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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】蓄圧式スプレーのSバルブ構造体
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20060101AFI20220725BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20220725BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B05B11/00 102N
B05B11/00 102E
F04B9/14 C
F16K31/126 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020219864
(22)【出願日】2020-12-29
(65)【公開番号】P2022104728
(43)【公開日】2022-07-11
【審査請求日】2022-02-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390028196
【氏名又は名称】キャニヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】赤築 充昭
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-057311(JP,A)
【文献】特開2018-069186(JP,A)
【文献】特開2007-289840(JP,A)
【文献】特開2016-026862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0319244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B11/00-11/06
B65D35/44-35/54
39/00-55/16
83/00
83/08-83/76
F04B9/00-15/08
F16K31/12-31/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
に取り付けて容器内の液を導入管らFバルブを介してメインシリンダ部内に吸い上げ、該メインシリンダ内の液に圧を加え、一定圧を超えた時点でSバルブ構造体を介してノズル部から噴出させる蓄圧式スプレーにおけるSバルブ構造体であって、
バネ部と該バネ部から垂下したバルブピストン部とよりなり、該バルブピストン部は芯棒部と該芯棒部の外周から下方に延びる外スカート部と該外スカート部より長い内スカート部を備えるものであり、
バネ部が逆ドーム状であることを特徴とするSバルブ構造体。
【請求項2】
バネ部の一部がバルブピストン部に挿入固定されることにより両者が一体となっていることを特徴とする請求項1記載のSバルブ構造体。
【請求項3】
バルブピストン部が上鍔部を有することを特徴とする請求項1記載のSバルブ構造体。
【請求項4】
バルブピストン部に中心穴が形成されておりバネ部の中心部で開放されていることを特徴とする請求項1記載のSバルブ構造体。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のSバルブ構造体を備えた蓄圧式スプレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧式スプレーのSバルブ構造体に関し、より詳しくは、トリガー部の引き込み力が軽減された蓄圧式スプレーのSバルブ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
液噴出スプレーには、噴出力を高める特殊なSバルブを備えた、いわゆる蓄圧式スプレーがある。
一般に、この蓄圧式スプレーは、シリンダに対してピストンをスライドさせることによ
り、一定圧を超えた状態になったシリンダ内の液体を、ノズルから瞬時的に噴出させる構造となっている。
【0003】
より具体的にいうと、液体の流通が開閉される部位(すなわちFバルブとSバルブ)が、弁体と弁座によって封鎖されている状態において、FバルブとSバルブの間に位置するシリンダの中が一定の圧力以上に蓄圧されると、Sバルブの弁体と弁座との間が開放され、液体がシリンダ内から押し出されてノズルから外部に噴射されるような構造である。
【0004】
この場合、Sバルブの弁体が比較的強いバネによるバネ力を介して弁座に押圧されており、Fバルブが閉じた状態でシリンダ内の液圧がこのバネ力を超えると、突然、Sバルブの弁体と弁座が開いて液が通過することとなる。
いきなりSバルブが開いて液圧が開放されるので、液体は勢い良く外部に噴出されるが、この後、シリンダ内が放圧されることによりSバルブは再び閉じる(すなわち弁体と弁座との間が閉じる)。
蓄圧式スプレーにおいては、このようにして、シリンダ内の液を勢い良く外部に噴出することができ極めて有用である。
【0005】
このような蓄圧式スプレーとしては、例えば、本出願人によるものが幾つか出願されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、容器に取り付けられた状態で、トリガー部の回動によりピストン部を移動させてシリンダ部のシリンダ部内の液に圧を加え、一定の圧力になると、通路Pを通してノズル部から液を噴射させる蓄圧式のトリガースプレーヤが開示されている。
そして、比較的左右の長さが短いシリンダ部なので、該シリンダ部の後方の領域が十分確保でき、その領域には、第1弁体と第1弁座からなるSバルブやコイルバネが組み込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-13008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような蓄圧式スプレーは、利便性が高く、近年、数多く使用されるようになってきている。
ところで、蓄圧式スプレーにおいては、トリガー部Eの比較的強い引き込み力を必要とする。
そのためには、極力、トリガー部Eの引き込み力を軽減して、老人、子供等の非力な者も容易に使用できるようにすることが更なる利便性を追求する上では、極めて重要である。
ここでトリガー部の引き込み力を軽減するには、シリンダ部の径をより小さくすることが必要となる。
【0009】
しかし、シリンダ部の径を小さくすると、噴出容量の観点から見て、必然的に、シリンダ部の長さを延長しなければならない。
そうすると、従来のような蓄圧式スプレーの限られた内部空間においては、延長されたシリンダ部によってSバルブの設置領域が使われてしまって、Sバルブやそれを付勢するバネの設置空間が確保できないことになる。
【0010】
本発明はこのような事情を背景になされたものであり、トリガー部Eの引き込み力が軽減された蓄圧式スプレーに組み込まれるSバルブ構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、バネ部を極力上方に配置し、その下方にノズル部へ通ずる通路を開閉するための部分を設けることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、(1)容器に取り付けて容器内の液を導入管HからFバルブを介してメインシリンダ部内に吸い上げ、該メインシリンダ内の液に圧を加え、一定圧を超えた時点でSバルブ構造体Aを介してノズル部Fから噴出させる蓄圧式スプレーにおけるSバルブ構造体Aであって、バネ部1と該バネ部1から垂下したバルブピストン部2とよりなり、該バルブピストン部2は芯棒部21と該芯棒21部の外周から下方に延びる外スカート部22と該外スカート部22より長い内スカート部23を備えるものであり、バネ部1が逆ドーム状であることを特徴とするSバ
ルブ構造体Aに存する。
【0014】
すなわち本発明は、()バネ部1の一部がバルブピストン部2に挿入固定されることにより両者が一体となっていることを特徴とする上記1のSバルブ構造体Aに存する。
【0015】
すなわち本発明は()バルブピストン部2が上鍔部24を有することを特徴とする上記1のSバルブ構造体Aに存する。
【0016】
すなわち本発明は、()バルブピストン部2に中心穴21Aが形成されておりバネ部1の中心部で開放されていることを特徴とする上記1のSバルブ構造体Aに存する。
【0017】
すなわち本発明は、()上記1~のいずれか1項のSバルブ構造体Aを備えた蓄圧式スプレーに存する。
【発明の効果】
【0018】
1)本発明は、容器に取り付けて容器内の液を導入管HからFバルブを介してメインシリンダ部内に吸い上げ、該メインシリンダ内の液に圧を加え、一定圧を超えた時点でSバルブ構造体Aを介してノズル部Fから噴出させる、蓄圧式スプレーにおけるSバルブ構造体Aであって、バネ部1と該バネ部1から垂下したバルブピストン部2とよりなり、該バルブピストン部2は芯棒部21と該芯棒部21の外周から下方に延びる外スカート部22と該外スカート部22より長い内スカート部23を備えることにより、バネ部1による下方への押圧力がバルブピストン部2に的確に伝達される。
【0019】
2)バネ部1が逆ドーム状であることにより、形が円周方向に均等であり方向性がないため、カバー部Cの支持壁部C1に均等に当接することができ、反力も均等となる。
また方向性がなくバネ部1の取り付けが安定する。
またバルブピストン部2の上下移動がスムーズに行える。
【0020】
3)バネ部1の一部がバルブピストン部2に挿入固定されて両者が一体となっていることにより、バネ部1とバルブピストン部2の材質を異にすることができ、またどちらか一方が破損した場合に、それを新しいものと交換することができる。
【0021】
4)バルブピストン部2が上鍔部24を有することにより、Sバルブ構造体Aが蓄圧式スプレーに組み込まれた場合、バルブピストン部2の横揺れ等が防止される。
【0022】
5)バルブピストン部2に中心穴21Aが形成されておりバネ部1の中心部で開放されていることにより、弾圧性が発揮でき、また射出成形する際にも材料の節約となる。
【0023】
6)上記1~5のいずれか1のSバルブ構造体Aを備えた蓄圧式スプレーとすることで、蓄圧式スプレーとして、引き込み力が軽減されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施の形態における、Sバルブ構造体を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態における、Sバルブ構造体を示す縦断面図であり、図2(A)は通常時を示し、図2(B)は、変形時を示す。
図3図3は本発明の実施の形態において、蓄圧式スプレーのサブシリンダ部にSバルブ構造体が組み込まれた状態を示す縦断面図の一部である。
図4図4は本発明の実施の形態におけるSバルブ構造体が組み込まれた蓄圧式スプレーXを示す斜視図である。
図5図5は本発明の実施の形態におけるSバルブ構造体が組み込まれた蓄圧式スプレーXを示す縦断面図である。
図6図6は、サブシリンダ部の内周壁を説明する図である。
図7図7は、内スカート部の下端部と縦溝部の関係を示す図であり、図7(A)は、Sバルブ構造体が閉じた状態であり、図7(B)は、Sバルブ構造体が開いた状態である。
図8図8は、トリガー部を引いていない状態の蓄圧式スプレーの縦断面図である。
図9図9は、トリガー部を引いている途中の蓄圧式スプレーの縦断面図である。
図10図10は、トリガー部を引き終わった状態の蓄圧式スプレーの縦断面図である。
図11図11は、復帰バネ部により、トリガー部が元の位置へ戻っている途中の蓄圧式スプレーの縦断面である。
図12図12は、Sバルブ構造体の変形例を示す縦断面図である。
図13図13は、Sバルブ構造体の別の変形例を示し、図13(A)は斜視図で、図13(B)は平面図である。
図14図14は、Sバルブ構造体の更に別の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
(実施の形態)
本発明は、蓄圧式スプレーXに組み込まれるSバルブ構造体Aに関するものであり、引き込み力が軽減された蓄圧式スプレーXに使用される。
ここで、この蓄圧式スプレーXは、容器に取り付けて容器内の液を導入管HからFバルブを介してメインシリンダ部B1内に吸い上げ、今度は、メインシリンダ部内の液に圧を加え、一定圧を超えた時点でSバルブ構造体Aを介してノズル部Fから勢いよく噴出させるものである。
この蓄圧式スプレーXの構造については後述する。
【0027】
(Sバルブ構造体)
図1は、本発明の実施の形態におけるSバルブ構造体Aを示す斜視図である。
【0028】
また、図2は、本発明の実施の形態におけるSバルブ構造体Aを示す縦断面図であり、図2(A)は通常時を示し、図2(B)は、変形時を示す。
変形時には、Sバルブ構造体Aが蓄圧式スプレーXに組み込まれた状態で、バルブピストン部2が上方に移動した際に、バネ部1がこのように変形する。
【0029】
また、図3は本発明の実施の形態において、蓄圧式スプレーXのサブシリンダ部B2にSバルブ構造体Aが組み込まれた状態を示す縦断面図の一部である。
Sバルブ構造体Aは、バネ部1と該バネ部1から垂下したバルブピストン部2とよりなる。
この実施の形態では、バネ部1は、Sバルブ構造体Aとして弾発効果を発揮できるように逆ドーム状(換言すると皿状)に形成されている。
【0030】
一方、バルブピストン部2は、芯棒部21と該芯棒部21の外周から下方に延びるスカート部を備える。
スカート部は、2つあって、外スカート部22と、該外スカート部22より下方に長く伸びる内スカート部23と、よりなる。
ここで、後述するが、外スカート部22は、封止の役割を果たし、また内スカート部23は、弁体の役割を果たす。
【0031】
バルブピストン部2の芯棒部21は、中空に形成されており、その中空穴21Aは、逆ドーム状のバネ部1の中心にて開放されている。
このように芯棒部21に中空穴21Aがあることにより、バルブピストン部2として弾圧性をより的確に発揮することができる。
【0032】
因みに、Sバルブ構造体Aが蓄圧式スプレーに組み込まれた場合に、Sバルブ構造体Aが閉じている状態では、Sバルブ構造体Aは、後述するように、上端部がカバー部Cの支持壁部C1に支えられている。
一方、下端部は、サブシリンダ部B2の底に圧接されている。
ここで、サブシリンダ部B2は、ベース体Bの上方に形成されたSバルブ構造体Aを収納するための円筒空間といえる。
【0033】
すなわち、ドーム状のバネ部1の上端部がカバー部Cの一部である支持壁部C1に支えられており、バルブピストン部2の下端部は、ベース体Bのサブシリンダ部B2の底に圧接されている。
【0034】
逆ドーム状のバネ体1は、形が円周方向に均等であり方向性がないため、カバー部Cの支持壁部C1に均等に当接することができ、当然、反力も偏りがなく均等となる。
このように、Sバルブ構造体Aは、上方にバネ部1を備え、弁体の機能を有するバルブピストン部2を下方に備えるので、メインシリンダ部B1が長くなってもSバルブ構造体Aの配設空間が十分確保できることとなる。
尚、バルブピストン部2の芯棒部21に形成された上鍔部24は、Sバルブ構造体Aが蓄圧式スプレーに組み込まれた場合、バルブピストン部2の横揺れ等を防止することができる。
【0035】
(蓄圧式スプレー)
図4は、本発明の実施の形態におけるSバルブ構造体Aが組み込まれた蓄圧式スプレーXを示す斜視図である。
【0036】
また、図5は本発明の実施の形態におけるSバルブ構造体Aが組み込まれた蓄圧式スプレーXを示す縦断面図である。
本発明の蓄圧式スプレーXは、容器Jの口部に取り付けられた状態で使用される。
尚、使用方法については後述する。
【0037】
(蓄圧式スプレーの構造)
構造についていうと、蓄圧式スプレーXは、ノズル部Fと、ベース部B(メインシリンダ部B1、サブシリンダ部B2、第1通路部P1、第2通路部P2、第3通路部P3等を有する)と、ピストン部Dと、カバー部Cと、トリガー部Eと、Sバルブ構造体Aと、FバルブFVと、導入管Hと、トリガー用復帰バネIと、キャップ部Gと、を備えている。
【0038】
また、ベース部Bを覆うカバー部Cを備えている。
ここで、ベース部Bは、液の流れる通路を有する重要な部分であって、ピストン部Dを受け入れるメインシリンダ部B1と、Sバルブ構造体Aを受け入れるサブシリンダ部B2と、容器内の液をメインシリンダ部B1に導入する第1通路部P1と、メインシリンダ部B1からSバルブ構造体Aのあるサブシリンダ部B2に導入する第2通路部P2と、サブシリンダ部B2からノズル部Fに液を導入する第3通路部P3とを備える。
【0039】
尚、ベース体Bの下端には下鍔部B3が設けられており、この下鍔部B3を容器Iの上端部とキャップ部Gとで挟み込むことで蓄圧式スプレーXは容器Jに確実に取り付けられる。
【0040】
ところで、先述したように、カバー部Cの内側の一部は、Sバルブ構造体Aのバネ部1
が当接する支持壁部C1となっている。
この支持壁部C1に逆ドーム状のバネ部1の円周端が当接した状態で、該バネ部1は、Sバルブ構造体Aのバルブピストン部2を下方に付勢する。
サブシリンダ部B2は、その内周壁によって、第2液通路P2の下流側に設けられた空間を形成する。
【0041】
尚、FバルブFVはメインシリンダ部B1と容器Jとの間の第1液通路P1に設けられ、他方、Sバルブ構造体Aはメインシリンダ部B1とノズル部Fに液を送る通路(すなわち第3通路部P3)の入口の間に設けられている。
因みに、液の流れは、容器J→導入管H→第1通路部P1→FバルブFV→メインシリンダ部B1→第2通路部P2→サブシリンダ部B2→Sバルブ構造体A→第3通路部P3→ノズル部F→外部、となる。
【0042】
(サブシリンダ部の内周壁)
ここで、サブシリンダ部B2の内周壁には、いわゆる弁座としての特徴があるので詳しく述べる。
【0043】
図6は、サブシリンダ部B2の内周壁を説明する図である。
サブシリンダ部B2の内周壁には全周囲に上下方向に伸びる凹状の縦溝部B21が複数個一定間隔を置いて形成されている。
その中でも、正面に(すなわちノズル部側)位置する第3通路部P3に対応する位置に設けられた縦溝部B21には、その底に第3通路部P3へ通じる貫通孔B22が設けられている。
そして、この縦溝部B21の底には第3通路部P3へ通じる貫通孔B22が設けられている。
【0044】
図6においては、縦溝部B21の両側には貫通孔B22を遮るように渡稈B23が形成されているのが分かる。
この渡稈B23の機能についていうと、サブシリンダ部B2内をバルブピストン部2が上下移動するが、その際、内スカート部23の端部が変形して第3通路P3に落ち込まないように、渡稈B23がそれを防止している。
【0045】
そのため、バルブピストン部2の上下移動がスムーズに行われる。
そして、第3通路部P3の位置に設けられた縦溝部B21以外の他の縦溝部B21には、貫通孔B22は設けられていない。
【0046】
サブシリンダ部B2の内周壁の全周囲に縦溝部B21が形成されているため、内スカート部22の下端部23Aが上下位置で縦溝部B21の下限部より下にある状態では、Sバルブ構造体Aとしては、閉じた状態にある。
内スカート部22の下端部が上下位置で縦溝部B21の上限部と下限部の間に位置した場合には、液は凹状の縦溝部B21を通って、内スカート部23の下側から上側へと逃げるように移動する。
すなわちSバルブ構造体Aとしては、閉じた状態である。
【0047】
図7は、内スカート部23の下端部と縦溝部B21の関係を示す図であり、図7(A)は、Sバルブ構造体Aが閉じた状態であり、図7(B)は、Sバルブ構造体Aが開いた状態である。
尚、外スカート部22は、サブシリンダ部B2の内壁に圧接しており、内スカート部23の上方に流れた液は、外スカート部22より上方には移動しない。
すなわち、外スカート部22は封止の役割を果たしている。
【0048】
移動した液は、正面にある貫通孔B22を通って第3通路部P3へと流れ込む。
この現象が、内スカート部23の全周囲で起きる。
ここで第3通路部P3の位置(正面の位置)に設けられた縦溝部B21においては、液はその縦溝部B21の底に形成された貫通孔B22を通って、直接、第3通路P3に流れ込むことになる。
【0049】
以上のように、サブシリンダ部B2の内周壁が、弁座の役割を果たし、バルブピストン部2の内スカート部23が弁体の役割を果たしていることが理解できよう。
次に蓄圧式スプレーXの一連の動きにおける液の流れについて述べる。
【0050】
図8図11は、トリガー部Eを引いた後、トリガー部Eがトリガー用復帰バネ部Iにより元の位置に戻るまでの一連の動きを示す図である。
【0051】
図8は、トリガー部Eを引いていない状態の蓄圧式スプレーXの縦断面図である。
いま、蓄圧式スプレーXに液が充填した状態にあるとする。
メインシリンダ部B1内に液が充填した状態で、トリガー部Eの回動によりピストン部Dを図でいう右側に引き込んで移動させる。
【0052】
図9は、トリガー部Eを引いている途中の蓄圧式スプレーXの縦断面図である。
これによって、メインシリンダ部B1内の液に圧が加わり(この時、FバルブFVは閉じている)、この液圧を受け、サブシリンダ部B2にあるSバルブ構造体Aが上方に移動する。
内スカート部23の下端部23Aがサブシリンダ部B2の内周壁に形成された縦溝部B21のある位置に至ると、貫通孔B22を通って第3通路部P3に流れ込む。
そして、ノズル部Fから外部に噴射される。
【0053】
図10は、トリガー部Eを引き終わった状態の蓄圧式スプレーXの縦断面図である。
噴射後は、Sバルブ構造体Aのバネ部1の働きによりバルブピストン部2は下方に移動し、Sバルブ構造体Aは閉じる。
すなわち内スカート部23の下端部23Aがサブシリンダ部B2の内壁の縦溝部B21の最下点より下に下がる。
次に、トリガー部Eの復帰方向への回動によりピストン部Dは図でいう左側に移動する。
【0054】
図11は、復帰バネ部により、トリガー部Eが元の位置へ戻っている途中の蓄圧式スプレーの縦断面である。
これによりメインシリンダ部B1内が負圧化され、FバルブFVが開き(この時、Sバルブ構造体Aは閉じている)、容器I内の液をメインシリンダ部B1内に吸い上げて充填させる。
上述した動作が繰り返されることとなる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0056】
図12は、Sバルブ構造体Aの変形例を示す縦断面図である。
このSバルブ構造体Aは、バネ部1の形状が上述のものとは異なり、逆ドーム状ではあるが径がより小さくて肉厚である。
バネ部1のより強い弾発力を必要とする場合には有効である。
【0057】
図13は、Sバルブ構造体Aの別の変形例を示し、(A)は斜視図で、(B)は平面図である。
このSバルブ構造体Aは、バネ部1の形状がドーム状ではあるが、カバー部Cの支持壁部C1に当接する部分である上端部は多角形(ここでは6角形)となっている。
そして、多角形の辺は、直線と弧が交互に形成されており、半数が直線である。
角数を変えることによりバネ部1のバネ力(すなわち弾発力)も対応して変えることができる。
例えば、8角形より6角形の方がよりバネ力を小さくすることができる。
【0058】
図14は、Sバルブ構造体Aの更に別の変形例を示す縦断面図である。
このSバルブ構造体Aにおいては、バネ部1とバルブピストン部2とが別体に形成されており、バネ部1の一部がバルブピストン部2に挿入固定されることにより両者が一体となっているものである。
ドーム状のバネ部1には、その中心部に支柱11が垂下形成されており、他方のSバルブピストン部2には、中空穴21Aが形成されている。
【0059】
バネ部1の支柱11をバルブピストン部2の中空穴21Aに圧入することで両者は一体化される。当然接着剤を使って一体化することも可能である。
バネ部1とバルブピストン部2の材質を異にすることができ、そのバネ部1の材質を選択することによりバネ力を変えることもできる。
また、どちらか一方が破損した場合には、それを新しいものと交換することも可能である。
【0060】
なお、以上説明したメインシリンダ部B1やサブシリンダ部B2を有するベース体Bの材質としては、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)等の素材が好適に用いられる。
またSバルブ構造体Aの材質としては、PP樹脂、POM樹脂(ポリアセタール樹脂)等の素材が好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のSバルブ構造体Aは、トリガー部Eの引き力を極力小さくした蓄圧式スプレーXに組み込まれるもので、握力が小さく非力な子供や老人にも容易に使用することができる。
極めて有用である。
【符号の説明】
【0062】
X・・・蓄圧式スプレー
A・・・Sバルブ構造体
1・・・バネ部
11・・・支柱
2・・・バルブピストン部
21・・・芯棒部
21A・・・中心穴
22・・・外スカート部
23・・・内スカート部
23A・・・下端部(端部)‘
24・・・上鍔部
B・・・ベース体
B1・・・メインシリンダ部
B2・・・サブシリンダ部
B21・・・縦溝部
B22・・・貫通孔
B23・・・渡稈
B3・・・下鍔部
C・・・カバー部
C1・・・支持壁部
D・・・ピストン部
E・・・トリガー部
F・・・ノズル部
G・・・キャップ部
H・・・導入管
I・・・トリガー用復帰バネ
J・・・容器
FV・・・Fバルブ
P1・・・第1通路部
P2・・・第2通路部
P3・・・第3通路部、
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