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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】コンクリート基礎ブロック
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20220725BHJP
   E01C 11/22 20060101ALI20220725BHJP
   E01F 9/535 20160101ALI20220725BHJP
   E01F 9/685 20160101ALI20220725BHJP
【FI】
E02D27/01 Z
E01C11/22 Z
E01F9/535
E01F9/685
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021033335
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2022-05-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520477418
【氏名又は名称】新星コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】只野 義智
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-248602(JP,A)
【文献】特開2008-223399(JP,A)
【文献】特開2020-012330(JP,A)
【文献】特開2020-045647(JP,A)
【文献】実開昭48-026708(JP,U)
【文献】実開昭51-054406(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E01C 1/00-17/00
E01F 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎ブロックであって、
内部に上下方向に延びる第1貫通孔が形成されたコンクリートブロックを備え、
前記第1貫通孔は、
前記コンクリートブロックの上面に開口を有する第1部分と、
前記第1部分の下端と連通する第2部分とによって画成され、
前記第2部分の、前記第1部分との上下方向の境界には、前記上下方向に直交する面に平行な方向の長さが、前記第1部分の前記境界における前記平行な方向の長さよりも長くなることによって形成された段差が設けられており、
前記第1部分の前記上下方向に直交する断面の断面積は上側から下側に向かって徐々に小さくなっており、
前記第2部分の前記上下方向に直交する断面の断面積は上側から下側に向かって徐々に大きくなっており、
前記コンクリートブロックの前記上下方向の一方の面には、前記一方の面から前記上下方向の一方に向かって突出する複数の凸部が形成され、
前記コンクリートブロックの前記上下方向の他方の面の、前記複数の凸部と前記上下方向において重なる位置には、それぞれ、前記他方の面から前記上下方向の前記一方に向かって凹んだ複数の凹部が形成され、
前記上下方向において重なる位置にある前記凸部と前記凹部を貫くように形成された、複数の第2貫通孔が形成されていることを特徴とするコンクリート基礎ブロック。
【請求項2】
コンクリート基礎ブロックであって、
内部に上下方向に延びる貫通孔が形成されたコンクリートブロックを備え、
前記貫通孔は、
前記コンクリートブロックの上面に開口を有する第1部分と、
前記第1部分の下端と連通する第2部分とによって画成され、
前記第2部分の、前記第1部分との上下方向の境界には、前記上下方向に直交する面に平行な方向の長さが、前記第1部分の前記境界における前記平行な方向の長さよりも長くなることによって形成された段差が設けられており、
前記第2部分の、前記上下方向に直交する断面は、前記断面に平行な方向の長さが部分的に長くなるスリット状の部分を有し、
前記コンクリートブロックの前記上下方向の一方の面には、前記一方の面から前記上下方向の一方に向かって突出する複数の凸部が形成され、
前記コンクリートブロックの前記上下方向の他方の面の、前記複数の凸部と前記上下方向において重なる位置には、それぞれ、前記他方の面から前記上下方向の前記一方に向かって凹んだ複数の凹部が形成され、
前記上下方向において重なる位置にある前記凸部と前記凹部を貫くように形成された、複数の第2貫通孔が形成されていることを特徴とするコンクリート基礎ブロック。
【請求項3】
前記複数の凸部は、前記コンクリートブロックの上面から上方に向かって突出し、
前記複数の凹部は、前記コンクリートブロックの下面から上方に向かって凹んでいる請求項1又は2に記載のコンクリート基礎ブロック。
【請求項4】
さらに、前記複数の第2貫通孔にそれぞれ挿入された複数のボルトと、前記複数のボルトと嵌合する複数のナットとを備える請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート基礎ブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート基礎ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路照明灯用のコンクリート基礎ブロックの一例として、略直方体形状のコンクリート基礎ブロックであって、その上面から下面まで貫通するポール孔が形成されたコンクリート基礎ブロックが開示されている。コンクリート基礎ブロックは重量が大きいため、コンクリート基礎ブロックの上面には、運搬移動用の吊りフックが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭51-054406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、コンクリート基礎ブロックは重量が大きいため、特許文献1に記載のコンクリート基礎ブロックのように、運搬移動用の吊りフックが取り付けられることが多い。そのため、コンクリート基礎ブロックを運搬する前には、作業員は各コンクリート基礎ブロックに吊りフックを取り付ける必要がある。また、コンクリート基礎ブロックを所定の位置に配置した後は、吊りフックは不要になるため、作業員は各コンクリート基礎ブロックに取り付けられた吊りフックを取り外す必要がある。このような吊りフックの取り付け作業及び取り外しの作業は、作業員にとって大きな負担となる。特に、大型のコンクリート基礎ブロックの重量は重くなるため、作業員の負担が大きくなるとともに、その設置には大型のクレーン車が必要になることもある。大型のクレーン車を用いる必要がある場合には、クレーン車の稼働スペースを確保する必要があり、狭い場所に大型のコンクリート基礎ブロックを設置することは困難になる。
【0005】
本発明の目的は、移動運搬の際に吊りフックを必要としないコンクリート基礎ブロックを提供することである。また、本発明の別の目的は、大型のクレーン車を用いることなく大型のコンクリート基礎ブロックを設置することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、本発明の態様に従えば、コンクリート基礎ブロックであって、
内部に上下方向に延びる第1貫通孔が形成されたコンクリートブロックを備え、
前記第1貫通孔は、
前記コンクリートブロックの上面に開口を有する第1部分と、
前記第1部分の下端と連通する第2部分とによって画成され、
前記第2部分の、前記第1部分との上下方向の境界には、前記上下方向に直交する面に平行な方向の長さが、前記第1部分の前記境界における前記平行な方向の長さよりも長くなることによって形成された段差が設けられており、
前記第1部分の前記上下方向に直交する断面の断面積は上側から下側に向かって徐々に小さくなっており、
前記第2部分の前記上下方向に直交する断面の断面積は上側から下側に向かって徐々に大きくなっており、
前記コンクリートブロックの前記上下方向の一方の面には、前記一方の面から前記上下方向の一方に向かって突出する複数の凸部が形成され、
前記コンクリートブロックの前記上下方向の他方の面の、前記複数の凸部と前記上下方向において重なる位置には、それぞれ、前記他方の面から前記上下方向の前記一方に向かって凹んだ複数の凹部が形成され、
前記上下方向において重なる位置にある前記凸部と前記凹部を貫くように形成された、複数の第2貫通孔が形成されていることを特徴とするコンクリート基礎ブロックが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、例えば、吊上げ用のワイヤが取り付けられた金属棒の支持部材を貫通孔の第1部分から第2部分まで挿入して、第2部分で支持部材を回転させることによって支持部材を段差に引っかけることができる。これにより、支持部材及びワイヤを用いて、容易にコンクリート基礎ブロックを吊り上げることができる。また、コンクリート基礎ブロックの貫通孔には、フェンスなどの支柱が挿入され、貫通孔の内部に充填されたモルタルによって支柱が固定される。この場合、硬化したモルタルは、第1部分及び第2部分に対応した形状になる。モルタルが硬化する際にモルタルの体積が変化して、モルタルが貫通孔の壁面から離れてしまったとしても、硬化したモルタルの第2部分に対応した部分が、貫通孔内部に形成された段差に引っかかる。そのため、支柱及びその周りの硬化したモルタルがコンクリート基礎ブロックから浮き上がって外れる恐れがない。また、コンクリート基礎ブロックの上面及び下面のうち、一方の面には凸部が設けられ、他方の面には凹部が設けられている。これにより、凹部に凸部を挿入するようにして、複数のコンクリート基礎ブロックを上下に重ねることができる。また凸部と凹部を貫くように貫通孔が設けられているので、この貫通孔にボルトを通してナットで締結することにより、上下に重ねられて複数のコンクリート基礎ブロックを容易に締結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は基礎ブロック100の上面図、側面図及び下面図である。
図2図2は基礎ブロック100の断面を示す概略図である。
図3図3図1のIII-III線断面図である。
図4図4図1のIV-IV線断面図である。
図5図5(a)~(d)は基礎ブロック100の製造方法を示す概略図である。
図6図6は基礎ブロック100に支持部材300及びワイヤ301を取り付けた場合の説明図である。
図7図7は複数の基礎ブロック100を積み上げた状態を示す概略図である。
図8図8(a)は従来の基礎ブロック900の上面図及び側面図であり、図8(b)は従来の基礎ブロック900の断面を示す概略図である。
図9図9(a)~(c)は基礎ブロック900の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係るコンクリート基礎ブロック100(以下、単に基礎ブロック100と称する。図1参照)は、防音柵の支柱を固定するための基礎ブロックである。基礎ブロック100を説明する前に、従来ある基礎ブロック900について、図8(a)、(b)を参照しつつ説明する。なお、本明細書においては、例えば図1及び図8(b)に示されるように、基礎ブロック100、900が通常配置される向きを基準として上下方向を定義する。
【0010】
図8(a)、(b)に示されるように、基礎ブロック900は略直方体状のコンクリート製のブロックであり、上面901Uの外周部分は面取りされている。基礎ブロック900には、上面901Uから下面901Dまで貫通する貫通孔902が形成されている。貫通孔902の開口は正方形の形状を有しており、貫通孔902の上面901Uの開口の一辺の長さXは、下面901Dの開口の一辺の長さXよりも大きい(X>X)。つまり、基礎ブロック900には、上面901Uから下面901Dに向かって断面積が徐々にすぼまっている貫通孔902が形成されている。
【0011】
次に、図9(a)~(c)を参照しつつ、基礎ブロック900の製造方法について説明する。まず、図9(a)に示されるように、基礎ブロック900の外形をかたどった外枠810の内側に、第1型枠820を配置する。外枠810は、基礎ブロック900の側面901S(図8(b)参照)を形成するための4つの長方形の板状の側面を有しており、全体として、中空の四角柱状の形状を有している。つまり、外枠810の内側には、直方体形状の空隙が形成されている。なお、図9(a)には外枠810の4つの側面のうち、2つの側面が図示されている。
【0012】
第1型枠820は、基礎ブロック900の上面901Uを形成するための底部821と、貫通孔902を形成するための筒部822とを有している。筒部822は、四角錐台の形状を有している。つまり、図8(b)の上側に向かって径が徐々にすぼまった四角柱形状を有している。第1型枠820の底部821の外周は、外枠810の下端部分に接しており、外枠810と第1型枠820を組み合わせることにより、基礎ブロック900を形成するための内部空間S1が形成される。
【0013】
図9(b)に示されるように、外枠810と第1型枠820を組み合わせた状態で、内部空間S1に生コンクリートFCを流し込む。このとき、生コンクリートFCが、円錐台形状の円筒部822の上端まで到達しないように流し込む生コンクリートFCの量を調整する。次に、内部空間S1に流し込まれた生コンクリートFCを硬化させる。
【0014】
その後、図9(c)に示されるように、外枠810及び第1型枠820を取り除いて、硬化した基礎ブロック900を取り出す。仮に筒部822の水平面の断面積が、上下方向のいずれの位置においても一定である場合、つまり、筒部822が四角錐台形状ではなく四角柱形状であった場合には、第1型枠820を下側に向かって押圧したとしても、第1型枠820を基礎ブロック900から容易に取り外すことができない。これに対して、第1型枠820の筒部822の水平面の断面積は、図9(b)の上側にいくにつれて徐々に小さくなっているので、第1型枠820を図9(b)の下側に向かって押圧することにより第1型枠820を基礎ブロック900から容易に取り外すことができる。
【0015】
次に、本実施形態に係る基礎ブロック100について説明する。図1に示されるように、基礎ブロック100は略直方体状のコンクリート製のブロックである。基礎ブロック100の上面101Uの外周部分は面取りされている。基礎ブロック100の内部には、上面101U及び下面101Dにそれぞれ矩形状の開口を有し、基礎ブロック100を上下方向に貫く貫通孔102が形成されている。また、図1、2、4に示されるように、貫通孔102には、部分的に幅が長くなるスリット部103が形成されている。スリット部103は、下面101Dから上方に向かって延在しているが、スリット部103の上端の上下方向の位置は上面101Uよりも下方にある。つまり、スリット部103は、上面101Uまでは延在していない。これにより、基礎ブロック100の内部の、スリット部103の上端の位置には、幅が急に狭くなることによって形成された段差Dが設けられている。詳細には、図4に示されるように、貫通孔102の上端の幅L1は、下端の幅L3よりも大きい(L1>L3)。つまり、貫通孔102は下側に向かってすぼまるような形状を有しており、貫通孔102の幅は上側から下側に向かって徐々に小さくなっている。これに対して、スリット部103の上端の幅L4は下端の幅L5よりも小さい(L4<L5)。つまり、スリット部103は上側に向かってすぼまるような形状を有しており、スリット部103の径は下側から上側に向かって徐々に小さくなっている。なお、スリット部103の上端において、幅がL4からL2に急激に変化しており、これにより段差Dが形成されている。
【0016】
図1~3に示されるように、基礎ブロック100の上面101Uには、4つの円筒状の凸部105が形成されている。4つの凸部105は、それぞれ、矩形状の上面101Uの四隅に位置している。また、図1、3に示されるように、基礎ブロック100の下面101Dの、上下方向において4つの凸部105と重なる位置には、4つの凹部106が形成されている。凹部106は、円筒をくりぬいた形状のくぼみである。そして、上下方向に重なる凸部105と凹部106とを貫くように、貫通孔107が形成されている。なお、凸部105の高さと、凹部106の深さはほぼ同じであり、且つ、凸部105の径よりも凹部106の径が若干大きい。そのため、後述のように、凸部105を凹部106に挿入するようにして、2つの基礎ブロック100を上下に重ねることができる(図7参照)。
【0017】
次に、図5(a)~(d)を参照しつつ、基礎ブロック100の製造方法について説明する。図5(a)に示されるように、基礎ブロック100の外形をかたどった外枠810の内側に、第1型枠820を配置する。外枠810と第1型枠820は、上述の基礎ブロック900の製造方法において説明したものと同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0018】
図5(b)に示されるように、第1型枠820の上方から、第2型枠830を取り付ける。第2型枠830は、下方にいくにつれて徐々に幅が小さくなるような台形の形状を有する板状の部材である。第2型枠830には第1型枠820の円筒部822の形状に合わせた切り欠きが形成されている。第2型枠830の切り欠きが第1型枠820の円筒部822を覆うように、第1型枠820の上に第2型枠830が重ねられる。このように、外枠810と第1型枠820と第2型枠830とを組み合わせることにより、基礎ブロック100を形成するための内部空間S2が形成される。
【0019】
図5(c)に示されるように、外枠810と第1型枠820と第2型枠830とを組み合わせた状態で、内部空間S2に生コンクリートFCを流し込む。このとき、生コンクリートFCが、第2型枠830の上端まで到達しないように流し込む生コンクリートFCの量を調整する。次に、内部空間S2に流し込まれた生コンクリートFCを硬化させる。
【0020】
その後、図5(d)に示されるように、外枠810、第1型枠820、第2型枠830を取り除いて、硬化した基礎ブロック100を取り出す。この場合においても、基礎ブロック900を製造する場合と同様に、第1型枠820の円筒部822の径は、図5(b)の上側にいくにつれて徐々に小さくなっているので、第1型枠820を図5(b)の下側に向かって押圧することにより第1型枠820を基礎ブロック100から容易に取り外すことができる。また、第2型枠830は、下方に向かってすぼまっている台形状の外形を有しているため、第1型枠820を下方に押圧して取り除いた後に、第2型枠830を上方に押圧することにより、基礎ブロック100から容易に取り外すことができる。
【0021】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態に係る基礎ブロック100は、貫通孔102が形成されている。貫通孔102には、スリット部103が形成されており、貫通孔102の、スリット部103の上端の位置には、段差Dが形成されている。これにより、図6に示されるように、金属棒の支持部材300を基礎ブロック100の貫通孔102に挿入して、内部で回転させることにより、金属棒の支持部材300を段差Dに引っかかるように配置することができる。予め支持部材300に吊り上げ用のワイヤ301を取り付けておくことにより、支持部材300及びワイヤ301を用いて容易に基礎ブロック100を吊り上げることができる。上述のように、金属棒の支持部材300を貫通孔に挿入して、内部で回転させるだけで、容易に段差Dに引っかけることができるため、従来の吊りフックの取り付け作業と比べて、作業員の負担を大きく低減することができる。また、金属棒の支持部材300の取り外しに関しても、貫通孔の内部で回転させるだけで容易に取り外すことができるため、従来の吊りフックの取り外し作業と比べて、作業員の負担を大きく低減することができる。
【0022】
基礎ブロック900の貫通孔902の内部には、基礎ブロック900に固定されるフェンスなどの支柱が挿入される。そして、貫通孔902の内部の、基礎ブロック900と支柱との隙間にはモルタルが充填される。充填されたモルタルが硬化することにより、フェンスの支柱などが基礎ブロック900に固定される。ここで、貫通孔902は下方に向かって徐々にすぼまっている形状を有しているため、貫通孔902に充填されたモルタルも、下方に向かって徐々にすぼまっている四角錐台の形状となる。モルタルが硬化する際に、体積が変化するため、モルタルが貫通孔902の壁面から離れてしまうことがある。この場合には、支柱及びその周りの硬化したモルタルが、基礎ブロック900から浮き上がって外れやすくなってしまう。これに対して、本実施形態にかかる基礎ブロック100においては、貫通孔102の、スリット部103の上端の位置には段差Dが形成されている。そのため、基礎ブロック100にフェンスなどの支柱を挿入して、貫通孔の内部にモルタルを充填した場合、硬化したモルタルも、貫通孔102及びスリット部103に対応した形状になる。この場合には、モルタルが硬化する際に、モルタルの体積が変化して、モルタルが貫通孔の壁面から離れてしまったとしても、硬化したモルタルのスリット部103に対応した部分が、段差Dに引っかかる。そのため、支柱及びその周りの硬化したモルタルが基礎ブロック100から浮き上がって外れる恐れがない。
【0023】
基礎ブロック100の上面101Uには、4つの凸部105が形成されており、下面101Dの、4つの凸部105と上下方向に重なる位置には4つの凹部106が形成されている。上述のように、凸部105の高さと、凹部106の深さはほぼ同じであり、且つ、凸部105の径よりも凹部106の径が若干大きい。そのため、図7に示されるように、凸部105を凹部106に挿入するようにして、2つ以上の基礎ブロック100を上下に重ねることができる。また、凸部105と凹部106とを上下に貫くように、貫通孔107が形成されている。複数の基礎ブロック100を上下に重ねたときには、各基礎ブロック100の貫通孔107は上下に重なるので、全体として1つの長い貫通孔を形成する。この貫通孔にボルト109を挿入し、ボルト109の上下端部をナット110で締め付けることにより、上下方向に重ねられた複数の基礎ブロック100を固定することができる。この場合において、図7に示されるように、下面に凹部106が形成されているが上面は平坦な蓋部材120を、最も上の基礎ブロック100の上面101Uに重ねるように配置してもよい。これにより、凸部105が重ねられた基礎ブロック100の上に露出しないので、凸部105が破損することを防ぐことができる。
【0024】
このように、複数の基礎ブロック100を上下に積み重ねて、ボルト109で締結することにより、複数の基礎ブロック100を一体とした一個の大きな基礎ブロックとして用いることができる。例えば、住宅街にあるコンビニエンスストアの敷地の境界付近に防音柵を設ける場合には、強風により防音柵が倒れることを防止するために、大型の基礎ブロックで防音柵の支柱を支える必要がある。これまでは、防音柵の支柱を支えるために、大型の基礎ブロックを用いていた。大型の基礎ブロックを設置するためには、大型のクレーン車が必要になる場合がある。しかしながら、更地に防音柵を設置することには限られず、コンビニエンスストアの建物を建てた後に、建物と隣の建物の間に防音柵を設置する工事を行う場合もある。このような場合には、大型のクレーン車を稼働させるためのスペースを確保できないことがある。そのような場合には、大型のクレーン車を用いて大型の基礎ブロックを搬入して設置することができない。そのため、現場で生コンクリートを充填して支柱を支えるための基礎を作製する基礎工事を行う必要があった。これに対して、本実施形態にかかる基礎ブロック100を用いる場合には、複数個の基礎ブロック100を分割して搬入することができ、現場で積み重ねることによって大型の基礎ブロックを形成することができる。そのため、大型のクレーン車を用いる必要がなく、容易に工事を進めることができる。
【0025】
<変更形態>
以上説明した実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、基礎ブロック100の形状及び寸法は、上記実施形態の例に限られず適宜変更しうる。例えば、基礎ブロック100は上記のような略直方体形状でなくてもよく、任意の形状にしうる。
【0026】
基礎ブロック100の凸部105及び凹部106の形状は、上記の態様には限られない。凹部106の内部に凸部105が挿入できる限りにおいて、任意の形状、寸法にすることができる。凸部105及び凹部106の数も任意にしうる。また、上記実施形態においては、基礎ブロック100の上面101Uに、上方に突出する凸部105が形成され、下面101Dに上方に向かって凹んだ凹部106が形成されている。しかしながら、本発明はこのような態様には限られない。例えば、基礎ブロック100の上面101Uに、下方に凹んだ凹部が形成され、基礎ブロック100の下面に下方に突出する凸部が形成されていてもよい。この場合においても、凸部と凹部とが嵌合するように、上下方向に複数の基礎ブロック100を重ねることができる。
【0027】
また、基礎ブロック100の内部に形成される貫通孔に関して、貫通孔の断面形状も、矩形に限らず任意の形状にしうる。上記実施形態においては、基礎ブロック100の内部に形成される貫通孔の幅(上下方向に直交する面に平行な方向の長さ)が部分的に長くなることによって、段差Dが形成されていた。しかしながら、本実施形態はそのような態様には限られない。例えば、貫通孔の内部に、断面積が大きい部分と断面積が小さい部分とが上下方向に並んでおり、これによって下方から上方に向かって断面積が狭くなる段差Dが形成されていてもよい。
【0028】
このような段差Dは、例えば、以下のようにして形成することができる。上記実施形態においては、第2型枠830は、下側に第1型枠820の円筒部822に対応する切り欠きを有しており、切り欠きが円筒部822を覆うように第1型枠820の上に第2型枠835が重ねられていた。これに代えて、第2型枠830が、下方にいくにつれて徐々に径が小さくなるような円錐台の外形を有していてもよい。このような第2型枠を用いることにより、基礎ブロック100の内部に形成される貫通孔において、断面積が大きい部分と断面積が小さい部分とが上下方向に並ぶため、これにより段差Dを形成することができる。この場合にも、貫通孔の内部に段差Dが形成されるので、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、上記の説明では、基礎ブロック100の内部に形成される貫通孔に、部分的に幅が長くなるスリット状の部分が1ヶ所だけ形成されていたが、同様のスリット状の部分が複数形成されてもよい。
【0029】
上記実施形態においては、支持部材300は金属の丸棒であったが、本発明はそのような態様には限られない。支持部材300の形状、材質等は適宜変更しうる。また、支持部材300に取り付けられる部材も、ロープ状の部材であればよく、必ずしもワイヤ301に限られない。
【0030】
上記実施形態においては、基礎ブロック100は、防音柵の支柱を固定するための基礎ブロックであったが、本発明はそのような態様には限られず、任意の用途のコンクリート製の基礎ブロックに適用しうる。
【符号の説明】
【0031】
100 基礎ブロック
102 貫通孔
103 スリット部
D 段差
810 外枠
820 第1型枠
830 第2型枠
【要約】
【課題】移動運搬の際に吊りフックを必要とせず、上下方向に連結可能なコンクリート基礎ブロックを提供する。
【解決手段】
基礎ブロック100は、内部に貫通孔102を有している。貫通孔102は、スリット部103を有しており、貫通孔102の、スリット部103の上端には段差Dが形成される。また、基礎ブロック100の上面101Uには凸部105が形成され、下面101Dには凹部106が形成されている。金属棒の支持部材300を基礎ブロック100の貫通孔に挿入して、内部で回転させることにより、金属棒の支持部材300を段差Dに引っかかるように配置することができる。予め支持部材300に吊り上げ用のワイヤ301を取り付けておくことにより、支持部材300及びワイヤ301を用いて容易に基礎ブロック100を吊り上げることができる。また、凹部106を凸部105に挿入するようにして、複数の基礎ブロック100を上下方向に重ねることができる。
【選択図】 図2
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