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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】封止用接着シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20220725BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20220725BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220725BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20220725BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20220725BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220725BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220725BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H01L23/30 R
C08J5/18
C09J7/10
C09J7/30
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018041965
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019160867
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】土生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐作
(72)【発明者】
【氏名】飯野 智絵
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/007219(WO,A1)
【文献】特開2004-146620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C08J 5/18
C09J 7/10
C09J 7/30
C09J 201/00
C09J 11/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装される電子素子を封止するとともに、前記基板に接着する封止用接着シートであり、
接着組成物を含み、
前記接着組成物は、熱硬化性成分、55質量%以上85質量%以下の無機フィラー、および、0.5質量%以上10質量%以下のカップリング剤を含有し、
前記封止用接着シートを150℃で30分間加熱したときのアウトガスの発生量が、加熱前の前記封止用接着シートに対して、500ppm以上であることを特徴とする、封止用接着シート。
【請求項2】
前記発生量が、750ppm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の封止用接着シート。
【請求項3】
前記カップリング剤の配合部数が、前記熱硬化性成分および前記無機フィラーの総量100質量部に対して、1質量部以上であることを特徴とする、請求項2に記載の封止用接着シート。
【請求項4】
前記カップリング剤は、エポキシ基を含有するシランカップリング剤であることを特徴とする、請求項2または3に記載の封止用接着シート。
【請求項5】
残存溶媒を含有し、
前記残存溶媒の封止用接着シートにおける割合が、5ppm以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の封止用接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、封止用樹脂シートにより、基板に実装された電子素子(電子デバイス)を封止して、電子装置を製造することが知られている。
【0003】
例えば、電子デバイス封止用樹脂シートを電子デバイスの上に積層し、次いで、電子デバイス封止用樹脂シートを硬化させて封止体を形成する電子デバイスパッケージの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-98353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、電子デバイス封止用シートは、半導体チップを封止するとともに、半導体チップから露出する基板の表面に接着して、固定される。これにより、信頼性に優れる電子デバイスパッケージを製造することができる。そのため、電子デバイス封止用シートには、基板に対する良好な接着性が求められる。
【0006】
本発明は、基板に対する接着性に優れる封止用接着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、基板に実装される電子素子を封止するとともに、前記基板に接着する封止用接着シートであり、接着組成物を含み、前記封止用接着シートを150℃で30分間加熱したときのアウトガスの発生量が、加熱前の前記封止用接着シートに対して、500ppm以上である、封止用接着シートを含む。
【0008】
本発明(2)は、前記接着組成物は、熱硬化性成分、無機フィラーおよびカップリング剤を含有する、(1)に記載の封止用接着シートを含む。
【0009】
本発明(3)は、前記カップリング剤の配合部数が、前記熱硬化性成分および前記無機フィラーの総量100質量部に対して、1質量部以上である、(2)に記載の封止用接着シートを含む。
【0010】
本発明(4)は、前記カップリング剤は、エポキシ基を含有するシランカップリング剤である、(2)または(3)に記載の封止用接着シートを含む。
【0011】
本発明(5)は、残存溶媒を含有し、前記残存溶媒の封止用接着シートにおける割合が、5ppm以上である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の封止用接着シートを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の封止用接着シートは、接着組成物を含むので、基板に対する接着性に優れる。
【0013】
また、本発明の封止用接着シートを150℃で、30分間加熱したときのアウトガスの発生量が上記した下限以上であるので、かかる十分な量のアウトガスによって、封止用接着シートの硬化物である硬化接着シートの基板に対する接着性を向上させることができる。
【0014】
そのため、この封止用接着シートは、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の封止用接着シートの一実施形態である半導体素子封止用接着シートの断面図を示す。
図2図2A図2Bは、図1に示す半導体素子封止用接着シートを用いて、半導体素子を封止するとともに、基板に接着して、半導体素子パッケージを製造する方法の工程図を示し、図2Aが、半導体素子と半導体素子封止用接着シートとをそれぞれ準備する工程、図2Bが、半導体素子封止用接着シートによって、半導体素子を封止するとともに、基板に接着する工程を示す。
図3図3A図3Bは、実施例における接着強度測定の概略図であり、図3Aが、断面図、図3Bが、平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の封止用接着シートの一実施形態である半導体素子封止用接着シートを、図1図2Bを参照して説明する。
【0017】
この半導体素子封止用接着シート1は、基板2に実装されている電子素子の一例としての半導体素子3(図2A参照)を封止するとともに、基板2に接着する封止用接着シートである。
【0018】
また、半導体素子封止用接着シート1は、後述する半導体素子パッケージ4(図2B参照)を製造するための部品であって、半導体素子パッケージ4そのものではなく、半導体素子封止用接着シート1は、半導体素子3、および、半導体素子3を実装する基板2を含まず、具体的には、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0019】
なお、半導体素子封止用接着シート1は、半導体素子3を封止した後の硬化接着シート10(図2B参照)(後述)ではなく、つまり、半導体素子3を封止する前のシートである。
【0020】
図1に示すように、半導体素子封止用接着シート1は、厚み方向に直交する方向(面方向)に延びる略板形状(フィルム形状)を有する。また、半導体素子封止用接着シート1は、厚み方向一方側に位置する一方面の一例としての接着面5と、接着面5と厚み方向に対向する他方面の一例としての第1対向面6とを備える。接着面5および第1対向面6は、ともに平坦面を有しており、互いに平行する。
【0021】
接着面5は、半導体素子封止用接着シート1における厚み方向一方側に位置する面(下面)であって、図2Bに示すように、半導体素子封止用接着シート1が半導体素子3を封止するときに、半導体素子3および基板2に接触して接着する接触面(厚み方向一方面)である。
【0022】
一方、第1対向面6は、半導体素子封止用接着シート1が半導体素子3を封止するときに、半導体素子3と接触することなく、基板2の被接着面8(後述)と厚み方向に間隔を隔てて対向配置される非接触面(厚み方向他方面)(上面)である。
【0023】
半導体素子封止用シート1は、接着組成物を含む。具体的には、半導体素子封止用接着シート1の材料は、接着組成物(封止性接着組成物)である。接着組成物は、例えば、熱硬化性成分と、無機フィラーと、カップリング剤とを含む。
【0024】
熱硬化性成分は、半導体素子封止用接着シート1(接着組成物)において、無機フィラーを互いに結合させるバインダー成分であって、熱によって硬化して、接着組成物の硬度を向上させることによって、接着組成物において接着力を発現させる。好ましくは、エポキシ系熱硬化性成分(後述)が挙げられる。
【0025】
熱硬化性成分は、例えば、主剤(封止樹脂)、硬化剤および硬化促進剤を含む。
【0026】
主剤としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ビニルエステル樹脂、シアノエステル樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。主剤としては、耐熱性などの観点から、好ましくは、エポキシ樹脂が挙げられる。主剤がエポキシ樹脂であれば、熱硬化性成分は、後述する硬化剤(エポキシ系硬化剤)および硬化促進剤(エポキシ系硬化促進剤)とともに、エポキシ系熱硬化性成分を構成する。
【0027】
また、主剤は、半導体素子封止用シート1を加熱して半導体素子3を封止するときに、主剤由来ガス(主剤(好ましくは、エポキシ樹脂)の気化物)を発生するガス発生成分である。
【0028】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの2官能エポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などの3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂は、単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0029】
好ましくは、2官能エポキシ樹脂の単独使用が挙げられ、具体的には、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の単独使用が挙げられる。
【0030】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、例えば、10g/eq.以上、好ましくは、100g/eq.以上であり、また、例えば、300g/eq.以下、好ましくは、250g/eq.以下である。
【0031】
主剤(好ましくは、エポキシ樹脂)の軟化点は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上であり、また、例えば、110℃以下、好ましくは、90℃以下である。
【0032】
主剤(好ましくは、エポキシ樹脂)の割合は、接着組成物において、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。また、主剤(好ましくは、エポキシ樹脂)の割合は、熱硬化性成分において、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0033】
主剤(好ましくは、エポキシ樹脂)の割合が上記した下限以上であれば、十分な量の主剤由来ガスを放出して、所望量のアウトガスを発生することができる。
【0034】
硬化剤は、加熱によって、上記した主剤を硬化させる成分(好ましくは、エポキシ樹脂硬化剤)である。硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。
【0035】
硬化剤の割合は、主剤がエポキシ樹脂であり、硬化剤がフェノール樹脂であれば、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂中の水酸基の合計が、例えば、0.7当量以上、好ましくは、0.9当量以上、例えば、1.5当量以下、好ましくは、1.2当量以下となるように、調整される。具体的には、硬化剤の配合部数は、主剤100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、75質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0036】
硬化促進剤は、加熱によって、主剤の硬化を促進する触媒(熱硬化触媒)(好ましくは、エポキシ樹脂硬化促進剤)であって、例えば、有機リン系化合物、例えば、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(2P4MHZ)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。好ましくは、イミダゾール化合物が挙げられる。硬化促進剤の配合部数は、主剤100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上であり、また、例えば、5質量部以下である。
【0037】
無機フィラーは、半導体素子封止用接着シート1の強度を向上させて、半導体素子封止用シート1に優れた靱性を付与する無機粒子である。無機フィラーの材料としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素などの無機化合物が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用することができる。好ましくは、シリカが挙げられる。
【0038】
無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、略球形状、略板形状、略針形状、不定形状などが挙げられる。好ましくは、略球形状が挙げられる。
【0039】
無機フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)Mは、例えば、50μm以下、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、10μm以下であり、また、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上である。なお、平均粒子径Mは、例えば、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められた粒度分布に基づいて、D50値(累積50%メジアン径)として求められる。
【0040】
また、無機フィラーは、第1フィラーと、第1フィラーの最大長さの平均値M1より小さい最大長さの平均値M2を有する第2フィラーとを含むことができる。
【0041】
第1フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)M1は、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0042】
第2フィラーの最大長さの平均値(略球形状であれば、平均粒子径)M2は、例えば、1μm未満、好ましくは、0.8μm以下であり、また、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上である。
【0043】
第1フィラーの最大長さの平均値の、第2フィラーの最大長さの平均値に対する比(M1/M2)は、例えば、2以上、好ましくは、5以上であり、また、例えば、50以下、好ましくは、20以下である。
【0044】
第1フィラーおよび第2フィラーの材料は、ともに同一あるいは相異っていてもよい。好ましくは、第1フィラーおよび第2フィラーの材料は、ともに同一、具体的には、シリカである。
【0045】
さらに、無機フィラーは、その表面が、部分的あるは全体的に、シランカップリング剤などで表面処理されていてもよい。好ましくは、表面処理されていない第1フィラーと、表面処理されている第2フィラーとの併用が挙げられる。
【0046】
無機フィラー(第1フィラーおよび第2フィラーの併用であれば、それらの総量)の割合は、半導体素子封止用接着シート1(接着組成物)中、例えば、50質量%以上、好ましくは、50質量%超過、より好ましくは、55質量%以上、さらに好ましくは、60質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、75質量%以下、さらに好ましくは、70質量%以下、とりわけ好ましくは、70質量%未満である。
【0047】
無機フィラーの割合が上記した下限を上回ると、半導体素子封止用接着シート1の靱性を確保することができる。
【0048】
一方、無機フィラーの割合が上記した上限を下回ると、半導体素子封止用接着シート1が脆くなることを抑制し、半導体素子3を確実に封止することができる。
【0049】
無機フィラーが上記した第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、第1フィラーの割合は、接着組成物中、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%超過であり、また、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0050】
無機フィラーが上記した第1フィラーと第2フィラーとを含む場合には、第2フィラーの配合部数は、第1フィラー100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、45質量部以上、より好ましくは、50質量部以上、さらに好ましくは、50質量部超過であり、また、例えば、100質量部未満、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下、さらに好ましくは、60質量部以下である。
【0051】
第2フィラーの配合部数が上記した下限を上回れば、あるいは、上記した上限を下回れば、第1フィラー間における比較的大きな隙間を、第2フィラーによって効率的に充填して、靱性に優れる半導体素子封止用シート1、さらには、硬化接着シート10を得ることができる。
【0052】
カップリング剤は、熱硬化性成分(とりわけ、主剤および硬化剤)と、無機フィラー(好ましくは、シリカ)(の表面)とをカップリング(化学的に結合)させて、靱性を有する硬化接着シート10を形成するための反応性成分である。また、カップリング剤は、半導体素子封止用シート1を加熱して半導体素子3を封止するときに、カップリング剤由来ガス(カップリング剤が気化したガス、および、カップリング剤の加水分解反応(後述)により生成される生成物(R’4-nSi-OH)(化学式の詳細は次式(1)参照)のガス)と、残存溶媒由来ガス(後述するが、好ましくは、アルコキシ基が空気中の水分と加水分解反応して生成されるアルコール(ROH)などの溶媒に由来する溶媒ガス)とを発生するガス発生成分でもある。なお、上記したカップリング剤由来ガスと残存溶媒由来ガスとは、上記した主剤由来ガス(エポキシ樹脂の気化物)とともにアウトガスを構成する(に含まれる)。
【0053】
カップリング剤は、主剤と反応する第1の反応性基と、無機フィラーと反応する第2の反応性基との、少なくとも2種類の反応性基を1分子中に有する。第1の反応性基としては、例えば、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などが挙げられる。第1の反応性基は、単独または併用されていてもよい。第1の反応性基として、好ましくは、エポキシ基が挙げられる。第2の反応性基としては、アルコキシ基などが挙げられる。
【0054】
具体的には、カップリング剤は、例えば、シランカップリング剤である。
【0055】
シランカップリング剤は、例えば、下記式(1)で示される。
【0056】
R’4-nSi-OR (1)
式(1)中、Rは、メチル、エチルなどの炭素数1以上2以下のアルキル基を示す。R’は、第1の反応性基(好ましくは、後述するエポキシ基)を有する基を示す。nは、例えば、1以上、3以下の整数、好ましくは、1または2の整数を示す。
【0057】
具体的には、シランカップリング剤としては、例えば、上記した第1の反応性基として、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基などを有するシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基を含有するシランカップリング剤、ビニル基を含有するシランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤、アミノ基を含有するシランカップリング剤、イソシアネート基を含有するシランカップリング剤、メルカプト基を含有するシランカップリング剤などが挙げられる。
【0058】
エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどの3-グリシドキシジアルキルジアルコキシシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどの3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0059】
ビニル基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0060】
(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリロイル基を含有するシランカップリング剤、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリロイル基を含有するシランカップリング剤などが挙げられる。
【0061】
アミノ基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0062】
イソシアネート基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0063】
メルカプト基を含有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0064】
カップリング剤としては、好ましくは、エポキシ基を含有するシランカップリング剤が挙げられ、より好ましくは、3-グリシドキシアルキルトリアルコキシシランが挙げられる。
【0065】
カップリング剤の割合は、接着組成物中、例えば、0.2質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。また、カップリング剤の配合部数は、熱硬化性成分および無機フィラーの総量100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0066】
カップリング剤の割合および/または配合部数が上記した下限以上であれば、熱硬化性成分と無機フィラーとを確実にカップリングさせることができながら、十分な量のカップリング剤由来ガスおよび残存溶媒由来ガスを放出して、所望量のアウトガスを発生することができる。
【0067】
一方、カップリング剤の割合および/または配合部数が上記した上限以下であれば、半導体素子封止用接着シート1の製造後の表面(接着面5および第1対向面6)への析出(ブリードアウト)の懸念も小さく、安定したワニス(後述)を作製することができる。
【0068】
なお、接着組成物に、熱可塑性樹脂、顔料などの添加剤を適宜の割合で添加することもできる。
【0069】
熱可塑性樹脂は、加熱時の硬化接着シート10における柔軟性を向上させる成分である。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂(6-ナイロンや6,6-ナイロンなど)、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂(PETなど)、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体などが挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0071】
熱可塑性樹脂として、好ましくは、主剤(好ましくは、エポキシ樹脂)との分散性を向上させる観点から、アクリル樹脂が挙げられる。
【0072】
アクリル樹脂としては、例えば、直鎖または分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、その他のモノマー(共重合性モノマー)とを含むモノマー成分を重合してなる、カルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルコポリマー(好ましくは、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマー)などが挙げられる。
【0073】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルなどの炭素数1~6のアルキル基などが挙げられる。
【0074】
その他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーなどが挙げられる。
【0075】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば、10万以上、好ましくは、30万以上であり、また、例えば、100万以下、好ましくは、80万以下である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値に基づいて測定される。
【0076】
熱可塑性樹脂の割合(固形分割合)は、接着組成物の熱硬化を阻害しないように調整されており、具体的には、接着組成物に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、3.5質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0077】
なお、熱可塑性樹脂は、適宜の溶媒で希釈されて調製されていてもよい。
【0078】
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどの黒色顔料が挙げられる。顔料の平均粒子径は、例えば、0.001μm以上、例えば、1μm以下である。顔料の割合は、接着組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、また、例えば、2質量%以下である。
【0079】
接着組成物を調製するには、熱硬化性成分と、無機フィラーと、カップリング剤と、必要により、添加剤とを配合して、それらを混合する。好ましくは、上記した各成分と、溶媒とを配合して、それらを混合して、ワニスを調製する。
【0080】
溶媒としては、特に限定されず、例えば、メチルエチルケトンなどのケトン、例えば、トルエンなどの芳香族系溶媒、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコールなどが挙げられる。好ましくは、ケトンが挙げられる。
【0081】
また、溶媒は、好ましくは、低分子量であって、具体的には、その分子量が、例えば、300以下、好ましくは、200以下、より好ましくは、100以下であり、また、例えば、20以上、好ましくは、50以上である。溶媒の分子量が上記した上限以下、下限以上であれば、アウトガスの一部を構成する残存溶媒由来ガス(溶媒に由来するガス)を十分に発生して、所望量のアウトガスを発生することができる。
【0082】
溶媒の配合部数は、適宜設定され、上記した成分の総量(熱硬化性成分、無機フィラー、シランカップリング剤および添加剤の総量)(いゆる固形分の総量)100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、25質量部以上、より好ましくは、75質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。溶媒の配合部数が上記した下限以上であれば、アウトガスの一部を構成する残存溶媒由来ガス(溶媒に由来するガス)を十分に発生して、所望量のアウトガスを発生することができる。溶媒の配合部数が上記した上限以下であれば、比較的厚い半導体素子封止用シート1を塗布および乾燥などによって簡単に製造することができる。
【0083】
次に、半導体素子封止用接着シート1の製造方法を説明する。
【0084】
半導体素子封止用接着シート1を製造するには、例えば、まず、上記したワニスを調製する。次いで、図1に示すように、ワニスを、第1剥離シート15に塗布し、乾燥させる。乾燥条件は、熱硬化性成分が硬化しない(具体的には、完全硬化しない)一方、溶媒の大部分(全部ではない量の溶媒)が除去される条件であり、具体的には、加熱温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、70℃以上であり、また、130℃以下、好ましくは、120℃以下であり、また、加熱時間が、例えば、10秒以上、好ましくは、1分以上、また、例えば、15分以下、好ましくは、10分以下である。
【0085】
これによって、半導体素子封止用接着シート1を、第1剥離シート15に支持された状態で、製造する。その後、第2剥離シート16を、半導体素子封止用接着シート1に対して第1剥離シート15の反対側に配置する。つまり、半導体素子封止用接着シート1を、第1剥離シート15および第2剥離シート16で厚み方向に挟み込んだ状態で、製造する。半導体素子封止用接着シート1の接着面5および第1対向面6のそれぞれは、第1剥離シート15および第2剥離シート16のそれぞれに接触している。
【0086】
第1剥離シート15および第2剥離シート16のそれぞれは、可撓性を有し、面方向に延びるシート形状を有する。第1剥離シート15および第2剥離シート16の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの樹脂、例えば、ステンレスなどの金属などが挙げられ、好ましくは、樹脂が挙げられる。また、第1剥離シート15および第2剥離シート16の表面(半導体素子封止用接着シート1に接触する接触面)は、剥離処理が施されていてもよい。第1剥離シート15および第2剥離シート16のそれぞれの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0087】
他方、ワニスを調製せず、混練押出によって、接着組成物(溶媒を実質的に含有しない組成物)から半導体素子封止用接着シート1を製造することもできる。第1剥離シート15および第2剥離シート16は、押出後の半導体素子封止用接着シート1に配置される。
【0088】
好ましくは、ワニスを調製して、これを塗布によって、半導体素子封止用シート1を形成する。ワニスから半導体素子封止用シート1を形成すれば、所望量のアウトガス(とりわけ、溶媒に由来する残存溶媒由来ガス)を発生することができる。
【0089】
半導体素子封止用接着シート1における熱硬化性成分は、例えば、Bステージ(完全硬化ではない半硬化)である。Bステージは、熱硬化性成分が、液状であるAステージと、完全硬化したCステージとの間の状態であって、硬化およびゲル化がわずかに進行し、圧縮弾性率がCステージの弾性率よりも小さい状態である。
【0090】
これにより、半導体素子封止用接着シート1を、接着面5および第1対向面6のそれぞれが、第1剥離シート15および第2剥離シート16で支持(保護)された状態で、製造する。
【0091】
この半導体素子封止用シート1では、好ましくは、溶媒の残存が許容される。つまり、半導体素子封止用シート1は、残存溶媒を含有する。従来、残存溶媒は、半導体素子封止用シート1において好ましくない成分であったが、この一実施形態では、むしろ残存溶媒の許容が好適である。
【0092】
残存溶媒は、例えば、ワニス調製時に追加的に配合される溶媒、および、カップリング剤が空気中の水分と加水分解反応することにより生成されるアルコール(メタノール、エタノールなどのROH(次式(2)参照)などを含む。
【0093】
なお、カップリング剤の加水分解反応は、下記式(2)で示される。
【0094】
R’4-nSi-OR+nHO → R’4-nSi-OH + nROH (2)
式(2)中、R、R’およびnは、上記式(1)で例示したそれらと同一である。
【0095】
残存溶媒の半導体素子封止用接着シート1における割合は、質量基準で、例えば、5ppm以上、好ましくは、10ppm以上、より好ましくは、20ppm以上、さらに好ましくは、30ppm以上であり、また、例えば、500ppm以下、好ましくは、200ppm以下である。
【0096】
残存溶媒の割合が上記した下限以上であれば、次に説明する所望量のアウトガスを発生させて、接着面5の基板2に対する接着性を向上させることができる。
【0097】
残存溶媒の割合は、GC-MSのメチルエチルケトン換算に基づいて測定され、その詳細は、後の実施例で説明する。
【0098】
そして、この半導体素子封止用シート1を150℃で、30分間加熱したときのアウトガスの発生量は、加熱前の半導体素子封止用接着シート1に対して、質量基準で、500ppm以上であり、好ましくは、750ppm、より好ましくは、1,000ppm以上、さらに好ましくは、1,250ppm以上、さらには、1,300ppm以上、さらには、1,400ppm以上、さらには、1,500ppm以上が好適であり、また、例えば、10,000ppm以下、好ましくは、5,000ppm以下である。
【0099】
上記した加熱条件(150℃で、30分間加熱)は、半導体素子封止用シート1を完全硬化させて硬化接着シート10を得るための条件の一例であって、具体的には、基板2に接着(接触)する硬化接着シート10を得るための条件の一例でもある。
【0100】
従来、アウトガスは、半導体素子封止用シート1から硬化接着シート10を得るときに発生し、好ましくない成分であったが、この一実施形態では、むしろ、多くのアウトガスの発生が必要となる。
【0101】
アウトガスは、上記した加熱条件(具体的には、硬化接着シート10を得るための加熱条件)で半導体素子封止用シート1(詳しくは、半導体素子封止用シート1から硬化接着シート10に移行する途中のシート、あるいは、硬化接着シート10)から発生する低分子量(例えば、300以下、好ましくは、200以下であり、また、例えば、20以上、好ましくは、50以上の低分子量)の有機ガスである。
【0102】
具体的には、アウトガスは、例えば、上記した主剤由来ガス、カップリング剤由来ガス、残存溶媒由来ガス(残存溶媒に由来する溶媒ガス)などを含む。
【0103】
アウトガスは、パージアンドトラップガスクロマトグラフィーで測定され、その詳細な条件は、後の実施例で詳述する。
【0104】
半導体素子封止用接着シート1の厚みは、特に限定されず、例えば、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下である。
【0105】
次に、この半導体素子封止用接着シート1を用いて、半導体素子3を封止して、半導体素子パッケージ4を製造する方法を説明する。
【0106】
半導体素子パッケージ4を製造する方法は、半導体素子3を準備する工程(図2A参照)、半導体素子封止用接着シート1を準備する工程(図1および図2A参照)、および、半導体素子封止用接着シート1によって半導体素子3を封止して、半導体素子パッケージ4を得る工程(図2B参照)を備える。
【0107】
この方法では、図2Aに示すように、まず、半導体素子3を準備する。
【0108】
半導体素子3としては、特に限定されず、種々の半導体素子が挙げられる。また、半導体素子3は、例えば、面方向に延びる略平板形状を有する。半導体素子3の厚み方向一方面(下面)には、面方向に間隔を隔てて配置される複数の端子(図示せず)が設けられている。
【0109】
半導体素子3は、基板2の被接着面8(上面)(後述)に実装されている。具体的には、半導体素子3は、上記した端子を介して、例えば、基板2に対してフリップチップ実装されている。
【0110】
基板2は、面方向に延びる略平坦形状を有する実装基板である。また、基板2は、半導体素子3を実装する被接着面8(上面)と、被接着面8と厚み方向に間隔を隔てて配置される第2対向面9とを有する。
【0111】
被接着面8は、硬化接着シート10の接着面5に接触して接着される面であって、面方向に沿う平面を有する。また、被接着面8は、半導体素子3が実装される実装面であって、半導体素子3を囲む大きさを有する。つまり、基板2の被接着面8は、平面視において、半導体素子3と重複する重複領域11と、半導体素子3と重複せず、基板2から露出して、硬化接着シート10に直接接着される被接着領域(露出領域)12とを有する。被接着面8は、重複領域11において、半導体素子3の端子(図示せず)に対応する基板端子(図示せず)を備える。なお、図2Aおよび図2Bにおいて、図示しないが、重複領域11は、半導体素子3の下面と厚み方向に微小隙間を隔てて配置されている。
【0112】
第2対向面9は、被接着面8に平行しており、面方向に沿う平面を有する。
【0113】
この方法では、別途、図1および図2Aに示すように、半導体素子封止用接着シート1を準備する。具体的には、図1の矢印および仮想線で示すように、第1剥離シート15を、半導体素子封止用接着シート1の接着面5から剥離する。
【0114】
図2Aの矢印および図2Bで示すように、その後、半導体素子封止用接着シート1を、その接着面5が、半導体素子3の厚み方向他方面(上面)に接触するように、半導体素子3に配置する。
【0115】
図2Bに示すように、次いで、半導体素子封止用接着シート1によって半導体素子3を封止する。
【0116】
例えば、下板および上板を備える平板プレス(図示せず)を用いて、半導体素子封止用接着シート1を加熱および加圧して、半導体素子封止用接着シート1で半導体素子3を封止する。
【0117】
また、上記した加熱によって、半導体素子封止用接着シート1は、熱硬化する。具体的には、一旦、軟化後、半導体素子封止用接着シート1の接着組成物が完全硬化する(Cステージ化する)。
【0118】
加熱条件は、接着組成物が完全硬化する条件である。具体的には、加熱温度が、例えば、85℃以上、好ましくは、100℃以上であり、また、例えば、125℃以下、好ましくは、110℃以下である。加熱時間が、例えば、10分間以上、好ましくは、30分間以上であり、また、例えば、300分間以下、好ましくは、180分間以下である。圧力は、特に限定されず、例えば、0.1MPa以上、好ましくは、0.5MPa以上であり、また、例えば、10MPa以下、好ましくは、5MPa以下である。
【0119】
半導体素子封止用接着シート1は、一旦軟化して、半導体素子3を埋設する。換言すれば、半導体素子3が半導体素子封止用接着シート1に埋め込まれる。
【0120】
半導体素子封止用接着シート1の接着面5は、半導体素子3の上面および周側面を被覆するとともに、被接着面8における被接着領域12に接触する。
【0121】
これによって、半導体素子3が半導体素子封止用接着シート1によって封止される。また、基板2における被接着領域12は、半導体素子封止用接着シート1によって接触(密着)される。
【0122】
なお、半導体素子3を封止し、基板2の被接着領域12に接触する半導体素子封止用接着シート1は、すでに加熱により熱硬化(完全硬化)(Cステージ)状態となっている。そのため、半導体素子封止用接着シート1は、硬化接着シート10となる。硬化接着シート10は、半導体素子封止用接着シート1の硬化物である。
【0123】
上記した半導体素子封止用接着シート1の接着組成物が完全硬化することによって、硬化接着シート10が、基板2および半導体素子3に対する接着力を発現する。
【0124】
図2Bの矢印で示すように、その後、第2剥離シート16を硬化接着シート10の第1対向面6から剥離する。つまり、第1対向面6を露出させる。
【0125】
これにより、基板2、半導体素子3および硬化接着シート10を備える半導体素子パッケージ4(硬化接着構造体20)が得られる。
【0126】
そして、この半導体素子封止用シート1は、接着組成物を含むので、基板2に対する接着性に優れる。
【0127】
また、この半導体素子封止用シート1を150℃で、30分間加熱したときのアウトガスの発生量が上記した下限以上であるので、かかる十分な量のアウトガスによって、半導体素子封止用接着シート1の硬化物である硬化接着シート10の基板2に対する接着性を向上させることができる。
【0128】
このことは、アウトガス、具体的には、主剤由来ガス、カップリング剤由来ガス、残存溶媒由来ガスを含むアウトガス、とりわけ、主剤由来ガスおよびカップリング剤由来ガスが、基板2の実装面8における露出領域12を表面処理し(露出領域12において互いに反応し)、これによって、実装面8と接着面5との接着力が向上することが要因であると推測される。
【0129】
<変形例>
以下の変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。
【0130】
図示しないが、半導体素子封止用接着シート1により、複数の半導体素子3を封止することもできる。この場合には、複数の半導体素子3を封止した硬化接着シート10を、ダイシングソーなどで、切断加工する。
【0131】
また、一実施形態では、封止用接着シートの一例として半導体素子封止用接着シート1を挙げて、電子素子の一例としての半導体素子3を封止しているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、他の電子素子を封止する電子素子封止用接着シートであってもよい。この場合には、電子素子封止用接着シートによって電子素子を封止して、電子素子パッケージを得ることができる。
【実施例
【0132】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0133】
実施例および比較例で使用した各成分、シートなどを以下に示す。
【0134】
エポキシ樹脂:新日鐵化学社製のYSLV-80XY(熱硬化性成分)(ビスフェノールF型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂)、エポキシ当量200g/eq.軟化点80℃)
硬化剤:群栄化学社製のLVR-8210DL(熱硬化性成分)(ノボラック型フェノール樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、水酸基当量:104g/eq.、軟化点:60℃)
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ-PW(熱硬化性成分)(2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール)、エポキシ樹脂硬化促進剤
第1フィラー:デンカ社製のFB-8SM(球状溶融シリカ粉末(無機フィラー)、平均粒子径15μm)
第2フィラー:アドマテックス社製のSC220G-SMJ(平均粒径0.5μm)を3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製の製品名:KBM-503)で表面処理した無機フィラー。SC220G-SMJ 100質量部に対して1質量部のシランカップリング剤で表面処理した無機フィラー。
【0135】
シランカップリング剤:信越化学社製のKBM-403(エポキシ基を含有するカップリング剤)(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
熱可塑性樹脂:根上工業社製のHME-2006M、カルボキシル基含有アクリル酸エステルコポリマー、重量平均分子量:60万、固形分濃度20質量%のメチルエチルケトン溶液
顔料:三菱化学社製の#20(カーボンブラック)
溶媒:メチルエチルケトン
【0136】
実施例1~4および比較例1~2
表1に記載の配合処方に従い、各成分をメチルエチルケトンに溶解および分散させ、ワニスを得た。
【0137】
ワニスを第1剥離シート15の表面に塗布した後、110℃で、5分間乾燥させた。これにより、厚み260μmの半導体素子封止用接着シート1を製造した。その後、半導体素子封止用接着シート1の第1対向面6に、第2剥離シート16を配置した。
【0138】
これにより、接着面5および第1対向面6のそれぞれに第1剥離シート15および第2剥離シート16のそれぞれが配置され、Bステージである半導体素子封止用シート1を得た。
【0139】
[物性]
半導体素子封止用シート1について、下記の項目を測定した。その結果を表1に記載する。
【0140】
(アウトガスの測定)
2mm四方のサイズを有する半導体素子封止用シート1をサンプルとして採取して、このサンプルをバイアル瓶に仕込み、サンプルの質量を秤量した。続いて、サンプルを150℃で30分間加熱した。この間にサンプルから発生するアウトガスを、冷却したトラップ管に捕集し、これを加熱して、質量分析計に接続したガスクロマトグラフ(GC-MS)により、メチルエチルケトンを標準物質とした検量線によって、捕集したすべてのアウトガスの質量を算出した。続いて、算出したアウトガスの質量を、仕込みの半導体素子封止用シート1の質量で除した値をアウトガス量(単位:ppm)として得た(ダイナミックヘッドスペース法)。
【0141】
アウトガス濃縮装置としては、ジーエルサイエンス製MSTD-258Mを用いた。
【0142】
アウトガスの捕集条件としては、チャンバーパージガス流量は、Nガス340mL/min、捕集時間30分間として実施した。
【0143】
分析方法としては、分析装置のGC-MSを用い、分析条件としては、カラムにJ&WキャピラリーカラムDB-5MSを用い、カラム温度は、40℃とし、3分間ホールド後、220℃までは昇温速度9℃/分で20分間昇温し、さらに300℃まで昇温速度10℃/分で8分間昇温し、300℃で3分間保持した。
【0144】
注入口の温度は250℃とした。
【0145】
キャリアガスはHeを用い、流速1.5mL/minで、スプリット比を1:10とした。
【0146】
MS分析(質量分析)は、分析装置(Agilent社製 HP6890/5973-GC/MS)を用いて、エレクトロンイオン化法により実施した。
【0147】
検出器の温度は230℃とした。
【0148】
(残存溶媒の測定)
GC-MSのメチルエチルケトン換算に基づく測定により、半導体素子封止用シート1の残存溶媒を測定した。
【0149】
[硬化接着シートの評価]
硬化接着シート10の接着性(接着強度の測定)を、以下に従って、評価した。
【0150】
図3A(断面図)および図3B(平面図)に示すように、縦50mm、横10mm、厚み200μmのアルミナ基板からなる基板2を準備した。なお、基板2は、半導体素子3を実装しておらず、接着強度を測定するためのテスト基板である。
【0151】
図3Aの仮想線および矢印に示すように、次いで、2mm四方のサイズを有する半導体素子封止用シート1を準備し、半導体素子封止用シート1の接着面5を基板2の表面に貼着した。次いで、150℃、30分間加熱した。これにより、半導体素子封止用シート1を基板2に接着して固定した。これにより、半導体素子封止用シート1および基板2を有する硬化接着構造体20を作製した。
【0152】
その後、硬化接着構造体20の半導体素子封止用シート1および基板2における剥離強度を、万能型ボンドテスター(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製、Dage4000)を用いて測定した。図3Aおよび図3Bに示すように、万能型ボンドテスターは、万能型ボンドテスターは、縦方向に移動可能なゲージ30を備える。ゲージ30は、縦方向一方側に、硬化接着シート10に押圧可能な押圧面31(縦方向一方面)を有する。
【0153】
剥離強度の測定では、ゲージ30を、硬化接着シート10の縦方向一方側であって、基板2の表面と50μmの間隔(隙間)を隔てて配置する。続いて、ゲージ30を、硬化接着シート10に向けて、縦方向他方側に移動させながら、ゲージ30の押圧面31を硬化接着シート10の側面(下端部を除く部分)に当て、続いて、ゲージ30を縦方向他方側に向けて押し込んだ(加圧した)。
【0154】
そして、硬化接着シート10が基板2から剥離したときの強度(剪断強度)を接着強度として得た。
【0155】
併せて、硬化接着シート10が基板2から剥離したとき破壊モードとして、硬化接着シート10と基板2とにおいて界面剥離したものを「○」と評価し、硬化接着シート10においてわずかに凝集破壊が生じた場合には、「△」と評価し、硬化接着シート10において凝集破壊が生じる場合には、「×」と評価した。
【0156】
【表1】

【0157】
表1中、特記しない場合には、数値は、配合部数である。
【符号の説明】
【0158】
1 半導体素子封止用接着シート(封止用接着シートの一例)
2 基板
3 半導体素子(電子素子の一例)
10 硬化接着シート
図1
図2
図3