(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】コラーゲンフィブリルを含むバイオファブリケーテッド材料を作製するための方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/78 20060101AFI20220725BHJP
A41D 31/00 20190101ALN20220725BHJP
【FI】
C07K14/78 ZNA
A41D31/00 503B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017026430
(22)【出願日】2017-02-15
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2016-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517239441
【氏名又は名称】モダン メドウ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】パーセル,ブレンダン パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン,デイビッド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルガ,フランソワーズ スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】シェフェール,スーザン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】カシングハム,ダリル マイルズ
【審査官】新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504264(JP,A)
【文献】特開昭58-019331(JP,A)
【文献】特開平07-070600(JP,A)
【文献】特表昭59-500474(JP,A)
【文献】国際公開第2010/010817(WO,A1)
【文献】特開昭58-146345(JP,A)
【文献】Journal of Chromatography B,2007年,Vol.847,p.282-288
【文献】生化学,2010年,第82巻, 第6号,p.474-483
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00-14/825
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPIDS/CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工皮革材料の製造方法であって、
a)水溶液に溶解したコラーゲン分子をフィブリル化して複数のコラーゲンフィブリルを形成するステップ、
b)前記コラーゲンフィブリルを、それらを少なくとも1種の架橋剤と接触させることによって架橋して架橋コラーゲンフィブリルを形成するステップ、
c)前記架橋コラーゲンフィブリルを脱水して人工皮革材料のシートを形成するステップ、および
d)潤滑剤を前記人工皮革材料のシート中に組み込むステップ、
を含む方法。
【請求項2】
前記コラーゲン分子は非ヒトコラーゲン分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非ヒトコラーゲン分子が
、3-ヒドロキシプロリンを含まず、および
、ヒドロキシリシンを含まない組換え非ヒトコラーゲン分子である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記材料中の前記コラーゲンフィブリルの10重量%未満が、コラーゲン線維へと形成され、
前記コラーゲン線維のそれぞれが5μm~10μmの範囲の直径を有するか、もしくは前記線維はそれぞれ長さの100μm~400μmに対して整列されている、またはその両方である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記人工皮革材料が(a)上面および下面、または(b)内面および外面の少なくとも1つを含むように、前記人工皮革材料を注型し、成形し、または形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記人工皮革材料をフィブリル化するステップが、塩または塩の組合せを前記水溶液に添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記人工皮革材料をフィブリル化するステップが、前記水溶液のpHを、酸、塩基、または緩衝剤で5.5~8のpHに調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋剤が、アミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジド、スルフィドリル、ジアジリン、アリール、アジド、アクリレート、エポキシド、フェノール、クロム化合物、植物性タンニン、およびシンタンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記架橋コラーゲンフィブリルを脱水するステップは、架橋コラーゲンフィブリルを少なくとも1種の脱水溶媒または排水溶媒と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記人工皮革材料の中または上に少なくとも1種の充填剤を組み込むステップ;
前記人工皮革材料の中もしくは上に少なくとも1種の織りもしくは不織材料を組み込むステップ;または
前記材料を少なくとも1種の織りもしくは不織材料中に組み込むステップ
の1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月15日に出願された米国仮出願第62/295,435号に対する優先権を主張し、これはその全体が参照により組み込まれている。本出願は、「操作レザーおよびその製造方法(ENGINEERED LEATHER AND METHODS OF MANUFACTURE THEREOF)」と表題され、2013年3月28日に出願された米国特許出願第13/853,001号;「操作レザーおよびその製造方法(ENGINEERED LEATHER AND METHODS OF MANUFACTURE THEREOF)」と表題され、2015年12月11日に出願された米国特許出願第14/967,173号;および「強化された操作生体材料およびその製造方法(REINFORCED ENGINEERED BIOMATERIALS AND METHODS OF MANUFACTRUING THEREOF)」と表題され、2015年11月3日に出願されたPCT特許出願第PCT/US2015/058794号に関連する。
【0002】
発明の分野
本発明は、従来のレザー製品と比較して優れた強度、非異方性、および一様性を示すが、天然レザーの外観、感触およびその他の美的特性を有する、非束(unbundled)およびランダム配向三量体コラーゲンフィブリルから構成されるバイオファブリケーテッド(biofabricated)レザー材料に関する。プラスチック樹脂から構成される合成レザー製品とは違って、本発明のバイオファブリケーテッドレザーは、レザーの天然構成要素である、コラーゲンをベースとする。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
レザー。レザーは、家具、室内装飾品、衣類、靴、旅行かばん、ハンドバッグおよびアクセサリーを含む膨大な用途ならびに自動車用途で使用されている。レザーの推定世界貿易額は、およそ1年当たり1000億米ドルであり(Future Trends in the World Leather Products Industry and Trade, United Nations Industrial Development Organization, Vienna, 2010)、レザー製品に対する継続して、増加する需要がある。この需要を満たすための新しい方法が、レザーの製造の経済的、環境的および社会的コストの観点で必要とされる。技術的および美的トレンドに遅れないために、レザー製品の製造者および使用者は、優れた強度、一様性、加工性、および天然構成要素を取り込む流行の魅力的な美的特性を示す新しい材料を求めている。
【0004】
天然レザーは、家畜の飼育を必要とする動物のスキンから製造される。しかしながら、家畜の飼育は、膨大な量の飼料、牧草地、水、および化石燃料を必要とする。家畜の飼育はまた、メタンのような温室ガスの発生を含めて、空気および水路の汚染をもたらす。米国での一部の州、例えば、カリフォルニアは、家畜により発生したメタンなどの汚染物質の量に課税することがある。家畜の飼育のコストが上昇するにつれて、レザーのコストは上昇する。
【0005】
世界のレザー産業界は、1年当たり10億匹を超える動物を屠殺している。ほとんどのレザーは、工場式畜産を営み、動物福祉法を欠き、またはこのような法律が大部分もしくは完全には未施行である国で、製造されている。この非人道的状況下での屠殺は、多くの社会的意識のある人々の反対を招くものである。その結果として、動物の虐待もしくは屠殺なしに人道的に製造される、または屠殺される動物の数を最小にする様式で製造される製品に対して、天然レザー製品の使用に倫理的、道徳的または宗教的に反対する消費者からの需要がある。
【0006】
動物のスキンの取り扱いおよびそのレザーへの加工はまた、動物のスキンの取り扱いが、作業者を炭疽および他の病原菌ならびにレザーダスト中のものなどのアレルゲンに曝露させ得るので、健康上のリスクを引き起こす。動物の工場式畜産は、インフルエンザ(例えば、「鳥インフルエンザ」)および最終的には突然変異し、ヒトに感染し得る他の感染性疾患の伝染の一因となる。動物由来の製品は、ウイルスおよびプリオン(「狂牛病」)による汚染の影響も受けやすい。製造者および消費者に安心感をもたらすために、これらのリスクを提示しないレザー製品に対する需要が存在する。
【0007】
天然レザーは、一般に動物のローハイド(rawhide)およびスキン、例えば、牛皮(cattle hide)を加工することによって創出された、耐久性かつ可撓性の材料である。この加工は、典型的には3つの主たる部分:準備段階、なめし段階、および再なめし段階を伴う。レザーはまた、表面コーティングまたはエンボス加工されてもよい。
【0008】
スキンまたはハイドを準備し、それをレザーに変えるための多くの様式が公知である。これらには、ハイドまたはスキンを塩漬けまたは冷蔵してそれを保存すること;界面活性剤または他の化学薬品を含有する水溶液にハイドを浸漬または再水和して、塩、汚れ、破片、血液、および過剰の脂肪を除去すること;ハイドから皮下材料をデフレッシュ(deflesh)または除去すること;ハイドを脱毛(dehairing)または脱毛(unhairing)して、毛の大部分を除去すること;ハイドを石灰漬けして、線維を解き、コラーゲン束を広げ、それに化学薬品を吸収させること;ハイドを2層以上に分割すること;ハイドを脱灰して、アルカリを除去し、そのpHを下げること;ハイドを酵解して(bating)、脱灰プロセスを完了させ、グレインを滑らかにすること;脱脂して、過剰の脂肪を除去すること;軽石でならすこと(frizzing);漂白すること;pHを変更することによって酸漬けする(pickling)こと;または脱塩(depickling)することが含まれる。
【0009】
一旦準備段階が完了すると、レザーはなめされる。レザーは、なめされて、未処理ハイドと比較してその耐久性を増加させる。なめしは、ハイドまたはスキン中のタンパク質をレザー材料に可撓性を残存させつつ腐敗しない安定な材料に変えるために実施されるなめしの間に、コラーゲンの一部をクロムの錯イオンまたは他のなめし剤と反応させることによって、スキン構造は「開いた(open)」形態で安定化されてもよい。使用される化合物に依存して、レザーの色およびテクスチャーは、変化し得る。
【0010】
なめしは、一般にレザーを製造するために動物のスキンを処理するプロセスであると理解される。なめしは、スキンまたはハイドを、植物性なめし剤、クロム化合物、アルデヒド、シンタン、合成、半合成もしくは天然の樹脂もしくはポリマー、または/およびなめし天然油もしくは変性油と接触させることによる様式を含めて、よく理解された様式のいくつかで行われてもよい。植物性タンニンには、ピロガロール-またはピロカテキン系タンニン、例えば、バロニア(valonea)、ミモザ、テン(ten)、タラ、オーク、マツ、ウルシ、ケブラチョおよびチェストナットのタンニンが含まれ;クロムなめし剤には、硫酸クロムのようなクロム塩が含まれ;アルデヒドなめし剤には、グルタルアルデヒドおよびオキサゾリジン化合物が含まれ、シンタンには、芳香族ポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、無水マレイン酸とスチレンとのコポリマー、ホルムアルデヒドとメラミンまたはジシアンジアミドとの縮合生成物、リグニンおよび天然粉(natural flour)が含まれる。
【0011】
クロムは、最も一般的に使用されるなめし材料である。スキン/ハイドのpHは、なめし剤の浸透を可能にするように調整されてもよく(例えば、pH2.8~3.2に、例えば、下げられてもよく);浸透に続いて、pHは、なめし剤を固定するために上げられてもよい(わずかにより高いレベル、例えば、クロムの場合にpH3.8~4.2への「塩基性化」)。
【0012】
なめし後、レザーは再なめしされてもよい。再なめしは、着色(染色)、薄化(thinning)、乾燥または水和などを含み得るなめし後処理(post-tanning treatment)を指す。再なめし技術の例には、なめし、ウェッティング(wetting)(再水和)、水絞り(sammying)(乾燥)、中和(酸性またはアルカリ性度が低い状態へのpHの調整)、染色、加脂(fat liquoring)、非結合化学薬品の固定、セッティング、コンディショニング、軟化、バフィング(buffing)などが含まれる。
【0013】
なめしレザー製品は、機械的または化学的に仕上げられてもよい。機械仕上げは、レザーを研磨してつやのある表面を生じさせ、レザーにアイロンおよびプレート仕上げをして平坦で滑らかな表面をもたせ、レザーをエンボス加工して三次元プリントもしくはパターンを与え、またはレザーをタンブル乾燥してより明らかなグレインおよびより滑らかな表面を与えることができる。化学仕上げは、フィルム、天然もしくは合成コーティング、または他のレザー処理の適用を伴ってもよい。これらは、例えば、噴霧、カーテンコーティングまたはローラーコーティングによって適用されてもよい。
【0014】
動物ハイドにおいては、線維状コラーゲン組織中の変化が異なる年齢または種の動物で観察される。これらの差は、ハイドの物理的特性およびハイドから製造されたレザーの差に影響を与える。コラーゲン組織の変化は、ハイドの厚さを通しても生じる。ハイドのトップグレイン側は、コラーゲンフィブリルの細かいネットワークから構成されるが、より深い部分(真皮)は、より大きい線維束から構成される(
図2)。グレイン層のより小さいフィブリルの組織は、軟らかく滑らかなレザー美学を生じさせるが、より深い領域のより大きな線維束の組織は、でこぼこの、粗いレザー美学を生じさせる。
【0015】
ハイドにおけるコラーゲンの多孔質で線維状の組織は、適用された分子がレザーなめしの間にそれに浸透し、それを安定化し、および潤滑することを可能にする。ハイドにおける生来のコラーゲン組織と、なめしによって得られた変性との組合せは、レザーの望ましい強度、ドレープおよび美的特性を生じさせる。
【0016】
レザーのトップグレイン表面は、その滑らかさおよび軟らかいテクスチャーのために最も望ましいとしばしばみなされる。このレザーグレインは、組織化コラーゲンフィブリルの高度に多孔質のネットワークを有する。内因性コラーゲンフィブリルは、裂孔領域および重複領域を有するように組織化され;
図1により描写されたコラーゲンの階層組織を参照されたい。トップグレインレザー中のフィブリルの強度、微小多孔性、および密度は、なめし剤または加脂剤がフィブリルに浸透し、したがって、コラーゲンフィブリルを安定化し、潤滑し、人々が望む軟らかく、滑らかでかつ強いレザーをもたらすことを可能にする。
【0017】
レザーハイドは、分割されて、ほとんどトップグレインであるレザーを得ることができる。分割ハイドは、さらに摩滅されて、分割側でより粗いグレイン化真皮を減少させ得るが、常にいくらかの残存真皮および関連したでこぼこの外観が存在する。両側に滑らかなグレインを有するレザーを製造するために、真皮側に向く真皮側であるグレインの2つの片を合わせ、それらを縫合するか、またはそれらを接着剤で外側を向く滑らかなトップグレイン側と積層することが必要である。その両側に滑らかなトップグレイン様表面を有するレザー製品の需要があるが、これは、これにより、分割し、2つの分割されたレザー片を縫合または一緒に積層する必要性が避けられるからである。
【0018】
レザーの最終特性の制御は、異なる動物ハイド間のコラーゲン構造の自然変化により制限される。例えば、ヤギハイドにおける真皮に対するグレインの相対厚さは、カンガルーハイドにおけるものより相当に高い。加えて、カンガルー真皮におけるコラーゲン線維束の織り角度は、ハイドの表面に対してはるかにより平行であるが、ウシ真皮における線維束は、ハイドの表面に対して平行および垂直の両方の配向で配向されている。さらに、線維束の密度は、それらの解剖学的位置に依存して各ハイド内で変化する。背皮、腹、肩、および頸から取られたハイドは、異なる組成および特性を有し得る。動物の年齢も、そのハイドの組成に影響を与え、例えば、幼ウシハイドは、成ウシハイドに見出される比較的大きい線維束よりも小さい直径の線維を含む。
【0019】
レザーの最終特性は、なめしおよび再なめしの間のハイドまたはスキン中への安定性および潤滑性分子の組み込みによってある程度制御することができるが、しかしながら、これらの分子の選択は、スキンまたはハイドの稠密構造に浸透する必要性によって限定される。直径で数ミクロン程度の大きさの粒子が、潤滑の増強のためにレザー中に組み込まれてきたが;しかしながら、これらの粒子の適用は、最大細孔サイズを有するハイドに限定される。ハイド全体にわたって粒子を一様に分布させることは、多くの課題を提示する。
【0020】
コラーゲン。コラーゲンは、レザーの構成要素である。スキン、または動物ハイドは、相当量の、線維状タンパク質であるコラーゲンを含有する。コラーゲンは、少なくとも28のはっきりと異なるコラーゲン型のファミリーの総称であり;動物スキンは、典型的にはI型コラーゲンであるが、III型コラーゲンを含めて、レザーを形成する際に他の型のコラーゲンを使用することもできる。
【0021】
コラーゲンは、アミノ酸の繰り返しトリプレット、-(Gly-X-Y)n-を特徴とし、コラーゲン中のアミノ酸残基のおよそ3分の1はグリシンである。Xは、しばしばプロリンであり、Yは、しばしばヒドロキシプロリンであるが、400まで可能なGly-X-Yトリプレットがあってもよい。種々の動物が、コラーゲンの種々のアミノ酸組成をもたらし得るが、これは結果として種々の特性および得られたレザーの差をもたらし得る。
【0022】
コラーゲンの構造は、異なる長さの3本の絡み合った(intertwined)ペプチド鎖からなることができる。コラーゲントリプルヘリックス(またはモノマー)は、約1,050アミノ酸長のアルファ鎖から生成され得、その結果、トリプルヘリックスは、およそ1.5nmの直径を有して、約およそ300nm長のロッドの形態を取る。
【0023】
皮膚線維芽細胞による細胞外マトリックスの産生では、トリプルヘリックスモノマーが合成されてもよく、モノマーは、線維状形態に自己集合してもよい。これらのトリプルヘリックスは、塩橋を含む静電的相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、双極子-双極子力、分極力、疎水性相互作用、および/または共有結合によって一緒に保持される。トリプルヘリックスは、フィブリルと呼ばれる束で一緒に結合することができ、フィブリルは、線維および線維束を生じるためにさらに集合することができる(
図1)。
【0024】
フィブリルは、コラーゲンモノマーの互い違いの重複のために特徴的な縞模様の(banded)外観を有する。縞間の距離は、I型コラーゲンについておよそ67nmである。フィブリルおよび線維は、典型的には分岐し、スキンの層全体を通して互いに相互作用する。フィブリルおよび線維の組織の変化または架橋の変化は、材料に強度を与え得る。
【0025】
線維は、動物ハイドの種類に依存してある範囲の直径を有し得る。I型コラーゲンに加えて、スキン(ハイド)は、同様に、III型コラーゲン(レチクリン)、IV型コラーゲン、およびVII型コラーゲンを含めて、他の型のコラーゲンを含んでもよい。
【0026】
様々な型のコラーゲンが、哺乳動物身体全体にわたって存在する。例えば、スキンおよび動物ハイドの主構成要素である外に、I型コラーゲンは、軟骨、腱、血管結紮、臓器、筋肉、および骨の有機部分にも存在する。動物スキンまたはハイドに加えて哺乳動物身体の様々な領域からコラーゲンを単離するための成功裏の努力がなされてきた。数十年前、研究者は、中性pHで、酸可溶化コラーゲンが、ネイティブ組織で観察される同じ横紋模様から構成されるフィブリルに自己集合することを見出した;Schmitt F.O. J. Cell. Comp Physiol. 1942;20:11)。これは、組織工学および様々な生物医学用途でのコラーゲンの使用につながった。さらに近年になって、コラーゲンは、組換え技術を使用して細菌および酵母から収穫されている。
【0027】
コラーゲンの型にかかわらず、すべては、しばしば酵素反応によって触媒される、塩橋、水素結合、ファンデルワールス相互作用、双極子-双極子力、分極力、疎水性相互作用、および共有結合を含む、静電的相互作用を含めた物理的および化学的相互作用の組合せによって形成および安定化される。I型コラーゲンのフィブリル、線維、および線維束について、その複雑な集合は、成長中にインビボで達成され、細胞運動性および栄養輸送を可能にする一方で、組織に機械的支持を与える際に決定的である。様々なはっきり異なるコラーゲン型が、脊椎動物で同定されている。これらには、ウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、およびヒトコラーゲンが含まれる。
【0028】
一般に、コラーゲン型は、ローマ数字で番号付けされ、各コラーゲン型に見出される鎖は、アラビア数字で識別される。天然に存在するコラーゲンの様々な異なる型の構造および生物学的機能の詳細な説明は、当技術分野で利用でき;例えば、Ayad et al.(1998) The Extracellular Matrix Facts Book, Academic Press, San Diego, CA; Burgeson, R E., and Nimmi(1992)"Collagen types: Molecular Structure and Tissue Distribution" in Clin. Orthop. 282:250-272頁; Kielty, C.M. et al.(1993)"The Collagen Family: Structure, Assembly And Organization in The Extracellular Matrix," Connective Tissue And Its Heritable Disorders, Molecular Genetics, And Medical Aspects, Royce, P.M. and B. Steinmann eds., Wiley-Liss, NY, 103-147頁;ならびにProckop, D.J- and K.I. Kivirikko(1995) "Collagens: Molecular Biology, Diseases, and Potentials for Therapy," Annu. Rev. Biochem., 64:403-434頁を参照されたい。
【0029】
I型コラーゲンは、生物体の合計コラーゲンのおよそ80~90%を占める、骨およびスキンの主要なフィブリルコラーゲンである。I型コラーゲンは、多細胞生物の細胞外マトリックスに存在する主要構造巨大分子であり、合計タンパク質質量のおよそ20%を占める。I型コラーゲンは、それぞれ、COL1A1およびCOL1A2遺伝子によって、コードされた、2本のα1(I)鎖および1本のα2(I)鎖を含むヘテロ三量体分子である。他のコラーゲン型は、I型コラーゲンよりも豊富でなく、異なる分布パターンを示す。例えば、II型コラーゲンは、軟骨および硝子体液で優勢なコラーゲンであるが、III型コラーゲンは、血管に高いレベルで、およびスキンにより少ない程度に見出される。
【0030】
II型コラーゲンは、COL2A1遺伝子によりコードされた3本の同一al(II)鎖を含むホモ三量体コラーゲンである。精製II型コラーゲンは、当技術分野で公知の方法、例えば、Miller and Rhodes (1982) Methods In Enzymology 82:33-64頁に記載された手順によって、組織から調製されてもよい。
【0031】
III型コラーゲンは、スキンおよび血管組織に見出される主要フィブリルコラーゲンである。III型コラーゲンは、COL3A1遺伝子によりコードされた3本の同一α1(III)鎖を含むホモ三量体コラーゲンである。III型コラーゲンを組織から精製するための方法は、例えば、Byers et al. (1974) Biochemistry 13:5243-5248頁;ならびにMiller and Rhodes、前掲に見出すことができる。
【0032】
IV型コラーゲンは、フィブリルよりはむしろシートの形態で基底膜に見出される。最も一般的には、IV型コラーゲンは、2本のα1(IV)鎖および1本のα2(IV)鎖を含む。IV型コラーゲンを含む特定の鎖は、組織特異的である。IV型コラーゲンは、例えば、Furuto and Miller (1987) Methods in Enzymology, 144:41-61頁, Academic Pressに記載された手順を使用して、精製されてもよい。
【0033】
V型コラーゲンは、主として、骨、腱、角膜、スキン、および血管に見出されるフィブリルコラーゲンである。V型コラーゲンは、ホモ三量体とヘテロ三量体の両方の形態で存在する。V型コラーゲンの1つの形態は、2本のα1(V)鎖および1本のα2(V)鎖のヘテロ三量体である。V型コラーゲンの別の形態は、α1(V)、α2(V)、およびα3(V)鎖のヘテロ三量体である。V型コラーゲンのさらなる形態は、α1(V)のホモ三量体である。V型コラーゲンを天然源から単離するための方法は、例えば、Elstow and Weiss (1983) Collagen Rel. Res. 3:181-193ならびにAbedin et al. (1982) Biosci. Rep. 2:493-502頁に見出すことができる。
【0034】
VI型コラーゲンは、小さいトリプルヘリックス領域および2つの大きな非コラーゲン残り部分を有する。VI型コラーゲンは、α1(V1)、α2(VI)、およびα3(VI)鎖を含むヘテロ三量体である。VI型コラーゲンは、多くの結合組織に見出される。VI型コラーゲンを天然源から精製する仕方の説明は、例えば、Wu et al.(1987) Biochem. J. 248:373-381頁、およびKielty et al. (1991) J. Cell Sci. 99:797-807頁に見出すことができる。
【0035】
VII型コラーゲンは、特定の上皮組織に見出されるフィブリルコラーゲンである。VII型コラーゲンは、3本のα1(VII)鎖のホモ三量体分子である。VII型コラーゲンを組織から精製する仕方の説明は、例えば、Lunstrum et al.(1986) J. Biol. Chem. 261:9042-9048頁、およびBentz et al.(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3168-3172頁に見出すことができる。VIII型コラーゲンは、角膜中のデスメ膜に見出すことができる。VIII型コラーゲンは、2本のα1(VIII)鎖および1本のα2(VIII)鎖を含むヘテロ三量体であるが、他の鎖組成物も報告されている。VIII型コラーゲンを天然から精製するための方法は、例えば、Benya and Padilla (1986) J. Biol. Chem. 261:4160-4169頁、ならびにKapoor et al. (1986) Biochemistry 25:3930-3937頁に見出すことができる。
【0036】
IX型コラーゲンは、軟骨および硝子体液に見出されるフィブリル関連コラーゲンである。IX型コラーゲンは、α1(IX)、α2(IX)、およびα3(IX)鎖を含むヘテロ三量体分子である。IX型コラーゲンは、FACIT[中断トリプルヘリックスを有するフィブリル関連コラーゲン(Fibril Associated Collagen with Interrupted Triple Helices)]コラーゲンとして分類されており、非トリプルヘリックスドメインにより分離されたトリプルヘリックスドメインをいくつか保有する。IX型コラーゲンを精製するための手順は、例えば、Duance et al.(1984) Biochem. J. 221:885-889頁;Ayad et al. (1989) Biochem. J. 262:753-761頁;およびGrant et al.(1988) The Control of Tissue Damage, Glauert, A. M.編、 Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 3-28頁に見出すことができる。
【0037】
X型コラーゲンは、α1(X)鎖のホモ三量体化合物である。X型コラーゲンは、例えば、成長板に見出される肥厚性軟骨から単離されている;例えば、Apte et al. (1992) Eur J Biochem 206(1):217-24頁を参照されたい。
【0038】
XI型コラーゲンは、II型およびIX型コラーゲンに関連する軟骨組織、ならびに身体の他の位置に見ることができる。XI型コラーゲンは、α1(X1)、α2(X1)、およびα3(X1)鎖を含むヘテロ三量体分子である。XI型コラーゲンを精製するための方法は、例えば、Grant et al.、前掲に見出すことができる。
【0039】
XII型コラーゲンは、主としてI型コラーゲンと関連して見出されるFACITコラーゲンである。XII型コラーゲンは、3本のα1(XII)鎖を含むホモ三量体分子である。XII型コラーゲンおよびその変異体を精製するための方法は、例えば、Dublet et al.(1989) J. Biol. Chem. 264:13150-13156頁; Lunstrum et al.(1992) J. Biol. Chem. 267:20087-20092頁;およびWatt et al.(1992) J. Biol. Chem. 267:20093-20099頁に見出すことができる。
【0040】
XIII型は、例えば、スキン、腸、骨、軟骨、および横紋筋に見出される非フィブリルコラーゲンである。XIII型コラーゲンの詳細な説明は、例えば、Juvonen et al.(1992) J. Biol. Chem. 267:24700-24707頁に見出され得る。
【0041】
XIV型は、α1(XIV)鎖を含むホモ三量体分子として特徴付けられるFACITコラーゲンである。XIV型コラーゲンを単離するための方法は、例えば、Aubert-Foucher et al.(1992) J. Biol. Chem. 267:15759-15764頁、およびWatt et al.、前掲に見出すことができる。
【0042】
XV型コラーゲンは、XVIII型コラーゲンと構造で相同である。天然XV型コラーゲンの構造および単離についての情報は、例えば、Myers et al.(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10144-10148頁;Huebner et al.(1992) Genomics 14:220-224頁;Kivirikko et al.(1994) J. Biol. Chem. 269:4773-4779頁;およびMuragaki, J. (1994) Biol. Chem. 264:4042-4046頁に見出すことができる。
【0043】
XVI型コラーゲンは、例えば、スキン、肺線維芽細胞、およびケラチノサイトに見出される、フィブリル関連コラーゲンである。XVI型コラーゲンの構造およびXVI型コラーゲンをコードする遺伝子に関する情報は、例えば、Pan et al.(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6565-6569頁;およびYamaguchi et al.(1992) J. Biochem. 112:856-863頁に見出すことができる。
【0044】
XVII型コラーゲンは、水疱性類天疱瘡抗原としても公知である、ヘミデスモース膜貫通型コラーゲンである。XVII型コラーゲンの構造およびXVII型コラーゲンをコードする遺伝子に関する情報は、例えば、Li et al.(1993) J. Biol. Chem. 268(12):8825-8834頁;およびMcGrath et al.(1995) Natl. Genet. 11(1):83-86頁に見出すことができる。
【0045】
XVIII型コラーゲンは、XV型コラーゲンと構造で類似であり、肝臓から単離することができる。天然源からのXVIII型コラーゲンの構造および単離に関する説明は、例えば、Rehn and Pihlajaniemi (1994) Proc. Natl. Acad. Sci USA 91:4234-4238頁;Oh et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci USA 91:4229-4233頁;Rehn et al.(1994) J. Biol. Chem. 269:13924-13935頁;およびOh et al.(1994) Genomics 19:494-499頁に見出すことができる。
【0046】
XIX型コラーゲンは、FACITコラーゲンファミリーの別のメンバーであると考えられており、横紋筋肉腫細胞から単離されたmRNAに見出された。XIX型コラーゲンの構造および単離の説明は、例えば、Inoguchi et al.(1995) J. Biochem. 117:137-146頁;Yoshioka et al.(1992) Genomics 13:884-886頁;およびMyers et al., J. Biol. Chem. 289:18549-18557 (1994) 頁に見出すことができる。
【0047】
XX型コラーゲンは、FACITコラーゲンファミリーの新たに見出されたメンバーであり、ヒヨコ角膜で同定された。(例えば、Gordon et al. (1999) FASEB Journal 13:A1119頁;およびGordon et al. (1998), IOVS 39:S1128頁を参照されたい。)
【0048】
コラーゲン、切端コラーゲン、本明細書に記載される方法によってフィブリル化および架橋することができる非修飾もしくは翻訳後修飾、またはアミノ酸配列修飾コラーゲンのいずれの型も、バイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーを製造するために使用することができる。バイオファブリケーテッドレザーは、実質的に均質なコラーゲン、例えば、I型もしくはII型コラーゲンのみを含んでもよく、またはコラーゲンの2、3、4種またはそれ以上の異なる種類のコラーゲンを含んでもよい。
【0049】
組換えコラーゲン
コラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質の組換え発現は、公知であり、Bell、欧州特許第1232182号明細書、Bovine collagen and method for producing recombinant gelatin;Olsenら、米国特許第6,428,978号明細書、Methods for the production of gelatin and full-length triple helical collagen in recombinant cells;VanHeerdeら、米国特許第8,188,230号明細書、Method for recombinant microorganism expression and isolation of collagen-like polypeptidesへの参照により組み込まれている。このような組換えコラーゲンは、レザーを製造するために使用されてこなかった。
【0050】
原核生物発現。原核生物系、例えば、細菌系では、いくつかの発現ベクターが、有利には発現ポリペプチドが意図された使用に依存して選択されてもよい。例えば、大量の本発明の動物コラーゲンおよびゼラチンが、例えば、抗体の生成のために、製造されるべき場合、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を指示するベクターが、望ましくあり得る。このようなベクターには、限定されないが、大腸菌(E. coli)発現ベクターpUR278(Ruther et al. (1983) EMBO J. 2:1791頁)、ここで、コーディング配列は、混成AS-lacZタンパク質が産生されるように、lac Zコード領域を有するフレーム内でベクターにライゲートされて(ligated)いてもよい;pINベクター(Inouye et al. (1985) Nucleic Acids Res. 13:3101-3109頁およびVan Heeke et al. (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509頁);などが含まれる。pGEXベクターも、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するために使用されてもよい。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着、続いて、遊離グルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製され得る。pGEXベクターは、トロンビンまたはファクターXaプロテアーゼ切断部位を含むように設計されて、目的のクローン化ポリペプチドをGST部分から放出することができる。組換えコラーゲンは、翻訳後に修飾されなかった、例えば、グリコシル化またはヒドロキシル化されなかったコラーゲン分子を含んでもよいか、または1つもしくは複数の翻訳後修飾、例えば、フィブリル化、およびコラーゲン分子の非束で、ランダムに配向されたフィブリルの形成を促進する修飾を含んでもよい。
【0051】
組換えコラーゲン分子は、三量体コラーゲンフィブリルを形成し得るネイティブコラーゲン分子、または参照により組み込まれている、受託番号NP_001029211.1(https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/77404252、2017年2月9日に最後にアクセスされた)、NP_776945.1(https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/27806257、2017年2月9日に最後にアクセスされた)およびNP_001070299.1(https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/116003881、2017年2月9日に最後にアクセスされた)により記載された、配列番号1、2または3ならびにCollA1、CollA2、およびCollA3のアミノ酸配列によって記載されたウシコラーゲンのものなどの、ネイティブコラーゲンアミン酸配列(またはそのフィブリル形成領域または[Gly-X-Y]nを実質的に含むセグメント)に少なくとも70、80、90、95、96、97、98、または99%同一または類似のアミノ酸配列を有する修飾コラーゲン分子もしくは切端コラーゲン分子のアミノ酸配列の断片を含むことができる。(これらのリンクは、二重スラッシュ後のアンダーラインを含めることによって不活性化されている。)
【0052】
このような組換えまたは修飾コラーゲン分子は、一般に本明細書に記載される繰り返し-(Gly-X-Y)n-配列を含む。
【0053】
BLASTPは、コラーゲンポリペプチドをコードし、または配列番号1、2または3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドなどの基準ポリヌクレオチドに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を同定するために使用されてもよい。高度に類似の配列を見出すように最適化された代表的なBLASTN設定は、10のエクスペクト閾値および28のワードサイズ、0のクエリ範囲における最大マッチ、1/-2のマッチ/ミスマッチスコア、ならびに線形ギャップコストを使用する。低複雑度領域は、フィルタリングまたはマスキングされてもよい。標準ヌクレオチドBLASTPのデフォルト設定は、https://_blast.nchi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blatn&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome(2017年1月27日に最後にアクセスされた)により記載され、かつそれへの参照により組み込まれている。
【0054】
BLASTPは、BLOSUM45、BLOSUM62またはBLOSUM80(ここで、BLOSUM45は、近縁の配列、BLOSUM62は、中間の配列、およびBLOSUM80はより遠縁の配列に使用することができる)などの類似性マトリックスを使用して、コラーゲンアミノ酸配列などの、基準アミノ酸に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、または99%の配列同一性、または類似性を有するアミノ酸配列を同定するために使用することができる。特に断らない限り、類似性スコアは、BLOSUM62の使用に基づく。BLASTPが使用される場合、類似性パーセントは、BLASTPポジティブスコアに基づく、配列同一性パーセントは、BLASTP同一性スコアに基づく。BLASTP「同一性」は、同一である高スコアリング配列対における総残基の数および割合を示し;BLASTP「ポジティブ」は、アラインメントスコアがポジティブ値を有し、かつ互いに類似である残基の数および割合を示す。本明細書で開示されるアミノ酸配列に対するこれらの同一性もしくは類似性の度合いまたは同一性もしくは類似性のいずれかの中間の度合いを有するアミノ酸配列が企図され、かつこの開示によって包含される。代表的BLASTP設定は、10のエクスペクト閾値、3のワードサイズ、マトリックスとしてBLOSUM62、ならびに11(Existence)および1(Extension)のギャップペナルティ、ならびに条件的組成スコアマトリックス調整(conditional compositional score matrix adjustment)を使用する。BLASTPのための他のデフォルト設定は、https://blast.nchi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastp&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome(2017年1月27日に最後にアクセスされた)で利用できる開示によって記載され、かつそれへの参照により組み込まれている。
【0055】
酵母発現。1つの実施形態において、コラーゲン分子は、酵母発現系で産生される。酵母では、当技術分野で公知の構成的または誘導性プロモーターを含むいくつかのベクターが使用されてもよい;Ausubel et al.前掲、 Vol.2, Chapter 13: Grant et al.(1987) Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Wu & Grossman編、 Acad. Press, N.Y. 153:516-544頁; Glover (1986) DNA Cloning, Vol. II, IRL Press, Wash., D.C., Ch. 3; Bitter (1987) Heterogeneous Gene Expression in Yeast, in Methods in Enzymology, Berger & Kimmel編、Acad. Press, N.Y. 152:673-684頁;およびThe Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Strathern編、Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II (1982)。
【0056】
コラーゲンは、宿主細胞を使用して、例えば、酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)から発現され得る。この特定の酵母は、多数の発現ベクターのいずれによっても使用され得る。一般的に用いられる発現ベクターは、酵母における増殖のための複製の2P開始点、および外来遺伝子の効率的な転写のための、大腸菌(E. coli)のためのCol E1開始点を含むシャトルベクターである。2Pプラスミドに基づくこのようなベクターの典型的な例は、pWYG4であり、これは、2P ORI-STBエレメント、GAL1-10プロモーター、および2P D遺伝子ターミネーターを有する。このベクターでは、Ncolクローニング部位が、発現されるポリペプチドのための遺伝子を挿入するために、およびATG開始コドンを与えるために使用される。別の発現ベクターは、pWYG7Lであり、これは、インタクトな2αORI、STB、REP1およびREP2、ならびにGAL1-10プロモーターを有し、FLPターミネーターを使用する。このベクターにおいて、コード性ポリヌクレオチドは、BamH1またはNcolサイト部位においてその5’末端を有するポリリンカーに挿入される。カルシウムおよびポリエチレングリコールでの処理後にDNAを取り込むスフェロプラストを生成するために細胞壁を除去後に、またはリチウムイオンによるインタクト細胞の処理によって、挿入ポリヌクレオチドを含むベクターはS.セレビシエ(S. cerevisiae)に形質転換される。
【0057】
代わりに、DNAは、エレクトロポレーションによって導入され得る。形質転換体は、例えば、LEU2、TRP1、URA3、HIS3、またはLEU2-Dなどの選択可能なマーカー遺伝子と一緒の、ロイシン、トリプトファン、ウラシル、またはヒスチジンに対して栄養素要求性である宿主酵母細胞を使用して、選択され得る。
【0058】
1つの実施形態において、コラーゲンをコードするポリヌクレオチドは、酵母ピキア(Pichia)からの宿主細胞に導入される。ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの非サッカロマイセス(Saccharomyces)酵母の種は、スケールアップ手順で組換えタンパク質の高収率をもたらす際に特別の利点を有するように思われる。さらに、ピキア(Pichia)発現キットは、Invitron Corporation(San Diego、CA)から入手可能である。
【0059】
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などのメチロトロワ酵母(methylotrophic yeast)にいくつかのメタノール応答性遺伝子があり、それぞれの発現は、プロモーターとも称される、メタノール応答性調節領域によって制御される。このようなメタノール応答性プロモーターのいずれも、本発明の実施における使用に適する。特異的調節領域の例には、AOX1プロモーター、AOX2プロモーター、ジヒドロキシアセトンシンターゼ(DAS)、P40プロモーター、およびP.パストリス(P. pastoris)からのカタラーゼ遺伝子のためのプロモーターなどが含まれる。
【0060】
他の実施形態において、メチロトロワ酵母ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)が使用される。メタノールでの成長は、メタノール代謝の重要酵素、例えば、MOX(メタノールオキシダーゼ)、DAS(ジヒドロキシアセトンシンターゼ)、およびFMHD(ギ酸デヒドロゲナーゼ)の誘導をもたらす。これらの酵素は、総細胞タンパク質の30~40%までを構成し得る。MOX、DAS、およびFMDH産生をコードする遺伝子は、メタノールでの成長により誘導され、グルコースでの成長により抑制される強力プロモーターによって制御される。これらのプロモーターのいずれかまたは3つすべては、H.ポリモルファ(H. polymorpha)中の異種遺伝子の高レベル発現を得るために使用されてもよい。したがって、1つの態様において、動物コラーゲンまたはその断片もしくは変異体をコードするポリヌクレオチドは、誘導性H.ポリモルファ(H. polymorpha)プロモーターの制御下で発現ベクター中にクローン化される。産物の分泌が望まれる場合、酵母における分泌のためのシグナル配列をコードするポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドとフレーム内で融合される。さらなる実施形態において、発現ベクターは、好ましくは栄養素要求性マーカー遺伝子、例えば、URA3またはLEU2を含み、これらは、栄養素要求性宿主の欠乏を補足するために使用されてもよい。
【0061】
次いで、発現ベクターは、当業者に公知の技術を使用してH.ポリモルファ(H. polymorpha)宿主細胞を形質転換するために使用される。H.ポリモルファ(H. polymorpha)形質転換の有用な特徴は、ゲノム中への発現ベクターの100コピーまでの自発的組み込み(spontaneous integration)である。ほとんどの場合、組み込みポリヌクレオチドは、頭尾配置を示す多量体を形成する。組み込み外来ポリヌクレオチドは、非選択的条件下でさえも、いくつかの組換え株で有糸分裂的に安定であることが示された。この高いコピー組み込みの現象は、系の高い生産性可能性をさらに増す。
【0062】
真菌発現。糸状真菌も、本ポリペプチドを産生するために使用されてもよい。糸状真菌中で組換えタンパク質を発現および/または分泌するためのベクターは、周知であり、当業者は、これらのベクターを使用して、本発明の組換え動物コラーゲンを発現することができる。
【0063】
植物発現。1つの態様において、動物コラーゲンは、植物または植物細胞中で産生される。植物発現ベクターが使用される場合、本発明のコラーゲンをコードする配列の発現は、いくつかのプロモーターのいずれによって推進されてもよい。例えば、CaMVの35SRNAおよび19S RNAプロモーターなどのウイルスプロモーター(Brisson et al. (1984) Nature 310:511-514頁)、またはTMVの外皮タンパク質プロモーター(Takamatsu et al.(1987) EMBO J. 6:307-311頁)が使用されてもよく;代わりに、RUBISCOの小サブユニットなどの植物プロモーター(Coruzzi et al. (1984) EMBO J. 3:1671-1680頁;Broglie et al. (1984) Science 224:838-843頁)または熱ショックプロモーター、例えば、ダイズhsp17.5-Eもしくはhsp17.3-B(Gurley et al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6:559-565頁)が使用されてもよい。これらの構築物は、当業者に公知の様々な方法によって、例えば、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、顕微注射、エレクトロポレーションなどを使用することによって、植物細胞中に導入することができる。このような技術の総説については、例えば、Weissbach & Weissbach, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section III, 421-463頁(1988);Grierson & Corey, Plant Molecular Biology, 第2版、Blackie, London, 7-9章(1988);Transgenic Plants: A Production System for Industrial and Pharmaceutical Proteins, Owen and Pen編、John Wiliey & Sons, 1996;Transgenic Plants, Galun and Breiman編、Imperial College Press, 1977;ならびにApplied Plant Biotechnology, Chopra, Malik, and Bhat編、Science Publishers, Inc., 1999を参照されたい。
【0064】
植物細胞は、安定なコラーゲンを効率的に生産するための十分量の翻訳後酵素を自然には産生しない。したがって、ヒドロキシル化が望まれる場合、動物コラーゲンを発現するために使用される植物細胞は、安定なコラーゲンを十分に産生するために必要な翻訳後酵素が補充される。本発明の好ましい実施形態において、翻訳後酵素は、プロリル4-ヒドロキシラーゼである。
【0065】
本動物コラーゲンを植物系で生産するための方法は、植物または植物細胞からのバイオマスを供給することによって達成されてもよく、ここで、植物または植物細胞は、ポリペプチドの発現を行うプロモーターに作動可能に連結された少なくとも1つのコーティング配列を含み、次いで、ポリペプチドは、バイオマスから抽出される。代わりに、ポリペプチドは、非抽出であり得、例えば、内乳中に発現され得る。
【0066】
植物発現ベクターおよびレポーター遺伝子は、一般に当技術分野で公知であり;例えば、Cruber et al. (1993) in Methods of Plant Molecular Biology and Biotechnology, CRC Pressを参照されたい。典型的には、発現ベクターは、例えば、組換え的または合成的に生じた核酸構築物を含み、かつ植物細胞中で機能するプロモーターを含み、ここで、このようなプロモーターは、動物コラーゲンまたはその断片もしくは変異体、あるいはコラーゲンの生合成に重要な翻訳後酵素をコードする核酸配列に作動可能に連結されている。
【0067】
プロモーターは、植物におけるタンパク質発現のレベルを推進する。植物におけるタンパク質発現の所望のレベルをもたらすために、発現は、植物プロモーターの指示下にあってもよい。本発明による使用に適したプロモーターは、一般に当技術分野で利用でき;例えば、国際公開第91/19806号パンフレットを参照されたい。本発明によって使用されてもよいプロモーターの例には、非構成的プロモーターまたは構成的プロモーターが含まれる。これらのプロモーターには、限定されないが、リブロース-1,5-ビス-ホスフェートカルボキシラーゼの小サブユニットのためのプロモーター;アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導性プラスミドからのプロモーター、例えば、RUBISCOノパリンシンターゼ(NOS)およびオクトピンシンターゼプロモーター;細菌T-DNAプロモーター、例えば、masおよびocsプロモーター;ならびにウイルスプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sおよび35Sプロモーターまたはゴマノハグサモザイクウイルス35Sプロモーターが含まれる。
【0068】
本発明のポリヌクレオチド配列は、植物のほとんどの組織でコラーゲンまたは翻訳後酵素の発現を指示して、構成的プロモーターの翻訳制御下に置くことができる。1つの実施形態において、ポリヌクレオチド配列は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターの制御下にある。二本鎖カリモウイルスファミリーは、植物における導入遺伝子発現のための単一の最も重要なプロモーター発現、特に、35Sプロモーターを提供してきた;例えば、Kay et al. (1987) Science 236:1299頁を参照されたい。例えば、ゴマノハグサモザイクウイルスプロモーターなどのこのファミリーからのさらなるプロモーターが当技術分野で記載されており、また使用されてもよく;例えば、Sanger et al. (1990) Plant Mol. Biol. 14:433-443頁;Medberry et al. (1992) Plant Cell 4:195-192頁;ならびにYin and Beachy (1995) Plant J. 7:969-980頁を参照されたい。
【0069】
コラーゲンを発現するためにポリヌクレオチド構築物において使用されるプロモーターは、必要に応じて、それらの制御特性に影響を与えために修飾されてもよい。例えば、CaMVプロモーターは、光の非存在下でRUBISCOの発現を抑制するRUBISCO遺伝子の部分にライゲートされて、根ではなく、葉で活性であるプロモーターを生じてもよい。得られたキメラプロモーターは、本明細書に記載されるとおりに使用されてもよい。
【0070】
当技術分野で公知の一般的な発現特性を有する構成的植物プロモーターは、本発明の発現ベクターによって使用されてもよい。これらのプロモーターは、ほとんどの植物組織で豊富に発現されており、例えば、アクチンプロモーターおよびユビキチンプロモーターなどがあり;例えば、McElroy et al. (1990) Plant Cell 2:163-171頁;およびChristensen et al.(1992) Plant Mol. Biol. 18:675-689頁を参照されたい。
【0071】
代わりに、本発明のポリペプチドは、特異的な組織、細胞型で、またはより精密な環境条件もしくは発生制御の下で発現されてもよい。これらの場合の発現を指示するプロモーターは、誘導性プロモーターとして公知である。組織特異的プロモーターが使用される場合、タンパク質発現は、そのタンパク質の抽出がそれから望まれる組織において特に高い。望まれる組織に依存して、発現は、胚乳、糊粉層、胚(または胚盤および子葉としてのその部分)、果皮、茎、葉、塊茎、根などが標的とされてもよい。公知の組織特異的プロモーターの例には、塊茎指向クラスIパタチンプロモーター、ジャガイモ塊茎ADPGPP遺伝子に関連するプロモーター、種子指向転写を推進するβ-コングリシニン(7Sタンパク質)の大豆プロモーター、およびメイズ胚乳のゼイン遺伝子からの種子指向プロモーターが含まれ;例えば、Bevan et al.(1986) Nucleic Acids Res. 14:4625-38頁;Muller et al. (1990) Mol. Gen. Genet. 224:136-46頁;Bray (1987) Planta 172:364-370頁;およびPedersen et al. (1982) Cell 29:1015-26頁を参照されたい。
【0072】
コラーゲンポリペプチドは、例えば、カノーラ、トウモロコシ、大豆、コメおよびオオムギの種子を使用して、種子をベースとする生産技術によって種子で生産することができる。このようなプロセスにおいて、例えば、生産物は、種子発芽の間に回収され;例えば、PCT公開番号国際公開第9940210号パンフレット;国際公開第9916890号パンフレット;国際公開第9907206号パンフレット;米国特許第5,866,121号明細書;米国特許第5,792,933号明細書;およびそれらに引用されたすべての参考文献を参照されたい。ポリペプチドの発現を指示するために使用されてもよいプロモーターは、異種性または非異種性であってもよい。これらのプロモーターは、アンチセンス核酸の発現を推進して、所望の組織中での本動物コラーゲンの濃度および組成を減少、増加、または変更するために使用することもできる。
【0073】
植物または植物細胞中の本ポリペプチドの転写を増加および/または最大化するためになされてもよい他の修飾は、標準的なものであり、当業者に公知である。例えば、プロモーターに作動可能に連結された、組換え動物コラーゲン、またはその断片もしくは変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターは、限定されないが、ペプチドエクスポートシグナル配列、コドン使用頻度、イントロン、ポリアデニル化、および転写終結部位を含めて、コラーゲンまたは関連翻訳後酵素の転写速度を修正する少なくとも1種の因子をさらに含んでもよい。構築物を修飾して、植物における発現レベルを増加させる方法は、概して当技術分野で公知であり;例えば、Rogers et al. (1985) J. Biol. Chem. 260:3731頁;およびCornejo et al. (1993) Plant Mol Biol 23:567-58頁を参照されたい。本コラーゲンおよび関連翻訳後酵素の転写の速度に影響を与える植物系の操作において、正または負に作用する配列などの調節配列、エンハンサーおよびサイレンサー、ならびにクロマチン構造を含めて、当技術分野で公知の様々な因子が、植物における転写の速度に影響を与え得る。これらの因子の少なくとも1種が、限定されないが、上に記載されたコラーゲン型を含めて、組換え動物コラーゲンを発現する場合に用いられてもよい。
【0074】
本ポリヌクレオチドを含むベクターは、典型的には、植物細胞に選択可能な表現型を与えるマーカー遺伝子を含む。通常、選択可能なマーカー遺伝子は、抗生物質耐性をコードし、適当な遺伝子には、抗生物質スペクチノマイシンに対する耐性をコードする遺伝子、ストレプトマイシン耐性をコードするストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ(SPT)遺伝子、カナマイシンもしくはジェネティシン耐性をコードするネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NPTH)遺伝子、ハイグロマイシン耐性、アセトラクテートシンターゼ(ALS)の作用を阻害するように作用する除草剤、特に、スルホニル尿素型除草剤に対する耐性をコードする遺伝子;例えば、このような耐性をもたらす突然変異、特にS4および/もしくはHra突然変異を含む、アセトラクテートシンターゼ(ALS)遺伝子、グルタミンシンターゼの作用を阻害するように作用する除草剤、例えば、ホフィノトリシンもしくはバスタに対する耐性をコードする遺伝子;例えば、bar遺伝子、または当技術分野で公知の他の同様の遺伝子の少なくとも1つのセットが含まれる。bar遺伝子は、除草剤バスタに対する耐性をコードし、nptII遺伝子は、抗生物質カナマイシンおよびジェネティシンに対する耐性をコードし、およびALS遺伝子は、除草剤クロルスルフロンに対する耐性をコードする。
【0075】
植物における外来遺伝子の発現に有用な典型的なベクターは、当技術分野で周知であり、限定されないが、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘導性(Ti)プラスミドに由来するベクターなどがある。これらのベクターは、形質転換後に、DNAの一部を宿主植物のゲノム中に統合する植物組込み型ベクターであり;例えば、Rogers et al. (1987) Meth In Enzymol. 153:253-277頁;Schardt et al.(1987) Gene 61:1-11頁;およびBerger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:8402-8406頁を参照されたい。
【0076】
本ポリペプチドをコードする配列を含むベクターおよび翻訳後酵素またはそのサブユニットを含むベクターは、所望の植物中に共導入されてもよい。植物細胞を形質転換するための手順、例えば、直接遺伝子移入、インビトロプロトプラスト形質転換、植物ウイルス媒介形質転換、リポソーム媒介形質転換、顕微注射、エレクトロポレーション、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換、および粒子衝撃(particle bombardment)が、当技術分野で利用可能であり;例えば、Paszkowski et al. (1984) EMBO J. 3:2717-2722頁;米国特許第4,684,611号明細書;欧州出願番号第067533号明細書;米国特許第4,407,956号明細書;米国特許第4,536,475号明細書;Crossway et al. (1986) Biotechniques 4:320-334頁;Riggs et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci USA 83:5602-5606頁;Hinchee et al. (1988) Biotechnology 6:915-921頁;および米国特許第4,945,050号を参照されたい。)例えば、コメ、コムギ、トウモロコシ、モロコシ、およびオオムギの形質転換のための標準的な方法は、当技術分野で記載されており;例えば、Christou et al. (1992) Trends in Biotechnology 10:239頁およびLee et al. (1991) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:6389頁を参照されたい。コムギは、トウモロコシまたはコメの形質転換に用いられるものと同様の技術によって形質転換することができる。さらに、Casas et al. (1993) Proc Nat'l Acad. Sci. USA 90:11212頁には、モロコシを形質転換するための方法が記載され、一方でWan et al. (1994) Plant Physiol. 104:37頁には、オオムギを形質転換するための方法が教示されている。トウモロコシ形質転換のための適当な方法は、Fromm et al. (1990) Bio/Technology 8:833頁、およびGordon-Kamm et al.、前掲によって提供される。
【0077】
本発明の動物コラーゲンを生産する植物を生じさせるために使用されてもよいさらなる方法は、当技術分野で確立されており;例えば、米国特許第5,959,091号明細書;米国特許第5,859,347号明細書;米国特許第5,763,241号明細書;米国特許第5,659,122号明細書;米国特許第5,593,874号明細書;米国特許第5,495,071号明細書;米国特許第5,424,412号明細書;米国特許第5,362,865号明細書;米国特許第5,229,112号明細書;米国特許第5,981,841号明細書;米国特許第5,959,179号明細書;米国特許第5,932,439号明細書;米国特許第5,869,720号明細書;米国特許第5,804,425号明細書;米国特許第5,763,245号明細書;米国特許第5,716,837号明細書;米国特許第5,689,052号明細書;米国特許第5,633,435号明細書;米国特許第5,631,152号明細書;米国特許第5,627,061号明細書;米国特許第5,602,321号明細書;米国特許第5,589,612号明細書;米国特許第5,510,253号明細書;米国特許第5,503,999号明細書;米国特許第5,378,619号明細書;米国特許第5,349,124号明細書;米国特許第5,304,730号明細書;米国特許第5,185,253号明細書;米国特許第4,970,168号明細書;欧州特許出願公開第00709462号明細書;欧州特許出願公開第00578627号明細書;欧州特許出願公開第00531273号明細書;欧州特許出願公開第00426641号明細書;PCT公開国際公開第99/31248号パンフレット;PCT公開国際公開第98/58069号パンフレット;PCT公開国際公開第98/45457号パンフレット;PCT公開国際公開第98/31812号パンフレット;PCT公開国際公開第98/08962号パンフレット;PCT公開国際公開第97/48814号パンフレット;PCT公開国際公開第97/30582号パンフレット;およびPCT公開国際公開第9717459号パンフレットを参照されたい。
【0078】
昆虫発現。コラーゲンのための別の代替の発現系は、昆虫系である。バキュロウイルスは、昆虫細胞における様々な組換えタンパク質の大規模生産のための非常に効率的な発現ベクターである。Luckow et al. (1989) Virology 170:31-39頁ならびにGruenwald, S. and Heitz, l. (1993) Baculovirus Expression Vector System: Procedures & Methods Manual, Pharmingen, San Diego, CAに記載されたとおりの方法を用いて、本発明のコラーゲンのためのコラーゲンコーディング配列および適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。例えば、タンパク質の組換え生産は、ポリペプチドをコードするバキュロウイルスベクターの感染によって、昆虫細胞で達成され得る。組換えコラーゲン、安定なトリプルヘリックスを有するコラーゲン様またはコラーゲン性ポリペプチドの生産は、3種のバキュロウイルス、発現されるべき動物コラーゲンをコードするもの、ならびにそれぞれが、プロリル-4-ヒドロキシラーゼのαサブユニットおよびβサブユニットをコードするものによる昆虫細胞の共感染を伴い得る。この昆虫細胞系は、大量での組換えタンパク質の生産を可能にする。1つのこのような系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)は、外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。このウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。コラーゲンまたはコラーゲン様ポリペプチドのためのコーティング配列は、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドロン遺伝子)中にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドロンプロモーター)の制御下に置かれてもよい。コーディング配列の成功裏の挿入は、ポリヘドロン遺伝子の不活性化および非閉塞性組換えウイルスの産生をもたらし;例えば、ウイルスは、ポリヘドロン遺伝子によってコードされたタンパク質性コートを欠いている。次いで、これらの組換えウイルスは、挿入遺伝子が発現されるヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞に感染させるために使用され;例えば、Smith et al. (1983) J. Virol. 46:584頁;および米国特許第4,215,051号明細書を参照されたい。この発現系のさらなる例は、例えば、上記Ausubel et al.に見出され得る。
【0079】
動物発現。動物宿主細胞では、いくつかの発現系が用いられてもよい。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、コラーゲンまたはコラーゲン様ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば、後期プロモーターおよび三者間リーダー配列(tripartite leader sequence)にライゲートされてもよい。次いで、このキメラ遺伝子は、インビトロまたはインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入されてもよい。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1またはE3)への挿入は、感染宿主において生存可能であり、かつコード化ポリペプチドを発現することができる組換えウイルスをもたらし;例えば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659 頁(1984) を参照されたい。代わりに、ワクシニア7.5Kプロモーターが使用されてもよく;例えば、Mackett et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415-7419頁;Mackett et al. (1982) J. Virol. 49:857-864頁;およびPanicali et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927-4931頁を参照されたい。
【0080】
哺乳動物宿主細胞における好ましい発現系は、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)である。哺乳動物宿主細胞、例えば、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の感染は、非常に高い組換え発現レベルを生じさせることができる。セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)は、ウイルスが、哺乳動物細胞株の感染が可能であるように広い宿主範囲を有するので、好ましい発現系である。より具体的には、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)は、広範な宿主で使用することができ、その理由は、その系が染色体組込みに基づかず、したがって、構造機能関係を識別し、および様々なハイブリッド分子の効果を試験することを目的とする研究で組換え動物コラーゲンの修正を得るより容易な様式を提供するからである。哺乳動物宿主細胞において外因性タンパク質の発現のためのセムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)ベクターを構築するための方法は、例えば、Olkkonen et al. (1994) Methods Cell Biol 43:43-53頁に記載されている。
【0081】
非ヒトトランスジェニック動物も、本発明のポリペプチドを発現するために使用されてもよい。このような系は、本発明のポリヌクレオチドを、乳腺で発現を行うことができる他の必要とされるまたは任意選択の調節配列とともに、プロモーターに作動可能に連結することによって構築され得る。同様に、必要とされるまたは任意選択の翻訳後酵素は、適当な発現系を用いる標的細胞中で同時に産生されてもよい。タンパク質を組換え的に生産するために非ヒトトランスジェニック動物を使用する方法は、当技術分野で公知であり;例えば、米国特許第4,736,866号明細書;米国特許第5,824,838号明細書;米国特許第5,487,992号明細書;および米国特許第5,614,396号明細書を参照されたい。
【0082】
組換えコラーゲンの生産について記載する上の項で引用された参考文献は、それぞれ参照により組み込まれる。
【0083】
複合コラーゲン線維シート。
図1に示されるように、トリプルヘリックスコラーゲン分子は、フィブリルに会合し、これは、動物スキンにおいてより大きなフィブリル束またはコラーゲン線維に集合する。コラーゲンシートを作製する先行方法は、粉砕動物スキンまたはレザースクラップと溶解または懸濁コラーゲンとの混合物を使用した。このようなコラーゲン線維含有製品は、米国特許第2,934,446号明細書;同第3,073,714号明細書;同第3,122,599号明細書;および同第3,136,682号明細書により記載されている。Highbergerら、米国特許第2,934,446号明細書には、ミートグラインダーを使用して、カーフスキンハイドまたは真皮のスラリーを生じさせ、これをシートに形成し、なめし、動物スキンを酸性水溶液中5℃で細粉化および分散させることによって交絡コラーゲン線維塊を形成し、次いで、pHおよび温度を上昇させて、コラーゲン線維を沈殿させ、ゲルを形成し、次いで、これを乾燥させる方法が記載されている。これらのコラーゲン線維塊のシートは、レザースクラップを利用し、レザーに似ているシートを形成する。Highbergerは、これらのレザーシートが商業的使用に適することを示していない。Tuら、米国特許第3,073,714号明細書には、25%固体を含有するカーフスキンスラリーからシートを生じさせ、これを植物性なめし溶液でなめし、グリセリンおよびオレイン酸で処理することが開示されている。これらのコラーゲン線維シートは、天然スキンおよびハイド中のコラーゲン線維の内部配置を再現すると記載されている。Tuは、レザーシートが消費者製品における使用に組成的または美的に適することを示していない。Tuら、米国特許第3,122,599号明細書には、コラーゲン線維および可溶性コラーゲンならびに動物スキンに由来する他の成分を含有する粉砕動物スキンまたはレザーから作られたレザー様シートが記載されている。Tuは、この混合物をクロムで処理し、それをアセトンで脱水し、オレイン酸で処理して、コラーゲン線維塊を含むレザー様製品を製造することを開示している。Tuは、シートが消費者製品における使用に組成的、物理的または美的に適することを示していない。Tuら、米国特許第3,136,682号明細書には、コラーゲン線維と、動物スキンに由来する水溶性タンパク質性材料の結合剤との混合物を含むレザー様材料を作製する方法が記載されている。それには、クロムなめし剤の使用およびオレイン酸の処理も記載されている。Tuは、良好な外観および感触のシートを記載しているが、それが消費者製品への組み込みに適することを示していない。これらの製品は、粗く、粉砕または温浸されたコラーゲン線維を組み込んでいる。
【0084】
培養レザー製品。これらの製品は、概してインビトロで細胞を培養することによって生産されたコラーゲンを含む複数の層を含み、Forgacsら、米国特許出願公開第2016/0097109号明細書およびGreene、米国特許第9,428,817号明細書で記載されている。これらの製品は、細胞外植片または培養コラーゲン産生性細胞の培養によってインビトロで生産される。このような細胞は、コラーゲンをコラーゲンフィブリルの四つ一組の束に産生および処理し、かつ本発明のコラーゲンフィブリルのランダムで非異方性構造を有しない。Forgacsは、レザー製品を製造するための、成形されてもよい操作動物スキンについて記載している。Greenは、インビトロで培養されているレザーを組み込んでもよい、様々な製品、例えば、履物、アパレルおよび旅行かばんについて記載している。米国特許出願公開第2013/0255003号明細書には、ウシスキン細胞を培養液中で増殖させることによってレザー様製品のためのコラーゲンを生産することが記載されている。宿主細胞の他の型が、医療移植片のためのコラーゲンを生産するため、またはゼラチンを生産するために用いられてきた。例えば、米国特許出願公開第2004/0018592号明細書には、宿主細胞、例えば、酵母中でウシコラーゲンを組換え的に発現させることによってゼラチンを生産する様式が記載されている。
【0085】
医療製品。コラーゲンのネットワークは、生物医学用途のための材料としてインビトロで生産されてきた。それらの用途では、コラーゲントリプルヘリックスのモノマーが、動物組織、例えば、ウシ真皮から、酸処理またはペプシンなどのタンパク質分解酵素による処理のいずれかによって抽出されて、組織からのコラーゲンを可溶化する。一旦精製されると、これらの可溶化コラーゲン(しばしば、コラーゲントリプルヘリックスのモノマー、二量体および三量体の混合物)は、水性緩衝液中のpH移動によってフィブリルにフィブリル化することができる。正しい条件下で、コラーゲンモノマーはフィブリルに自己集合し、それらの供給源およびそれらが単離される仕方に依存して、フィブリルは物理的に架橋して、固体ヒドロゲルを形成する。加えて、組換えコラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質は、pHおよび塩濃度の同様の調整によってインビトロでフィブリル化することが示された。医療用途のためのこのような製品の例には、顕微鏡的コラーゲン線維に自己集合する、コラーゲンスラリーから作られた生分解性コラーゲンマトリックス、米国特許第9,539,363号明細書、ならびに外部案内構造または内部テンプレートの使用および張力の適用によって製造されたコラーゲンフィブリルの組織化アレイ、米国特許第9,518,106号明細書が含まれる。例えば、組織工学または組織移植などのための、医学で使用されるコラーゲン製品は、しばしば、特定の組織で操作または修復されるものと類似の形態でコラーゲンを提供することを目的とする。可溶性コラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質のフィブリル化が生物医学用途のためのコラーゲンヒドロゲルを生産するために探索されてきたが、この技術は、天然レザーの強度および美的特性を有する材料の生産に成功裏には適用されてこなかった。
【0086】
合成プラスチック系レザー。合成レザーを作製するための試みは、機能的特性と美的特性とのレザーの独特の組の再現に達してこなかった。合成レザー材料の例には、中でも、Clarino、Naugahyde(登録商標)、Corfam、およびAlcantaraが含まれる。それらは、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ニトロセルロースコーテッド綿布、ポリエステル、または合成ポリマーでコーティングされた他の天然布もしくは繊維材料を含めて、様々な化学薬品およびポリマー成分から作られている。これらの材料は、不織プロセスおよび最新の紡糸プロセスを含めて、化学およびテキスタイル生産手法からしばしば引き出して、様々な技術を使用して集合される。これらの材料の多くは、履物、室内装飾材料、およびアパレル用途での使用を見出してきたが、それらは、レザーをそのように独特かつ愛されるようにする通気性、性能、触感、または美的特性に適合し得ないので、高級品用途には達していなかった。今日まで、コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質の一様なネットワークから代替の商業的レザー様材料は作られてこなかった。合成プラスチック材料は、許容されるレザー美学をもたらすコラーゲンネットワークの化学組成および構造を欠いている。合成化学物質品とは異なって、強いが多孔質の繊維状アーキテクチャへのその組織化と相まって、コラーゲンポリペプチド鎖に沿ったアミノ酸側基の化学組成物は、レザーの望ましい強度、柔軟性および美学をもたらすための架橋プロセスによってフィブリルネットワークの安定化および機能化を可能にする。
【0087】
可溶性コラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質のフィブリル化が、粉砕(ground)または細粉化(comminuted)レザースクラップを一緒に結合するために、または生物医学用途のためのコラーゲンヒドロゲルの生産のために探索されてきたが、この現象を利用して、商業的に許容されるレザー様材料を製造することは達成されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【文献】欧州特許第1232182号明細書
【文献】米国特許第6,428,978号明細書
【文献】米国特許第8,188,230号明細書
【文献】国際公開第91/19806号パンフレット
【文献】国際公開第9940210号パンフレット
【文献】国際公開第9916890号パンフレット
【文献】国際公開第9907206号パンフレット
【文献】米国特許第5,866,121号明細書
【文献】米国特許第5,792,933号明細書
【文献】米国特許第4,684,611号明細書
【文献】欧州出願第067533号明細書
【文献】米国特許第4,407,956号明細書
【文献】米国特許第4,536,475号明細書
【文献】米国特許第4,945,050号明細書
【文献】米国特許第5,959,091号明細書
【文献】米国特許第5,859,347号明細書
【文献】米国特許第5,763,241号明細書
【文献】米国特許第5,659,122号明細書
【文献】米国特許第5,593,874号明細書
【文献】米国特許第5,495,071号明細書
【文献】米国特許第5,424,412号明細書
【文献】米国特許第5,362,865号明細書
【文献】米国特許第5,229,112号明細書
【文献】米国特許第5,981,841号明細書
【文献】米国特許第5,959,179号明細書
【文献】米国特許第5,932,439号明細書
【文献】米国特許第5,869,720号明細書
【文献】米国特許第5,804,425号明細書
【文献】米国特許第5,763,245号明細書
【文献】米国特許第5,716,837号明細書
【文献】米国特許第5,689,052号明細書
【文献】米国特許第5,633,435号明細書
【文献】米国特許第5,631,152号明細書
【文献】米国特許第5,627,061号明細書
【文献】米国特許第5,602,321号明細書
【文献】米国特許第5,589,612号明細書
【文献】米国特許第5,510,253号明細書
【文献】米国特許第5,503,999号明細書
【文献】米国特許第5,378,619号明細書
【文献】米国特許第5,349,124号明細書
【文献】米国特許第5,304,730号明細書
【文献】米国特許第5,185,253号明細書
【文献】米国特許第4,970,168号明細書
【文献】欧州特許出願公開第00709462号明細書
【文献】欧州特許出願公開第00578627号明細書
【文献】欧州特許出願公開第00531273号明細書
【文献】欧州特許出願公開第00426641号明細書
【文献】国際公開第99/31248号パンフレット
【文献】国際公開第98/58069号パンフレット
【文献】国際公開第98/45457号パンフレット
【文献】国際公開第98/31812号パンフレット
【文献】国際公開第98/08962号パンフレット
【文献】国際公開第97/48814号パンフレット
【文献】国際公開第97/30582号パンフレット
【文献】国際公開第9717459号パンフレット
【文献】米国特許第4,215,051号明細書
【文献】米国特許第4,736,866号明細書
【文献】米国特許第5,824,838号明細書
【文献】米国特許第5,487,992号明細書
【文献】米国特許第5,614,396号明細書
【文献】米国特許第2,934,446号明細書
【文献】米国特許第3,073,714号明細書
【文献】米国特許第3,122,599号明細書
【文献】米国特許第3,136,682号明細書
【文献】米国特許第2,934,446号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0097109号明細書
【文献】米国特許第9,428,817号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0255003号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/0018592号明細書
【文献】米国特許第9,539,363号明細書
【文献】米国特許第9,518,106号明細書
【非特許文献】
【0089】
【文献】Future Trends in the World Leather Products Industry and Trade, United Nations Industrial Development Organization, Vienna, 2010
【文献】Schmitt F.O. J. Cell. Comp Physiol. 1942;20:11
【文献】Ayad et al.(1998) The Extracellular Matrix Facts Book, Academic Press, San Diego, CA
【文献】Burgeson, R E., and Nimmi(1992)"Collagen types: Molecular Structure and Tissue Distribution" in Clin. Orthop. 282:250-272頁
【文献】Kielty, C.M. et al. (1993)"The Collagen Family: Structure, Assembly And Organization in The Extracellular Matrix," Connective Tissue And Its Heritable Disorders, Molecular Genetics, And Medical Aspects, Royce, P.M. and B. Steinmann 編、Wiley-Liss, NY, 103-147頁
【文献】Prockop, D.J- and K.I. Kivirikko(1995) "Collagens: Molecular Biology, Diseases, and Potentials for Therapy," Annu. Rev. Biochem., 64:403-434頁
【文献】Miller and Rhodes (1982) Methods In Enzymology 82:33-64頁
【文献】Byers et al.(1974) Biochemistry 13:5243-5248頁
【文献】Furuto and Miller (1987) Methods in Enzymology, 144:41-61頁, Acaemic Press
【文献】Elstow and Weiss (1983) Collagen Rel. Res. 3:181-193頁
【文献】Abedin et al. (1982) Biosci. Rep. 2:493-502頁
【文献】Wu et al. (1987) Biochem. J. 248:373-381頁
【文献】Kielty et al. (1991) J. Cell Sci. 99:797-807頁
【文献】Lunstrum et al. (1986) J. Biol. Chem. 261:9042-9048頁
【文献】Bentz et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:3168-3172頁
【文献】Benya and Padilla (1986) J. Biol. Chem. 261:4160-4169頁
【文献】Kapoor et al. (1986) Biochemistry 25:3930-3937頁
【文献】Duance et al. (1984) Biochem. J. 221:885-889頁
【文献】Ayad et al.(1989) Biochem. J. 262:753-761頁
【文献】Grant et al. (1988) The Control of Tissue Damage, Glauert, A. M.編、 Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 3-28頁
【文献】Apte et al. (1992) Eur J Biochem 206(1):217-24頁
【文献】Dublet et al. (1989) J. Biol. Chem. 264:13150-13156頁
【文献】Lunstrum et al. (1992) J. Biol. CHem. 267:20087-20092頁
【文献】Watt et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:20093-20099頁
【文献】Juvonen et al. (1992) J. Biol. Chem. 267:24700-24707頁
【文献】Aubert-Foucher et al.(1992) J. Biol. Chem. 267:15759-15764頁
【文献】Myers et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10144-10148頁
【文献】Huebner et al. (1992) Genomics 14:220-224頁
【文献】Kivirikko et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:4773-4779頁
【文献】Muragaki, J. (1994) Biol. Chem. 264:4042-4046頁
【文献】Pan et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6565-6569頁
【文献】Yamaguchi et al. (1992) J. Biochem. 112:856-863頁
【文献】Li et al. (1993) J. Biol. Chem. 268(12):8825-8834頁
【文献】McGrath et al. (1995) Natl. Genet. 11(1):83-86頁
【文献】Rehn and Pihlajaniemi (1994) Proc. Natl. Acad. Sci USA 91:4234-4238頁
【文献】Oh et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci USA 91:4229-4233頁
【文献】Rehn et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:13924-13935頁
【文献】Oh et al. (1994) Genomics 19:494-499頁
【文献】Inoguchi et al. (1995) J. Biochem. 117:137-146頁
【文献】Yoshioka et al. (1992) Genomics 13:884-886頁
【文献】Myers et al.J. Biol. Chem. 289:18549-18557頁
【文献】Gordon et al. (1999) FASEB Journal 13:A1119頁
【文献】Gordon et al. (1998), IOVS 39:S1128頁
【文献】Ruther et al. (1983) EMBO J. 2:1791頁
【文献】Inouye et al. (1985) Nucleic Acids Res. 13:3101-3109頁
【文献】Van Heeke et al. (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509頁
【文献】https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/77404252
【文献】https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/27806257
【文献】https://_www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/116003881
【文献】https://blast.nchi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blatn&PAGE_TYPE=BlastSearch&LINK_LOC=blasthome
【文献】Grant et al. (1987) Expression and Secretion Vectors for Yeast, in Methods in Enzymology, Wu & Grossman編、Acad. Press, N.Y. 153:516-544頁
【文献】Glover (1986) DNA Cloning, Vol. II, IRL Press, Wash., D.C., Ch. 3
【文献】Bitter (1987) Heterogeneous Gene Expression in Yeast, in Methods in Enzymology, Berger & Kimmel編、Acad. Press, N.Y. 152:673-684頁
【文献】The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces, Strathern編、Cold Spring Harbor Press, Vols. I and II (1982)
【文献】Brisson et al. (1984) Nature 310:511-514頁
【文献】Takamatsu et al. (1987) EMBO J. 6:559-565頁
【文献】Coruzzi et al. (1984) EMBO J. 3:1671-1680頁
【文献】Broglie et al. (1984) Science 224:838-843頁
【文献】Gurley et al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6:559-565頁
【文献】Weissbach & Weissbach, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section III, 421-463頁(1988)
【文献】Grierson & Corey, Plant Molecular Biology,第2版、Blackie, London, 7-9章(1988)
【文献】Transgenic Plants: A Production System for Industrial and Pharmaceutical Proteins, Owen and Pen編、John Wiliey & Sons, 1996
【文献】Transgenic Plants, Galun and Breiman編、Imperial College Press, 1977
【文献】Applied Plant Biotechnology, Chopra, Malik, and Bhat編、Science Publishers, Inc., 1999
【文献】Cruber et al. (1993) in Methods of Plant Molecular Biology and Biotechnology, CRC Press
【文献】Kay et al. (1987) Science 236:1299頁
【文献】Sanger et al. (1990) Plant Mol. Biol. 14:433-443頁
【文献】Medberry et al. (1992) Plant Cell 4:195-192頁
【文献】Yin and Beachy (1995) Plant J. 7:969-980頁
【文献】McElroy et al. (1990) Plant Cell 2:163-171頁
【文献】Christensen et al. (1992) Plant Mol. Biol. 18:675-689頁
【文献】Bevan et al. (1986) Nucleic Acids Res. 14:4625-38頁
【文献】Muller et al. (1990) Mol. Gen. Genet. 224:136-46頁
【文献】Bray (1987) Planta 172:364-370頁
【文献】Pedersen et al. (1982) Cell 29:1015-26頁
【文献】Rogers et al. (1985) J. Biol. Chem. 260:3731頁
【文献】Cornejo et al. (1993) Plant Mol Biol 23:567-58頁
【文献】Rogers et al. (1987) Meth In Enzymol. 153:253-277頁
【文献】Schardt et al. (1987) Gene 61:1-11頁
【文献】Berger et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:8402-8406頁
【文献】Paszkowski et al. (1984) EMBO J. 3:2717-2722頁
【文献】Crossway et al. (1986) Biotechniques 4:320-334頁
【文献】Riggs et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci USA 83:5602-5606頁
【文献】Hinchee et al. (1988) Biotechnology 6:915-921頁
【文献】Christou et al. (1992) Trends in Biotechnology 10:239頁
【文献】Lee et al. (1991) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:6389頁
【文献】Casas et al. (1993) Proc Nat'l Acad. Sci. USA 90:11212頁
【文献】Wan et al. (1994) Plant Physiol. 104:37頁
【文献】Fromm et al. (1990) Bio/Technology 8:833頁
【文献】Luckow et al. (1989) Virology 170:31-39頁
【文献】Gruenwald, S. and Heitz, l. (1993) Baculovirus Expression Vector System: Procedures & Methods Mannual, Pharmingen, San Diego, CA
【文献】Smith et al. (1983) J. Virol. 46:584頁
【文献】Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659頁(1984)
【文献】Mackett et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7415-7419頁
【文献】Mackett et al. (1982) J. Virol. 49:857-864頁
【文献】Panicali et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:4927-4931頁
【文献】Olkkonen et al. (1994) Methods Cell Biol 43:43-53頁
【文献】Sizeland et al., J. Agric. Food Chem. 61:887-892頁(2013)
【文献】Basil-Jones et al., J. Agric. Food Chem. 59: 9972-9979頁(2011)
【文献】Bailey et al., Radiat. Res. 22:606-621頁(1964)
【文献】Housley et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 67:824-830頁(1975)
【文献】Siegel, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 71:4826-4830頁(1974)
【文献】Mechanic et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 41:1597-1604頁(1970)
【文献】Shoshan et al., Biochim, Biophys. Acta 154:261-263頁(1969)
【文献】Silva et al., Marine Origin Collagens and its Potential Applications, Mar. Drugs, 2014年12月、12(12):5881-5901頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0090】
先行技術の天然レザー、ならびに複合レザー製品、培養レザー製品、および合成のプラスチック系レザー製品の問題を考慮して、本発明者らは、レザーに見出される天然構成要素を組み込んだ、優れた強度、ならびに一様性および非異方性を有するバイオファブリケーテッドレザーを提供するための様式を勤勉に追及した。
【課題を解決するための手段】
【0091】
架橋、脱水および潤滑によって付与されたレザー様特性を有する、インビトロでフィブリル化されたコラーゲンフィブリルから構成される材料が、本明細書に記載される。なめされ、加脂された動物ハイドと比較して、これらのバイオファブリケーテッド材料は、構造的、組成的および機能的一様性、例えば、有利な実質的に非異方性強度および他の機械的特性ならびにそれらの上面および下面の両方でのトップグレイン様美学を有することができる。
【0092】
その他の実施形態の中でもとりわけ、本発明は、架橋および潤滑コラーゲンフィブリルのネットワークから構成されるバイオファブリケーテッド材料を対象とする。それは、動物供給源または組換えコラーゲンから単離されたコラーゲンから製造されてもよい。それは、実質的に残基を含まないコラーゲンから製造され得る。好ましくは、それは、コラーゲン線維の大きな束、またはエラスチンなどの、レザーの他の非ヒドロキシリシンもしくは非3-ヒドロキシプロリンコラーゲン構成要素を実質的に含まない。この材料は、天然レザーの主要構成要素でもあり、かつフィブリルへのコラーゲン分子のフィブリル化、フィブリルの架橋および架橋フィブリルの潤滑化のプロセスによって製造されるコラーゲンから構成される。天然レザーとは違って、このバイオファブリケーテッド材料は、非異方性の(方向に依存しない)物理的特性を示し、例えば、バイオファブリケーテッド材料のシートは、異なる方向で測定される場合、実質的に同じ弾性および引張り強度を有することができる。天然レザーとは違って、それは、染料およびコーティングの一様な吸収を促進する一様なテクスチャーを有する。美的には、それは、製造容易性のための一様で、一貫したグレインをもたらす。それは、グレインが一方の側(例えば、遠位表面)から他方の側(近位内層)に増加する天然レザーとは違って、両側に実質的に同一のグレイン、テクスチャーおよび他の美的特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】
図1は、階層様式でコラーゲンの組成を示す図である。参照文字(1)は、それぞれのトリプルヘリックスコラーゲンモノマーおよびそれらが、隣接するコラーゲンモノマーに対して集合される仕方を示し;(2)は、縞模様コラーゲンフィブリルを構成する集合コラーゲンを示し;(3)は、より大きい尺度でコラーゲンフィブリルを示し;(4)は、線維に整列されたコラーゲンフィブリルを示し;および(5)は、コラーゲン線維の束を示す。
【
図2】
図2Aは、バッファローハイドの組成を示す写真である。トップグレイン層および下にある真皮層が示され、コラーゲンフィブリルからコラーゲン線維束への高次組織化の相対度合いが示される。トップグレイン層は、微細なコラーゲンフィブリルからほとんど構成されるが、真皮層は、より粗いコラーゲン線維および線維束からほとんど構成される。
図2Bおよび
図2Cは、一方の側の微細グレインおよび他方の側のより粗い真皮を描写する、レザーの外面および内面のテクスチャーおよびグレインを比較する。
【
図3】
図3Aは、微細コラーゲンフィブリルのネットワークを示す、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルの走査型電子顕微鏡写真である。
図3Bは、より粗い線維束を示す、ウシ真皮の走査電子顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、フィブリルバンディング(fibril banding)を示す、フィブリル化コラーゲンネットワークまたはヒドロゲルの透過型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本明細書で使用される場合の「バイオファブリケーテッド材料」または「バイオファブリケーテッドレザー」は、コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質から製造された材料である。それは、組換え的に産生されたまたは化学的に合成された、哺乳動物または動物細胞のインビトロ培養によって、例えば、ウシ(bovine)、バッファロー、雄牛、シカ、ヒツジ、ヤギ、またはブタのコラーゲンなどの非ヒトコラーゲン(これは、動物ハイドのような天然源から単離されてもよい)から製造することができる。それは、動物スキンから製造される従来の材料またはレザーではない。このバイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーを製造するための方法が、本明細書で開示され、通常、コラーゲン分子の単離または精製された溶液または懸濁液をフィブリル化して、コラーゲンフィブリルを生成させ、フィブリルを架橋し、フィブリルを脱水し、およびフィブリルを潤滑することを伴う。
【0095】
異質の内部コラーゲン構造を示す天然レザーと対照的に、バイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーは、その体積全体を通しての非束かつランダム配向コラーゲンフィブリルを特徴とする実質的に一様な内部構造を示すことができる。
【0096】
得られたバイオファブリケーテッド材料は、天然レザーが使用されるいずれの様式で使用されてもよく、本物のレザーと外観および感触で極めて同様であり得る一方で、それを普通のレザーと区別する組成的、機能的または美的特徴を有する。例えば、天然レザーとは違って、バイオファブリケーテッドレザーは、天然レザーに見出される潜在的にアレルギー性の非コラーゲンタンパク質または構成要素を含む必要がなく、バイオファブリケーテッドレザーは、そのコラーゲンフィブリルの実質的な非整列のためにすべての方向で同様の可撓性および強度を示し得(非異方性)、かつ美的には、両側に滑らかなグレインテクスチャーを有し得る。バイオファブリケーテッドレザーは、一様な厚さおよび粘稠度、潤滑剤、架橋剤および染料の一様な分布、一様な非異方性強度、伸張、可撓性、および耐パイピング性(または天然レザーがシートの平面に平行に分離または割れる傾向)を含めて、特性の一様性を示し得る。コラーゲンおよび加工条件の内容を選択することによって、バイオファブリケーテッドレザーは、特定の厚さ、粘稠度、可撓性、軟度、ドレープ、表面テクスチャーまたは他の機能性に「調整する」ことができる。積層、層状化または複合製品は、バイオファブリケーテッドレザーを含んでもよい。
【0097】
用語「コラーゲン」は、I型ないしXX型コラーゲンを含めて、公知のコラーゲン型のいずれか1つ、ならびに天然、合成、半合成、または組換えにかかわらず、任意の他のコラーゲンを指す。それは、本明細書に記載されるコラーゲン、修飾コラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質のすべてを含む。この用語は、プロコラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質またはモチーフ(Gly-X-Y)n(ここで、nは整数である)を含むコラーゲン性タンパク質も包含する。それは、コラーゲンおよびコラーゲン様タンパク質の分子、コラーゲン分子の三量体、コラーゲンのフィブリル、ならびにコラーゲンフィブリルの線維を包含する。それはまた、フィブリル化され得る、化学的、酵素的または組換え的に修飾されたコラーゲンまたはコラーゲン様分子、ならびにナノファイバーに集合することができる、コラーゲンの断片、コラーゲン様分子およびコラーゲン性分子を指す。
【0098】
一部の実施形態において、コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質中のアミノ酸残基、例えば、リシンおよびプロリンは、ヒドロキシル化を欠いてもよいか、または対応する天然もしくは未修飾のコラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク質よりも少ないかもしくは多いヒドロキシル化度を有してもよい。他の実施形態において、コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質中のアミノ酸残基は、グリコシル化を欠いてもよいか、または対応する天然もしくは未修飾のコラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク質よりも少ないもしくは多いグリコシル化度を有してもよい。
【0099】
コラーゲン組成物中のコラーゲンは、単一型のコラーゲン分子、例えば、100%ウシI型コラーゲンもしくは100%III型ウシコラーゲンを均一に含んでもよいか、または異なる種類のコラーゲン分子もしくはコラーゲン様分子の混合物、例えば、ウシI型分子とIII型分子との混合物を含んでもよい。このような混合物は、>0%、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、99または<100%の個別のコラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質構成要素を含んでもよい。この範囲には、中間値のすべてが含まれる。例えば、コラーゲン組成物は、30%のI型コラーゲンおよび70%のIII型コラーゲンを含んでもよいか、または33.3%のI型コラーゲン、33.3%のII型コラーゲン、および33.3%のIII型コラーゲンを含んでもよく、ここで、コラーゲンのパーセンテージは、組成物中のコラーゲンの総質量、またはコラーゲン分子の分子パーセンテージに基づく。
【0100】
「コラーゲンフィブリル」は、トロポコラーゲン(コラーゲン分子のトリプルヘリックス)から構成されるナノファイバーである。トロポコラーゲンには、トリプルヘリックス構造を示すトロポコラーゲン様構造も含まれる。本発明のコラーゲンフィブリルは、1nm~1μmの範囲の直径を有してもよい。例えば、本発明のコラーゲンフィブリルは、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000nm(1μm)の範囲の平均または個別のフィブリル直径を有してもよい。この範囲には、中間値および部分範囲のすべてが含まれる。本発明の実施形態の一部において、コラーゲンフィブリルは、例えば、
図3および
図4に描写されたとおりに、ネットワークを形成する。コラーゲンフィブリルは、
図1に示されるとおりの縞模様パターンを示すフィブリルに会合することができ、これらのフィブリルは、フィブリルのより大きな集合体に会合することができる。一部の実施形態において、コラーゲンまたはコラーゲン様フィブリルは、ウシまたは他の従来のレザーのトップグレインまたは表面層におけるものと同様の直径および配向を有する。他の実施形態において、コラーゲンフィブリルは、トップグレインおよび従来のレザーの真皮層のものを含む直径を有してもよい。
【0101】
「コラーゲン線維」は、
図1に示されるとおりにきつく充填されており、かつ線維の方向に高い整列度を示すコラーゲンフィブリルから構成される。それは、1μm超~10μm超、例えば、>1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12μmまたはそれ以上の直径で変化し得る。本発明のコラーゲンフィブリルのネットワークの一部の実施形態は、5μmより大きい直径を有するコラーゲンフィブリルの実質的な含有量を含まない。
図2に示されとおりに、レザーのグレイン表面の組成は、そのより内側の部分、例えば、より粗い線維束を含む真皮と異なり得る。
【0102】
「フィブリル化」は、コラーゲンフィブリルを生じさせるプロセスを指す。それは、コラーゲン溶液または懸濁液のpHを上昇させることによって、または塩濃度を調整することによって行われてもよい。フィブリル化コラーゲンの形成において、コラーゲンは、1分~24時間および中間値のすべてを含めて、任意の適切な時間の長さの間、フィブリルを形成するためにインキュベートされてもよい。
【0103】
本明細書に記載されるフィブリル化コラーゲンは、一般に平坦なシート、曲がった形状/シート、円柱、糸、および複雑な形状を含めて、任意の適切な形状および/または厚さで形成されてもよい。これらのシートおよび他の形態は、10、20、30、40、50、60、70、80、90mmより大きく;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、500、1,000、1,500、2,000cmまたはそれ以上の厚さ、幅または高さを含む実質的に任意の線寸法を有してもよい。
【0104】
バイオファブリケーテッドレザー中のフィブリル化コラーゲンは、なんらかのまたはなんらかの実質的な量の高次構造を欠いてもよい。好ましい実施形態において、バイオフィブリケーテッドレザー中のコラーゲンフィブリルは、非束であり、かつ動物スキンに見出される大きなコラーゲン線維を形成せず、バイオファブリケーテッドレザーに対して強く、一様な非異方性構造を与える。
【0105】
他の実施形態において、一部のコラーゲンフィブリルは、高次構造に束ねられ、または配列され得る。バイオファブリケーテッドレザー中のコラーゲンフィブリルは、0、>0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、<1.0、または1.0の範囲の配向指数を示し、ここで、0の配向指数は、他のフィブリルとの整列を欠くコラーゲンフィブリルを表し、1.0の配向指数は、完全に整列されているコラーゲンフィブリルを表す。この範囲には、中間値および部分範囲のすべてが含まれる。当業者は、Sizeland et al., J. Agric. Food Chem. 61:887-892頁(2013) またはBasil-Jones et al., J. Agric. Food Chem. 59: 9972-9979 頁(2011)への参照によりまた組み込まれている配向指数に精通している。
【0106】
本明細書に開示される方法は、同じ型のコラーゲンを発現する動物によって産生されるものと直径で異なるコラーゲンフィブリルを含むバイオファブリケーテッドレザーを製造することを可能にする。天然コラーゲンの特性、例えば、フィブリル直径およびフィブリル間の架橋度は、動物の種または種族などの遺伝的および環境的因子、ならびに動物の状況、例えば、脂肪の量、飼料(例えば、穀物、草)の種類、および運動のレベルによって影響を受ける。
【0107】
バイオファブリケーテッドレザーは、動物の特定の種もしくは種族、または特定の条件下で飼育された動物によって産生されるコラーゲンフィブリルの特性に似ており、または模倣するコラーゲンフィブリルを含むように、フィブリル化および加工されてもよい。
【0108】
代わりに、フィブリル化および加工条件は、例えば、天然レザーのフィブリルと比較してフィブリル直径、整列度、または架橋度を減少または増加させることによって、天然に見出されるものと区別できるコラーゲンフィブリルを与えるように選択され得る。
【0109】
ヒドロゲルと呼ばれることもある、コラーゲンの架橋ネットワークは、コラーゲンがフィブリル化されるときに形成されてもよいか、またはフィブリル化後にネットワークを形成してもよく;一部の変形では、コラーゲンのフィブリル化のプロセスも、ゲル様ネットワークを形成する。一旦形成されると、フィブリル化コラーゲンネットワークは、クロム、アミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジン、スルフィドリル、ジアザリン、アリール-、アジド、アクリレート、エポキシド、またはフェノールを含む二-、三-、または多官能性反応基を分子に組み込むことによってさらに安定化されてもよい。
【0110】
フィブリル化コラーゲンネットワークはまた、他の作用物質(例えば、重合することができるポリマー、または他の適当な繊維)と重合されてもよく、これは、そのマトリックスをさらに安定化し、および所望の最終構造を与えるために使用され得る。アクリルアミド、アクリル酸、およびそれらの塩に基づくヒドロゲルは、逆懸濁重合を使用して調製されてもよい。本明細書に記載されるヒドロゲルは、極性モノマーから調製されてもよい。使用されるヒドロゲルは、天然ポリマーヒドロゲル、合成ポリマーヒドロゲル、またはこれら2種の組合せであってもよい。使用されるヒドロゲルは、グラフト重合、架橋重合、水溶性ポリマーから形成されるネットワーク、放射線架橋などを使用して得られてもよい。少量の架橋剤がヒドロゲル組成物に添加されて、重合を増進させてもよい。
【0111】
平均または個別のコラーゲンフィブリル長は、バイオファブリケーテッドレザーの厚さ全体にわたって、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000(1μm);5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000μm(1mm)の範囲であってもよい。これらの範囲はすべての中間値および部分範囲を含む。
【0112】
フィブリルは、それらの長さの50、100、200、300、400、500μmまたはそれ以上を上回る他のフィブリルと整列してもよいか、またはほとんどもしくはまったく整列を示さなくてもよい。他の実施形態において、一部のコラーゲンフィブリルは、高次構造に束ね、または整列させることができる。
【0113】
バイオファブリケーテッドレザー中のコラーゲンフィブリルは、0、>0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、<1.0、または1.0の範囲の配向指数を示し、ここで、0の配向指数は、他のフィブリルとの整列を欠くコラーゲンフィブリルを表し、1.0の配向指数は、完全に整列されているコラーゲンフィブリルを表す。この範囲には、中間値および部分範囲のすべてが含まれる。当業者は、Sizeland et al., J. Agric. Food Chem. 61:887-892 頁(2013) またはBasil-Jones et al., J. Agric. Food Chem. 59: 9972-9979 頁(2011)への参照によりまた組み込まれている配向指数に精通している。
【0114】
バイオファブリケーテッドレザーのコラーゲンフィブリル密度は、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、または1,000mg/ccなどのすべての中間値を含めて、約1から1,000mg/cc、好ましくは5から500mg/ccの範囲であってもよい。
【0115】
バイオファブリケーテッドレザー中のコラーゲンフィブリルは、単峰性、二峰性、三峰性、または多峰性分布を示してもよく、例えば、バイオファブリケーテッドレザーは、2つの異なる峰(mode)の一方の周りに配置されたフィブリル直径の異なる範囲をそれぞれ有する、2つの異なるフィブリル調製物から構成されてもよい。このような混合物は、異なる直径を有するフィブリルによって与えられるバイオファブリケーテッドレザーに、物理的特性の加成的、相乗的な物理的特性または物理的特性の均衡を付与するように選択されてもよい。
【0116】
天然レザー製品は、レザー製品の重量に基づいて150~300mg/ccのコラーゲンを含有してもよい。バイオファブリケーテッドレザーは、バイオファブリケーテッドレザーの重量に基づいて、従来のレザーと同様の、コラーゲンまたはコラーゲンフィブリルの含有量、例えば、100、150、200、250、300または350mg/ccのコラーゲン濃度を含んでもよい。
【0117】
ヒドロゲルと呼ばれることもある、フィブリル化コラーゲンは、その最終用途に基づいて選択される厚さを有してもよい。フィブリル化コラーゲンのより密なまたは濃縮された調製物は、一般により厚いバイオファブリケーテッドレザーを生成する。バイオファブリケーテッドレザーの最終厚さは、架橋、脱水および潤滑によって引き起こされる収縮前のフィブリル調製物のもののわずか10、20、30、40、50、60、70、80または90%であってもよい。
【0118】
「架橋」は、コラーゲン分子間内の化学結合の形成(または再形成)を指す。架橋反応は、コラーゲン構造を安定化させ、一部の場合には、コラーゲン分子間のネットワークを形成する。当技術分野で公知の任意の適当な架橋剤が、限定することなく、クロムをベースとするものなどの無機塩、ホルムアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ポリエポキシ化合物、ガンマ線、およびリボフラビンと一緒の紫外線を含めて、使用され得る。架橋は、任意の公知の方法によって行うことができ;例えば、それらのそれぞれが参照により組み込まれている、Bailey et al., Radiat. Res. 22:606-621 頁(1964) ; Housley et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 67:824-830 頁(1975);Siegel, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 71:4826-4830 頁(1974);Mechanic et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 41:1597-1604 頁(1970);およびShoshan et al., Biochim, Biophys. Acta 154:261-263 頁(1968)を参照されたい。
【0119】
架橋剤には、イソシアネート、カルボジイミド、ポリ(アルデヒド)、ポリ(アジリジン)、無機塩、ポリ(エポキシ)、酵素、チイラン、フェノール樹脂、ノボラック、レゾール、およびリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシプロリン、またはヒドロキシリシンなどのアミノ酸側鎖と反応する化学的性質を有する他の化合物が含まれる。
【0120】
コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質は、コラーゲンフィブリル間の化学的または物理的架橋を促進するように化学的に修飾されてもよい。化学的架橋は、コラーゲン分子上のリシン、グルタミン酸、およびヒドロキシル基などの反応基がコラーゲンの棒様フィブリル構造から突き出ているので可能であり得る。これらの基を含む架橋は、コラーゲン分子が応力下で互いを過ぎて滑ることを妨げ、したがってコラーゲン線維の機械的強度を増加させる。化学的架橋反応の例には、限定されないが、リシンのε-アミノ基との反応、またはコラーゲン分子のカルボキシル基との反応が含まれる。トランスグルタミナーゼなどの酵素も、グルタミン酸とリシンの間の架橋を生成して、安定なγ-グルタミル-リシン架橋を形成するために使用されてもよい。隣接するコラーゲン分子の官能基間の架橋の誘導は、当技術分野で公知である。架橋は、フィブリル化コラーゲンヒドロゲル由来の材料から得られる物理的特性を調整するために本明細書で行うことができる別のステップである。
【0121】
まだフィブリ化している、またはフィブリル化されたコラーゲンが、架橋または潤滑されてもよい。コラーゲンフィブリルは、ネットワーク形成前、ネットワーク形成、またはネットワークゲル形成の間に、クロムもしくは少なくとも1種のアルデヒド基を含む化合物、または植物性タンニンで処理され得る。架橋は、フィブリル化コラーゲンレザーをさらに安定化する。例えば、アクリルポリマーで前処理され、続いて植物性タンニン、例えば、モリシマアカシア(Acacia Mollissima)で処理されたコラーゲンフィブリルは、熱水安定性の増加を示す。他の実施形態において、グリセルアルデヒドが、架橋剤として使用されて、フィブリル化コラーゲンの熱安定性、タンパク質分解耐性、および機械的特性、例えば、ヤング率および引張り応力を増加させてもよい。
【0122】
コラーゲンフィブリルのネットワークを含むバイオファブリケーテッド材料は、従来のレザーのために使用されるなめし剤を含めて、0、>0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20%またはそれ以上の架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、コラーゲンフィブリルもしくはバイオファブリケーテッド材料の他の構成要素に共有結合していても、またはそれらと非共有結合的に会合していてもよい。好ましくは、バイオファブリケーテッドレザーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10%以下の架橋剤を含む。
【0123】
「潤滑すること(lubricating)」は、潤滑剤、例えば、脂肪もしくは他の親油性化合物、または脱水の間にフィブリル-フィブリル結合を調節または制御する任意の材料を、コラーゲンを含むレザーまたはバイオファブリケーテッド製品に適用するプロセスを表す。レザー美学の望ましい特徴は、材料の剛性または手触りである。この特性を達成するために、フィブリルおよび/または線維間の水媒介水素結合は、潤滑剤の使用によってレザーで制限される。潤滑剤の例には、脂肪、生物油、鉱油もしくは合成油、タラ油、スルホン化油、ポリマー、有機官能性シロキサン、ならびに従来のレザーを加脂するために使用される他の親油性化合物または作用物質、ならびにそれらの混合物が含まれる。潤滑することは、いくつかの点で天然レザーに加脂することに類似しているが、バイオファブリケーテッド製品は、その製造方法、より均一な組成およびあまり複雑でない組成のために、潤滑剤でより一様に処理することができる。
【0124】
他の潤滑剤には、界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー界面活性剤、アニオン性ポリマー界面活性剤、両親媒性ポリマー、脂肪酸、変性脂肪酸、ノニオン性親水性ポリマー、ノニオン性親油性ポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル樹脂、天然ゴム、合成ゴム、樹脂、両親媒性アニオン性ポリマーおよびコポリマー、両親媒性カチオン性ポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの混合物、ならびに水、アルコール、ケトン、および他の溶媒中にこれらのエマルションまたは懸濁液が含まれる。
【0125】
潤滑剤は、コラーゲンフィブリルを含むバイオファブリケーテッド材料に添加されてもよい。潤滑剤は、フィブリルの移動を容易にする、または可撓性などのレザー様特性、脆性の減少、耐久性、または耐水性を与える任意の量で組み込まれてもよい。潤滑剤含有量は、バイオファブリケーテッドレザーの約0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、50、55、および60重量%の範囲であり得る。
【0126】
「脱水すること(dehydrating)」または「排水すること(dewatering)」は、コラーゲンフィブリルと水とを含有する混合物、例えば、フィブリル化コラーゲンを含有する水溶液、懸濁液、ゲル、またはヒドロゲルから水を除去するプロセスを表す。水は、濾過、蒸発、凍結乾燥、溶媒交換、真空乾燥、循環乾燥、加熱、照射もしくはマイクロ波をかけることによって、または水を除去するための他の公知の方法によって除去されてもよい。さらに、コラーゲンの化学的架橋は、親水性アミノ酸残基、例えば、中でもリシン、アルギニン、およびヒドロキシリシンを消費することによってコラーゲンから結合水を除去することが公知である。本発明者らは、アセトンがコラーゲンフィブリルを迅速に脱水し、水和コラーゲン分子に結合した水も除去し得ることを見出した。脱水後のバイオファブリケーテッド材料またはレザーの水含有量は、好ましくは、バイオファブリケーテッドレザーの60重量%以下、例えば、5、10、15、20、30、35、40、50または60重量%以下である。この範囲に中間値のすべてが含まれる。水含有量は、25℃および1気圧で65%相対湿度における平衡によって測定される。
【0127】
「グレインテクスチャー」は、フルグレインレザー、トップグレインレザー、修正グレインレザー(ここでは、人工グレインが適用された)のテクスチャー、またはより粗いスプリットグレインレザーテクスチャと美的またはテクスチャー的に同様であるレザー様テクスチャーを表す。有利には、本発明のバイオファブリケーテッド材料は、
図2A、
図2Bおよび
図2Cにより描写されるようなレザーの表面グレインに似ている、微細なグレインを与えるように調整することができる。
【0128】
「バイオファブリケーテッドレザー製品」には、履物類、衣服、手袋、家具または車両用室内装飾材料ならびに他のレザー品および製品などの、バイオファブリケーテッドレザーの少なくとも1種の構成要素を含む製品が含まれる。それには、限定されないが、衣類、例えば、オーバーコート、コート、ジャケット、シャツ、ズボン、パンツ、ショーツ、水着、下着、ユニホーム、標章または文字、衣装、ネクタイ、スカート、ドレス、ブラウス、レギンス、手袋、ミトン、履物類、靴、靴部品、例えば、ソール、クオーター、舌革、カフ、細革、および月型、ドレス靴、運動靴、ランニング靴、カジュアル靴、運動、ランニングまたはカジュアル靴部品、例えば、つま革、トウボックス、アウトソール、ミッドソール、アッパー、レース、アイレット、カラー、ライニング、アキレスノッチ、ヒール、およびカウンター、ファッションまたは婦人靴、およびそれらの靴部品、例えば、アッパー、アウターソール、トウスプリング、トウボックス、デコレーション、バンプ、ライニング、ソック、インソール、プラットフォーム、カウンター、およびヒールまたはハイヒール、ブーツ、サンダル、ボタン、サンダル、ハット、マスク、ヘッドギア、ヘッドハンド、ヘッドラップ、ならびにベルト;ジュエリー、例えば、ブレスレット、時計バンド、およびネックレス;手袋、傘、ステック、札入れ、携帯電話または着用できるコンピューター覆い、パース、バックパック、スーツケース、ハンドバッグ、フォリオ(folio)、フォルダー、ボックス、および他の個人用オブジェクト;アスレチック、スポーツ、ハンティングまたはレクレーション用ギア、例えば、馬具、馬勒、手綱、ビット、綱(leash)、ミット、テニスラケット、ゴルフクラブ、ポロ、ホッケー、またはラクロスギア、チェスボードおよびゲームボード、メディシンボール、キックボール、ベースボール、および他の種類のボール、ならびに玩具;製本、ブックカバー、写真フレームまたは手工芸品;イス、ソファ、ドア、シート、オットマン、間仕切り、コースター、マウスパッド、デスクブロッタ、または他のパッド、テーブル、ベッド、床、壁または天井覆い、床材を含む、家具および家庭、オフイスまたは他の室内もしくは屋外備品;シート、ヘッドレスト、室内装飾材料、パネル用材、ハンドル、ジョイスティックまたは制御の覆い、および他のラップまたは覆いを含む、自動車、ボート、航空機および他の車両用製品が含まれる。
【0129】
レザー製品の多くの使用は、レザーが縫合された場合でさえも、破れずまたは裂けない耐久性製品を必要とする。縫合レザーを含み、かつ耐久性レザーを必要とする典型的な製品には、自動車ハンドルカバー、自動車シート、家具、スポーツ用品、スポーツ靴、スニーカー、時計ストラップなどが含まれる。これらの製品の性能を改善するためにバイオファブリケーテッドレザーの耐久性を増加させる必要がある。本発明によるバイオファブリケーテッドレザーは、これらの製品のいずれかを作製するために使用することができる。
【0130】
コラーゲンフィブリルのバイオファブリケーテッドネットワークまたはバイオファブリケーテッドレザーの物理的特性は、コラーゲンの型、フィブリル化されたコラーゲンの濃度の量、フィブリル化、架橋、脱水、および潤滑の度合いを選択することによって選択または調整されてもよい。
【0131】
多くの有利な特性は、得られたバイオファブリケーテッド材料またはレザーに強く、可撓性で、かつ実質的に一様な特性を与え得る、コラーゲンフィブリルのネットワーク構造と関連している。本発明によるバイオファブリケーテッドレザーの好ましい物理的特性には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15MPaまたはそれ以上の範囲の引張り強度、1、5、10、15、20、25、30%またはそれ以上の範囲の破断点伸びにより決定される可撓性、4、5、6、7、8mm以上のISO17235により決定される軟度、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mmまたはそれ以上の範囲の厚さ、および10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000mg/ccまたはそれ以上、好ましくは100~500mg/ccのコラーゲン密度(コラーゲンフィブリル密度)が含まれる。上記範囲には、部分範囲および中間値のすべてが含まれる。
【0132】
厚さ。その最終用途に依存して、バイオファブリケーテッド材料またはレザーは、任意の厚さを有してもよい。その厚さは、好ましくは約0.05mm~20mmおよびこの範囲内の任意の中間値、例えば、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50mmまたはそれ以上の範囲である。バイオファブリケーテッドレザーの厚さは、コラーゲン含有量を調整することによって制御され得る。
【0133】
弾性率。弾性率(ヤング率としても公知である)は、物体または物質に力がかけられる場合に弾性的(すなわち、非永久的に)に変形されることに対するその抵抗性を測定する数字である。物体の弾性率は、弾性変形領域におけるその応力-歪曲線の傾きと定義される。材料が硬ければ硬いほど、弾性率は高くなる。弾性率は、テクスチャーアナライザーを使用して測定され得る。
【0134】
バイオファブリケーテッドレザーは、少なくとも100kPaの弾性率を有し得る。それは、100kPa~1,000MPaおよびこの範囲内の任意の中間値、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1,000MPAの範囲であり得る。バイオファブリケーテッドレザーは、その緩和状態長さから300%まで、例えば、その緩和状態長さの>0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、または300%だけ伸びることができてもよい。
【0135】
引張り強度(極限引張り強度としても公知である)は、寸法を減少させる傾向の荷重に耐える、圧縮強度とは対照的に、伸びる傾向の荷重に耐える材料または構造の能力である。引張り強度は、張力または引き離されることに抵抗するが、圧縮強度は、圧縮または一緒に押されることに抵抗する。
【0136】
バイオファブリケーテッド材料の試料は、インストロン機を使用して引張り強度について試験されてもよい。クランブが試料の端部に取り付けられ、試料は、破損まで反対方向に引っ張られる。良好な強度は、試料が少なくとも1MPaの引張り強度を有する場合に実証される。バイオファブリケーテッドレザーは、少なくとも1kPAの引張り強度を有し得る。それは、1kPa~100MPaおよびこの範囲内の任意の中間値、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、300、400、500kPA;0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.3、1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100MPaの範囲であり得る。
【0137】
引裂き強度(引裂き抵抗としても公知である)は、材料が引裂きの作用にいかに良く耐え得るかの尺度である。しかしながら、より具体的には、それは、材料(通常はゴム)が張力下のときに任意の切り込みの成長にいかに良く抵抗するかであり、それは通常kN/mで測定される。引裂き抵抗は、ASTM D412方法(引張り強度、モジュラスおよび伸びを測定するために使用された同じもの)によって測定され得る。ASTM D624は、引裂きの形成(引裂き開始)に対する抵抗および引裂きの拡大(引裂き伝播)に対する抵抗を測定するために使用され得る。これらの2つのどちらが測定されるかにかかわらず、試料は、2つのホルダー間に保持され、前述の変形が起こるまで一様な引張り力がかけられる。次いで、引裂き抵抗が、かけられた力を材料の厚さで除すことによって計算される。バイオファブリケーテッドレザーは、同じ架橋剤(単数もしくは複数)または潤滑剤を使用して加工された、従来のトップグレイン、または同じ型のコラーゲン、例えば、ウシI型またはIII型コラーゲンを含む同じ厚さの他のレザーのものよりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、100、150または200%大きい引裂き抵抗を示し得る。バイオファブリケーテッド材料は、約1~500N、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、または500の範囲の引裂き強度およびこの範囲内の任意の中間の引裂き強度も有し得る。
【0138】
軟度。ISO17235:2015は、レザーの軟度を決定するための非破壊的方法を明記する。それは、非剛性レザーのすべて、例えば、靴甲革用レザー、室内装飾材料用レザー、レザー品用レザー、およびアパレル用レザーに適用可能である。バイオファブリケーテッドレザーは、2、3、4、5、7、8、10、11、12mmまたはそれ以上のISO17235により決定された軟度を有し得る。
【0139】
グレイン。レザーのトップグレイン表面は、しばしばその軟らかいテクスチャーおよび滑らかな表面のために最も望ましいとみなされる。トップグレインは、コラーゲンフィブリルの高度に多孔質のネットワークである。グレインの強度および引裂き抵抗は、しばしばトップグレイン単独の実際の用途にとって制限となり、従来のレザー製品は、しばしばはるかにより粗いグレインを有する真皮で裏付けされている。
図2A、
図2Bおよび
図2Cは、トップグレインおよび真皮のレザー表面を比較する。強くかつ一様な物理的特性または増加した厚さを有して製造され得る本明細書で開示されるとおりのバイオファブリケーテッド材料は、真皮裏付けの必要のないトップグレイン様製品を提供するために使用され得る。
【0140】
他の構成要素の含有量。一部の実施形態において、コラーゲンは、エラスチンまたは非構造動物タンパク質などの他のレザー構成要素を含まない。しかしながら、一部の実施形態において、バイオファブリケーテッドレザー中のアクチン、ケラチン、エラスチン、フィブリン、アルブミン、グロブリン、ムチン、ムチン様物、非コラーゲン構造タンパク質、および/または非コラーゲン非構造タンパク質の含有量は、バイオファブリケーテッドレザーの0、1、2、3、4、5、7、8、9~10重量%の範囲であってもよい。他の実施形態において、アクチン、ケラチン、エラスチン、フィブリン、アルブミン、グロブリン、ムチン、ムチン様物、非コラーゲン構造タンパク質、および/または非コラーゲン非構造タンパク質の含有量は、バイオファブリケーテッドレザー中にバイオファブリケーテッドレザーの>0、1、2、3、4、5、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20重量%またはそれ以上の範囲の量でバイオファブリケーテッドレザーに組み込まれてもよい。このような構成要素は、フィブリル化、架橋、脱水、または潤滑の間または後に導入されてもよい。
【0141】
「レザー用染料」は、レザーまたはバイオファブリケーテッドレザーを着色するために使用され得る染料を指す。これらには、酸性染料、直接染料、レーキ、硫黄染料、塩基性染料および反応染料が含まれる。染料および顔料も、バイオファブリケーテッドレザーの前駆体中に、例えば、バイオファブリケーテッドレザーの製造の間にコラーゲンフィブリルを含む懸濁液またはネットワークゲル中に組み込むことができる。
【0142】
「充填剤」。一部の実施形態において、ファブリケーテッドレザーは、レザーの構成要素以外の充填剤、例えば、ミクロスフェアを含んでもよい。脱水フィブリルネットワークの組織化を制御する様式の1つは、脱水の間に間隙を介してフィブリルを保つ充填材料を含むことである。これらの充填剤材料には、ナノ粒子、ミクロ粒子、または様々なポリマー、例えば、なめし工業で一般に使用されるシンタンが含まれる。これらの充填材料は、最終脱水レザー材料の一部であり得るか、または充填材料は、犠牲にされ得る、すなわち、それらは、より多孔質のフィブリルネットワークのための空間を残して分解または溶解除去される。これらの充填剤の形状および寸法はまた、脱水フィブリルネットワークの配向を制御するために使用されてもよい。
【0143】
一部の実施形態において、充填剤は、ポリマー性ミクロスフェア(単数もしくは複数)、ビーズ(単数もしくは複数)、繊維(単数もしくは複数)、ワイヤ(単数もしくは複数)、または有機塩(単数もしくは複数)を含んでもよい。他の材料がまた、ファブリケーテッドレザー中に、または本発明によるコラーゲンフィブリルのネットワーク中に包埋されても、またはそうでなければ、組み込まれてもよい。これらには、限定されないが、一種の繊維、例えば、織りおよび不織の両繊維ならびに綿、羊毛、カシミール、アンゴラ、リネン、竹、靭皮、麻、大豆、シーセル、牛乳または牛乳タンパク質から製造された繊維、絹、スパイダーシルク、組換え的に製造されたペプチドまたはポリペプチドを含む他のペプチドまたはポリペプチド、キトサン、菌糸体、細菌セルロースを含むセルロース、木質繊維を含む木材、レーヨン、リヨセル、ビスコース、抗菌性ヤーン(A.M.Y.)、Sorbtek、ナイロン、ポリエステル、エラストマー、例えば、ライクラ(登録商標)、スパンデックスまたはエラスタンおよび他のポリエステル-ポリウレタンコポリマー、アラミド、炭素繊維およびフラーレンを含む炭素、ガラス繊維および不織布を含むガラス、シリコンおよびシリコン含有化合物、鉱物粒子および鉱物繊維を含む鉱物、ならびに金属または金属合金、例えば、粒子、繊維、ワイヤの形態またはバイオファブリケーテッドレザー中に組み込むために適した他の形態であってもよい、鉄、鋼、鉛、金、銀、白金、銅、亜鉛およびチタンを含むものが含まれる。このような充填剤には、導電性材料、磁気材料、フルオレッセント材料、バイオルミネッセント材料、ファスフォレッセント材料もしくは他のフォトルミネッセント材料、またはそれらの組合せが含まれる。これらの構成要素の混合物またはブレンドも、例えば、本明細書で開示される化学的および物理的特性を改変するために、バイオファブリケーテッドレザー中に包埋されてもまたは組み込まれてもよい。
【0144】
作製する方法。コラーゲンからバイオファブリケーテッドレザーを形成する方法は、任意の順序でフィブリル化、架橋、脱水/排水(dehydrating/dewatering)および潤滑のステップを含む。例えば、コラーゲン溶液が、フィブリル化されてもよく、フィブリルは、グルタルアルデヒドなどの作用物質で架橋され、次いで、亜硫酸化油などの潤滑剤でコーティングされ、次いで、濾過により脱水されて、フィブリル化コラーゲンレザーを形成してもよい。しかしながら、作製方法は、ステップのこの特定の順序に限定されない。
【0145】
代わりに、フィブリル架橋に続いて、フィブリルは、アセトンとの溶媒交換によって脱水し、続いて、亜硫酸化油で加脂し、その後、溶媒を蒸発させて、フィブリル化コラーゲンレザーを形成することができる。さらに、フィブリル間の化学的または物理的架橋の組込み(材料強度を付与するための)は、プロセス中のいずれの時点で行うこともできる。例えば、ヒドロゲルと呼ばれることもある、固体フィブリル化コラーゲンを形成することができ、次いで、このフィブリルネットワークをアセトンとの溶媒交換によって脱水し、続いて、亜硫酸化油で加脂することができる。さらに、コラーゲンフィブリルは、典型的には樹脂配合物中で使用されるものなどの他のポリマーの組込みによってネットワーク中に架橋することができる。
【0146】
潤滑剤、保湿剤、染料および他の処理剤などの材料は、バイオファブリケーションプロセスの間にバイオファブリケーテッドレザー製品にわたって一様に分布させることができる。これは、その構造的異質性のためにしばしば一様な処理を不可能にする従来のレザーなめしおよび加脂と比較して有利である。さらに、化学剤はネットワーク形成前に組み込むことができるので、処理化学薬品を含有するフロート(float)からコラーゲンネットワークに浸透する必要がないことによって化学的損失が減少するので、より少ない量の処理化学薬品が必要となる。天然レザーを処理するためにしばしば使用される高温とは違って、バイオファブリケーテッドレザーは、溶媒を蒸発させる前の加工の間に周囲温度または37℃以下の温度で加熱して、フィブリル化コラーゲンレザーを形成することができる。代わりに、コラーゲンフィブリルは、懸濁液中で架橋および潤滑され、その後、脱水の間にまたは懸濁液もしくは脱水材料への結合剤の添加によってフィブリル間のネットワークを形成することができる。
【0147】
バイオファブリケーテッドレザー材料を形成する方法は、溶液中でコラーゲンのフィブリル化を誘導すること;ヒドロゲルの形態で現れてもよいフィブリル化コラーゲンを架橋(例えば、なめすこと)および脱水して、フィブリル化コラーゲンシートまたは他の製品を得ること、ならびに少なくとも1種の保湿剤または潤滑剤、例えば、脂肪または油をフィブリル化コラーゲンシートまたは製品に組み込んで、可撓性バイオファブリケーテッドレザーを得ることを含んでもよい。
【0148】
レザーをフィブリルからバイオファブリケートする方法は、溶液中でコラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質のフィブリル化を誘導して、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルを得ること;フィブリル化コラーゲンヒドロゲルを架橋して、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルレザーを得ること;および少なくとも1種の潤滑油をフィブリル化コラーゲンヒドロゲルレザー中に組み込むことを含んでもよい。
【0149】
バイオファブリケーテッドレザーを製造するために本明細書に記載されるプロセスにおいて、バイオファブリケーテッドレザーを形成するためのステップの順序は、変えられてもよく、または2つ以上のステップが同時に行われてもよい。例えば、フィブリル化および架橋が、一緒にもしくは1種以上の作用物質の添加によって行われてもよいか、または架橋剤および潤滑剤が、コラーゲンのフィブリル化の前に溶液に組み込まれてもよい、などである。
【0150】
コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質は、動物供給源からコラーゲンの抽出によって、例えば、限定されないが、ウシハイドまたは腱コラーゲンの抽出によって得られてもよい。代わりに、コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質は、非動物供給源から、例えば、組換えDNA技術、細胞培養技術、または化学的ペプチド合成によって得られてもよい。
【0151】
これらの方法のいずれも、フィブリル化前にコラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク質を二量体、三量体、およびより高次のオリゴマーに重合させること、ならびに/またはコラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク質を化学的に修飾して、コラーゲンもしくはコラーゲン様タンパク質間の架橋を促進することを含んでもよい。
【0152】
これらの方法のいずれも、コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質を、クロム、アミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジド、スルフィドリル、ジアジリン、アリール、アジド、アクリレート、エポキシド、またはフェノール基の1種または組合せで官能化することを含んでもよい。
【0153】
フィブリル化の誘導は、塩または塩の組合せを添加することを含んでもよく、例えば、塩または塩の組合せは、Na3PO4、K3PO4、KClおよびNaClを含んでもよく、各塩の濃度は、10mM~5Mなどであってもよい。
【0154】
一般に、フィブリル化の誘導は、核形成剤、例えば、分岐コラーゲンミクロゲルを添加して、酸または塩基でpHを調整することを含んでもよく、ここで、核形成剤は、1mM~100mMの濃度を有する。
【0155】
フィブリル化コラーゲンは、クロム化合物、アルデヒド化合物、または植物性タンニン、または任意の他の架橋剤で安定化されてもよい。例えば、フィブリル化コラーゲンは、クロム化合物、アルデヒド化合物、または植物性タンニンで安定化されてもよく、ここで、クロム化合物、アルデヒド化合物、または植物性タンニン化合物は、1mM~100mMの濃度を有する。
【0156】
これらの方法のいずれも、フィブリル化コラーゲンの水含有量を5、10、20、25、30、40、50または60重量%またはそれ未満に調整して、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルレザーを得ることを含んでもよい。例えば、フィブリル化コラーゲン材料は、脱水されてもよい。これらの方法のいずれもまた、フィブリル化コラーゲンレザーを染色し、および/または表面仕上げ材を適用することを含んでもよい。
【0157】
本明細書に記載される操作レザー材料をバイオファブリケートするためのコラーゲン出発材料の選択は、制御することができ、得られた製品は、区別できる最終用途のための物理的および美的特性を有して、例えば、履物に有用な特徴、およびアパレルに有用な異なる特徴を有して、異なって形成されてもよい。一般に、本明細書に記載されるバイオファブリケーテッドフィブリル化コラーゲンヒドロゲル由来のレザーは、コラーゲンフィブリルに自己集合するように誘導される、コラーゲンの溶液から形成される。
【0158】
コラーゲンフィブリルは、内因性コラーゲンフィブリルとは違って、いかなる高次構造(例えば、線維の束)も集合されないが、いくらか無秩序のフィブリル、より特には非束フィブリルのままである。インビボで集合される場合、コラーゲンフィブリルは、典型的には横方向に整列されて、高次の構造を有する束を形成し、例えば、スキンに見出される強靭でミクロンサイズのコラーゲン線維を構成する。ネイティブコラーゲンフィブリルの特有の特徴は、それらの縞模様構造である。ネイティブフィブリルの直径は、長さに沿ってわずかに変化し、およそ67nmの高度に再現可能なDバンド繰り返しを有する。本明細書に記載される方法の一部において、コラーゲンフィブリルは、非縞模様および非束であってもよく、または縞模様および非束であってもよく、または1~100nmの範囲およびこの範囲内の中間値のすべて)の異なる間隔のDバンドを有してもよい。コラーゲンフィブリルは、ランダムに配向されていても(例えば、配向されていなくても、またはいずれかの特定の方向もしくは軸に配向されていなくても)よい。
【0159】
本明細書に記載されるとおりのバイオファブリケーテッドレザー材料を形成するために使用される出発材料は、任意の適切な非ヒトコラーゲン供給源またはフィブリル化され得る修飾もしくは操作コラーゲンを含んでもよい。
【0160】
コラーゲンの様々な形態が、動物界の全体を通して見出される。本明細書で使用されるコラーゲンは、脊椎動物および非脊椎動物の両方を含む動物供給源から、または合成供給源から得られてもよい。コラーゲンはまた、既存の動物加工の副産物から供給されてもよい。動物供給源から得られたコラーゲンは、当技術分野で公知の標準的な実験室技術、例えば、Silva et al., Marine Origin Collagens and its Potential Applications, Mar. Drugs, 2014年12月、12(12):5881-5901頁を使用して単離されてもよい。
【0161】
本明細書に記載されるバイオファブリケーテッドレザー材料およびそれらを形成するための方法の主な利点の1つは、コラーゲンが、動物の殺害を必要としない供給源から得られてもよいことである。
【0162】
本明細書に記載されるコラーゲンはまた、バイオリアクターで増殖された細胞からのものを含めて、細胞培養技術によって得られてもよい。
【0163】
コラーゲンはまた、組換えDNA技術によって得られてもよい。非ヒトコラーゲンをコードする構築物が、宿主生物中に導入されて、非ヒトコラーゲンを生産してもよい。例えば、コラーゲンはまた、宿主として、酵母、例えば、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などによって生産されてもよい。さらに、最近になって、トリプルヘリックスコラーゲンに特徴的であるサイン(Gly-Xaa-Yaa)n繰り返しアミノ酸配列を与える細菌ゲノムが同定された。例えば、グラム陽性細菌化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、今日ではよく特徴付けられた構造および機能的特性を有する2種のコラーゲン様タンパク質、Scl1およびScl2を含む。したがって、大規模生産方法を確立するためにScl1またはScl2のいずれかの様々な配列修飾によって組換え大腸菌(E. coli)系で構築物を得ることが可能である。コラーゲンはまた、標準的なペプチド合成技術によって得られてもよい。述べられた技術のいずれかから得られたコラーゲンは、さらに重合されてもよい。コラーゲン二量体および三量体は、溶液中のコラーゲンモノマーの自己会合から形成される。
【0164】
本明細書に記載されるコラーゲン材料の形成における初期ステップとして、出発コラーゲン材料は、溶液中に入れられ、フィブリル化されてもよい。コラーゲンフィブリル化は、コラーゲン溶液への塩の導入によって誘導されてもよい。塩または塩の組合せ、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、塩化カリウム、および塩化ナトリウムのコラーゲン溶液への添加は、コラーゲン溶液のイオン強度を変化させ得る。コラーゲンフィブリル化は、より大きい水素結合、ファンデルワールス相互作用、および共有結合によって、静電的相互作用の増加の結果として起こり得る。適当な塩濃度は、例えば、およそ10mM、50mM、100mM、500mM、1M、2M、3M、4Mから5M、およびこの範囲内の任意の中間値の範囲であってもよい。
【0165】
コラーゲンフィブリル化はまた、塩以外の核形成剤によって誘導または増強されてもよい。核形成剤は、コラーゲンモノマーがその上で互いと密接に接触するようになって、フィブリル化を開始することができ、または複数フィブリルがそこで核形成剤を介して連結される分岐点として作用することができる表面を与える。適当な核形成剤の例には、限定されないが、コラーゲンを含有するミクロゲル、コラーゲンミクロまたはナノ粒子、金属粒子または天然もしくは合成由来の繊維が含まれる。適当な核形成剤濃度は、およそ1mM~100mMの範囲であってもよい。
【0166】
コラーゲンネットワークはまた、pHに対して高度に感受性であってもよい。フィブリル化ステップの間に、pHは、直径および長さなどのフィブリル寸法を制御するために調整されてもよい。コラーゲンフィブリルの全体の寸法および組織化は、得られたフィブリル化コラーゲン由来の材料の強靭性、伸張性、および通気性に影響を与える。これは、異なる強靭性、可撓性、および通気性を必要とし得る様々な用途のためのフィブリル化コラーゲン由来のレザーをファブリケートするための使用のものであってもよい。pHの調整は、塩濃度の変化の有無にかかわらず、フィブリル化のために使用されてもよい。
【0167】
脱水フィブリルネットワークの組織化を制御する様式の1つは、乾燥中に間隔を置いてフィブリルを保つ充填材料を含むことである。これらの充填剤材料には、ナノ粒子、ミクロ粒子、またはなめし工業で一般に使用されるシンタンなどの様々なポリマーが含まれ得る。これらの充填材料は、最終脱水レザー材料の一部であり得るか、または充填材料は、犠牲にされ得、すなわち、それらは、分解もしくは溶解除去されて、より多くの多孔質フィブリルネットワークのための開放空間を残す。
【0168】
コラーゲンまたはコラーゲン様タンパク質は、コラーゲンフィブリル間の化学的および物理的架橋を促進するために化学的に修飾されてもよい。化学的架橋は、コラーゲン分子上のリシン、グルタミン酸、およびヒドロキシル基などの反応基がコラーゲンの棒様フィブリル構造から突き出ているので可能であり得る。これらの基を含む架橋は、コラーゲン分子が応力下で互いを過ぎて滑ることを妨げ、したがってコラーゲン線維の機械的強度を増加させる。化学的架橋反応の例には、限定されないが、リシンのε-アミノ基との反応、またはコラーゲン分子のカルボキシル基との反応が含まれる。トランスグルタミナーゼなどの酵素も、グルタミン酸とリシンの間の架橋を生じて、安定なγ-グルタミル-リシン架橋を形成するために使用されてもよい。隣接するコラーゲン分子の官能基間の架橋の誘導は、当技術分野で公知である。架橋は、フィブリル化コラーゲンヒドロゲル由来材料から得られる物理的特性を調整するために本明細書で行うことができる別のステップである。
【0169】
一旦形成されると、フィブリル化コラーゲンネットワークは、クロム、アミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジン、スルフィドリル、ジアザリン、アリール-、アジド、アクリレート、エポキシド、またはフェノールを含む二-、三-、または多官能性反応基を有する分子を組み込むことによってさらに安定化されてもよい。
【0170】
フィブリル化コラーゲンネットワークはまた、ヒドロゲルを形成し、または繊維状品質を有する他の作用物質(例えば、重合することができるポリマー、または他の適当な繊維)と重合されてもよく、これらは、マトリックスをさらに安定化し、所望の最終構造を与えるために使用され得る。アクリルアミド、アクリル酸、およびそれらの塩に基づくヒドロゲルは、逆懸濁重合を使用して調製されてもよい。本明細書に記載されるヒドロゲルは、極性モノマーから調製されてもよい。使用されるヒドロゲルは、天然ポリマーヒドロゲル、合成ポリマーヒドロゲル、またはそれらの2種の組合せであってもよい。使用されるヒドロゲルは、グラフト重合、架橋重合、水溶性ポリマーから形成されるネットワーク、放射線架橋などを使用して得られてもよい。少量の架橋剤が、ヒドロゲル組成物に添加されて、重合を高めてもよい。
【0171】
フィブリル化コラーゲンヒドロゲルのいずれの適切な厚さも、本明細書に記載されるとおりに作られてもよい。最終厚さはヒドロゲル厚さよりもはるかに少ない(例えば、10~90%より薄い)ので、初期ヒドロゲル厚さは、所望される最終製品の厚さに依存し得、架橋、脱水、および/あるいは1種もしくは複数の油または本明細書に記載されるとおりの他の潤滑剤の添加の間の収縮を含めて、厚さ(または全体体積)に対する変化を推定する。
【0172】
ヒドロゲル厚さは、0.1mm~50cmまたはこの範囲内の任意の中間値であってもよい。フィブリル化ヒドロゲルを形成する際に、ヒドロゲルは、1分~24時間を含めて、任意の適切な時間の長さの間厚さを形成するためにインキュベートされてもよい。
【0173】
本明細書に記載されるフィブリル化コラーゲンヒドロゲルは、一般に、平坦なシート、曲がった形状/シート、円柱、糸、および複雑な形状を含めて、任意の適切な形状および/または厚さで形成されてもよい。さらに、これらの形状の実質的に任意の線形サイズ。例えば、これらのヒドロゲルのいずれも、記載されたとおりの厚さ、および10mm超の長さ(例えば、cm単位で、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500超など)および10mm超、例えば、cm単位で、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1500超などである幅を有するシートに形成されてもよい。
【0174】
一旦、ヒドロゲルとしばしば特徴付けられる、コラーゲンフィブリルが形成されるか、または形成の間であると、それらは架橋されてもよい。例えば、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルは、ゲル形成前、ゲル形成中、またはゲル形成後にクロムもしくは少なくとも1個のアルデヒド基を含有する化合物、または植物性タンニンで処理されて、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルをさらに安定化する。例えば、コラーゲンフィブリルは、アクリルポリマーで前処理され、続いて、植物性タンニン(例えば、モリシマアカシア(Acacia Mollissima))で処理されてよく、水熱安定性の増加を示し得る。他の例において、グリセルアルデヒドが、架橋剤として使用されてもよく、これは、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルの熱安定性、タンパク質分解耐性、および機械的特性(例えば、ヤング率、引張り応力)を増加させ得る。
【0175】
本明細書に記載されるとおりのコラーゲンの溶液のフィブリル化(例えば、束などの高次組織を欠いているコラーゲンフィブリルの形成)は、視覚的に追跡されてもよい。例えば、フィブリル化が誘導されるにつれて、400nmでほとんど吸光度を有しない、コラーゲンの透明溶液は、不透明に、および400nmでおよそ0.5の吸光度を有することになる。出発材料の温度および体積に依存して、フィブリル化およびヒドロゲル形成は、誘導後にいくらか急速に起こり、70分の時間経過後に水平になる吸光度値により示されるように、1時間半後に概ね完了し得る。ほぼ1Pa(コラーゲンの溶液に対して)~およそ400Pa(フィブリル化コラーゲンヒドロゲルについて)の誘導後のフィブリル化コラーゲンヒドロゲルの貯蔵弾性率(または材料の粘弾性品質)の増加が起こり得る。
【0176】
上で述べられ、かつ
図1および
図2で例証されるとおりに、動物スキンは、典型的には、バンディング(規則的裂孔領域を有する)の存在、および複数フィブリルの整列線維への形成(次いで、これは、コラーゲン束に束ねられ得る)を含めて、高次構造に秩序化されるフィブリルを含む。対照的に、コラーゲンハイドロゲル、したがって、本明細書に記載されるバイオファブリケーテッドレザーは、その材料の厚さ全体(場合によっては、体積全体)にわたって初期の無秩序コラーゲンフィブリル構造を有し得る。具体的には、コラーゲンヒドロゲルから形成されたバイオファブリケーテッドレザーのコラーゲン構造は、主として非束およびいずれかの特定の軸に沿って非配向であり得る。一部の変形において、コラーゲンフィブリルは、非縞模様であり得る(例えば、体積全体にわたって、10%超の非縞模様、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%超などの非縞模様)。さらに、体積内の(または体積全体にわたっての)コラーゲンフィブリルの配向は、非配向、またはランダム配向であり得、この配向の欠如は、ネイティブレザーにおけるように体積厚さにわたっての変化(これは、厚さにおいて垂直に配向されているコラーゲンフィブリルの束から水平に配向されている束への変化を有し得る)というよりはむしろ、体積全体にわたって同じであり得る。特性のいずれもヒドロゲルの任意のレベルの厚さで同じであり、したがって、得られたレザー材料は、厚さ全体にわたって「一様に」同じであると本明細書で言及されてもよい。
【0177】
加えて、本明細書に記載されるバイオファブリケーテッドレザー、したがって、得られたレザー材料のいずれも、ゲルの厚さ全体にわたってフィブリルの一様な分布を有し得る。これは、ネイティブレザー、例えば、材料の厚さにわたって線維束の数の増加を示す、
図2に示される材料と対照的である。
【0178】
フィブリル化コラーゲンヒドロゲルおよびそれらから形成されるレザー材料のより高いレベルの組織化の欠如は、
図3Aおよび
図3Bで明らかである。
図3Aは、本明細書に記載されるとおりに形成されたフィブリル化コラーゲンヒドロゲルの走査型電子顕微鏡写真を示す。同様に、
図4は、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルによる透過型電子顕微鏡写真を示す。透過型電子顕微鏡写真および走査型電子顕微鏡写真の両方ともは、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルを、不規則な絡み合ったコラーゲンフィブリルであると示す。前に述べられたとおり、密度およびある程度、コラーゲンフィブリル形成のパターンは、脱水の間にフィブリルの濃度とともに、フィブリル化誘導の間にコラーゲン溶液のpHを調整することによって制御されてもよい。
図3も、ウシ真皮の走査型電子顕微鏡写真を示す。天然ウシ真皮(
図3B)と比較して、フィブリル化コラーゲンネットワークは、はるかによりランダムであり、明らかな縞を欠いている。フィブリルの全体サイズは同様であり得、これらのフィブリルの配置は極めて異なる。フィブリル化コラーゲンヒドロゲル内とウシ真皮などの天然組織内とのコラーゲンフィブリル(およびそれから作製される結果としてのレザー)間のこのような超微細構造的な差は、天然レザーと同様に軟らかくまたはより軟らかく、天然レザーよりもしなやかであり得、かつ同様の外観を有し得る最終バイオファブリケーテッドレザー製品の問題にはなり得ない。
【0179】
ヒドロゲルと呼ばれることもある、フィブリル化コラーゲンは、次いで、脱水されて、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルからその水含有量の大部分を取り除いてもよい。フィブリル化コラーゲンヒドロゲルからの水の除去は、水和ゲルからしなやかなシートにその物理的品質を変化させてもよい。この材料は、破損/引裂きを防止するために処理されてもよい。例えば、フィブリル化コラーゲンから水を多過ぎて除去しないように注意が払われてもよい。一部の例において、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、25%未満、30%未満、40%未満、50%未満または60%未満の水含有量を有するようにフィブリル化コラーゲンを脱水することが望ましい。水含有量は、65%の相対湿度で1気圧にて25℃での平衡によって決定される。
【0180】
脱水は、空気乾燥、真空および圧力濾過、溶媒交換などを伴ってもよい。例えば、フィブリル化コラーゲンヒドロゲルはまた、有機溶媒によってその水含有量を置き換えることによって脱水を行ってもよい。適当な有機溶媒には、限定されないが、アセトン、エタノール、ジエチルエーテルなどが含まれてもよい。その後、有機溶媒は蒸発されてもよい(例えば、空気乾燥、真空乾燥など)。1種または2種以上の有機溶媒を使用して脱水の連続ステップを行って、最終製品中の脱水のレベルを微調整することも可能である。
【0181】
脱水後またはその間に、フィブリル化コラーゲン材料は、潤滑剤および/または油で処理されて、フィブリル化コラーゲン材料により大きな可撓性および柔軟性を付与してもよい。油と溶媒との組合せの使用は、油それ自体の使用に比較して油がフィブリル化コラーゲンネットワークによりよく浸透することを可能にし得る。油それ自体は、露出表面にわずかに浸透するように見えるが、妥当な時間の量でフィブリル化コラーゲン材料の厚さ全体に容易に染み込む(infiltrate)ことができない。一旦油/溶媒組成物が材料の厚さ全体に浸透してしまうと、溶媒は除去されてもよい。一部の実施形態において、得られたフィブリル化コラーゲン材料は、潤滑剤および/または油処理前の脱水フィブリル化コラーゲン材料と比較してよりレザー様の外観を示す。適当な油および潤滑剤には、限定されないが、ヒマシ油、パイン油、ラノリン、ミンク油、ニーツフット油、魚油、シアバター、アロエなどが含まれてもよい。
【0182】
脱水および架橋フィブリル化コラーゲンネットワークまたはヒドロゲルを潤滑して、レザー材料を形成することは、天然レザーの特性と同様であるか、またはより良好である特性を有する材料をもたらし得る。油と有機溶媒との組合せを含んだ溶液は、脱水フィブリル化コラーゲン材料の質量および軟度(応力-歪曲線の傾きと逆比例する)を増加させた。これは、脱水フィブリル化コラーゲン材料に浸透する油と有機溶媒との組合せのためであり、一旦通して浸透されると、油は材料全体にわたって分布したままであった一方で、有機溶媒は、蒸発させることができる。示されないが、油単独の使用は、脱水フィブリル化コラーゲン材料にわたって全体的に浸透するほどには有効でないことがある。
【0183】
次いで、得られたフィブリル化コラーゲン材料は、動物ハイドまたはスキンに由来する天然レザーと同様に処理され、ならびに再なめしされ、染色され、および/または仕上げされてもよい。追加の加工ステップは、架橋ステップ、再なめしステップ、および表面コーティングステップを含んでもよい。架橋ステップおよび再なめしステップは、水戻し(wetting back)(半加工レザーの再水和)、水絞り(45~55%の水がレザーから絞られる)、分割(レザーが1つまたは複数の層に分割される)、シェービング(レザーが薄化される)、中和(レザーのpHが4.5~6.5に調整される)、染色(レザーが着色される)、加脂(脂肪、油、ワックスがレザー線維に固定される)、充填(レザーをより硬くかつ重くする稠密/重質化学薬品)、スタッフィング(stuffing)(脂肪、油、ワックスがレザー線維間に加えられる)、固定(非結合化学薬品が結合/補充および除去される)、セッティング(グレイン平坦性が付与され、過剰の水が除去される)、乾燥(レザーが所望の水分レベル、10~25%に乾燥される)、コンディショニング(水分がレザーに18~28%レベルに加えられる)、軟化(線維の分離によるレザーの物理的軟化)、またはバフィング(レザーの表面を摩滅させて、ナップおよびグレイン欠陥を減少させる)などのサブプロセスを含んでもよい。表面コーティングは、以下のステップ:油入れ(oiling)(レザーを生油(単数)または生油(複数)でコーティングする)、バフィング、噴霧、ローラーコーティング、カーテンコーティング、ポリッシング、プレーティング、エンボス加工、アイロン掛け、またはグレージング(glazing)のいずれか1つまたは組合せを含んでもよい。
【0184】
ハイドが所望の厚さまたは寸法を得るためにトリミングされなければならない、動物ハイドとは違って、操作レザー材料は、広範な厚さおよび特定の最終製品を考慮して所望の寸法を有してファブリケートされてもよい。
【0185】
このような操作レザー材料の製造はまた、レザー製造プロセスにおける天然動物ハイドを処理するために必要な過剰のタンパク質、脂肪および毛を除去するステップを回避することによってより少ない廃棄物を発生させ得、これは、開示されたプロセスおよびこれらの方法に由来する製品からのより少ない環境影響をもたらす。
【0186】
本発明の実施形態
本発明は、以下に記載される特徴を有するバイオファブリケーテッド材料を含むが、これに限定されない。
【0187】
第1の実施形態において、本発明は、コラーゲン線維のネットワークを含む材料、例えば、バイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーを対象とする。
(i)非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークであって、
材料中のコラーゲンフィブリルの5重量%未満、10重量%未満、15重量%未満、20重量%未満、25重量%未満、30重量%未満、35重量%未満、または40重量%未満は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10μmもしくはそれ以上の直径を有するコラーゲン線維の形態であり、および/あるいは100μmまたはそれ以上のそれらの長さに対して整列されたフィブリルの形態であり;前記材料は、10、20、30、40、50、または60重量%以下の水を含み;;前記材料は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40重量%の潤滑剤を含み;かつ任意選択で、材料は、上面および下面、または内面および外面を含む、非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークを含む;あるいは
(ii)組換え非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークであって、コラーゲンは、実質的に3-ヒドロキシプロリンおよび任意選択で、実質的にヒドロキシリシンを含まず;前記材料は、5、10、15、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%以下の水を含み;材料は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40重量%の潤滑剤を含み;かつ任意選択で、材料は、上面および下面、または内面および外面を含む、組換え非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークを含む、バイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーを含む。この材料中の水含有量は、好ましくは25~40%以下である。潤滑剤含有量は、潤滑剤に対するバイオファブリケーテッド材料の吸収能に適合し、またはそれを超えないように選択されてもよい。このような材料は、哺乳動物コラーゲン、例えば、ウシI型またはIII型コラーゲンを含んでもよい。好ましくは、それは、それが含むコラーゲン分子を自然的に発現する動物の毛、毛包(単数もしくは複数)、または脂肪(単数もしくは複数)を含まない。例えば、それは、従来のレザーに見出されるアクチン、ケラチン、エラスチン、フィブリン、アルブミン、グロブリン、ムチン、ムチン様物、非コラーゲン構造タンパク質、および/または非コラーゲン非構造タンパク質を1重量%未満、2重量%未満、3重量%未満、4重量%未満、5重量%未満、6重量%未満、7重量%未満、8重量%未満、9重量%未満、または10重量%未満含んでもよい。それは、バイオファブリケーテッド材料中のコラーゲン分子を自然に発現する動物のように、従来のレザーに見出される他のコラーゲン性タンパク質、炭水化物、核酸、もしくは脂質、または免疫原、抗原、もしくはアレルゲンを実質的に含まなくてもよい。代わりの実施形態は、従来のレザーに見出されるアクチン、ケラチン、エラスチン、フィブリン、アルブミン、グロブリン、ムチン、ムチン様物、非コラーゲン構造タンパク質、および/または非コラーゲン非構造タンパク質の1種または複数を1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%組み込んでもよい。
【0188】
この材料中のフィブリルを製造するために使用するコラーゲンは、好ましくは精製された形態で、天然源から単離されてもよいか、またはそれは、組換え的に製造されても、もしくは化学合成により製造されてもよい。コラーゲンは一般に、4-ヒドロキシプロリンを含む。それは、天然源から得られるコラーゲンと化学構造で異なってもよく、例えば、それは、比較的低い含有量のヒドロキシリシンもしくは3-ヒドロキシプロリン、グリコシル化もしくは架橋アミノ酸残基、またはコラーゲンアミノ酸配列の他の翻訳後修飾を含んでもよいか、あるいはヒドロキシリシンもしくは3-ヒドロキシプロリン、グリコシル化もしくは架橋アミノ酸残基、またはコラーゲンアミノ酸配列の他の翻訳後修飾を実質的に含まなくてもよい。代わりに、それは、比較的高い含有量のヒドロキシル化アミノ酸残基、グリコシル化残基、架橋、または他の化学修飾を含んでもよい。
【0189】
上に記載される材料は、一般にコラーゲンフィブリルのネットワークを含み、これは、5、10、20、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900~1,000mg/cc、好ましくは100~500mg/ccのフィブリル密度を示してもよい。これらのフィブリル、またはフィブリルのネットワークは、バイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーにグレインテクスチャー、例えば、トップグレインテクスチャー、感触、または美学を与え得る。しかしながら、バイオファブリケーテッド材料は、多孔性および対応する従来のレザーよりも一様である他の物理的特性を示すことができ、これは、バイオファブリケーテッド製品における組成、フィブリルサイズ、架橋および潤滑の制御によって制御または調整することができる。
【0190】
多くの実施形態において、上に記載されたバイオファブリケーテッド材料は、コラーゲンフィブリルを含み、上面および下面、または内面および外面を有する。これらの表面の1つまたは複数は、外側に露出される。バイオファブリケーテッド材料の単一層は、コラーゲンフィブリルまたは線維の直径がハイドのより内側の層に対して増加する従来のレザー製品とは違って、その両方の側に実質的に同一のグレインおよび外観を示すことができる。
【0191】
他の実施形態において、バイオファブリケーテッド材料は、その表面(単数または複数)にわたって実質的に一様な特性を示し得る特定の形状に注型され、成形され、またはそうでなければ、構成されてもよい。
【0192】
バイオファブリケーテッド材料中のコラーゲンフィブリルは、特定の直径を有するように調整することができる。フィブリル直径の分布は、実質的に単峰性の分布、二峰性の分布、三峰性の分布または他の多峰性の分布を示してもよい。多峰性分布は、異なるフィブリル化条件を使用して製造されたフィブリルの2つ以上の異なる調製物から構成されてもよい。実質的に単峰性の分布では、フィブリルの直径の>50、60、70、80、90、95、または99%は、単一峰の周囲に分布する。二峰性分布では、フィブリルの少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%は、1つの峰の周囲に分布する。三峰性および多峰性分布では、一般に、フィブリル直径の少なくとも約5、10、15、20、25、30%またはそれ以上(峰の数に依存する)は、1つの峰の周囲に分布する。
【0193】
バイオファブリケーテッド材料は、コラーゲンフィブリルの少なくとも50、60、70、80、90、95、または99%が1nm~1μmの直径を有する、フィブリルを含んでもよい。フィブリル直径は、顕微鏡写真または電子顕微鏡写真、例えば、走査型または透過型電子顕微鏡写真の目視による検査によるものを含めて、当技術分野で公知の方法によって決定されてもよい。例えば、コラーゲンフィブリルは、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000nm(1μm)の範囲の集合的平均または個別のフィブリル直径を有してもよい。
【0194】
上に記載されたバイオファブリケーテッド材料中のコラーゲンフィブリルは、通常は、コラーゲンフィブリル間の架橋を形成する少なくとも1種の作用物質との接触によって架橋される。このような架橋剤は、アミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジド、スルフィドリル、ジアジリン、アリール、アジド、アクリレート、エポキシド、フェノール、クロム化合物、植物性タンニン、およびシンタンの1種または複数から選択されてもよい。
【0195】
架橋は、1、5、10、25、50、75~100mMの範囲の架橋剤濃度で行われてもよく、および形成される架橋の平均数が一様であり、かつ材料の同一単位体積で5、10、15、20、25、30、40、または50%以下変化するようにコラーゲンフィブリルを架橋剤に一様に曝す条件下で行われてもよい。
【0196】
バイオファブリケーテッド材料は、材料の重量に基づいて、または材料中のコラーゲンもしくはコラーゲンフィブリルの重量に基づいて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10%の架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、共有結合的または非共有結合的形態で存在してもよく、例えば、それは、コラーゲンフィブリルに共有結合していてもよい。架橋剤は、バイオファブリケーテッド材料中に一様に存在してもよく、ここで、重量による(またはモルによる)その濃度は、材料の同一単位体積で5、10、15、20、25、30、40、または50%以下変化する。
【0197】
上に記載されたバイオファブリケーテッド材料またはバイオファブリケーテッドレザーは、潤滑剤を含む。後の潤滑のための前駆体基材のような、コラーゲンフィブリルのネットワークを含む潤滑されない材料を製造することができるが、潤滑製品の可撓性および他の有用な特性を欠如し得る。潤滑剤は、フィブリル移動を促進し、あるいは可撓性、脆性の減少、耐久性、強度、破壊もしくは引裂きに対する耐性の増加、または耐水性などのレザー様特性を与える任意の量で組み込まれてもよい。潤滑剤含有量は、バイオファブリケーテッドレザーの約0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、および60重量%の範囲であり得る。
【0198】
本発明の実施形態に使用される潤滑剤には、限定されないが、脂肪、生物油、鉱油もしくは合成油、タラ油、スルホン化油、ポリマー、樹脂、オルガノ官能性シロキサン、および従来のレザーの加脂に使用される他の作用物質;それらの混合物が含まれる。他の潤滑剤には、界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー界面活性剤、アニオン性ポリマー界面活性剤、両親媒性ポリマー、脂肪酸、変性脂肪酸、ノニオン性親水性ポリマー、ノニオン性親油性ポリマー、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル樹脂、天然ゴム、合成ゴム、樹脂、両親媒性アニオン性ポリマーおよびコポリマー、両親媒性カチオン性ポリマーおよびコポリマー、ならびにそれらの混合物、ならびに水、アルコール、ケトン、および他の溶媒中これらのエマルションまたは懸濁液が含まれる。
【0199】
潤滑剤を含有する溶液またはエマルションは、潤滑剤として用いられてもよく、例えば、樹脂および他の疎水性潤滑剤は、エマルションとして、またはそれらを溶解するのに適した溶媒中で適用されてもよい。このような溶液は、バイオファブリケーテッドレザーへの適用またはその中への組込みに適した潤滑剤の任意の量を含有してもよい。例えば、それらは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、95、または99%の潤滑剤もしくは同じもの、または他の成分、例えば、少なくとも1種の水性溶媒、例えば、水、アルコール、例えば、エタノールのような、C1~C6アルコール、ケトン、例えば、C1~C6ケトン、アルデヒド、例えば、C1~C6アルデヒド、ワックス、界面活性剤、分散剤または他の作用物質の体積に対して対応する量を含有してもよい。潤滑剤は、水溶液もしくは親水性溶液中、様々な形態、例えば、O/WもしくはW/Oエマルション、噴霧可能な形態、またはバイオファブリケーテッド材料への取り込みもしくは適用に適した他の形態であってもよい。
【0200】
潤滑剤は、バイオファブリケーテッド材料全体にわたって、材料の同一単位体積中の潤滑剤の濃度が5、10、15、20、35、40、または50%以下変化するように一様に分布させることができ、一様な適用のために適した形態中に、またはバイオファブリケーテッド材料中に配合または混合されてもよい。
【0201】
バイオファブリケーテッド製品の一部の実施形態は、レザーと同様の多くの有利な特性または従来のレザーと比較して新たなもしくは優れた特性を示す。
【0202】
他の実施形態において、バイオファブリケーテッドレザーは、少なくとも100kPAの弾性率を有し得る。それは、100kPa~1,000MPaおよびこの範囲内の任意の中間値、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1,000MPAの範囲であり得る。
【0203】
一部の実施形態は、一様な弾性を示すことができ、その弾性率は、材料の同一長さまたは幅(または体積もしくは固定断面積)にわたって30、60、または90度だけ異なる角度で(または他の角度で)測定される場合、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変化する。
【0204】
一部の実施形態は、伸張可能であってもよく、緩和状態のその長さの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250~300%だけ伸ばすことができる。この範囲には中間値のすべてが含まれる。
【0205】
一部の実施形態において、バイオファブリケーテッドレザーは、少なくとも1kPAの引張り強度を有することができる。それは、1kPa~100MPaおよびこの範囲内の任意の中間値、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、100、200、300、400、500kPA;0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100MPaの範囲であり得る。一部の実施形態は、一様な引張り強度を示し、引張り強度は、材料の同一長さまたは幅(または体積もしくは固定断面積)にわたって30、60、または90度だけ異なる角度で(または他の角度で)測定される場合、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変化する。
【0206】
一部のバイオファブリケーテッドレザーは、同じ架橋剤(単数もしくは複数)または潤滑剤を使用して加工された、コラーゲンの同じ型、例えば、ウシI型またはIII型コラーゲンを含む同じ厚さの従来のトップグレインまたは他のレザーのものよりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、45、50、100、150または200%大きい引裂き強度または抵抗を示すことができる。一部の実施形態は、材料の同一長さまたは幅(または体積もしくは固定断面積)にわたって30、60、または90度だけ異なる角度で(または他の角度で)測定される場合、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変化する、一様な引裂き抵抗を示す。バイオファブリケーテッド材料は、約1~500N、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、または500の範囲の引裂き強度ならびにこの範囲内の任意の中間の引裂き強度を有してもよい。
【0207】
バイオファブリケーテッドレザーは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12mmまたはそれ以上のISO17235により決定されたとおりの軟度を有してもよい。一部の実施形態は、別にバイオファブリケーテッド材料の同一単位面積または体積で測定される場合、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、または100%以下変化する一様な軟度を示す。
【0208】
他の実施形態において、バイオファブリケーテッド材料は、真皮裏付けを必要とすることなくトップグレイン様製品を与えるカスタマイズド厚さを示す。一部の実施形態において、材料は、同一または実質的に同じグレイン、グレインテクスチャー、感触、および外観を有する、上面および下面、または内面および外面を有する。他の実施形態は、パターンを有してエンボス加工され、着古し加工され、またはプリントされ、色付けされ(stained)、もしくは塗装される。他の実施形態は、表面コーティング材または表面仕上げ材を有し、これは、材料の同一単位体積でまたは単位面積にわたってその重量濃度が、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変化するように材料の上にまたはその全体にわたって一様に分布されてもよい。一部の実施形態は、任意選択で、染料、ステイン、樹脂、ポリマー、顔料または塗料を含有してもよく、ここで、染料、ステイン、樹脂、ポリマー、顔料または塗料は、材料の同一単位体積でまたは単位面積にわたってその重量濃度が、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変化するように材料全体にわたって一様に分布される。
【0209】
上に記載されたバイオファブリケーテッド材料のある特定の実施形態は、コラーゲンフィブリルのネットワーク中に組み込まれる充填剤、および他の物質または構成要素を含んでもよい。例えば、一部の実施形態は、充填剤、例えば、ポリマーミクロスフェア(単数もしくは複数)、ビーズ(単数もしくは複数)、繊維(単数もしくは複数)、ワイヤ(単数もしくは複数)、または有機塩(単数もしくは複数)の少なくとも1つを含む。これらは、乾燥の間に間隙を介してフィブリルを保つことによって脱水コラーゲンフィブリルネットワークの組織化を制御するように選択され得る。充填剤は、一部の条件下で可溶性であるか、またはそうでなければ乾燥もしくは他の加工後のバイオファブリケーテッド材料からの除去を可能にする形態であってもよい。
【0210】
他の実施形態は、コラーゲンフィブリルのネットワークまたは不織もしくは織り材料中に組み込まれるコラーゲン線維のネットワークに組み込まれる少なくとも1種の織りまたは不織材料を含む。
【0211】
一部の実施形態において、バイオファブリケーテッド材料は、他の製品、例えば、履物、衣服、スポーツ着、ユニホーム、札入れ、時計バンド、ブレスレット、旅行かばん、室内装飾材料、または家具に組み込まれる。
【0212】
作製方法の実施形態
本発明による方法は、限定されないが、以下の実施形態を含む。
【0213】
(i)任意の順序で、非ヒトコラーゲン分子の水溶液または懸濁液をコラーゲンフィブリルにフィブリル化し、前記コラーゲンフィブリルを、それらを少なくとも1種の架橋剤を接触させることによって架橋し、架橋コラーゲンフィブリルをそれらが40重量%未満の水を含むように脱水し、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40重量%の少なくとも1種の潤滑剤を前記材料中に組み込み、および任意選択で、上面および下面、または内面および外面を含む前記材料を注型し、成形し、またはそうでなければ形成することを含む、非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークを含む材料であって、材料中のコラーゲンフィブリルの1重量%未満、2重量%未満、3重量%未満、4重量%未満、5重量%未満、6重量%未満、7重量%未満、8重量%未満、9重量%未満、10重量%未満、15重量%未満、20重量%未満、25重量%未満、30重量%未満、35重量%未満、もしくは40重量%は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10μmもしくはそれ以上の直径を有するコラーゲンフィブリルの形態であり、および/またはそれらの長さの25、50、100、150、200、250、300、350もしくは400μmもしくはそれ以上に対して整列されたフィブリルの形態であり;前記材料は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60重量%以下の水を含み;かつ前記材料は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40%の潤滑剤を含む、バイオファブリケーテッド材料構成要素;あるいは
(ii)任意の順序で、非ヒトコラーゲン分子の水溶液または懸濁液をコラーゲンフィブリルにフィブリル化し、前記コラーゲンフィブリルをそれらを少なくとも1種の架橋剤を接触させることによって架橋し、架橋コラーゲンフィブリルをそれらが5、10、15、20または25重量%以下の水を含むように脱水し、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、30、40または50重量%の少なくとも1種の潤滑剤を前記材料中に組み込み、および任意選択で、上面および下面、または内面および外面を含む前記材料を注型し、成形し、またはそうでなければ形成することを含む、組換え非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークを含むバイオファブリケーテッド材料構成要素であって、コラーゲンは実質的に3-ヒドロキシプロリン、および任意選択で、実質的にヒドロキシリシンを含まず;前記材料は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60重量%以下の水を含み;かつ前記材料は少なくとも1%の潤滑剤を含む、材料
を作製するための方法。
【0214】
この方法における使用のためのコラーゲンまたはコラーゲン性材料は、哺乳動物コラーゲン、例えば、ウシI型、III型コラーゲン、または他の型および供給源の本明細書に記載されるコラーゲンもしくはコラーゲン性タンパク質を含んでもよい。それは、哺乳動物もしくは他の動物から得られても、あるいは一部の実施形態において、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)または他の細菌によって;ピキア(Pichia)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、または別の酵母もしくは真菌によって;植物細胞によって;昆虫細胞または哺乳動物細胞によって組換え的に発現されてもよい。
【0215】
本明細書に開示される方法における使用のためのコラーゲンも、細胞、例えば、インビトロで培養される、上に記載されたものから、例えば、培養哺乳動物または動物細胞から単離されてもよい。代わりに、コラーゲンまたはコラーゲン性タンパク質は、他の手段によって、例えば、化学合成によって得られてもよい。それは、天然源から得られるコラーゲンと化学構造で異なっていてもよく、例えば、それは、比較的低い含有量のヒドロキシリシンもしくは3-ヒドロキシプロリン、グリコシル化もしくは架橋アミノ酸残基、またはコラーゲンアミノ酸配列の他の翻訳後修飾を含んでもよいか、あるいはヒドロキシリシンもしくは3-ヒドロキシプロリン、グリコシル化もしくは架橋アミノ酸残基、またはコラーゲンアミノ酸配列の他の翻訳後修飾を実質的に含まなくてもよい。代わりに、それは、比較的高い含有量のヒドロキシル化アミノ酸残基、グリコシル化残基、架橋または他の化学修飾を含んでもよい。
【0216】
好ましくは、コラーゲンは、それが含むコラーゲン分子を自然に発現する動物の毛、毛包(単数もしくは複数)、または脂肪(単数もしくは複数)を含まないが、これらが、その一様性、強度および美的特性を損ない得るからである。例えば、それは、従来のレザーに見出されるアクチン、ケラチン、エラスチン、フィブリン、アルブミン、グロブリン、ムチン、ムチン様物、非コラーゲン構造タンパク質、および/または非コラーゲン非構造タンパク質を1重量%未満、2重量%未満、3重量%未満、4重量%未満、5重量%未満、6重量%未満、7重量%未満、8重量%未満、9重量%未満、または10重量%未満含んでもよい。それは、バイオファブリケーテッド材料中のコラーゲン分子を自然に発現する動物のように、従来のレザーに見出される他のコラーゲン性タンパク質、炭水化物、核酸、もしくは脂質、または免疫原、抗原、もしくはアレルゲンを実質的に含まなくてもよい。
【0217】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法における使用のためのコラーゲンまたはコラーゲン様材料は、実質的に均一に精製されてもよいか、またはフィブリルを形成するその能力と不整合でない精製の度合いを有してもよく、例えば、それは、その総タンパク質含有量に基づいて、またはその総重量に基づいて25、30、40、50、60、70、80、90、95、または99重量%のコラーゲンを含んでもよい。異なる型のコラーゲンの混合物、または異なる生物源からのコラーゲンが、コラーゲンフィブリルの化学的および物理的特性を均衡させるために、または補足的特性を有するフィブリルの混合物を生成するために、ある特定の実施形態で使用されてもよい。このような混合物は、1、5、10、25、50、75、95、または99重量%の第1のコラーゲン、および99、95、90、75、50、25、10または1重量%の第2、第3、またはそれに続くコラーゲン構成要素を含んでもよい。これらの範囲には、中間値および重量によるコラーゲン構成要素のすべての総コラーゲン含有量が100%であるコラーゲンの比のすべてが含まれる。
【0218】
本明細書に開示される方法は、実質的に一様に分布されたフィブリル、架橋フィブリル、脱水フィブリルおよび/または潤滑フィブリルを有するバイオファブリケーテッド製品を提供することができる。例えば、フィブリルは、材料の同一単位体積中のコラーゲンフィブリルの重量による(またはその数または平均数による)濃度が、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変化するように、材料全体にわたって分布されていてもよい。
【0219】
一部の実施形態において、バイオファブリケーテッド材料は、架橋、脱水および/または潤滑後に材料をへらがけ(staking)する。
【0220】
本明細書に記載される実施形態において、コラーゲンの溶液または懸濁液は、例えば、溶液もしくは懸濁液の塩濃度を調整することによって、そのpHを調整する、例えば、コラーゲンの酸性溶液のpHを上げることによって、またはその両方によって、フィブリル化される。一部の実施形態において、フィブリル化は、核形成剤を含めることによって促進されてもよい。フィブリル化のために使用される塩には、限定されないが、リン酸塩および塩化物塩、例えば、Na3PO4、K3PO4、KCl、およびNaClが含まれる。フィブリル化の間の塩濃度は、10mM~2Mの範囲に調整されてもよいか、またはpHは、酸、塩基、もしくは緩衝剤でpH5.5、6.0、6.5、7.0、8.0またはそれ以上に調整されてもよい。塩濃度およびpHは、フィブリル化を誘導または促進するように同時に調整されてもよい。本明細書に記載される方法のある特定の実施形態において、pH6.0未満のpHを有するコラーゲン分子の水溶液または懸濁液は、pHをpH6.0~8.0に調整することによってフィブリル化され得る。
【0221】
本明細書に記載される方法の一部の実施形態において、コラーゲンフィブリルは、それらの形成のプロセスの間、またはフィブリル化の完了後に架橋される。
【0222】
一部の実施形態において、コラーゲンフィブリルは、それらを少なくとも1種のアミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジド、スルフィドリル、ジアジリン、アリール、アジド、アクリレート、エポキシド、フェノール、クロム化合物、植物性タンニン、およびシンタンと接触させることによって架橋される。
【0223】
1種または複数の架橋剤は、1mM~100mMの範囲の濃度、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、6、70、75、80、85、90、95または100mMの濃度で添加されてもよい。
【0224】
架橋の時間、温度ならびに他の化学的および物理的条件は、得られた架橋フィブリルが1つまたは複数の異なる架橋結合の特定の度合いを含むようにコラーゲンフィブリル間の架橋の特定の度合いを与えるように選択されてもよい。得られた架橋フィブリル調製物は、架橋剤の重量、ならびにコラーゲンの重量もしくはコラーゲンフィブリルの架橋ネットワーク、例えば、ヒドロゲルの重量に基づいて、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%またはそれ以上の架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、コラーゲンフィブリルに共有結合または非共有結合していてもよい。架橋後の材料の同一単位体積中のコラーゲン分子、トロポコラーゲン、もしくはフィブリルの間の(between)、もしくはそれらの間の(among)架橋の数、またはコラーゲン分子、トロポコラーゲン、もしくはフィブリルの間の(between)架橋の平均数は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%以下変わってもよい。
【0225】
本明細書に記載される方法は、フィブリル化もしくは架橋、またはその両方、あるいはフィブリル化および架橋が実質的に完了した後に行われてもよい脱水(dehydration)または排水(dewatering)ステップを必要とする。
【0226】
一部の実施形態において、脱水は、コラーゲンフィブリルのネットワークをアセトン、シンタン、またはコラーゲンから結合水を除去する作用物質と接触させることを伴う。他の実施形態において、一部の水は、濾過または蒸発によってフィブリル調製物または架橋フィブリル調製物から除去されてもよく、次いで、コラーゲンフィブリルのネットワークと会合して残っている水は、アセトンなどの溶媒、または水を除去する他の化学剤を使用して除去されてもよい。
【0227】
本明細書に記載される方法は、一般に生成されたコラーゲンフィブリルのネットワークの潤滑を必要とする。潤滑は、フィブリル化、架橋、もしくは脱水の間、またはこれらのステップのいずれかの間、あるいはこれらのステップの1つまたは複数が実質的に完了した後に行われてもよい。
【0228】
一部の実施形態において、潤滑は、架橋コラーゲンフィブリルのネットワークを1種または複数の潤滑剤、例えば、脂肪、生物油、鉱油もしくは合成油、タラ油、スルホン化油、ポリマー、オルガノ官能性シロキサン、および従来のレザーを加脂するために使用される他の作用物質、またはそれらの混合物と接触させることを伴う。
【0229】
他の実施形態において、潤滑剤(単数または複数)は、コラーゲンフィブリルの脱水架橋ネットワークの一様な潤滑を促進する方法を使用して適用され、その結果、材料の同一単位体積中の重量による潤滑剤の濃度は、5、10、15、20、30、35、40、45、または50%以下変化する。このような適用は、ディップコーティング、噴霧コーティング、蒸着、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、ブラシコーティング、および他の公知のコーティングまたは堆積方法によって行われてもよい。
【0230】
本明細書に記載される方法のさらなる実施形態において、表面コーティング材または表面仕上げ材が、バイオファブリケーテッド材料に適用される。これらは、コラーゲンフィブリルのネットワークを含む材料の表面に、バイオファブリケーテッド材料の調製の様々なステップの間に適用されてもよいが、それらは、一般に架橋、脱水および潤滑製品に適用される。本明細書に記載される方法によって可能にされた一様な潤滑は、成功裏の一様な適用およびこのようなコーティングまたは仕上げの接着を促進する。
【0231】
他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、バイオファブリケーテッド材料を、その調製の様々なステップの間にまたはそれが架橋、脱水および潤滑された後に、限定されないが、染料、ステイン、顔料、樹脂、ポリマー、または塗料を含む他の機能性成分とともに組み込むこと、またはそれらと接触させることを含み得る。さらなる実施形態において、これらの機能性成分は、材料の上にまたはそれの全体にわたってこれらの作用物質を一様に分布させる条件下で適用されても、または組み込まれてもよく、その結果、材料の同一単位体積中の重量によるそれらの濃度は、5、10、15、20、30、35、40、45、または50%以下変化する。
【0232】
他の実施形態において、本明細書に記載される方法は、充填剤をバイオファブリケーテッド材料中に、その調製の様々なステップの間にまたはそれが架橋、脱水および潤滑された後に組み込むことを伴う。一般に、これらの充填剤は、脱水前に、例えば、フィブリル化または架橋の間に組み込まれる。このような充填剤は、限定されないが、ポリマーミクロスフェア、ビーズ、繊維、ワイヤ、または有機塩が含まれる。
【0233】
上に記載された方法の一部の実施形態は、バイオファブリケーテッド材料の中にまたはその上に、その調製の間または後に少なくとも1種の織りまたは不織材料を、例えば、織りまたは不織の紙または布材料を使用して架橋フィブリルを濾過することによって、組み込むことを伴う。他の実施形態は、バイオファブリケーテッド材料をその調製の間または後に、少なくとも1種の織りまたは不織材料中に組み込むことを伴う。
【0234】
方法の商業的実施形態は、バイオファブリケーテッド材料を履物、衣服、スポーツ着、ユニホーム、札入れ、時計バンド、ブレスレット、旅行かばん、室内装飾材料、家具、または他の工業、商業または消費者製品などの製品に組み込むことを伴う。
【0235】
以下の非限定的実施例は、本発明を例証するものである。本発明の範囲は、これらの実施例に記載される詳細に限定されない。
【実施例1】
【0236】
バイオファブリケーテッドレザーの厚さの制御
抽出ウシI型コラーゲンのヒドロゲルを、異なるコラーゲン濃度および体積で形成して、異なる厚さの乾燥コラーゲン材料を製造した。コラーゲンを5g/Lまたは9g/Lのいずれかで0.01N HClに溶解させ、次いで、1部の10×PBSを9部の溶解コラーゲンに添加して、コラーゲンフィブリル化およびゲル形成を誘導した。
【0237】
次いで、0.8Lまたは1.6Lのフィブリル性コラーゲンの溶液を、型中に注型し、25℃でインキュベートしてヒドロゲル形成を可能にした。0.8Lの溶液は1.5cm厚さのゲルを生じたが、1.7Lの溶液は、3.0cm厚さのゲルを生じた。これらのゲルをアセトン中で脱水および潤滑し、次いで、乾燥させ、レザー様材料に機械的にへらがけした。最終乾燥材料の厚さは、開始ヒドロゲル中のコラーゲンの総量と相関した。
【0238】
バイオファブリケーテッドレザーの厚さは、その総コラーゲン含有量を変えることによって制御した。試料A、試料Bおよび試料Cは、525cm2の体積(水和ゲル領域)で、それぞれ、4、7.2または14.4グラムのコラーゲンを使用して製造した。バイオファブリケーテッドレザーは、架橋、潤滑および脱水することによって各試料から製造した。表1に示すとおりに、ゲル中のコラーゲンの含有量の増加は、得られたバイオファブリケーテッドレザーの厚さを増加させた。
【0239】
【実施例2】
【0240】
I型コラーゲンからのバイオファブリケーテッドレザーの製造
I型コラーゲンは、Wuxi Biot Bio-technology Company,Ltd.から購入した(Medical Collagen Sponge)。コラーゲンは、酸処理によりウシ腱から単離され、続いて、ペプシンにより消化され、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製され、凍結および凍結乾燥された。
【0241】
凍結乾燥タンパク質(4.1g)を、オーバーヘッドミキサーを使用して733mlの0.01N HClに溶解させた。溶液中の固体コラーゲンスポンジの欠如により証明されるとおりに、コラーゲンを適切に溶解させた後(1600rpmで少なくとも1時間混合して)、この溶液に82uLのなめし剤Relugan GTW、続いて、81mLの10×PBSを添加して、溶液のpHをpH11.2から7.2に上げた。
【0242】
次いで、この溶液を3分間混合し、その後、溶液をシリコン型に注入した。コラーゲン溶液をシリコン型中で25℃にて2時間インキュベートして、コラーゲンを粘弾性ヒドロゲルにフィブリル化させた。
【0243】
溶液乳白度(425nmの光の吸光度により測定して)ととものレオロジー特性のプラトーは、フィブリル化がこの時点で完了したことを示し、コラーゲンフィブリルの存在は、走査型電子顕微鏡(
図3)および透過型電子顕微鏡(
図4)で確認した。
【0244】
フィブリル化コラーゲンヒドロゲルを型から取り出し、プラスチック製ジャー中の700mLのアセトン中に入れ、オービタルシェーカー上40rpmにて25℃で振盪した。ヒドロゲルを、終夜のインキュベーション、続いて、5×1時間の洗浄およびさらに終夜のインキュベーション後に、アセトンを新鮮にすることにすることによって脱水した。アセトンを、各洗浄後に新鮮にして、ゲルから水を除去した。
【0245】
アセトン脱水に続いて、コラーゲンゲルを、それぞれ、80%アセトンまたはエタノール中20%(v/v)のタラ肝油またはヒマシ油のいずれかを含有する加脂剤(fat liquor)溶液中40rpmで振盪しながら終夜インキュベートした。
【0246】
加脂剤溶液中のインキュベーションに続いて、コラーゲンゲルを37℃で乾燥させた。乾燥後、材料は、軟らかく、レザー様またはバイオファブリケーテッドレザーになった。過剰の油状物を除去して、材料のレザー様美学を改善することができる。
【0247】
バイオファブリケーテッドレザーは、上面および下面の両方の上にグレインテクスチャーならびに上面および下面の両方上に、むらがなく吸収された染料を有した。
【実施例3】
【0248】
III型コラーゲンからのバイオファブリケーテッドレザーの製造
0.01N HCl中2.5mg/mlでの組換えIII型コラーゲンの溶液(FibroGen,Inc.)を、9部のコラーゲン溶液(200mL)に1部の200mMのリン酸ナトリウム溶液(22mL)、pH11.2を添加し、pHを7に増加させることによってフィブリル化し、室温で2時間撹拌した。
【0249】
フィブリル化は、時間とともに溶液の400nmの吸光度を測定することによって
確認した。
【0250】
フィブリル化後、フィブリル懸濁液にRegulan GTW(コラーゲン上2%w/wオファ)を添加し、30分間混合することによって、フィブリルをなめした。
【0251】
次いで、なめされたコラーゲンフィブリルを3,500RPMで30分間遠心分離にかけて、フィブリルを10mg/mlの濃度に濃縮した。10mg/mlのフィブリルペレットを、21,000RPMで30分間超遠心分離を使用してさらに遠心分離にかけ、約40~50mg/mlの濃度を有するフィブリルゲルを得た。
【0252】
フィブリルゲルの物理的特性は、レオメーターで評価した。
【0253】
貯蔵弾性率および複素粘度により、大部分の弾性材料を実証した。
【0254】
次いで、このフィブリルを37℃に設定した食品脱水機中で18時間乾燥させた。
【0255】
乾燥後、この材料を、Lowepel酸性黒色染料(コラーゲン上2w/w%オファ)およびLubritan WP(コラーゲン上20w/w%オファ)の溶液中でインキュベートすることによって染色および再なめしした。
【0256】
材料をこの溶液中でドラムし(drummed)、絞って、染料およびシンタンの材料中への浸透を確実にした。次いで、材料を最終的に乾燥させ、振盪して、レザー様材料を製造した。
【実施例4】
【0257】
III型コラーゲンからのバイオファブリケーテッドレザーの製造
組換えIII型コラーゲンを、Fibrogen,Inc.から購入した。このコラーゲンは、0.01N HCl中2.5mg/mLの濃度で供給された。
【0258】
コラーゲンフィブリルの集合を開始させるために、9部のストックIII型コラーゲン溶液に1部の200mM Na2HPO4、pH11.2(100mL)を室温で添加して、溶液をpH7.2にした。オーバーヘッドミキサーを使用して、この溶液を1600rpmで1時間混合した。
【0259】
撹拌1時間後、コラーゲンフィブリルをRelugan GTWと反応させ、これをコラーゲンの質量に対して2%(w/w)オファで溶液に添加した。この溶液を、オーバーヘッドミキサーを使用して1600rmで1時間混合した。
【0260】
次いで、溶液に、Lipoderm A1およびTanigan FTをコラーゲンの質量に対してそれぞれ80%(w/w)のオファで添加した。この溶液を、オーバーヘッドミキサーを使用して1600rpmで30分間混合した。次いで、溶液のpHを、10%(v/v)ギ酸溶液を使用して4に下げた。この溶液を、オーバーヘッドミキサーを使用して1600rpmで30分間混合した。
【0261】
次いで、144mLの溶液を、真空ポンプ(Hg中-27の圧力)に取り付けたブフナー漏斗およびブフナー漏斗の上部のラバーダムを使用して47mmワットマンNo.1メンブレンに通して濾過した。真空を18時間引いた。
【0262】
次いで、濃縮フィブリル組織を周囲条件下で乾燥させ、材料を転がし、曲げ、および引っ張ることによって30分間手でへらがけして、レザー様材料を製造した。
【実施例5】
【0263】
Expancell
ウシ腱から酸処理によって単離され、続いて、ペプシンにより消化され、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製され、凍結および凍結乾燥された、I型ウシコラーゲンを、Wuxi Biot Bio-technology co.,Ltd.から購入した(Medical Collagen Sponge)。
【0264】
オーバーヘッドミキサーを使用して、10gの凍結乾燥コラーゲンタンパク質を、1Lの0.01N HCl、pH2中1,600rpmで、固体コラーゲンスポンジが存在しなくなるまで少なくとも1時間混合することによって溶解させた。
【0265】
次いで、111.1mlの200mMリン酸ナトリウム(pHを水酸化ナトリウムで11.2に調整した)を添加して、コラーゲン溶液のpHを7.2に上げた。
【0266】
次いで、pH7.2のコラーゲン溶液を10分間撹拌し、架橋剤としての0.1mlの20%Relugan GTW(BASF)(これは、コラーゲンの重量に対して2%であった)を添加して、架橋コラーゲンフィブリルをもたらした。
【0267】
次いで、架橋コラーゲンフィブリルを5mlの20%Tanigan FT(Lanxess)と混合し、1時間撹拌した。
【0268】
その後、1グラムのExpancel Microshere 461 WE20d36(AkzoNobel)(これは、コラーゲンの重量の10%である)および40mlのTruposol Ben(Trumpler)(これは、コラーゲンの重量の80%である)を添加し、オーバーヘッド撹拌機を使用してさらなる時間撹拌した。
【0269】
溶液のpHを、10%ギ酸の添加によりpH4.0に低下させ、1時間撹拌した。
【0270】
pHの低下後、150mlの溶液を、-27mmHgの圧力で真空ポンプに取り付けたブフナー漏斗を使用して90mmワットマンNo.1メンブレンに通して濾過した。
【0271】
次いで、濃縮フィブリル組織を周囲条件下で乾燥させ、材料を転がし、曲げ、および引っ張ることによって30分間手でへらがけして、レザー様材料を製造した。
【実施例6】
【0272】
二酸化チタン(白色顔料)
I型ウシコラーゲンをWuxi Biot Bio-technology co.,Ltd.から購入した(Medical Collagen Sponge)。このコラーゲン供給源は、ウシ腱から酸処理により単離され、続いて、ペプシンにより消化され、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製され、凍結および凍結乾燥されたI型コラーゲンである。凍結乾燥タンパク質(10グラム)を、オーバーヘッドミキサーを使用して1Lの0.01N HCl、pH2に溶解させた。溶液中固体コラーゲンスポンジの欠如により証明されるとおりに、コラーゲンを適切に溶解させた後(1,600rpmで少なくとも1時間の混合)、111.1mlの200ミリモルリン酸ナトリウム(pHを水酸化ナトリウムで11.2に調整した)を添加して、コラーゲン溶液のpHを7.2に上げた。得られたコラーゲン溶液を10分間撹拌し、コラーゲンの重量に対して2%である、架橋剤溶液としての0.1mlの20%Relugan GTW(BASF)。
【0273】
この架橋コラーゲンフィブリル溶液に、5mlの20%Tanigan FT(Lanxess)を添加し、続いて、1時間撹拌した。
【0274】
Tanigan-FTの添加に続いて、1グラム(コラーゲンの重量に対して10%)のExpancelミクロスフェア461 WE20d36(AkzoNobel)、40ml(コラーゲンの重量に対して80%)のTruposol Ben(Trumpler)および2ml(コラーゲンの重量に対して10%)のPPE White HS a pa(Stahl)を添加し、オーバーヘッド撹拌機を使用してさらなる時間撹拌した。
【0275】
この溶液のpHを、10%ギ酸を使用して4.0に低下させ、1時間撹拌した。
【0276】
pH変化後、150mlのこの溶液を、-27mmHgの圧力で真空ポンプに取り付けたブフナー漏斗を使用して90mMワットマンNo.1メンブレンに通して濾過した。
【0277】
次いで、濃縮フィブリル組織を周囲条件下で乾燥させ、材料を転がし、曲げ、および引っ張ることによって30分間手でへらがけして、レザー様材料を製造した。
【実施例7】
【0278】
Hycar樹脂(26552)
ウシコラーゲンはWuxi Biot Bio-technology Company,Ltd.から購入した(Medical Collagen Sponge)。このコラーゲン供給源は、酸処理によりウシ腱から単離され、続いて、ペプシンにより消化され、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製され、凍結および凍結乾燥されたI型コラーゲンである。
【0279】
凍結乾燥タンパク質(10グラム)を、オーバーヘッドミキサーを使用して1リットルの0.01N HCl、pH2に溶解させた。溶液中固体コラーゲンスポンジの欠如により証明されるとおりに(1,600rpmで少なくとも1時間の混合)、コラーゲンを適切に溶解させた後、111.1mlの200mMリン酸ナトリウム(pHを水酸化ナトリウムで11.2に調整した)を添加して、溶液のpHを7.2に上げた。
【0280】
得られたコラーゲン溶液を10分間撹拌し、0.1mlの20%Relugan GTW(BASF)架橋剤溶液(これは、コラーゲンの重量に対して2%であった)、なめし剤溶液を添加した。
【0281】
架橋コラーゲンフィブリル溶液に、5mlの20%Tanigan FT(Lanxess)を添加し、1時間撹拌した。Tanigan-FTの添加に続いて、1グラムのExpancelミクロスフェア(コラーゲンの重量に対して10%)461 WE20d36(AkzoNobel)、40ml(コラーゲンの重量に対して80%)のTruposol Ben(Trumpler)および2ml(コラーゲンの重量に対して10%)のPPE White HS a pa(Stahl)を添加し、オーバーヘッド撹拌機を使用してさらなる時間撹拌した。
【0282】
この溶液のpHを、10%ギ酸を使用して4.0に低下させ、様々なオファのHycar樹脂26552(Lubrizol)を添加し、さらに1時間撹拌した。pH変化および樹脂添加に続いて、150mlのこの溶液を、-27mmHgの圧力で真空ポンプに取り付けたブフナー漏斗を使用して90ミリメートルワットマンNo.1メンブレンに通して濾過した。活性化を促進するために、Hycar樹脂26552をフィブリル溶液と混合し、50℃で2時間加熱した。
【0283】
次いで、濃縮フィブリル組織を周囲条件下で乾燥させ、この材料を転がし、曲げ、および引っ張ることによって30分間手でへらがけして、レザー様材料を製造した。樹脂の添加は、以下の
図1に示されるとおりの改善された物理的特性をもたらす。
【0284】
【0285】
Reluganは、ポリマー、樹脂またはアルデヒドに基づく再なめし剤である。Taniganは、スルホン系シンタンである。Truposol Benは、クロムを含まないレザー用の加脂剤である。Lipoderm Liquor A1は、水中長鎖アルコール、パラフィン、アニオン性界面活性剤に基づく加脂剤である。Hycar樹脂26552:ホルムアルデヒドを含まないアクリル系エマルション。
【0286】
説明の解釈
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、本発明の限定であることは意図されない。例えば、本明細書で使用される場合、文脈により別に明らかに指示されない限り、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、複数形を同様に含むことが意図される。本明細書で使用される場合の用語「含む(comprises)」および/または「含むこと(comprising)」は、記載された特徴、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つもしくは複数の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または付加を排除しないことがさらに理解される。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙項目の1つまたは複数の組合せのすべてを含み、「/」と省略されてもよい。
【0287】
空間的に関係する用語、例えば、「の下に(under)」、「の下方に(below)」、「の下方の(lower)」、「の上に(over)」、「の上方の(upper)」などは、図に例証されるとおりの別の要素(単数もしくは複数)または特徴(単数もしくは複数)に対する1つの要素または特徴の関係を説明するための説明の容易さのために本明細書で使用されてもよい。空間的に関係する用語は、図に描写された位置付けに加えて使用または操作中の装置の異なる位置付けを包含することが意図されることが理解される。例えば、図中の装置が反転される場合、他の要素または特徴の「の下に」または「の下方に」と記載された要素は、その他の要素または特徴の「上に」と位置付けされる。したがって、例示的な用語「の下に」は、「の上に」および「の下に」の位置付けの両方ともを包含し得る。この装置は、別に位置付けられてもよく(90度回転された、または他の位置付けで)、本明細書で使用される空間的に関係する記述子は、それに応じて解釈される。同様に、用語「上方へ(upwardly)」、下方へ(downwardly)」、「垂直の(vertical)」、「水平の(horizontal)」などは、特に断りのない限り、説明の目的のためだけに本明細書で使用される。
【0288】
用語「第1の(first)」および「第2の(second)」は、様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために本明細書で使用されてもよいが、これらの特徴/要素は、特に文脈により別に指示されない限り、これらの用語によって限定されるべきでない。これらの用語は、ある特徴/要素を別の特徴/要素と区別するために使用されてもよい。したがって、以下に検討される第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称することができ、同様に、以下に検討される第2の特徴/要素は、本発明の教示から逸脱することなしに第1の特徴/要素と称することができる。
【0289】
本明細書および以下に続く特許請求の範囲を通して、文脈により別に必要とされない限り、語「含む(comprise)」、および「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などの変形は、様々な構成要素が、本方法および物品(例えば、装置(device)および方法を含む、組成物および装置(apparatus))で共に一緒に用いることができることを意味する。例えば、用語「含むこと(comprising)」は、任意の記述された要素またはステップの包含を暗示するが、いかなる他の要素またはステップの排除も暗示しないことが理解される。
【0290】
実施例で使用されるものを含めて、かつ別に明示的な断りのない限り、本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、すべての数字は、用語が明示的に出現しない場合でさえも、あたかも語「実質的に(substantially)」、「約(about)」、または「およそ(approximately)」により前書きされたように読まれてもよい。用語「実質的に(substantially)」、「実質的にない(substantially no)」、「実質的に含まない(substantially free)」、「約(about)」、または「およそ(approximately)」は、記載される値および/または位置が、値および位置の妥当な予測範囲内であることを示すために大きさおよび/または位置を記載する場合に使用されてもよい。例えば、数値は、記述された値(または値の範囲)の±0.1%、記述された値(または値の範囲)の±1%、記述され値(または値の範囲)の±2%、記述された値(または値の範囲)の±5%、記述された値(または値の範囲)の±10%などである値を有してもよい。本明細書で列挙されるいずれの数値範囲も、その中に含められた部分範囲のすべてを含むことが意図される。
【0291】
特徴または要素が、別の特徴または要素の上に(on)あると本明細書で称される場合、それは他の特徴もしくは要素の上に直接あることができ、または介在する特徴および/もしくは要素がまた存在してもよい。対照的に、特徴または要素が別の特徴または要素の「上に直接」あると称される場合、介在する特徴または要素は存在していない。特徴または要素が、別の特徴または要素に「接続されて(connected)」、「付着されて(attached)」または「連結されて(coupled)」いると称される場合、それは、他の特徴もしくは要素に直接接続され、付着され、または連結されていることができ、または介在する特徴もしくは要素が存在していてもよいことも理解される。対照的に、特徴または要素が、別の特徴または要素に「直接接続されて」、「直接付着されて」または「直接連結されて」いると称される場合、介在する特徴または要素は存在していない。1つの実施形態に関して記載または示されるが、そのように記載または示される特徴および要素は、他の実施形態に適用することができる。別の特徴に「隣接して」配置される構造または特徴への言及は、その隣接する特徴と重複し、またはその根底にある部分を有してもよいことも、当業者により認識される。
【0292】
様々な例証的実施形態が上に記載されるけれども、いくつかの変化のいずれもが、特許請求の範囲により記載されるとおりの本発明の範囲から逸脱することなく様々な実施形態に対してなされてもよい。例えば、様々な記載される方法のステップが行われる順序は、しばしば代替の実施形態において変化されてもよく、他の代替の実施形態において、方法の1つまたは複数のステップが一緒に省略されてもよい。様々な装置およびシステムの実施形態の任意選択の特徴が、一部の実施形態に含まれてもよく、かつその他に含まれなくてもよい。したがって、前述の説明は、主として例示的な目的のために与えられるものであり、それが特許請求の範囲で示されるとおりの本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。
【0293】
本明細書に含まれる実施例および例証は、例証によって、かつ限定によってではなく、主題が実施されてもよい特定の実施形態を示す。述べられたように、他の実施形態が用いられても、それから誘導されてもよく、その結果、構造的および論理的置換および変化が、本開示の範囲から逸脱することなくなされてもよい。本発明主題のこのような実施形態は、単に便宜のために、かつ2つ以上が、事実、開示される場合、いずれの単一の発明または発明概念にもこの適用の範囲を自発的に限定することを意図することなく、用語「発明」によって個別にまたは集合的に本明細書で言及されてもよい。したがって、特定の実施形態が本明細書で例証および説明されてきたが、示される特定の実施形態は、同じ目的を達成するために計算された任意の配置で置換されてもよい。本開示は、様々な実施形態の適応または変形のいずれかおよびすべてに及ぶことが意図される。上の実施形態の組合せ、および本明細書に具体的に記載されない他の実施形態は、上の説明を精査後に当業者に明らかである。
【0294】
本明細書で述べられる刊行物および特許出願のすべては、あたかもそれぞれの個別の刊行物または特許出願が参照により組み込まれると具体的または個別的に指示されるのと同じ程度にそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれており、とりわけ、参照による組込みが現れる本明細書の同じ文、段落、頁、または項に現れる開示が参照される。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[請求項1]
(i)非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークを含む材料であって、前記材料中の前記コラーゲンフィブリルの10重量%未満は、5μm以上の直径を有するコラーゲン線維の形態であり、それらの長さの100μm以上に対して整列されたフィブリルの形態であり、もしくはその両方であり;前記材料は、40重量%以下の水を含み;かつ前記材料は少なくとも1%の潤滑剤を含む、材料
を作製する方法であって、任意の順序で、
非ヒトコラーゲン分子の水溶液もしくは懸濁液をコラーゲンフィブリルにフィブリル化するステップ、
前記コラーゲンフィブリルを、それらを少なくとも1種の架橋剤と接触させることによって架橋するステップ、
前記架橋コラーゲンフィブリルを、それらが40重量%未満の水を含むように脱水するステップ、
少なくとも1重量%の少なくとも1種の潤滑剤を前記材料中に組み込むステップ、
を含む方法;または
(ii)組換え非ヒトコラーゲンフィブリルのネットワークを含む材料であって、前記コラーゲンは、実質的に3-ヒドロキシプロリン、および任意選択で、実質的にヒドロキシリシンを含まず;前記材料は、25重量%以下の水を含み;かつ前記材料は、少なくとも1%の潤滑剤を含む、材料
を作製する方法であって、任意の順序で、
非ヒトコラーゲン分子の水溶液もしくは懸濁液をコラーゲンフィブリルにフィブリル化するステップ、
前記コラーゲンフィブリルを、それらを少なくとも1種の架橋剤と接触させることによって架橋するステップ、
前記架橋コラーゲンフィブリルを、それらが25重量%以下の水を含むように脱水するステップ、
少なくとも1重量%の少なくとも1種の潤滑剤を前記材料中に組み込むステップ、
を含む方法。
[請求項2]
(i)である、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
前記非ヒトコラーゲン分子が、哺乳動物または他の動物から単離される、請求項2に記載の方法。
[請求項4]
前記非ヒトコラーゲン分子が、実質的に3-ヒドロキシプロリン、および任意選択で、実質的にヒドロキシリシンを含まない組換え非ヒトコラーゲン分子である、請求項2に記載の方法。
[請求項5]
(ii)である、請求項1に記載の方法。
[請求項6]
前記材料中の前記コラーゲンフィブリルの10重量%未満が、5μm以上の直径を有するコラーゲン線維の形態であり、それらの長さの100μm以上に対して整列されたフィブリルの形態であり、またはその両方である、請求項5の記載の方法。
[請求項7]
前記材料を、上面および下面、または内面および外面を有するものに注型し、成形し、または形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
[請求項8]
フィブリル化するステップが、塩または塩の組合せを添加することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項9]
フィブリル化するステップが、コラーゲンの水溶液または懸濁液のpHを、酸、塩基、または緩衝剤で5.5以上のpHに調整することを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項10]
前記架橋剤が、アミン、カルボン酸、硫酸塩、亜硫酸塩、スルホン酸塩、アルデヒド、ヒドラジド、スルフィドリル、ジアジリン、アリール、アジド、アクリレート、エポキシド、フェノール、クロム化合物、植物性タンニン、およびシンタンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
[請求項11]
前記コラーゲンフィブリルのネットワークを、それらを少なくとも1種の脱水(dehydrating)または排水(dewatering)溶媒と接触させることによって脱水するステップを含む、請求項1に記載の方法。
[請求項12]
前記少なくとも1種の潤滑剤を、前記材料の上にまたは全体にわたって一様に適用するステップであって、前記材料の上または同一単位体積中の前記少なくとも1種の潤滑剤の重量による濃度が、20%以下変化する、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
[請求項13]
表面コーティング材または表面仕上げ材を、前記材料の上にまたは全体にわたって一様に適用するステップであって、前記材料の上または同一単位体積中の前記表面コーティング材または表面仕上げ材の重量による濃度が、20%以下変化する、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
[請求項14]
染料、ステイン、顔料、樹脂、ポリマー、または塗料を、前記材料の上にまたは全体にわたって一様に分布するステップであって、前記材料の同一単位体積中の染料、ステイン、顔料、樹脂、ポリマー、または塗料の重量による濃度が、20%以下変化する、ステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
[請求項15]
前記材料の中または上に少なくとも1種の充填剤を組み込むステップをさらに含むか;あるいは前記材料の中もしくは上に少なくとも1種の織りもしくは不織材料を組み込むステップまたは前記材料を少なくとも1種の織りもしくは不織材料中に組み込むステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【配列表】