(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220725BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018011616
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2019-11-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】591004412
【氏名又は名称】ズス・マイクロテック・リソグラフィ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Suss MicroTec Lithography GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト・ボグナー
【合議体】
【審判長】辻本 泰隆
【審判官】松永 稔
【審判官】小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-139413(JP,A)
【文献】特開2004-186355(JP,A)
【文献】特開平11-354607(JP,A)
【文献】特開平6-216219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/677
B25J15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブストレートを保持するためのエンドエフェクタであって、多層の本体(14)と、前記本体(14)に提供される流体チャンネル(34)を有し、前記本体(14)は3つの層(40、42、44)を有し、前記3つの層(40、42、44)それぞれは本来強くない材質であ
り、各層単独ではサブストレートを保持するために十分な強さを有さないが、前記3つの層(40、42、44)が互いに固定されると
、前記本体は前記サブストレートを保持するために十分な強さを有する、エンドエフェクタ。
【請求項2】
溝(70)及び/又はスロット(46)が前記層(42)の少なくとも1つに組み込まれ、かつ前記流体チャンネル(34)の輪郭を部分的に定めることを特徴とする、請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記溝(70)及び/又は前記スロット(46)が別の少なくとも1つの前記層(40、44)によってカバーされ密封されることを特徴とする、請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記3つの層(40、42、44)の中間の層(42)が、外側の2つの層(40、44)によってカバーされた前記スロット(46)を備え、それによって前記流体チャンネル(34)を形成することを特徴とする、請求項3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記層(40、42)のうちの1つ、特に、前記溝(70)及び/又は前記スロット(46)が組み込まれる前記層(42)が金属板から製造されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記3つの層(40、42、44)が、互いに同一の外形を有する、及び/又は、エンドエフェクタ(10)の外形を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記層(40、42、44)のうちの少なくとも1つが、予備成形された構成部品であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
本来強くない材質の前記層(44)が合成材料、特に合成材料膜、から製造されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
前記3つの層(40、42、44)が、互いに接着されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項10】
前記本体(14)が受入端(16)および取付端(18)を有し、前記サブストレートを保持するための保持領域(24)が前記受入端(16)に提供されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項11】
切欠き部(26)が前記受入端(16)から前記本体(14)の中へ延び、保持アーム(32)が前記切欠き部(26)によって形成されることを特徴とする、請求項10に記載のエンドエフェクタ。
【請求項12】
前記切欠き部(26)が、前記取付端(18)に向いた端に少なくとも1つのR面取り(R1;R2)を有し、特にU字形状をしていることを特徴とする、請求項11に記載のエンドエフェクタ。
【請求項13】
前記流体チャンネル(34)が、前記取付端(18)から前記保持領域(24)の中、特に前記保持アーム(32)の中に延び、その場所で開口部(38)に流出することを特徴とする、請求項10~12のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項14】
保持器具(15)が、前記開口部(38)の中又は上に提供され、特に密封口(50)を含むことを特徴とする、請求項13に記載のエンドエフェクタ。
【請求項15】
前記保持器具(15)が、吸引器具、特に真空吸引カップ、又は、ベルヌーイ効果に基づく固定器具であることを特徴とする、請求項14に記載のエンドエフェクタ。
【請求項16】
エンドエフェクタ(10)を搬送装置、特にロボットの腕、に取り付けるために、フランジ領域(20)、特にフランジ板(22)、が前記取付端(18)に提供されることを特徴とする、請求項10~15のいずれか1つに記載のエンドエフェクタ。
【請求項17】
サブストレートを保持するためのエンドエフェクタであって、
多層の本体(14)と、
前記本体(14)に提供される真空吸引カップおよび流体チャンネル(34)と、を有し、
前記本体(14)は3つの層(40、42、44)を有し、
前記層(44)の少なくとも1つは、本来強くない材質であり、
単独ではサブストレートを保持するために十分な強さを有さず、
前記本体は、
上の層(40)と、
中間の層(42)と、
下の層(44)と、を含み、
前記真空吸引カップは、前記中間の層(42)および前記上の層(40)を貫通して前記下の層(44)によってその場所に保持されるキャリヤ(48)を有する、
エンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、サブストレートを保持するエンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
エンドエフェクタは、ロボットなどの搬送装置における一連の動作要素の最後の部品である。エンドエフェクタは、例えば対象物を掴む、又は保持するために使われる。
【0003】
ICチップ製造などの微細構造部品製造において、エンドエフェクタは、様々な工程間でサブストレートを移動させるために保持することに通常使われる。
【0004】
本願発明の範囲内において、サブストレートは特に、半導体ウェーハ又はガラスウェーハ、弾力性のあるサブストレート、チップおよび流し成型物質を合成して製造されるウェーハ(チップを埋め込んで成形される再構成ウェーハ)、又は三次元的平面を有するサブストレート、などのウェーハを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのようなエンドエフェクタは、よく知られており、例えばフライス加工された負圧チャンネルおよび負圧チャンネルを閉じるカバーからなる本体を通常有する。吸引力がウェーハにかけられ、ウェーハは真空技術を使ってカバーの開口部で吸引保持される。しかし、その構造が原因となり、そのようなエンドエフェクタは、分厚く、製造が難しい。
【0006】
エンドエフェクタによってピックアップされるウェーハはウェーハカートリッジの中に配列されることが多い。ウェーハカートリッジから個々のウェーハを取り出すために、エンドエフェクタは、まずカートリッジ内の2つのウェーハの間に移動され、真空手段、またはベルヌーイ効果を使う過剰圧力手段などによって、ウェーハの1つを固定するために接続するように動かされる、又は接触させられる。
【0007】
1つのウェーハカートリッジの中に可能な限り最大数のウェーハを収納するために、ウェーハは互いに非常に小さい隙間で配列されることが多い。加えてウェーハは柔軟性を有し得て、水平に置かれた場合たわむことがあり、ウェーハ間の隙間はさらに小さくなり得る。したがって、例えばウェーハの縁と接触して損傷させることなく、ウェーハの間にエンドエフェクタを正確に誘導可能であることが必要とされる。
【0008】
したがって、本願発明の目的は、特に薄く、製造が容易なエンドエフェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
サブストレートを吸引保持するエンドエフェクタによって目的が達成され、エンドエフェクタは本体および本体内に設置される流体チャンネルを有し、本体は少なくとも2層からなり、そのうちの少なくとも1つの層は本来強くない材質である。
【0010】
「本来強くない材質」とは、それに対応してエンドエフェクタが提供されたサブストレートを独立で保持するために、保持目的で提供される領域において十分な強さをその層が有さないという意味である。エンドエフェクタの構造全体の高さ、すなわち厚みを小さくするために、前述の少なくとも1つの層は薄くてもよい。エンドエフェクタの複数の層又は全ての層それぞれは本来強くなく、それらが互いに固定されたときにのみサブストレートを保持するために必要な安定性を有するということさえあり得る。本来強くない層は例えば薄膜であり得る、またはエンドエフェクタは複数の非常に薄い金属板の積み重ねで作られてもよい。流体チャンネルは、エンドエフェクタが圧縮空気源で作動するか、真空源で作動するかに依存して負圧チャンネル又は、過剰圧力チャンネルとして機能する。
【0011】
本願発明の記述においては、「層」とは予備製造された層、すなわち予備製造された固体状態の構成部品であって、特に平面状及び/又は板状のものを指す。2つ又はそれ以上の予備製造された構成部品を互いに接着させてエンドエフェクタを形成してもよい。
【0012】
予備製造された層は、エンドエフェクタの外形輪郭を既に有してもよい、又は2つ又はそれ以上の層を互いに接着させた後に望むエンドエフェクタの形に切断されてもよい。
【0013】
予備製造された層に塗布されるコーティング又は液体材料は、たとえ固形化されても、それ自体では本願発明の記述における「層」を形成しない。
【0014】
エンドエフェクタは、サブストレートに下からおよび上からの両方から接することがあり得て、下又は上からサブストレートを保持又は固定する。
【0015】
溝及び/又はスロットが少なくとも1つの層に組み込まれて、流体チャンネルの輪郭を部分的に定めることにより、流体チャンネルが容易に形成され得ることが望ましい。
【0016】
製造工程の簡素化のために、溝及び/又はスロットは他の層の少なくとも1つによってカバーされ、密封されてもよい。
【0017】
本願発明の一実施形態によれば、本体は3層からなり、スロット及び/又は溝が中央の1層に設置され外の2層によってカバーされることにより流体チャンネルが形成される。したがって、外の2層のうち少なくとも1つは本来強くない層であってもよい。それによって、より平たい又はより薄いエンドエフェクタが提供される。
【0018】
例えば、層のうちの1つ、特に溝及び/又はスロットが組み込まれる層は、金属板から製造される。金属板は高級鋼又はモリブデンであってもよい。金属板はまた、チタン、様々なコーティング付きのアルミ、又は水晶ガラスから製造されてもよい。それによって流体チャンネルが確かに望ましい形状寸法を保つようになる。
【0019】
少なくとも2つの層が互いに同一形状でもよい、及び/又は、エンドエフェクタの外形を有してもよい。これにより製造工程を1つ減らすことができる。
【0020】
少なくとも2つの層のうちの少なくとも1つの層を予備製造された構成部品として組み立てを簡易化する設計変更もあり得る。
【0021】
1つの層、特に本来強くない層は合成材料、特に合成材料の薄膜から製造されることが望ましい。合成材料は例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。合成材料の層は特に本体の一番上、又は一番下の層となる。したがって本来強くない材質の層が、特に安価で均一に製造可能である。
【0022】
例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は類似の合成材料で製造される本来強くない材質の層は0.1ミリメートル又はそれ以下の厚みを有する。
【0023】
流体チャンネルの密閉性を確かにするために、少なくとも2つの層は互いに接着されてもよい。代わりに、少なくとも2つの層はまた、溶接されてもよい。加えて、2つの層はねじ留めされてもよく、それによってエンドエフェクタの安定性がさらに増す。
【0024】
本願発明の一実施形態によれば、本体は受入端と取付端を含み、サブストレートがエンドエフェクタに確かに保持されるようにサブストレートを保持する保持領域は受入端に設置される。
【0025】
切欠き部が受入端から本体の中に延びることが望ましく、切欠き部によって保持アームが形成される。切欠き部は全ての層を貫通してもよい。したがって、サブストレートはエンドエフェクタによってピックアップされてもよく、その下面のほぼ中央で例えば工程機械ステーションなどの保持ピンなどで保持される。
【0026】
個々の層の、そして本体全体の安定性を向上させるために、切欠き部はその取付端に向いた少なくとも1つのR面取りを含んでよく、特にU字形状であってもよい。
【0027】
一実施形態の別形において、流体チャンネルは取付端から保持領域、特に保持アーム内まで延び、そこで開口部に流出する。したがって、流体チャンネルはU字形状部分を有し得る。サブストレート保持に必要な負の圧力又は過剰圧力は、流体チャンネルをとおって保持領域に供給され得る。
【0028】
例えば、流体チャンネルのU字形状部分のUの両肢は、保持アームの中に延びる。流体チャンネルは全体としてY字形状又はチューニング用音叉の形であってもよい。
【0029】
少なくとも1つの開口部は、1つの層に、特に保持アームの1つの中で提供されることが望ましく、保持アームの保持領域の中で流体チャンネルは開口部に流出する。したがって、保持アームそれぞれに少なくとも1つの開口部が設置されてもよい。開口部は一番上の層に設置される。エンドエフェクタが意図されたとおりに使用されているときサブストレートが置かれて接触する側を、本体の「上」または「上側」と呼ぶ。
【0030】
本願発明の一実施形態によれば、開口部に又は開口部内に、特に密封口を有する保持器具が設置され、それによってサブストレートの確実な固定が可能となる。
【0031】
例えば、保持器具は吸引器具であり、特に真空吸引カップ又はベルヌーイ効果に基づく固定器具である。これによれば、サブストレートはエンドエフェクタに、負の圧力又は過剰圧力のいずれでも固定可能である。
【0032】
吸引器具は密封口を含んでもよい。吸引器具はまた真空皺又は溝及び/又は多孔性材料を含んでもよい。
【0033】
フランジ領域、特にフランジ板が、エンドエフェクタを搬送装置、特にロボットの腕、に取り付けるために取付端に設置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本願発明の効果および特徴は下記の説明および添え付けの図面への参照から明らかにされる。
【0035】
【
図1】
図1は、カートリッジの中に入れられた状態にある、本願発明に係るエンドエフェクタの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された本願発明に係るエンドエフェクタの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された本願発明に係るエンドエフェクタ本体の分解図である。
【
図4】
図4は、本願発明に係るエンドエフェクタの保持器具の1つの領域の詳細断面図である。
【
図5】
図5は、本願発明に係るエンドエフェクタの第二実施形態を、下側からみた図である。
【
図6】
図6は、
図5に示されたエンドエフェクタの上の層を、下側からみた図である。
【
図7】
図7は、本願発明に係る複数のエンドエフェクタを示し、様々なサイズのサブストレート用のカートリッジに入り、様々なサイズを有している。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0036】
図1は、サブストレート(図示せず)収納用の空のカートリッジ12に挿入されたエンドエフェクタ10を示す。
【0037】
エンドエフェクタ10は、一連の動作要素の最後のロボット部品である。図示されたエンドエフェクタ10は、ウェーハなどのサブストレートをピックアップし搬送するためのホルダ又はグリッパである。そのために、エンドエフェクタは、ロボットの腕(図示せず)に接続可能である。
【0038】
エンドエフェクタ10は、本体14および2つの保持器具15を有し、本体14は受入端16および取付端18を有する。
【0039】
フランジ領域20は、取付端18に提供され、フランジ領域でフランジ板22が本体14に取り付けられる。フランジ板22は、エンドエフェクタ10をロボットの腕に取り付ける役割を果たす。
【0040】
受入端16において、サブストレート(
図1に破線で示されている)を保持するための保持領域24は、エンドエフェクタ10の上側Oにおいて形成される。
図2において、円形サブストレートの中心点Mは、保持領域24においてサブストレートの受け入れが意図されている場所を示す。
【0041】
切欠き部26は、受入端16から取付端18に向かって本体14の中に延びる。
【0042】
切欠き部26は、まず受入端16から延びる2つの平行な横壁28を有し、それらの横壁は次に移行領域30で互いに接続する。この第一の実施形態においては、移行領域30は半径R1の半円である。
【0043】
特に、切欠き部26は、本体14の取付端18の逆側にある本体14のU字型隙間である。
【0044】
本体14の保持アーム32は切欠き部26によって形成され、平行な横壁28は本体の内側である。
【0045】
加えて、流体チャンネル34が本体14内に形成され、フランジ領域20、すなわち取付端18から受入端16の方向に延びる。
【0046】
図示されている実施形態において、流体チャンネル34は、負圧チャンネルである。しかし、流体チャンネル34はまた、過剰圧力チャンネルであってもよい。
【0047】
図2に示されるとおり、流体チャンネル34はフランジ領域20から始まり、保持領域24で保持アーム32の中まで延びる2つの支流36に分岐する。
【0048】
流体チャンネル34は、全体としてY字形状又はチューニング用音叉の形であり、2つの支流36が流体チャンネル34のU字形状部分を形成する。したがって、Uの両肢は、保持アーム32に延びる支流36の部分によって形成される。
【0049】
支流36の終わりには本体14にそれぞれ開口部38が設置され、流体チャンネル34は保持領域24で上側Oから流出する。
【0050】
保持器具15が開口部38に取り付けられる。したがって、保持器具15は、保持アーム32に設置されてもよい。したがって、少なくとも1つの開口部38が保持アーム32ごとに設置される。
【0051】
図3は、本体14の分解図である。図示されている実施形態において、本体14は、上の層40、中間の層42および下の層44の3つの層を有する。上の層40および下の層44はそれぞれ本体14の外部層を形成する。
【0052】
これらの3つの層40、42、44は全て同じ外形であり互いに固定されている。例えば、層40、42、44は互いに接着されている、および加えてねじ留めされていてもよい。3つの層40、42、44はまた、互いに溶接されてもよい。
【0053】
層40、42、44が同一の外形を有する構成であるために、切欠き部26は全ての層40、42、44を貫通して延びる。
【0054】
下の層44は、全域で閉じており、中間の層42は流体チャンネル34を形成するためのスロット46を有し、上の層40も2つの開口部38を有する以外は全域で閉じている。
【0055】
全ての層40、42、44は加えてねじ用の穴を有してもよい。
【0056】
例えば、上の層40および中間の層42はそれぞれ金属板から製造される。例えば、高級鋼又はモリブデンが適当な材料である。
【0057】
いずれの場合も、上の層40と中間の層42を合わせると、金属板の材料特性により、保持領域24においてこれら2つの層40、42によってサブストレートが保持可能であるために十分に高いレベルの安定性を有する。当然、エンドエフェクタ10が全体として設計されたサイズのサブストレートを使用する場合を想定している。
【0058】
対照的に、下の層44は本来強くない、すなわちこの層単独では保持領域24において対応するサイズのサブストレートを保持できない。
【0059】
下の層は合成材料の膜から製造されてもよい。例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が適当な合成材料である。
【0060】
例えば、下の層44は0.1ミリメートル又はそれ以下の厚みを有する。
【0061】
流体チャンネル34を形成するために、流体チャンネル34の形状にあるスロット46が中間の層42に設置される。したがって、スロット46は、同様にY字形状又はチューニング用音叉の形である。
【0062】
本体14が組み立てられた状態の場合、このスロット46は上および下から、すなわち垂直方向に上の層40および下の層44によって気密に完全に(開口部38およびフランジ板22の領域に提供される連結開口部を除いて)カバーされて閉じられる。
【0063】
流体チャンネル34は、上の層40に開口部38が設置される領域で、中間の層42のスロット46の端で終わる。
【0064】
図4に示されるとおり、保持器具15の1つが、図示の開口部38内に取り付けられる。
【0065】
図示の実施形態において、保持器具15は吸引器具、特に真空吸引カップであり、キャリヤ48およびキャリヤ48に取り付けられた密封口50を有する。
【0066】
キャリヤ48は2つの円筒形部分、すなわち基礎部52および取付部54を有し、取付部54の直径は基礎部の直径よりも大きく、また開口部38の直径よりも大きい。
【0067】
取付部54は、中間の層42の厚みに実質的に一致する厚みを有し、上の層40と下の層44の間に設置される。
【0068】
基礎部52は、開口部38を貫通して延び、その上側、すなわち取付部54の逆側、に接触面56を有する。
【0069】
吸引溝60が接触面56に提供され、キャリヤ48の中の貫通チャンネル62によって、および取付部54の中の連結チャンネル64によって、流体チャンネル34と流体連通している。
【0070】
密封口50は、本体14の上側Oにおいて基礎部52に取り付けられ、接触面56を完全に包囲する。
【0071】
キャリヤ48は、中間の層42および上の層40を貫通して下の層44によって保持されることによりその場所でエンドエフェクタ10に取り付けられる。それはさらに、上の層40の上側に支えられる密封口50によって固定される。
【0072】
サブストレートをピックアップするために、エンドエフェクタ10はサブストレートに向かって下から移動され、サブストレートを持ち上げてもよい。同時に、負圧チャンネルとして機能する流体チャンネル34によって吸引溝60に負の圧力をかける真空源(図示せず)によってサブストレートに吸引力が適用されてもよい。
【0073】
サブストレートは続いて、大気圧からの過剰圧力によって接触面56に押し付けられ、それによりエンドエフェクタ10にしっかりと固定される。サブストレートはそのとき、少なくとも接触面56の上で保持領域24に対して接触している。
【0074】
保持器具15をベルヌーイ効果に基づく固定器具として設計することもまた可能である。この場合、過剰圧力源(図示せず)を使って、高圧気体が流体チャンネル34に供給され、高速で保持器具15から流れ出し、サブストレートを素早く超えて流れる。これによりエンドエフェクタ10に向かう力がサブストレートにかかり、サブストレートがエンドエフェクタ10に固定される。流体チャンネル34はこの場合、過剰圧力チャンネルである。
【0075】
加えて、支持面65を保持アーム32の上、特に受入端16に向いた端に形成してもよい。支持面65は例えばゴムなどの柔らかい材料で製造されてもよい。最適の場合、サブストレートはエンドエフェクタ10に固定されるとき、支持面65に接触する。
【0076】
下の層44は本来強くないが、本体14の積層構造により全体として安定したエンドエフェクタ10が得られる。これは、このエンドエフェクタ10用のサイズで提供されたサブストレートを保持領域24において搬送可能であるために十分安定しているということである。下の層44が本来強くない薄膜で形成されていることにより、エンドエフェクタ10の厚みは、特に保持領域24において、明らかに低減される。
【実施例2】
【0077】
図5および
図6は本願発明に係るエンドエフェクタ10の第二の実施形態を示し、それは実質的に第一の実施形態に一致する。したがって、ここからは相違点だけが記述され、同等で機能的に等価な部品には同じ参照符号が使われる。
【0078】
第二の実施形態で図示されるエンドエフェクタ10は、第一の実施形態のエンドエフェクタ10よりも大きいサブストレート用に設計され、したがって第二の実施形態の部品は寸法が異なる。
【0079】
例えば、より大きいサブストレートをより安定して保持する目的で、接触面56同士の間隔を大きくするために本体14の幅が広い。同時に切欠き部26も幅が広い。
【0080】
図5は、第二の実施形態のエンドエフェクタ10を下から見た図であり、明確さのためにフランジ22は省略されている。
【0081】
この実施形態において、本体14は2つの層、すなわち上の層66および下の層68のみを有する。
【0082】
下の層68は、第一の実施形態の下の層44に対応し、第一の実施形態の下の層44と同一である。
【0083】
対照的に、上の層66は、第一の実施形態の上の層40と中間の層42の組み合わせに対応する。
【0084】
流体チャンネル34の輪郭を部分的に定める溝70は、上の層66の下側に組み込まれる。したがって溝70は第一の実施形態のスロット46に対応し、溝70は下の層68によって閉じられて流体チャンネル34が形成される。
【0085】
加えて、上の層66は、エンドエフェクタ110の上側Oに向かう流体チャンネル34の開口部38を含む。
【0086】
上の層66はまた保持器具15の取付部54用に凹部を含んでもよい。
【0087】
図解目的で、
図5には下の層68が透明であるかのように示され、上の層66の溝70が見えている。
【0088】
第一の実施形態と対照的に、切欠き部26の移行領域30は半円ではなく、それぞれが四分円を描くR面取りR
2を2つ有する。2つの四分円は短い直線部72によってつながる(
図6を参照)。
【0089】
当然、図解された実施形態の2つの特徴は互いに組み合わせることができる。特に、第一の実施形態のエンドエフェクタ10は2層で形成可能であり、第二の実施形態のエンドエフェクタは3層で形成可能である。
【0090】
同様に、エンドエフェクタの本体の層が全てそれぞれ本来強くなく、サブストレートを保持するために必要な強さはこれらの層を組み合わせることによってのみ達成されるということも可能である。
【0091】
図7は、3つの異なるサイズのエンドエフェクタ10を、対応するサイズのサブストレート用カートリッジ12と共に示す。例えば、左側に示されるサイズは第一の実施形態のサイズに対応し、中央に示されるサイズは第二の実施形態のサイズに対応する。さらに、特に大きいサブストレート用のより大きいサイズが右側に示される。
【0092】
例えば、左側のエンドエフェクタは、直径100ミリメートル以上のサブストレート用に設計され、中央のエンドエフェクタは、直径150ミリメートル以上のサブストレート用に設計され、右側のエンドエフェクタは、直径200ミリメートル以上のサブストレート用に設計されている。
【0093】
当然、ウェーハの特性によっては、同じグリッパを異なるサイズのウェーハにも使用することができる。
【0094】
エンドエフェクタを製造するために、例えばレーザやウォータージェットによって個々の層が同時に切断されてもよい。これによれば、層が完全に同一の外形を持つことが確かとなる。複数の層を機械的に連結するために使われる開口部もまた、連結される複数の層を重ねあわせた状態で1つの工程で同時に加工されてもよい。