(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】高容量高分子の陰極および該陰極を含む高エネルギー密度の再充電可能な電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20220725BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220725BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220725BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220725BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20220725BHJP
H01G 11/56 20130101ALN20220725BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0565
H01G11/56
(21)【出願番号】P 2016560448
(86)(22)【出願日】2015-04-01
(86)【国際出願番号】 US2015023825
(87)【国際公開番号】W WO2015153729
(87)【国際公開日】2015-10-08
【審査請求日】2018-03-19
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2014-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516164276
【氏名又は名称】イオニツク・マテリアルズ・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン,マイケル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ライジング,ランデイ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリーロフ,アレクセイ・ビー
(72)【発明者】
【氏名】スミス,キース
(72)【発明者】
【氏名】テオリ,アンデイ
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】市川 篤
【審判官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-242964(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0227224(US,A1)
【文献】特開2006-49122(JP,A)
【文献】特開2002-352799(JP,A)
【文献】特開平7-271074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0104571(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0003863(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/39
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄を含む活性物質および
固体のイオン伝導性高分子物質を
混合したものを含む陰極の電極であって、前記固体のイオン伝導性高分子物質が20℃~26℃の室温で1×10
-4S/cmを超えるイオン伝導率を有し、前記固体の
イオン伝導性高分子物質が基材高分子と電子受容体とイオン源を含む化合物の反応体生成物から形成されており、ここで、前記基材高分子が共役高分子、ポリフェニレンスルフィド、液晶高分子、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、30%を超える結晶化度を持つ半晶質高分子および前記の少なくとも2種の組み合わせ物よりなる群から選択され、前記電子受容体がジクロロジシアノキノン(C
8Cl
2N
2O
2)、テトラシアノエチレン(TCNE(C
6N
4))、三酸化硫黄(SO
3)、クロラニルおよび前記の少なくとも2種の組み合わせ物よりなる群から選択され、かつ、前記イオン源を含む化合物がLiOH、Li
2Oおよび前記の混合物よりなる群から選択される、ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項2】
請求項1に記載の陰極の電極であって、前記基材高分子がポリフェニレンスルフィド、液晶高分子、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、30%を超える結晶化度を持つ半晶質高分子および前記の少なくとも2種の組み合わせ物よりなる群から選択される、ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の陰極の電極であって、前記固体のイオン伝導性高分子物質が室温で1秒当り1×10
-11平方メートルを超えるリチウムカチオン拡散率を有する、ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の陰極の電極であって、導電率を付加するための導電性充填剤をさらに含む、ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の陰極の電極であって、前記固体のイオン伝導性高分子物質が、前記活性物質の少なくとも1粒子をカプセル封入する、ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の陰極の電極であって、前記固体のイオン伝導性高分子物質が、電気絶縁性であることを特徴とする陰極の電極。
【請求項7】
請求項1に記載の陰極の電極であって、前記基材高分子が、Li
+
群の存在下で酸化的にドーピングされている、ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項8】
請求項7に記載の陰極の電極であって、前記基材高分子が共役高分子である、
ことを特徴とする陰極の電極。
【請求項9】
陽極および請求項1又は2に記載の陰極の電極を含
む、電気化学的電池。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学電池であって、前記電気化学電池の電圧が1.0ボルトを超える、ことを特徴とする電気化学電池。
【請求項11】
請求項9に記載の電気化学電池であって、前記陽極がリチウム、錫、ケイ素、
黒鉛、および前記の少なくとも2種の合金もしくは混合物よりなる群から選択される、ことを特徴とする電気化学電池。
【請求項12】
請求項9に記載の電気化学電池であって、前記電気化学電池が二次電池である、ことを特徴とする電気化学電池。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の陰極の電極であって、前記基材高分子がポリフェニレンスルフィドであり、前記電子受容体がジクロロジシアノキノン(C
8Cl2N
2O
2)であり、かつ、前記イオン源を含む化合物がLiOHである、ことを特徴とする陰極の電極。
【発明の詳細な説明】
【連邦支援研究または開発に関する陳述】
【0001】
無し。
【背景技術】
【0002】
電池は、現代社会において、多数の携帯用電子装置に電力を与える点、および新規の、環境に優しい技術(green technologies)における重要な構成要素(components)である点、の両方において益々重要になってきた。これらの新技術は、副産物の温室効果ガス(green-house gas)の産生の原因になる石炭、石油製品および天然ガスのような現代のエネルギー源に対する依存を排除する可能性(promise)を提供する。更に、新エネルギー源の成功には、固定したおよび移動性用途の双方におけるエネルギー貯蔵能が重要であり、そしてすべての規模の新型電池の需要を急速に増加するようである。特に、大型適用物のための電池としては、電池の低い原価がこれらの適用物の導入および全体的成功に対して重要であると考えられる。
【0003】
しかし、従来の電池は限界をもつ。例えば、リチウムイオンおよび他の電池は概して、ヒトおよび環境に対して有害であり、また発火もしくは爆発にさらされる可能性がある液体電解質を使用する。液体電解質の電池は、パッケージ電池(packaged battery)の重量およびかさを増加させる鋼または他の強力なパッケージ材内に密閉される。従来の液体電解質は、電池の、結果として起こる(eventual)故障を惹起する電極/電解質の界面における固体の界面層の形成(build-up)に悩まされる。従来のリチウムイオン電池はまた、遅い充電時間を示し、そして電池内の化学反応が終結に達し、そして腐食および樹状突起形成のために再充電性を限定するので、限定された再充電の回数に悩まされる。新規産業の適用物にはしばしば、4.8ボルト以上が必要であるが、液体電解質はまた、約4.2ボルトで破壊し(break down)始める最大エネルギー密度を限定する。従来のリチウムイオン電池は、イオンの流れを許すが電子の流れをブロックするための液体電解質隔離体(separator)、ハウジング内の圧力を解放するための換気装置および、更に、危険な可能性がある過電流および過剰温度を最小にするための安全性回路を必要とする。
【0004】
多数の最新の適用物のための電池技術(battery technology)は、リチウムイオン(Li-イオン)であるが、携帯用装置に対する容量測定的(volumetric)(Wh/L)並びに電気自動車および他の大型の適用物に対する重量測定的(gravimetric)(Wh/kg)意味の双方における、より高エネルギー密度についての需要増加が、Li-イオン電池の現在の能力をかなり超えたアクセス技術(accessing technologies)の必要を示した。一つのこのような有望な技術はLi/硫黄電池である。硫黄基剤の陰極は近年のLi-イオン金属酸化物の陰極活性物質より~10×良好な高い理論エネルギー密度(1672mAh/g)のために、魅力的である。硫黄はまた、それが非常に豊富で、低価格で、LiCoO2のような多数の現在のLi-イオン電池物質と異なり、環境に優しい物質であるため、感動的である。
【0005】
近年、再充電可能なLi/硫黄電池の容量およびサイクル寿命の進歩に伴ない、Li/硫黄電池の研究に膨大な活動が実施されてきた。その活動には、すべてがポリスルフィドシャトルを低下させ、それにより電池の性能(cell performance)を改善する目的をもつ、陰極、陽極、電解質および隔離体(separator)に対する改質が含まれてきた。硫黄の陰極に対するこの研究の応用は2つの主要領域:1)硫黄および可溶性リチウム化生成物を囲みそして含むための加工物質(engineered m
aterial)の使用(例えば:特許文献1参照)、および2)「硫化」複合陰極物質を生成するために硫黄と反応する伝導性高分子の使用、に焦点を当てた。「硫化高分子」の例は、ポリアクリロニトリル(PAN)と一緒の硫黄の高温暴露からの反応生成物を含む[非特許文献1および2参照]。硫黄陰極に使用される他の伝導性高分子系は、ポリビニルピロリドン(PVP)[非特許文献3参照]およびポリピロール(PPY)[非特許文献4参照]を含む。これらの方法はポリスルフィドのシャトル機序を限定するための様々な程度の成功に遭遇したが、それらはすべて、大規模製造に十分には適さない高価な材料の使用に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願第2013/0065128号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jeddi,K.,et.al.J.Power Sources 2014,245,656-662
【文献】Li,L.,et.al.J.Power Sources 2014,252,107-112
【文献】Zheng,G.,et.al.Nano Lett.2013,13,1265-1270
【文献】Ma,G.,et.al.J.Power Sources 2014,254,353-359
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な要約
室温および広範な温度範囲の双方において、非常に高いイオン拡散率(diffusivity)および伝導率(conductivity)をもつ固体のイオン伝導性高分子物質が提供される。固体のイオン性高分子物質は、電池の固体電解質として有用であり、更に電池の電極を製造するための構成部品(component)として有用である。その物質は電池の用途に限定はされず、アルカリ燃料電池、スーパーキャパシタ(supercapacitors)、エレクトロクロミック装置(electrochromic
devices)、センサー等のような他の目的のために、より広く適用できる。高分子物質は、他の場合には可燃性である可能性がある用途に対して特に魅力的な、不燃性で、自消性である。更に該物質は機械的に強靭で、それら自体、当該技術分野で知られた大量(high volume)の高分子処理法および装置を使用して製造することができる。
【0009】
固体のイオン伝導性(solid,ionically conducting)高分子物質は、基材高分子(base polymer)、ドーパントおよび、イオン源を含む少なくとも一つの化合物、を含む。ドーパントは、電子供与体、電子受容体または酸化剤(oxidant)を含む。一つの実施態様において、基材高分子はポリフェニレン スルフィド、PEEKとしても知られるポリエーテルエーテルケトン、または液晶高分子であることができる。この態様において、ドーパントは、非限定的例としての2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン、TCNE、三酸化硫黄またはクロラニルのような電子受容体である。電子受容体として働くかまたは電子を受容することができる官能基を含む他のドーパントが使用されることができる。イオン源を含む化合物は、限定はされるものでないが、水酸化物、酸化物、塩またはそれらの混合物、そしてより具体的にはLi2O、Na2O、MgO、CaO、ZnO、LiOH、KOH、NaOH、CaCl2、AlCl3、MgCl2、LiTFSI(リチウム ビス-トリフルオロメタンスルホンイミド)、LiBOB(リチウム ビス(オキサレート)ボレート)または前記
のうちの2成分の混合物を含む、所望のイオン含有化合物に化学的に転化可能なイオンまたは物質を含有する化合物を含む。
【0010】
固体のイオン伝導性高分子物質は、約172.5ppm、143.6ppm、127.7ppmおよび115.3ppmに炭素13のNMR(500MHzにおいて検出)の化学シフトのピークを示す。電子受容体の同様な炭素13 NMRスキャンは、約172.5ppm、143.6ppm、127.7ppmおよび115.3ppmにおける化学シフトのピークに加えて、約195ppmおよび107.6ppmに化学シフトのピークを示す。言い換えると、基材高分子と電子受容体間の反応は、約195ppmおよび107.6ppmにおける化学シフトのピークを排除するように見える。更に、主要ピーク(芳香族炭素により占められる)における固体のイオン伝導性高分子の13C NMRスペクトルの変化は、基材高分子から固体イオン伝導性高分子への移動に際して起る。固体イオン伝導性高分子における主要ピークの化学シフトは、基材高分子の主要ピークの化学シフトより大きい。
【0011】
固体のイオン伝導性物質は、少なくとも約30%またはそれ以上の結晶化度(crystallinity index)をもち、10重量%~60重量%の範囲のイオン源を含むことができる。基材高分子に対するドーパントのモル比は好適には、約1~16の範囲にある。更に、該物質は20℃~26℃間の室温で、少なくとも1×10-4S/cmのイオン伝導率、5~100MPaの範囲の引張り強さ、0.5~3.0GPaの範囲の弾性率(Modulus of Elasticity)および0.5~30%の範囲の伸び(elongation)を有する。
【0012】
前記電池の一つの態様において、該電池は陽極、陰極、を含み、そして陽極および陰極の少なくとも一方は、固体のイオン伝導性高分子物質を含む。電池は再充電可能か、または一次電池であることができる。電池は更に電解質を含み、該電解質は固体のイオン伝導性高分子物質を全体にまたは一部含むことができる。代替的に、または追加的に、該電池は更に電解質を含むことができる。
【0013】
固体のイオン伝導性高分子物質は、基材高分子、電子受容体および、イオン源を含む化合物、を含む反応体生成物(reactant reaction)から形成される。固体のイオン伝導性高分子物質は陽極または陰極のいずれか中の電解質として使用されることができる。前記電池の陰極は、電池中に使用される場合は、鉄酸塩(ferrate)、酸化鉄、亜酸化銅、ヨウ素酸塩、酸化銅、酸化水銀、酸化コバルト、酸化マンガン、二酸化鉛、酸化銀、酸素、オキシ水酸化ニッケル、二酸化ニッケル、過酸化銀、過マンガン酸塩、ホウ素酸塩、酸化バナジウム銀、モノフッ化炭素、二硫化鉄、ヨウ素、酸化バナジウム、硫化銅、硫黄または炭素およびそれらの組み合わせ物を含む群から選択される活性物質(active material)を含むことができる。前記電池の陽極は、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、クロム、鉄、ニッケル、錫、鉛、水素、銅、銀、パラジウム、水銀、白金または金およびそれらの組み合わせ物を含む群から選択される活性物質を含むことができる。
【0014】
あるいはまた、該電池は更に陽極または陰極のいずれかに導電性添加物および/または機能性添加物を含むことができる。導電性添加物は、炭素黒、天然の黒鉛、合成黒鉛、グラフェン(graphene)、伝導性高分子、金属粒子および前記成分のうちの少なくとも2種の組み合わせ物を含む群から選択することができる。
【0015】
該電池の電極(陽極または陰極)は射出成形、チューブ押し出しおよび圧縮成形のような方法により形成されることができる複合構造物であることができる。好適な態様において、更にイオン伝導性高分子を含む陰極電極は、活性物質として、更に硫黄を含むものと
して製造される。本明細書で使用される硫黄は、元素の硫黄、高分子の硫黄、黄鉄鉱および、陰極の電気化学反応に対して硫黄を供給するように働くことができる他の物質、のような、電気活性(electroactive)硫黄のあらゆる原料を意味することが意図される。
【0016】
イオン伝導性高分子は室温で1~10-4S/cmを超えるイオン伝導率をもち、室温で1秒当り1~10-11平方メートルを超えるリチウムカチオン拡散率をもち、そして電気絶縁性(electrically insulative)である。
【0017】
陰極は更に、導電率を付加するために導電性充填剤を含むことができ、そして固体のイオン伝導性高分子物質は、陰極の活性物質または他の成分の少なくとも1粒子を封入することができる。
【0018】
固体のイオン伝導性高分子物質は、基材高分子、電子受容体および、イオン源を含む化合物、の反応体生成物(reactant product)から形成される。基材高分子は、共役高分子、ポリフェニレン スルフィド、液晶高分子、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または、30%を超える結晶化度をもつ半晶質高分子およびそれらの組み合わせ物を含む群から選択され、そしてLi+カチオンの存在下で酸化的にドーピングされることができる。電子受容体はジクロロジシアノキノン(C8Cl2N2O2)、TCNE(C6N6)、三酸化硫黄(SO3)またはクロラニルおよびそれらの組み合わせ物を含む群から選択される。イオン源を含む化合物は好適には、LiOH、L2Oまたはこれら2種の混合物である。活性物質として硫黄を含む陰極およびイオン伝導性高分子は好適には、更に陽極を含む電気化学電池中に取り込まれる。陽極の活性物質は好適にはリチウムであるが、その代わりに、リチウム、錫、ケイ素、黒鉛またはそれらのあらゆる合金もしくは混合物を含む群から選択されることができる。
【0019】
電気化学電池の証明されている電圧は、2000サイクルにわたり再充電可能な動態を示しながら、1.0ボルトを超え、そして陰極の比容量は500mAh/gを超え、好適には、陰極の比容量は1000mAh/gを超え、そして最も好適には、陰極の比容量は1500mAh/gを超える。
【0020】
固体のイオン伝導性高分子物質はまた、それが非導電性で、イオン伝導性であるために、隔離体(separator)フィルムとして有用であることができる。従って、フィルムとしてキャストまたは提供された固体のイオン伝導性高分子物質は、陽極と陰極間に配置される隔離体として使用されることができる。更に、固体のイオン伝導性高分子物質は、電極上に被覆されて、隔離体として働くか、あるいは水性電解質(aqueous electrolyte)のような他の電池構成部品から電極または電極の部品を隔離することができる。固体のイオン伝導性高分子物質は、それが物理的に分離され、電池の構成部品の残りから電気的に分割されている(segmented)にも拘わらず、このような分離された(isolated)構成部品間のイオン連絡を可能にする。該物質はまた、固体のイオン伝導性高分子物質の小粒子の集合した(aggregated)、またはキャスト凝集物(cast agglomeration)を含むことができる。このような凝集物はあらゆる形状を採るが、加工された(engineered)表面領域をもちながら、加工された多孔(porosity)を含むことができる。疎水性物質のような充填剤(fillers)は、物質中に混合されて、有効性の低い水性多孔(aqueous porosity)のような望ましい物理的性状を提供することができる。従って、固体のイオン伝導性高分子物質は、低いもしくは非常に高い表面積、および/または低いもしくは非常に高い多孔度を含むことができる。環形のような形状および他の成形可能な形状を、本発明により可能にされた固体のイオン伝導性高分子物質のイオン伝導率をもつ所望の物理的特性を使用して加工する(engineering)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の結晶質高分子について結果として得られる化学式(formula)を模範的に示す。
【
図2】
図2は、半晶質高分子の動的走査熱量曲線を模範的に示す。
【
図3】
図3は、本発明とともに使用するために研究された配合物を模範的に示す。
【
図4】
図4は、非晶質および結晶質高分子の略図を例示する。
【
図5】
図5は、本発明に使用のための典型的な電子受容体ドーパントとしての2,3-ジシアノ-5,6-ジクロロジシアノキノン(DDQ)の化学構造を模範的に示す。
【
図6】
図6は、液体電解質およびポリエチレンオキシドリチウム塩化合物と比較された本発明に従うイオン伝導性高分子の伝導率のプロットを模範的に示す。
【
図7】
図7は、本発明に従うイオン伝導性フィルムの機械的特性を模範的に示す。
【
図8】
図8は、本発明に従う固体電解質高分子の伝導の可能な機序を模範的に図解する。
【
図9】
図9は、本発明に従う高分子上で実施されたUL94易燃性試験(flammability test)を模範的に示す。
【
図10】
図10は、リチウム金属に対する本発明に従うイオン伝導性高分子の、電圧対電流のプロットを模範的に示す。
【
図11】
図11は、本発明に従う押し出しイオン伝導性電解質と電極の構成部品(electrode components)の略図を模範的に示す。
【
図12】
図12は、電極と電解質が一緒に結合された、本発明に従うソリッドステート電池を模範的に示す。
【
図13】
図13は、新規の柔軟な形状をもつ本発明に従う最終的ソリッドステートの電池を模範的に図示する。
【
図14】
図14は、押し出し高分子を使用するソリッドステート電池を製造するための工程を含む、本発明の方法を模範的に示す。
【
図16】
図16は、本発明に従う態様の略図代表例を模範的に示す。
【
図17】
図17は、本発明の複合高分子-硫黄の陰極の押し出しのための工程段階と、標準のLi-イオンの陰極製造のための工程段階(process steps)の比較を模範的に示す。
【
図18】
図18は、本発明の固体の高分子電解質における室温のリチウム拡散率を模範的に示す。
【
図19】
図19は、本発明のLi/イオン性高分子-硫黄電池に対する1回目の放電電圧曲線を模範的に示す。
【
図20】
図20は、本発明のLi/イオン性高分子-硫黄電池に対する、サイクル数の関数としてのプロットされた放電容量(discharge capacity)曲線を模範的に示す。
【
図21】
図21は、本発明のリチウム-硫黄電池に対する、サイクル数の関数としての放電容量曲線を模範的に示す。
【
図22】
図22は、スラーリキャスト陰極をもつ本発明のリチウム-硫黄電池に対する1回目の放電電圧曲線を模範的に示す。
【
図23】
図23は、本発明のLi/イオン性高分子-硫黄との、文献例のLi/硫黄-CMK-3に対する1回目の放電の比較を模範的に示す。
【
図24】
図24は、先行技術からのLi/硫黄-ポリ(ピリジノピリジン)電池に対する充電/放電電圧曲線を示す。
【
図25】
図25は、本発明のLi/固体のイオン伝導性高分子-硫黄電池との、文献例のLi-硫黄電池に対するサイクル寿命曲線を示す。
【0022】
発明の詳細な説明
本出願はそれぞれ、すべての目的のためにその全体が、参照することにより本明細書に組み入れられる、2014年12月3日出願の米国特許出願第14/559,430号明細書および2014年4月1日出願の米国仮出願第61/973,325号明細書に対する優先権を主張する。
【0023】
本発明は、固体のイオン伝導性高分子物質を含む陰極および、該陰極を含む電池を含む。固体のイオン伝導性高分子物質は、基材高分子、ドーパントおよび、イオン源を含む少なくとも1種の化合物、を含む。該高分子物質は室温を含む広範な温度範囲にわたりイオン伝導能(capacity)をもつ。イオンの「ホッピング(hopping)」は高密度の原子部位から起こると考えられる。従って、固体のイオン伝導性高分子物質は、基材高分子の有意な物質の強度を保持しながら、イオンを伝導し、供給する手段として働くことができる。
【0024】
本出願の目的のための用語「高分子(polymer)」は、当該技術分野で知られており、多数の反復するサブユニットまたは単量体よりなる巨大分子(macromolecule)を表わし、そして基材高分子は好適には、結晶質または半晶質高分子である。基材高分子は、所望される適用に関する組成物の所望される特性に応じて選択されることができる。例えば、熱可塑性の固体のイオン伝導性高分子物質は、所望の電極または電池の構成部品の形状を許す形状に成形されることができる。
【0025】
本出願の目的のための用語「ドーパント」は、電子受容体または酸化剤(oxidant)または電子供与体を表わす。ドーパントは所望の適用に関連した組成物の所望の特性に応じて選択される。同様に、イオン源を含む化合物は、所望の適用に関連した組成物の所望の特性に応じて選択される。
【0026】
I. Li
+
化学(chemistries)のための固体のイオン伝導性高分子物質
一つの態様において、本発明はリチウムイオンを伝導するために電池中に使用される、固体のイオン伝導性高分子物質に関する。
【0027】
この態様において、基材高分子は30%~100%間の、そして好適には50%~100%間の結晶度値をもつことを特徴とする。基材高分子は80℃を超える、そして好適には120℃を超える、そしてより好適には150℃を超える、そして最も好適には200℃を超えるガラス遷移温度をもつ。基材高分子は250℃を超える、そして好適には280℃を超える、そしてより好適には320℃を超える融点をもつ。本発明の基材高分子の単量体単位の分子量は100~200gm/モルの範囲にあり、200gm/モルを超えることができる。
図1は、基材高分子の単量体単位が108.16g/モルの分子量をもつ代表的な基材高分子の分子構造を示す。
図2は代表的半晶質の基材高分子の動的走査熱量曲線を説明的に表わす。
図3はDDQがドーパントである本発明の本態様における固体のイオン伝導性高分子物質の代表的配合物を表わす。基材高分子のために使用することができる典型的な物質は、液晶高分子および、PPSとしても知られるポリフェニレン・スルフィド、または30%を超える、そして好適には50%を超える結晶化度(crystallinity index)をもつあらゆる半晶質高分子を含む。一つの実施態様において、本発明は、典型的には30%を超える結晶化度値をもち、そして200℃を超えるガラス遷移温度および250℃を超える融点をもつ、
図4に代表的に示される「結晶質または半晶質高分子」を使用する。
【0028】
本態様において、ドーパントは、電子受容体、例えば、非限定的例としては、DDQとしても知られる2,3-ジシアノ-5,6-ジクロロジシアノキノン(C
8Cl
2N
2O
2)、TCNEとして知られるテトラシアノエチレン(C
6N
4)、クロラニルおよび三酸化硫黄(SO
3)である。好適なドーパントはDDQである。
図5はこの好適なドーパントの化学構造を提供する。電子受容体の目的は、二つの要素:運搬移動性のためにイオンを放出するため、およびイオン伝導率を許すために高分子内に極性の高密度部位を創成するため、であると考えられる。電子受容体は初期の成分と「前以て混合され」、そして後処理なしに押し出されるか、あるいはまた、蒸気ドーピングのようなドーピング法を使用して、物質が形成される後に、配合物に電子受容体を添加することができる。
【0029】
本発明の本態様における使用のためのイオン源を含む典型的な化合物は、限定はされるものでないが、Li2O、LiOH、ZnO、TiO2、Al2O3等を含む。安定形態にある適当なイオンを含む化合物は、固体の高分子の電解質フィルムの形成後に改質されることができる。
【0030】
炭素粒子ナノチューブ等のような他の添加物が、更に導電度または電流密度を高めるために、固体のイオン伝導性物質を含む固体の高分子電解質に添加されることができる。
【0031】
新規の固体高分子電解質は、重い、かさ張る金属の密閉パッケージおよび保護回路の必要を排除することにより、より軽量の、そしてずっと安全な構造物を可能にする。固体高分子の電解質を含む新規の固体高分子電池は、同一容量をもつ液体の電解質電池より小型サイズで、より軽量であり、より高いエネルギー密度をもつことができる。新規の固体高分子電池はまた、より簡易な製造工程、より低い価格および、電解質物質が不燃性であるための、安全性の危険の減少の恩典を受ける。新規の固体高分子の電池は4.2ボルトを超える電池電圧が可能で、より高い、およびより低い電圧に対して安定である。新規の固体高分子の電解質は、押し出し(および同時押し出し)、成形並びに、異なる形状因子(form factors)が電池に提供され得るような他の方法により、様々な形状に形成されることができる。電力供給される装置または機器における異なって形成された封入物(enclosures)にはまるように、特定の形状を製造することができる。更に、新規の固体高分子の電池は、液体電解質電池によるように電解質と電極間に隔離体を
必要としない。
【0032】
本発明の他の態様において、固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体高分子の電解質は、イオン性高分子のフィルムの形状をもつ。電極物質は、イオン性高分子のフィルムの各面に直接適用され、そしてフォイルの荷電集電装置(charge collector)または端子(terminal)が各電極の面上に適用される。フィルム基材の構造物を完成するために、端子上に軽量の保護高分子のカバーを適用することができる。フィルム基材の構造物は柔軟で、そして設備の需要に適合するように意図された形状に巻くか、または折り畳むことができる薄膜電池を形成する。
【0033】
本発明の更に他の態様において、固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体高分子電解質は、イオン性高分子の中空モノフィラメントの形状をもつ。電極物質および荷電集電装置(charge collectos)は、固体のイオン伝導性高分子物質の各面に直接適用(同時押し出し)され、端子(terminal)は各電極の面に適用される。軽量の保護高分子のカバーが端子上に適用されて、構造物を完成することができる。構造物は薄い、柔軟な電池を形成し、そして非常に小型の用途を含む装置の需要(installation requirements)に合うように意図された形状にコイル状に巻く(be coiled)ことができる。
【0034】
本発明の更に他の相様において、固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体高分子の電解質は所望の成形形状をもつ。陽極および陰極の電極物質は、固体高分子の電解質のそれぞれ反対側の面上に配置されて電池ユニットを形成することができる。マルチセル電池を提供するための他の電池ユニットとの相互接続のため、または利用装置(utilization device)への接続のために、各電池ユニットの陽極と陰極の電極上に電気端子を提供することができる。
【0035】
電池に関する本発明の相様において、2つの電極間のイオンの移動を更に促進するために、電極物質(陰極と陽極)を新規の固体のイオン伝導性高分子物質の形状と組み合わせることができる。これは従来のリチウム電池中の各電極物質中に浸漬された従来の液体電解質と類似している。
【0036】
本発明の、固体のイオン伝導性高分子物質のフィルムは0.0003インチ(0.0076mm)から上の範囲の厚さに押し出されてきた。フィルムのイオン表面の伝導率は当業者に知られたAC-電気化学的インピーダンス分光分析(EIS)の標準試験を使用して測定されてきた。固体のイオン伝導性高分子物質のフィルムのサンプルは、ステンレス鋼の遮蔽電極間にはさまれ、試験取り付け具(test fixture)内に配置された。AC-インピーダンスをBiologic(生物学的)VSP試験システムを使用して800KHz~100Hzの範囲で記録して、電解質の伝導率を測定した。表面伝導率の測定値の結果は
図6に示される。本発明に従う固体のイオン伝導性高分子物質のフィルムの伝導率(Δ)が、Celgard隔離体(O)を使用して、トリフルオロメタンスルホネートPEO()および、Li塩溶質およびEC:PC組み合わせ溶媒でできた液体電解質の値と比較される。本発明に従う固体のイオン伝導性高分子物質のフィルムの伝導率は、液体電解質の伝導率をたどり、そしてより低温においては、トリフルオロメタンスルホネートPEOの値をはるかに超える。更に、PEO電解質と異なり、本発明の高分子物質に対する伝導率の温度依存性は、温度により活性化されるVogel-Tamman-Fulcher動態により説明されるような連鎖の移動性に伴なう、そのガラス遷移温度を超える温度で、鋭い増加を示さない。従って、本発明の高分子物質においてはイオン伝導の機序としての、断片的移動はありそうにない。更に、これは、本発明の高分子物質が、液体電解質に、類似のイオン伝導率をもつことを示す。
【0037】
図7は、本発明の固体のイオン伝導性高分子物質のフィルムの機械的特性を示す。機械的特性は、Institute for Interconnecting and Packaging Elctronic Circuits IPC-TM-650 Test Methods Manual 2.4.18.3(電子回路を相互接続およびパッケージ協会のIPC-TM-650試験法のマニュアル2.4.18.)を使用して評価された。
図7の伸びに対する引張り強さの曲線において、「延性破壊(ductile failure)」モードは、物質が非常に頑丈であることができることを示す。
【0038】
本発明の、固体のイオン伝導性高分子物質は、その高分子の性能特性(performance characteristics)において3つの重要な利点を提供する:すなわち、(1)それは広範な温度範囲をもつ。実験室規模の試験において、結晶質高分子は、室温でそして広範な温度範囲双方において、高いイオン伝導率を示した。(2)それは不燃性である。該高分子は自消性で、UL-V0易燃性試験(Flammability Test)を通過する。室温における操作可能性および不燃性の特徴が、高価な熱管理システムを排除する、変換させる(transformative)安全性の改善を示す。(3)それは低価格のバルク製造を提供する。電極上に高分子を噴霧せずにむしろ、高分子物質を、プラスチック製造の工業標準のロールツウロール法(roll-to-roll process)により薄膜に押し出すことができる。フィルムが押し出される後に、それは電極および荷電集電装置の物質で被覆されて、「裏返しから(from the inside out)」電池を構築することができる。これが、密閉パッケージの必要を伴なわずに、薄い、柔軟な形状因子を可能にして、低価格で、乗り物および蓄電(storage)適用物への容易な組み込みをもたらす。
【0039】
本発明の固体のイオン伝導性高分子物質は、イオン運搬のための、より高密度の部位を提供し、そして、熱の漏洩または、例えばリチウム化からのイオン運搬部位に対する損傷の危険を伴なわずに、伝導物質に、より高い電圧を維持させる新規のイオン伝導性の機構を形成すると考えられる。この特徴は、固体のイオン伝導性高分子物質を陽極物質およびより高い電圧の陰極の薄膜用途に対して耐久性にさせて、乗り物および据え付けられた蓄電適用物に使用されることができる電池に対し、より高いエネルギー密度をもたらすことができる。室温のみならずまた、広範な温度範囲にわたり、機械的に頑丈で、化学および湿度抵抗性で、不燃性である固体のイオン伝導性高分子物質内に高電圧を維持する能力は、今日、産業により使用される、高価な熱および安全性機構を伴なわずに、高性能の電極との一体化を許す。
【0040】
図8は本発明の固体高分子電解質の相様における固体のイオン伝導性高分子物質の伝導の可能な機序を示す。ドーピング工程の結果として荷電担体複合体(charge carrier complexes)が高分子中に構築される。
【0041】
本発明の固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体高分子の電解質の易燃性はUL94燃焼試験を使用して試験された。高分子がUL94-V0と判定されるためには、それは10秒以内に「自消し(self-distinguish)」なくてはならず、また「滴り落ち(not drip)」てはならない。固体高分子の電解質はこの特性につき試験され、それが、2秒以内に自消し、滴らず、そして従ってV0評価を容易に通過することが決定された。
図9はその結果の図を示す。
【0042】
イオン伝導率、難燃性、高温動態の特性および良好な機械的特性に加えて、本発明の、固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体の高分子電解質は、低および高電圧において電気化学的に安定であることが好ましい。電気化学的安定度の伝統的試験は、作動電極の電圧が時間に対して直線的に傾斜する時にはサイクリックボルタメトリー(cyclic voltammetry)である。この試験で、高分子はリチウム金属の陽極と絶縁ステ
ンレス鋼の電極間に挟まれる。電圧がかけられ、それは酸化方向の安定性に対して高い値(Liに対して4ボルトを超える)まで正の方向に、そして還元方向の安定性に対して、低い値(Liに対して0V以下)に負の方向に移動される(swept)。電極の界面で何か重要な反応が起こるかどうか決定するために電流出力が測定される。高い正の電圧における高い電流出力は、酸化反応が起こっていることを表わすと考えられ、それは、これらの、または、より正の電圧において作動する陰極物質(多数の金属酸化物のような)による不安定を示唆している。低電圧における高い電流出力は、還元反応が起こることを表わし、それはこれらの、またはより負の電圧で作動する陽極(金属Liまたはリチウム化炭素のような)による不安定を示唆すると考えられる。
図10は、リチウム金属に対する、本発明に従う固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体高分子の電解質に対する、電圧対電流のプロットを示す。その研究は、固体の高分子の電解質が、約4.6ボルトまで安定であることを示す。これらの結果は、固体の高分子の電解質が、非限定的例としてのリン酸鉄および硫黄陰極のような低電圧陰極と一緒に、LCO、LMO、NMCおよび類似の陰極を含む陰極により安定であることができることを示す。
【0043】
本発明の、固体のイオン伝導性高分子物質を含む固体高分子の電解質は以下の特性:A)室温および広範な温度範囲(少なくとも-10℃~+60℃)にわたる高いイオン伝導率;B)不燃性;C)それによりリールからリールの加工および新しい製造方法を許す薄膜への押し出し可能性、;D)リチウム金属および他の活性物質との適合性(compatibility)、を達成することができる。従って、本発明は、真のソリッドステート電池の二次加工(fabrication)を許す。本発明は、以下の特性:安定性の問題のないこと;新規の形状因子;エネルギー密度の大幅の増加;およびエネルギー貯蔵(storage)経費のかなりの改善、をもつ新世代の電池を許す。
【0044】
図11、12および13は、それぞれ、A)押し出し電解質;B)押し出し陽極および陰極並びにC)新規の形状因子および柔軟性を許す最終的ソリッドステート電池である、本発明の、固体のイオン伝導性高分子物質を含むソリッドステート電池の幾つかの素子(elements):を示す。
【0045】
他の相様において、本発明は、本発明の固体のイオン伝導性高分子物質を含むLi電池を製造する方法を提供する。
図14は、本発明に従う押し出された固体のイオン伝導性高分子物質を使用してソリッドステートのリチウムイオン電池を製造する方法を示す。該物質はペレットに配合され、次にダイを通して押し出されて、様々な厚さのフィルムを製造する。電極は、スパッタリングまたは従来のスラーリ中のキャスト(casting)のような幾つかの方法を使用して、フィルムに適用されることができる。
【0046】
更に他の相様において、本発明は、約295℃の温度にフィルムを加熱し、次にフィルムを、プラスチックを固化する冷たいロール上にキャストする(casting)方法を伴なう本発明の固体のイオン伝導性高分子物質を含むイオン性高分子のフィルムの製法を提供する。この押し出し法は
図15に示される。生成されるフィルムは10ミクロン以下の厚さの範囲で非常に薄いことができる。
図16は本発明に従う実施態様の構造のスキーム表示を示す。
【0047】
II. 高分子-硫黄の陰極
更に、本発明は複合高分子-硫黄の陰極に関する。複合高分子-硫黄の陰極は、硫黄成分並びに、基材高分子、ドーパントおよび、イオン源を含む化合物、を含む固体のイオン伝導性高分子物質を含む。複合高分子-硫黄の陰極は、二次リチウムまたはLiイオン硫黄電池に使用される時に、高い比容量および高い容量保持率をもつことを特徴とする。該複合陰極は200 milliamp-時/gmを超える、そして好適には500 milliamp-時/gmを超える、そしてより好適には750 milliamp-時/
gmを超える、そして最も好適には1000 milliamp-時/gmを超える比容量をもつことを特徴とする。該複合陰極は、500再充電/放電サイクル超に対して、少なくとも50%、そして好適には少なくとも80%の保持率をもつことを特徴とする。本発明の複合高分子-硫黄の陰極は、本複合電極に使用される独特な高分子により可能にされる低コストの、大規模な製造に対する直接の応用をもつ。本発明の複合高分子-硫黄の陰極は、同時に低コストの電池を製造するための条件を満たしながら、高性能(high
performance)を提供することができる。
【0048】
硫黄陰極は明らかに、放電中に還元して、以下の等式:
S8 → Li2S8 → Li2S4 → Li2S2 → Li2S
に示される、系列(sequence)により、連続的に、より低い次元のポリスルフィドを形成する。
【0049】
Li2S8およびLi2S4間の中間のポリスルフィドは、液体電解質に可溶性である。従って、溶解されたポリスルフィド粒子は多孔質の隔離体(separator)上を移動(または「シャトル」)することができ、そしてサイクル中に陽極および陰極と直接反応することができる。ポリスルフィドのシャトルは、リチウム陽極との寄生反応(parasitic reactions)および陰極における再酸化をもたらし、すべてが静電容量のロスをもたらす。更に、このシャトル反応のアスペクト(aspect)は不可逆的で、今日までリチウム硫黄電池を悩ませてきた、自動放電(self-discharge)および低サイクル寿命をもたらす。
【0050】
本発明は、硫黄成分および、固体のイオン伝導性高分子物質を含む複合高分子-硫黄の陰極を表わす。本陰極は、ロールツウロール法(roll-ro-roll process)により柔軟な薄膜に押し出されることができる。このような薄膜は、新規の柔軟な電池のデザインに取り入れられることができる、薄い、柔軟な形状因子を可能にする。後述の実施例に示されるように、例えば、多数の市販の電池製品のためにすで使用されている、Timcal C45のような、安価な炭素黒成分のような導電性添加物を含むことができる。代表的炭素黒成分に加えて、複合高分子-硫黄の陰極は、非限定的例として、それらに限定はされないが、炭素繊維、グラフィン成分、黒鉛成分を含む炭素成分、金属粒子または他の金属添加物のような他の導電性添加物、並びに導電性高分子を含むことができる。
【0051】
複合高分子-硫黄の陰極の設計特性(engineering properties)は、広範な可能な厚さへの陰極の押し出しを許し、それが順次、大規模陰極製造の計画における柔軟性に関して重要な利点を提供する。複合高分子-硫黄の陰極は、5ミクロンのように薄く、そして数100ミクロンを超える厚さまで押し出されることができる。
【0052】
本発明の複合高分子-硫黄の陰極を製造するために必要な工程段階との、標準のリチウムイオンの陰極を製造するために必要な工程段階の比較は、複合高分子-硫黄の陰極製造の、固有の、より安価な価格に関連して教示的(instructive)である。
図17は、本発明の押し出しされた複合高分子-硫黄の陰極の、ずっと簡単な製造と比較される、標準のリチウムイオン陰極の製造に必要な工程段階を表わす。複合高分子-硫黄の陰極の押し出し法は、大容量(high volume)の製造に容易に規模拡大され、それは工場の設備に対するずっと低い資本投資のみならずまた、既存のリチウムイオン電池より有意な利点を提供する。
【0053】
複合高分子-硫黄の陰極は、押し出しに加えて、射出成形、圧縮成形または、熱を伴な
うあらゆる他の方法、あるいはプラスチックを加工する(engineering)ための当業者により知られた他の方法、により形成されることができる。
【0054】
複合高分子-硫黄の陰極は、硫黄成分並びに、基材高分子、ドーパントおよび、前記に考察されたような一イオン源を含む化合物、を含む固体のイオン伝導性高分子物質を含む。
【0055】
硫黄成分は、元素の硫黄を含む、硫黄の非還元および/または還元形態を含むことができる。複合高分子-硫黄の陰極はとりわけ、そのLi2Sが固体である硫黄の完全リチウム化形態(Li2S)を含む硫黄成分を含む。複合高分子-硫黄の陰極はまた、炭素成分を含むことができる。硫黄の完全リチウム化形態を使用する工程に対する利点は、それが金属Liと異なり、初期充電中にリチウム化されなければならないリチウムイオンの陽極により硫黄電池のリチウム源を提供する点である。Li-イオンの陽極との硫黄の陰極の組み合わせ物は、リチウムの陽極のサイクル後に形成される可能性があるリチウムの樹状突起(dendrites)の形成の防止に利点を提供する。樹状突起は、充電中にリチウム金属の陽極上にリチウムの不均一なメッキにより惹起される。これらの樹状突起は、隔離体物質を通して成長しそして陰極と陽極間に内部短絡を惹起し、それがしばしば電池の高温および欠陥をもつ安全性をもたらす可能性がある。インターカレーション(intercalation)または合金形成のいずれかにより可逆的にリチウムを取り込む物質は、樹状突起形成の機会を減らし、高度安全性のリチウム/硫黄電池における使用に提唱されてきた。複合高分子-硫黄の陰極は、例えば、炭素基剤の物質(石油コークス、非晶質炭素、黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフィン、等)、Sn、SnO、SnO2および、Co、Cu、Fe、Mn、Ni等のような遷移金属との複合物を含むSn-基剤の複合酸化物、のような陽極物質とともに使用することができる。更に、ケイ素は、元素形態のリチウムイオン陽極物質として、または酸化物もしくは、錫に対して説明されたような複合物質として、有望であることが示された。他のリチウム合金化(alloying)物質(例えば、Ge、Pb、B等)もまた、この目的に使用されることができるであろう。Fe2O3またはFe3O4のような鉄の酸化物および様々な酸化バナジウム物質もまた、Li-イオンの陽極物質としてリチウムを可逆的に取り込むことが示された。陽極物質は、非晶質および結晶質、並びにナノ-サイズの粒子並びにナノチューブを含む異なる形状で考慮されることができる。
【0056】
複合高分子-硫黄の陰極は、標準の液体電解質、標準の不織物の隔離体および/または液体電解質を伴わない固体のイオン伝導性高分子物質を含む電解質と組み合わせることができる。標準の有機電解質溶液の一例は、1,3-ジオキソラン(DOL)および1,2-ジメトキシエタン(DME)の混合物中に溶解されたリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のようなリチウム塩を含む。電池の性能を改善するために、LINO3のような添加物を電解質に添加することができる。なかでもLiPF6、LiBF4、LiAsF6、リチウムトリフラートを含む他のリチウム塩を、有機液体電解質中に使用することができる。更に、幾つかの例として、単独でまたは一緒の混合物として、またはDOLおよびDMEと一緒に、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のような他の有機溶媒を使用することができる。標準の不織物の隔離体の例は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)およびPP/PEフィルムの組み合わせ物を含む。他の隔離体物質は、ポリイミド、PTFE、セラミック被覆フィルムおよびグラス-マット隔離体を含む。上記物質すべてが複合高分子-硫黄の陰極と一緒に使用されることができる。更に、複合高分子-硫黄の陰極はまた、そこで例えば、PVDF-基剤の高分子が有機電解質により膨潤化される(swelled with)、ゲル-高分子系中に使用されることができると考えられる。
【0057】
複合高分子-硫黄の陰極の、リチウムイオン伝導率を提供する能力は、同時に、硫黄の陰極に高電圧を提供しながら、ポリスルフィドのシャトルの機序を限定することにより、電池の性能を改善する、と考えられる。更に、この独特な工学的(engineering)複合高分子-硫黄の陰極は、陰極の市販可能性に必要な、大規模な、低価格の製造を許す。
【0058】
従って、以下の実施例に示され、説明されるものを含む独特な複合高分子-硫黄の陰極は、電池に対して多数の可能な利点を有する。
【実施例1】
【0059】
固体の高分子の電解質を、PPS基材高分子およびイオン源の化合物のLiOH一水和物を、それぞれ、67%~33%(重量)の割合で混合することにより生成し、そしてジェットミルを使用して混合した。DDQドーパントを4.2モルのPPSに対して1モルのDDQの量で、生成された混合物に添加した。混合物を緩和な圧力下(500~1000PSI)で30分間325/250℃で熱処理した。冷却後、生成された物質を粉砕し、NMR取り付け具(fixture)中に配置した。
【0060】
パルスフィールド勾配ソリッドステートNMR法(pulsed field gradient solid state NMR technique)を使用することにより自己拡散係数(self-diffusion coefficient)を決定した。図18に示された結果は、固体高分子の電解質中のLi+拡散率(diffusiv ity)が、あらゆる知られた固体のうちで最高であり、そしてずっと高い温度(140 ℃)における最近開発されたLi10GeP2S12セラミックまたは90℃における最良のPEO配合物に比較されて、室温において、2桁を超えて(over an order of magnitude)、より高いことを示す。
【実施例2】
【0061】
PPS基材高分子およびイオン源化合物のLiOH一水和物をそれぞれ、67%~33%(重量/重量)の割合で一緒に添加し、ジェットミルを使用して混合した。DDQドーパントを、4.2モルのPPSに対して1モルのDDQの量で、生成された混合物に添加した。混合物を低圧下で30分間325/250℃において圧縮成形した。高分子-硫黄複合体の陰極を、25%~50%の硫黄粉末、5%~15%のC45炭素黒および0%~10%のLiNO3を、固体のイオン伝導性高分子物質と更に混合することにより調製した。該物質を30分間120℃でステンレス鋼のメッシュ(Dexmet)上に圧縮成形して、15mmの直径および0.3~0.4mmの厚さの陰極円板を形成した。
【0062】
生成された陰極を使用して、2035コイン電池ハードウェア内に試験電池を組み立てた。25ミクロンの厚さおよび19mm直径のポリプロピレン隔離体(Celgard)を、15mmの直径のリチウムフォイルの陽極物質と一緒に使用した。DOL/DMEの50/50(容量/容量)混合物中に溶解された1MのLiTFSI塩の液体電解質を、0.5MのLiNO3添加剤と一緒に使用した。電池を低酸素および水レベルを伴なうアルゴンガス充填グローブボックス内で組み立てた。
【0063】
電池をMaccor 4600電池試験システムを使用して定電流条件下(1mA)で放電した。放電は1.75Vの電圧で終結した。
【0064】
図19は本発明の電池におけるLi/複合高分子-硫黄の陰極に対する1回目のサイクルの放電電圧曲線を示す。複合高分子-硫黄の陰極は、陰極中の硫黄の量に基づき、1300mAh/gを超える高い初期容量を提供する。
図19の放電電圧曲線は、~2.3V
および~2.1Vにおける二つの平坦域(plateaus)を示す。これは、複合高分子-硫黄系が、安定な電気化学的連結と合致する、リチウム/硫黄系に対する期待された電圧曲線を形成しながら、高い容量を可能にすることを示す。
【実施例3】
【0065】
複合高分子-硫黄の陰極は実施例2に記載の通りに製造された。これらの陰極は、リチウム金属の陽極、ポリプロピレン隔離体および0.5MのLiNO3添加剤を含むDOL/DME電解質中1MのLiTFSI、を使用してコイン電池に組み立てた。
【0066】
電池はMaccor 4600電池試験システムを使用して、定電流条件下(1mA)で放電した。放電は1.75Vの電圧で終結した。充電は2段階で、最初は2.3Vの最大電圧への0.2mA電流の、より低い充電率で、そして第2の充電段階は2.45Vの最大電圧までの1mA電流の、より高い率で達成された。全般的充電容量はこれらの試験電池に限定された。これらの電池は室温において数回のサイクルを許された。
【0067】
図20は本発明のLi/複合高分子-硫黄の電池のサイクル数の関数としてプロットされた放電容量曲線を示す。該容量曲線グラフは、複合高分子硫黄の陰極が、陰極内の硫黄量に基づいて少なくとも1000mAh/gの高い可逆的容量をもつ可逆的充電/放電を支持すると考えられることを示す。
【実施例4】
【0068】
高分子-硫黄の陰極の代わりの調製物として、PPS高分子、LiOH一水和物の充填剤、硫黄粉末、C45炭素黒およびポリビニリデン・フルオリド(PVDF)の結合剤、の混合物を伝導性フォイル支持体上にスラーリ被覆した。PVDFを添加して、フォイルに粘着性を提供し、N-メチルピロリドン(NMP)溶媒中に前以て溶解した。物質を混合して、スラーリを提供し、それをフォイル上にキャストし(cast)、次に乾燥してNMPを除去した。スラーリキャスト高分子-硫黄の複合体陰極は25%~50重量%の硫黄粉末、5%~35%のC45炭素黒を含み、そこで固体のイオン伝導性高分子物質、充填剤およびPVDF結合剤が陰極の塗膜の残りを構成した。陰極は圧縮され、15mm直径の円板に切取られて、試験電池にはめられた。
【0069】
スラーリキャスト陰極を使用して、試験電池を2035コイン電池ハードウェア中に組み立てた。25ミクロンの厚さおよび19mm直径のポリプロピレン隔離体(Celgard)を15mm直径のリチウムフォイルの陽極物質と一緒に使用した。DOL/DMEの50/50(容量/容量)混合物中に溶解された1MのLiTFSI塩の液体電解質を0.5MのLiNO3添加剤と一緒に使用した。低酸素および水レベルを伴なうアルゴンガス充填グローブボックス中で電池を組み立てた。
【0070】
電池をMaccor 4600電池試験システムを使用して定電流条件下(1.5mA)で放電した。放電は1.75Vの電圧で終結した。充電は2段階、最初は2.3Vの最大電圧までの0.2mA電流の、より低い充電率において、そして第2の充電段階は2.45Vの最大電圧までの1mA電流の、より高い率、において達成された。全般的充電容量はこれらの試験電池に限定された。これらの電池は、室温で数百回のサイクルを許された。
図21は~2000サイクルまでの電池の放電容量を示す。このグラフは、イオン性高分子-硫黄の陰極が、リチウム樹状突起のための短絡の証拠を伴なわずに、多サイクルに対し可逆的充電/放電を支持すると考えられることを示す。
【実施例5】
【0071】
スラーリキャスト高分子-硫黄の陰極を、その陰極が、より大型の4.9×8.1cmの長方形の電極に切断されたことを除いて実施例2に記載の通りに製造された。該陰極は
、伝導性フォイル支持体の両面上に、電気活性の固体のイオン伝導性高分子物質-硫黄の混合物で被覆されて、高分子-硫黄の陰極を形成した。これらの陰極は、リチウム金属の陽極(4.9×8.1cm)、ポリプロピレン隔離体および0.5MのLiNO3添加剤を含むDOL/DME電解質中の1MのLiTFSIを使用してパウチ電池(pouch
cell)に組み立てられた。電池は、水および酸素の低い不活性雰囲気のグローブボックスの内部で真空密封された。
【0072】
パウチ電池はMaccor 4600電池試験システムを使用して定電流条件下(9mA)で放電された。放電は1.75Vの電圧で終結した。1回目のサイクルに対する放電電圧プロファイルは
図22に示される。高分子-硫黄の陰極が、陰極中の硫黄の量に基づいて1300mAh/gを超える高い初期容量を提供することが認められる。
図22の電池はまた、実施例2(
図19)に示されたようなコイン電池について認められたものと同様な~2.3Vおよび~2.1Vに2つの平坦域をもつ放電電圧曲線を示す。これは、スラーリキャストイオン性高分子-硫黄系が高い容量を可能にすることを示し、そしてこの方法は多数の市販適用物に関連をもつ大型のパウチ電池に規模拡大可能(scalable)であることを示す。
【0073】
比較例6
高次に織り合わされた(highly ordered interwoven)複合電極の注目すべき例は文献[Ji,X.;Lee,K.T.;Nazar,L.F.Nature Materials 2009,8,500-506]に提示されている。この複合陰極は、155℃の熱処理により孔中に固定された(entrenched)硫黄を伴うCMK-3中間細孔(mesoporous)炭素を使用した。
図23は、文献例のLi/硫黄-CMK-3に対する第1の放電を、本発明のLi/複合高分子-硫黄のものと比較している。
【0074】
本例における複合陰極は、炭素被覆アルミニウム電流集電装置上にシクロペンタノンからスラーリキャストされた。該陰極は84重量%のCMK-3/S複合体-、8重量%のSuper-S炭素および8重量%のPVDF結合剤を使用した。電解質は、エチルメチルスルホン中1.2MのLiPF6よりなり、Li金属が陽極として使用された。相対的に、実施例2に記載の通りの、本発明の複合高分子-硫黄の陰極に対する結果は、同一グラフ上にプロットされている。本発明の複合高分子-硫黄の陰極が、良好な、または複合硫黄陰極の文献例よりも、より良好な結果を与えることは明白である。
【0075】
比較例7
リチウム電池の陰極としての硫黄-伝導性高分子複合体の使用が示された。一例において、ポリアクリロニトリル(PAN)を硫化して、伝導性および化学的に活性な陰極物質を形成する。高分子の硫化は、~300℃の、比較的高温で起こる。米国特許出願第2014/0045059号明細書[He,X.-M.,et.al.]に開示された本物質の放電曲線の一例が
図24に示される。図
24はLi/硫黄-ポリアクリロニトリル(S /PAN)電池に対して認められる、典型的な電圧の特徴(signature)を示す 。これらの電池は2.0V未満の平均電圧により単一の、傾斜する電圧の平坦域を特徴として示す。本発明の電池におけるLi/複合高分子-硫黄の陰極に対して
図19に認められた電圧曲線に比較して、S/PAN電池は、放電期間中、有意に、より低い電圧を示し 、それがワット-時に基づく、より低いエネルギー密度をもたらすことが認められる。従 って、本発明の複合高分子-硫黄の陰極により開示される電圧動態は、硫化PAN-基剤 の陰極の動態よりも優れている。
【0076】
比較例8
リチウム/硫黄コイン電池のサイクル試験の一例は文献[Urbonaite,S.;
Novak,P.J.Power Sources 2014,249,497-502]に提供されている。その硫黄の陰極は、本発明の陰極に使用された炭素に匹敵する標準の炭素黒物質を使用した。J.Power Sources文献中の電解質、隔離体およびリチウム陽極はすべて、本発明の電池に使用される物質と同一であった。その相異は、J.Power Sources文献中の陰極が、本発明の、固体のイオン伝導性高分子物質を含まなかったことである。従って、本文献の例は、本発明の高分子-電解質を取り入れる陰極を使用する電池に対する良好な対照を提供する。対照のLi/硫黄のコイン電池のサイクル寿命曲線は
図25に示される。文献の電池は明白に、1000サイクル超において本発明の電池と同様な容量に対して約500サイクルのみを提供した。従って、本発明の電池は、文献例のサイクル寿命のほぼ2倍を提供した。
【0077】
本発明は、好適な実施態様に関して説明されてきたが、以上の明細を通読後、当業者は本明細書に提示された物に対する様々な変更、同等物の置き換えおよびその他の修正を実施することができると考えられる。従って、この文書の特許証(Letters Patent)により付与される保護は、添付請求の範囲およびそれらの同等物中に含まれる定義によってのみ限定されることが意図される。