(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】経路設定装置および経路設定方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220725BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2017219132
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】川畑 光
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191264(JP,A)
【文献】特開2017-182176(JP,A)
【文献】特開2002-063690(JP,A)
【文献】特開2004-318406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G01C 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車の経路を設定する経路設定装置であって、
出発地から、対象者を乗車させる第1乗車位置を経由して、目的地に至るメイン経路を設定するメイン経路設定部と、
前記第1乗車位置に前記自動運転車が待機しているときに、前記自動運転車の車外を撮影するカメラが生成した撮影画像に基づいて前記対象者を検出し、前記第1乗車位置よりも、前記第1乗車位置に前記自動運転車が待機した後に
前記対象者を検出していない状態から初めて前記対象者を検出したときの前記対象者の位置側に、次回以降、前記第1乗車位置に代えて前記自動運転車を経由させる第2乗車位置を設定する他乗車位置設定部と、
前記メイン経路上の分岐点から、前記第2乗車位置を経由して、前記メイン経路上の合流点に至るサブ経路を設定するサブ経路設定部と、
を備えることを特徴とする経路設定装置。
【請求項2】
前記他乗車位置設定部は、
前記撮影画像に基づいて、前記対象者の顔画像を用いた顔認識を行って、前記対象者を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の経路設定装置。
【請求項3】
前記他乗車位置設定部は、
前記撮影画像に基づいて、前記第1乗車位置に前記自動運転車が待機した後に初めて前記対象者を検出したときの前記対象者の位置である候補位置を検出すると共に、前記候補位置と前記第1乗車位置との間の領域の環境を検出し、検出した環境に基づいて、前記候補位置にできるだけ近く、前記サブ経路設定部によって前記サブ経路を設定可能な位置を前記第2乗車位置とする
ことを特徴とする請求項1または2に記載の経路設定装置。
【請求項4】
前記他乗車位置設定部は、
前記第2乗車位置を設定した後、前記第2乗車位置に前記自動運転車が待機しているときに前記カメラが生成した前記撮影画像に基づいて前記対象者を検出し、前記第2乗車位置に前記自動運転車が待機した後に初めて前記対象者を検出したときの前記対象者の位置側に前記自動運転車を更に移動させることが可能か否かを判定し、可能な場合は、前記第2乗車位置に前記自動運転車が待機した後に初めて前記対象者を検出したときの前記対象者の位置側に前記第2乗車位置を再設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の経路設定装置。
【請求項5】
自動運転車の経路を設定する経路設定装置による経路設定方法であって、
前記経路設定装置のメイン経路設定部が、出発地から、対象者を乗車させる第1乗車位置を経由して、目的地に至るメイン経路を設定するステップと、
前記経路設定装置の他乗車位置設定部が、前記第1乗車位置に前記自動運転車が待機しているときに、前記自動運転車の車外を撮影するカメラが生成した撮影画像に基づいて前記対象者を検出し、前記第1乗車位置よりも、前記第1乗車位置に前記自動運転車が待機した後に
前記対象者を検出していない状態から初めて前記対象者を検出したときの前記対象者の位置側に、次回以降、前記第1乗車位置に代えて前記自動運転車を経由させる第2乗車位置を設定するステップと、
前記経路設定装置のサブ経路設定部が、前記メイン経路上の分岐点から、前記第2乗車位置を経由して、前記メイン経路上の合流点に至るサブ経路を設定するステップと、
を含むことを特徴とする経路設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路設定装置および経路設定方法に関し、特に、自動運転によって乗車位置に移動し、乗車位置で対象者を乗車させる自動運転車の経路を設定する経路設定装置および経路設定方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転に関する技術が急速に発展してきており、運転手による運転を伴うことなく車両を走行させる自動運転についても、種々の技術が提案されている。このような自動運転に関し、特許文献1には、自動運転車を予め定められた車寄せ(ユーザが乗り降りする場所)に移動させ、当該車寄せにてユーザを乗車させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、自動運転車にユーザを乗車させる際、ユーザ宅前等の予め定められた固定的な車寄せに自動運転車が移動し、当該車寄せにおいて、ユーザの乗車が行われる。つまり、ユーザは、自動運転車に乗車するために、基本的には徒歩によって、自身が待機する場所から当該車寄せに移動する必要がある。このため、特許文献1の技術では、ユーザが待機する場所から当該車寄せが遠い場合に、ユーザは長い距離を徒歩によって移動する必要があり、ユーザに不便さを感じさせてしまう場合があるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、自動運転車を所定の場所に移動させて、当該所定の場所でユーザを自動運転車に乗車させる場合に、ユーザが乗車位置まで歩く距離をできるだけ短くし、ユーザが不便さを感じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明では、自動運転車の経路を設定する経路設定装置は、出発地から、対象者を乗車させる第1乗車位置を経由して、目的地に至るメイン経路を設定する。一方で、経路設定装置は、第1乗車位置に自動運転車が待機しているときにカメラが生成した撮影画像に基づいて対象者を検出し、第1乗車位置よりも、第1乗車位置に自動運転車が待機した後に対象者を検出していない状態から初めて対象者を検出したときの対象者の位置側に、次回以降、前記第1乗車位置に代えて前記自動運転車を経由させる第2乗車位置を設定する。その上で、経路設定装置は、メイン経路上の分岐点から、第2乗車位置を経由して、メイン経路上の合流点に至るサブ経路を設定する。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、対象者が自動運転車に乗車する乗車位置を、第1乗車位置よりも、ユーザが初めてカメラに撮影されたときのユーザの位置側、つまり、ユーザが待機しているものと想定される場所により近い位置とすることができ、これにより、ユーザが乗車位置まで歩く距離を短くすることができ、ユーザが感じる不便さを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る輸送サービス提供システムの機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】ユーザ管理データベースのレコードの内容を示す図である。
【
図3】乗車希望場所の周辺の一例を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る経路設定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る経路設定装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る輸送サービス提供システム1の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、輸送サービス提供システム1は、本実施形態に係る経路設定装置2と、経路設定装置2に接続されたカメラシステム3と、経路設定装置2に接続された自動運転制御装置4とを備えている。経路設定装置2、カメラシステム3および自動運転制御装置4は、自動運転車に搭載されている。
【0010】
輸送サービス提供システム1は、ユーザに輸送サービスを提供するシステムである。輸送サービスとは、自動運転車によってユーザを迎えに行き、一の場所から、他の場所にユーザを送り届ける(輸送する)サービスである。本実施形態において、自動運転車とは、運転手による運転を伴わずに完全に自動で走行することが可能な車両を意味する。自動運転車が自動運転により道路(公道を含む)を走行するために必要な物理的な環境の整備や、法的な環境の整備、その他の整備は、適切に行われているものとする。自動運転車は、輸送サービスの提供に利用されていない間は、所定の駐車施設に駐車される。
【0011】
本実施形態では、輸送サービスに関し、複数のユーザが事前に登録されると共に、各ユーザについて、乗車を希望する場所(以下、「乗車希望場所」という)に関する情報、および、降車を希望する場所(以下、「降車希望場所」という)に関する情報が事前に登録されている。そして、ユーザは、乗車希望場所から降車希望場所までの移動に輸送サービスを繰り返し利用する。なお、各ユーザについて、輸送サービスを利用する時間帯が重ならないように適切に調整される。例えば、高齢化が進む過疎地に住む高齢者が、病院に定期的に通う場合に、乗車希望場所としての自宅から、降車希望場所としての病院への移動に輸送サービスを利用する。本実施形態に係る輸送サービスによれば、サービスの提供に必要な労働力(運転手)を削減しつつ、特定の場所に移動するユーザの負担を減らすことができる。このため、本実施形態に係る輸送サービスは、高齢化が進む地域や、過疎化が進む地域において、今後、普及していくものと想定される。
【0012】
カメラシステム3は、車両の左側方を撮影する左側方カメラ3L、右側方を撮影する右側方カメラ3R、前方を撮影する前方カメラ3Fおよび後方を撮影する後方カメラ3B(それぞれ、特許請求の範囲の「カメラ」に相当)を有する。左側方カメラ3L、右側方カメラ3R、前方カメラ3Fおよび後方カメラ3Bは、それぞれ、ステレオカメラであり、水平方向に離間した2台のカメラのそれぞれにより同期をとって所定の周期で車外を撮影して撮影画像データ(撮影画像)を生成し出力する。以下では、説明の便宜のため、一のタイミングで一対の2台のカメラにより生成された一対の撮影画像データを、単に、撮影画像データという。
【0013】
自動運転制御装置4は、自動運転車の各部を制御して、自動運転を実行する装置である。自動運転制御装置4は、「車両の環境(車両が走行する周囲の状況、他の車両を含む障害物との離間距離、車両が走行する路面の状況等)を検出する各種センサ」や、「車両の状態(車両の現在位置や、進行方向、車速、加速度、ヨーレート、ギアの状態、ブレーキの状態等)を検出する各種センサ」、「車両の推進に関する各種機構(エンジンや、トランスミッション、ブレーキ、ステアリング等)を制御するECU」、「地図上の経路に関する情報を記憶する記憶装置」等に接続されており、車両の環境および車両の状態に応じてECUを制御して自動運転を実行する。
図1に示すように、自動運転制御装置4は、インターネット、電話網、その他の通信網を含んで構成されたネットワークNにアクセス可能であり、ネットワークNを介して他の装置と通信可能である。
【0014】
図1に示すように、経路設定装置2は、機能構成として、メイン経路設定部10、撮影画像取得部11、他乗車位置設定部12およびサブ経路設定部13を備えている。また、経路設定装置2は、記憶媒体として、道路データ記憶部20およびユーザ情報記憶部21を備えている。上記各機能ブロック10~13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0015】
道路データ記憶部20は、道路データ20aを記憶する。道路データ20aは、ノードおよびリンクによって定義される道路網において、ノードとリンクとの組み合わせによって定義される経路を探索するために必要なノード情報、および、リンク情報を含んでいる。ノードは、交差点、その他の道路網における結節点ごとに定義された点であり、リンクは、ノードとノードとの間の道路区間ごとに定義された線である。
【0016】
ユーザ情報記憶部21は、ユーザ管理データベース21aを記憶する。ユーザ管理データベース21aは、輸送サービスを利用するユーザごとにレコードを有するデータベースである。
図2は、ユーザ管理データベース21aの1件のレコードの内容を示す図である。
図2に示すように、ユーザ管理データベース21aの1件のレコードは、ユーザIDと、顔画像データと、降車位置情報と、第1乗車位置情報と、メイン経路情報と、第1回撮影データと、第2乗車位置情報と、サブ経路情報とを含む。ユーザIDは、ユーザを識別する識別情報である。顔画像データは、ユーザの顔が撮影されることによって生成された画像データである。後述するように顔画像データはユーザの顔認識に用いられるため、顔画像データは、ユーザの顔を正面から撮影することによって生成された画像データであることが望ましい。
【0017】
降車位置情報は、輸送サービスを利用するユーザを、降車希望場所で降車させる際に、自動運転車が停車すべき位置(以下、「降車位置」という)を示す情報である。例えば、ユーザが病院への移動に輸送サービスを利用する場合は、病院の近辺の停車が許可された領域内の適切な位置であり、また例えば、ユーザが、特定の駅への移動に輸送サービスを利用する場合は、駅に付随して設けられたロータリ内の適切な位置である。
【0018】
第1乗車位置情報は、輸送サービスを利用するユーザを、希望乗車場所で乗車させる際に、自動運転車が停車すべき位置(以下、「第1乗車位置」という)を示す情報である。なお、後に明らかとなる通り、ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用する場合、第2乗車位置が設定される場合があり、この場合、自動運転車がユーザを乗車させるために停車する位置は、第1乗車位置に代えて第2乗車位置となる。以下の説明では、第1乗車位置および第2乗車位置を区別しない場合、「乗車位置」という。以下、第1乗車位置についてより詳細に説明する。
【0019】
図3は、乗車希望場所がユーザの自宅である場合に、自宅の周辺を上空から見た様子の一例を模式的に示している。
図3の説明において方角(東西南北)は図中に示すとおりである。
図3において、符号HU1は、ユーザが居住する家屋である。ユーザが輸送サービスを利用する場合、自動運転車が乗車位置に至るまでの間、ユーザは、基本的には、家屋HU1内で待機する。家屋HU1は、壁KB1によって仕切られた四角形の敷地SK1(
図3において波線で囲まれた領域)の北側の端に建てられている。また、家屋HU1の南側には、玄関GK1が設けられている。敷地SK1は、その南側の端が道路D1に併設された歩道HD1に面している。敷地SK1と歩道HD1とが接する位置には、壁KB1で仕切られていない出入口M1が形成されおり、出入口M1を介して敷地SK1の内外に人間および自動運転車が出入り可能である。
【0020】
図3で例示するユーザの自宅は、家屋HU1に比して、敷地SK1が大きく、家屋HU1の玄関GK1と出入口M1との距離が大きい。従って、ユーザが、家屋HU1の玄関GK1から出入口M1まで徒歩で移動する場合、ある程度の労力と時間とを要することになる。
図3で例示する住居のように、敷地が大きく、家屋の玄関を出てから敷地の外に出るまでの距離が大きい住居は、都会よりも、高齢化や過疎化が進む田舎に多く存在する傾向がある。このような住居に高齢者が住んでいる場合、高齢者にとって、家屋の玄関を出てから敷地の外に出るまでの距離が特に負担になるものと想定される。
【0021】
敷地SK1の中には、図中、斜線で示す種々の障害物が存在している。本実施形態において、障害物は、車両の通行の障害となる物体のみならず、溝や、花壇等、自動運転車の進入を排除すべき領域を意味する。道路D1は、交差点X1と交差点X2とを直線的に結び、進行方向が東に向かう方向の道路である。なお、本実施形態では、進行方向が同じ1または複数の車線からなる片側の車線群を「道路」と表現している。リンクとノードとによって定義される道路網において、交差点X1にはノードND1が定義され、交差点X2にはノードND2が定義され、道路D1にはリンクLK1が定義されている。
【0022】
図3で例示した状況の場合、例えば、位置Q1が第1乗車位置とされる。
図3に示すように、位置Q1は、出入口M1の中央部に対応する位置であって、道路D1の端にできるだけ寄った位置である。自動運転車が位置Q1に停車していれば、ユーザは、出入口M1を出て、すぐに、自動運転車に乗車することができるため、位置Q1は、ユーザを乗車させる際に自動運転車が停車する位置として適切である。つまり、第1乗車位置は、希望乗車場所に近く、ユーザを乗車させるという観点から適切な位置とされる。
【0023】
ユーザ管理データベース21aの1件のレコードが有する他の情報(メイン経路情報、第1回撮影データ、第2乗車位置情報およびサブ経路情報)の内容については、後述する。一のユーザについてのユーザ管理データベース21aへのレコードの登録は、権限を有する者により所定の手段で適切に行われる。その際、ユーザID、顔画像データ、降車位置情報および第1乗車位置情報は適切に実データが登録される一方、メイン経路情報、第1回撮影データ、第2乗車位置情報およびサブ経路情報はヌル値とされる。
【0024】
輸送サービスの提供に際し、輸送サービス提供システム1は、ユーザが初めて(1回目に)輸送サービスを利用するときと、2回目以降に利用するときとで異なる処理を実行する。これを踏まえ、以下、ユーザが初めて輸送サービスを利用するステージと、ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用するステージとに分けて、輸送サービス提供システム1の処理について説明する。
【0025】
<ユーザが初めて輸送サービスを利用するステージ>
まず、ユーザが初めて輸送サービスを利用するステージにおける輸送サービス提供システム1の処理について説明する。
【0026】
メイン経路設定部10は、ユーザごとに、ユーザが初めて輸送サービスを利用する前の所定のタイミングでメイン経路を設定する。メイン経路とは、自動運転車が駐車施設において待機する位置(以下、「車両待機位置」という)を出発地とし、第1乗車位置を経由地とし、降車位置を目的地とする経路である。本実施形態では、車両待機位置は、予め定められた固定的な位置であり、車両待機位置を示す情報が経路設定装置2に事前に登録されている。一のユーザのメイン経路の設定に際し、メイン経路設定部10は、ユーザ管理データベース21aを参照し、当該一のユーザについての降車位置情報および第1乗車位置情報を取得する。次いで、メイン経路設定部10は、道路データ記憶部20が記憶する道路データ20aに基づいて、既存の技術により、車両待機位置から第1乗車位置を経由して降車位置に至るメイン経路を設定する。
【0027】
なお、第1乗車位置は、特定のリンク上の所定の点(ノードであってもよい)とされる。
図3の例では、第1乗車位置は、リンクLK1上の所定の点である。ただし、自動運転車は、第1乗車位置に停車する際は、実装された自動運転の機能により、第1乗車位置にできるだけ近く、道路の端にできるだけ寄った位置であって、法令等により停車することが許可された位置に、周囲の状況や安全性等を考慮しつつ停車する。この結果、自動運転車は、第1乗車位置に非常に近い位置に停車する。
【0028】
メイン経路設定部10は、一のユーザについてメイン経路を設定した場合、設定したメイン経路を示すメイン経路情報を、ユーザ管理データベース21aの当該一のユーザに対応するレコードに登録する。メイン経路設定部10によって以上の処理が行われる結果、各ユーザが初めて輸送サービスを利用する前に、各ユーザについて、メイン経路を示すメイン経路情報がユーザ管理データベース21aに登録された状態となる。
【0029】
ユーザが輸送サービスを利用する場合、自動運転制御装置4に、ネットワークNを介してサービス提供指示データが送信される。サービス提供指示データは、ユーザIDを含み、輸送サービスの提供を指示するデータである。例えば、ユーザが、担当者に対して輸送サービスを利用したい旨を所定の手段で伝え、担当者が所定の端末を利用してサービス提供指示データを自動運転制御装置4に送信する。また例えば、輸送サービスの提供元の会社等により専用のアプリケーションが提供され、ユーザは、自身の端末に、当該専用のアプリケーションをインストールする。そして、ユーザは、当該専用のアプリケーションにより提供されるユーザインターフェースを利用して、自身の端末からサービス提供指示データを自動運転制御装置4に送信する。以下の説明では、輸送サービスを利用するユーザを「対象ユーザ」という。
【0030】
自動運転制御装置4は、サービス提供指示データを受信すると、当該データに含まれる対象ユーザのユーザIDを取得し、ユーザ管理データベース21aから、対象ユーザのメイン経路情報を取得する。なお、対象ユーザが1回目に輸送サービスを利用する時点では、後述するサブ経路情報はヌル値であるため、自動運転制御装置4は、サブ経路情報の取得を行わない。自動運転制御装置4は、取得したメイン経路情報に基づいて、自動運転車を、車両待機位置から第1乗車位置に自動運転により移動させる。詳細は省略するが、第1乗車位置までの自動運転による移動は自動運転制御装置4に実装された機能により適切に行われる。自動運転制御装置4は、自動運転車を第1乗車位置で停車させる際、自動運転車の周囲の状況や安全性等を考慮しつつ、メイン経路において定義された第1乗車位置にできるだけ近く、道路の端にできるだけ寄った位置であって、法令等により停車することが許可された位置に自動運転車を停車させる。
【0031】
自動運転制御装置4は、自動運転車が第1乗車位置に停車した場合、第1乗車位置に到着したことを対象ユーザに通知する。対象ユーザへの通知は、どのような方法で行われてもよい。例えば、対象ユーザのメールアドレスが事前に登録され、自動運転制御装置4は、メールにより通知する。また例えば、自動運転制御装置4は、自動運転制御装置4と通信可能な担当者の端末に所定の情報を通知し、担当者が、電話等により対象ユーザに通知する。なお、本実施形態では、自動運転車が第1乗車位置に到着したときに、そのことが対象ユーザに通知される構成であるが、この点に関し、以下の構成でもよい。すなわち、自動運転制御装置4(経路設定装置2等の他の装置であってもよい)が、自動運転車が第1乗車位置に到着する前の所定のタイミングで、自動運転車が第1乗車位置に到着すると予測される時刻を算出し、算出した時刻を対象ユーザに直接または間接的に通知する構成でもよい。
【0032】
自動運転車が第1乗車位置に到着したことの連絡を受けた対象ユーザは、自身が待機する場所から、第1乗車位置に停車する自動運転車に向かって移動を開始する。
図3の例を用いて対象ユーザの移動について説明すると、
図3において、符号KS1は、第1乗車位置(位置Q1)に停車する自動運転車に向かって移動する対象ユーザの軌跡の一例を示している。
図3に示すように、軌跡KS1は、家屋HU1の玄関GK1を出た後、緩やかに湾曲し、第1乗車位置に停車する自動運転車に至る軌跡である。通常、対象ユーザは、
図3の軌跡KS1のように、歩行にとっての障害物を避けつつ、できるだけ遠回りとならないように徐々に自動運転車に近づくような軌跡で移動するものと想定される。
【0033】
さらに、自動運転車が第1乗車位置に停車した場合、自動運転制御装置4は、そのことを撮影画像取得部11に通知する。撮影画像取得部11は、カメラシステム3を制御して、左側方カメラ3L、右側方カメラ3R、前方カメラ3Fおよび後方カメラ3Bによる撮影を開始する。上述したように、自動運転車が第1乗車位置に停車した後、対象ユーザは、基本的には徐々に自動運転車に近づいてくるため、対象ユーザは、何れかのタイミングで何れかのカメラにより撮影されることになる。
【0034】
さらに、自動運転車が第1乗車位置に停車した場合、自動運転制御装置4は、対象ユーザが自動運転車に乗車したか否かを監視する。本実施形態では、事前にユーザに非接触型のICカードから成る会員カードが渡されている。会員カードには、ユーザIDを含む認証情報が記憶されている。また、自動運転車の適切な位置には、ICカードリーダが設けられている。ユーザは、自動運転車への乗車に際し、自身の会員カードをICカードリーダにかざし、ICカードリーダに認証情報を読み取らせる。自動運転制御装置4は、ICカードリーダが読み取った認証情報を取得し、認証を行う。認証情報に基づいて認証を行うために必要な情報は、事前に登録される。認証が成功すると、自動運転制御装置4は、図示しないロック機構を制御して、ドアのロックを解除する。対象ユーザは、ロックが解除されたドアを介して自動運転車に乗車する。なお、本実施形態で例示する対象ユーザが自動運転車に乗車したか否かを監視する方法は、あくまで一例であり、他の方法であってもよい。
【0035】
会員カードを利用した認証が成功した場合、自動運転制御装置4は、そのことを撮影画像取得部11に通知する。撮影画像取得部11は、カメラシステム3を制御して、左側方カメラ3L、右側方カメラ3R、前方カメラ3Fおよび後方カメラ3Bによる撮影を停止する。撮影画像取得部11は、自動運転車が第1乗車位置に停車してから、対象ユーザが自動運転車に乗車するまでの間の各カメラの撮影結果に基づいて、カメラ毎に、所定のデータ形式の映像データを生成する。一のカメラの映像データは、当該一のカメラの撮影結果に基づいて所定の周期で生成された撮影画像データを含んで構成されたデータであり、撮影結果に基づく動画が記録されている。一のカメラの映像データのメタデータには、当該一のカメラの識別情報が記録され、映像データのメタデータを参照することにより、映像カメラがどのカメラの撮影結果に基づくデータであるのかを認識可能である。撮影画像取得部11は、ユーザ管理データベース21aを参照し、カメラ毎の映像データを含む第1回撮影データを、対象ユーザに対応するレコードに登録する。つまり、一のユーザの第1回撮影データは、当該一のユーザが初めて輸送サービスを利用したときに、自動運転車が第1乗車位置に停車している期間における各カメラの撮影結果に基づく映像データある。
【0036】
自動運転車に乗車した対象ユーザは、ドアのロックや、シートベルトの着用等、自動運転車が発進するために必要な準備を行う。自動運転制御装置4は、図示しない各種センサにより、自動運転車が発進するために必要な全ての準備が行われたことを検出すると、メイン経路情報に基づいて、自動運転車を第1乗車位置から降車位置に自動運転により移動させ、降車位置で停車させる。対象ユーザは、適切な作業を行って降車位置で停車する自動運転車から降車する。詳細は省略するが、対象ユーザが降車した後、自動運転車は、駐車施設に自動運転で移動する。
【0037】
ユーザによる輸送サービスの利用に応じて、撮影画像取得部11によって以上の処理が行われる結果、各ユーザについて、ユーザが初めて輸送サービスを利用すると、ユーザ管理データベース21aに第1回撮影データが登録された状態となる。
【0038】
<ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用するステージ>
次に、ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用するステージにおける輸送サービス提供システム1の処理について説明する。
【0039】
他乗車位置設定部12は、各ユーザについて、第1回撮影データが登録された後、ユーザが2回目に輸送サービスを利用する前の所定のタイミング(例えば、第1回撮影データが登録された直後のタイミング)で、第2乗車位置を設定する。以下、他乗車位置設定部12が対象ユーザについての第2乗車位置を設定するときの処理について詳述する。
【0040】
対象ユーザの第2乗車位置の設定に際し、他乗車位置設定部12は、ユーザ管理データベース21aから、対象ユーザについての顔画像データおよび第1回撮影データを取得する。次いで、他乗車位置設定部12は、第1回撮影データに含まれる各カメラの映像データについて、顔画像データを用いた顔認識を行って、各カメラの映像データのうち、最初に対象ユーザの顔が認識された映像データを特定する。
図3において、符号HLは、左側方カメラ3Lによって、対象ユーザの顔が撮影される範囲を単純化して模式的に示している。つまり、範囲HLに対象ユーザが位置しているときに左側方カメラ3Lが生成する撮影画像データには、対象ユーザの顔の画像が顔認識による認識可能な状態で記録される。
【0041】
図3において、対象ユーザが軌跡KS1で、第1乗車位置に停車する自動運転車に向かって移動した場合、最初に対象ユーザの顔が認識される映像データは、左側方カメラ3Lの映像データである。すなわち、対象ユーザが玄関GK1を出て位置P1に至ったときに左側方カメラ3Lが生成した撮影画像データに、対象ユーザの顔の画像が顔認識による認識可能な状態で記録される。この場合、他乗車位置設定部12は、左側方カメラ3Lの映像データを、最初に処理対象の一の対象ユーザの顔が認識された映像データとして特定する。
【0042】
次いで、他乗車位置設定部12は、特定した映像データを構成する撮影画像データのうち、最初に対象ユーザの顔が認識された撮影画像データを分析し、その撮影画像データが生成されたときの対象ユーザの位置(以下、「候補位置」という)を検出する。詳細には、上述したように、撮影画像データは、2台のカメラより成るステレオカメラのそれぞれが生成した一対の撮影画像データにより構成される。他乗車位置設定部12は、視差を利用した既存の技術により、自動運転車から対象ユーザまでの距離を測距すると共に、撮影画像データにおける対象ユーザの顔の画像の位置により、自動運転車から対象ユーザへ向かう方向を検出し、距離および方向に基づいて、自動運転車に対する対象ユーザの相対的な位置を検出する。
【0043】
次いで、他乗車位置設定部12は、ユーザ管理データベース21aを参照し、対象ユーザについての第1乗車位置情報を取得する。第1乗車位置情報が示す第1乗車位置は、経度と緯度とを軸とする地図座標系における座標によって表される。上述した通り、自動運転車は、対象ユーザを乗車させる際、第1乗車位置情報が示す第1乗車位置に非常に近い位置に停車するため、第1乗車位置情報が示す第1乗車位置は、カメラシステム3の各カメラにより撮影が行われている間に自動運転車が実際に停車していた位置とみなすことができる。他乗車位置設定部12は、地図座標系における第1乗車位置と、検出した自動運転車に対する当該一のユーザの相対的な位置とに基づいて、候補位置を、地図座標系における座標として検出する。
図3の例では、位置P1が候補位置である。
【0044】
候補位置を検出した後、他乗車位置設定部12は、候補位置と、第1乗車位置との間の領域(以下、「候補領域」という)の環境を検出する。候補領域は、候補位置と第1乗車位置との間に介在する領域であって、仮に自動運転車が候補位置に向かって走行する場合に、自動運転車が走行し得る領域を含む程度に十分に広い領域である。
図3の例では、領域AR1が、候補領域である。候補領域は、1つのカメラの撮影領域に含まれる領域である必要は無く、複数のカメラの撮影領域に跨った領域であってもよい。また、候補領域は、その広さや形状が厳密に規定された領域ではなく、候補位置と第1乗車位置とを結ぶ線を含み、相当の大きさを有する領域であればよい。
【0045】
候補領域の環境の検出とは、候補領域内で自動運転車が走行できる領域、および、できない領域を特定することをいう。候補領域の環境の検出は、候補領域内の障害物の状況や、路面の状態、地勢、その他の自動運転車の走行に影響を与える各種要素が考慮されて実行される。他乗車位置設定部12は、障害物の領域を検出するための画像認識等の画像処理を行って各カメラの映像データを分析し、候補領域内の障害物の状況や、路面の状態、地勢、その他の自動運転車の走行に影響を与える各種要素を検出し、検出した各種要素を考慮して適切に候補領域の環境の検出を行う。これにより、他乗車位置設定部12は、候補領域について、車両が走行可能な領域と、車両が走行できない領域とを特定する。
【0046】
次いで、他乗車位置設定部12は、候補領域の環境に基づいて、候補位置にできるだけ近く、後述するサブ経路設定部13によってサブ経路を設定可能な位置を、第2乗車位置として設定する。詳述すると、サブ経路は、第1乗車位置の近辺のメイン経路上の一の点(分岐点)から、第2乗車位置を経由して、第1乗車位置の近辺のメイン経路上の他の点(合流点)に至る経路であって、車両が走行できない領域に進入することなく、自動運転車が通常の方法で走行可能な経路である。
【0047】
これを踏まえ、他乗車位置設定部12は、候補位置を経由するサブ経路を設定可能な場合、換言すれば、メイン経路上の一の点から、車両が走行できない領域に進入することなく候補位置に至る経路を設定することができ、かつ、候補位置から、車両が走行できない領域に進入することなく、メイン経路上の他の点に至る経路を設定することができる場合は、候補位置を第2乗車位置として設定する。一方、候補位置を第2乗車位置とすることができない場合は、サブ経路設定部13は、候補位置から第2乗車位置の候補の位置を、第1乗車位置に向かって徐々に近づけていって、各第2乗車位置の候補の位置に第2乗車位置が設定できるか否かを判定し、判定結果に基づいて、候補位置からできるだけ近く、サブ経路を設定可能な位置を第2乗車位置として設定する。なお、第1回映像データに基づいて、ユーザの軌跡(
図3の例では、軌跡KS1)を検出し、ユーザの軌跡に沿って、第2乗車位置の候補の位置を、第1乗車位置に向かって徐々に近づけていく構成でもよい。
【0048】
図3の例では、候補位置(位置P1)にサブ経路を設定可能である。従って、
図3の例の場合、他乗車位置設定部12は、候補位置(位置P1)を、第2乗車位置として設定する。他乗車位置設定部12は、一のユーザについての第2乗車位置を設定した場合、設定した第2乗車位置を示す第2乗車位置情報を、ユーザ管理データベース21aの当該一のユーザに対応するレコードに登録する。他乗車位置設定部12によって以上の処理が行われる結果、各ユーザについて、初めて輸送サービスを利用した後、2回目に輸送サービスを利用する前の所定のタイミングで、各ユーザについてユーザ管理データベース21aに第2乗車位置を示す第2乗車位置情報が登録された状態となる。
【0049】
なお、第1乗車位置と異なる位置に、第2乗車位置を設定できない場合もある。この場合、他乗車位置設定部12は、第2乗車位置の設定を行わず、後述するサブ経路設定部13は、サブ経路の設定を行わない。この場合、ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用する場合も、自動運転車は、輸送サービスの提供時にはメイン経路を走行し、ユーザを乗車させる際には第1乗車位置に停車することになる。以下では、説明の便宜のため、第1乗車位置と異なる位置に、第2乗車位置が設定されたものとして、実施形態を説明する。
【0050】
サブ経路設定部13は、他乗車位置設定部12により第2乗車位置が設定された後、ユーザが2回目に輸送サービスを利用する前の所定のタイミングで、メイン経路上の分岐点から、第2乗車位置を経由して、メイン経路上の合流点に至るサブ経路を設定する。以下、対象ユーザについてのサブ経路を設定するときのサブ経路設定部13の処理について詳述する。
【0051】
サブ経路設定部13は、対象ユーザについて、第2乗車位置情報が登録されると、登録後であって、対象ユーザが2回目に輸送サービスを利用する前の所定のタイミングで、以下の処理を実行する。すなわち、サブ経路設定部13は、対象ユーザについての第2乗車位置情報を取得すると共に、対象ユーザについてのメイン経路情報を取得する。次いで、サブ経路設定部13は、メイン経路情報が示すメイン経路(上述したように、リンクとノードとの組み合わせにより表される経路)のうち、第1乗車位置が設定されているリンクを特定する。
図3の例では、サブ経路設定部13は、リンクLK1を特定する。上述したように、第1乗車位置がノード上に定義される場合もあるが、この場合、サブ経路設定部13は、第1乗車位置が定義されたノードと接続する適切なリンクを特定する。
【0052】
次いで、サブ経路設定部13は、特定したリンクのうち、第1乗車位置の近傍の分岐点を始点とし、第2乗車位置情報が示す第2乗車位置を経由して、第1乗車位置の近傍の合流点を終点とする経路をサブ経路として設定する。分岐点、合流点、および、サブ経路は、候補領域において自動運転車が走行できない領域に自動運転手が進入しないことを条件として、自動運転車の走行特性や、車体の形状等を考慮して、急な旋回や、切り返しができるだけ行われることなくスムーズに走行できるという観点から適切に設定される。本実施形態では、サブ経路は、地図座標系における点の集合として表される経路である。
図3の符号BB1は、サブ経路の一例を示している。サブ経路BB1は、リンクLK1上の分岐点BK1でメイン経路から分岐して、敷地SK1内に進入し、障害物を避けつつ、設定された第2乗車位置(位置P1)に至り、第2乗車位置(位置P1)から障害物を避けつつ、リンクLK1上の合流点GR1に至る経路である。
【0053】
次いで、サブ経路設定部13は、ユーザ管理データベース21aを参照し、設定したサブ経路を示すサブ経路情報を、対象ユーザに対応するレコードに登録する。サブ経路設定部13によって以上の処理が行われる結果、各ユーザについて、初めて輸送サービスを利用した後、2回目に輸送サービスを利用する前の所定のタイミングで、各ユーザについてユーザ管理データベース21aにサブ経路を示すサブ経路情報が登録された状態となる。
【0054】
対象ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用する場合も、自動運転制御装置4に、ネットワークNを介してサービス提供指示データが送信される。自動運転制御装置4は、サービス提供指示データの受信に応じて、ユーザ管理データベース21aから、対象ユーザのメイン経路情報、サブ経路情報および第2乗車位置情報を取得する。
【0055】
自動運転制御装置4は、取得したメイン経路情報、サブ経路情報および第2乗車位置情報に基づいて、自動運転車に、以下の経路を走行させて、停車させる。すなわち、自動運転制御装置4は、自動運転車に、メイン経路に従って車両待機位置から分岐点(サブ経路の始点)に至り、分岐点からサブ経路に従って第2乗車位置に至る経路を走行させる。この結果、
図3の例では、対象ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用する場合には、自動運転車は、位置P1(第2乗車位置)で停車する。
【0056】
対象ユーザは、第2乗車位置で停車する自動運転車に上述した手順で乗車する。対象ユーザが自動運転車に乗車し、自動運転車の発進が可能な状態となると、自動運転制御装置4は、自動運転車に、以下の経路を走行させて、停車させる。すなわち、自動運転制御装置4は、自動運転車に、サブ経路に従って第2乗車位置から合流点(サブ経路の終点)に至り、合流点からメイン経路に従って降車位置に至る経路を走行させる。
【0057】
以上のように、本実施形態では、対象ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用する場合、自動運転車が対象ユーザを乗車させるために停車する位置が、候補位置にできるだけ近い位置となる。候補位置は、第1乗車位置に自動運転車が待機した後に初めて対象ユーザが検出されたとき(カメラに対象ユーザが撮影されたとき)の対象ユーザの位置であり、このような候補位置は、対象ユーザが第1乗車位置に停車する自動運転車に徐々に近づくような軌跡を通るということを考慮すると、ユーザが待機する場所(
図3の例では、家屋HU1)に近い位置とみなすことができる。従って、自動運転車を候補位置にできるだけ近い位置に停車させることにより、第1乗車位置に自動運転車が停車する場合と比較して、待機する場所から、停車する自動運転車に至るまでにユーザが歩行する距離を短くすることができ、ユーザの不便さを改善することができる。特に、輸送サービスを利用するユーザが高齢者である場合には、自動運転者が停車する位置と、ユーザが待機する場所とが遠く離れている場合、停車する自動運転車までの歩行がユーザにとって大きな負担となる場合があるが、本実施形態によれば、このような負担を効果的に軽減できる。
【0058】
次に、経路設定装置2の動作例についてフローチャートを用いて説明する。
図4は、経路設定装置2が対象ユーザについて、サブ経路を設定するまでの動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、メイン経路設定部10は、対象ユーザが1回目に輸送サービスを利用する前に、メイン経路の設定を行う(ステップSA1)。ステップSA1の処理の詳細は後述する。次いで、対象ユーザが1回目に輸送サービスを利用した後、2回目に輸送サービスを利用する前に、他乗車位置設定部12は、第2乗車位置を設定する(ステップSA2)。ステップSA2の処理の詳細は後述する。次いで、他乗車位置設定部12により第2乗車位置が設定された後、対象ユーザが2回目に輸送サービスを利用する前に、サブ経路設定部13によりサブ経路が設定される(ステップSA3)。ステップSA3の処理の詳細は後述する。
【0059】
図5(A)はステップSA1の処理の詳細を示すフローチャートである。
図5(A)に示すように、メイン経路設定部10は、ユーザ管理データベース21aを参照し、対象ユーザについての降車位置情報および第1乗車位置情報を取得する(ステップSB1)。次いで、メイン経路設定部10は、道路データ記憶部20が記憶する道路データ20a、および、ステップSB1で取得した降車位置情報および第1乗車位置情報に基づいて、メイン経路を設定する(ステップSB2)。次いで、メイン経路設定部10は、設定したメイン経路を示すメイン経路情報を、ユーザ管理データベース21aの対象ユーザに対応するレコードに登録する(ステップSB3)。
【0060】
図5(B)はステップSA2の処理の詳細を示すフローチャートである。
図5(B)に示すように、他乗車位置設定部12は、ユーザ管理データベース21aから、対象ユーザについての顔画像データおよび第1回撮影データを取得する(ステップSC1)。次いで、他乗車位置設定部12は、第1回撮影データに含まれる各カメラの映像データについて、顔画像データを用いた顔認識を行って、各カメラの映像データのうち、最初に当該一のユーザの顔が認識された映像データを特定する(ステップSC2)。
【0061】
次いで、他乗車位置設定部12は、特定した映像データを構成する撮影画像データのうち、最初に対象ユーザの顔が認識された撮影画像データを分析し、候補位置を検出する(ステップSC3)。次いで、他乗車位置設定部12は、候補領域の環境を検出する(ステップSC4)。次いで、他乗車位置設定部12は、候補領域の環境に基づいて、候補位置にできるだけ近く、サブ経路設定部13によってサブ経路を設定可能な位置を、第2乗車位置として設定する(ステップSC5)。次いで、他乗車位置設定部12は、設定した第2乗車位置を示す第2乗車位置情報を、ユーザ管理データベース21aの対象ユーザに対応するレコードに登録する(ステップSC6)。
【0062】
図5(C)はステップSA3の処理の詳細を示すフローチャートである。
図5(C)に示すように、サブ経路設定部13は、対象ユーザについての第2乗車位置情報、および、メイン経路情報を取得する(ステップSD1)。次いで、サブ経路設定部13は、メイン経路情報が示すメイン経路のうち、第1乗車位置が定義されているリンクを特定する(ステップSD2)。次いで、サブ経路設定部13は、特定したリンクのうち、第1乗車位置の近傍の分岐点を始点とし、第2乗車位置情報が示す第2乗車位置を経由して、第1乗車位置の近傍の合流点を終点とする経路をサブ経路として設定する(ステップSD3)。次いで、サブ経路設定部13は、設定したサブ経路を示すサブ経路情報を、ユーザ管理データベース21aの対象ユーザに対応するレコードに登録する(ステップSD4)。
【0063】
以上詳しく説明したように、本実施形態に係る経路設定装置2は、車両待機位置(出発地)から、ユーザを乗車させる第1乗車位置を経由して、目的地に至るメイン経路を設定する。一方で、経路設定装置2は、第1乗車位置に自動運転車が待機しているときにカメラが生成した撮影画像データ(撮影画像)に基づいてユーザを検出し、第1乗車位置よりも、第1乗車位置に自動運転車が待機した後に初めてユーザを検出したときのユーザの位置側に、第2乗車位置を設定する。その上で、経路設定装置2は、メイン経路上の分岐点から、第2乗車位置を経由して、メイン経路上の合流点に至るサブ経路を設定する。
【0064】
本実施形態によれば、ユーザが自動運転車に乗車する乗車位置を、第1乗車位置よりも、ユーザが初めてカメラに撮影されたときのユーザの位置側、つまり、ユーザが待機しているものと想定される場所により近い位置とすることができ、これにより、ユーザが乗車位置まで歩く距離を短くすることができ、ユーザが感じる不便さを改善することができる。
【0065】
<第1実施形態の変形例>
次に第1実施形態の変形例について説明する。上述した第1実施形態では、ユーザが輸送サービスを1回目に利用したときの撮影結果に基づいて、第2乗車位置およびサブ経路が設定され、2回目以降は、設定されたサブ経路を利用して輸送サービスが提供される構成であった。この点に関し、ユーザが2回目以降に輸送サービスを利用する場合に、経路設定装置2が以下の処理を実行する構成でもよい。
【0066】
すなわち、撮影画像取得部11は、ユーザが「2回目」に輸送サービスを利用する際、第2乗車位置に自動運転車が待機している期間、各カメラに撮影を行わせて、各カメラの映像データを生成する。撮影画像取得部11は、生成した各カメラの映像データを、第2回撮影データとして、ユーザ管理データベース21aの対応するレコードに登録する。
【0067】
他乗車位置設定部12は、ユーザが3回目に輸送サービスを利用する前の所定のタイミングで、第2回撮影データ(第2乗車位置に自動運転車が待機しているときにカメラが生成した撮影画像)に基づいて対象ユーザを検出する。次いで、他乗車位置設定部12は、第2回撮影データに基づいて、第2乗車位置に自動運転車が待機した後に初めて対象ユーザを検出したときの対象ユーザの位置(以下、「第2候補位置」という。)を検出する。次いで、他乗車位置設定部12は、第2回撮影データに基づいて、第2乗車位置と第2候補位置との間の領域の環境を検出し、第2候補位置側に自動運転車を更に移動させることが可能か否かを判定する。可能な場合、他乗車位置設定部12は、サブ経路設定部13によりサブ経路を設定可能であり、第2候補位置にできるだけ近い位置に第2乗車位置を再設定する。他乗車位置設定部12は、対応するレコードの第2乗車位置情報を、再設定した第2乗車位置を示す情報へと更新する。
【0068】
サブ経路設定部13は、更新後の第2乗車位置情報に基づいて、サブ経路を再設定する。サブ経路は、例えば、メイン経路上の分岐点から、一旦、更新前の第2乗車位置情報が示す位置(再設定前の第2乗車位置)に移動し、次に、更新前の第2乗車位置情報が示す位置から、更新後の第2乗車位置情報が示す位置(再設定された第2乗車位置)に移動し、次に、更新後の第2乗車位置情報が示す位置から、更新前の第2乗車位置情報が示す位置に移動し、次に、更新前の第2乗車位置情報が示す位置から、メイン経路上の合流点に至る経路である。サブ経路設定部13は、対応するレコードのサブ経路情報を、再設定したサブ経路を示す情報へと変更する。ユーザが3回目に輸送サービスを利用する際は、自動運転制御装置4は、更新後の第2乗車位置情報およびサブ経路情報に基づいて自動運転を実行する。
【0069】
本変形例では、以上のようにして、i(ただし、iは2以上の整数)回目の輸送サービスの提供時に生成された第i回撮影データに基づいて、随時、第2乗車位置情報およびサブ経路情報が再設定される。そして、「i+1」回目の輸送サービスの提供時には、更新された第2乗車位置情報およびサブ経路情報に基づいて自動運転制御装置4による自動運転が実行される。なお、第2乗車位置よりも第2候補位置に近い側の位置に、第2乗車位置を再設定ができなくなった段階で、第2乗車位置情報およびサブ経路情報の再設定は終了する。
【0070】
本変形例は、以下の場合に有効である。
図6は、本変形例が有効な場合を説明するため、ユーザが待機する家屋HU6の周辺の地形を、一部断面図にて、横から見た図である。
図6において、符号P6aは、第1乗車位置を示している。
図6の例では、第1乗車位置P6aから家屋HU6に向かって、坂道SK6と、平面HM6が連続する地形となっている。坂道SK6の存在に起因して、第1乗車位置P6aに停車する自動運転車のカメラは、対象ユーザが位置P6bに至ったときに初めて対象ユーザを撮影する。この場合、1回目に輸送サービスが提供された後は、位置P6bに第2乗車位置が設定され、2回目の輸送サービスの提供時には、位置P6bに自動運転車が停車されることになる。
【0071】
ここで、
図6に示すように、位置P6bと家屋HU6との間には、自動運転車が走行可能な領域が存在している。従って、第2乗車位置をより家屋HU6に近い位置に再設定できれば、対象ユーザが歩行する距離をより短くすることができる。このような場合に、本変形例によれば、2回目の輸送サービスの提供時に位置P6bに停車する自動運転車のカメラの撮影結果に基づいて、位置P6cに、第2乗車位置が再設定される。これにより、第2乗車位置をより家屋HU6に近い位置に再設定することができ、対象ユーザが歩行する距離をさらに短くすることが可能となる。なお、
図6では、坂道SK6が原因で、ユーザが家屋HU6から出た直後にカメラにより対象ユーザが撮影されない場合を例示したが、自動運転車に向かって移動する対象ユーザが撮影されることを阻害する障害物の存在等、他の原因により対象ユーザが撮影されない場合もある。すなわち、本変形例に係る構成は、対象ユーザが待機する場所を出た直後に、停車する自動運転車のカメラから対象ユーザを撮影できない種々のケースに有効である。
【0072】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0073】
例えば、上記実施形態では、経路設定装置2が自動運転車に搭載された装置である場合を例にして、実施形態を説明した。しかしながら、経路設定装置2は、自動運転車に搭載された装置でなくてもよい。例えば、経路設定装置2は、ネットワーク上のサーバ装置であってもよい。この場合、第2乗車位置およびサブ経路の設定に関し、例えば、経路設定装置2は、自動運転車の所定の車載装置から、第1回撮影データを通信により取得して記憶すると共に、記憶した第1回撮影データに基づいて、第2乗車位置およびサブ経路を設定する。
【0074】
また、上記実施形態では、対象ユーザから要請があったときに、自動運転車を利用した輸送サービスの提供が開始される構成であったが、対象ユーザからの要請ではなく、予め定められた時刻に、対象ユーザを迎えに行くように制御される構成でもよい。また、上記実施形態では、メイン経路上の分岐点および合流点は異なる点であったが、同じ点であってもよい。また、上記実施形態では、希望乗車位置でユーザを乗車させる際に、設定されたサブ経路を利用する構成であった。この点に関し、乗車希望位置以外の場所から、乗車希望位置にユーザを送り届ける際も、サブ経路を利用して、ユーザが歩行する距離を短くすることが可能である。
【0075】
また、上記実施形態では、カメラシステム3の各カメラは、ステレオカメラであったが、各カメラがステレオカメラである必要は無い。また、ユーザの測距に際し、レーダ装置等の、カメラ以外のセンサを用いる構成でもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、他乗車位置設定部12およびサブ経路設定部13は、ユーザ情報記憶部21に記憶された第1回撮影データに基づいて、第2乗車位置の設定およびサブ経路の設定を行った。この点に関し、他乗車位置設定部12およびサブ経路設定部13が、カメラシステム3の各カメラの撮影結果をリアルタイムに分析して、または、バッファーに一時的に記憶されるカメラシステム3の各カメラの撮影結果を分析して、第2乗車位置の設定およびサブ経路の設定を行う構成でもよい。また、上記実施形態において、一のユーザについての第2乗車位置情報の登録、および、サブ駅路情報の登録が完了した後、当該一のユーザについての第1回撮影データを、ユーザ管理データベース21aから削除する構成でもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、サブ経路は、地図座標系における点の集合として表される経路であった。この点に関し、サブ経路は、上記実施形態で例示した方法で定義される経路である必要は無く、例えば、他の点との相対的な位置関係が定義されることによって位置が表される点の集合であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
2 経路設定装置
3L 左側方カメラ(カメラ)
3R 右側方カメラ(カメラ)
3F 前方カメラ(カメラ)
3B 後方カメラ(カメラ)
10 メイン経路設定部
11 撮影画像取得部
12 他乗車位置設定部
13 サブ経路設定部