(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】永久磁石直流モータ及び冷却ファンモジュール
(51)【国際特許分類】
H02K 23/30 20060101AFI20220725BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H02K23/30
H02K3/18 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017073508
(22)【出願日】2017-04-03
【審査請求日】2020-04-01
(31)【優先権主張番号】201610201540.5
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ルイ フェン チン
(72)【発明者】
【氏名】フェイ リウ
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0210299(US,A1)
【文献】特開2015-211587(JP,A)
【文献】国際公開第2014/108942(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 23/30
H02K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石直流モータであって、
Pが1を超える整数であるとき、2P個の磁極を有するステータと、
前記ステータに回転可能に取り付けたロータであって、回転軸と、前記回転軸に固定されたロータコアと、整流子と、巻線とを備え、前記ロータコアは、mが1を超える奇数であるとき、m×P個の磁極歯を備え、前記整流子は、kが1又は2に等しいとき、k×m×P個の整流子片を備え、隣接する磁極歯は、それらの間に前記巻線を収容するための巻線スロットを定め、そして前記ロータは同電位の整流子片を接続するための均等ワイヤをさらに備えている、ロータと、を備え、
前記巻線は、各々が直列に直接接続されたP個のコイルを有する複数の巻線ユニットを備え、前記P個のコイルは、同相のP個の磁極歯の周りにそれぞれ巻き付け、各巻線ユニットの2つの端部の各々は導出線を備え、前記導出線は、前記巻線スロット内の前記巻線ユニットから延びて前記整流子の整流子片に直接接続され、異なる巻線スロットから延びる2本の導出線は何れも、前記整流子片の外側の位置で互いに離間し、
1本の導出線と他の導出線とが交差しないように、
コイルのうち対応する1つのコイルの1本の前記導出線は、
前記対応する1つのコイルを受け入れる巻線スロットを通して単に延び出るのではなく、1つ又は2つの隣接する磁極歯を横切って延びた後に、1つの対応する整流子片又は対応する整流子片と同電位の別の整流子片に接続されることを特徴とする永久磁石直流モータ。
【請求項2】
前記巻線は連続的なワイヤによって巻き付ける、請求項1に記載の永久磁石直流モータ。
【請求項3】
前記巻線の前記巻線ユニットの一方の前記導出線は、前記巻線ユニットの最後の1つから延び出て、1つ又は2つの隣接する磁極歯を横切って延びた後に、前記巻線ユニットのワイヤ端子が、他の巻線ユニットの前記導出線のうち前記整流子片の近くに位置する端部から離れて離間する様式で、1つの対応する整流子片又は対応する整流子片と同電位の別の整流子片に接続される、請求項1又は2に記載の永久磁石直流モータ。
【請求項4】
前記巻線は、nが0を超えるがP未満の整数であるときn個の層を備え、各層はk×m個の巻線ユニットを備え、前記k×m×P個の整流子片の一部の各整流子片は、2n個の巻線ユニットに同時に接続され、前記k×m×P個の整流子片の別の部分の各整流子片は、n個の巻線ユニットに同時に接続され、前記k×m×P個の整流子片の残りの前記整流子片は、何れの巻線ユニットにも接続されない、請求項1から3の何れかに1つ記載の永久磁石直流モータ。
【請求項5】
1つの共有整流子片に接続された前記2n個の巻付けユニットでは、n個の巻付けユニットを時計回り方向に巻き付け、他のn個の巻線ユニットを反時計回り方向に巻き付ける、請求項4に記載の永久磁石直流モータ。
【請求項6】
kは2に等しく、nは1に等しく、各磁極歯に、それぞれ2つの巻線ユニットに属する2つのコイルを巻き付け、又は
kは2に等しく、nは2に等しく、各磁極歯に、それぞれ4つの巻線ユニットに属する4つのコイルを巻き付ける、請求項4に記載の永久磁石直流モータ。
【請求項7】
該直流モータは、前記整流子の前記整流子片に電気的に接続されるための正のブラシ及び負のブラシをさらに備え、前記巻線の各層のk×m個の前記巻線ユニットは、前記正のブラシ及び前記負のブラシに電気的に接続された2つの並列な分岐を形成する、請求項1から6の何れか1つに記載の永久磁石直流モータ。
【請求項8】
Pは2に等しく、mは3に等しく、該直流モータは磁極が4つでスロットが6つのモータであり、又は
Pは3に等しく、mは3に等しく、該直流モータは磁極が6つでスロットが9つのモータであり、又は
Pは4に等しく、mは3に等しく、該直流モータは磁極が8つでスロットが12個のモータである、請求項1から7の何れか1つに記載の永久磁石直流モータ。
【請求項9】
ファンと、請求項1から8の何れか1つに記載の永久磁石直流モータとを備えることを特徴とする冷却ファンモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002] この発明は、直流モータに、特に永久磁石直流モータ、及び永久磁石直流モータを有する冷却ファンモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
[0003] 永久磁石直流(PMDC)モータは、多くの用途で広く使用されてきた。1つの用途では、PMDCモータは、車両エンジンを冷やすためのファンモータとして使用される。車両における安全要求のために、ファンモータは、他の用途よりもより厳密な安全性及び信頼度を有することが必要とされる。
【0003】
[0004] PMDCモータは、一般に、整流子を持つ巻線形ロータを含む。このタイプのロータは、アーマチャ巻線が巻き付けられる複数の磁極歯を含む。巻線は、磁極歯を取り囲んでコイルユニットを形成する。コイルユニットは、整流子の片に接続された導出線を有する。整流子片に接続されたコイルユニットの導出線が互いに交差する場合、短絡が容易に発生し、それによりモータ機能不全を起こすことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005] 従って、性能が安定したPMDCモータ、及びPMDCモータを使用する冷却ファンモジュールに対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006] 本発明の1つの実施形態は永久磁石直流モータを提供し、永久磁石直流モータは、Pが1を超える整数であるとき、2P個の磁極を有するステータと、ステータに回転可能に取り付けたロータであって、回転軸と、回転軸に固定されたロータコアと、整流子と、巻線とを備え、ロータコアは、mが1を超える奇数であるとき、m×P個の磁極歯を備え、整流子は、kが1又は2に等しいとき、k×m×P個の整流子片を備えるロータと、を備え、巻線は、各々が直列に直接接続されたP個コイルを有する複数の巻線ユニットを備え、P個のコイルは、同相のP個の磁極歯の周りにそれぞれ巻き付け、各巻線ユニットの2つの端部は整流子の整流子片に直接接続され、全ての巻線ユニットのうち整流子片に近い2つの端部における導出線の端部は互いに交差しない。
【0006】
[0007] 巻線は、連続的なワイヤによって巻き付けることが好ましい。
【0007】
[0008] 巻線の巻線ユニットの一方の導出線は、巻線ユニットの最後の1つから延び出て、1つ又は2つの隣接する磁極歯を横切って延びた後に、巻線ユニットのワイヤ端子が、他の巻線ユニットの導出線のうち整流子片の近くに位置する端部から離れて離間する様式で、1つの対応する整流子片又は対応する整流子片と同電位の別の整流子片に接続されることが好ましい。
【0008】
[0009] 巻線は、nが0を超えるがP未満の整数であるときn個の層を備え、各層はk×m個の巻線ユニットを備え、k×m×P個の整流子片の一部の各整流子片は、2n個の巻線ユニットに同時に接続され、k×m×P個の整流子片の別の部分の各整流子片は、n個の巻線ユニットに同時に接続され、k×m×P個の整流子片の残りの整流子片は、何れの巻線ユニットにも接続されないことが好ましい。
【0009】
[0010] 1つの共有整流子片に接続された2n個の巻付けユニットでは、n個の巻付けユニットを時計回り方向に巻き付け、他のn個の巻線ユニットを反時計回り方向に巻き付けることが好ましい。
【0010】
[0011] kは2に等しく、nは1に等しく、各磁極歯に、それぞれ2つの巻線ユニットに属する2つのコイルを巻き付けることが好ましい。代替的に、kは2に等しく、nは2に等しく、各磁極歯に、それぞれ4つの巻線ユニットに属する4つのコイルを巻き付けることが好ましい。
【0011】
[0012] ロータは、同電位の整流子片を接続するための均等ワイヤをさらに備えることが好ましい。
【0012】
[0013] 直流モータは、整流子の整流子片に電気的に接続されるための正のブラシ及び負のブラシをさらに備え、巻線の各層のk×m個の巻線ユニットは、正のブラシ及び負のブラシに電気的に接続された2つの並列な分岐を形成することが好ましい。
【0013】
[0014] Pは2に等しく、mは3に等しく、直流モータは磁極が4つでスロットが6つのモータであることが好ましい。代替的に、Pは3に等しく、mは3に等しく、直流モータは磁極が6つでスロットが9つのモータであることが好ましい。代替的に、Pは4に等しく、mは3に等しく、直流モータは磁極が8つでスロットが12個のモータであることが好ましい。
【0014】
[0015] 本発明の1つの実施形態は、冷却ファンモジュールをさらに提供する。冷却ファンモジュールは、ファンと、上述した何れかの永久磁石直流モータとを備える。
【0015】
[0016] 本発明の上記実施形態は、従来技術と比べて、以下の利点、すなわち整流子片に接続された巻線ユニットの導出線は互いに交差せず、それにより巻線ユニットの短絡を効果的に回避し、モータの通常動作を保証することができる、利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による冷却ファンモジュールを示す図である。
【
図2】
図1の冷却ファンモジュールのPMDCモータの分解組立図である。
【
図3】
図2のPMDCモータのロータを示す図である。
【
図5】巻線と磁極歯と整流子片との間の接続を示す図である。
【
図6】
図4のロータの巻付け方式の部分を示す図である。
【
図7】巻線と
図4の整流子片とステータブラシとの間の回路接続を示す図である。
【
図8】別の実施形態による、巻線、整流子片及びステータブラシの間の回路接続を示す図である。
【
図9】
図3のロータの代替例の巻付け様式を示す図である。
【
図10】
図9のロータの巻付け方式の部分を示す図である。
【
図11】
図3のロータの代替例の巻付け様式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0029] 本発明の実施形態及び利点が以下に添付図面を参照しながら説明される。各図は、限定というよりも単なる例示であることに注意されたい。各図は、説明の容易化だけを意図し、実寸を示さないことに注意されたい。
【0018】
[0030]
図1を参照して、本発明の冷却ファンモジュール100は、ファン80と、ヒートシンク又は別の取付け部品に適切に取り付けたハウジング90とを含む。ハウジング90は、ファン80を駆動して冷却空気流を発生させる永久磁石直流(PMDC)モータ50を支持する。
【0019】
[0031]
図2を参照して、PMDCモータ50は、ステータ10及びロータ20を含む。
【0020】
[0032] ステータ10は、開放端を持つ外側ケース11と、外側ケース11の内壁面に取り付けた永久磁石12と、開放端に取付け可能なエンドキャップ13と、外側ケース11に取り付けた軸受14と、キャップ13に取り付けた軸受15とを含む。PMDCモータ50の磁極の極対の数を表わすためにPを使用する場合、この実施形態では永久磁石12は6つの磁極を形成するので、Pは3である。
【0021】
[0033]
図3も参照して、ロータ20は、回転軸21と、ロータコア22と、回転軸21に固定された整流子23と、ロータコア22の周りに巻き付けた巻線24とを含み、回転軸21の2つの端部が、それぞれ2つの軸受14、15によって支持され、ステータ10に対してロータ20が回転できるようになっている。
【0022】
[0034] ロータコア22は複数の磁極歯を含み、各2つの隣接する磁極歯は、それらの間に巻線24のコイルを収容するために巻線スロットを定める。ロータ20の磁極歯の数は、磁極対の数の奇数倍である。ロータ20の磁極対の数をm×Pによって表わす場合、mは1を超える奇数である。この実施形態では、Pは3であり、mも3であり、ロータ20磁極対の数は9である。
【0023】
[0035] 整流子23は複数の整流子片を含む。この実施形態では、整流子片の数は、磁極歯の数の2倍、即ち18である。整流子片の数をk×(m×P)によって表わす場合、kは2に等しい。別の実施形態では、整流子片の数は、磁極歯の数と等しくすることができ、すなわちkは1に等しい。
【0024】
[0036] 巻線24は、各々を磁極歯のうちの対応する1つに巻き付けた複数のコイルを含む。この実施形態では、コイルの数は8であり、各々の磁極歯に2つのコイルを巻き付ける。
【0025】
[0037]
図4を参照して、均等ワイヤ、整流子片及びロータ20の磁極歯は、展開図によって直線的に表される。整流子22の片をK1~K18によって表わす。整流子片のうちの各3つは、S極のような同じ極性を持つ、すなわち同じ電位を持つステータ10の磁極に対応する。整流子片のうちの各3つは、対応する均等ワイヤE1~E6によって電気的に接続される。整流子片K1、K7及びK13は、均等ワイヤE1によって電気的に接続され、整流子片K2、K8及びK14は、均等ワイヤE2によって電気的に接続され、同様に、同電位の他の整流子片は、対応する均等ワイヤによって等電位にされる。
【0026】
[0038] ロータコア23の9個の磁極歯をT1~T9によって表わし、巻線24の18個のコイルをC1~C9及びC1’~C9’によって表わす。コイルC1~C9は全て時計回り方向に巻き付け、一方、コイルC1’~C9’は全て反時計回り方向に巻き付ける。各磁極歯Tnに2つのコイルCn及びCn’を巻き付け、nは、1から9までの数のうちの1つである。
【0027】
[0039] ロータコア23の磁極歯T1~T9は、それらの相に応じて3つの群に分け、各群は、同じ相を持つ3つの極歯を含むことができる。同じ群における磁極歯間の角距離は、同極性のステータ極間の角距離と等しい。ステータ10に対してロータ20が回転するとき、各群の磁極歯は、同時に、S極のような同極性の磁極と整列する。例えば、磁極歯T1がステータ20の1つのS極と整列するとき、磁極歯T1と同相の磁極歯T4及びT7は、ステータ20の他の2つのS極と整列する。
【0028】
[0040]
図5も参照して、巻線24の巻付けプロセスが以下にさらに説明される。この実施形態では、ワイヤは、整流子片K1に接続された始まり端子を有する。次いで、ワイヤは、同相の第1の群の磁極歯T1、T7及びT4の周りに時計回り(CW)方向に連続して巻き付け、次いで、整流子片K8に接続されて巻線ユニットWAを形成する。具体的には、ワイヤは整流子片K1から始まる。ワイヤは、いくつかの折返し点を磁極歯T1の周りに時計回り方向に巻き付けてコイルC1を形成した後に、磁極歯T7まで直接延び、磁極歯T7の周りにいくつかの折返し点を時計回り方向に巻き付けてコイルC7を形成し、次いで、ワイヤは、磁極歯T4まで直接延び、ワイヤは、いくつかの折返し点を磁極歯T4の周りに巻き付けてコイルC4を形成し、最後にワイヤは、整流子片K8に接続される。この場合、コイルC1、C7及びC4は直列に直接接続される。この明細書及び特許請求の範囲では、直列に直接接続されたコイルは、その2つの端子だけで対応する整流子片に接続する巻線ユニットと呼ばれる。すなわち、巻線ユニットは、2つの整流子片だけに直接接続し、あらゆる2つの隣接するコイルは互いに直接接続されるが、いかなる整流子片にも接続されない。特に、巻線ユニットWAに関して、それは、その2つの端子で整流子片K1及びK8に接続し、整流子片K8は、始まり片K1に隣接する整流子片K2と同相であり、K2と同相の全ての片のうち、整流子片K8は、磁極歯T4に最も近い片である。
【0029】
[0041] ワイヤは、整流子片K8に接続された後、同相の第2の群の歯T3、T6、T9の周りに反時計回り(CCW)方向に連続して巻き付けてコイルC3’、C6’、C9’を連続して形成し、次いで、整流子片K15に接続されて巻線ユニットWB’を形成し、整流子片K15は、整流子片K9と同相であり、整流子片K9よりも磁極歯T9により近い。その後、ワイヤは、同相の第3の群の歯T8、T5、T2の周りに時計回り方向に連続して巻き付けてコイルC8、C5、C2を連続して形成し、次いで、整流子片K4に接続されて巻線ユニットWCを形成し、整流子片K4は、整流子片K16と同相であり、整流子片K16よりも磁極歯T2により近い。次いで、ワイヤは、同相の第1の群の歯T1、T4、T7の周りに反時計回り方向に連続して巻き付けてコイルC1’、C4’、C7’を連続して形成し、次いで整流子片K11に接続されて巻線ユニットWA’を形成し、整流子片K11は、整流子片K5と同相であり、整流子片K5よりも磁極歯T7により近い。
次いで、ワイヤは、同相の第2の群の歯T6、T3、T9の周りに時計回り方向に連続して巻き付けてコイルC6、C3、C9を連続して形成し、次いで、整流子片K18に接続されて巻線ユニットWBを形成し、整流子片K18は、整流子片K12と同相であり、整流子片K12よりも磁極歯T7により近い。ワイヤは、同相の第3の群の歯T8、T2、T5の周りに反時計回り方向に連続して巻き付け、コイルC8’、C2’、C5’を連続して形成する。
【0030】
[0042] しかしながら、
図6も参照して、ワイヤ端子が、磁極歯T5の周りに巻き付けた後、整流子片K7に直接接続される場合、すなわち
図6において磁極歯T5と整流子片K7との間をつなぐ破線によって示すように、ワイヤ端子は、整流子片K18に隣接する整流子片K1と同相の全ての整流子片の中で、磁極歯T5に最も近い整流子片に接続される場合、整流子片K8に接続されたコイルC3’の導出線と交差し、それによりモータは作動中に容易に短絡を生ずることがある。従って、この本発明では、ワイヤを異なる様式で巻き付け、結果としてワイヤ端子は、磁極歯T5の周りに巻き付けてコイルC5’を形成した後に、磁極歯T4の底部側から磁極歯T4を横切り、磁極歯T4と磁極歯T3との間の巻線スロットを通って延び、次いで整流子片K7に接続され、それによってワイヤ端子が整流子に近い場所で別の導出線と交差するのを防止する。示したように、整流子片K7及びK8に接続された導出線は、交差するように見える。しかしながら、磁極歯T3と磁極歯T4との間の同じ巻線スロットから、従って巻付けプロセス中に導き出した2本の導出線は、巻線スロット内で又は巻線スロットに近い場所で交差するが、整流子に近い位置で交差しない。従って、この本発明では、異なる巻線スロットから延び出る導出線は互いに交差しない。さらに、この本発明で説明した「交差しない」状況は、同じ整流子片に接続された導出線には当てはまらない。
【0031】
[0043] 上記巻付けプロセスから分かるように、各歯には、それぞれ2つの異なる巻線ユニットに属する2つのコイルを巻き付ける。2つの巻線ユニットの2つの端部が異なる整流子片に接続される。例えば、磁極歯T1には2つのコイルC1及びC1’を巻き付け、コイルC1及びC1’はそれぞれ異なる巻線ユニットWA及びWA’に属し、異なる巻線ユニットは異なる整流子片に接続される。
【0032】
[0044] この本発明では、各巻線ユニットは、2つの整流子片に直接接続される。これらの2つの整流子片では、一方の整流子片は、他方の整流子片に隣接する別の整流子片と同電位である。例えば、巻線ユニットWAは整流子片K1及びK8に接続され、整流子片K8及びK2は同電位であり、整流子片K2は整流子片K1に隣接する。同様に、K1とK7とは同電位であり、K7はK8に隣接している。コイルが同電位の整流子片に接続されたとき、回路は等価である。すなわち、巻線ユニットWAの2つの端子は、隣接する整流子片K1及びK2に接続することができる。代替的に、2つの端子の一方は整流子片K1に接続することができ、他方の端子は、整流子片K8又はK14のような、整流子片K2と同電位の整流子片に接続する。代替的に、2つの端子は、整流子片K7及びK8に接続し、又は整流子片K13及びK14に接続することができる。全体で、巻線ユニットの2つの端子は、一対の隣接する整流子片に接続することができ、2つの隣接した整流子片の何れも、同電位の別の整流子片によって置き換えることができる。整流子片に接続するためにワイヤが延びる距離を最小にすることが好ましい。例えば、巻線ユニットのワイヤを巻き付けてコイルC4を形成した後、ワイヤは、同電位の整流子片K2、K8及びK14の群のうち、より遠い整流子片K2及びK214に接続されるよりもむしろ最も近い整流子片K8に接続されて、ワイヤの巻付け時間及び材料費をさらに低減する。
【0033】
[0045] 1つの巻線ユニットのコイルは、同相の磁極歯に巻き付け、従ってこれらのコイルも同相であり、すなわちそれらは、同極性のステータの磁極と同時に整列することを理解されたい。同じ巻線ユニット内のコイルは、上記実施形態に図示したのとは異なるシーケンスで巻き付けることができる。例えば、磁極歯T1、T7及びT4は同相であり、対応するコイルC1、C7及びC4も同相である。従って、コイルC1、C7及びC4の巻付けシーケンスは、実際の要求に応じて調整することができる。例えば、コイルC1を初めに巻き付け、コイルC4及びC7の巻付けがこれに続くことができる。
【0034】
[0046]
図7も参照して、この実施形態の直流モータは、二対のブラシを含む。各対のブラシは、正のブラシB+及び負のブラシB-を含み、直流モータの18個のコイルは、合計2つの並列な分岐を形成し、各分岐が9つのコイルを含み、各分岐は、正のブラシB+と負のブラシBとの間に接続される。
【0035】
[0047] この実施形態の直流モータのロータは、各々が直列に直接接続された3つのコイルを含む、合計6つの巻線ユニットを形成する。以下に、本発明の直流モータにおける、巻線ユニットの数及びロータのコイルの規則性が、詳細に説明される。
【0036】
[0048] この実施形態では、全ての巻線ユニットは、巻線ユニットを巻き付ける磁極歯又は巻付け方向の何れかが互いに異なる。この種の巻線は単層巻線と呼ばれる。ロータの巻線が少なくとも一対の巻線ユニットを含む場合、各対の巻線ユニットは、巻線ユニットを巻き付ける磁極歯及び巻付け方向の両方が同一の2つの並列な巻線ユニットを含み、この種の巻線は二層巻線と呼ばれることを理解されたい。各巻線ユニットのコイルの数は、同相の1つの群の磁極歯の数と等しいので、ロータ巻線が単層巻線であれば、ロータの巻線ユニットの数は、k×mによって表わされることに注目されたい。従って、ロータ巻線がn層巻線である場合、ロータの巻線ユニットの数はn×k×mによって表わされると推定できる。
【0037】
[0049]
図8は、本発明の別の実施形態による直流モータのブラシ、ロータ巻線及び整流子片の回路接続を示す略図である。直流モータも、磁極が6つ、スロットが9つで、片が18個の直流モータであり、すなわち磁極数2Pは6であり、歯数m×Pは9でありつまりmは3に等しく、また整流子片の数は歯数の2倍であり、すなわちkは2に等しい。
図8の実施形態は、
図7の実施形態と比べて、
図8の直流モータの巻線は二層巻線であり、すなわちnは2に等しく、巻線ユニットの数及びコイルの数は、それぞれ
図3の直流モータのそれらの2倍である点で、主に異なる。
【0038】
[0050] 具体的には、
図7の直流モータは、各々が直列に直接接続された3つ(P個)のコイル有する、6つ(n×k×m=1×2×3=6)の巻線ユニットを含み、
図8の直流モータは、各々が同じ3つのコイルを有する、12個(n×k×m=2×2×3=12)の巻線ユニットを含む。12個の巻線ユニットは、合計で六対の巻線ユニットを形成し、各対は、2つの並列な巻線ユニットを含む。この実施形態では、2つの巻線ユニットは、巻線ユニットを巻き付ける磁極歯、巻付け方向、及び巻線ユニットが接続される整流子片が同一である。
【0039】
[0051]
図8に示した実施形態では、コイルの総数は歯数の4倍である。従って、各歯には、それぞれ、4つの巻線ユニットに属する4つのコイルを巻き付ける。4つの巻線ユニットでは、2つの巻線ユニットが並列に接続され、各々は、整流子片の同じ対に接続された2つの端部を有し、すなわち2つの巻線ユニットは同じ対の巻線ユニットに属し、その一方、他の巻線ユニットは並列に接続され、各々は、整流子片の別の同じ対に接続された2つの端部を有し、すなわち他の2つの巻線ユニットは別の同じ対の巻線ユニットに属する。例えば、歯T5には2つのコイルC5及び2つのコイルC5’を巻き付ける。2つのコイルC5は、内側層及び外側層(又は第1の層及び第2の層)にそれぞれ巻き付け、同じ対の整流子片K15及びK4に接続された2つの端部を有する2つの巻線ユニットに属する。他の2つのコイルC5’は、内側層及び外側層(又は第1の層及び第2の層)に巻き付け、別の対の整流子片K7及びK18に接続された2つの端部を有する2つの巻線ユニットに属する。
【0040】
[0052]
図9から
図12も参照して、ワイヤ端子の延在経路は、ワイヤ端子と全ての巻線ユニットの導出線の2つの端部とが交差しない限り、改変できることを理解されたい。具体的には、ワイヤ端子は、磁極歯T5の周りに反時計回り方向に巻き付けてコイルC5’を形成した後に、磁極歯T4の頂部側から磁極歯T4を横切り、次いで、磁極歯T3の底部側から磁極歯T3を横切って連続して延び、次いで整流子片K7に接続されてここで終端し、ワイヤ端子と他の巻線ユニットの各々の導出線とは交差しない(
図9及び
図10)。代替的に、ワイヤ端子は、磁極歯T5の周りに反時計回り方向に巻き付けてコイルC5’を形成した後、磁極歯T6、T7の底部側から磁極歯T6、T7を横切って延び、次いで整流子片K1と同電位の整流子片K13に接続されてここで終端し、ワイヤ端子と巻線ユニットの他の導出線の各々とは交差しない(
図11及び
図12)。
【0041】
[0053] 他の実施形態では、磁極、磁極歯及び整流子片の数は変更することができ、巻線ユニットの直列接続されたコイルの数は、それに応じて変更できることを理解されたい。例えば、磁極の数は8つ又は4つに決め、磁極歯の数は12個又は6つに決め、整流子片の数は24個又は12個に決めることができ、すなわち直流モータは、歯が8つでスロットが12個の直流モータ、又は歯が4つでスロットが6つの直流モータである。
【0042】
[0054] 他の実施形態では、巻線24の巻付け様式は変更できることを理解されたい。例えば、巻線は不連続にすることができ、全ての巻線ユニットの2つの端部はそれぞれ異なる整流子片に接続される。
【0043】
[0055] 冷却ファンモジュールの直流モータでは、各巻線ユニットは、直列に直接接続されたP個のコイルを含み、各巻線ユニットの2つの端部は整流子片に接続され、整流子片に接続された巻線ユニットの導出線は、互いに交差せず、それにより巻線ユニットの短絡を効果的に回避し、モータの通常動作を保証することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 ステータ
20 ロータ
21 回転軸
22 ロータリコア
23 整流子
24 軸受
K1からK18 整流子片
WA、WA’、WB、WB’、WC、WC’ 巻線ユニット
T1からT9 磁極歯
C1~C9、C1’~C9’ コイル
E1からE6 ワイヤ