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特許7109857ロータリー式多重管サンプラー及びこれに用いられるスイベルヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ロータリー式多重管サンプラー及びこれに用いられるスイベルヘッド
(51)【国際特許分類】
   E21B 25/00 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
E21B25/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018089947
(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公開番号】P2019196607
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591075995
【氏名又は名称】興亜開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】高浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】徳山 益成
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-012928(JP,A)
【文献】特開2007-239358(JP,A)
【文献】特開昭57-190899(JP,A)
【文献】特開2007-039998(JP,A)
【文献】特開2003-064976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02D 1/04
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ビットが取り付けられた外管をその後端側から保持する概略円柱状の外管ヘッドと、前記外管の内側に配置される内管をその後端側から前記外管内で保持する概略円柱状の内管ヘッドとをスイベルジョイントで連結し、前記外管ヘッドと供に回転する前記外管の先端で地盤を回転切削し、その内側に削り残されるコアサンプルを、前記内管の内側に配置された透明管に収容するロータリー多重管サンプラーにおいて、
前記内管ヘッドの形状は、前記概略円柱の後端寄りを半割にした、前記スイベルジョイントの回転軸の周りに回転非対称な形状であり、これによって前記内管ヘッドの重心を前記スイベルジョイントの回転軸から外すことにより、前記外管の回転に伴う前記内管の供回りを抑えることを特徴とするロータリー式多重管サンプラー。
【請求項2】
請求項に記載のロータリー式多重管サンプラーにおいて、
前記内管ヘッドの回転軸方向の長さは、前記半割によって重量が減った分だけ大きく確保されていることを特徴とするロータリー式多重管サンプラー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロータリー式多重管サンプラーにおいて、
前記内管ヘッドには、前記コアサンプルの側から前記半割によって生じた空間に向けて排水を促す通水孔が形成されていることを特徴とするロータリー式多重管サンプラー。
【請求項4】
請求項に記載のロータリー式多重管サンプラーにおいて、
前記内管ヘッドと前記透明管との接合部にパッキンを介在させて両者の密着性を高めたことを特徴とするロータリー式多重管サンプラー。
【請求項5】
ロータリー式多重管サンプラーの外管を保持する概略円柱状の外管ヘッドと、前記外管の内側に配置される内管を前記外管内で保持する概略円柱状の内管ヘッドとをスイベルジョイントで連結したロータリー式多重管サンプラー用スイベルヘッドにおいて、
前記内管ヘッドの形状は、前記概略円柱の後端寄りを半割にした、前記スイベルジョイントの回転軸の周りに回転非対称な形状であり、これによって前記内管ヘッドの重心を前記スイベルジョイントの回転軸から外すことにより、前記外管の回転に伴う前記内管の供回りを抑えることを特徴とするロータリー式多重管サンプラー用スイベルヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリー式多重管サンプラー及びこれに用いられるスイベルヘッドに関し、さらに詳しくは、地盤を回転切削することによりコアサンプルを採取するロータリー式多重管サンプラー及びこれに用いられるスイベル構造のスイベルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
浚渫土とカルシア改質材(転炉系製鋼スラグの粒度・成分調整したもの)を混合・固化させた材料であるカルシア改質土の採取には、通常の静的押し込みを行うシンウォールサンプラーが適さないため、ロータリー式多重管サンプラー(例えば、二重管サンプラー、三重管サンプラーなど)が有効と考えられる。しかしながら、一般的なロータリー式二重管サンプラー(特許文献1~3等を参照)でカルシア改質土からコアサンプル(供試体)を採取しても、そのコアサンプルは原型をとどめないほど崩れてしまう。その原因は、砕石と同等の硬度を有し、かつ大きい物で粒径25mmにも達するカルシア改質材が、採取時の回転力により土中で粘土分から分離し、周囲を攪乱してしまうことにあると考えられる。
【0003】
一方、砂質土などの採取に好適なサンプラーとしてロータリー式三重管サンプラーが既に製品化されている。例えば、図5に示される従来のロータリー式三重管サンプラー100は、先端に掘削用ビット110が取り付けられた外管111と、外管111の内側に配置される内管121と、内管121の内側にさらに配置される透明なアクリルパイプ131とを備え、内管121及びアクリルパイプ131の先端側にコアサンプルの採取口であるシュー132が取り付けられる。また、外管111の後端側はスイベルヘッド120の外管ヘッド123で保持され、内管121及びアクリルパイプ131の後端側はスイベルヘッド120の内管ヘッド122で保持される。このような従来のロータリー式三重管サンプラー100は、外管ヘッド123と供に回転する外管111の先端で地盤を回転切削し、その内側に削り残されるコアサンプルを内管121の内側に配置されたアクリルパイプ131で収容するので、コアサンプルの原型を維持し易く、硬質な製鋼スラグを含むカルシア改質土の採取に適すると考えられる。なお、従来のロータリー式三重管サンプラー100において、コアサンプルから染み出した泥水は、内管ヘッド122の通水孔122F、122Hを通過した後、外管111と内管121の間隙から先端側へ向かって下降し、掘削用ビット110の先端部からコアサンプルの側へ戻るという循環路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5305522号公報
【文献】特許第2772449号公報
【文献】特許第3029063号公報
【文献】特許第3943049号公報
【文献】特開2003-064976号公報
【文献】特開2003-129460号公報
【文献】特開平11-236709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら本願発明者等の実験によると、図5に示される従来のサンプラー100では外管111と内管121との間隙を循環する循環水にカルシア改質材の切り屑が混入し、その切り屑が外管111と内管121との間に挟まった結果、内管121の供回りが発生し、アクリルパイプ131に収容されたコアサンプルに乱れを与えることが判明した。因みに特許文献4~7には供回りを抑制する旨の記載があるものの、カルシア改質材のように硬質な製鋼スラグを含む地盤を対象とした場合に必ずしも十分な効果が得られないか、又は部品点数が増加する、或いは重量が増加するという不便があった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、部品点数や重量を増大せずとも内管の供回りを確実に防ぎ、カルシア改質土のように硬質な製鋼スラグを含む地盤からコアサンプルを乱れなく採取することが可能なロータリー式多重管サンプラー及びこれに適用されるスイベルヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に記載の本発明に係るロータリー式多重管サンプラーは、先端に掘削ビットが取り付けられた外管をその後端側から保持する概略円柱状の外管ヘッドと、前記外管の内側に配置される内管をその後端側から前記外管内で保持する概略円柱状の内管ヘッドとをスイベルジョイントで連結し、前記外管ヘッドと供に回転する前記外管の先端で地盤を回転切削し、その内側に削り残されるコアサンプルを、前記内管の内側に配置された透明管に収容するロータリー多重管サンプラーにおいて、前記内管ヘッドの形状は、前記概略円柱の後端寄りを半割にした、前記スイベルジョイントの回転軸の周りに回転非対称な形状であり、これによって前記内管ヘッドの重心を前記スイベルジョイントの回転軸から外すことにより、前記外管の回転に伴う前記内管の供回りを抑えることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項に記載のロータリー式多重管サンプラーにおいて、前記内管ヘッドの回転軸方向の長さは、前記半割によって重量が減った分だけ大きく確保されていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項1又は2に記載のロータリー式多重管サンプラーにおいて、前記内管ヘッドには、前記コアサンプルの側から前記半割によって生じた空間に向けて排水を促す通水孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明は、請求項に記載のロータリー式多重管サンプラーにおいて、前記内管ヘッドと前記透明管との接合部にパッキンを介在させて両者の密着性を高めたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項に記載の本発明に係るロータリー式多重管サンプラー用スイベルヘッドは、ロータリー式多重管サンプラーの外管を保持する概略円柱状の外管ヘッドと、前記外管の内側に配置される内管を前記外管内で保持する概略円柱状の内管ヘッドとをスイベルジョイントで連結したロータリー式多重管サンプラー用スイベルヘッドにおいて、前記内管ヘッドの形状は、前記概略円柱の後端寄りを半割にした、前記スイベルジョイントの回転軸の周りに回転非対称な形状であり、これによって前記内管ヘッドの重心を前記スイベルジョイントの回転軸から外すことにより、前記外管の回転に伴う前記内管の供回りを抑えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係るロータリー式多重管サンプラーによれば、内管ヘッドの重心をスイベルジョイントの回転軸から意図的に外すので、内管ヘッドの重量や部品点数を増やさずとも内管ヘッドを回転しにくくすることができ、内管ヘッドで保持された内管の供回りを抑え、その内側に配置された透明管の振動を防ぐことができるという効果がある。
【0015】
本発明の請求項2に係るロータリー式多重管サンプラーによれば、内管ヘッドの形状を回転軸の周りに回転非対称な形状とするので、内管ヘッドを均質な部材で構成したとしても確実に供回りを抑えることができるという効果がある。
【0016】
本発明の請求項3に係るロータリー式多重管サンプラーによれば、概略円柱状の内管ヘッドの後端寄りを半割にしているので、その半割によって生じた側面は回転方向に対して正対するので、半割部(半割によって生じた空間)を水で満たした場合にその側面へ水圧がかかり、内管ヘッドの回転を抑制できるという効果がある。
【0017】
本発明の請求項4に係るロータリー式多重管サンプラーによれば、内管ヘッドの回転軸方向の長さを、半割によって重量が減った分だけ大きく確保するので、内管ヘッドの重量自体でも供回りを抑制できるという効果がある。
【0018】
本発明の請求項5に係るロータリー式多重管サンプラーによれば、コアサンプルの側から半割部(半割によって生じた空間)に向けて排水を促す通水孔を内管ヘッドに形成しているので、内管ヘッド全体の回転軸方向の長さを大きくした場合であっても、排水路が著しく長くなることを防げるという効果がある。
【0019】
本発明の請求項6に係るロータリー式多重管サンプラーによれば、内管ヘッドと透明管との接合部にパッキンを介在させて両者の密着性を高めるので、コアサンプルから通水孔への排水が促進されるという効果がある。
【0020】
本発明の請求項7に係るロータリー式多重管サンプラー用スイベルヘッドは、内管ヘッドの重心をスイベルジョイントの回転軸から意図的に外すので、内管ヘッドの重量や部品点数を増やさずとも内管ヘッドを回転しにくくすることができ、内管ヘッドで保持された内管の供回りを抑え、その内側に配置された透明管の振動を防ぐことが可能という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るロータリー式三重管サンプラーの好ましい一実施形態の分解斜視図である。
図2】本実施形態におけるロータリー式三重管サンプラーに搭載されたスイベルヘッドの分解斜視図である。
図3】(A)は本実施形態における内管ヘッドの平面図、(B)はその側面図、(C)はその断面図である。
図4】本実施形態におけるロータリー式三重管サンプラーに形成される水路の説明図である。
図5】従来のロータリー式三重管サンプラーの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るロータリー式多重管サンプラーについて、好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。ここでは、カルシア改質土からなる地盤を対象とした三重管サンプラーの実施形態について説明する。
【0023】
[サンプラーの構成]
以下、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラーの構成について説明する。図1は本発明に係るロータリー式三重管サンプラーの好ましい一実施形態の分解斜視図である。
【0024】
図示されるとおり、ロータリー式三重管サンプラー1は、概略として、金属製の外管11と、外管11の先端にレジューサ12を介して取り付けられる円筒状の掘削ビット10と、外管11の内側に配置される金属製の内管21と、さらに内管21の内側に配置される例えばアクリル製の透明管31と、二重構造とされた内管21及び透明管31の先端部側に取り付けられる採取口であるシュー32と、シュー32と透明管31との間に取り付けられるレジューサ33と、内管21及び透明管31の後端部に取り付けられるスイベルヘッド20とを備えて構成されている。掘削ビット10は、砕石と同等の硬度を有したカルシア改質材を切削可能なビット、例えばダイヤモンドビットである。
【0025】
スイベルヘッド20は、概略円柱状の外管ヘッド23と概略円柱状の内管ヘッド22とを備え、外管ヘッド23と内管ヘッド22はシャフト24によって連結されて構成されている。外管ヘッド23は、先端に掘削ビット10が取り付けられた外管11をその後端側から保持する。内管ヘッド22は、外管11の内側に配置される二重構造の内管21及び透明管31をその後端側から外管11内で保持する。すなわち、スイベルヘッド20は、内管ヘッド22と外管ヘッド23をシャフト24によって同軸に配置すると共に、内管ヘッド22が先端側に位置するようにして外管ヘッド23をスイベルジョイントで連結したものである。そして、使用状態においてはスイベルヘッド20の中心線(外管ヘッド23及びシャフト24の中心線)が外管11、内管21、及び透明管31の各中心線と一致する。尚、内管ヘッド22の詳細については後述する。
【0026】
各部のおおよそのサイズ関係について簡単に説明すると、透明管31の長さは内管21の長さと同等であり、連結された外管11及びレジューサ12のトータルの長さは、連結されたシャフト24、内管ヘッド22、及び内管21のトータルの長さと同等である。また、内管21の外径は外管11の内径よりも若干小さく、透明管31の外径は内管21の内径とほぼ同等であり、掘削ビット10の内径は外管11の内径よりも若干大きい。なお、使用状態におけるロータリー式三重管サンプラー1の外径は、先端側から後端側に至るまで略一様であって、その外側面は滑らかな円柱側面状をしている(後述する図4を参照)。
【0027】
上述したロータリー式三重管サンプラー1は、外管ヘッド23を介して回転する外管11の先端(掘削ビット10)で地盤を回転切削しつつ、三重構造の外管11、内管21及び透明管31を地中へ押し込む。このとき外管11の内側に削り残されるコアサンプルは、内管21の内側に配置された透明管31内に収容される。
【0028】
そして、本実施形態のロータリー式三重管サンプラー1は、内管ヘッド22の重心をスイベルジョイントの回転軸(シャフト24、外管ヘッド23、外管11、内管21、及び透明管31の中心線)から意図的に外すことにより、外管11の回転に伴う内管21の供回りを防止している。すなわち、図1に示した内管ヘッド22の形状、すなわち、後端寄りを半割にした形状は、その重心を回転軸から外すための形状であり、回転軸の周りに回転非対称な形状とされている。ここで、「回転非対称な形状」とは、回転角度が360°に達しない限り同じ形状にならない形状のことをいい、例えば、正六角柱などの正多角柱は回転非対称な形状には当たらないものとする。
【0029】
[内管ヘッドの形状]
以下、内管ヘッド22の形状について説明する。図2は本実施形態におけるロータリー式三重管サンプラーに搭載されたスイベルヘッドの分解斜視図、図3(A)は本実施形態における内管ヘッドの平面図、図3(B)はその側面図、図3(C)はその断面図であるである。
【0030】
図2に示されるように内管ヘッド22の形状は、概略円柱の後端寄り(外管ヘッド23側)を半割にした形状であって、後端側の半割部22Aと、先端側の円柱部22A’とを有している。以下、内管ヘッド22のうち概略半円状断面を有した部分又は半割によって生じた概略半円状断面の空間を、適宜「半割部22A」と称す。図3に示されるように、内管ヘッド22の回転軸方向の長さ(L1+L2)は、半割によって重量が減った分だけ大きく確保されている。ここで、L2は半割部22Aの回転軸方向の長さ、L1は円柱部22A’の回転軸方向の長さである。但し、円柱部22A’の長さL1には、内管ヘッド22と内管21及び透明管31との接合部の長さは含まれないものとする。
【0031】
また、図2に示されるとおり、内管ヘッド22の円柱部22A’の底面及び上面には、コアサンプル側(先端側)から半割によって生じた空間(半割部22A)に向けて排水を促す一対の通水孔22F、22Gが形成されている。これらの通水孔22F、22Gは、円柱部22A’内に形成された水路22Jを介して接続されている。また、円柱部22A’の側面の各位置には、3つの通水孔22Hが形成され、これらの通水孔22Hは、枝状に分岐した水路22Jに接続されている。
【0032】
また、図2図3に示されるとおり、円柱部22A’の先端側には、内管21及び透明管31へ接続する接合部が設けられており、特に本実施形態では内管ヘッド22と透明管31との接合部にパッキン22Cを介在させて円柱部22A’と透明管31との密着性を高めている。尚、本実施形態においてパッキン22Cは、Oリングである。
【0033】
また、図2に示されるとおり、円柱部22A’の底面側に設けられた通水孔22Fは、ボール22Dを備えた逆止弁22Eで封止されており、これによってコアサンプル側から円柱部22A’側への排水を可能としつつ、円柱部22A’側からコアサンプル側への水の逆流を阻止している。
【0034】
また、図2において符号23Aで示すのは外管ヘッド23の底面に設けられた複数の通水孔である。この通水孔23Aは、外管ヘッド23側から内管ヘッド22側へ向けて循環水を導入するための通水孔である。循環水には、例えば濃度のあるポリマー(CMC)などの調整剤が添加されている。
【0035】
[内管ヘッドの寸法]
内管ヘッド22の各部の寸法は、例えば、以下のように設定される。
【0036】
円柱部22A’の回転軸方向の長さL1=143mm
半割部22Aの回転軸方向の長さL2=197mm
半割部22Aの残存部22A”の巾L3=20mm
円柱部22A’の半径R1=44mm
円柱部22A’の径φ1=88mm
【0037】
なお、残存部22A”は、内管ヘッド22を半割にした際にシャフト24の周辺を円柱状に残存させた部分のことである。因みに、内管ヘッド22の長さ(L1+L2)は、外管ヘッド23の長さと同等程度であり、外管11の長さの1/4程度、内管21又は透明管31の長さの1/3程度である。
【0038】
[水路の説明]
以下、ロータリー式三重管サンプラー1に形成される水路について説明する。図4は、本実施形態におけるロータリー式三重管サンプラーに形成される水路の説明図である。なお、図4ではパッキン22C及び各種接合部の図示は省略している。また、図4に示された各部のサイズ関係は実際のそれと一致するとは限らない。
【0039】
図4の上部に矢印で示すとおり、外管ヘッド23の後端側から導入された循環水は、外管ヘッド23の内部に形成された枝状の水路23Bを通過した後、外管ヘッド23の底面に形成された複数の通水孔23Aから内管ヘッド22側へ流入する。この水は、内管ヘッド22と外管11の間隙及び半割部22Aに注水される。また、注水された水の一部は、内管ヘッド22と外管11との間隙から先端側へ向かって下降し、内管21と外管11との間隙、内管21とレジューサ12との隙間、レジューサ33及びシュー32と掘削用ビット10との隙間を順に経由して掘削用ビット10の先端まで下降する。そして、掘削用ビット10の先端へ回りこんだ水は、掘削用ビット10の外側面に形成された排水溝10Aを介して地中(コアサンプルSの外側)へ排水される。このとき排出された水はコアサンプルSの側へは浸入することなく、外管11と地盤との間の隙間を介して地上側へ排水される。また、外管ヘッド23の水路23Bには、適宜、外部から図示しないポンプによって適当な水圧で循環水が補充される。これにより、本実施形態では、切り屑が水路を塞いだり、切り屑が水路に蓄積されたりすることが防止される。
【0040】
一方、透明管31内のコアサンプルSから染み出した泥水やボーリング孔底面に残留した泥水は、内管ヘッド22に向かって上昇し、逆止弁Eのボール22Dを押し上げ、通水孔22Fへ入り、枝状の水路22Jを進行した後、円柱部22A’の上面の通水孔22G、及び円柱部22A’の側面の3つの通水孔22Hから排水される。排水された泥水は、循環水の水路(内管21とレジューサ12との隙間、シュー32と掘削用ビット10との隙間)を経由して最終的に地中(コアサンプルSの外側)へ排出される。
【0041】
ここで、図4の下部に示されるように、外管11と掘削ビット10とを連結するレジューサ12は、外管11より内径の太い掘削ビット10へ外管11を連結し、かつ、それらの連結部を滑らかな薄い側壁に維持している。また、本実施形態では、レジューサ12を挿入した分だけ外管11を短縮し、二重構造の内管21及び透明管31の先端側を外管11の先端よりも下方に位置するようにしている。これにより、掘削用ビット10の内側の水路を拡張し、送水の抵抗を抑えることを可能としている。
【0042】
また、図4の下部に示されるように、本実施形態ではシュー32及びレジューサ33を内管21及び透明管31に取り付けているので、シュー32と透明管31との間にスリーブケースを介在させていた従来と比較して透明管31を長く確保し、コアサンプルSの採取長を例えば10cmほど拡張することを可能としている。また、シュー32及びレジューサ33を透明管31に取り付ける(又はスリーブケースを短縮する)ことで、従来のスリーブケース近傍に生じていたコア詰まりを防ぐこともできる。
【0043】
[実施形態の効果]
以上説明したとおり、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1のスイベルヘッド20は、内管ヘッド22の重心をスイベルジョイントの回転軸から意図的に外しているので、内管ヘッド22の重量や部品点数を増やすことなく内管ヘッド22を回転し難くすることができ、内管ヘッド22で保持された内管21の供回りを抑え、その内側に配置された透明管31の振動を防ぐことが可能である。これにより、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1によれば、カルシア改質土のように硬質な製鋼スラグを含む地盤からコアサンプルSを乱れなく採取することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1は、内管ヘッド22の形状を回転軸の周りに回転非対称な形状としているので(図2)、内管ヘッド22を均質な部材で構成したとしても確実に供回りを抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1は、概略円柱状の内管ヘッド22の後端寄りを半割にしているので(図2)、その半割によって生じた側面は回転方向に対して正対するので、半割部22A(半割によって生じた空間)を水で満たした場合にその側面へ水圧がかかり、内管ヘッド22の回転を抑制できる。
【0046】
また、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1は、内管ヘッド22の回転軸方向の長さ(L1+L2)を、半割によって重量が減った分だけ大きく確保するので、内管ヘッド22の重量自体でも供回りを抑制できるという効果がある。
【0047】
また、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1は、コアサンプルSの側から半割部22A(半割によって生じた空間)に向けて排水を促す通水孔22F、22G、及び水路22Jを内管ヘッド22の円柱部22A’に形成したので、内管ヘッド22全体の回転軸方向の長さ(L1+L2)を大きくした場合であっても、排水路22Jが著しく長くなることを防ぐことができる。
【0048】
また、本実施形態に係るロータリー式三重管サンプラー1は、内管ヘッド22と透明管31との接合部にパッキン22Cを介在させたので、両者の密着性が高まるとともに、透明管31内のコアサンプルSから内管ヘッド22の通水孔22Fへの排水が促進されるという効果がある。
【0049】
[内管ヘッドの変形例]
上述したとおり本実施形態では、内管ヘッド22の後端側(半割部22b)の断面形状を、概略半円状、すなわち中心角180°の概略半円形状(図4(C))としたが、その中心角を180°以外の角度に変更することができる。例えば、300°、270°、240°、120°、90°、60°などの適宜の角度に設定することもできる。また、本実施形態では、断面形状の異なる2つの部分(円柱部22A’、半割部22A)で内管ヘッド22を構成したが、断面形状の異なる3以上の部分で構成してもよい。
【0050】
[内管の変形例]
上述したとおり本実施形態では、外管11の内側に内管21を配置し、かつ内管21の内側に透明管31を配置した三重管構造のロータリー式三重管サンプラー1について説明したが、透明管31を省略したロータリー式二重管サンプラーに本発明を適用することも可能であるし、重ねて配置される管の本数を4以上にしたロータリー式多重管サンプラーに本発明を適用することも可能である。
【0051】
[その他]
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 ロータリー式三重管サンプラー
10 掘削用ビット
10A 排水溝
10B 排水溝
11 外管
12 レジューサ
20 スイベルヘッド
21 内管
22 内管ヘッド
22A 半割部
22A’ 円柱部
22A” 残存部
22B 通水孔
22C パッキン
22D ボール
22E 逆止弁
22F 通水孔
22G 通水孔
22H 通水孔
22J 水路
23 外管ヘッド
23A 通水孔
23B 水路
24 シャフト
31 透明管
32 シュー
33 レジューサ
100 ロータリー式三重管サンプラー
111 外管
110 掘削用ビット
120 スイベルヘッド
121 内管
122 内管ヘッド
123 外管ヘッド
131 アクリルパイプ
132 シュー
S コアサンプル
図1
図2
図3
図4
図5