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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】回路遮断システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 5/00 20060101AFI20220725BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20220725BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20220725BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H02H5/00
H02B1/40
H02H3/08 D
H02H3/16 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018102328
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019208310
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】松尾 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳史
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-309008(JP,A)
【文献】特開平11-089078(JP,A)
【文献】特開2016-220265(JP,A)
【文献】特開2017-163811(JP,A)
【文献】特開2018-007465(JP,A)
【文献】米国特許第6414601(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40
H02H 3/00
H02H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の閾値以上の地震を検知したときに信号を出力する感震装置を備えた回路遮断システムであって、
地震の揺れとは異なる異常を検出したときに信号を出力する異常検出装置と、
感震装置からの信号出力がなされることによって遮断される第一回路を備えた第一分電盤と、
感震装置からの信号出力と異常検出装置からの信号出力がともになされることによって、遮断される第二回路と、第一分電盤からの電力供給と蓄電池からの電力供給を切り替える切替装置を備えた第二分電盤と、
を備えた回路遮断システム。
【請求項2】
異常検出装置は、第二回路の配線路の異常の検出又は第二回路を通じて電力が供給される負荷の異常の検出をしたときに信号を出力する請求項1に記載の回路遮断システム。
【請求項3】
異常検出装置は、配線路上に発生した放電事故を検出したときに信号を出力する請求項1又は2に記載の回路遮断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路遮断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、地震発生時に、感震装置からの信号出力によって、回路を遮断して負荷への電力供給を断つことで、火災を防止することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-89078号公報
【0004】
ところで、セキュリティ装置や非常用照明などのように、地震が発生したという理由だけでは、遮断することが好ましくない負荷もある。一方、このような負荷についても、地震時に生じた揺れとは異なる事象が発生することにより、遮断することが好ましい状況となる虞もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明の課題は、地震による揺れの検知によって電力供給が遮断される回路とは別に、地震による揺れの検知に加えて、他の異常を検知した場合に電力供給が遮断される回路を設けたシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、所定の閾値以上の地震を検知したときに信号を出力する感震装置を備えた回路遮断システムであって、地震の揺れとは異なる異常を検出したときに信号を出力する異常検出装置と、感震装置からの信号出力がなされることによって遮断される第一回路と、感震装置からの信号出力と異常検出装置からの信号出力がともになされることによって、遮断される第二回路と、を備えた回路遮断システムとする。
【0007】
また、異常検出装置は、第二回路の配線路の異常の検出又は第二回路を通じて電力が供給される負荷の異常の検出をしたときに信号を出力する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、異常検出装置は、配線路上に発生した放電事故を検出したときに信号を出力する構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、地震による揺れの検知によって電力供給が遮断される回路とは別に、地震による揺れの検知に加えて、他の異常を検知した場合に電力供給が遮断される回路を設けたシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の例における回路遮断システムの概略図である。
図2】地震発生後に第一回路と第二回路を遮断する例を示したフロー図である。
図3】第二の例における回路遮断システムの概略図である。
図4】第三の例における回路遮断システムの概略図である。
図5】第四の例における回路遮断システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1に示されていることから理解されるように、本実施形態の回路遮断システム1は、所定の閾値以上の地震を検知したときに信号を出力する感震装置11を備えている。また、この回路遮断システム1は、地震の揺れとは異なる異常を検出したときに信号を出力する異常検出装置12と、感震装置11からの信号出力がなされることによって遮断される第一回路13と、感震装置11からの信号出力と異常検出装置12からの信号出力がともになされることによって、遮断される第二回路14と、を備えている。このため、「地震による揺れの検知によって電力供給が遮断される回路」とは別に、「地震による揺れの検知に加えて、他の異常を検知した場合に電力供給が遮断される回路」を設けたシステムを提供することが可能となる。
【0012】
先ず、第一の例について説明する。この第一の例の回路遮断システム1には、図1に示すように、商用電源91から電力が送られる主幹ブレーカ15と、主幹ブレーカ15と各負荷との間に配置された分岐ブレーカ16を備えている。また、所定の閾値以上の地震が発生したときに、遮断するブレーカに信号を出力する感震装置11や、地震によって、負荷や電路に生じた異常を検出する異常検出装置12を備えている。
【0013】
また、回路遮断システム1を備えた分電盤40には、複数の回路が形成されている。より具体的には、回路遮断システム1は、感震装置11からの信号出力によって、遮断される第一回路13と、異常検出装置12からの信号出力によって、遮断される第二回路14を備えている。この第一回路13は、地震の揺れが検知された場合に遮断されるが、第二回路14は、地震の揺れの検知と地震の揺れ以外の異常の検知がなされた場合に遮断される。したがって、第一回路13は、異常検出装置12からの信号出力がなされなくても、感震装置11からの信号の出力がなされれば、遮断されるが、第二回路14は、異常検出装置12からの信号出力と、感震装置11からの信号出力の双方がなされなければ、遮断されないものである。
【0014】
異常検出装置12は、地震によって配線路上で生じた断線や地絡事故、端子部若しくはプラグなどの接触不良などによって、生じる火花放電やアーク放電などの放電事故を、放電が生じたときに生じるノイズによって検出することが好ましい。本例の異常検出装置12は、フィルタ部でターゲット周波数帯域のノイズを取り出し、増幅部で増幅したノイズレベルと閾値を比較することで、放電事故の発生を判定する。放電事故が発生したと判定される状態である場合には、第二回路14を構成するブレーカに信号を出力し、第二回路14を遮断する。
【0015】
異常検出装置12は、第二回路14の配線路の異常又は第二回路14を通じて電力が供給される負荷32の異常を検出したときに信号を出力するようにすることが好ましい。このようにすれば、感震装置11が作動した後にも遮断が保留されている第二回路14側で生じた異常の検知により、第二回路14を遮断することができる(図2参照)。
【0016】
また、異常検出装置12は、配線路上に発生した放電事故を検出したときに信号を出力するようにすることが好ましい。また、高周波数のノイズを取り出すハイパスフィルタを備えたフィルタ部の一次側や二次側に、高周波数のノイズをカットするローパスフィルタを配置することで、ノイズが異常検出装置12に侵入する経路を制限することが好ましい。このようにすれば、第二回路14の配線路の異常の検出や第二回路14を通じて電力が供給される負荷32の異常の検出を第一回路13の異常などと区分けすることもできる。また、開閉器の開閉により生じるノイズとアーク放電によるノイズを判別できるように、電流値などの経時変化を参照して、異常検出装置12から信号を出力するか否かを定めるように制御することが好ましい。
【0017】
本発明では、回路、若しくは負荷の電流や電圧、電力、力率、漏電電流値など電気的測定値を地震前後で比較し、大きな値の変化が見られる場合には、回路や負荷に異常が発生したと判定するものとしても良い。例えば、地震前よりも後の方が、電流値が大幅に増加している場合は、漏電電流が発生している虞や、短絡事故が発生している虞があるため、異常検出装置12から信号を出力することが好ましい。
【0018】
異常検出装置12は、電気的な異常以外にも、建物の異常を判定するものであってもよい。例えば、建物の固有周期や固有振動数などが地震発生前と地震発生後で大きく変化した場合には、建物の劣化やひび割れなどの異常が発生した虞があるため、異常検出装置12から信号を出力することが好ましい。
【0019】
また、建物の低所と高所を含めた複数の位置に位置センサを設けた場合、これらの位置センサで地震前後の位置を比較した際に、所定の閾値以上の差があれば、倒壊の虞がある建物の傾きが生じたと判断できる。このため、このような差が生じた場合には、異常検出装置12から信号を出力することが好ましい。
【0020】
また、地震による配水管の漏れを浸水センサなどで検知し、配水管の漏れが検知された場合に、異常検出装置12から信号を出力するようにしてもよい。これらのように、建物の異常が発生している場合には、第二回路14の配線路や第二回路14の二次側に繋がる負荷32に異常がなくても、第二回路14を遮断することが好ましい。
【0021】
本例の第一回路13は、主幹ブレーカ15の二次側に形成される回路のうち、特に火災リスクの高い負荷31(電気ストーブや電熱器など、熱源を有する火災の要因となるおそれの高い負荷31)に接続されており、遮断することにより当該火災リスクの高い負荷31への電力の供給を停止することができる。また、第二回路14は、第一回路13とは別に設けられており、本例では、主幹ブレーカ15の二次側に形成される回路のうち、第一回路13以外のものをいう。
【0022】
本例では、感震装置11は、分電盤40内に設置されている。この感震装置11は、所定の閾値以上の地震を検知した場合には、第一回路13を構成するすべての分岐ブレーカ16に遮断信号を出力する。これにより、所定の閾値以上の地震によって、火災リスクの高い負荷31に電力を供給する経路となる第一回路13は遮断されるが、それ以外の第二回路14は遮断されない。
【0023】
本例の感震装置11は、地震を検知した信号を異常検出装置12にも出力する。地震検知信号を受けた異常検出装置12は、第二回路14の配線路上において、異常が発生したか否かを判定する。異常検出装置12は、地震検知信号がない場合でも、異常発生の有無を判定してもよいが、地震と異常の両方を検知した場合に、信号を出力することが好ましい。
【0024】
異常検出装置12は、主幹ブレーカ15若しくは第二回路14を構成する分岐ブレーカ16に対して、遮断信号を出力する。主幹ブレーカ15をオフにした場合には、第二回路14すべてで電力の供給が断たれる。分岐ブレーカ16に遮断信号を出力する場合は、異常が発生した特定の分岐ブレーカ16のみの電力供給を遮断するようにしてもよい。なお、異常検出装置12の位置は、主幹ブレーカ15の二次側に限られず、異常を検出するために好ましい位置に設ければよい。
【0025】
次に第二の例について説明する。図3に示すように、感震装置11は、第一回路13を構成する分岐ブレーカ16の二次側でプラグ51に接続されるコンセント型の感震装置11である。コンセント型の感震装置11の場合には、地震を検知した後、感震装置11内に備えた接点を開くことで、負荷31への電力供給を遮断してもよいし、分岐ブレーカ16に遮断信号を出力しても構わない。
【0026】
分電盤40内には、感震装置11や異常検出装置12からの信号の出力先となる判定装置17を備えてもよい。判定装置17は、感震装置11からの信号と、異常検出装置12からの信号を受けた場合に、第二回路14を遮断するために、遮断信号を出力し、電力供給を遮断する。図3に示す例では、遮断信号は主幹ブレーカ15に向けて出力されている。
【0027】
感震装置11を複数有する場合、感震装置11の設置場所によって、振動が異なるため、所定の閾値を超えるものと超えないものがあることも考えられる。このため、過半数以上など、所定の割合以上の感震装置11と、異常検出装置12から信号を受けた場合に、遮断信号を出力するようにしてもよい。
【0028】
また、感震装置11の設置場所や、異常検出装置12の検出対象となる配線路の場所を判定装置17に記憶させておき、遮断信号を出力した感震装置11の割合が多い階層、フロアなどで異常が発生した場合に、その配線路に接続される分岐ブレーカ16のみを遮断するようにしてもよい。
【0029】
次に第三の例について説明する。この例では、図4に示すように、主幹ブレーカ15の二次側に第一回路13を設け、主幹ブレーカ15の一次側に第二回路14を設けている。このときの第二回路14を構成する分岐ブレーカ16に接続される負荷32は、地震後であっても電力供給を維持したい防災関連、防犯関連、医療関連の負荷である。防災関連の負荷とは、自動火災警報設備や消火設備、照明器具などである。また、防犯関連の負荷とは、セキュリティシステム、電気錠、電子錠などである。医療関連の負荷とは、人工呼吸器、人工心肺装置といった生命維持装置などである。
【0030】
図4に示す例における感震装置11は、主幹ブレーカ15と一体となった、ブレーカ一体型である。このようにすれば、感震装置11の電源はブレーカから供給されるため、感震装置11へ電源供給するための電源線が不要となる。また、ブレーカへ信号出力する信号線も内蔵されるため、配線を減らすことができる。
【0031】
本例では、地震が発生し、感震装置11内の感震センサが所定の閾値以上の振動を検知した際に、主幹ブレーカ15へ遮断信号を出力する。それによって、主幹ブレーカ15の二次側の第一回路13への電力供給が断たれる。この状態では、第二回路14への電力供給は維持される。更に、第二回路14の配線路上で異常を検出した場合には、第二回路14を構成する全ての分岐ブレーカ16に遮断信号を出力し、遮断する。
【0032】
次に第四の例について説明する。この例では、図5に示すように、回路遮断システム1は、第一回路13を備えた第一分電盤41と、第二回路14を備えた第二分電盤42を備えている。本例の第一分電盤41は、感震装置11と、主幹ブレーカ15の二次側に第一回路13を備えている。また、第二分電盤42は、第一分電盤41の主幹ブレーカ15の二次側からの電力供給と、非常用の蓄電池53からの電力供給を切り替える切替装置18を備え、その二次側に第二回路14を備えている。異常検出装置12は、第二分電盤42の任意の位置に設けてよいが、本例では第二回路14と切替装置18の間に介在するように設けている。
【0033】
第二分電盤42の切替装置18は、通常状態では、第一分電盤41の主幹ブレーカ15の二次側から第二回路14に電力が供給される状態となっている。一方、地震の発生によって、第一分電盤41の主幹ブレーカ15が遮断され、第一分電盤41から第二分電盤42への電力供給が断たれた場合に、電力を非常用の蓄電池53から第二回路14に供給できるように切り替えられる。
【0034】
この際、主幹ブレーカ15の二次側への電力供給が断たれたことを示す停電信号を切替装置18に出力することによって、切替装置18が切り替えられるようにすることが好ましいが、停電信号を出力する装置は、第一分電盤41でも、第二分電盤42でもどちらに設けられてもよい。また、切替装置18が切り替える契機は如何なる手段であっても構わない。なお、分電盤は三以上の複数であっても構わない。
【0035】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、感震装置などが収められている筐体は分電盤である必要は無い。
【符号の説明】
【0036】
1 回路遮断システム
11 感震装置
12 異常検出装置
13 第一回路
14 第二回路
32 負荷(第二回路に接続される負荷)
図1
図2
図3
図4
図5