象はヒトである。
【0272】
本発明は、BCMA発現細胞に関連するがんの再発を予防するための方法を提供し、その方法は、それを必要とする対象に、BCMA発現細胞に結合する本発明の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞を投与することを含む。1つの態様において、その方法は、それを必要とする対象に、有効量のBCMA発現細胞に結合する本明細書に記載の抗BCMA抗体またはTFP-T細胞を有効量の別の治療と組み合わせて投与することを含む。
【0273】
併用療法
本明細書に記載の抗体またはTFP発現細胞は、他の既知の薬剤及び治療と組み合わせて使用され得る。「組み合わせて」投与されるとは、本明細書で使用される場合、2つ(またはそれ以上)の異なる治療が、障害での対象の苦痛の過程において対象に送達されること、例えば、2つ以上の治療が、対象が障害と診断された後、且つ障害が治癒もしくは排除される前または治療が他の理由のために中止される前に送達されることを意味する。いくつかの実施形態において、投与に関して重複が存在するように、1つの治療の送達は、第2の送達の開始時に依然として行われている。これは時に、本明細書では「同時」または「併用送達」と称される。他の実施形態において、1つの治療の送達は、他方の治療の送達の開始前に終了する。いずれかの場合のいくつかの実施形態において、治療は、併用投与のためにより有効である。例えば、第2の治療はより有効であり、例えば、第1の治療なしで第2の治療が施される場合に見られるより、より少ない第2の治療で同等の効果が見られるか、または第2の治療は症状をより大幅に減少させ、または類似の状況は第1の治療でも見られる。いくつかの実施形態において、送達は、症状、または障害に関連する他のパラメータの減少が、他方の非存在下で送達される1つの治療で観察されるであろうものより大きくなるようになされる。2つの治療の効果は、部分的に相加的であるか、完全に相加的であるか、または相加的を超える場合がある。送達は、送達された第1の治療の効果が、第2の治療が送達されるときに依然として検出可能であるようになされ得る。
【0274】
いくつかの実施形態において、「少なくとも1つの追加の治療剤」には、TFP発現細胞が含まれる。また、同じもしくは異なる標的抗原、または同じ標的抗原上の同じもしくは異なるエピトープに結合する複数のTFPを発現するT細胞が提供される。また、第1のT細胞のサブセットが第1のTFPを発現し、第2のT細胞のサブセットが第2のTFPを発現するT細胞の集団が提供される。
【0275】
本明細書に記載のTFP発現細胞及び少なくとも1つの追加の治療剤は、同時に、同じもしくは別々の組成物で、または連続的に投与され得る。連続投与の場合、本明細書に記載のTFP発現細胞は最初に投与され得、追加の薬剤は2番目に投与され得うるか、または投与の順序を入れ替えてもよい。
【0276】
更なる態様において、本明細書に記載のTFP発現細胞は、手術、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノレート、及びFK506、抗体、もしくは他の免疫消失剤、例えば、CAMPATH、抗CD3抗体または他の抗体療法、シトキシン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、及び放射線照射、ペプチドワクチン、例えば、Izumoto et al.2008 J Neurosurg 108:963-971に記載されているものと組み合わせて治療レジメンで使用され得る。
【0277】
1つの実施形態において、対象には、TFP発現細胞の投与に関連する副作用を減少または改善する薬剤が投与され得る。TFP発現細胞の投与に関連する副作用には、サイトカイン放出症候群(CRS)、及びマクロファージ活性化症候群(MAS)とも称される血球貪食性リンパ組織球増多症(HLH)が含まれるがこれらに限定されない。CRSの症状には、高熱、吐き気、一過性低血圧、低酸素症などが含まれる。したがって、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のTFP発現細胞を対象に投与すること、及び更にTFP発現細胞での治療に起因する上昇したレベルの可溶性因子を管理する薬剤を投与することを含み得る。1つの実施形態において、対象内で上昇した可溶性因子は、IFN-γ、TNFα、IL-2及びIL-6のうちの1つ以上である。そのため、この副作用を治療するために投与される薬剤は、これらの可溶性因子のうちの1つ以上を中和する薬剤であり得る。そのような薬剤には、ステロイド、TNFαの阻害剤、及びIL-6の阻害剤が含まれるがこれらに限定されない。TNFα阻害剤の例はエタネルセプト(名称ENBREL(登録商標)で市場されている)である。IL-6阻害剤の例はトシリズマブ(名称ACTEMRA(登録商標)で市場されている)である。
【0278】
1つの実施形態において、対象は、TFP発現細胞の活性を向上させる薬剤が投与され得る。例えば、1つの実施形態において、薬剤は、抑制分子を阻害する薬剤であり得る。抑制分子、例えば、プログラム死1(PD1)は、いくつかの実施形態において、TFP発現細胞の免疫エフェクター反応の開始能力を低下させ得る。抑制分子の例には、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4及びTGFRベータが含まれる。例えば、DNA、RNAまたはタンパク質レベルでの阻害による抑制分子の阻害は、TFP発現細胞の性能を最適化し得る。実施形態において、抑制性核酸、例えば、抑制性核酸、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNAは、TFP発現細胞において抑制分子の発現を阻害するために使用され得る。実施形態において、阻害剤はshRNAである。実施形態において、抑制分子は、TFP発現細胞内で阻害される。これらの実施形態において、抑制分子の発現を阻害するdsRNA分子が、TFPの成分、例えば全ての成分をコードする核酸に連結される。1つの実施形態において、抑制シグナルの阻害剤は、例えば、抑制分子に結合する抗体または抗体フラグメントであり得る。例えば、作用物質は、PD1、PD-L1、PD-L2またはCTLA4に結合する抗体また抗体フラグメント(例えば、イピリムマブ(MDX-010及びMDX-101とも称され、YERVOY(登録商標)として市場されている;Bristol-Myers Squibb;トレメリムマブ(Pfizerから入手可能なIgG2モノクローナル抗体、かつてチシリムマブ、CP-675,206として知られていたもの))であり得る。実施形態において、薬剤は、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM3)に結合する抗体または抗体フラグメントである。実施形態において、薬剤は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG3)に結合する抗体または抗体フラグメントである。
【0279】
いくつかの実施形態において、TFP発現細胞の活性を向上させる薬剤は、例えば、第1のドメイン及び第2のドメインを含む融合タンパク質であって、第1のドメインが抑制分子またはそのフラグメントであり、第2のドメインが陽性シグナルに関連するポリペプチド、例えば、本明細書に記載された細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリペプチドである、融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、陽性シグナルに関連するポリペプチドは、CD28、CD27、ICOSの共刺激ドメイン、例えば、CD28、CD27及び/またはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、及び/または一次シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書に記載の、例えば、CD3ゼータのものを含み得る。1つの実施形態において、融合タンパク質は、TFPを発現したものと同じ細胞によって発現される。別の実施形態において、融合タンパク質は、細胞、例えば、抗BCMA TFPを発現しないT細胞によって発現される。
【0280】
薬学的組成物
本発明の医薬組成物は、TFP発現細胞、例えば、本明細書に記載された複数のTFP発現細胞を、1つ以上の薬学的または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含み得る。そのような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースもしくはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドもしくはアミノ酸、例えば、グリシン;酸化防止剤;キレート剤、例えば、EDTAもしくはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);ならびに保存料を含み得る。本発明の組成物は、1つの態様において、静脈内投与用に製剤化される。
【0281】
本発明の薬学的組成物は、治療される(または予防される)疾患に適切な手法で投与され得る。投与の量及び頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患のタイプ及び重症度などの要因によって決定されるが、適切な用量は臨床試験によって決定され得る。
【0282】
1つの実施形態において、薬学的組成物は、混入物質、例えば、エンドトキシン、マイコプラズマ、複製可能なレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HIV gag、残存抗CD3/抗CD28被覆ビーズ、マウス抗体、プールされたヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培地成分、ベクターパッケージング細胞もしくはプラスミド成分、細菌及び真菌からなる群から選択される混入物質が実質的になく、例えば、検出レベルではない。1つの実施形態において、細菌は、Alcaligenes faecalis、Candida albicans、Escherichia coli、Haemophilus influenza、Neisseria meningitides、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Streptococcus pneumonia、及びStreptococcus pyogenesA群からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0283】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染もしくは転移の程度、及び状態における個体差を考慮して医師によって決定され得る。本明細書に記載のT細胞を含む薬学的組成物は、104~109細胞/kg体重、いくつかの例において105~106細胞/kg体重(これらの範囲内の全ての整数値を含む)の用量で投与され得ることが一般に述べられ得る。T細胞組成物はまた、これらの用量において複数回投与され得る。細胞は、免疫療法で一般的に知られている注入技術を使用することによって投与され得る(例えば、Rosenberg et al.,New Eng.J.of Med.319:1676,1988を参照されたい)。
【0284】
所定の態様において、活性化T細胞を対象に投与し、次いでその後再採血し(またはアフェレーシスが実施され)、本発明に従ってそこからT細胞を活性化し、これらの活性化及び増殖したT細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは数週間ごとに複数回行われ得る。所定の態様において、T細胞は10cc~400ccの採血から活性化され得る。所定の態様において、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採血から活性化される。
【0285】
対象組成物の投与は、エアロゾル吸入、注射、経口摂取、輸液、注入または移植によるものを含む任意の好都合な手法で行われ得る。本明細書に記載の組成物は、患者に対して、経動脈的に、皮下に、皮内に、腫瘍内に、節内に、髄内に、筋肉内に、静脈内(i.v.)注射によって、または腹腔内に投与され得る。1つの態様において、本発明のT細胞組成物は、患者に対して、皮内または皮下注射によって投与される。1つの態様において、本発明のT細胞組成物は、静脈内注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射され得る。
【0286】
特定の例示的な態様において、対象は、白血球を採取し、エキソビボで濃縮しまたは枯渇させて目的の細胞、例えば、T細胞を選択及び/または単離する白血球除去療法を受けてもよい。これらのT細胞分離株は、当該技術分野で知られている方法によって増殖され、1つ以上の本発明のTFP構築物が導入され得るように処理され、それによって本発明のTFP発現T細胞を生成してもよい。それを必要とする対象は、その後標準的な大量化学療法での治療に続いて末梢血幹細胞移植を受けてもよい。所定の態様において、移植の後またはそれと同時に、対象は、本発明の増殖したTFP T細胞の注入を受ける。追加的な態様において、増殖した細胞は、手術の前または後に投与される。
【0287】
患者に施される上記の治療の用量は、治療されている状態の正確な性質及び治療のレシピエントによって変わる。ヒト投与のための用量のスケーリングは、当該技術分野で認められた慣行に従って実施され得る。例えば、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))の用量は一般に、成人患者の場合1~約100mgの範囲内であり、通常は1~30日の期間、毎日投与される。好ましい1日用量は、1日当たり1~10mgであるが、いくつかの例において、1日当たり最大40mgのより多くの用量が使用され得る(米国特許第6,120,766号に記載されている)。
【0288】
1つの実施形態において、TFPは、例えば、インビトロ転写を使用してT細胞内に導入され、対象(例えば、ヒト)は、本発明のTFP T細胞の最初の投与及び1回以上のそれに続く本発明のTFP T細胞の投与を受け、その1回以上のそれに続く投与は、先の投与後、15日未満、例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日投与される。1つの実施形態において、本発明のTFP T細胞の複数回の投与が、対象(例えば、ヒト)に対して1週間ごとに投与され、例えば、本発明のTFP T細胞の2、3、または4回の投与が1週間ごとに投与される。1つの実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1週間ごとに複数回のTFP T細胞の投与(例えば、1週間ごとに2、3または4回の投与)(本明細書ではサイクルとも称される)を受け、これにTFP T細胞の投与をしない1週間が続き、次いで1回以上の追加のTFP T細胞の投与(例えば、1週間ごとに複数回のTFP T細胞の投与)が対象に施される。別の実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、複数サイクルのTFP T細胞を受け、各サイクル間の時間は10、9、8、7、6、5、4、または3日未満である。1つの実施形態において、TFP-T細胞は、1週間ごとに3回の投与のために1日おきに投与される。1つの実施形態において、本発明のTFP T細胞は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8週間またはそれ以上投与される。
【0289】
1つの態様において、BCMA TFP T細胞は、レンチウイルスなどのレンチウイルス性ウイルスベクターを使用して生成される。その方法で生成されるTFP-T細胞は、安定的なTFP発現を有する。
【0290】
1つの態様において、TFP T細胞は、形質導入後、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日間、TFPベクターを一過性に発現する。TFPの一過性の発現は、RNA TFPベクターの送達によってもたらされ得る。1つの態様において、TFP RNAは、エレクトロポレーションによってT細胞に形質導入される。
【0291】
一過性に発現するTFP T細胞を使用して(特にマウスscFv担持TFP T細胞で)治療されている患者に生じ得る潜在的な問題は、複数回の治療後のアナフィラキシーである。
【0292】
この理論に拘束されるものではないが、そのようなアナフィラキシー反応は、体液性抗TFP反応、すなわち、抗IgEアイソタイプを有する抗TFP抗体を発生させている患者によって引き起こされる可能性があると考えられる。患者の抗体産生細胞は、抗原への曝露が10~14日間中断された場合、IgGアイソタイプ(アナフィラキシーを引き起こさない)からIgEアイソタイプへのクラススイッチを受けていると思われる。
【0293】
患者が一過性TFP療法(RNA形質導入によって生成されるものなど)の過程で抗TFP抗体反応を生成する危険性が高い場合、TFP T細胞注入の中断は、10~14日より長く続けるべきではない。
【実施例】
【0294】
以下の実験実施例を参照することによって本発明を更に詳細に説明する。これらの実施例は、例示の目的でのみ提供され、別段特定されない限り限定することは意図されていない。それ故、本発明は、以下の実施例に限定されるものとして一切解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。更に説明することなく、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作製及び利用すること、ならびに特許請求された方法を実施することができると考えられる。以下の実施例は、本発明の様々な態様を具体的に挙げており、本開示の残余を限定するものとして一切解釈されるべきではない。
【0295】
実施例1:TFP構築物
抗BCMA TFP構築物は、短いリンカー(SL):AAAGGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号1)または長いリンカー(LL):AAAIEVMYPPPYLGGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号2)をコードするDNA配列のいずれかによってCD3またはTCR DNAフラグメントに連結した抗BCMA scFv DNAフラグメントを、XbaI及びEcoR1部位でp510ベクター((System Biosciences(SBI))にクローニングすることによって作り出す。
【0296】
生成した抗BCMA TFP構築物は、p510_抗BCMA_LL_TCRα(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒト完全長T細胞受容体α鎖)、p510_抗BCMA_LL_TCR αC(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒトT細胞受容体α定常ドメイン鎖)、p510_抗BCMA_LL_TCRβ(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒト完全長T細胞受容体β鎖)、p510_抗BCMA_LL_TCRβC(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒトT細胞受容体β定常ドメイン鎖)、p510_抗BCMA_LL_CD3γ(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒトCD3γ鎖)、p510_抗BCMA_LL_CD3δ(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒトCD3δ鎖)、p510_抗BCMA_LL_CD3ε(抗BCMA scFv-長いリンカー-ヒトCD3ε鎖)、p510_抗BCMA_SL_TCRβ(抗BCMA scFv-短いリンカー-ヒト完全長T細胞受容体β鎖)、p510_抗BCMA_SL_CD3γ(抗BCMA scFv-短いリンカー-ヒトCD3γ鎖)、p510_抗BCMA_SL_CD3δ(抗BCMA scFv-短いリンカー-ヒトCD3δ鎖)、p510_抗BCMA_SL_CD3ε(抗BCMA scFv-短いリンカー-ヒトCD3ε鎖)である。
【0297】
抗BCMA CAR構築物であるp510_抗BCMA_28ζは、抗BCMA、部分的なCD28の細胞外ドメイン、CD28の膜貫通ドメイン、CD28の細胞内ドメイン及びCD3ゼータをコードする合成DNAを、XbaI及びEcoR1部位でp510ベクターにクローニングすることによって生成される。
【0298】
抗BCMA TFP構築物は、リンカー:GGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号5)をコードするDNA配列によってCD3 DNAフラグメントに連結した抗BCMA scFv DNAフラグメントを、XbaI及びEcoR1部位でp510ベクター(SBI)にクローニングすることによって作り出した。生成した抗BCMA TFP構築物は、p510_抗BCMA_CD3γ(抗BCMA scFv(またはVHH)-リンカー-ヒトCD3γ鎖)及びp510_抗BCMA_CD3ε(抗BCMA scFv(またはVHH)-リンカー-ヒトCD3ε鎖)であった。
【0299】
完全長BCMAを合成し、BamHI及びNheI部位でp514(SBI)にクローニングし、安定な標的細胞株を生成するために使用される構築物p514_BCMAを生成した。
【0300】
抗線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及び抗カルボアンヒドラーゼ-9(CAIX)TFP構築物は、リンカー:GGGGSGGGGSGGGGSLE(配列番号5)をコードするDNA配列によってCD3 DNAフラグメントに連結した抗FAPまたは抗CAIX scFv DNAフラグメントをXbaI及びEcoR1部位でp510ベクター(SBI)にクローニングすることによって作り出す。生成され得る抗FAPまたは抗CAIX TFP構築物には、p510_抗FAP_CD3γ(抗FAP scFv-リンカー-ヒトCD3γ鎖)及びp510_抗FAP_CD3ε(抗FAP scFv-リンカー-ヒトCD3ε鎖)ならびにp510_抗CAIX_CD3γ(抗CAIX scFv-リンカー-ヒトCD3γ鎖)及びp510_抗CAIX_CD3ε(抗CAIX scFv-リンカー-ヒトCD3ε鎖)が含まれる。
【0301】
完全長FAP及びCAIXを合成し、BamHI及びNheI部位でp514(SBI)にクローニングし、安定な標的細胞株を生成するために使用され得る構築物p514_FAP及びp514_CAIXを生成し得る。
【0302】
例示的な構築物の配列は付録A:配列に開示されている。
【0303】
実施例2:抗体配列
抗体配列の生成
ヒトBCMAポリペプチドの標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号Q02223である。ヒトBCMAポリペプチド、及びそのフラグメントまたはドメインに特異的に結合することが可能な抗体ポリペプチドを提供する。抗BCMA抗体は、様々な技術を使用して生成され得る(例えば、(Nicholson et al,1997)を参照されたい)。マウス抗BCMA抗体が出発材料として使用される場合、マウス抗BCMA抗体のヒト化が臨床環境では望まれ、その場合、T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)治療、すなわち、TFP.BCMA構築物で形質導入されたT細胞での治療を受ける対象において、マウス特異的残基が、ヒト-抗マウス抗原(HAMA)反応を誘導し得る。ヒト化は、マウス抗BCMA抗体由来のCDR領域を、CDR及び/またはフレームワーク領域に対する他の修飾を任意に含む、適切なヒト生殖細胞系列のアクセプターフレームワークに移植することによって達成される。本明細書で提供されるように、抗体及び抗体フラグメント残基の番号付けは、Kabatに従う(Kabat E.A.et al,1991;Chothia et al,1987)。
【0304】
scFvの生成
ヒトまたはヒト化抗BCMA IgGを使用してTFP構築物用のscFv配列を生成する。ヒトまたはヒト化VL及びVHドメインをコードするDNA配列を得、構築物用のコドンを任意に、ヒト由来の細胞における発現に最適化する。VL及びVHドメインがscFvに現れる順序は変動し(すなわち、VL-VH、またはVH-VL配置)、「G4S」または「G4S」サブユニットの3つのコピー(G4S)3が可変ドメインを接続させてscFvドメインを生成する。抗BCMA scFvプラスミド構築物は、任意のFlag、His、または他のアフィニティタグを有し得、HEK293または他の好適なヒトまたは哺乳類の細胞株にエレクトロポレートされ、精製される。検証アッセイには、FACSによる結合分析、Proteonを使用する動態分析、及びBCMA発現細胞の染色が含まれる。
【0305】
VL及びVHドメインの例示的な抗BCMA CDRならびにそれらをそれぞれコードするヌクレオチド配列を以下に示す。
【0306】
抗BCMA
抗BCMA軽鎖CDR1
コード配列:AAAAGCAGCCAGAGCCTGGTGCATAGCAACGGCAACACCTATCTGCAT(配列番号7)
アミノ酸配列:KSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号8)
【0307】
抗BCMA軽鎖CDR2
コード配列:AAAGTGAGCAACCGCTTTAGC(配列番号9)
アミノ酸配列:KVSNRFS(配列番号10)
【0308】
抗BCMA軽鎖CDR3
コード配列:GCGGAAACCAGCCATGTGCCGTGGACC(配列番号11)
アミノ酸配列:AETSHVPWT(配列番号12)
【0309】
抗BCMA重鎖CDR1
コード配列:AAAGCGAGCGGCTATAGCTTTCCGGATTATTATATTAAC(配列番号13)
アミノ酸配列:KASGYSFPDYYIN(配列番号14)
【0310】
抗BCMA重鎖CDR2
コード配列:TGGATTTATTTTGCGAGCGGCAACAGCGAATATAACCAGAAATTTACCGGC(配列番号15)
アミノ酸配列:WIYFASGNSEYNQKFTG(配列番号16)
【0311】
抗BCMA重鎖CDR3
コード配列:CTGTATGATTATGATTGGTATTTTGATGTG(配列番号17)
アミノ酸配列:LYDYDWYFDV(配列番号18)
【0312】
抗BCMA軽鎖可変領域
コード配列:GATATTGTGATGACCCAGACCCCGCTGAGCCTGAGCGTGACCCCGGGCGAACCGGCGAGCATTAGCTGCAAAAGCAGCCAGAGCCTGGTGCATAGCAACGGCAACACCTATCTGCATTGGTATCTGCAGAAACCGGGCCAGAGCCCGCAGCTGCTGATTTATAAAGTGAGCAACCGCTTTAGCGGCGTGCCGGATCGCTTTAGCGGCAGCGGCAGCGGCGCGGATTTTACCCTGAAAATTAGCCGCGTGGAAGCGGAAGATGTGGGCGTGTATTATTGCGCGGAAACCAGCCATGTGCCGTGGACCTTTGGCCAGGGCACCAAACTGGAAATTAAAAGC(配列番号19)
アミノ酸配列:DIVMTQTPLSLSVTPGEPASISCKSSQSLVHSNGNTYLHWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGADFTLKISRVEAEDVGVYYCAETSHVPWTFGQGTKLEIKS(配列番号20)
【0313】
抗BCMA重鎖可変領域
コード配列:CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCGGAAGTGAAAAAACCGGGCGCGAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAAGCGAGCGGCTATAGCTTTCCGGATTATTATATTAACTGGGTGCGCCAGGCGCCGGGCCAGGGCCTGGAATGGATGGGCTGGATTTATTTTGCGAGCGGCAACAGCGAATATAACCAGAAATTTACCGGCCGCGTGACCATGACCCGCGATACCAGCAGCAGCACCGCGTATATGGAACTGAGCAGCCTGCGCAGCGAAGATACCGCGGTGTATTTTTGCGCGAGCCTGTATGATTATGATTGGTATTTTGATGTGTGGGGCCAGGGCACCATGGTGACCGTGAGCAGC(配列番号21)
アミノ酸配列:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYSFPDYYINWVRQAPGQGLEWMGWIYFASGNSEYNQKFTGRVTMTRDTSSSTAYMELSSLRSEDTAVYFCASLYDYDWYFDVWGQGTMVTVSS(配列番号22)
【0314】
抗BCMA VHH1
コード配列:
【0315】
ATGGCGGTGGTCCTGGCTGCTCTACTACAAGGTGTCCAGGCTCAGGTGCACCCGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTGCAGACTGGGGGGTCTCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGCTGGTATCTTCAGTATCAATGTCATGGGCTGGTACCGCCAGGCTCCAGGGAAGCAGCGCGAATTGGTCGCGAGTATAACTAGTCGTGGTGATACAACGTATGCGAACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACACGGTATATCTGCAAATGAACGCCCTGAAACCTGAGGACACAGCCGTCTATTACTGTAATTTAAAGGGGACAGACTATAGTGGTACATCCACCCAGACCTTCGACAGACAGGGCCAGGGGACCCAGGTCACCGTCTCTTCGGAACCCAAGACACCAAAACCACAACCACAACCACAACCACAACCACAACCCAATCCTACAACAGAATCCAAGTGTCCCAAATGTCCAGCCCCTGAGCTCCTGGGAGGGCCCTCAGTCTTCATCTTCCCCCCGAAACCCAAGGACGTCCTCTCCATC(配列番号23)
アミノ酸配列:
QVHPVESGGGLVQTGGSLRLSCAASAGIFSINVMGWYRQAPGKQRELVASITSRGDTTYANSVKGRFTISRDNAKNTVYLQMNALKPEDTAVYYCNLKGTDYSGTSTQTFDRQGQGTQVTVSSEPKTPKPQPQPQPQPQPNPTTESKCPKCPAPELLGGPSVFIFPPKPKDVLSI(配列番号24)
抗BCMA VHH1 CDR1
INVMG(配列番号25)
抗BCMA VHH1 CDR2
SITSRGDTTYANSVKG(配列番号26)
抗BCMA VHH1 CDR3
LKGTDYSGTSTQTFDR(配列番号28)
抗BCMA VHH2
QVQLVESGGGLVQPGESLRLSCAASTNIFSISPMGWYRQAPGKQRELVAAIHGFSTLYADSVKGRFTISRDNAKNTIYLQMNSLKPEDTAVYYCNKVPWGDYHPRNVYWGQGTQVTVSSEPKTPKPQPQPQPQPQPQPNPTTESKCPKCPAPELLGGPSVFIFPPKPKDVLSI
抗BCMA VHH2 CDR1
ISPMG(配列番号29)
抗BCMA VHH2 CDR2
AIHGFSTLYADSVKG(配列番号30)
抗BCMA VHH2 CDR3
VPWGDYHPRNVY(配列番号31)
【0316】
TCRサブユニット源
ヒトT細胞受容体(TCR)複合体のサブユニットは全て、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含有する。ヒトTCR複合体は、CD3イプシロンポリペプチド、CD3ガンマポリペプチド、CD3デルタポリペプチド、CD3ゼータポリペプチド、TCRアルファ鎖ポリペプチド及びTCRベータ鎖ポリペプチドを含有する。ヒトCD3イプシロンポリペプチドの標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号P07766である。ヒトCD3ガンマポリペプチドの標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号P09693である。ヒトCD3デルタポリペプチドの標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号P043234である。ヒトCD3ゼータポリペプチドの標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号P20963である。ヒトTCRアルファ鎖の標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号Q6ISU1である。ヒトTCRベータ鎖C領域の標準的な配列は、Uniprotアクセッション番号P01850であり、ヒトTCRベータ鎖V領域の配列は、P04435である。
【0317】
ヒトCD3イプシロンポリペプチドの標準的な配列は:MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI(配列番号32)である。
【0318】
ヒトCD3ガンマポリペプチドの標準的な配列は:MEQGKGLAVLILAIILLQGTLAQSIKGNHLVKVYDYQEDGSVLLTCDAEAKNITWFKDGKMIGFLTEDKKKWNLGSNAKDPRGMYQCKGSQNKSKPLQVYYRMCQNCIELNAATISGFLFAEIVSIFVLAVGVYFIAGQDGVRQSRASDKQTLLPNDQLYQPLKDREDDQYSHLQGNQLRRN(配列番号33)である。
【0319】
ヒトCD3デルタポリペプチドの標準的な配列は:MEHSTFLSGLVLATLLSQVSPFKIPIEELEDRVFVNCNTSITWVEGTVGTLLSDITRLDLGKRILDPRGIYRCNGTDIYKDKESTVQVHYRMCQSCVELDPATVAGIIVTDVIATLLLALGVFCFAGHETGRLSGAADTQALLRNDQVYQPLRDRDDAQYSHLGGNWARNK(配列番号34)である。
【0320】
ヒトCD3ゼータポリペプチドの標準的な配列は:MKWKALFTAAILQAQLPITEAQSFGLLDPKLCYLLDGILFIYGVILTALFLRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号35)である。
【0321】
ヒトTCRアルファ鎖の標準的な配列は:MAGTWLLLLLALGCPALPTGVGGTPFPSLAPPIMLLVDGKQQMVVVCLVLDVAPPGLDSPIWFSAGNGSALDAFTYGPSPATDGTWTNLAHLSLPSEELASWEPLVCHTGPGAEGHSRSTQPMHLSGEASTARTCPQEPLRGTPGGALWLGVLRLLLFKLLLFDLLLTCSCLCDPAGPLPSPATTTRLRALGSHRLHPATETGGREATSSPRPQPRDRRWGDTPPGRKPGSPVWGEGSYLSSYPTCPAQAWCSRSALRAPSSSLGAFFAGDLPPPLQAGAA(配列番号36)である。
【0322】
ヒトTCRアルファ鎖C領域の標準的な配列は:PNIQNPDPAVYQLRDSKSSDKSVCLFTDFDSQTNVSQSKDSDVYITDKTVLDMRSMDFKSNSAVAWSNKSDFACANAFNNSIIPEDTFFPSPESSCDVKLVEKSFETDTNLNFQNLSVIGFRILLLKVAGFNLLMTLRLWSS(配列番号37)である。
【0323】
ヒトTCRアルファ鎖V領域CTL-L17の標準的な配列は:MAMLLGASVLILWLQPDWVNSQQKNDDQQVKQNSPSLSVQEGRISILNCDYTNSMFDYFLWYKKYPAEGPTFLISISSIKDKNEDGRFTVFLNKSAKHLSLHIVPSQPGDSAVYFCAAKGAGTASKLTFGTGTRLQVTL(配列番号38)である。
【0324】
ヒトTCRベータ鎖C領域の標準的な配列は:EDLNKVFPPEVAVFEPSEAEISHTQKATLVCLATGFFPDHVELSWWVNGKEVHSGVSTDPQPLKEQPALNDSRYCLSSRLRVSATFWQNPRNHFRCQVQFYGLSENDEWTQDRAKPVTQIVSAEAWGRADCGFTSVSYQQGVLSATILYEILLGKATLYAVLVSALVLMAMVKRKDF(配列番号39)である。
【0325】
ヒトTCRベータ鎖V領域CTL-L17の標準的な配列は:MGTSLLCWMALCLLGADHADTGVSQNPRHNITKRGQNVTFRCDPISEHNRLYWYRQTLGQGPEFLTYFQNEAQLEKSRLLSDRFSAERPKGSFSTLEIQRTEQGDSAMYLCASSLAGLNQPQHFGDGTRLSIL(配列番号40)である。
【0326】
ヒトTCRベータ鎖V領域YT35の標準的な配列は:MDSWTFCCVSLCILVAKHTDAGVIQSPRHEVTEMGQEVTLRCKPISGHNSLFWYRQTMMRGLELLIYFNNNVPIDDSGMPEDRFSAKMPNASFSTLKIQPSEPRDSAVYFCASSFSTCSANYGYTFGSGTRLTVV(配列番号41)である。
【0327】
TCRドメイン及びscFvからのTFPの生成
BCMA scFvは、G4S、(G4S)2、(G4S)3または(G4S)4などのリンカー配列を使用してCD3イプシロンまたは他のTCRサブユニット(1C参照)に組み換えで連結される。様々なリンカー及びscFvの構造が利用される。TFPの生成のため、TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を完全長ポリペプチドまたはそれらの定常ドメインのみのいずれかとして使用した。TCRアルファ及びTCRベータ鎖の任意の可変配列は、TFPの作製を可能にする。
【0328】
TFP発現ベクター
プロモーター(サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー-プロモーター)、分泌を可能にするためのシグナル伝達配列、ポリアデニル化シグナル及び転写ターミネーター(ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子)、エピソーム複製及び原核生物における複製を可能にする要素(例えば、SV40起点及びColE1または当該技術分野で知られている他のもの)ならびに選択を可能にする要素(アンピシリン耐性遺伝子及びゼオシンマーカー)を含む発現ベクターを提供する。
【0329】
好ましくは、TFPをコードする核酸構築物は、レンチウイルス発現ベクターにクローニングされ、発現は、BCMA+標的細胞に反応するTFP.BCMA形質導入T細胞(「BCMA.TFP」もしくは「BCMA.TFP T細胞」または「TFP.BCMA」もしくは「TFP.BCMA T細胞」)のエフェクターT細胞反応の量及び質に基づいて認められる。エフェクターT細胞反応には、細胞拡大、増殖、倍加、サイトカイン産生及び標的細胞溶解または細胞溶解活性(すなわち、脱顆粒)が含まれるがこれらに限定されない。
【0330】
TFP.BCMAのレンチウイルス転移ベクターは、VSVg偽型レンチウイルス粒子にパッケージされるゲノム材料を産生するために使用される。レンチウイルス転移ベクターのDNAをVSVgの3つのパッケージング成分、gag/pol及びrevをリポフェクタミン試薬と組み合わせて混合し、それらを一緒に293細胞にトランスフェクトする。24及び48時間後、培地を採取し、ろ過し、超遠心分離によって濃縮する。得られたウイルス調製物を-80℃で保存する。形質導入単位の数は、SupT1細胞での滴定によって決定される。再指向性TFP.BCMA T細胞は、新たなナイーブT細胞を抗CD3x抗CD28ビーズで24時間活性化し、次いで適切な数の形質導入単位を加えて、所望の割合の形質導入されたT細胞を得ることによって産生される。これらの修飾T細胞を、それらが休止し、サイズが減少するまで増殖させ、この時点でそれらを後の分析のために凍結保存する。細胞の数及びサイズは、コールターマルチサイザーIIIを使用して測定する。凍結保存の前に、形質導入された細胞(細胞表面上でTFP.BCMAを発現する)の割合及びその発現のそれらの相対的蛍光強度をフローサイトメトリー分析によって決定する。ヒストグラムのプロットから、TFPの相対的発現レベルが、形質導入された割合とそれらの相対的蛍光強度を比較することによって調べられる。
【0331】
いくつかの実施形態において、複数のウイルスベクターでのT細胞の形質導入によって複数のTFPが導入される。
【0332】
ヒト化TFP再指向性T細胞の細胞溶解活性、増殖能力及びサイトカイン分泌の評価
TFP.BCMA T細胞の、細胞表面で発現するTFPを産生する及び標的腫瘍細胞を殺傷し、増殖し、サイトカインを分泌する機能的能力は、当該技術分野で知られているアッセイを使用して決定される。
【0333】
ヒトPBMC(例えば、ナイーブT細胞が、T細胞、すなわち、CD4+及びCD8+リンパ球に対して負の選択によって得られる正常なアフェレーシスドナー由来の血液)をヒトインターロイキン-2(IL-2)で処理し、次いで抗CD3x抗CD28ビーズで、例えば、10%RPMI中、37℃、5%CO2で活性化してから、TFPをコードするレンチウイルスベクターで形質導入する。フローサイトメトリーアッセイを利用して、例えば、抗FLAG抗体または抗マウス可変ドメイン抗体によって、TFPの細胞表面での存在を確認する。サイトカイン(例えば、IFN-γ)産生は、ELISAまたは他のアッセイを使用して測定される。
【0334】
実施例1:ヒトALLマウスモデルにおけるヒトTFP T細胞の効力
初代ヒトALL細胞は、インビトロでそれらを培養する必要なしに免疫不全マウス(例えば、NSGまたはNOD)で成長し得る。同様に、培養されたヒトALL細胞株は、そのようなマウスにおいて白血病を誘導し得る。ALLを有するマウスは、例えば、モデルHALLX5447において、ヒトTFP.BCMA T細胞の効力を試験するために使用され得る。このモデルでの読み出しは、静脈内投与されるヒトTFP.BCMA T細胞の非存在下及び存在下でのALL細胞の静脈内(i.v.)注入後のマウスの生存率である。
【0335】
実施例2:インビボ固形腫瘍異種移植マウスモデルにおけるヒトTFP T細胞治療
ヒトTFP.BCMA T細胞の効力はまた、ヒトBCMA発現ALL、CLLまたはNHLヒト細胞株に由来する皮下固形腫瘍を有する免疫不全マウスモデルにおいて試験され得る。ヒトTFP.BCMA T細胞治療に反応した腫瘍縮小は、腫瘍サイズのキャリパー測定によって、またはGFP発現腫瘍細胞によって放出されるGFPの蛍光シグナルの強度を観察することによってのいずれかで評価され得る。
【0336】
初代ヒト固形腫瘍細胞は、インビトロでそれらを培養する必要なしに免疫不全マウスで成長し得る。例示的な固形がん細胞には、例えば、The Cancer Genome Atlas(TCGA)及び/またはthe Broad Cancer Cell Line Encyclopedia(CCLE,Barretina et al.,Nature 483:603(2012)を参照されたい)で提供される固形腫瘍細胞株が含まれる。例示的な固形がん細胞には、中皮腫、腎細胞癌、胃癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸癌、子宮頚癌、脳腫瘍、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、子宮内膜癌、または胃癌から単離された初代腫瘍細胞が含まれる。いくつかの実施形態において、治療されるがんは、中皮腫、乳頭漿液性卵巣腺癌、明細胞性卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、膵臓腺癌、膵管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃腺癌、食道腺癌、結腸直腸腺癌及び乳腺腺癌からなる群から選択される。これらのマウスは、ヒト腫瘍異種移植モデルにおいてTFP.BCMA T細胞の効力を試験するために使用され得る(例えば、Morton et al.,Nat.Procol.2:247(2007)を参照されたい)。1×106~1×107個の初代細胞(ECマトリクス材料中のコラゲナーゼ処理バルク腫瘍懸濁物)または腫瘍フラグメント(ECマトリクス材料中の初代腫瘍フラグメント)の皮下の移植または注射に続いて、腫瘍を治療開始前に200~500mm3まで成長させる。
【0337】
実施例3:多重TFPポリペプチドの実証、及び多重ヒト化TFP再指向性T細胞の使用
本明細書で提供されるTFPポリペプチドは、内因性TCRサブユニットのポリペプチドと機能的に会合して機能的TCR複合体を形成することが可能である。ここで、機能的多重組み換えTCR複合体を生成するために、レンチウイルスベクターでの複数のTFPがT細胞を形質導入するために使用される。例えば、i)CD3デルタポリペプチド由来の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインならびにBCMA特異的scFv抗体フラグメントを有する第1のTFP、及びii)CD3ガンマポリペプチド由来の細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインならびにBCMA特異的抗体フラグメントを有する第2のTFPを含有するT細胞を提供する。第1のTFP及び第2のTFPは、互いに、及び内因性TCRサブユニットのポリペプチドと相互作用することが可能であり、それによって機能的TCR複合体を形成する。
【0338】
これらの多重ヒト化TFP.BCMA T細胞の使用は、上記の実施例で提供されるように液性及び固形腫瘍で実証され得る。
【0339】
実施例4:TFPで形質導入されたT細胞の調製
レンチウイルスの産生
適切な構築物をコードするレンチウイルスを以下のように調製する。5×106個のHEK293FT細胞を、100mmのディッシュに播種し、一晩で70~90%の密集度に到達させる。2.5μgの示されたDNAプラスミド及び20μLのレンチウイルスパッケージングミックス(ALSTEM、カタログ#VP100;付録B3参照)を0.5mLの血清を有しないDMEMまたはOpti-MEM I培地中で希釈し、穏やかに混合する。別のチューブにおいて、30μLのNanoFectトランスフェクション試薬(ALSTEM、カタログ番号NF100)を0.5mLの血清を有しないDMEMまたはOpti-MEM I培地中で希釈し、穏やかに混合する。次いでNanoFect/DMEM及びDNA/DMEM溶液を一緒に混合し、10~15秒間ボルテックスしてから、DMEM-プラスミド-NanoFect混合物を室温で15分間インキュベートする。前工程からの完全トランスフェクション複合体を細胞のプレートに滴下添加し、揺動させてプレート内のトランスフェクション複合体を均等に分散する。次いでプレートを加湿された5%CO2インキュベータ内で37℃で一晩インキュベートする。翌日、上清を10mLの新たな培地に置き換え、20μLのViralBoost(500x、ALSTEM、カタログ番号VB100)を追加する。次いでプレートを37℃で更に24時間インキュベートする。次いでレンチウイルスを含有する上清を50mLの滅菌蓋つき円錐状遠心チューブ内に採取し、氷上に置く。4℃で15分間、3000rpmでの遠心分離後、透明な上清を低タンパク質結合性0.45μm滅菌フィルターでろ過し、その後ウイルスを4℃で1.5時間、25,000rpmでの超遠心分離(Beckmann、L8-70M)によって単離する。ペレットを取り出し、DMEM培地に再懸濁し、レンチウイルス濃度/力価を、Lenti-X qRT-PCR滴定キット(Clontech;カタログ番号631235)を使用して定量的RT-PCRによって確立する。任意の残余のプラスミドDNAは、DNaseIでの処理によって除去する。ウイルスストック調製物は、すぐに感染のために使用するか、または後の使用のために等分し、-80℃で保存する。
【0340】
PBMC単離
末梢血単核細胞(PBMC)を全血またはバフィーコートのいずれかから調製する。全血を10mLのヘパリンバキュテナー内に採取し、すぐに処理するか、または4℃で一晩保存する。およそ10mLの抗凝固全血を、50mLの円錐状遠心チューブ内で、20mLの総体積とするための滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液と混合する(PBS、pH7.4、Ca2+/Mg2+を有しない)。次いで20mLのこの血液/PBS混合物を15mLのFicoll-Paque PLUS(GE Healthcare、17-1440-03)の表面上に穏やかに載せてから、ブレーキをかけることなく室温で30~40分間400gで遠心分離する。
【0341】
バフィーコートは、Research Blood Components(Boston,MA)から購入する。Leucosepチューブ(Greiner bio-one)は、15mLのFicoll-Paque(GE Health Care)を添加することによって準備し、1000gで1分間遠心分離する。バフィーコートは、PBS(pH7.4、Ca2+もMg2+も有しない)中で1:3に希釈する。希釈されたバフィーコートをLeucosepチューブに移し、ブレーキをかけることなく1000gで15分間遠心分離する。希釈血漿/Ficoll界面に見られるPBMCを含有する細胞層を、Ficollによる混入を最小限にするように慎重に取り出す。次いで、残余のFicoll、血小板、及び血漿タンパク質を、室温で200gで10分間遠心分離することによってPBMCを40mLのPBSで3回洗浄することによって除去する。次いで細胞を血球計で数える。洗浄したPBMCを、CAR-T培地(AIM V-AlbuMAX(BSA)(Life Technologies)、5%AB血清及び1.25μg/mLアンホテリシンB(Gemini Bioproducts,Woodland,CA)、100U/mLペニシリン、ならびに100μ/mLストレプトマイシンを有する)で一度洗浄する。代替的には、洗浄したPBMCを断熱バイアルに移し、-80℃で24時間凍結してから、後の使用のために液体窒素中で保存する。
【0342】
T細胞活性化
全血またはバフィーコートのいずれかから調製されたPBMCを、ウイルスの形質導入の前に、抗ヒトCD28及びCD3抗体結合磁気ビーズで24時間刺激する。新たに単離したPBMCを、huIL-2を有しないCAR-T培地(AIM V-AlbuMAX(BSA)(Life Technologies)、5%のAB血清及び1.25μg/mLのアンホテリシンB(Gemini Bioproducts)、100U/mLのペニシリン、ならびに100μg/mLのストレプトマイシンを有する)で一度洗浄してから、300IU/mLのヒトIL-2(1000xストックから;Invitrogen)を有するCAR-T培地に1×106細胞/mLの最終濃度で再懸濁する。PBMCが事前に凍結されていた場合、それらを解凍し、予め温めた(37℃)9mLのcDMEM培地(Life Technologies)に1×107細胞/mLで、10%FBS、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンの存在下で1×106細胞/mLの濃度で再懸濁してから、CART培地で一度洗浄し、CAR-T培地に1×106細胞/mLで再懸濁し、上記の通りIL-2を添加する。
【0343】
活性化の前に、抗ヒトCD28及びCD3抗体結合磁気ビーズ(Invitrogen)を、磁気ラックを使用して1mLの滅菌1×PBS(pH7.4)で3回洗浄してビーズを溶液から分離してから、300IU/mLのヒトIL-2を有するCAR-T培地に再懸濁して4×107ビーズ/mLの最終濃度とする。次いでPBMC及びビーズを25μL(1×106ビーズ)のビーズを1mLのPBMCに移すことによって1:1のビーズ対細胞比で混合する。次いで所望の数のアリコートを12ウェルの低付着性または未処理の細胞培養プレートの単一のウェルに分配し、ウイルスの形質導入前に37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。
【0344】
T細胞の形質導入/トランスフェクション及び増殖
PBMCの活性化後、細胞を37℃、5%CO2にて24時間インキュベートする。レンチウイルスを氷上で解凍し、5×106のレンチウイルスを、培地1mL当たり2μLのTransplus(Alstem)(最終希釈1:500)と共に1×106細胞の各ウェルに添加する。細胞を更に24時間インキュベートしてから、ウイルスの添加を繰り返す。代替的には、レンチウイルスを氷上で解凍し、それぞれのウイルスを5μg/mLのポリブレン(Sigma)の存在下で5または50MOIで添加する。細胞を室温で100分間100gでスピノキュレートする。次いで細胞を300IU/mLのヒトIL-2の継続的な存在下で6~14日の期間成長させる(総インキュベート時間は、必要とされる最終的なCAR-T細胞の数に依存する)。細胞濃度を2~3日ごとに分析し、その時に培地を追加して細胞懸濁液を1×106細胞/mLに維持する。
【0345】
いくつかの例において、活性化したPBMCをインビトロで転写された(IVT)mRNAでエレクトロポレートする。ヒトPBMCをDynabeads(登録商標)(ThermoFisher)で1対1の比で3日間、300IU/mlの組み換えヒトIL-2(R&D System)の存在下で刺激する。ビーズをエレクトロポレーションの前に除去する。細胞を洗浄し、OPTI-MEM(登録商標)培地(ThermoFisher)に2.5×107細胞/mLの濃度で再懸濁する。200μLのその細胞懸濁液(5×106細胞)を2mmのギャップのElectroporation Cuvettes Plus(商標)(Harvard Apparatus BTX)に移し、氷上で予冷する。10μgのIVT TFP mRNAを細胞懸濁液に加える。次いでmRNA/細胞混合物を、ECM830 Eletro Square Wave Porator(Harvard Apparatus BTX)を使用して200Vで20ミリ秒間エレクトロポレートする。エレクトロポレーションの直後、細胞を新たな細胞培養培地(AIM V AlbuMAX(BSA)無血清培地+5%ヒトAB血清+300IU/mlのIL-2)に移し、37℃でインキュベートする。
【0346】
細胞染色によるTFP発現の検証
レンチウイルスの形質導入またはmRNAのエレクトロポレーションに続いて、抗BCMA TFPの発現を、抗マウスFab抗体を使用してフローサイトメトリーによって確認して、マウス抗BCMA scFvを検出する。T細胞を3mLの染色緩衝液(PBS、4%BSA)で3回洗浄し、ウェル当たり1×10
6細胞でPBSに再懸濁する。死細胞の排除のため、細胞をLive dead aqua(Invitrogen)で30分間氷上でインキュベートする。細胞をPBSで2回洗浄し、50μLの染色緩衝液に再懸濁する。Fc受容体をブロックするため、1μLの1:100の希釈正常ヤギIgG(LifeTechnologies)を各チューブに加え、氷中で10分間インキュベートする。1.0mLのFACS緩衝液を各チューブに加え、よく混合し、細胞を300gで5分間遠心分離によってペレット化する。scFv TFPの表面発現は、アイソタイプ対照として機能するビオチン標識正常ポリクローナルヤギIgG抗体(Life Technologies)を用いてビオチン標識ポリクローナルヤギ抗マウスF(ab)
2抗体(Life Technologies)によって検出する。両抗体を100μLの反応体積中で10μg/mLで加える。次いで細胞を4℃で45分間インキュベートし、1回洗浄し、FACS緩衝液に再懸濁し、100μLの1:1000の希釈正常マウスIgGを各チューブに加えることによって正常マウスIgG(Invitrogen)でブロックする。次いで細胞を氷上で10分間インキュベートし、染色緩衝液で洗浄し、100μLの染色緩衝液に再懸濁する。次いで細胞を1.0μLのフィコエリトリン(PE)標識ストレプトアビジン(BD Biosciences)の添加によって染色し、APC抗ヒトCD3抗体(クローンUCHT1、BD Biosciences)、PerCP/Cy5.5抗ヒトCD8抗体(クローンSK1、BD Biosciences)及びパシフィックブルー抗ヒトCD4抗体(クローンRPA-T4、BD Biosciences)を各チューブに加える。フローサイトメトリーをLSRFortessa(商標)X20(BD Biosciences)を使用して実施し、データをFACS divaソフトウェアを使用して取得し、FlowJo(登録商標)(Treestar,Inc.Ashland,OR)で分析する。形質導入されたT細胞の20%~40%が抗BCMA TFPを発現し、CAR及びTFP構築物の同等のレベルの形質導入及び表面発現を示す(
図5)。
【0347】
細胞活性化によるTFP発現の検証
レンチウイルスの形質導入またはmRNAのエレクトロポレーションに続いて、抗BCMA TFPによる標的細胞の活性化をフローサイトメトリーによって確認する。CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv(配列番号45)、ならびに形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA VHH2(配列番号28)でT細胞を形質導入した。形質導入されたT細胞(エフェクター細胞)及びBCMA陽性K562標的細胞を1:1の比で一晩共培養した。形質導入していないBCMA陽性T細胞培養物と同様に、BCMA陰性K562細胞を陰性対照として使用した。細胞を、いずれも標的細胞活性化のマーカーであるCD25及びCD69について上述したように染色した。
【0348】
結果は
図10に示されている。
図10のA(CD25陽性細胞)及び10のB(CD69陽性細胞)に示されるように、全ての形質導入された細胞は、BCMA陰性対照(黒色棒)、特にV
HH2構築物で形質導入された細胞と比較して、標的細胞集団(灰色棒)においてCD69及びCD25の両方の発現を活性化することができ、陽性対照よりも有意に活性化していた。
【0349】
同様の実験を、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)を使用して実施した。
図10のC(CD25陽性細胞)及び10のD(CD69陽性細胞)に示されるように、全てのTFP(いずれの配置)はBCMA陽性標的細胞を活性化することができた(灰色棒)。
【0350】
次に、分泌されたときに標的細胞のアポトーシスを媒介する細胞傷害性リンパ球の顆粒に貯蔵されているセリンプロテアーゼであるグランザイムBについて標的細胞を染色した。TFP-T細胞の活性化は、細胞内抗体染色及びフローサイトメトリー分析によって評価される。TFP T細胞(sdAb V
HH2が形質導入された)及びBCMA陽性K562標的細胞を上述のように調製し、1:1で共培養する。BCMA陰性細胞を対照として使用した。細胞を固定した後、グランザイムB抗体(Alexa Fluor 700(商標)マウス抗ヒトグランザイムB、クローンGB11、BD Biosciences Cat#560213)を洗浄緩衝液で1:100に希釈する。細胞を100μlの希釈抗体に再懸濁し、暗所で4℃で30分間インキュベートする。細胞を洗浄し、BD LSRFortessa(登録商標)X-20細胞分析器ですぐに分析する。
結果は
図10のE(抗BCMA V
HH2 TFP T細胞)及び10のF(抗BCMA scFv2 TFP T細胞)に示されており、BCMA陽性標的細胞との接触後のTFP T細胞中のグランザイムBレベルを示している。
図10のEでは、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv(配列番号45)、及び形式CD3ε、CD3γ、TCRβ、及びCD28ζの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)で細胞を形質導入した;
図10のFでは、LH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTCRβ、ならびにHL配置のCD3εの抗BCMA scFv2(配列番号43)で細胞を形質導入した。図に示されるように、陰性対照を除く全てのTFP T細胞は、BCMA陰性細胞(黒色棒)と比較して、BCMA陽性標的細胞(灰色棒)と接触した後に上昇したレベルのグランザイムBを有していた。
図10のG(E:T 3:1)及び
図10H(E:T 1:3)では、CD3εサブユニットに結合したBCMA陽性対照scFv1(配列番号45)、形式CD3ε、CD3γ、TCRβの単一ドメイン抗体(sdAb)抗BCMA V
HH2(配列番号28)、及びLH配置の形式CD3ε、CD3γ、及びTFRβの抗BCMA scFV2(配列番号43)で細胞を形質導入した。両方の10のGに示されるように、空ベクターを除く全ての構築物は、3:1のT細胞に対するエフェクター細胞の比において腫瘍細胞の数を減少させるのに十分であった。1:3のT細胞に対するエフェクター細胞の比では(10のH)、全ての構築物は、わずかにより多様な効力で腫瘍細胞の数を減少させることができた。中実棒はBCMA陰性HeLa細胞を表し、空の棒はBCMA陽性細胞を表す。
【0351】
実施例5:フローサイトメトリーによる細胞傷害性アッセイ
BCMA標的に対して陽性または陰性のいずれかである標的細胞を蛍光染料であるカルボキシフルオレセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)で標識する。これらの標的細胞を、未形質導入の、対照のCAR-T構築物で形質導入された、またはTFPで形質導入されたエフェクターT細胞と混合する。示されたインキュベート期間の後、死対生CFSE標識標的細胞及び陰性対照の標的細胞の割合を各エフェクター/標的細胞培養についてフローサイトメトリーによって決定する。各T細胞+標的細胞培養における標的細胞の生存率を、標的細胞のみを含有するウェルに対して計算する。
【0352】
エフェクターT細胞の細胞傷害活性は、エフェクター及び標的細胞の共インキュベート後に、エフェクターT細胞を有しないまたは有する標的細胞における生存標的細胞の数をフローサイトメトリーを使用して比較することによって測定する。BCMA TFPまたはCAR-T細胞での実験では、標的細胞はBCMA陽性RPMI-8226形質細胞腫/骨髄腫細胞(ATCC、CCL-155)である一方で、陰性対照として使用される細胞はBCMA陰性Raji Burkittリンパ腫細胞(ATCC、CCL-86)である。
【0353】
標的細胞を一度洗浄し、PBSに1×106細胞/mLで再懸濁する。蛍光染料のカルボキシフルオレセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)(ThermoFisher)を0.03μMの濃度で細胞懸濁液に加え、細胞を室温で20分間インキュベートする。反応体積の5倍の体積で完全細胞培養培地(RPMI-1640+10%HI-FBS)を細胞懸濁液に加えることによって標識化反応を停止させ、細胞を室温で更に2分間インキュベートする。細胞を遠心分離によってペレット化し、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640(Invitrogen)プラス5%AB血清(Gemini Bioproducts)に2×105細胞/mLで再懸濁する。50マイクロリットルのCFSE標識標的細胞懸濁液(10,000細胞に相当)を96ウェルのU底プレート(Corning)の各ウェルに加える。
【0354】
抗BCMA TFP構築物で形質導入されたエフェクターT細胞を、陰性対照としての未形質導入T細胞と一緒に洗浄し、細胞傷害性培地に2×106細胞/mLまたは1×106細胞/mLで懸濁する。50μLのエフェクターT細胞懸濁液(100,000または50,000細胞に相当)を、播種した標的細胞に加え、100μLの総体積中、それぞれ10対1または5対1のエフェクター対標的の比にする。次いで培養物を混合し、遠沈させ、37℃、5%CO2で4時間インキュベートする。このインキュベートの直後、7AAD(7-アミノアクチノマイシンD)(BioLegend(登録商標))を製造者によって推奨されているように培養細胞に加え、BD Fortessa X-20(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリーを実施する。フローサイトメトリーデータの分析は、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(TreeStar,Inc.)を使用して実施する。
【0355】
RPMI-8226標的細胞の生存の割合は、エフェクターT細胞及び標的細胞を有する試料中の生存RPMI-8226標的細胞(CFSE+7-AAD-)の数を、標的細胞のみを有する試料中の生存RPMI-8226(CFSE+7-AAD-)細胞の数で除することによって計算される。エフェクター細胞の細胞傷害性は、RPMI-8226の殺傷率=100%-RPMI-8226細胞の生存率として計算される。
【0356】
抗BCMA28ζ CAR構築物で形質導入されたT細胞は、未形質導入のまたは非BCMA特異的CAR対照で形質導入されたT細胞と比較した場合、BCMA発現細胞に対して細胞傷害性を示し得る。しかしながら、抗BCMA-CD3εで形質導入されたT細胞は、抗BCMA CAR対照よりも標的に対して効果的な細胞傷害性を誘導し得る。抗BCMA-CD3γ TFPはまた、5~10:1のエフェクター:標的比において抗BCMA-CARで観察されるよりも高い強い細胞傷害性を媒介し得る。いくらかの細胞傷害性が抗BCMA-TCRα及び抗BCMA-TCRβ TFPで観察され得る。同様の結果は、代替ヒンジ領域で構築された抗BCMA TFPで得られ得る。今度もまた、BCMA発現細胞に対する細胞傷害性は、抗BCMA-CARで形質導入されたT細胞よりも抗BCMA-CD3εまたは抗BCMA-CD3γ TFPで形質導入されたT細胞で高い場合がある。
【0357】
BCMAに特異的なTFPをコードするmRNAでエレクトロポレートされたT細胞もまた、BCMA発現細胞に対する強い細胞傷害性を示し得る。対照または抗BCMA TFP構築物のいずれでもBCMA陰性細胞の有意な殺傷が見られない場合がある一方で、BCMA発現細胞のBCMA特異的な殺傷が、抗BCMA-CD3ε SLまたは抗BCMA-CD3γ SL TFPのいずれかで形質導入されたT細胞によって観察され得る。
【0358】
B細胞成熟抗原(BCMA)に特異的なTFPで形質導入されたT細胞はまた、BCMA発現RPMI8226細胞に対して強い細胞傷害性を示した。抗BCMA-CD3εまたは抗BCMA-CD3γ TFPで形質導入されたT細胞は、BCMA発現RPMI8226標的細胞に対する細胞傷害性を効率的に媒介した。10:1の標的細胞に対するエフェクターの比では、標的細胞のほぼ100%が殺傷された(
図6)。
【0359】
同様の実験は、FAP.TFP及びCAIX.TFP構築物で行われ得る。
【0360】
実施例6:リアルタイム細胞傷害性アッセイによる細胞傷害性
抗BCMA TFPはまた、リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)形式において抗BCMA CARよりも優れた細胞傷害性を示し得る。RTCAアッセイは、特殊な96ウェルプレートの各ウェルでリアルタイムで接着標的細胞単層の電気インピーダンスを測定し、最終的な読み出しを細胞指数と呼ばれる値として示す。細胞指数の変化は、共インキュベートされたT細胞エフェクターによる標的細胞の殺傷の結果として標的細胞単層の破壊を示す。それ故、エフェクターT細胞の細胞傷害性は、標的細胞及びエフェクターT細胞の両方を有するウェルの細胞指数を標的細胞のみを有するウェルのそれと比較した変化として評価され得る。
【0361】
RTCAのための標的細胞は、BCMAを発現するHeLa細胞(BCMA-HeLa)と、陰性対照として親の未形質導入HeLa細胞である。完全長ヒトBCMAまたはBCMAをコードするDNAは、GeneArt(登録商標)(ThermoFisher)によって合成され、EF1aプロモーターの制御下で、選択マーカーとしてネオマイシンを担持するデュアルプロモーターのレンチウイルスベクターpCDH514B(System Bioscience)の複数のクローニング部位に挿入される。次いでBCMAまたはBCMAをコードするベクターのいずれかを担持するレンチウイルスをパッケージングする。HeLa細胞をBCMAレンチウイルスで24時間形質導入し、次いでG418(1mg/mL)で選択する。形質導入されたBCMA-HeLaによるBCMAの発現は、抗ヒトBCMA抗体(BioLegend、クローン#19A2;Miltenyi、クローン#REA315)でのFACS分析によって確認される。
【0362】
接着標的細胞は、DMEM、10%FBS、1%抗生物質-抗真菌剤(Life Technologies)で培養する。RTCAを準備するため、50μLのRPMI培地をE-プレート(ACEA Biosciences,Inc,カタログ#:JL-10-156010-1A)の適切なウェルに加える。次いでプレートをRTCA MP機器(ACEA Biosciences,Inc.)内に配置し、適切なプレートのレイアウト及びアッセイスケジュールを製造者のマニュアルに記載されているようにRTCA2.0ソフトウェアに入力する。ベースラインの測定は、100回の測定について15分毎に実施する。次いで100μLの体積中の1×104個の標的細胞を各アッセイウェルに加え、細胞を15分間沈殿させる。プレートを読み取り機に戻し、読み取りを再開する。
【0363】
翌日、エフェクターT細胞を洗浄し、5%AB血清(Gemini Bioproducts;100-318))を加えた細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640(Invitrogen)に再懸濁する。次いでプレートを機器から取り出し、細胞傷害性培地(フェノールレッドを含まないRPMI1640+5%AB血清)に懸濁したエフェクターT細胞を100,000細胞または50,000細胞で各ウェルに加え、エフェクター対標的比をそれぞれ10対1または5対1にする。次いでプレートを機器に戻す。測定は、100回の測定について2分ごとに行い、次いで1000回の測定について15分ごとに行う。
【0364】
RTCAアッセイにおいて、BCMA形質導入細胞の殺傷は、細胞単独または対照のCAR構築物で形質導入されたT細胞と共インキュベートされた細胞と比較して、エフェクター細胞の添加後の細胞指数の時間依存的減少によって示されるように、抗BCMA-28ζ CARで形質導入されたT細胞で形質導入されたT細胞によって観察され得る。しかしながら、抗BCMA-CD3ε TFP発現T細胞による標的細胞の殺傷は、抗BCMA CARで観察されるよりも深く、迅速であり得る。例えば、抗BCMA-CD3ε TFPで形質導入されたT細胞の添加の4時間以内に、BCMA発現標的細胞の殺傷は本質的に完了し得る。他のCD3及びTCR構築物を含む多数のTFP構築物で形質導入されたT細胞を用いると、ほとんどまたは全く殺傷が観察されない場合がある。同様の結果が、代替ヒンジ領域で構築された抗BCMA TFPで得られ得る。BCMAで形質導入された標的細胞に対する細胞傷害性は、抗BCMA-CARで形質導入されたT細胞よりも抗BCMA-CD3εまたは抗BCMA-CD3γ TFPで形質導入されたT細胞で大きい場合がある。
【0365】
抗BCMA TFPで形質導入されたT細胞もまた、BCMA発現RPMI8226細胞に対して強い細胞傷害性を示した。
図6に示されるように、抗BCMA(CD3εまたはCD3γ形式のV
HH2)TFPで形質導入されたT細胞は、BCMA発現RPMI8226標的細胞に対する細胞傷害性を効率的に媒介した。10:1の標的に対するエフェクターの比で、標的細胞のほぼ100%が殺傷された(
図7)。
【0366】
TFPで形質導入されたT細胞の細胞傷害活性は、形質導入に使用されたウイルス量(MOI)に対して用量依存的であり得る。BCMA細胞の殺傷の増加は、抗BCMA-CD3ε TFPレンチウイルスのMOIの増加と共に観察され得、TFPの形質導入と細胞傷害活性との関係を更に強固にする。
【0367】
実施例7:ELISAによるIL-2及びIFN-γ分泌
同種抗原を有する細胞の認識と関連するエフェクターT細胞の活性化及び増殖の別の尺度は、インターロイキン-2(IL-2)及びインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)などのエフェクターサイトカインの産生である。
【0368】
ヒトIL-2のためのELISAアッセイ(カタログ#EH2IL2、Thermo Scientific)及びIFN-γのためのELISAアッセイ カタログ#KHC4012、Invitrogen)を製品の添付文書に記載の通りに実施する。50μLの再構成された標準または試料を二連で96ウェルプレートの各ウェルに加え、続いて50μLのビオチン化抗体試薬を加える。試料は、プレートを数回静かにタップすることによって混合する。次いで標準も試料も含有しない全てのウェルに50μLの標準希釈剤を加え、プレートを接着プレートカバーで慎重に密封してから、室温(20~25℃)で3時間インキュベートする。次いでプレートカバーを取り外し、プレート内容物を空にし、各ウェルに洗浄緩衝液を満たす。この洗浄手順を合計3回繰り返し、プレートを紙タオルまたは他の吸収材料で拭く。100μLの調製されたストレプトアビジン-HRP溶液を各ウェルに加え、新しいプレートカバーを取り付けてから、室温で30分間インキュベートする。プレートカバーを再び取り外し、プレート内容物を廃棄し、100μLのTMB基質溶液を各ウェルに加える。反応を室温で暗所で30分間進行させ、その後100μLの停止溶液を各ウェルに加える。プレートを評価する。反応停止の30分以内に、450nm及び550nmに設定されたELISAプレートリーダーで吸光度を測定する。450nmの値から550nmの値を引き、未知の試料中のIL-2量をIL-2標準曲線から得られた値と比較して計算する。
【0369】
代替的には、ヒトIL-2磁気ビーズキット(Invitrogen、LHC0021M)及びヒトIFN-γ磁気ビーズキット(Invitrogen、LHC4031M)を用いてヒトサイトカイン磁気緩衝液試薬キット(Invitrogen、LHB0001M)を使用して2プレックスアッセイを実施する。簡潔には、25μLのヒトIL-2及びIFN-γ抗体ビーズを96ウェルプレートの各ウェルに加え、以下のガイドラインを使用して洗浄する:200μLの1×洗浄溶液の2回の洗浄、プレートを磁気96ウェルプレートセパレータ(Invitrogen、A14179)に接触させて置き、ビーズを1分間沈殿させ、液体をデカントする。次いで、50μLのインキュベート緩衝液を、二連で100μLの再構成された標準または三連で50μLの試料(細胞傷害性アッセイからの上清)及び50μLのアッセイ希釈剤を有するプレートの各ウェルに加え、合計体積を150μLとする。試料を暗所で3mmの軌道半径を有するオービタルシェーカーを用いて600rpmで室温で2時間混合する。同じ洗浄ガイドラインに従ってプレートを洗浄し、100μLのヒトIL-2及びIFN-γビオチン化検出抗体を各ウェルに加える。試料を暗所で3mmの軌道半径を有するオービタルシェーカーを用いて600rpmで室温で1時間混合する。同じ洗浄ガイドラインに従ってプレートを洗浄し、100μLのストレプトアビジン-R-フィコエリトリンを各ウェルに加える。試料を暗所で3mmの軌道半径を有するオービタルシェーカーを用いて600rpmで室温で30分間混合する。同じ洗浄ガイドラインを使用してプレートを3回洗浄し、液体をデカントした後、試料を150μLの1×洗浄溶液に再懸濁する。試料を3mmの軌道半径を有するオービタルシェーカーを用いて600rpmで3分間混合し、4℃で一晩保存する。その後、同じ洗浄ガイドラインに従ってプレートを洗浄し、試料を150μLの1×洗浄溶液に再懸濁する。
【0370】
プレートをMAGPIXシステム(Luminex)及びxPONENTソフトウェアを使用して読み取る。データの分析は、標準曲線及びサイトカイン濃度を提供するMILLIPLEX Analystソフトウェアを使用して実施する。
【0371】
未形質導入のまたは対照のCARで形質導入されたT細胞に対して、抗BCMA TFPで形質導入されたT細胞は、BCMAを内因的に発現する細胞またはBCMAで形質導入された細胞のいずれかと共に共培養された場合に、より高いレベルのIL-2及びIFN-γの両方を産生し得る。対照的に、BCMA陰性細胞または未形質導入細胞との共培養では、TFPで形質導入されたT細胞からほとんどまたは全くサイトカインが放出されない結果となり得る。先の細胞傷害性のデータと一貫して、代替ヒンジ領域で構築された抗BCMA TFPは、BCMAを有する標的細胞との共培養で同様の結果を生み出し得る。
【0372】
先の細胞傷害性のデータと一致して、CD3ε及びCD3γ形式の抗BCMA(VHH2)は、TFP構築物の最大のIL-2及びIFN-γレベルを生成し得る。しかしながら、抗BCMA-CD3ε及び抗BCMA-CD3γ TFPで形質導入されたT細胞によるサイトカイン産生は、TFPがはるかに高いレベルの標的細胞の殺傷を示すにもかかわらず、抗BCMA-28ζ CARを発現するT細胞のそれと同程度であり得る。TFPはCARより効率的に標的細胞を殺傷し得るが、同程度またはより低いレベルの炎症性サイトカインを放出し得るという可能性は、高レベルのこれらのサイトカインが、養子CAR-T療法についての用量制限毒性と関連していることから、CARに対してTFPの潜在的な利点を表す。
【0373】
抗BCMA-CD3εまたは抗BCMA-CD3γ TFPで形質導入されたT細胞はまた、BCMAを発現しなかった対照のHeLa細胞ではなくBCMA-HeLaとの共培養でIL-2及びIFN-γを産生した(
図8)。
【0374】
実施例10:フローサイトメトリーによるCD107a曝露
T細胞活性化のための更なるアッセイは、休止細胞における細胞質細胞溶解性顆粒の膜に位置するリソソーム関連膜タンパク質(LAMP-1)であるCD107aの表面発現である。細胞溶解活性の必要条件であるエフェクターT細胞の脱顆粒は、活性化誘導顆粒エキソサイトーシス後、CD107aの細胞表面への動員をもたらす。それ故、CD107aの曝露は、細胞傷害性と密接に相関するサイトカイン産生に加えて、T細胞活性化の更なる尺度を提供する。
【0375】
標的及びエフェクター細胞を別々に洗浄し、細胞傷害性培地(RPMI+5%ヒトAB血清+1%抗生物質抗真菌剤)に再懸濁する。アッセイは、0.5μL/ウェルのPE/Cy7標識抗ヒトCD107a(LAMP-1)抗体(クローンH4A3、BD Biosciences)の存在下で、U底96ウェルプレート(Corning)において100μLの最終体積中で2×105個のエフェクター細胞と2×105個の標的細胞を組み合わせることによって実施する。次いで培養物を37℃、5%CO2で1時間インキュベートする。このインキュベートの直後、10μLの1:10希釈の分泌阻害剤モネンシン(1000x溶液、BD GolgiStop(商標))を、細胞を乱すことなく各ウェルに慎重に加える。次いでプレートを37℃、5%CO2で更に2.5時間インキュベートする。このインキュベートに続いて、細胞をAPC抗ヒトCD3抗体(クローンUCHT1、BD Biosciences)、PerCP/Cy5.5抗ヒトCD8抗体(クローンSK1、BD Biosciences)及びパシフィックブルー抗ヒトCD4抗体(クローンRPA-T4、BD Biosciences)で染色し、次いで37℃、5%CO2で30分間インキュベートする。次いで細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、(分析前に100μLのFACS緩衝液及び100ulのIC固定緩衝液に再懸濁する。
【0376】
T細胞表面でのCD107aの曝露は、フローサイトメトリーによって検出する。フローサイトメトリーは、LSRFortessa(商標)X20(BD Biosciences)で実施し、フローサイトメトリーデータの分析は、FlowJoソフトウェア(Treestar,Inc.Ashland,OR)を使用して実施する。CD107+veであるCD3ゲート内のCD8+エフェクター細胞の割合を、各エフェクター/標的細胞培養について決定する。
【0377】
先の細胞傷害性及びサイトカインのデータと一貫して、BCMA発現標的細胞と抗BCMA-28ζ CARで形質導入されたエフェクターT細胞との共培養は、BCMA-ve標的細胞と共にインキュベートしたエフェクターと比較して、表面CD107a発現の増加を誘導し得る。同じ条件下で比較すると、抗BCMA-CD3ε LLまたは抗BCMA-CD3γ LL TFP発現エフェクターは、CD107a発現の5~7倍の誘導を呈し得る。代替ヒンジ領域で構築された抗BCMA TFPは、BCMAを有する標的細胞との共培養で同様の結果をもたらし得る。
【0378】
未形質導入T細胞と比較して、抗BCMA-CD3εまたは抗BCMA-CD3γ TFPで形質導入された細胞は、BCMA+ve RPMI8226細胞との共培養でCD107aの表面発現の増加を呈した(
図9)。これらの結果は、TFPで形質導入されたエフェクターT細胞が、それらの同種抗原を発現する標的細胞への曝露で活性化し、脱顆粒することを示している。
【0379】
実施例8:インビボでのマウス効力研究
抗BCMA(scFV1、配列番号45)TFPで形質導入されたエフェクターT細胞のインビボでの抗腫瘍反応を達成する能力を評価するために、抗BCMA-CD3ε TFP、抗BCMA-28ζ CAR、または抗BCMA-41BBζ TFPで形質導入されたエフェクターT細胞を、BCMA+RPMI-8226多発性骨髄腫細胞株(ATCC カタログ#CRM-CCL-155)、ヒトがん細胞株が接種されたNOD/SCID/IL-2Rγ-/-(NSG-JAX)マウスに養子移入した。未形質導入T細胞を対照として使用した。
【0380】
材料及び方法
RPMI-8226の維持及び増殖
RPMI-8226多発性骨髄腫細胞株はATCCから入手した(カタログ番号CRM-CCL-155)。これらの細胞をルシフェラーゼでトランスフェクトしてRPMI-8226Luc株を産生した。細胞を、10%HI FBS(Invitrogen、カタログ#10438-026、ロット#1785079)及び1%抗生物質(Life Technologies、カタログ番号15240-062)を補充したRPMI 1640培地(Corning、カタログ番号10-041-CV)中で2~3日ごとに継代した。
【0381】
レンチウイルス生成
レンチウイルスは、293TNプロデューサー細胞株(System Biosciences,Inc.,LV900A-1)の一過性トランスフェクションによって調製した。TFP/CAR構築物は、CD3イプシロン鎖(TFP中)またはCD28zもしくは41BBz(CAR中)に融合した抗BCMA一本鎖フラグメント可変(scFv)を使用して生成した。
【0382】
T細胞の単離及びレンチウイルスの形質導入
PBMCを、Ficoll(登録商標)-Paque PLUS(GE Healthcare、17-1440-03)を使用して全血(Hemacare、Denor 12、ロット#W313716040526)から精製した。
【0383】
T細胞をDynaBeads(登録商標)(Gibco、カタログ#00415447、ロット#1785079)を1:1の比で使用して活性化し、300IU/mlのIL-2(Peprotech、カタログ番号200-02、ロット#051512)の存在下で5%ヒトAB血清(Gemini Products、カタログ#100-318、ロット#H605ool)、及び1%抗生物質(Life Technologies、カタログ番号15240-062)においてAim V培地(Life Technologies、カタログ番号31035025)中で維持した。Dynabeadで活性化されたT細胞を、ポリブレン(5ug/ml、Millipore#TR-1003-G)及び100Gで100分間の遠心接種の存在下で抗BCMA-CD3ε TFP、抗BCMA-CD28ζ CAR及び抗BCMA-41BBζ CARならびに510ベクター単独対照ウイルスについて10MOI(Jukat細胞株中の力価に基づく)でレンチウイルスで形質導入した。T細胞活性化の24時間後及び48時間後に合計2回の形質導入を実施した。細胞を11日間増殖させ、凍結させた。
【0384】
形質導入効率の決定
形質導入効率はフローサイトメトリーによって決定した。T細胞を抗CD3 APC、クローン:UCHT1(BD Biosciences、カタログ番号561811ロット5090862)、抗CD4-パシフィックブルー、クローン:RPAT4(Biolegend、カタログ番号300521ロットB231611)、抗CD8-APCCY7、クローン:SK1(BD Biosciences、カタログ番号557834ロット6082865)、及び/またはヤギ抗マウスFAB(Invitrogen、カタログ番号31803ロットSC2362539)を使用して染色した。また、細胞をZenon標識(Thermofisher、カタログ番号Z25055Aロット1851333)BCMA-Fcタンパク質で染色して、TFP及びCARの表面発現を検出した。細胞をBD-LSRII Fortessa(登録商標)X20を使用して分析した。
インビトロ機能アッセイ
全てのインビトロ機能アッセイは活性化後9日目に実施された。
ルシフェラーゼアッセイ:T細胞を、切断型CD19及びルシフェラーゼを過剰発現するHeLa細胞株(BCMA陰性標的)またはBCMA及びルシフェラーゼを過剰発現するHeLa細胞株(BCMA陽性標的)と共に異なるエフェクター(E):標的(T)比(3:1及び1:3)で24時間共培養した。細胞を溶解し、製造者の指示(Promega、カタログ番号E1500)を使用してルシフェラーゼアッセイ(SOP002)に供した。
リアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA):T細胞を上記の標的細胞と異なるE:T比で共培養した。細胞傷害性は、xCELLigence(登録商標)RTCA MP(Multiple Plate)機器を介して96ウェルプレート(E-Plate96)上の細胞センサー電極の電子インピーダンスを測定することによって決定される。最後の読み取り値が細胞指数として示される。細胞指数の変化は、共インキュベートされたT細胞による標的細胞の殺傷の結果として標的細胞単層の破壊を示す。サイトカイン分析のための遠心分離後に培養上清を採取し、更なる分析まで-80℃で保存した。
【0385】
サイトカイン測定
RTCAアッセイからの培養上清を、ヒトサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネルを使用してサイトカイン放出について分析した。製品の添付文書に記載されているように、ヒトIL-2及びIFNγについてのELISAアッセイを実施した。データをMagpixγ Luminex(登録商標)xMAP(登録商標)Technologyで採取し、pg/ml量で測定した。
【0386】
インビボ研究
NOD/SCID(NSG)マウスモデルを使用してインビボ効力試験を行った。研究開始の少なくとも6週齢前の雌NOD/SCID/IL-2Rγ-/-(NSG-JAX)マウスをThe Jackson Laboratory(品番005557)から入手し、実験使用前に3日間順応させる。接種のためのヒトBCMA発現細胞株は、生存細胞数を決定するための採取及びトリパンブルーによる計数の前に対数期培養で維持される。腫瘍攻撃の日に、細胞を5分間300gで遠心分離し、0.5~1×106細胞/100μLのいずれかで予め温めた滅菌PBSに再懸濁する。3×106個のRPMI-8226-Luc細胞をNSGマウスに皮下(s.c.)注射した。腫瘍接種の19日後、T細胞をマウス1匹当たり15×106個の細胞で静脈内投与した。1群当たり7匹の動物がいた。生物発光イメージングを研究の3、7、14、21、28及び35日目に実施した。腫瘍体積を週に2日、キャリパー測定によって測定した。動物の詳細な臨床観察を安楽死まで毎日記録する。死亡または安楽死まで、全ての動物に対して毎週体重測定を行う。試験及び対照物質の養子移入の35日後に全ての動物を安楽死させる。研究中に瀕死と思われる任意の動物は、獣医師と協議して研究責任者の判断で安楽死させる。
【0387】
T細胞上での効率的なTFP及びCARの表面発現
TFPまたはCAR T細胞上のscFv2の表面発現を評価した。TFPまたはCAR T細胞は、様々なレンチウイルス構築物を使用してDynaBead(登録商標)刺激T細胞を形質導入することによって調製した。形質導入したT細胞を7日間培養し、フローサイトメトリー分析に供した。抗FabまたはBCMA-Fc染色によって証明されるように、TFP及びCAR表面発現は、全ての群において40~50%であった。TFP及びCAR T細胞は、scFvの同等の表面発現を有していた(
図11)。
【0388】
インビトロでのTFP及びCAR T細胞の機能
TFPまたはCAR形質導入T細胞のエフェクター機能は、2つの異なる細胞傷害性アッセイによって評価した。最初のアッセイでは、未形質導入T細胞、510空ベクター対照、TFPまたはCAR T細胞を、HeLa-BCMA-ルシフェラーゼ発現標的細胞と様々な比(3:1(
図11のA)及び1:3(
図11のB)のエフェクター:標的)で共培養した。HeLa-CD19ルシフェラーゼ発現細胞は、BCMA陰性対照として機能した。全てのT細胞が3:1でBCMA陽性標的細胞を効率的に除去した(98%~99%の死細胞)。1:3のより低いE:T比では、観察された細胞傷害性は38%~53%であった(
図11のB)。未形質導入の(NT)または510ベクターのみの対照群では殺傷は認められなかった。
【0389】
抗BCMA TFPまたはCARの細胞傷害性もまた、特殊な96ウェル形式で標的細胞単層の電気インピーダンスをリアルタイムで測定するリアルタイム細胞傷害性アッセイ(RTCA)によって測定した。このアッセイでは、形質導入されたT細胞の添加後の細胞指数の時間依存的減少によって示されるように、TFPまたはCAR形質導入群において3:1のE:T比で強い殺傷が観察された(
図11のC)。標的細胞はT細胞添加の10時間以内に除去された。41BBζ群が最も高い殺傷動態を示し、これにTFP及びCD28ζ CARが続いた。それにもかかわらず、群の全てが24時間の期間の終了時に標的細胞を殺傷した。1:3のE:T比では、殺傷はより遅く、腫瘍細胞はどの群によっても効率的に除去されなかった。NTまたは510ベクターのみの群によっては殺傷は観察されなかった。Hela-CD19ルシフェラーゼ細胞は陰性対照として機能し、T細胞の添加後でさえも成長し続けた(
図11のD)。
【0390】
エフェクターT細胞の活性化及び増殖の別の尺度は、IFNγ及びIL-2などのサイトカインの産生である。上記のRTCAアッセイからの培養上清を、2-プレックスLuminex(登録商標)キット(EMD Millipore)を使用してサイトカイン放出について分析した。
図11のE(IFNγ)及び11のF(IL-2)に示されるように、TFP及びCAR形質導入T細胞は両方とも、BCMAを発現するHeLa細胞と共培養した場合、未形質導入のまたは510空ベクター対照細胞と比較して、高レベルのIFNγ及びIL-2を3:1及び1:3のE:T比で産生した。最も注目すべきことに、41BBζ群は1:3のE:T比でより多くのサイトカインを産生した。
【0391】
抗BCMA TFP及びCAR T細胞はインビボで抗腫瘍効力を示す
scFv2(HL形式)及びV
HH2 TFP T細胞のインビボでの効力を評価するために、陰性対照として空ベクターT細胞及び陽性対照としてscFv1-CD3εTFP T細胞(
図12A);イプシロン、ガンマ、及びベータ形式のV
HH2 TFP T細胞(
図12B)、及びイプシロン、ガンマ及びベータ形式のscFv2 TFP T細胞(
図12C)を使用してインビボ研究を上述のように実施した。各グラフにおける各線は1匹のマウスを表す。
図12Aに示されるように、ベクターのみのT細胞で処置したマウスは経時的に成長した腫瘍を有していた一方で、陽性対照はマウスにおいて腫瘍を減少または根絶することができた。
図12Bに示されるように、
図12Cに示されるscFv2 TFP T細胞で処置したマウスと同様に、多数のマウスがVHH2 TFP T細胞で処置した後に腫瘍サイズの減少を示した。特に、
図12Bでは、BH10-CD3ε及びCD3γ群は注射時にPD1、TIM3及びLAG3消耗マーカーを共発現した。
【0392】
TFP対CARの効力を評価するために、RPMI8226多発性骨髄腫細胞及びNSGマウスモデルを使用した。RPMI8226細胞をマウス1匹当たり3×10
6細胞で注射した。11日目に凍結したT細胞を、マウス1匹当たり15×10
6細胞でインビボ注射する24時間前に解凍し、回収した。T細胞注射後8日目からTFP及びCAR T群において腫瘍体積の有意な減少が観察された(
図13のA)。この傾向は37日目まで維持され、その時点で腫瘍が存在しないために研究を終結させた。腫瘍の平均放射輝度によって評価される腫瘍荷重は、対照と比較して全ての群において有意に減少した(図の13B)。また、TFP及び41BBζCAR T細胞群は、CD28ζCAR T群と比較して増加した生存率を示した(
図13のC)。これらの結果は、抗BCMA-TFP及びCAR T細胞がインビボで多発性骨髄腫腫瘍細胞を殺傷するのに強力であることを実証している。
【0393】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し説明してきたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることが当業者には明らかである。本発明から逸脱することなく多くの変形、変更、及び置換を当業者は直ちに想起する。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替が、本発明の実施において採用され得ることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を画定すること及びこれらの特許請求の範囲内の方法及び構造及びそれらの同等物がそれによってカバーされることが意図される。
付録 本願は以下の発明を包含する。
[項目1] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3イプシロンの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン
を含む、前記TCRサブユニット、ならびに
(b)抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメイン
を含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが作動可能に連結され、
前記TFPがT細胞で発現される際にTCRに合体する、前記単離された組み換え核酸分子。
[項目2] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3イプシロンの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン
を含む、前記TCRサブユニット、ならびに
(b)抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメイン
を含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが作動可能に連結され、
前記TFPがT細胞で発現される際にTCRに合体する、前記単離された組み換え核酸分子。
[項目3] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3ガンマの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン
を含む、前記TCRサブユニット、ならびに
(b)抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメイン
を含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが作動可能に連結され、
前記TFPがT細胞で発現される際にTCRに合体する、前記単離された組み換え核酸分子。
[項目4] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)CD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン
を含む、前記TCRサブユニット、ならびに
(b)抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメイン
を含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが作動可能に連結され、
前記TFPがT細胞で発現される際にTCRに合体する、前記単離された組み換え核酸分子。
[項目5] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)TCRアルファの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン
を含む、前記TCRサブユニット、ならびに
(b)抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメイン
を含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが作動可能に連結され、
前記TFPがT細胞で発現される際にTCRに合体する、前記単離された組み換え核酸分子。
[項目6] T細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子であって、前記TFPが、
(a)TCRサブユニットであって、
(i)TCRの細胞外ドメインの少なくとも一部、及び
(ii)TCRベータの細胞内シグナル伝達ドメイン由来の刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメイン
を含む、前記TCRサブユニット、ならびに
(b)抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメイン
を含み、
前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが作動可能に連結され、
前記TFPがT細胞で発現される際にTCRに合体する、前記単離された組み換え核酸分子。
[項目7] TCRサブユニットと、抗BCMA結合ドメインである抗原結合ドメインを含むヒトまたはヒト化抗体ドメインとを含むT細胞受容体(TCR)融合タンパク質(TFP)をコードする単離された組み換え核酸分子。
[項目8] 前記TCRサブユニット及び前記抗体ドメインが、作動可能に連結されている、項目7に記載の単離された核酸分子。
[項目9] 前記TFPが、T細胞で発現される際にTCRに合体する、項目7~8のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目10] 前記コードされた抗原結合ドメインが、リンカー配列によって前記TCRの細胞外ドメインに接続されている、項目1~9のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目11] 前記コードされたリンカー配列が、(G
4
S)
n
(式中、n=1~4)を含む、項目10に記載の単離された核酸分子。
[項目12] 前記TCRサブユニットが、TCRの細胞外ドメインを含む、項目1~11のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目13] 前記TCRサブユニットが、TCR膜貫通ドメインを含む、項目1~12のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目14] 前記TCRサブユニットが、TCRの細胞内ドメインを含む、項目1~13のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目15] 前記TCRサブユニットが、(i)TCRの細胞外ドメイン、(ii)TCRの膜貫通ドメイン、及び(iii)TCRの細胞内ドメインを含み、(i)、(ii)、及び(iii)のうちの少なくとも2つが同じTCRサブユニット由来である、項目1~14のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目16] 前記TCRサブユニットが、CD3イプシロン、CD3ガンマ、もしくはCD3デルタの細胞内シグナル伝達ドメイン、またはそれに対して少なくとも1つの修飾を有するアミノ酸配列から選択される刺激ドメインを含むTCRの細胞内ドメインを含む、項目1~15のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目17] 前記TCRサブユニットが、4-1BBの機能的シグナル伝達ドメイン及び/またはCD3ゼータの機能的シグナル伝達ドメイン、またはそれらに対して少なくとも1つの修飾を有するアミノ酸配列から選択される刺激ドメインを含む細胞内ドメインを含む、項目1~16のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目18] 前記ヒトまたはヒト化抗体ドメインが、抗体フラグメントを含む、項目1~17のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目19] 前記ヒトまたはヒト化抗体ドメインが、scFvまたはV
H
ドメインを含む、項目1~18のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目20] (i)本明細書で提供される抗BCMA軽鎖結合ドメインの軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2及びLC CDR3に対してそれぞれ70~100%の配列同一性を有する抗BCMA軽鎖結合ドメインのアミノ酸配列の軽鎖(LC)CDR1、LC CDR2及びLC CDR3、及び/または(ii)本明細書で提供される抗BCMA重鎖結合ドメインの重鎖(HC)CDR1、HC CDR2及びHC CDR3に対してそれぞれ70~100%の配列同一性を有する抗BCMA重鎖結合ドメインのアミノ酸配列の重鎖(HC)CDR1、HC CDR2及びHC CDR3をコードする、項目1~19のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目21] 軽鎖可変領域をコードし、前記軽鎖可変領域が、本明細書で提供される軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つから最大30までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供される軽鎖可変領域の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む、項目1~20のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目22] 重鎖可変領域をコードし、前記重鎖可変領域が、本明細書で提供される重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列の少なくとも1つから最大30までの修飾を有するアミノ酸配列、または本明細書で提供される重鎖可変領域の重鎖可変領域アミノ酸配列に対して95~99%の同一性を有する配列を含む、項目1~21のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目23] 前記TFPが、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRサブユニットの細胞外ドメインを含む、項目1~22のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目24] 前記コードされたTFPが、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む、項目1~23のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目25] 前記コードされたTFPが、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、TCRゼータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD28、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む膜貫通ドメインを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目26] 共刺激ドメインをコードする配列を更に含む、項目1~25のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目27] 前記共刺激ドメインが、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、及び4-1BB(CD137)、ならびにそれらに対して少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質から得られる機能的シグナル伝達ドメインである、項目26に記載の単離された核酸分子。
[項目28] 前記それらに対して少なくとも1つから最大20までの修飾が、細胞のシグナル伝達を媒介するアミノ酸の修飾、または前記TFPへのリガンド結合に反応してリン酸化されるアミノ酸の修飾を含む、項目1~27のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目29] 前記単離された核酸分子が、mRNAである、項目1~28のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目30] 前記TFPが、CD3ゼータのTCRサブユニット、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、TCRゼータ鎖、Fcイプシロン受容体1鎖、Fcイプシロン受容体2鎖、Fcガンマ受容体1鎖、Fcガンマ受容体2a鎖、Fcガンマ受容体2b1鎖、Fcガンマ受容体2b2鎖、Fcガンマ受容体3a鎖、Fcガンマ受容体3b鎖、Fcベータ受容体1鎖、TYROBP(DAP12)、CD5、CD16a、CD16b、CD22、CD23、CD32、CD64、CD79a、CD79b、CD89、CD278、CD66d、それらの機能的フラグメント、及びそれらに対して少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)またはその一部を含むTCRサブユニットのITAMを含む、項目1~29のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目31] 前記ITAMが、CD3ガンマ、CD3デルタ、またはCD3イプシロンのITAMと置き換わる、項目30に記載の単離された核酸分子。
[項目32] 前記ITAMが、CD3ゼータのTCRサブユニット、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択され、CD3ゼータのTCRサブユニット、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択される異なるITAMと置き換わる、項目30に記載の単離された核酸分子。
[項目33] 前記核酸が、ヌクレオチド類似体を含む、項目1~32のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目34] 前記ヌクレオチド類似体が、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、修飾された2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、及び2’-フルオロN3-P5’-ホスホルアミダイトからなる群から選択される、項目33に記載の単離された核酸分子。
[項目35] リーダー配列を更に含む、項目1~34のいずれか1項に記載の単離された核酸分子。
[項目36] 項目1~35のいずれか1項に記載の核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチド分子。
[項目37] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む単離された組み換えTFP分子。
[項目38] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離された組み換えTFP分子であって、前記TFP分子が、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、前記単離された組み換えTFP分子。
[項目39] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離された組み換えTFP分子であって、前記TFP分子が、内因性TCR複合体に機能的に統合することが可能である、前記単離された組み換えTFP分子。
[項目40] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む抗体または抗体フラグメントを含む、項目37に記載の単離されたTFP分子。
[項目41] 前記抗BCMA結合ドメインが、scFvまたはV
H
ドメインである、項目37~40のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目42] 前記抗BCMA結合ドメインが、本明細書で提供される抗BCMA軽鎖のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有する重鎖、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む、項目37~41のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目43] 前記抗BCMA結合ドメインが、本明細書で提供される抗BCMA重鎖のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有する軽鎖、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む、項目37~42のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目44] TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、CD3デルタのTCRサブユニット、それらの機能的フラグメント、及び少なくとも1つから最大20までの修飾を有するそれらのアミノ酸配列からなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRの細胞外ドメインを含む、項目37~43のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目45] リンカー配列による前記TCRの細胞外ドメイン、項目37~44のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目46] リンカー領域が、(G
4
S)
n
(式中、n=1~4)を含む、項目57に記載の単離されたTFP分子。
[項目47] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む単離された組み換えTFP分子。
[項目48] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離された組み換えTFP分子であって、前記TFP分子が、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、前記単離された組み換えTFP分子。
[項目49] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む単離された組み換えTFP分子であって、前記TFP分子が、内因性TCR複合体に機能的に統合することが可能である、前記単離された組み換えTFP分子。
[項目50] ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む抗体または抗体フラグメントを含む、項目49に記載の単離されたTFP分子。
[項目51] 前記抗BCMA結合ドメインが、scFvまたはV
H
Hドメインである、項目47~50のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目52] 前記抗BCMA結合ドメインが、配列番号25、配列番号26、及び配列番号27に記載の3つのCDR配列を有する重鎖、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む、項目47~51のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目53] 前記抗BCMA結合ドメインが、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31に記載の3つのCDR配列を有する重鎖、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む、項目47~52のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目54] 前記抗BCMA結合ドメインが、配列番号24のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有するV
H
Hドメイン、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む、項目47~51のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目55] 前記抗BCMA結合ドメインが、配列番号28のアミノ酸配列に対して95~100%の同一性を有するV
H
Hドメイン、その機能的フラグメント、または少なくとも1つから最大30までの修飾を有するそのアミノ酸配列を含む、項目47~51のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目56] 前記T細胞受容体のアルファもしくはベータ鎖、CD3デルタ、CD3イプシロン、またはCD3ガンマからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含むTCRの細胞外ドメインを含む、項目47~53のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目57] 前記抗BCMA結合ドメインが、リンカー配列によって前記TCRの細胞外ドメインに接続されている、項目37~45のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目58] リンカー領域が、(G
4
S)
n
(式中、n=1~4)を含む、項目57に記載の単離されたTFP分子。
[項目59] 共刺激ドメインをコードする配列を更に含む、項目37~58のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目60] 細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列を更に含む、項目37~59のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目61] リーダー配列を更に含む、項目37~60のいずれか1項に記載の単離されたTFP分子。
[項目62] 項目37~61のいずれか1項に記載のTFPをコードする配列を含む核酸。
[項目63] 前記核酸が、DNA及びRNAからなる群から選択される、項目62に記載の核酸。
[項目64] 前記核酸が、mRNAである、項目62または63に記載の核酸。
[項目65] 前記核酸が、ヌクレオチド類似体を含む、項目62~64のいずれか1項に記載の核酸。
[項目66] 前記ヌクレオチド類似体が、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、修飾された2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロックド核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、及び2’-フルオロN3-P5’-ホスホルアミダイトからなる群から選択される、項目65に記載の核酸。
[項目67] プロモーターを更に含む、項目62~66のいずれか1項に記載の核酸。
[項目68] 前記核酸が、インビトロで転写された核酸である、項目62~67のいずれか1項に記載の核酸。
[項目69] 前記核酸が、ポリ(A)尾部をコードする配列を更に含む、項目62~68のいずれか1項に記載の核酸。
[項目70] 前記核酸が、3’UTR配列を更に含む、項目62~69のいずれか1項に記載の核酸。
[項目71] 項目37~61のいずれか1項に記載のTFPをコードする核酸分子を含むベクター。
[項目72] DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)ベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群から選択される、項目71に記載のベクター。
[項目73] プロモーターを更に含む、項目71または72に記載のベクター。
[項目74] 前記ベクターが、インビトロで転写されたベクターである、項目71~73のいずれか1項に記載のベクター。
[項目75] 前記ベクターにおける核酸配列が、ポリ(A)尾部を更に含む、項目71~74のいずれか1項に記載のベクター。
[項目76] 前記ベクターにおける核酸配列が、3’UTRを更に含む、項目71~75のいずれか1項に記載のベクター。
[項目77] 項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子、項目36に記載のポリペプチド分子、項目37~61のいずれか1項に記載のTFP分子、項目62~70のいずれか1項に記載の核酸、項目71~76のいずれか1項に記載のベクターを含む細胞。
[項目78] 前記細胞が、ヒトT細胞である、項目77に記載の細胞。
[項目79] 前記T細胞が、CD8+またはCD4+T細胞である、項目78に記載の細胞。
[項目80] 細胞内シグナル伝達ドメインからの陽性シグナルを含む第2のポリペプチドに会合した、抑制分子の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドを含む抑制分子をコードする核酸を更に含む、項目77~79のいずれか1項に記載の細胞。
[項目81] 前記抑制分子が、PD1の少なくとも一部を含む第1のポリペプチドならびに共刺激ドメイン及び一次シグナル伝達ドメインを含む第2のポリペプチドを含む、項目80に記載の細胞。
[項目82] 少なくとも2つのTFP分子を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞であって、前記TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み、前記TFP分子が、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の中で、その細胞において及び/またはその細胞の表面上で、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞。
[項目83] タンパク質複合体であって、
i)ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含むTFP分子、ならびに
ii)少なくとも1つの内因性TCRサブユニットまたは内因性TCR複合体、
を含む、前記タンパク質複合体。
[項目84] 前記TCRが、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含む、項目83に記載のタンパク質複合体。
[項目85] 前記抗BCMA結合ドメインが、リンカー配列によって前記TCRの細胞外ドメインに接続されている、項目83または84に記載のタンパク質複合体。
[項目86] リンカー領域が、(G
4
S)
n
(式中、n=1~4)を含む、項目85に記載のタンパク質複合体。
[項目87] タンパク質複合体であって、
(a)項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子によってコードされたTFP、及び
(b)少なくとも1つの内因性TCRサブユニットまたは内因性TCR複合体、
を含む、前記タンパク質複合体。
[項目88] タンパク質複合体であって、
i)ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含むTFP分子、ならびに
ii)少なくとも1つの内因性TCRサブユニットまたは内因性TCR複合体、
を含む、前記タンパク質複合体。
[項目89] 前記TCRが、TCRアルファ鎖、TCRベータ鎖、CD3イプシロンのTCRサブユニット、CD3ガンマのTCRサブユニット、及びCD3デルタのTCRサブユニットからなる群から選択されるタンパク質の細胞外ドメインまたはその一部を含む、項目88に記載のタンパク質複合体。
[項目90] 前記抗BCMA結合ドメインが、リンカー配列によって前記TCRの細胞外ドメインに接続されている、項目88または89に記載のタンパク質複合体。
[項目91] リンカー領域が、(G
4
S)
n
(式中、n=1~4)を含む、項目90に記載のタンパク質複合体。
[項目92] 項目83~87のいずれか1項に記載のタンパク質複合体当たり少なくとも2つの異なるTFPタンパク質を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞。
[項目93] 項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子によってコードされた少なくとも2つの異なるTFP分子を含むヒトCD8+またはCD4+T細胞。
[項目94] ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、前記集団の前記T細胞が、少なくとも2つのTFP分子を個別的にまたは集合的に含み、前記TFP分子が、ヒトまたはヒト化抗BCMA結合ドメイン、TCRの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含み、前記TFP分子が、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の中で、その細胞において及び/またはその細胞の表面上で、内因性TCR複合体及び/または少なくとも1つの内因性TCRポリペプチドと機能的に相互作用することが可能である、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団。
[項目95] ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団であって、前記集団の前記T細胞が、項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子によってコードされた少なくとも2つのTFP分子を個別的または集合的に含む、前記ヒトCD8+またはCD4+T細胞の集団。
[項目96] 項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子、項目62~70のいずれか1項に記載の核酸、または項目71~76のいずれか1項に記載のベクターでT細胞を形質導入することを含む、細胞の作製方法。
[項目97] インビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞の集団を生成する方法であって、前記RNAが、項目37~61のいずれか1項に記載のTFP分子をコードする核酸を含む、前記方法。
[項目98] 哺乳類において抗腫瘍免疫を提供する方法であって、有効量の項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子、項目36に記載のポリペプチド分子、項目36に記載のポリペプチド分子を発現する細胞、項目37~61のいずれか1項に記載のTFP分子、項目62~70のいずれか1項に記載の核酸、項目71~76のいずれか1項に記載のベクター、または項目77~82及び88~96のいずれか1項に記載の細胞を前記哺乳類に投与することを含む、前記方法。
[項目99] 前記細胞が、自己T細胞である、項目98に記載の方法。
[項目100] 前記細胞が、同種異系T細胞である、項目98に記載の方法。
[項目101] 前記哺乳類が、ヒトである、項目98~100のいずれか1項に記載の方法。
[項目102] BCMAの発現に関連する疾患を有する哺乳類を治療する方法であって、有効量の項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子、項目36に記載のポリペプチド分子、項目36に記載のポリペプチド分子を発現する細胞、項目37~61のいずれか1項に記載のTFP分子、項目62~70のいずれか1項に記載の核酸、項目71~76のいずれか1項に記載のベクター、または項目77~82及び88~96のいずれか1項に記載の細胞を前記哺乳類に投与することを含む、前記方法。
[項目103] BCMA発現に関連する前記疾患が、増殖性疾患、がん、悪性腫瘍、及びBCMAの発現に関連する非がん関連症状からなる群から選択される、項目102に記載の方法。
[項目104] 前記疾患が、中皮腫、乳頭漿液性卵巣腺癌、明細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞濾胞性リンパ腫、大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成、骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、ワルデンストレームマクログロブリン血症、前白血病卵巣癌、混合型ミュラー管卵巣癌、子宮内膜粘液性卵巣癌、膵臓腺癌、膵管腺癌、子宮漿液性癌、肺腺癌、肝外胆管癌、胃腺癌、食道腺癌、結腸直腸腺癌、乳腺腺癌、BCMA発現に関連する疾患、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるがんである、項目102に記載の方法。
[項目105] TFP分子を発現する前記細胞が、TFP分子を発現する細胞の効力を増加させる薬剤と組み合わせて投与される、項目102に記載の方法。
[項目106] 前記哺乳類では、抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を発現する有効量のT細胞が投与された哺乳類と比較してより少ないサイトカインが放出される、項目102~105のいずれか1項に記載の方法。
[項目107] TFP分子を発現する前記細胞が、TFP分子を発現する細胞の投与に関連する1つ以上の副作用を改善する薬剤と組み合わせて投与される、項目102~106のいずれか1項に記載の方法。
[項目108] TFP分子を発現する前記細胞が、BCMAに関連する前記疾患を治療する薬剤と組み合わせて投与される、項目102~107のいずれか1項に記載の方法。
[項目109] 薬剤としての使用のための、項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子、項目36に記載の単離されたポリペプチド分子、項目36に記載のポリペプチド分子を発現する細胞、項目37~61のいずれか1項に記載の単離されたTFP、項目62~70のいずれか1項に記載の核酸、項目71~76のいずれか1項に記載のベクター、項目83~87のいずれか1項に記載の複合体、または項目77~82及び88~96のいずれか1項に記載の細胞。
[項目110] BCMAの発現に関連する疾患を有する哺乳類を治療する方法であって、有効量の項目1~35のいずれか1項に記載の単離された核酸分子、項目36に記載のポリペプチド分子、項目36に記載のポリペプチド分子を発現する細胞、項目37~61のいずれか1項に記載のTFP分子、項目62~70のいずれか1項に記載の核酸、項目71~76のいずれか1項に記載のベクター、または項目77~82及び88~96のいずれか1項に記載の細胞を前記哺乳類に投与することを含み、前記哺乳類では、抗BCMAキメラ抗原受容体(CAR)を発現する有効量のT細胞が投与された哺乳類と比較してより少ないサイトカインが放出される、前記方法。
【0394】
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【0398】
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【0400】
【0401】
【0402】
【0403】
【0404】
【配列表】