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特許7109939高甘味度甘味料組成物、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、希少糖組成物、飲食品、化粧品および医薬品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】高甘味度甘味料組成物、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、希少糖組成物、飲食品、化粧品および医薬品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220725BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220725BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220725BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220725BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20220725BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20220725BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A23L27/00 101A
A61K8/60
A61K8/9789
A61Q11/00
A61K47/26
A61K47/22
A23L27/20 G
A23L27/30 Z
A23L2/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018040823
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019154240
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】591061068
【氏名又は名称】東洋精糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】飯田 純久
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜彦
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-149655(JP,A)
【文献】特開昭62-025949(JP,A)
【文献】特開昭63-087959(JP,A)
【文献】国際公開第2008/059623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A61K、A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバウディオサイドAを8597重量%、α-グルコシルステビアを15重量%含み(これらの合計を100重量%とする)、
前記α-グルコシルステビアは、少なくともα-グルコシルステビオサイドを含み、さらにα-グルコシルレバウディオサイドAを含んでいてもよいα-グルコシルステビオール配糖体であり、
前記レバウディオサイドA1重量部に対する前記α-グルコシルレバウディオサイドAの比率が0~0.1重量部である
ことを特徴とする高甘味度甘味料組成物。
【請求項2】
前記レバウディオサイドAを90~95重量%、前記α-グルコシルステビアを5~10重量%含む(これらの合計を100重量%とする)、請求項1に記載の高甘味度甘味料組成物。
【請求項3】
前記α-グルコシルステビアが、
グルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオサイド、
または
グルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオサイドと、
レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種のステビオール配糖体にグルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオール配糖体
とを含む混合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高甘味度甘味料組成物。
【請求項4】
前記α-グルコシルステビア中のα-グルコシルステビオール配糖体全体についてのα-グルコシル基の平均付加数が1.0~2.5であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物。
【請求項5】
レバウディオサイドAを80~99.8重量%、α-グルコシルステビアを0.2~20重量%含み(これらの合計を100重量%とする)、
前記α-グルコシルステビアは、少なくともα-グルコシルステビオサイドを含み、さらにα-グルコシルレバウディオサイドAを含んでいてもよいα-グルコシルステビオール配糖体であり、
前記α-グルコシルステビア中のα-グルコシルステビオール配糖体全体についてのα-グルコシル基の平均付加数が1.0~2.5であり、
前記レバウディオサイドA1重量部に対する前記α-グルコシルレバウディオサイドAの比率が0~0.1重量部であることを特徴とする高甘味度甘味料組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物と糖アルコールとを含む組成物であって、前記糖アルコールが、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、イソマルツロースおよびイソマルツロース還元物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、糖アルコール組成物。
【請求項8】
請求項に記載の糖アルコール組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物と他の高甘味度甘味料とを含む組成物であって、前記他の高甘味度甘味料が、羅漢果抽出物、スクラロース、アステルパーム、アセスルファムK、サイクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、ネオテーム、アドバンテーム、グリチルリチン、サッカリンおよびネオヘスペリジンジヒドロカルコンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、高甘味度甘味料混合組成物。
【請求項10】
請求項に記載の高甘味度甘味料混合組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物と希少糖とを含む組成物であって、前記希少糖が、D-プシコース、D-アロース、D-タガトースおよびL-リボースからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、希少糖組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の希少糖組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高甘味度甘味料組成物、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、希少糖組成物、飲食品、化粧品及び医薬品に関する。より詳しくは、本発明は、ステビアに由来する成分を含有する高甘味度甘味料組成物、ならびに該高甘味度甘味料組成物を利用した糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、希少糖組成物、飲食品、化粧品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)は、南米のパラグアイを原産地とする菊科多年生植物であり、その原葉から抽出して得られるステビア抽出物は古来より天然の甘味料として知られている。ステビア抽出物に含まれる甘味成分として、ステビオール骨格の13位と19位に複数の糖が“β結合”したステビオール配糖体が11種以上同定されている。その中でもレバウディオサイドAとステビオサイドは、甘味質に優れ含量も多いことから、古くより日本国内では天然の高甘味度甘味料として使用されてきた。例えば、特許文献1では、少なくともステビオサイド(全ステビオール配糖体中で最も含有量が多い主成分)とレバウディオサイドAを含有し、ステビオサイドの含有量、およびステビオサイドとレバウディオサイドAの合計含有量を調節することにより、水溶性に優れるとともに、苦み等の異味がなく呈味に優れたものとすることを目的とした甘味料組成物が提案されている。
【0003】
一方で近年、ステビア原葉の品種改良に伴い、ステビア抽出物の中で最も甘味質に優れているとされるレバウディオサイドAの含量が高い(全ステビオール配糖体中で最も含有量が多い主成分となる)ステビアが栽培されるようになってきた。その甘味質と、天然物由来であることが相まって、高純度のレバウディオサイドAは世界市場でも高く評価され、甘味料として認可する国が増えてきた。しかし、レバウディオサイドAの甘味の立ち上りと強さは天然の高甘味度甘味料としては非常に優れているが、特有の甘味の後引きがあるため、用途が限定され、使用量にも限界があった。
【0004】
また、ステビオサイドとレバウディオサイドAを主体とするステビア抽出物には、特有の苦み、えぐみがあるが、これらの化合物に糖を付加する酵素処理を行うことにより呈味を大幅に改善できることが知られている。具体的には、ステビオサイド、レバウディオサイドAおよびその他のステビオール配糖体を含有するステビア抽出物に、澱粉部分加水分解物などの糖供与体の存在下にα-グルコシルトランスフェラーゼを作用させることによって、上記化合物に1分子以上のグルコースをα結合で付加することができ、このようにして得られる酵素処理ステビアは、苦み、えぐみが大幅に低減されている。さらに、原料として用いるステビア原葉(ステビア抽出物)のステビオール配糖体含量を高めることで、よりすっきりした甘味の酵素処理ステビアが得られるようになり、清涼飲料にも用いられる等、無処理のステビア抽出物と異なる用途にも使用が可能になった。しかし、酵素処理ステビアは、まろやかですっきりした甘味を特徴とするが、甘味の強さが不十分であるという課題があった。
【0005】
上記のような高甘味度甘味料の味質の改善のために、酵素処理ステビア中に含まれる成分が特定の条件を満たすように調整された組成物からなる甘味料について、幾つか特許出願がなされている。
【0006】
例えば、特許文献2では、レバウディオサイドAおよびα-グルコシルレバウディオサイドAの合計量に対する、ステビオサイドおよびα-グルコシルステビオサイドの合計量の比率を特定の範囲に調整するとともに、レバウディオサイドAとα-グルコシルレバウディオサイドAの比率を特定の範囲に調整した甘味料が提案されている。特許文献3では、α-1,4-グルコピラノシルステビオサイド類を含有し、α-1,4-グルコピラノシルレバウディオサイド類を含有しない甘味料が提案されている。特許文献4では、α-グルコシルステビオサイドに対するα-グルコシルレバウディオサイドAの比率を特定の範囲に調整した甘味料が提案されている。特許文献5では、α-グルコシル化ステビア抽出物を主成分とし、α-グルコシルステビオール配糖体の総量に対するα-モノグルコシルステビオサイド、α-ジグルコシルステビオサイド、α-グルコシルモノレバウディオサイドAおよびα-グルコシルジレバウディオサイドA(つまりα-グルコシル基の付加数が1または2であるα-グルコシルステビオサイドおよびα-グルコシルレバウディオサイドA)の合計量の比率を特定の範囲に調整するとともに、それらのα-グルコシル基の平均付加数を特定の範囲に調整した甘味料が提案されている。
【0007】
しかしながら、そのような高甘味度甘味料の味質、特に甘味の立ち上がりおよび強さとその後引きとのバランスには改善の余地があり、未だ好ましい味質を有する高甘味度甘味料は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-344071号公報
【文献】特開昭62-25949号公報
【文献】特開昭61-28363号公報
【文献】特開平9-107913号公報
【文献】特開平2-163056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、レバウディオサイドAを主成分とする高甘味度甘味料組成物において、レバウディオサイドAの甘味の立ち上がりと強さを維持しつつ、甘味の後引きを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、少なくともα-グルコシルステビオサイドを含み、さらにα-グルコシルレバウディオサイドAを含んでいてもよいα-グルコシルステビオール配糖体(このような条件を満たすα-グルコシルステビオール配糖体を本明細書において「α-グルコシルステビア」と称する。)を利用し、レバウディオサイドAと該α-グルコシルステビアとの重量比を特定の範囲に制御すると同時に、レバウディオサイドAとα-グルコシルステビア中のα-グルコシルレバウディオサイドAとの比率も特定の範囲に制御することにより、上記課題が解決された高甘味度甘味料組成物が得られることを見出した。
【0011】
このような本発明に係る高甘味度甘味料組成物は、甘味の強さには優れるが甘味の後引きがある無処理の(グルコースが付加されていない)レバウディオサイドAと、まろやかですっきりした甘味を持つが甘味の強さが薄いα-グルコシルステビアの両方の特徴を活用するものであり、これらを特定の重量比で配合するだけでなく、α-グルコシルステビア中のα-グルコシルレバウディオサイドAの量にも留意してレバウディオサイドAに対する重量比を比較的低い範囲に制御することで、甘味の立ち上がりと強さに優れると同時に後引きにも優れる、画期的な高甘味度甘味料組成物となっている。従来技術では、レバウディオサイドAを主成分とする高甘味度甘味料組成物の味質を改善しようとした場合、レバウディオサイドAに富んだステビア抽出物全体をα-グルコシル化処理の対象とし、それにより得られる処理物に含まれる成分を調整しようとする傾向にあった。このようなアプローチにとらわれ、用いる原料または反応条件によって、組成物中の糖付加された化合物の含量や1分子あたりに付加されるグルコシル基の数を調整するだけでは、甘味の強さおよび立ち上がりと後引きとを両立させることは困難であり、一方に優れればもう一方に劣るといったトレードオフの関係を乗り越えることはできない。これに対して本発明は、無処理のレバウディオサイドAと、レバウディオサイドAよりもステビオサイドに富んだステビア抽出物から調製されたα-グルコシル化処理物を混合するというアプローチにより、上記のような甘味の立ち上がり、強さおよび後引きのバランスの点で味質が改善された高甘味度甘味料組成物を得ることに成功した。
【0012】
すなわち、本発明は例えば、下記[1]~[10]で表される発明を包含する。
[1]
レバウディオサイドAを80~99.8重量%、α-グルコシルステビアを0.2~20重量%含み(これらの合計を100重量%とする)、
前記α-グルコシルステビアは、少なくともα-グルコシルステビオサイドを含み、さらにα-グルコシルレバウディオサイドAを含んでいてもよいα-グルコシルステビオール配糖体であり、
前記レバウディオサイドA 1重量部に対する前記α-グルコシルレバウディオサイドAの比率が0~0.1重量部である
ことを特徴とする高甘味度甘味料組成物。
【0013】
[2]
前記α-グルコシルステビアが、
グルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオサイド、
または
グルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオサイドと、
レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種のステビオール配糖体にグルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオール配糖体
とを含む混合物であることを特徴とする、項1に記載の高甘味度甘味料組成物。
【0014】
[3]
前記α-グルコシルステビア中のα-グルコシルステビオール配糖体全体についてのα-グルコシル基の平均付加数が1.0~2.5であることを特徴とする、項1または2に記載の高甘味度甘味料組成物。
【0015】
[4]
項1~3のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【0016】
[5]
項1~3のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物と糖アルコールとを含む組成物であって、前記糖アルコールが、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、イソマルツロースおよびイソマルツロース還元物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、糖アルコール組成物。
【0017】
[6]
項5に記載の糖アルコール組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【0018】
[7]
項1~3のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物と他の高甘味度甘味料とを含む組成物であって、前記他の高甘味度甘味料が、羅漢果抽出物、スクラロース、アステルパーム、アセスルファムK、サイクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、ネオテーム、アドバンテーム、グリチルリチン、サッカリンおよびネオヘスペリジンジヒドロカルコンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、高甘味度甘味料混合組成物。
【0019】
[8]
項7に記載の高甘味度甘味料混合組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【0020】
[9]
項1~3のいずれか一項に記載の高甘味度甘味料組成物と希少糖とを含む組成物であって、前記希少糖が、D-プシコース、D-アロース、D-タガトースおよびL-リボースからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、希少糖組成物。
【0021】
[10]
項9に記載の希少糖組成物を含む飲食品、化粧品または医薬品。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、甘味の立ち上りと強さに優れ、かつ甘味の後引きが抑制され、苦み、えぐみも大幅に低減された高甘味度甘味料組成物を提供することができる。また、このような高甘味度甘味料組成物を利用することにより、従来よりも呈味の改善された糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物および希少糖組成物、さらにそれらを含有する飲食品、化粧品および医薬品が製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、(A)実施例で用いたレバウディオサイドA精製物(純度95%)、および(B)実施例で用いたα-グルコシルステビオサイド精製物(B)(α-グルコシルステビオサイドの純度90%、平均付加糖数2.1)、それぞれのHPLCによるクロマトグラムである。(B)について、ReA(レバウディオサイドA)は、左から2番目の大きなピークでは無く、その左に僅かに表れているピークを指しており、ReAが実質的にほとんど存在しないことが分かる。一番左のStevは糖付加されていない未反応のステビオサイド、左から2,3,4,5および6番目の比較的大きなピークは、それぞれ糖が1,2,3,4または5個付加しているα-グルコシルステビオサイドを表している。
図2図2は、(A)実施例1で調製した比較品3(レバウディオサイドA:α-グルコシルステビオサイド=70:30)、および(B)同じく実施例1で調製した本発明品5(レバウディオサイドA:α-グルコシルステビオサイド=90:10)、それぞれのHPLCによるクロマトグラムである。
図3図3は、(A)実施例8で用いた市販の炭酸飲料、および(B)実施例8で調製した、α-グルコシルステビオサイド精製物(B)を添加した対照飲料、それぞれのHPLCによるクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
-高甘味度甘味料組成物-
本発明の高甘味度甘味料組成物は、下記の3つの条件を満たすものである。
第1条件:レバウディオサイドAを80~99.8重量%、α-グルコシルステビアを0.2~20重量%含む(これらの合計を100重量%とする);
第2条件:α-グルコシルステビアは、少なくともα-グルコシルステビオサイドを含み、さらにα-グルコシルレバウディオサイドAを含んでいてもよいα-グルコシルステビオール配糖体である;
第3条件:レバウディオサイドA 1重量部に対するα-グルコシルレバウディオサイドAの比率が0~0.1重量部である。
【0025】
第1条件については、レバウディオサイドAの甘みの強さの維持と甘みの後引きの抑制のバランスをさらに優れたものとする観点から、レバウディオサイドAを85~97重量%、α-グルコシルステビアを3~15重量%含む(これらの合計を100重量%とする)ことがより好ましく、レバウディオサイドAを90~95重量%、α-グルコシルステビアを5~10重量%含む(これらの合計を100重量%とする)ことがさらに好ましい。
【0026】
第2条件については、α-グルコシルステビア中にα-グルコシルステビオサイドが含まれていれば、その含量(全α-グルコシルステビオール配糖体に対するα-グルコシルステビオサイドの比率)は特に限定されるものではない。全α-グルコシルステビオール配糖体1重量部に対して、α-グルコシルステビオサイドは、α-グルコシルステビアを配合するためにステビア抽出物を精製した精製物を酵素処理した酵素処理ステビオサイド精製物(α-グルコシルステビオサイド精製物)を用いた場合のように、1重量部(つまりα-グルコシルステビオール配糖体は実質的に全てα-グルコシルステビオサイド)であってもよいし、ステビオサイドに富む従来種から得られるステビア抽出物を酵素処理した酵素処理ステビア抽出物を用いた場合の一般的な範囲である、0.50~0.65重量部程度であってもよい。
【0027】
第3条件については、レバウディオサイドAの甘みの後引きを改善する効果をさらに優れたものとする観点から、レバウディオサイドA 1重量部に対し、α-グルコシルレバウディオサイドAの比率が、0~0.05重量部であることが好ましく、0重量部である(実質的に含まない)ことがより好ましい。
【0028】
なお、α-グルコシルステビア中のα-グルコシルレバウディオサイドAの比率は、第1条件を満たすようにα-グルコシルステビアの量を調節したときに、第3条件を満たしていれば特に限定されるものではない。全α-グルコシルステビオール配糖体1重量部に対して、α-グルコシルレバウディオサイドAは、α-グルコシルステビアとして酵素処理ステビオサイド精製物を用いた場合のように0重量部(α-グルコシルステビオール配糖体中にα-グルコシルレバウディオサイドAは実質的に含まれていない)であってもよいし、α-グルコシルステビアとしてステビオサイドリッチの従来種から得られるステビア抽出物から調製された酵素処理ステビア抽出物を用いた場合の一般的な範囲である、0.25~0.40重量部程度であってもよい。
【0029】
本発明の高甘味度甘味料組成物は、レバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビア以外の成分、例えば、レバウディオサイドA精製物に含まれるレバウディオサイドA以外の成分(不純物)や、賦形剤などの任意成分(詳細は後述)を含有する場合がある。また、本発明の高甘味度甘味料組成物は、例えば糖アルコールと組み合わされて糖アルコール組成物を構成することもあるが(詳細は後述)、甘味料としての用途が共通しているため、見方によって当該糖アルコール組成物は、レバウディオサイドAとα-グルコシルステビアに加えて糖アルコールを含有する、本発明の高甘味度甘味料組成物の一実施形態とみることもできる。これらのような組成物であっても、第1条件および第3条件を満たすか否かは、それぞれの条件で規定されている2種類の成分の重量部によって判断すればよい。
【0030】
<レバウディオサイドA、ステビオサイドおよびその他のステビオール配糖体、ならびにこれらのα-グルコシル化物>
ステビオール配糖体は、ステビア抽出物などに含まれる、下記式[I]で表される化合物の総称であって、ステビオール骨格(R1、R2ともにH)の19位のカルボキシル基にβ結合している糖残基(R1)および13位のヒドロキシ基にβ結合している糖残基(R2)が異なる、様々な化合物が包含される。ただし、本明細書では、R1および/またはR2に、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理により付加された1つ以上のα-グルコシル基を含む化合物(例えば表1の化合物12~22)は「α-グルコシルステビオール配糖体」と称し、そのような処理がなされていない天然の化合物(例えば表1の化合物1~11)のみを「ステビオール配糖体」と称して、両者を区別することとする。
【0031】
表1中のR1およびR2は、それぞれ式[I]中のR1およびR2に対応する。例えば、ステビオサイドのR2として記載されている「-(β-Glc)-(β-1,2-Glc)」という表記は、ヒドロキシ基の酸素原子に、まず左側のGlcがβ結合で結合しており、そのグルコシル基の2位の酸素原子に、右側のGlcがβ-1,2結合していることを表す。本発明においては、下記表に記載した11種類の化合物を主なステビオール配糖体とみなし、ステビア抽出物の純度を定義する際にこれらの含量を使用して算出する。従来のステビア抽出物には、ステビオサイド(1)が最も多く含まれ、次いでレバウディオサイドA(2)が多く含まれ、さらにレバウディオサイドC(4)およびズルコサイドA(10)を加えた4種類が、主要な甘味成分を構成している。その他にも、レバウディオサイドB(3)、レバウディオサイドD(5)、レバウディオサイドE(6)、レバウディオサイドF(7)、レバウディオサイドM(8)、ルブソサイド(9)、ステビオールビオサイド(11)などが挙げられる。
【0032】
【化1】
【0033】
【表1】
【0034】
また、ステビオール配糖体は、後述するようなα-グルコシルトランスフェラーゼ処理により、R1および/またはR2の糖残基の末端にグルコースが1個以上、α-1,4-結合などにより結合した化合物、すなわちα-グルコシルステビオール配糖体となる。
【0035】
例えば、本発明の高甘味度甘味料組成物の必須成分の一つであり、第2条件で規定されているα-グルコシルステビオサイド(12)は、R1が-(β-Glc)-(α-Glc)mで表され、R2は-(β-Glc)-(β-1,2-Glc)-(α-Glc)nで表される化合物である。R1においては-(α-Glc)mが付加されたα-グルコシル基であり、R2においては-(α-Glc)nが付加されたα-グルコシル基である。
mおよびnは、それぞれR1およびR2において付加されているグルコシル基の数を表し、0以上、通常は25以下の整数である。ただし、m+n≧1を満たす、つまりステビオサイドに少なくとも1個のα-グルコシル基が結合している必要がある。このようなα-グルコシルステビオサイドには、R1にのみα-グルコシル基が結合しているもの(R2のnは0)、R2にのみα-グルコシル基が結合しているもの(R1のmは0)、およびR1とR2の両方にα-グルコシル基が結合しているものの3通りの化合物が包含される。
【0036】
α-グルコシル基の結合様式は、グルコースをステビオサイドおよびその他のステビオール配糖体に付加するために用いられる、α-グルコシルトランスフェラーゼ等の糖転移酵素の種類によって異なる可能性があるが、本発明では特に限定されるものではない。例えば、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGT ase)のようなα-グルコシルトランスフェラーゼを用いた場合、R1のm個のα-グルコシル基、R2のn個のα-グルコシル基はそれぞれ、すべてがα-1,4結合で直鎖状に結合するものと推定される。
【0037】
上記のようなことは、α-グルコシルレバウディオサイドM、α-グルコシルレバウディオサイドAおよびその他のステビオール配糖体についても同様である。ただし、レバウディオサイドMのR1およびレバウディオサイドA等のR2には、ヒドロキシ基の酸素原子にβ結合したGlc(第1のグルコシル基)に対して、β-1,2結合したGlc(第2のグルコシル基)と、β-1,3結合したGlc(第3のグルコシル基)があり、それぞれに対してα-グルコシル基が付加しうる。したがって、α-グルコシルレバウディオサイドA等には、例えば、α-グルコシルレバウディオサイドAのR1の第1のグルコシル基に付加されたα-グルコシル基:-(α-Glc)m、α-グルコシルレバウディオサイドAのR2の第2のグルコシル基に付加されたα-グルコシル基:-(α-Glc)n、α-グルコシルレバウディオサイドMのR1およびα-グルコシルレバウディオサイドAのR2の第3のグルコシル基に付加されたα-グルコシル基:-(α-Glc)pおよび-(α-Glc)oがある。α-グルコシルレバウディオサイドAの場合、m+n+o≧1を満たし、α-グルコシルレバウディオサイドMの場合、m+n+o+p≧1を満たす。m、n、o、pはそれぞれ独立に、0以上、通常は25以下の整数である。
【0038】
<α-グルコシルステビア>
本明細書における“α-グルコシルステビア”という用語は、式[I]で表される11種類のステビオール配糖体にグルコースがα-1,4結合などで付加された化合物、すなわちα-グルコシルステビオール配糖体のみからなる、第2条件を満たす集合を指し、“酵素処理ステビア抽出物”中に共存する未反応のステビオール配糖体、糖供与体およびその他の成分や、“酵素処理ステビオサイド精製物”中に共存する未反応のステビオサイド、糖供与体およびその他の成分はその定義に包含されない。“α-グルコシルステビア”に該当する化合物のみの重量は、後述するステビア抽出物の純度を算出するための液体クロマトグラフィーを用いる手法と同様にして、測定することが可能である。
【0039】
<高甘味度甘味料組成物の調製方法>
本発明の高甘味度甘味料組成物は基本的に、レバウディオサイドAと、α-グルコシルステビアとを、第1および第3条件を満たすような割合で混合することにより調製することができる。α-グルコシルステビアは、第2条件で規定されているように少なくともα-グルコシルステビオサイドを含む必要があり、第3条件を満たす範囲でα-グルコシルレバウディオサイドAを含んでいてもよく、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、その他のα-グルコシルステビオール配糖体を含んでいてもよい。
【0040】
レバウディオサイドAの典型的な供給源としては、"レバウディオサイドA精製物"を用いることができる。また、α-グルコシルステビアの典型的な供給源としては、“酵素処理ステビオサイド精製物”または“酵素処理ステビア抽出物”を用いることができる。酵素処理ステビオサイド精製物は実質的に、第2条件で必須とされるα-グルコシルステビオサイドのみを含有し、α-グルコシルレバウディオサイドAは含有しない。酵素処理ステビア抽出物は通常、第2条件で必須とされるα-グルコシルステビオサイドとともに、α-グルコシルレバウディオサイドAも含有するが、それらの含量(含有比)は酵素処理ステビア抽出物の原料としたステビア抽出物によって変動する。あるいは、酵素処理ステビア抽出物に代えて、酵素処理ステビオサイド精製物と、酵素処理レバウディオサイドA精製物(実質的にα-グルコシルレバウディオサイドAのみを含有し、α-グルコシルステビオサイドは含有しない)とを併用し、それぞれをα-グルコシルステビオサイドおよびα-グルコシルレバウディオサイドAの供給源としてもよい。高甘味度甘味料組成物を調製する際は、このようなレバウディオサイドA精製物、酵素処理ステビオサイド精製物、酵素処理レバウディオサイドA精製物、酵素処理ステビア抽出物などの供給源に含まれる、利用しようとする成分についての純度を考慮し、これらの供給源中のレバウディオサイドA、α-グルコシルステビオサイドおよびα-グルコシルレバウディオサイドAの量が、第1および第3条件を満たすよう、供給源の量を調節し、混合することが適切である。
【0041】
なお、高甘味度甘味料組成物には、レバウディオサイドA精製物中に含まれるレバウディオサイドA以外の微量の成分や、酵素処理ステビオサイド精製物または酵素処理ステビア抽出物中に含まれるα-グルコシルステビオサイドおよびα-グルコシルレバウディオサイドA以外の微量の成分も混在する場合があるが、本発明の作用効果が阻害されない限り問題はない。
【0042】
酵素処理ステビオサイド精製物は、ステビオサイド精製物をα-グルコシルトランスフェラーゼ処理することにより得られる生成物であるため、その酵素処理ステビオサイド精製物中には実質的にレバウディオサイドAは存在しない。したがって、レバウディオサイドA精製物と酵素処理ステビオサイド精製物を混合すると、本発明の第3条件においてα-グルコシルレバウディオサイドAが0重量部である高甘味度甘味料組成物が得られる。
【0043】
一方、酵素処理ステビア抽出物は、様々な天然のステビオール配糖体を含有するステビア抽出物を用いてα-グルコシルトランスフェラーゼ処理を行ったときに得られる生成物であるため、その酵素処理ステビア抽出物中には通常、もともとステビア抽出物中に含まれており、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理において未反応であったレバウディオサイドAが残存する。また、α-グルコシルレバウディオサイドAは、レバウディオサイドA精製物やステビア抽出物中に含まれるレバウディオサイドAをα-グルコシルトランスフェラーゼ処理することにより得られる生成物である。そのため、未反応のレバウディオサイドAが残存する場合がある。上記のような未反応のレバウディオサイドAの存在量が無視できない(0とみなせない)程の量である場合は、そのような未反応のレバウディオサイドAも本発明の高甘味度甘味料組成物中のレバウディオサイドAの一部を構成することになるので、その量も考慮して本発明の第1条件および第3条件を満たすように、レバウディオサイドA精製物と酵素処理ステビア抽出物の配合量や、レバウディオサイドA精製物とα-グルコシルステビオール精製物およびα-グルコシルレバウディオサイドAとの配合量を調整する必要がある。
【0044】
<酵素処理ステビオサイド精製物>
酵素処理ステビオサイド精製物は、本発明の高甘味度甘味料組成物に“α-グルコシルステビア”を配合するための材料として用いることのできる物質の一つである。酵素処理ステビオサイド精製物は、次に述べる酵素処理ステビア抽出物の特殊な一実施形態であって、酵素処理ステビア抽出物の原料として、ステビア抽出物(未精製物)ではなく、ステビア抽出物を精製することによって得られるステビオサイド精製物を用いて、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理(詳細は後述)を行った場合に得られる物質である。例えば、α-グルコシルトランスフェラーゼとしてシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを用いることにより調製される酵素処理ステビオサイド精製物は、1個以上のグルコースがα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオサイドを含有しており、本発明におけるα-グルコシルステビアの好ましい一実施形態として用いることができる。
【0045】
酵素処理ステビオサイド精製物は、次に述べる酵素処理ステビア抽出物の特殊な一実施形態といえる。そのため、酵素処理ステビオサイド精製物に関係する技術的事項は、基本的に、本明細書中に記載する酵素処理ステビア抽出物に関係する技術的事項と同様のものとして、たとえば“ステビア抽出物”と記載されているところを“ステビオサイド精製物”に読み替えたものとして、取り扱うことが可能である。
【0046】
<酵素処理ステビア抽出物>
酵素処理ステビア抽出物は、本発明の高甘味度甘味料組成物に“α-グルコシルステビア”を配合するための材料として用いることのできる物質のもう一つである。酵素処理ステビア抽出物は、“α-グルコシルステビア”すなわち各種のα-グルコシルステビオール配糖体を含有し、通常は“α-グルコシルステビア以外の成分”、たとえば以下に述べるような製造方法(α-グルコシルトランスフェラーゼ処理)における未反応物等も多少含有する。
【0047】
α-グルコシルステビオール配糖体は、具体的には、酵素処理ステビア抽出物の原料として用いたステビア抽出物に含まれているステビオール配糖体(すなわち、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドからなる群から選択される少なくとも1種)が本来有する糖残基に、グルコースがα-1,4結合などで1個以上結合した化合物である(前記式[I]のR1およびR2参照)。例えば、α-グルコシルトランスフェラーゼとしてシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼを用いることにより調製される酵素処理ステビア抽出物は、グルコシル基がα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオサイドと、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種のステビオサイド以外のステビオール配糖体にグルコシル基がα-1,4結合で付加されている化合物とを含有しており、本発明におけるα-グルコシルステビアの好ましい一実施形態として用いることができる。
【0048】
<酵素処理ステビア抽出物の製造方法>
酵素処理ステビア抽出物は、一般的に、水および糖供与体(例えばデキストリン等のでんぷん部分分解物)の存在下で、ステビア抽出物にα-グルコシルトランスフェラーゼ(例えばシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ)を反応させることによって製造することができる。本明細書において、上記の酵素処理を"α-グルコシルトランスフェラーゼ処理"と称し、それにより得られる“酵素処理ステビア抽出物”を“α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア”と称する(後者の呼称は、厚生労働省「第8版食品添加物公定書」でも用いられている)。ただし、本明細書では便宜上、“酵素処理ステビア抽出物”だけでなく、同様の製造方法によって得られる“酵素処理ステビオサイド精製物”も含めた総称として“α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア”という用語を用いることとする。
【0049】
上記のような酵素処理ステビア抽出物の製造方法は公知であり、例えば特公昭57-18779号公報、特開平2-163056号公報(特許文献5)、またそれらの記載を引用している特開2004-344071号公報(特許文献1)などを参照することができる。
【0050】
酵素処理ステビア抽出物の純度は、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(反応生成物)の乾燥固形物中に含まれる、α-グルコシルステビア(α-グルコシルステビオール配糖体)の合計量の割合を指す。酵素処理ステビア抽出物の純度は、具体的には下記式で定義される:
酵素処理ステビア抽出物の純度(乾燥重量%)
=α-グルコシルステビアの重量/酵素処理ステビア抽出物の重量×100
【0051】
上記式による酵素処理ステビア抽出物の純度は、第8版食品添加物公定書の「α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア」(P326~328)に記載されている「定量法」に準じて測定することができる。但し、「ステビア抽出物」の純度についてと同様、当該「定量法」では、ステビオール配糖体として特定の4成分しか挙げられていないので、残る7成分についても同様に測定し、全11成分からなるα-グルコシルステビオール配糖体の含量(%)を合計して、酵素処理ステビア抽出物の純度を算出すればよい。
【0052】
酵素処理ステビア抽出物の純度は、通常は65重量%以上(第8版食品添加物公定書における「α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア」の「含量」として規定されている、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア単独の製品とする場合に日本国内で認可される水準)であり、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。酵素処理ステビア抽出物中には、α-グルコシルステビオール配糖体以外の不純物、例えばグルコシルトランスフェラーゼ処理に用いた糖供与体などが含まれているが、合成吸着樹脂、イオン交換樹脂などを用いた精製処理を、必要に応じて繰り返し行うことで、その純度を上記の水準まで高めることができる。必要により活性炭を用いた脱臭を行ってもよい。
【0053】
<α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア中のα-グルコシル基の糖鎖調整>
本発明においては、上記の方法で得られるα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(酵素処理ステビア抽出物および酵素処理ステビオサイド精製物)は、そのまま利用してもよいが、ステビオサイドおよびその他のステビオール配糖体にはα-グルコシルトランスフェラーゼ処理により比較的多くのα-グルコシル基がα-1,4-結合などで付加するため、機能性を損なわない範囲で、むしろ機能性を向上させるために、付加しているα-グルコシル基の数を減らした上で利用することもできる。このようなα-グルコシル基の付加数を調整する方法は公知であり、一般的には、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビアに、水の存在下でα-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素、たとえばグルコアミラーゼを反応させるようにすればよい。本明細書において、上記の酵素処理を"α-1,4-グルコシダーゼ処理"と称し、それにより得られる、α-グルコシル基の平均付加数が調整されたα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビアを、“α-1,4-グルコシダーゼ処理ステビア”と称することとする(α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビアという用語に酵素処理ステビオサイド精製物由来のものが含まれているのと同様、α-1,4-グルコシダーゼ処理ステビアという用語にも酵素処理ステビオサイド精製物由来のものが含まれる)。
【0054】
α-グルコシル基の付加数(前記式(I)におけるm+n+o+p)は、α-1,4-グルコシダーゼ処理ステビアに含まれる分子全体の平均値(平均付加数)として、2.5以下に調整することが好ましく、1.0~2.5に調整する(つまり個々のステビオサイドおよびその他のステビオール配糖体に少なくとも1個はα-グルコシル基が付加していることが期待される水準を保つ)ことがより好ましい。例えば、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素としてグルコアミラーゼを用いることにより、α-グルコシル基の付加数が1または2の化合物を多く含む、つまりα-グルコシル基の平均付加数が比較的小さなα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビアが得られる。α-1,4-グルコシダーゼ処理ステビアの平均付加数を上記範囲に調整することにより、より一層、レバウディオサイドAの甘みの強さの維持と甘味の後引きの抑制のバランスが取れた高甘味度甘味料組成物が得られやすくなる。
【0055】
α-グルコシル基の平均付加数を上記の好ましい範囲の調節するための適切な条件、例えば酵素反応における水の量、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素の種類およびその量、pH、温度、時間などは、必要に応じて特開平2-163056号公報(特許文献5)およびその記載を引用している特開2004-344071号公報(特許文献1)などを参照しながら、当業者であれば適宜設定することができる。
【0056】
<α-グルコシル基の平均付加数の確認>
α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビアないしα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビアについて、α-グルコシル基の平均付加数を測定する方法は公知であり、例えば、特開平2-163056号公報(特許文献5)の実験2に記載の方法に準じて行うことができる。その概略は次の通りである。試料溶液を調製し、液体クロマトグラフィーを行い、各成分のピークが表れた第1のクロマトグラムを作成するとともに、各ピークに対応する成分を分取する。分取試料の一部を用いて所定の処理後にガスクロマトグラフィーを行い、各成分の非糖部(アグリコン=ステビオール骨格)の量を求めるとともに、分取試料の一部を用いて所定の処理により各成分のグルコシル基の量を定量し、これらの結果からステビオールとグルコシル基のモル比を求める。さらに、分取試料の一部をグルコアミラーゼで処理し、付加された糖を切断した後、液体クロマトグラフィーを行って第2のクロマトグラムを作成する。第1のクロマトグラムのピークと第2のクロマトグラムのピークを対比し、消滅ないし減少したピークはグルコアミラーゼ処理により糖が切断された化合物と推定することなどにより、最初の試料溶液に含まれていた各成分(ピーク)とその量(ピーク面積)を同定する。これらの測定値に基づく算術平均により、α-グルコシル基の平均付加数を算出する。
【0057】
<ステビア抽出物>
ステビア抽出物は、上述した酵素処理ステビア抽出物の原料となる物質であって、各種の“ステビオール配糖体”、すなわち、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有し、通常は“ステビオール配糖体以外の成分”も含有する。従来種から得られるステビア抽出物は、一般的にステビオサイドが最も多く含まれ、次いでレバウディオサイドAが多く含まれる。一例として、従来の(ステビオサイドリッチの)ステビア抽出物を精製して得られる精製ステビア抽出物には、ステビオサイドが50~55重量%、レバウディオサイドAが20~25重量%、レバウディオサイドCが7~8重量%、ズルコサイドAが3~4重量%含まれており(これら4種類のステビオール配糖体が主要な甘味成分をなしている)、その他のステビオール配糖体は少量ずつ(各0~5重量%程度)含まれている。なお、測鎖にラムノシル基を有するレバウディオサイドCおよびズルコサイドAは(前記化学式[I]および表参照)、呈味がステビオサイドおよびレバウディオサイドAに比べて劣っており、特にズルコサイドAは呈味が悪いため、これらの含有量を低減することによりステビア抽出物全体の甘味質を改善することができる(特開2002-45145参照)。
【0058】
このようなステビア抽出物は、少なくともステビオサイドが含まれているものである限り、抽出処理を行って得られたままの未精製物であってもよいし、後述するような精製処理を行って得られた、所定の範囲の純度を有する精製物(“ステビオール配糖体以外の成分”を極力除去した物質)であってもよい。
【0059】
ステビア抽出物は、次に述べる方法により製造してもよいし、市販のものを使用してもよい。市販のものとしては、例えば「ステビロース90」(東洋精糖(株)製)を用いることができる。
【0060】
<ステビア抽出物の製造方法>
ステビア抽出物は、常法に従って調製することができる。その概略は次の通りである。乾燥したステビア原葉を温水に一定の時間浸漬した後、固液分離する。得られた抽出物(水溶液)は合成吸着樹脂を用いて精製、濃縮し、必要に応じてさらにイオン交換樹脂を用いて脱塩、脱色する。ステビア抽出物を、取り扱い性の良好な粉末状の物質として調製したい場合は、上記の精製物(溶液)を、噴霧乾燥機(スプレードライヤー)等を用いて乾燥し、粉末化すればよい。このようにして得られるステビア抽出物の含量(純度)は、通常80~90%となる。
【0061】
<ステビア抽出物の純度>
ステビア抽出物の純度(重量%)は、ステビア葉より常法により抽出、精製して得られる乾燥固形物中に含まれるステビオール配糖体の合計量の割合を指す。ステビア抽出物の純度は、第8版食品添加物公定書の「ステビア抽出物」(P451~452)に記載されている「ステビオール配糖体の含量(%)」に相当する値であり、具体的には下記式で定義される:
ステビア抽出物の純度(乾燥重量%)
=(ステビオサイド+レバウディオサイドA+レバウディオサイドC+ズルコサイドA+の重量)/ステビア抽出物の重量×100
【0062】
上記式によるステビア抽出物の純度は、同じく第8版食品添加物公定書の「ステビア抽出物」(P451~452)に記載されている「定量法」に準じて測定することができる。当該「定量法」の概略は次の通りである。ステビア抽出物の溶液(検液)と定量用ステビオサイドの溶液(標準液)を調製し、それぞれについて液体クロマトグラフィーを行い、標準液のステビオサイドのピーク面積と、検液のステビオサイド、ズルコサイドA、レバウディオサイドA、レバウディオサイドCそれぞれのピーク面積とから、換算係数(ステビオサイドの分子量に対する各ステビオール配糖体の分子量の比の値)を用いた所定の換算式により、検液中の前記4成分それぞれの含量(%)をステビオサイド換算値として算出する。但し、当該「定量法」では、ステビオール配糖体として前記4成分しか挙げられておらず、それらの含量の合計を「ステビオール配糖体の含量」とみなしている。もちろん、当該「定量法」に記載のないレバウディオサイドB、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ルブソサイド、ステビオールビオサイドの7成分の含量を含めた全11成分からなる「ステビオール配糖体の含量」からステビア抽出物の純度を求めてもよい。前記7成分については、各標準品を用いるか、または混合標準品等を用いて、当該「定量法」と同様に液体クロマトグラフィーを行い、それぞれの含量(%)をステビオサイド換算値として算出すればよい(上記7成分の換算係数はそれぞれ1.00、1.40、1.20、1.16、1.61、0.79、0.79とする)。最後に、全11成分からなるステビオール配糖体の含量(%)を合計して、ステビア抽出物の純度とみなすことができる。
【0063】
ステビア抽出物の純度は、通常は80重量%以上(第8版食品添加物公定書における「ステビア抽出物」の「含量」として規定されている、ステビア抽出物単独の製品とする場合に日本国内で認可される水準に準じる)であり、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。ステビア抽出物中には、ステビオール配糖体以外にも不純物が含まれているが、上述したような合成吸着樹脂、イオン交換樹脂などを用いた精製処理を、必要に応じて繰り返し行うことで、その純度を上記の水準まで高めることができる。
【0064】
<アルコールを用いた結晶化工程を経て得られる結晶物(精製物)>
前述したように、ステビア抽出物の純度、すなわちステビア抽出物中のステビオール配糖体全体の合計の含有率は、吸着樹脂などを利用した精製処理により向上させることができる。また、イオン交換樹脂を利用すれば、ステビア抽出物に含まれるステビオール配糖体のうち特定のものを除去することができる。例えば、ステビア抽出物のアルコール溶液(メタノール溶液等)を調製し、まずカチオン交換樹脂に通し、次いでアニオン交換樹脂を通すことにより、ステビオサイドから糖が1個切れた構造のステビオールビオサイドや、その他のステビオール配糖体を当該樹脂に吸着させて除去し、ステビオサイドやレバウディオサイドAの含有率を高めることができる。
【0065】
ステビオサイドやレバウディオサイドAの純度をさらに高め、これらの精製物を得たい場合は、アルコールを用いた結晶化工程を利用することが好適である。そのようなアルコールを用いた結晶化工程は公知の手法であるが、概要は次の通りである。すなわち、まずステビア抽出物に高濃度のアルコール溶媒を所定の温度で加える。ステビア抽出物をその溶媒に溶解させた後、冷却すると、結晶が析出する。この結晶を固液分離し、冷水で洗浄し、回収する。このような精製工程により、ステビオサイドの結晶(ステビオサイド精製物)、レバウディオサイドAの結晶(レバウディオサイドA精製物)、またはステビオサイドの結晶とレバウディオサイドAの結晶の混合物が得られる。アルコール濃度を調節することにより、ステビオサイドまたはレバウディオサイドAのみからなる結晶、またはステビオサイドの結晶とレバウディオサイドAの結晶の混合物などの所望の結晶物を得ることができる。
【0066】
<任意成分>
本発明に係る高甘味度甘味料組成物は、前述した第1および第3条件を満たすレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビア(α-グルコシルレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビオサイド)以外に、本発明の作用効果を阻害しない範囲で、一般的な甘味料組成物に配合され得るような成分(任意成分)が配合されてもよい。このような添加可能な任意成分としては、分散剤、賦形剤(例:澱粉、デキストリン、粉乳、パラチニットなどのイソマルツロース還元物、有機酸、有機酸塩)、香料、酸化防止剤(例:酵素処理ルチン、アスコルビン酸及びその塩またはその誘導体、トコフェロール及びその誘導体、BHT、BHA、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、クロロゲン酸、茶抽出物、ローズマリー抽出物)、塩化ナトリウム、酵素処理ナリンジン、酵素処理ヘスペリジン、酵素処理ルチン、果汁、天然糖類(例:砂糖、果糖、ブドウ糖、マルトース、トレハロース)、グリチルリチン等が挙げられる。
【0067】
高甘味度甘味料組成物の剤型は、特に限定されず、例えば、粉末、顆粒、ペレット、打錠、キューブ、ペースト、シロップ、液体などが挙げられる。例えば、前述した高甘味度甘味料組成物の製造方法に準じて、溶媒(例えば水)にレバウディオサイドA精製物とα-グルコシルステビアとを第1および第3条件を満たす量で添加するとともに、賦形剤(例えばデキストリン)を添加し、混合して溶解させた後、噴霧乾燥することにより、粉末状の高甘味度甘味料組成物が得られる。必要により粉砕、篩、顆粒等の工程を加えてもよい。
【0068】
<高甘味度甘味料組成物を含む飲食品、化粧品および医薬品>
本発明の高甘味度甘味料組成物は、各種の飲食品、化粧品、医薬品などに添加して用いることができる。本発明の高甘味度甘味料組成物を飲食品および化粧品に添加する場合は、純度80%以上のステビア抽出物を用いて作製されたα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(または糖鎖の長さを調整したα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビア)を含有するものを使用することが好ましい。医薬品に添加する場合は、純度90%以上のステビア抽出物を用いて作製されたα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(または糖鎖の長さを調整したα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビア)を含有するものを使用することが好ましい。ただし、純度90%以上のステビア抽出物を用いて作製されたα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(または糖鎖の長さを調整したα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビア)を含有する高甘味度甘味料組成物は、飲食品および化粧品においても好適に使用することができる。問題がなければ、本発明の高甘味度甘味料組成物は純度に関係なく、飲食品、化粧品または化粧品に添加することが可能である。
【0069】
食品としては、一般的に甘味が求められるものを広く挙げることができ、具体的には、コーヒー、紅茶、コーラ、炭酸飲料、乳飲料、甘酒等の飲料類;キャンディー類;ゼリー、ムース、チョコレート、クッキー、ケーキ、アイスクリーム、シャーベット、チューインガム、和菓子、パン等の菓子・パン類;スイートピクルス、一夜漬け等の漬物類;魚介乾製品、魚介塩蔵品;佃煮類;ハム、ベーコン、ソーセージ等の各種食肉・水産物加工製品;ドレッシング、たれ、醤油、味噌、みりん、ソース、ケチャップ、麺つゆ等の調味料類;カレー粉等の香辛料類;即席麺などの穀物加工品類;梅酒、薬用酒、果実酒、日本酒等の酒類;たばこ類;などが挙げられる。
【0070】
化粧品(医薬部外品に該当する薬用化粧品も含む)としては、歯磨き剤、口腔清浄剤などが挙げられる。医薬品としては、苦味等を有する経口医薬などが挙げられる。
【0071】
これらの食品、化粧品および医薬品等に配合される高甘味度甘味料組成物の添加量には特に制限はなく、その食品などの呈味、風味、甘味、などを所望の範囲に高めうる限り、任意量で使用できる。また、これらの食品、化粧品および医薬品等は、適切な段階で本発明の高甘味度甘味料組成物を添加すること以外は、基本的には従来と同じ方法で製造することができ、必要に応じて各種の添加剤を併用することもできる。
【0072】
なお、高甘味度甘味料組成物を含む飲食品、化粧品および医薬品は、例えば、飲食品にレバウディオサイドAまたはα-グルコシルステビアが含まれている場合には、上記第1条件~第3条件を満たすように、α-グルコシルステビアおよび/またはレバウディオサイドAを所定量添加して、製造してもよい。つまり、高甘味度甘味料組成物を含む飲食品、化粧品および医薬品は、最終的に得られる飲食品、化粧品および医薬品中に、上記第1条件~第3条件を満たすようにレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビアが含まれていればよく、必ずしも予め高甘味度甘味料組成物を調製したものを使用する必要はない。しかしながら、上記第1条件~第3条件を満たすように調整することが容易になる等の点から、予め高甘味度甘味料組成物を調製した上で飲食品、化粧品および医薬品に添加することが好ましい。このことは、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物および希少糖組成物を含む飲食品、化粧品および医薬品についても同様である。
【0073】
-糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物-
本発明の高甘味度甘味料組成物は、以下に記載するような所定の成分と組み合わせて、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物を調製するために使用することができる。また、そのようにして調製される糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物はそれぞれ、飲食品、化粧品および医薬品を製造するために使用することができる。
【0074】
糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物の典型的な実施形態は、後述するような飲食品、化粧品、または医薬品の製造前に、少なくとも本発明の高甘味度甘味料組成物の要件を満たす成分と、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物のそれぞれに対応する所定の成分とを含有する組成物として、あらかじめ調製ないし製品化されているものである。
【0075】
糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、(i)あらかじめ調製された高甘味度甘味料組成物と、所定の成分と、必要に応じて前述した高甘味度甘味料組成物についての任意成分と同様の任意成分とを混合することによって調製してもよいし、(ii)前述したような第1~第3条件を満たす高甘味度甘味料組成物を調製するための原料、たとえば適切な量のレバウディオサイドA精製物およびα-グルコシルステビアと、所定の成分と、必要に応じて前述した高甘味度甘味料組成物についての任意成分と同様の任意成分とを混合することによって調製してもよい。
【0076】
一方で、本発明の飲食品、化粧品および医薬品は、(i)上述したようにあらかじめ調製ないし製品化された糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、または希少糖組成物を製造工程で添加することによって製造されたものであってもよいし、(ii)そのような事前の調製ないし製品化は行わず、飲食品、化粧品または医薬品の製造工程において本発明の高甘味度甘味料組成物と糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、および希少糖組成物のそれぞれに対応する所定の成分とが順次(前後は問わない)投入されることにより製造されたものであってもよい。いずれの実施形態であっても、飲食品、化粧品および医薬品が、例えば、本発明の糖アルコール組成物の要件を満たす成分を含有していれば、その飲食品、化粧品および医薬品は本発明の糖アルコール組成物を“含む”ないし“利用した”飲食品、化粧品または医薬品といえる。
【0077】
飲食品または化粧品を製造する場合は、純度80%以上のステビア抽出物を用いて作製されたα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(または糖鎖の長さを調整したα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビア)を含有する高甘味度甘味料組成物を使用して調製された、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、または希少糖組成物を使用することが好ましい。医薬品を製造する場合は、純度90%以上のステビア抽出物を用いて作製されたα-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア(または糖鎖の長さを調整したα-1,4-グルコシダーゼ処理ステビア)を含有する高甘味度甘味料組成物を使用して調製された、糖アルコール組成物、高甘味度甘味料混合組成物、または希少糖組成物を使用することが好ましい。
【0078】
<糖アルコール組成物>
本発明では、高甘味度甘味料組成物と糖アルコールとを含む組成物を、糖アルコール組成物と称する。糖アルコールとしては、例えば、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、ラクチトール、イソマルツロース、パラチニット等のイソマルツロース還元物などが挙げられる。これらの糖アルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。このような糖アルコール組成物は、糖アルコールの用途ないし機能性も考慮しながら、前述した本発明の高甘味度甘味料組成物と同様の各種の飲食品、化粧品、医薬品などに添加することができる。
【0079】
<高甘味度甘味料混合組成物>
本発明では、高甘味度甘味料組成物と他の高甘味度甘味料、つまりレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビア(そこに含まれるα-グルコシルレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビオサイド)以外の高甘味度甘味料を含むものを、高甘味度甘味料混合組成物と称する。他の高甘味度甘味料としては、例えば、羅漢果抽出物、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムK、サイクラミン酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、ネオテーム、アドバンテーム、グリチルリチン、サッカリン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコンなどが挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。このような高甘味度甘味料混合組成物は、他の高甘味度甘味料の用途ないし機能性も考慮しながら、前述した本発明の高甘味度甘味料組成物と同様の各種の飲食品、化粧品、医薬品などに添加することができる。
【0080】
<希少糖組成物>
本発明では、高甘味度甘味料組成物と希少糖とからなる組成物を、希少糖組成物と称する。希少糖としては、例えば、D-プシコース、D-アロース、D-タガトース、L-リボースなどが挙げられる。これらの希少糖は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0081】
なお、希少糖とは、「自然界に微量にしか存在しない単糖とその誘導体」と定義付けられており(国際希少糖学会)、D-グルコース(ブドウ糖)等の天然型単糖に比べて圧倒的に存在量が少ない。このような希少糖組成物は、希少糖の用途ないし機能性も考慮しながら(例えば、希少糖のいくつかには血糖上昇抑制作用があるとの報告もある)、前述した本発明の高甘味度甘味料組成物と同様の各種の飲食品、化粧品、医薬品などに添加することができる。
【実施例
【0082】
(1)ステビア抽出物(ステビオール配糖体混合物)の調製方法
ステビア抽出物は、乾燥したステビア(Stevia rebaudiana Bertoni)に温水を用いて抽出し、常法により精製・乾燥して得ることができる。具体的には、乾燥したステビア原葉1kgに60~70℃の温水を約10L加えて2時間撹拌して固液分離する。この操作を2回行い、得られた抽出物を、合成吸着樹脂(HP-20、三菱化成工業(株)製)を充填したカラムに通液して精製、濃縮を行い、さらにイオン交換樹脂(IR-120B(H型)、IRA-94(OH型)、オルガノ(株)製)で脱塩・脱色を行い、濃縮後に噴霧乾燥機を用いて粉末化する。得られたステビア抽出物の含量(全ステビオール配糖体としての純度)は80~90%となる。
【0083】
(2)ステビオサイド精製物の調製方法
前記のステビア抽出物100g(純度90%)に純度90%以上の60℃熱メタノールを2,000ml加えて溶解させた(溶解処理)。溶解後、冷却して、析出する結晶を固液分離し、5℃の冷水1,000mLで洗浄して回収した(回収処理)。さらに回収処理で得られた結晶に対し、前記と同様の溶解処理および回収処理を行った結果、ステビオサイドの結晶(ステビオサイド精製物)が得られ(約43g)、その含量(ステビオサイドとしての純度)は95%以上となった。
【0084】
(3)酵素処理ステビア抽出物の製造方法
以下で用いた「酵素処理ステビア抽出物」は、特公昭57-18779号公報、特開平2-163056号公報に記載の方法に従って、次のような手順で製造した。
【0085】
(3-1)糖付加(α-グルコシルトランスフェラーゼ処理)工程
ステビア抽出物(ステビロース90、東洋精糖(株)製、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドを含有、これらの全ステビオール配糖体としての純度90%)1重量部とデキストリン(パインデックス#1、松谷化学工業(株)製)3重量部とを水6重量部に入れ、加熱して溶解させた。得られた溶液を70℃に冷却した後、塩化カルシウムをデキストリンに対して1mmolになるよう添加すると共にpHを6.0に調整し、シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼをデキストリン1g当り30U加え、70℃で24時間反応させた。反応終了後、95℃で30分間保持して酵素を失活させた。これにより、各ステビオール配糖体(混合物)にグルコースがα-1,4結合で付加されているα-グルコシルステビオール配糖体(混合物)を含有する、酵素処理物含有液を得た。
【0086】
(3-2)糖鎖調整(α-1,4-グルコシダーゼ処理)工程
(3-1)の工程で得られた酵素処理物含有液を2等分して(A)および(B)とした。
(A)はそのままとした。
(B)には、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素としてβ-アミラーゼ(ビオザイムM、天野エンザイム(株)製)を、前記酵素処理物含有液の固形分当り1%添加し、60℃で5時間作用させて、α-1,4-グルコシル基を切断することにより、付加糖数が1~3の成分を多く含む反応物を得た。
【0087】
なお、(3-1)の工程で得られた酵素処理物含有液に、α-1,4-グルコシダーゼ活性を有する酵素としてグルコアミラーゼ(グルコチーム、長瀬産業)を固形分当り1%添加し、60℃で4時間作用させて、α-1,4-グルコシル基を切断することにより、付加糖数が1または2の成分を多く含む反応物を得ることもできる。
【0088】
(3-3)精製工程等
平均付加糖数の異なる、前記(3-2)で得られた(A)および(B)それぞれの溶液を、合成吸着樹脂(「アンバーライトXAD-7」、オルガノ(株)製)を充填したカラムに通液して精製、濃縮した。続いて、イオン交換樹脂を用いた脱塩・脱色、活性炭を用いた脱臭、さらにpH調整、濾過、殺菌の各処理を行った。最後に、これら処理後の反応液を、粉末乾燥機(スプレードライヤー)を用いて乾燥粉末化することで、それぞれ、酵素処理ステビア抽出物(A)および(B)を得た。
【0089】
(4)HPLC分析に基づく平均付加糖数の確認
上記(3)により製造された酵素処理ステビア抽出物(A)および(B)それぞれの平均付加糖数を、特開平2-163056号公報の実験2に記載の方法に準じて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)のクロマトグラムの各成分のピーク面積から算出した。その結果、(A)および(B)の平均付加糖数は、それぞれ3.5および2.1であった。
【0090】
HPLCの分析条件は下記の通りである。
カラム :NH2P-50 Shodex(4.6mmID×250mm)
カラム温度:35℃
流速 :1.0mL/min
移動相 :
時間(min) アセトニトリル 水
0 80 20
15 80 20
60 50 50
70 50 50
80 80 20
90 80 20
【0091】
なお、酵素処理ステビア抽出物(A)および(B)はそれぞれ、ステビオサイド、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドM、ズルコサイドA、ルブソサイドおよびステビオールビオサイドそれぞれのα-グルコシル化物を含む混合物であり、α-グルコシルステビオール配糖体としての純度は85%であった。
【0092】
前記(3)の手順において、ステビロース90に替えて、前記(1)の手順に準じて得られた純度85%のステビア抽出物を用い、前記(3-2)に対応する手順において、(B)を採用した以外は、前記(3)と同様の手順で酵素処理ステビア抽出物(C)を製造した(α-グルコシルステビオール配糖体としての純度:80%、平均付加糖数:2.1)。
【0093】
(5)酵素処理ステビオサイド精製物の製造方法
実施例1、実施例2および実施例3において、α-グルコシルステビオサイドを本発明品または比較品に配合するために用いられた「酵素処理ステビオサイド精製物」は、前記(3)の手順において、ステビロース90に替えて、前記(2)の手順に準じて製造されたステビオサイド精製物を用いたこと以外は、前記(3)と同様の手順で製造した。なお、前記(3-2)に対応する手順において、(A)を採用して得られた酵素処理ステビオサイド精製物をα-グルコシルステビオサイド精製物(A)とし、(B)を採用して得られた酵素処理ステビオサイド精製物をα-グルコシルステビオサイド精製物(B)とする。α-グルコシルステビオサイド精製物(A)の前記(4)と同様にして測定した平均付加糖数は、3.6であり、α-グルコシルステビオサイド精製物(B)の平均付加糖数は、2.1であった。
得られたα-グルコシルステビオサイド精製物(B)は、α-グルコシルステビオサイドとしての純度90%、平均付加糖数2.1(図1[B]のクロマトグラム参照)であった。
【0094】
(6)α-グルコシルレバウディオサイドA精製物の製造方法
実施例1、実施例2および実施例3において、α-グルコシルレバウディオサイドAを本発明品または比較品に配合するために用いられた「α-グルコシルレバウディオサイドA精製物」は、前記(3)の手順において、ステビロース90に替えて、レバウディオサイドA精製物(中国製、レバウディオサイドAとしての純度95%、図1[A]のクロマトグラム参照)を用いたこと以外は、前記(3)と同様の手順で製造した。なお、前記(3-2)に対応する手順において、(A)を採用して得られたものをα-グルコシルレバウディオサイドA精製物(A)とし、(B)を採用して得られたものをα-グルコシルレバウディオサイドA精製物(B)とする。α-グルコシルレバウディオサイドA精製物(A)の前記(4)と同様にして測定した平均付加糖数は、3.4であり、α-グルコシルレバウディオサイドA精製物(B)の平均付加糖数は、2.1であった。
【0095】
[実施例1]レバウディオサイドAとα-グルコシルステビアとの割合の評価
本発明品1~7および比較品1~3は、「α-グルコシルステビア」として「α-グルコシルステビオサイド」のみを含有しており、第3条件における「レバウディオサイドA1重量部に対するα-グルコシルレバウディオサイドAの比率が0重量部」である場合に相当する。
【0096】
レバウディオサイドA精製物(レバウディオサイドAの純度95%、中国製)と、α-グルコシルステビアとして「α-グルコシルステビオサイド精製物(B)」とを、それぞれに含まれるレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビア(α-グルコシルステビオサイドのみ)が表2に示す重量比となるよう、純度を考慮しながら所定の量ずつ配合し、本発明品1~7および比較品1~3を調製した。
【0097】
続いて、本発明品1~7および比較品1~3について、呈味(甘味の後引きおよび甘味の強さ、ならびにそれらの総合評価)を比較した。該呈味に用いた検液は、レバウディオサイドAとα-グルコシルステビアとの合計濃度が0.025%水溶液となるように調整した。甘味の後引きおよび甘味の強さの評価は、訓練した5人のパネラーにより次のような手順で行った。
(i)水で口を5秒間すすぎ、(ii)検液を口に含み5秒間保持した後吐き出し、(iii)10秒間甘味を確認する。(iv)次に水で5秒間2回すすいだ後、1分後に再度(i)から繰り返して評価する。また、甘味の後引きおよび甘味の強さの評価基準は下記の通りであり、総合評価はそれらの評価の平均値とした。結果を表2に示す。
【0098】
<甘味の後引き> <甘味の強さ>
5:甘味の後引きがほとんど無い 5:甘味が早くから非常に強く感じられる
4:甘味の後引きが僅かにある 4:甘味が早くから強く感じられる
3:甘味の後引きが少ない 3:甘味が早くからやや強く感じられる
2:甘味の後引きがある 2:甘味が早くから感じられる
1:甘味の後引きが強い 1:甘味が感じられる
【0099】
【表2】
【0100】
比較品1は甘味の強さに優れているが、甘味の後引きが強い。これに対して、レバウディオサイドAにα-グルコシルステビアを適度な重量比で添加した本発明品1~7では、レバウディオサイドA特有の甘味の強さを残しつつ、後引きを抑える結果となった。特に本発明品5は甘味の強さと後引きのバランスにおいて優れていた。しかし、比較品2および3では、α-グルコシルステビアの重量比の増加により、レバウディオサイドA特有の甘味の強さが抑えられ、まろやかな甘味の後引きが目立ってきた。
よって、レバウディオサイドAの甘味の強さの維持と甘味の後引きの抑制とは、いわばトレードオフの関係にあることから、レバウディオサイドAとα-グルコシルステビアとの割合にはバランスの良い範囲があることが分かる。
【0101】
なお、比較品3(レバウディオサイドA:α-グルコシルステビオサイド=70:30)、および本発明品5(レバウディオサイドA:α-グルコシルステビオサイド=90:10)それぞれのHPLCによるクロマトグラムを、図2の(A)および(B)に示す。
【0102】
[実施例2]レバウディオサイドAとα-グルコシルレバウディオサイドAとの割合の評価
本発明品8~9および比較品4は、「α-グルコシルステビア」として「α-グルコシルステビオサイド」および「α-グルコシルレバウディオサイドA」を含有しており、第3条件における「レバウディオサイドA1重量部に対するα-グルコシルレバウディオサイドA」の比率が0重量部ではない場合に相当する。
【0103】
レバウディオサイドA精製物(レバウディオサイドAの純度95%、中国製)と、前記(6)の製造方法で得られたα-グルコシルレバウディオサイドA精製物(B)と、「α-グルコシルステビオサイド精製物(B)」とを、それぞれに含まれるレバウディオサイドA、α-グルコシルレバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビオサイドが、表3に示す重量比となるよう、純度を考慮しながら所定の量ずつ配合し、本発明品8~9および比較品4を調製した。
【0104】
次に、本発明品8~9および比較品4について、呈味(甘味の後引き)を比較した。呈味試験の手順および評価基準は、実施例1と同じである。結果を表3に示す(本発明品7の結果は表2に示したものと同じである)。
【0105】
【表3】
備考)カッコ内の数値は、レバウディオサイドAを1としたときのα-グルコシルレバウディオサイドAの重量比を示す(第3条件参照)。
【0106】
本発明品7~9では甘味の後引きが少なかったが、α-グルコシルレバウディオサイドAの割合が増えた比較品4では甘味の後引きを感じた。このため、本発明(第3条件)では、α-グルコシルレバウディオサイドAの重量比をレバウディオサイドA1重量部に対して0~0.1重量部と規定している。
【0107】
[実施例3]α-グルコシルステビオサイドの糖鎖の長さによる評価
レバウディオサイドA/α-グルコシルステビア=90重量%/10重量%の割合で配合された本発明品10および11を、表4に記載の原料を用いて前記の方法により調製した。
【0108】
このようにして調製した本発明品10および11について、呈味(甘味の後引きおよび甘味の強さならびにそれらの総合評価)を比較した。呈味試験の手順および評価基準は実施例1と同じである。結果を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
レバウディオサイドAの甘味の後引きについて、α-グルコシルステビアとしてα-グルコシルステビオサイドを用いることで改善できたといえる。また、甘みの強さを維持するためには、α-グルコシルステビアの平均付加糖数は、多い(3.6)場合よりも少ない(2.1)場合の方が好ましいといえる。これは、付加されたグルコシル基によりステビアの甘味がマスキングされるため、平均付加糖数の多い場合に甘味の強さがより顕著に低下すると考えられる。
【0111】
[実施例4]α-グルコシルステビアの純度による評価
いずれもレバウディオサイドA/α-グルコシルステビア=90重量%/10重量%の割合で配合された本発明品11および12を用意した。
本発明品11は、実施例3で調製したものと同じである。本発明品12は、表5に記載の原料を用いて前記の方法により調製した。
【0112】
このようにして調製された本発明品11および12について、呈味(甘味の後引き、雑味、およびそれらの総合評価)を比較した。呈味試験の手順および甘味の後引きに係る評価基準は実施例1と同じである。一方、雑味とは、主にα-グルコシルステビアの原料に由来する苦み、えぐみを含むステビア特有の呈味であり、甘味は除かれる。雑味の評価基準は下記の通りである。総合評価は、甘味の後引きと雑味の評価の平均値とした。
結果を表5に示す。
【0113】
<雑味の強さ>
5:雑味がほとんどない
4:雑味が僅かにある
3:雑味が少ない
2:雑味がある
1:雑味が強い
【0114】
【表5】
【0115】
甘味の後引き低減は、ステビア抽出物の純度が高い方が、より好ましい結果になった。雑味も同様の傾向を示した。
【0116】
[実施例5]飲料
下記本発明品または比較品として、前記で調製した本発明品11、比較品1または下記方法で調製した本発明品13を用い、下記の処方により、飲料を調製し、呈味(甘味の後引きおよび甘味の強さならびにそれらの総合評価)を比較した。
本発明品13は、α-グルコシルステビアの純度が80重量%である、酵素処理ステビア抽出物(C)をレバウディオサイドA/α-グルコシルステビア=90重量%/10重量%の割合で配合して得た。
呈味試験の手順および評価基準は実施例1と同じである。結果を表6に示す。
なお、得られた飲料は、ソルビトールと本発明品(高甘味度甘味料組成物)とを含むため、本発明の糖アルコール組成物であるともいえ、D-プシコースと本発明品(高甘味度甘味料組成物)とを含むため、本発明の希少糖組成物でもある。
処方:
砂糖 45g
ソルビトール 20g
D-プシコース 10g
本発明品または比較品 0.25g
グレープフルーツ濃縮果汁 2.0g
グレープフルーツフレーバー 0.1g
ビタミンC 0.2g
リンゴ酸 0.8g
酒石酸 0.4g
酵素処理ヘスペリジン 0.1g
酵素処理ルチン 0.1g
ゆずポリフェノール(柑橘抽出物) 0.05g
純水 適量
計 1,000g
【0117】
【表6】
【0118】
飲料においても本発明品11を用いた場合には、甘味の強さ、甘味の後引きの抑制ともに好ましい結果になった。α-グルコシルステビアとしての純度が低い(ステビオール配糖体の純度の低い原料を用いて調製された)本発明品13を用いた場合には、本発明品11に劣るものの、飲料に添加したときに、比較品1を用いた場合に比べ、甘味の後引きを大幅に改善することができる結果になった。
【0119】
[実施例6]口腔湿潤剤
下記本発明品または比較品として、前記で調製した本発明品11、本発明品13または比較品1を用い、下記の処方により、口腔湿潤剤を調製し、呈味(甘味の後引きおよび甘味の強さならびにそれらの総合評価)を比較した。呈味試験の手順および評価基準は実施例1と同じである。結果を表7に示す。
なお、得られた口腔湿潤剤は、スクラロースと本発明品(高甘味度甘味料組成物)とを含むため、本発明の高甘味度高甘味料混合組成物であるともいえ、エリスリトールと本発明品(高甘味度甘味料組成物)とを含むため、本発明の糖アルコール組成物でもある。
処方:
スクラロース 0.002g
エリスリトール 3.0g
本発明品または比較品 0.025g
カルボキシメチルセルロースナトリウム 4.0g
グリセロール 20.0g
プロピレングリコール 4.5g
安息香酸ナトリウム 0.4g
塩化セチルピリジウム 0.01g
クエン酸 0.23g
クエン酸ナトリウム 1.1g
スペアミント香料 0.002g
酵素処理ヘスペリジン 0.01g
純水 適量
計 100g
【0120】
【表7】
【0121】
実施例5の飲料と同様に、口腔湿潤剤においても本発明品(レバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビアを含有)の効果が見られたが、甘味の後引き抑制については比較品1(レバウディオサイドA単独)との差が縮む傾向が見られた。これは、口腔湿潤剤に甘味料として併用されているエリスリトールや香料のスペアミントの影響と思われる。
【0122】
[実施例7]トローチ(医薬品)
まず、下記の処方にて常法により打錠してトローチの芯材を作製した。
処方:
塩化リゾチーム 2.0g
乳糖 400g
ヒドロキシプロピルセルロース 100g
ステアリン酸マグネシウム 1.5g
L―メントール 0.1g
【0123】
次に、下記本発明品または比較品として、前記で調製した本発明品11または比較品1を用い、下記の処方により甘味料組成物を調製し、得られた甘味料組成物を95℃で加熱・溶解し、撹拌しながら20℃まで冷却することで、液状甘味料組成物を作製した。この液状甘味料組成物3.5gを先の芯材400gに噴霧し、20℃で送風乾燥した。この噴霧および乾燥の操作を数十回繰り返して、糖衣層が形成されたトローチを作製し、得られたトローチを用いて、呈味(甘みの後引きおよび甘味の強さならびにそれらの総合評価)を比較した。甘味の後引きおよび強さの評価は、訓練した5人のパネラーにより次のような手順で行った。
(i)水で口をすすぐ、(ii)トローチを口に含み、10秒間舐めた後吐き出し、10秒間甘味を確認する。(iii)次いで水で5秒間2回すすいだ後、1分後に再度(i)から繰り返して評価する。甘味の後引きおよび甘味の強さの評価基準は実施例1と同じであり、総合評価はそれらの評価の平均値とした。結果を表8に示す。
処方:
エリスリトール 80.0g
トレハロース 20.0g
本発明品または比較品 0.4g
純水 100.0g
【0124】
【表8】
【0125】
実施例5および6と同様に、トローチ(医薬品)においても、レバウディオサイドAおよびα-グルコシルステビアを含有することにより甘味の後引きが大きく抑制されるという、本発明品の効果が見られた。
【0126】
[実施例8]市販飲料
市販の炭酸飲料に甘味料として使われている「ステビア」が、以下の分析によりレバウディオサイドAを主成分とし、ステビオサイドを含有するものであることを確認した。そこで、市販の炭酸飲料にα-グルコシルステビオサイド精製物(B)を一定量添加して、本飲料に含まれる甘味料が本発明の条件を満たすようになったときに、特に甘味の後引きの点で呈味が改善されることを確認した。
【0127】
1)飲料中の「ステビア」の分析方法
市販の炭酸飲料30mlを超音波洗浄機を用いて脱炭酸処理した後、固相抽出カラム「Sep-PAk C18」(日本ウォーターズ(株)製)に吸着させた。次に、該カラムをイオン交換水10mlで洗浄した後、80%エチルアルコールで吸着成分を脱着させた。得られた液を蒸発乾固し、乾固物を3mlのHPLC移動相(80%アセトニトリル)で溶解後、前述した条件でHPLC分析して、「ステビア」として含まれている成分(ステビオサイドおよびレバウディオサイドA)を定量した。
【0128】
HPLC分析により得られた市販の炭酸飲料のクロマトグラムを図3[A]に示す。ステビオサイド(Stev)のピーク面積に対してレバウディオサイドA(ReA)のピーク面積が圧倒的に大きいことから、市販の炭酸飲料に含まれる「ステビア」はレバウディオサイドAを主成分とする甘味料組成物であることが確認された。また、本飲料中のレバウディオサイドAの含量は95mg/500mL(190ppm)と算出された。
【0129】
2)対照飲料の調製および呈味試験
市販の炭酸飲料に、レバウディオサイドA:α-グルコシルステビア(α-グルコシルステビオサイド)=95:5になるように、α-グルコシルステビオサイド精製物(B)を添加し、対照飲料を調製した。
【0130】
HPLC分析により得られた対照飲料クロマトグラムを図3[B]に示す。レバウディオサイドA(190ppm)に対してα-グルコシルステビオサイド(総量として10ppm)の添加量はかなり少ないため、付加されたグルコシル基の数が異なる個々のα-グルコシルステビオサイドのピークはわずかに認められる程度であった。
【0131】
続いて、前記のようにして甘味料を改変した対照飲料(添加区)と、通常の市販の炭酸飲料(無添加区)との甘味の後引きを比較した。この試験の手順および評価基準は、実施例1と同様である。結果を表9に示す。
【0132】
【表9】
【0133】
添加区の方が甘味の後引きが低減し、優れた結果となった。無添加区の場合は、炭酸の影響またはその他の影響が考えられるが、最初に感じるレバウディオサイドA特有の甘味が消されて途中から甘味を感じるため、甘味の中抜けのようなアンバランスさがみられた。一方添加区は、レバウディオサイドAの甘味の後引きが低減し、全体的にまろやかな飲料になり、甘味の後引きとしての評価は高くなった。
図1
図2
図3