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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】RFタグおよびRFタグ付き導体
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/42 20060101AFI20220725BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20220725BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H01Q9/42
G06K19/077 144
G06K19/077 224
H01Q1/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021503494
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2020005261
(87)【国際公開番号】W WO2020179381
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2019041516
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 聡
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅和
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-140400(JP,A)
【文献】特開2012-023689(JP,A)
【文献】特開2009-231870(JP,A)
【文献】特開2005-191705(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00- 19/10
H01Q 1/00- 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFタグ用アンテナと、
電波に基づいて動作するICチップと、を含むRFタグであって、
前記RFタグ用アンテナは、
第1主面、前記第1主面に対向する第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とに隣接する第1側面を有する絶縁基材と、
前記第1主面に設けられた第1導波素子と、
前記第2主面から前記第1側面および前記第1主面にまたがって設けられた第2導波素子と、
前記第1主面に設けられ、一端が前記第1導波素子に電気的に接続され、他端が前記第2導波素子に電気的に接続され、前記ICチップが搭載された給電部と、
前記第1主面に設けられ、一端が前記第1導波素子に電気的に接続され、他端が前記第2導波素子に電気的に接続された短絡部と、を含み、
前記絶縁基材、前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部、および前記短絡部により、読取装置から送信された前記電波を受信する板状逆Fアンテナが構成され、
前記第1導波素子の側辺の長さの合計が前記電波の波長(λ)の20%以上30%以下であり、
前記第1導波素子、前記短絡部、前記第2導波素子、および前記給電部により構成されるインダクタンス(L)と、前記第1導波素子、前記第2導波素子、および前記絶縁基材により構成されるコンデンサと前記ICチップ内部の等価容量とを合わせたキャパシタンス(C)とより、前記電波の周波数(f)で共振する共振回路が構成され、
前記給電部および前記短絡部の長さは、前記インダクタンス(L)が
【数1】
を満たすように設定されている、RFタグ。
【請求項2】
前記絶縁基材は長辺と短辺と高さとを有する直方体形状であり、前記第1側面は前記絶縁基材の短辺側の側面であって、前記短辺の中央から直方体の長手方向に沿って前記第1主面にノッチが形成され、前記給電部と前記短絡部とが前記ノッチによって分割されている、請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
前記絶縁基材の素材は発泡スチロールである、請求項1または2に記載のRFタグ。
【請求項4】
前記第1導波素子、前記第2導波素子、前記給電部、および前記短絡部の表面に保護及び印字シートが設けられており、さらに、前記第2主面の前記保護及び印字シートの表面に接着シートが設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項5】
前記第1主面の前記第1導波素子、前記給電部、および前記短絡部の表面に保護及び印字シートが設けられ、前記第1主面の保護及び印字シートの表面、および前記絶縁基材の各側面に外装シートが設けられており、さらに、前記第2主面の前記第2導波素子の表面に接着シートが設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項6】
前記第1主面の前記第1導波素子、前記給電部、および前記短絡部の表面に保護及び印字シートが設けられ、前記第1主面の保護及び印字シートの表面、前記絶縁基材の各側面、および前記第2主面の前記第2導波素子の表面に外装シートが設けられており、さらに、前記第2主面の前記外装シートの表面に接着シートが設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載のRFタグ。
【請求項7】
導体と、請求項4から6のいずれか1項に記載のRFタグとを備え、前記導体はRFタグの前記接着シートを介してRFタグに接着される、RFタグ付き導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRFタグおよびRFタグ付き導体に関し、特に小型および薄型のRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物流等の様々な分野において、RFID(Radio Frequency Identification)を利用したRFIDシステムが検討されている。
【0003】
RFIDシステムでは、アンテナ及びICチップを備えたRFタグが用いられる。RFタグは、読取装置のアンテナから送信された電波(搬送波)をRFタグのアンテナで受信する。そして、ICチップに記録されている搬送物の識別データ等を反射波に乗せて読取装置へ返送する。これにより、読取装置をRFタグに接触させることなく、RFタグは読取装置と通信することが可能となる。なお、読取装置には、RFタグに情報を書き込むための書き込み機能を有するものもある。
【0004】
特許文献1(WO2016/129542号公報)には、RFタグ用アンテナは、第1主面及び第2主面を有する第1絶縁基材と、第1主面に設けられた第1導波素子と、第2主面に設けられた第2導波素子と、第2導波素子に一端が電気的に接続された給電部と、第1導波素子に一端が電気的に接続され、第2導波素子に他端が電気的に接続された短絡部とを備え、第1絶縁基材、第1導波素子、第2導波素子、給電部及び短絡部により、読取装置から送信された電波を受信する板状逆Fアンテナが構成され、第1導波素子、短絡部、第2導波素子及び給電部により構成されるインダクタパターンLと、第1導波素子、第2導波素子及び第1絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されることが記載されている。
【0005】
特許文献2(特許第5703977号公報)には、第1主面及び第1主面と対向する第2主面を有する誘電体ブロックと、誘電体ブロックの第1主面に設けられた放射導体と、誘電体ブロックの第2主面に設けられたグランド導体と、高周波信号を処理する無線IC素子と放射導体及びグランド導体とを接続する給電導体と、放射導体とグランド導体とを接続する短絡導体とを含んで構成される逆F型アンテナを備えた無線通信デバイス付き金属物品であって、少なくとも放射導体、グランド導体、給電導体及び短絡導体は、それぞれ平板状をなす金属導体として構成されており、金属導体は、放射導体部分が誘電体ブロックの第1主面に配置され、グランド導体部分が誘電体ブロックの第2主面に配置され、給電導体部分が主として誘電体ブロックの側面に配置され、短絡導体部分が主として誘電体ブロックの側面に配置されており、グランド導体と金属物品とが直接電気的にあるいは容量を介して接続され、金属物品を放射素子として使用していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】再公表特許(A1) WO2016/129542号公報
【文献】特許第5703977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の発明では、給電部と短絡部が第1絶縁基材の側面に備えられており、図1Aに記載のようにICチップを第1導波素子と同一平面上に設けた場合にも、アンテナの短絡部および給電部の長さは第1絶縁基材の厚さとほぼ等しい。
したがって、第1導波素子、短絡部、第2導波素子及び給電部により構成されるインダクタパターンのインダクタンスは第1絶縁基材の厚さおよび第1、第2導波素子の形状で決まっており、インダクタンスの値を自由に設定することができない。
【0008】
特許文献2に記載の発明では、給電導体、短絡導体と無線IC素子は誘電体ブロックの側面に配置されており、図9Bに記載のように無線IC素子を上面に配置した場合も含めて、給電導体と短絡導体との長さは誘電体ブロックの厚さとほぼ等しい。
【0009】
本発明の主な目的は、電波の受信周波数に合致した共振周波数を備えた、板状逆Fアンテナ形式の小型および薄型のRFタグ、およびそのようなRFタグと導体を備えたRFタグ付き導体を提供することにある。
【0010】
(1)
一局面に従うRFタグは、RFタグ用アンテナと、電波に基づいて動作するICチップと、を含むRFタグであって、RFタグ用アンテナは、第1主面、第1主面に対向する第2主面、および第1主面と第2主面とに隣接する第1側面を有する絶縁基材と、第1主面に設けられた第1導波素子と、第2主面から第1側面および第1主面にまたがって設けられた第2導波素子と、第1主面に設けられ、一端が第1導波素子に電気的に接続され、他端が第2導波素子に電気的に接続され、ICチップが搭載された給電部と、第1主面に設けられ、一端が第1導波素子に電気的に接続され、他端が第2導波素子に電気的に接続された短絡部と、を含み、
絶縁基材、第1導波素子、第2導波素子、給電部、および短絡部により、読取装置から送信された電波を受信する板状逆Fアンテナが構成され、第1導波素子の側辺の長さの合計(以降、周囲長とも言う)が電波の波長(λ)の20%以上30%以下であり、第1導波素子、短絡部、第2導波素子、および給電部により構成されるインダクタンス(L)と、第1導波素子、第2導波素子、および絶縁基材により構成されるコンデンサとICチップ内部の等価容量とを合わせたキャパシタンス(C)とより、電波の周波数(f)で共振する共振回路が構成され、給電部および短絡部の長さは、インダクタンス(L)が
【数1】
を満たすように設定されている。
【0011】
RFタグ用アンテナの形状の小型化のためには第1導波素子の側辺の長さの合計を短くすることが必要であるが、従来の板状逆Fアンテナの設計手法では第1導波素子の側辺の長さの合計は波長をλとして1/2λとされており、側辺の長さの合計を1/2λより短くすることは困難であった。
【0012】
発明者は、第1導波素子、短絡部、第2導波素子及び給電部により構成されるインダクタパターンと、第1導波素子、第2導波素子及び絶縁基材により構成されるコンデンサとにより、電波の周波数帯域で共振する共振回路が構成されること、すなわち、共振回路の周波数を電波の周波数に設定すれば、第1導波素子の側辺の長さの合計が1/2λ未満であっても電波を受信することが可能であること、を開示した。ただし、第1導波素子の側辺の長さの合計を短くすると、第1導波素子、第2導波素子及び絶縁基材により構成されるコンデンサのキャパシタンスが小さくなり、上記開示に記載の共振回路の共振周波数が電波の受信周波数より高くなる。第1主面と第2主面との距離、すなわち絶縁基材の厚さを薄くし、キャパシタンスを大きくすることで共振周波数を電波の受信周波数に合わせることも可能ではあるが、この場合、第1導波素子と第2導波素子との開口面積が小さくなり、RFタグ用アンテナの利得が小さくなる、あるいは絶縁基材の厚さを極端に薄くしていくと絶縁基材の機械的強度が弱くなるなどの課題がある。
【0013】
一局面に従う発明では、給電部と短絡部とを第1主面に設けることにより、給電部と短絡部との形状、特に長さの自由度を確保するとともに、給電部と短絡部との長さを上記数式1を満たすように設定することによって、絶縁基材の厚さを極端に薄くすることなく、電波の受信周波数に合致した共振周波数を備えた、小型および薄型のRFタグを実現している。
なお、一局面に従う発明では第2導波素子が第2主面から第1側面および第1主面にまたがって設けられているが、これは第1側面を給電部と短絡部ではなく第2導波素子で被うことによって、貼り付け作業を容易にするためである。
【0014】
(2)
第2の発明にかかるRFタグは、一局面に従うRFタグにおいて、絶縁基材は長辺と短辺と高さとを有する直方体形状であり、第1側面は絶縁基材の短辺側の側面であって、短辺の中央から直方体の長手方向に沿って第1主面にノッチが形成され、給電部と短絡部とがノッチによって分割されている。
【0015】
この場合、第1主面に、短辺の中央から直方体の長手方向に沿ってノッチを形成し、給電部と短絡部とをノッチで分割することによって、給電部および短絡部の形状(長さおよび幅)の自由度をより広く確保することができる。
【0016】
(3)
第3の発明にかかるRFタグは、一局面から第2の発明にかかるRFタグにおいて、絶縁基材の素材は発泡スチロールである。
【0017】
絶縁基材として比誘電率の小さな発泡スチロールを用いることで、同一キャパシタンスに対して第1導波素子と第2導波素子との距離を大きくして、アンテナの開口面積を確保することにより、板状逆Fアンテナの利得向上を図ることができる。
【0018】
(4)
第4の発明にかかるRFタグは、一局面から第3の発明にかかるRFタグにおいて、第1導波素子、第2導波素子、給電部、および短絡部の表面に保護及び印字シートが設けられており、さらに、第2主面の保護及び印字シートの表面に接着シートが設けられている。
【0019】
この場合、第1導波素子、第2導波素子、給電部、および短絡部の表面に保護及び印字シートを設けることでRFタグ用アンテナの保護、品名などの印字を可能にし、さらに、第2主面に接着シートを設けることで、RFタグの導体等への接着を容易にしている。
【0020】
(5)
第5の発明にかかるRFタグは、一局面から第3の発明にかかるRFタグにおいて、第1主面の第1導波素子、給電部、および短絡部の表面に保護及び印字シートが設けられ、第1主面の保護及び印字シートの表面、および絶縁基材の各側面に外装シートが設けられており、さらに、第2主面の第2導波素子の表面に接着シートが設けられている。
【0021】
この場合、第1主面の第1導波素子、給電部、および短絡部の表面に保護及び印字シートを設けることでRFタグ用アンテナの保護、品名などの印字を可能にするとともに、RFタグの第1主面および側面に外装シートを設けることによりRFタグを防水仕様とし、さらに第2主面に接着シートを設けることで、RFタグの導体等への接着を容易にしている。
【0022】
(6)
第6の発明にかかるRFタグは、一局面から第3の発明にかかるRFタグにおいて、第1主面の第1導波素子、給電部、および短絡部の表面に保護及び印字シートが設けられ、第1主面の保護及び印字シートの表面、絶縁基材の各側面、および第2主面の第2導波素子の表面に外装シートが設けられており、さらに、第2主面の外装シートの表面に接着シートが設けられている。
【0023】
この場合、第1主面の第1導波素子、給電部、および短絡部の表面に保護及び印字シートを設けることでRFタグ用アンテナの保護、品名などの印字を可能にするとともに、絶縁基材の第1主面、第2主面、および各側面の全体を外装シートで被うことにより、RFタグの防水、耐候性を強化し、さらに第2主面の外装シートの表面に接着シートを設けることで、RFタグの導体等への接着を容易にしている。
【0024】
(7)
第7の発明にかかるRFタグ付き導体は、導体と、第4の発明から第6の発明にかかるRFタグとを備え、導体はRFタグの接着シートを介してRFタグに接着される。
【0025】
この場合、導体とRFタグの第2導波素子とが接着シートなどの容量を介して接続され、導体がRFタグの第2導波素子の延長として機能し、実質的に、第2導波素子の面積が大きいRFタグ用アンテナと等価となる。そして、RFタグ用アンテナの第2導波素子(アンテナのグランド部あるいは筐体に相当)の面積を大きくすることで、アンテナの利得を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態のRFタグの第1主面側から見た模式的斜視図である。
図2】第1の実施形態のRFタグの第2主面側から見た模式的斜視図である。
図3】第1の実施形態のRFタグの読み取り可能範囲の周波数特性の実測値のグラフである。
図4】簡易モデルの板状逆Fアンテナの模式的斜視図である。
図5】簡易モデルの板状逆FアンテナのFDTD法による解析結果を示すグラフである。
図6】第2の実施形態のRFタグの模式的断面図である。
図7】第3の実施形態のRFタグの模式的断面図である。
図8】第4の実施形態のRFタグの模式的断面図である。
図9】第5の実施形態のRFタグ付き導体の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態のRFタグ100の第1主面側から見た模式的斜視図、図2は第1の実施形態のRFタグ100の第2主面側から見た模式的斜視図、図3は第1の実施形態のRFタグ100の読取可能範囲の周波数特性の実測値のグラフである。
【0029】
(RFタグ100の形状)
第1の実施形態のRFタグ100は、RFタグ用アンテナ10とICチップ80を備える。RFタグ用アンテナ10は、絶縁基材40と、第1導波素子20と、第2導波素子30と、給電部50と、短絡部60と、を備える。
絶縁基材40は、第1主面、第2主面、および第1主面と第2主面とに隣接する第1側面を有する。第1導波素子20は、第1主面に設けられ、第2導波素子30は、第2主面から第1側面および第1主面にまたがって設けられている。
給電部50は、第1主面に設けられ、一端が第1導波素子20に電気的に接続され、他端が第2導波素子30に電気的に接続され、ICチップ80が搭載されている。また、短絡部60は、第1主面に設けられ、一端が第1導波素子20に電気的に接続され、他端が第2導波素子30に電気的に接続されている。
【0030】
RFタグ100は、絶縁基材40が長辺と短辺と高さとを有する直方体形状である。
第1側面は、絶縁基材40の短辺側の側面であって、短辺の中央から直方体の長手方向に沿って第1主面にノッチ90が形成され、給電部50と短絡部60とがノッチ90によって分割されている。
したがって、給電部50と短絡部60とは、第1側面から直方体の長手方向に沿って互いに平行に配置されており、第1導波素子20は、直方体の長手方向において給電部50および短絡部60と隣接している。
第1主面に、短辺の中央から直方体の長手方向に沿ってノッチ90を形成し、給電部50と短絡部60とをノッチ90で分割するのは、給電部50および短絡部60の長さおよび幅の自由度を確保するためである。
絶縁基材40としては各種絶縁体および誘電体が使用可能であるが、比誘電率が小さい発泡スチロールを絶縁基材40として使用すれば、同一キャパシタンスに対して第1導波素子20と第2導波素子30との距離を大きくして、アンテナの開口面積を確保することにより、板状逆Fアンテナの利得向上を図ることができる。
【0031】
本実施の形態にかかるRFタグ100は、絶縁基材40、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50、および短絡部60により板状逆Fアンテナが構成されている。また、第1導波素子20、短絡部60、第2導波素子30、および給電部50により構成されるインダクタンス(L)と、第1導波素子20、第2導波素子30、および絶縁基材40により構成されるコンデンサとICチップ80内部の等価容量とを合わせたキャパシタンス(C)とを備えている。
そして、RFタグ100には上記インダクタンス(L)とキャパシタンス(C)とより、電波の周波数(f)で共振する共振回路が構成され、
給電部50および短絡部60の長さは、インダクタンス(L)が
【数1】
を満たすように設定されている。
【0032】
ICチップ80は、図1に示すように、第1導波素子20と給電部50の間に設けられている。ICチップ80は、絶縁基材40の上面側(第1導波素子20と同一平面上)に配置されている。
【0033】
ICチップ80は、RFタグ用アンテナ10の板状逆Fアンテナが受信した電波に基づいて動作する。具体的には、ICチップ80は、まず、読取装置から送信される搬送波の一部を整流し、動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、ICチップ80は、生成した電源電圧によって、ICチップ80内の制御用の論理回路、商品の固有情報等が格納された不揮発性メモリを動作させる。また、ICチップ80は、読取装置との間でデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。
あるいは、ICチップ80に外部電源を接続して、当該外部電源から供給される電圧によりICチップ80が動作するようにしてもよい。
【0034】
なお、第1の実施形態では第2導波素子30が第2主面から第1側面および第1主面にまたがって設けられているが、これは第1側面を給電部50と短絡部60ではなく第2導波素子30で被うことによって、貼り付け作業を容易にするためである。しかし、本発明において、給電部50と短絡部60を第1側面に延長し、第1側面と第2主面との境界で第2導波素子30と電気的に接続することも可能である。
【0035】
また、第1の実施形態では、図1および図2に示すように、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50および短絡部60は、絶縁性のシート70上に形成されており、絶縁基材40の辺の部分で折り曲げられたシート70を介して絶縁基材40に貼り付けられている。しかし、本発明においては、必ずしも第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50および短絡部60をシート70上に形成する必要はなく、例えば、これらの素子を単体で形成してもよい。あるいは、これらの素子をシート70上に形成し、第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50および短絡部60をシート70を介して絶縁基材40に貼り付けた後でシート70を剥がしてもよい。
【0036】
従来、第1導波素子20の側辺の長さの合計A(長辺側の側辺20aと短辺側の側辺20bの長さの合計の2倍に相当)はλ/2(λは読取装置から送信される電波の波長)になることが好ましいとされてきたが、本実施形態では側辺の長さの合計Aを波長λの20%以上30%以下、すなわち従来の側辺の長さの約半分としている。
【0037】
ICチップ80には、内部に等価容量を含む。このため、共振回路の共振周波数を設定する際、ICチップ80内部の等価容量を考慮することが好ましい。換言すれば、共振回路は、インダクタパターンのインダクタンス、第1導波素子20、第2導波素子30、および絶縁基材40により構成されるRFタグ用アンテナ10のコンデンサのキャパシタンス、およびICチップ80内部の等価容量を考慮して設定された共振周波数を有することが好ましい。
RFタグ用アンテナのコンデンサのキャパシタンスをC、ICチップ内部の等価容量をC、インダクタパターンのインダクタンスをLとした場合、共振周波数fは、数式2により与えられる。なお、Cとしては、例えば、使用するICチップの仕様諸元の一つとして公表されている静電容量値を用いることができる。
【数2】
【0038】
第1の実施形態のRFタグ100を用いて、RFタグの読み取り可能範囲の周波数特性を測定した。測定はvoyantic社製のTagformanceVer.8.3.8を用い、RFタグ100の第2主面を両面テープにより105mm×30mmの金属板(SUS)に取り付けて行った。金属板を取り付けることによって、金属板とRFタグ100の第2導波素子30とが両面テープの容量を介して接続され、金属板がRFタグ100の第2導波素子30の延長として機能し、実質的に、第2導波素子30の面積が大きい(105mm×30mm)RFタグ用アンテナ10と等価となっている。そして、RFタグ用アンテナ10の第2導波素子30(アンテナのグランド部あるいは筐体に相当)の面積を大きくすることで、アンテナの利得を向上させることができている。
図3に測定結果を示す。
図3によれば、910MHzから920MHzの範囲で、8.5mから9.0mの読み取り可能範囲が得られている。なお、図3のグラフは、Tagformanceでの理論値を示したものであり、実際の通信性能は貼り付け箇所、読取装置および読取装置のアンテナ性能等、外部環境に左右される。
【0039】
(簡易モデルによる検証)
給電部と短絡部とを第1主面に設け、給電部と短絡部との長さを上記数式1を満たすように設定することによって、電波の受信周波数に合致した共振周波数を備えた小型および薄型板状逆Fアンテナを設計できることを検証するために、簡易モデルを用いた数値解析を行った。
【0040】
図4に検証に用いた簡易モデルの板状逆Fアンテナの模式的斜視図を示す。板状逆Fアンテナは第1導波素子20、第2導波素子30、給電部50、短絡部60を備えている。ただし、簡易モデルの板状逆Fアンテナでは、第1の実施形態の測定時と同様に第2導波素子30に金属板が取り付けられているものとして、第2導波素子30を60mm×120mm、厚さ4mmの導体とした。第1導波素子20は幅10mm、長さ32mmの長方形であり、第1導波素子20と第2導波素子30との間の距離tは2mmである。上記第1導波素子20の側辺の長さの合計84mmは第1の実施形態における受信周波数915MHzの波長328mmの約1/4である。
また、簡易モデルの板状逆Fアンテナでは給電部50および短絡部60は第1側面まで延長され、第1側面と第2主面との境界で第2導波素子30に接続されている。第1導波素子20と第2導波素子30の間は比誘電率1の物質(例えば空気)で満たされている。
【0041】
検証は上記簡易モデルの板状逆Fアンテナに対して、FDTD法(Finite-difference time-domain method)を用いて、第1側面と第1導波素子20との距離zを変化させた場合のアンテナの入力インピーダンスが最大となる周波数(RinMAX_F)と反射損失が最小になる周波数(LossMIN_F)を求めた。
【0042】
図5にFDTD法による解析結果を示す。
図5には、z=0でのインダクタンスに単位長さ当たりのインダクタンスと長さzとの積を加算したインダクタンスLと、第1導波素子20の面積と第1導波素子20と第2導波素子30の間の距離とから求めたキャパシタンスCにより数式1を用いて計算したLC共振周波数(LC共振_F)もプロットした。
ただし、図5のLC共振周波数(LC共振_F)の計算においては、z=0でのインダクタンスはz=0でのFDTD法により求めた共振周波数から逆算したLの値を用い、単位長さ当たりのインダクタンスは別途FDTD法で計算した値を用いた。また、給電回路の信号源インピーダンスは、実際のICチップ80の出力インピーダンスを参考に1kΩに設定した。
図5によれば、RinMAX_FとLossMIN_FとLC共振_Fとはほぼ一致しており、電波の受信周波数に合致した共振周波数fとキャパシタンスCを数式1に入力することにより、共振周波数fを得るためのインダクタンスL(および長さz)を求めることができることがわかる。
また、従来は、板状逆Fアンテナの形状は、受信周波数に対応する波長をλとしたとき、側辺の長さの合計Aを1/2λとする必要があるとされていた。受信周波数915MHzの場合λは328mmとなるので、第2導波素子の形状としては例えば、幅10mm、長さ72mmとなる。
一方、図5によれば、受信周波数f=915MHzの場合z=15mmとなり、32mm×10mmの第1導波素子と距離z=15mmを合わせた形状は47mm×10mmであり、本発明を採用することによりRFタグ用アンテナの長さを25mm短くすることができる。
なお、上記簡易モデルによる検証はあくまで本発明の効果を検証するために行ったものであり、実際のRFタグ用アンテナの設計にあたっては、ICチップの出力インピーダンス(抵抗成分と等価容量)、必要な受信周波数帯域幅、絶縁基材の比誘電率などを考慮して、第1導波素子、給電部、短絡部等の形状(長さおよび幅)、および絶縁基材の厚さなどを決定する必要がある。
【0043】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係るRFタグ100について、RFタグ100の模式的断面図である図6を用いて説明する。
【0044】
図6のRFタグ100は、第1の実施形態のRFタグ100の第1導波素子20、第2導波素子30、絶縁基材40、給電部50、および短絡部60の表面に保護及び印字シート110を設け、さらに第2主面の保護及び印字シート110の表面に両面テープ120を設けたものである。
保護及び印字シート110は、例えば、厚さ約0.1mmの発泡シートをRFタグ用アンテナ10の表面に一周巻きつけることが好ましい。また、両面テープ120は例えば、厚さ0.1mmの両面テープを用いることが好ましい。なお、本実施形態の場合、RFタグ用アンテナ10本体の厚さは1.2mmから1.3mmまでの範囲にある。
【0045】
本実施形態のRFタグ100は、両面テープ120を備えているため、導体に容易に接着することができる。また、外装のための材料、および工程が不要で安価であるが、防水仕様ではないため、屋内での使用に限定される。
【0046】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係るRFタグ100について、RFタグ100の模式的断面図である図7を用いて説明する。
【0047】
図7のRFタグ100は、第1の実施形態のRFタグ100の第1主面に配置される第1導波素子20、給電部50、短絡部60、および第2導波素子30(一部)の表面に保護及び印字シート110を設け、第1主面の保護及び印字シート110の表面、および絶縁基材40の各側面に外装シート130を設け、さらに、第2主面の第2導波素子30の表面に片面粘着テープ140を設けたものである。
保護及び印字シート110は、例えば、厚さ約0.1mmの発泡シートを用いることが好ましい。また、外装シート130は例えば、厚さ約0.2mmの塩化ビニールシートを用いることが好ましい。片面粘着テープ140は例えば、厚さ約0.1mmの塩ビ基材強粘着仕様の片面粘着テープをウェルダ溶着することが好ましい。なお、本実施形態の場合も、RFタグ用アンテナ10本体の厚さは1.2mmから1.3mmまでの範囲にある。
【0048】
本実施形態のRFタグ100は、片面粘着テープ140を備えているため、導体に容易に接着することができる。また、RFタグ用アンテナ10の上面および側面が塩化ビニールシートで覆われているため、一定程度の防水機能を備えている。
【0049】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係るRFタグ100について、RFタグ100の模式的断面図である図8を用いて説明する。
【0050】
図8のRFタグ100は、第1の実施形態のRFタグ100の第1主面に配置される第1導波素子20、給電部50、短絡部60、および第2導波素子30(一部)の表面に保護及び印字シート110を設け、第1主面の保護及び印字シート110の表面、絶縁基材40の各側面、および第2主面の第2導波素子30の表面に外装シート130を設け、さらに、第2主面の外装シート130の表面に片面粘着テープ140を設けたものである。
保護及び印字シート110は、例えば、厚さ約0.1mmの発泡シートを用いることが好ましい。また、外装シート130は例えば、厚さ約0.3mmの高耐候性塩化ビニールシート(タフシート)をウェルダ溶着することが好ましい。片面粘着テープ140は例えば、厚さ約0.1mmの塩ビ基材強粘着仕様の片面粘着テープを用いることが好ましい。なお、本実施形態の場合も、RFタグ用アンテナ10本体の厚さは1.2mmから1.3mmまでの範囲にある。
【0051】
本実施形態のRFタグ100は、片面粘着テープ140を備えているため、導体に容易に接着することができる。また、RFタグ用アンテナ10の上面、側面および底面が高耐候性塩化ビニールシートで覆われているため、強力な防水、耐候性機能を備えている。
【0052】
[第5の実施形態]
第5の実施形態に係るRFタグ付き導体150について、RFタグ付き導体150の模式的斜視図である図9を用いて説明する。
【0053】
図9のRFタグ付き導体150は、第2から第4の実施形態のRFタグ100をRFタグが備える両面テープ120または片面粘着テープ140を介して導体160に接着したものである。RFタグ100は給電部50が導体160の端部に近接するように配置されることが好ましい。
【0054】
RFタグ付き導体150は、RFタグ用アンテナ10の第2導波素子30と導体160が両面テープ120または片面粘着テープ140等の容量を介して接続されることにより、実質的に、第2導波素子30の面積が導体160の面積まで拡大された板状逆Fアンテナとなり、アンテナの利得を向上させることができる。
第2導波素子30(筐体に相当)の面積を拡大することによりアンテナの利得を向上させることができることは、例えば、平成12年4月3日発行のSAWS(雑誌名)、平成12年4月3日発行のvol.9(菊水電子工業株式会社 営業企画部門発行)に「平板状で小形な板状逆Fアンテナはもともと狭帯域特性(比帯域1%ないし2%)であるが、これを筐体に設置すると、帯域は拡がり、携帯電話に必要な広い帯域(最大で17%)が実現される。また、同時に利得も向上している」に記載されているように、周知技術である。
【0055】
本発明において、RFタグ用アンテナ10が『RFタグ用アンテナ』に相当し、ICチップ80が『ICチップ』に相当し、RFタグ100が『RFタグ』に相当し、絶縁基材40が『絶縁基材』に相当し、第1導波素子20が『第1導波素子』に相当し、第2導波素子30が『第2導波素子』に相当し、給電部50が『給電部』に相当し、短絡部60が『短絡部』に相当し、ノッチ90が『ノッチ』に相当し、保護及び印字シート110が『保護及び印字シート』に相当し、両面テープ120または片面粘着テープ140が『接着シート』に相当し、外装シート130が『外装シート』に相当し、RFタグ付き導体150が『RFタグ付き導体』に相当し、導体160が『導体』に相当する。
【符号の説明】
【0056】
10 RFタグ用アンテナ
20 第1導波素子
30 第2導波素子
40 絶縁基材
50 給電部
60 短絡部
80 ICチップ
90 ノッチ
100 RFタグ
110 保護及び印字シート
120 両面テープ
130 外装シート
140 片面粘着テープ
150 RFタグ付き導体
160 導体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9