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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/534 20060101AFI20220725BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20220725BHJP
   A61F 13/537 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
A61F13/534 100
A61F13/536 100
A61F13/537 220
A61F13/537 330
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018043199
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019154650
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 眞也
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-046817(JP,A)
【文献】特開2012-239722(JP,A)
【文献】特開2008-000433(JP,A)
【文献】特開2017-136273(JP,A)
【文献】特開2019-058739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/534
A61F 5/44
A61F 13/536
A61F 13/537
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する略細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記裏面シート側に配置された裏面側吸収体層と前記表面シート側に配置された表面側吸収体層とを有し、
前記裏面側吸収体層は、略長手方向に延びる一対の帯状高密度部を有し、
前記一対の帯状高密度部間の幅は、装着時に装着者の股間に対応する股間対応領域において、10~30mmであり、
前記一対の帯状高密度部の後端部及び前端部は、幅方向外側に湾曲している吸収性物品。
【請求項2】
透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する略細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記裏面シート側に配置された裏面側吸収体層と前記表面シート側に配置された表面側吸収体層とを有し、
前記裏面側吸収体層は、略長手方向に延びる一対の帯状高密度部を有し、
前記一対の帯状高密度部間の幅は、装着時に装着者の股間に対応する股間対応領域において、10~30mmであり、
前記一対の帯状高密度部は、一対の前方の帯状高密度部と、一対の後方の帯状高密度部とを含み、
前記一対の前方の帯状高密度部の後端部、及び前記一対の後方の帯状高密度部の前端部は、前記股間対応領域内にあり、
前記一対の前方の帯状高密度部の後端部と、前記一対の後方の帯状高密度部の前端部との長手方向の距離は、10~40mmである吸収性物品。
【請求項3】
前記一対の前方の帯状高密度部の後端部、及び前記一対の後方の帯状高密度部の前端部は、幅方向内側に湾曲している、請求項に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記帯状高密度部の幅は5~25mmである、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記一対の帯状高密度部は、圧搾により形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記表面側吸収体層は体液誘導部を有し、
前記体液誘導部は、前記股間対応領域において、平面視で、前記一対の帯状高密度部に重なっている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記本体に、前記表面シート側から前記裏面シート側に窪む、略長手方向に延びる一対の本体圧搾溝が設けられており、
前記一対の本体圧搾溝は、前記股間対応領域において、前記一対の帯状高密度部の幅方向外縁より幅方向内側に配置されている、請求項1からのいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品として、透液性の表面シートと不透液性の裏面シートとの間に吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
このような吸収性物品では、吸収された体液の移行をコントロールすること等を目的として、場所に応じて吸収体の密度を変えた構成が知られている。例えば、特許文献1には、吸収性コア(吸収体)が、一対の側方領域と、側方領域より幅方向中央側に位置し且つ側方領域より密度が高い一対の高密度領域と、一対の高密度領域間に位置し且つ高密度領域より密度が低い中央低密度領域とを有する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-86622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、高密度領域間の領域に取り込まれた液体を、高密度領域へと拡散させることができる。しかしながら、高密度領域は表面シート直下に形成されているため、体液の拡散が表面から見えやすい。そのため、漏れに対する不安感を使用者に与えてしまう場合がある。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一形態は、吸収体において体液を速やかに拡散させ、且つ漏れに対する不安感を軽減できる吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の形態は、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられた吸収体とを有する略細長形状の本体を備えた吸収性物品であって、前記吸収体は、前記裏面シート側に配置された裏面側吸収体層と前記表面シート側に配置された表面側吸収体層とを有し、前記裏面側吸収体層は、略長手方向に延びる一対の帯状高密度部を有し、前記一対の帯状高密度部間の幅は、装着時に装着者の股間に対応する股間対応領域において、10~30mmである。
【0008】
上記第一の形態によれば、吸収体が裏面側吸収体層と表面側吸収体層とを有し、裏面シート側の裏面側吸収体層に、股間対応領域において、10~30mmの間隔を空けて配置された一対の帯状高密度部が設けられている。そのため、体液排出口対応部に排出された体液が表面シートを通して吸収体に到達した体液は、毛管現象によって密度の比較的低い部分から裏面側吸収体層の帯状高密度部へと引き込まれる。そして、この帯状高密度部の形状は平面視で略長手方向に延びる帯状となっているので、引き込まれた体液を、帯状高密度部に沿って吸収体の前方及び後方へと誘導し、拡散させることができる。
【0009】
また、帯状高密度部は裏面側吸収体層に設けられているため、帯状高密度部に沿った体液の拡散は、体液の拡散が表面側からは見え難くなっている。そのため、使用者が吸収性物品の表面を見た際に感じ得る漏れに対する不安を低減することができる。
【0010】
本発明の第二の形態では、前記一対の帯状高密度部の後端部及び前端部は、幅方向外側に湾曲している。
【0011】
上記第二の形態によれば、帯状高密度部に引き込まれた体液を、吸収体の斜め前方及び斜め後方に拡散させることができ、吸収体を効率よく利用することができる。
【0012】
本発明の第三の形態では、前記一対の帯状高密度部は、一対の前方の帯状高密度部と、一対の後方の帯状高密度部とを含み、前記一対の前方の帯状高密度部の後端部、及び前記一対の後方の帯状高密度部の前端部は、前記股間対応領域内にあり、前記一対の前方の帯状高密度部の後端部と、前記一対の後方の帯状高密度部の前端部との長手方向の距離は、10~40mmである。
【0013】
上記第三の形態によれば、一対の帯状高密度部が前方と後方とに分かれているため、体液排出口対応部及びその近傍の領域において、高密度部が設けられている部分を減らすことができる。このため、体液排出口対応部及びその近傍の領域において、吸収体の柔らかさを保つことができ、装着感を向上させることができる。
【0014】
本発明の第四の形態では、前記一対の前方の帯状高密度部の後端部、及び前記一対の後方の帯状高密度部の前端部は、幅方向内側に湾曲している。
【0015】
上記第四の形態によれば、前方の帯状高密度部の後端部、及び後方の帯状高密度部の前端部が体液排出口対応部を向くように方向付けられ、体液排出口対応部に近付けられている。そのため、体液排出口対応部及びその近傍に排出された体液を、前方の帯状高密度部の後端部及び後方の帯状高密度部の前端部から速やかに引き込むことができる。
【0016】
本発明の第五の形態では、前記帯状高密度部の幅は5~25mmである。
【0017】
上記第五の形態によれば、一対の帯状高密度部が所定の幅を有することで、体液を吸収体において長手方向に適切に誘導させることができる。また、高密度部の面積が過度に大きくなって吸収体の剛性が高まることを防ぎ、良好な装着感も確保することができる。
【0018】
本発明の第六の形態では、前記一対の帯状高密度部は、圧搾により形成されている。
【0019】
上記第六の形態によれば、吸収体の坪量を均一にしたまま、高密度部を形成することができるので、少ない工程で製造することができる。
【0020】
本発明の第七の形態では、前記表面側吸収体層は体液誘導部を有し、前記体液誘導部は、前記股間対応領域において、平面視で、前記一対の帯状高密度部に重なっている。
【0021】
上記第七の形態によれば、吸収体の表面シート側の表面側吸収体層の体液誘導部によって、吸収体の上層での体液の誘導が可能になる。また、平面視で、表面側吸収体層の体液誘導部が裏面側吸収体層の帯状高密度部に重なっていることで、表面側吸収体層の体液誘導部に引き込まれた体液を速やかに裏面側吸収体層の帯状高密度部に引き込んで、長手方向に誘導することが可能となる。
【0022】
本発明の第八の形態は、前記本体に、前記表面シート側から前記裏面シート側に窪む、前記長手方向に延びる一対の本体圧搾溝が設けられており、前記一対の本体圧搾溝は、前記股間対応領域において、前記一対の帯状高密度部の幅方向外縁より幅方向内側に配置されている。
【0023】
上記第八の形態によれば、本体圧搾溝(フィットエンボス)の位置が、一対の帯状高密度部の幅方向外縁より内側となっているので、本体圧搾溝に沿って移行しつつ吸収体に吸収される体液が、帯状高密度部の幅方向外側に拡散されて漏れやすくなることを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一形態によれば、吸収体において体液を速やかに拡散させ、且つ漏れに対する不安感を軽減できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一形態による吸収性物品の一部が破断した平面図を示す。
図2図1のI-I線断面図を示す。
図3】本発明の一形態による吸収性物品の構成要素の一部を表面シート側から取り去り、吸収体の下層(裏面側吸収体層)が一部露出した状態の図を示す。
図4】吸収性物品の変形例における帯状高密度部及びその近傍の断面図を示す。
図5】本発明の別の形態による吸収性物品の構成要素の一部を表面シート側から取り去り、吸収体の下層(裏面側吸収体層)が一部露出した状態の図を示す。
図6】本発明の別の形態による吸収性物品の構成要素の一部を表面シート側から取り去り、吸収体の下層(裏面側吸収体層)が一部露出した状態の図を示す。
図7】本発明の別の形態による吸収性物品の構成要素の一部を表面シート側から取り去り、吸収体の下層(裏面側吸収体層)が一部露出した状態の図を示す。
図8図7のII-II線断面図を示す。
図9】本発明の別の形態による吸収性物品の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0027】
図1に、本発明の一形態による吸収性物品1の一部破断平面図を示す。また、図2に、吸収性物品1のI-I線断面図(側方の一部を省略して図示)を示す。図1、2に示すように、吸収性物品1は、不透液性の裏面シート2と、透液性の表面シート3と、これら両シート2、3間に設けられた吸収体4とを有する本体(吸収性物品本体)8とを備えている。吸収性物品1の装着時には、表面シート3側が肌に触れる側となり、裏面シート2側が下着に固定される側となる。
【0028】
本形態では、吸収体4は、下側(裏面シート2側)に配置された裏面側吸収体層5と、上側(表面シート3側)に配置された表面側吸収体層6との2層構造になっている。裏面側吸収体層5は、後に詳述するように、密度が比較的高い帯状高密度部5Hを備えており、帯状高密度部5H以外の部分を低密度部5Lとすることができる。
【0029】
吸収体4は、その形状保持等を目的として、クレープ紙又は不織布等からなる被包シート9によって包まれていてもよい。ここで、裏面側吸収体層5及び表面側吸収体層6が積層された2層の吸収体全体が被包シート9によって包まれていてもよいし、裏面側吸収体層5及び表面側吸収体層6の少なくとも一方が被包シート9によって包まれていてもよい。また、被包シート9によって吸収体4を包むのではなく、被包シート9を、裏面側吸収体層5と表面側吸収体層6との間に単に配置することもできる。被包シート9によって吸収体層が包まれているか(被包シート9が吸収体層に巻き付けられているか)否かに関わらず、被包シート9が裏面側吸収体層5と表面側吸収体層6との間に存在していることによって、各吸収体層のよれや割れを防止することができる。
【0030】
また、被包シート9として、無着色(すなわち、白色)のクレープ紙や不織布を用いることもできるし、着色されたものを用いることもできる。着色された被包シート9を用いた場合、被包シート9の色は、表面シート3側からも薄い色として反映され得る。そのため、排出された体液の色を、その反映された被包シート9の色に紛れさせて目立たなくすることができることができる。被包シート9は、例えば、体液の色の補色に着色することができる。例えば、経血の吸収を目的として構成された吸収性物品(生理用ナプキン等)においては、被包シート9を、赤色の補色である緑色に着色することができる。
【0031】
図1に示すように、本体8は全体として、第1方向D1に所定の長さを有し、第1方向D1と直交する第2方向D2に所定の幅を有する細長い形状を有している。本体8の幅は、図示の例では略一定となっているが、第1方向(長手方向)D1にわたって変化していてもよい。吸収性物品1は、第1方向(長手方向)D1に延びる中心線(長手方向中心線)CLに対して略線対称の形状を有することができる。また、吸収性物品1の構成(後述の吸収体4の密度が高められた部分、本体に形成される圧搾溝等の大きさや位置)は、中心線を対称軸として略対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0032】
吸収性物品1における第1方向D1の長さ(吸収性物品1の全長)は、100~450mmとすることができ、好ましくは140~360mm、より好ましくは170~290mmとすることができる。また、吸収性物品1における、第1方向D1に直交する第2方向D2の長さ(吸収性物品1の幅)は、50~200mmとすることができ、好ましくは70~120mmとすることができる。
【0033】
吸収性物品1は、装着時に装着者の膣口等の体液排出口に対応する部分(体液排出口対応部)Aを有しており、体液排出口対応部Aは中心Acを有している。中心Acは、長方向中心線CL上にあり、体液排出口対応部Aの長手方向の長さの中央に位置している。中心Acの位置は、例えば、吸収性物品1の前端から70~130mmの位置とすることができる。また、体液排出口対応部Aは、長さ(長手方向D1の長さ)が10~50mm、好ましくは20~40mm程度であり、体液排出口対応部Aの幅(幅方向D2の長さ)が5~40mm、好ましくは10~30mm程度の領域とすることができる。なお、図示の体液排出口対応部Aの形状及び大きさは、説明を容易にするための例示にすぎない。
【0034】
吸収性物品1は、装着時に装着者の股間に対応する股間対応領域Mと、股間対応領域Mの前方にある前方領域Fと、股間対応領域Mの後方にある後方領域Rとを有する。股間対応領域Mには、上述の体液排出口対応部Aが含まれる。また、股間対応領域Mは、その両側方から延びる、吸収性物品1を装着の際に下着に確実に固定するためのウィングW、Wを有していてよい。前方領域Fは、ウィングWの前方の起点となる位置から前端縁までの領域であり、後方領域Rは、ウィングWの後方の起点となる位置から後端縁までの領域とすることができる。また、ウィングW、Wが設けられている場合、体液排出口対応部Aの中心Acの長手方向D1での位置は、ウィングW、Wの側方の端縁の長手方向長さの中点の位置であってもよい。
【0035】
なお、図1の形態では、吸収性物品1はウィングW、Wを有しているが、吸収性物品1はウィングW、Wのない形態とすることができる。その場合、ウィングW、Wが従来形成される位置にウィングW、Wを形成した場合に、ウィングW、W前方の起点となる位置から前方の領域を前方領域Fとし、ウィングW、Wの後方の起点となる位置から後方の領域を後方領域Rとすることができる。
【0036】
裏面シート2としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。このような遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シート等を用いることができる。
【0037】
表面シート3は、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、不織布の加工法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等が挙げられる。これらの加工法のうち、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む不織布を製造できる点で好ましく、サーマルボンド法は嵩高でソフトな不織布を製造できる点で好ましい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることもできる。
【0038】
裏面シート2と表面シート3との間に介在させる吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉、高吸水ポリマー繊維及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。
【0039】
また、吸収体4には合成繊維を混合してもよい。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、及びこれらの共重合体を使用することができ、これらのうちの2種を混合して使用することもできる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。なお、疎水性繊維を親水化剤で表面処理し、体液に対する親和性を付与したものを用いることもできる。
【0040】
吸収体4は、積繊又はエアレイド法によって製造されたものが好ましい。吸収体4は全体として、前面にわたり均一な厚みを有していなくともよく、体液排出口対応部50及びその近傍の領域、股間対応領域Mから後方領域Rにかけての幅方向中央部分を膨出させた構造とすることもできる。
【0041】
吸収体4の前方及び後方の端縁部では裏面シート2と表面シート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。また、吸収体4の側方においては、表面シート3側の両側部に長手方向D1に沿って設けられたサイド不織布7、7と、裏面シート2とが上記接着手段によって接合されており、これにより上述のウィングW、Wが形成されている。
【0042】
サイド不織布7としては、体液の浸透を防止する、或いは肌触り感を高める等の目的に応じて、適宜の撥水処理又は親水処理を施した不織布素材を用いて構成されている。サイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維又は再生繊維等を素材とすることができる。サイド不織布7の撥水処理には、シリコン系、パラフィン系等の撥水剤を用いることができる。
【0043】
図1に示すように、本形態における吸収体4は、下側(裏面シート2側)の裏面側吸収体層5と、上側(表面シート3側)の表面側吸収体層6とを有している。このように吸収体4が2層になっていることで、各層に異なる機能を持たせることが可能になる。
【0044】
図3に、図1の吸収性物品1の表側から、サイド不織布7、7、表面シート3、及び被包シート9、及び吸収体4の上側(表面シート3側)の層である表面側吸収体層6の一部を取り去った後の図を示す。図3に示すように、裏面側吸収体層5には、幅方向(第2方向)D2に間隔を空けて配置された一対の帯状高密度部5H、5Hが設けられている。この帯状高密度部5Hは、裏面側吸収体層5において、局所的に吸収体の密度が高められた部分である。つまり、帯状高密度部5Hと、この帯状高密度部5Hに隣接する部分との間には吸収体の密度差が存在している。
【0045】
図示の形態では、裏面側吸収体層5において、一対の帯状高密度部5H、5H以外の部分を低密度部5Lとしている。低密度部5Lは、帯状高密度部5Hに対して相対的に密度が低い部分である。低密度部5Lが全体として帯状高密度部5Hよりも低い密度を有し、少なくとも帯状高密度部5Hに隣接する部分の密度が帯状高密度部5Hより小さいのであれば、低密度部5L内において密度が異なる部分が形成されていてもよい。例えば、後述のように、低密度部5Lを含む本体8全体に本体圧搾溝(本体を圧搾して形成される溝)が形成されて、低密度部5L内において密度が比較的高い部分が局所的に形成されていてもよい。
【0046】
吸収体の密度の高い部分においては、密度が低い部分に比べて液体が通り得る隙間が狭いため、毛管現象が顕著に生じる。そのため、本体8に排出された体液は、密度が低い部分から密度が高い部分へと引き込まれる傾向がある。本形態では、裏面側吸収体層5に密度が高められた一対の帯状高密度部5H、5Hが形成されていることで、体液が帯状高密度部5Hに引き込まれやすくなっている。よって、吸収体4の表面側吸収体層6に吸収された体液は、表面側吸収体層6が帯状高密度部5Hに接していれば、表面側吸収体層6から帯状高密度部5Hへと直接引き込まれ得る。また、表面側吸収体層6が帯状高密度部5Hに直接接していなくても、表面側吸収体層6から、裏面側吸収体層5の帯状高密度部5Hが形成されていない部分(低密度部5L)に浸透した体液が、裏面側吸収体層5内で帯状高密度部5Hへと引き込まれ得る。
【0047】
そして、帯状高密度部5Hは長手方向D1に沿って帯状に形成されているので、帯状高密度部5Hに引き込まれた体液は、長手方向D1に沿って前方及び後方へと誘導されやすくなる。そのため、横漏れを防ぐことができ、細長形状の吸収体の前方及び後方の領域を有効的に利用することができる。
【0048】
また、帯状高密度部5H、5Hはそれぞれ、長手方向中心線CLと幅方向D2の端部との間に形成されている。つまり、帯状高密度部5Hは、幅方向D2の端部にまで延在していない。そのため、上述のように長手方向D1に沿った体液の拡散が促進される一方、幅方向D2外側への体液の拡散は抑制される。よって、いわゆる横漏れを有効に防止することができる。
【0049】
本形態では、帯状高密度部5Hがあることで、前方及び後方への体液の誘導・分散を、主として裏面側吸収体層5(下側の層)で行うことができる。体液が面方向に広がった状態が表面から顕著に見えてしまうと、使用者は漏れてしまうのではないかという不安感を抱き得るが、本形態によれば、そのような不安感も低減することができる。
【0050】
図3に示すように、一対の帯状高密度部5H、5Hは、少なくとも股間対応領域Mにおいて、所定の距離d1を置いて形成されている。よって、距離d1内の場所、つまり体液排出口対応部A又は体液排出口対応部Aの中心Acに近い場所では高密度部がない構成とすることができる。これにより、股間対応領域M内の、特に体液排出口対応部A又は体液排出対応部Aの中心Acに近い部分の柔軟性を保つことができる。吸収性物品が接触する身体部位のうち、体液排出口及びその周辺は特にデリケートな部位であるので、その部位に対応する吸収体の部分に高密度部を形成しないことで、装着感を向上させることができる。また、長手方向中心線CLに近い部分に高密度になっていないことにより、装着時における、長手方向中心線CL付近が肌側に盛り上がりやすくなり、フィット性を向上させることもできる。
【0051】
一対の帯状高密度部5H、5H間の幅、すなわち、股間対応領域M内での一対の帯状高密度部5H、5H間の幅方向(第2方向D2)の距離d1は、10~30mmであってよく、好ましくは12~25mmであってよい。距離d1が10mm以上であることで、体液排出口対応部A又は体液排出口対応部Aの中心Acに近い部分の柔軟性を確実に確保できる。距離d1が30mm以下であることで、体液を誘導する帯状高密度部5Hが幅方向外側に寄りすぎず、体液の帯状高密度部5Hへの到達の遅れを防止することができる。
【0052】
一対の帯状高密度部5H、5H間の距離は、長手方向全体で見て、すなわち股間対応領域M以外の領域(前方領域F及び/又は後方領域R)において、d1以上とすることができる。これにより、前方領域F及び/又は後方領域Rにおいて、吸収体が長手方向中心線CL近くで硬くなって装着感を損なうことを防止することができる。
【0053】
図3に示すように、帯状高密度部5Hは、所定の幅を有する帯状の平面視形状を有する。各帯状高密度部5Hの幅(第2方向D2の長さ)は5~25mmであってよく、好ましくは8~15mmであってよい。帯状高密度部5Hの幅を5mm以上とすることで、体液を帯状高密度部5Hに引き込む力を向上させ、裏面側吸収体層5において体液を長手方向に適切に誘導させることができる。また、帯状高密度部5Hの幅を25mm以下とすることで、高密度部の面積が過度に大きくなって吸収体の剛性が過度に高まることを防ぎ、良好な装着感を確保することができる。
【0054】
帯状高密度部5Hの幅は、図示の形態では前方から後方にかけて一定となっているが、変化していてもよい。例えば、帯状高密度部5Hの幅は、吸収性物品の長手方向の端部に近い程(前方又は後方に近い程)大きくすることができる。これにより、吸収された体液を長手方向の前方及び後方に誘導する機能を高めることができる。また、帯状高密度部5Hの幅方向内縁及び幅方向外縁の少なくとも一方が、直線状でない部分、例えばジグザグ状や波状である部分を有していてもよい。
【0055】
図示の形態では、帯状高密度部5Hは、裏面側吸収体層5の長手方向D1にわたって延在している。つまり、一対の帯状高密度部5H、5Hの前端部5Ha、5Ha及び後端部5Hb、5Hbは、裏面側吸収体層5(吸収体4及び本体8)の前端及び後端に達している。これにより、帯状高密度部5Hによる前方及び後方に体液を誘導する機能を高めることができる。しかし、帯状高密度部5Hの前端部5Ha及び後端部5Hbは、裏面側吸収体層5の前端及び後端よりも長手方向内側の位置で終端しており、吸収体4の長手方向D1長さよりも短くなっていてよい。例えば、帯状高密度部5Hの長手方向D1の長さは、吸収体4の長手方向D1の長さの4分の3以上、好ましくは6分の5以上とすることができる。
【0056】
上述のように帯状高密度部5Hは、周囲よりも相対的に密度の高い部分、つまり隣接する低密度部5Lよりも相対的に密度の高い部分である。帯状高密度部5Hの密度は、帯状高密度部5Hが低密度部5Lから体液を引き込む機能を有していれば特に限定されないが、帯状高密度部5Hの密度は40~120kg/mであると好ましく、60~100kg/mであるとより好ましい。
【0057】
また、低密度部5Lの密度は、25~60kg/mであると好ましい。
【0058】
上記の帯状高密度部5H及び低密度部5Lの密度は、帯状高密度部5H内又は低密度部5L内で密度が異なっている場合には、密度の平均値であってよい。
【0059】
なお、本明細書における、吸収体(裏面側吸収体層及び表面側吸収体層)の密度及び厚みの値は、後述の本体圧搾溝(フィットエンボス)が設けられていない状態での値とすることができる。
【0060】
また、本明細書においては、吸収体の密度は、次のようにして測定することができる。吸収体から測定したい部分(フィットエンボスが設けられていない部分)を任意の大きさに切り取り、面積を測定する。さらに、切り取った部分の重量を測定し、また厚みを測定する。このように測定された面積、厚み、及び重量から密度を算出する。
【0061】
厚みは、例えば、厚み測定器(株式会社尾崎製作所製「ピーコック」、型番:FFD―7)を測定することができる。また、表面側吸収体層又は裏面側吸収体層の密度を求める場合には、測定したい方の層を剥がして任意の大きさに切り取り、上述のように各値を測定して密度を算出する。吸収体の所定の部分における表面側吸収体層及び裏面側吸収体層の密度比較する場合には、切り取った吸収体の部分から各層を剥がして測定を行う。
【0062】
帯状高密度部5Hは、圧搾により形成することができる。その場合、例えば、均一な厚み及び密度を有する吸収体層を準備し、帯状高密度部5Hを形成したい所定の部分を圧搾することによって帯状高密度部5Hを形成することができる。圧搾は、準備した吸収体層を、一対の加圧ロールの間を通過させることによって行うことができる。この一対の加圧ロールは、例えば、帯状高密度部5Hの形状に対応した凹部を表面に有する一方のロールと、凹部を有さない平坦な他方のロールとの組合せとすることができる。このような圧搾を利用することで、容易に帯状高密度部5Hを形成することができる。
【0063】
図4に、圧搾により形成された帯状高密度部5Hを有する形態を示す。図4は、図1のI-I線に沿って切断した、吸収体4を部分的に示す断面図である。図4に示すように、裏面側吸収体層5には表面側から裏面側へと窪みが形成されており、その位置に帯状高密度部5Hが形成されている。つまり、図示の形態では、帯状高密度部5Hは、低密度部5Lに比べて密度が大きいが、厚みが小さくなっている。このように、圧搾溝を形成することで、帯状高密度部5Hを形成することができる。帯状高密度部5Hが圧搾(圧縮)により形成されていることにより、装着時には、吸収体が帯状高密度部5Hを基点として変形しやすくなるため、長手方向中心線CL付近の領域が肌側に盛り上がりやすくなり、フィット性が向上するという効果も得られる。
【0064】
なお、帯状高密度部5Hを圧搾した場合、帯状高密度部5Hの厚さは、圧搾前の状態の厚さ100%に対して20~70%であってよく、30~55%程度であると好ましい。
【0065】
図4には、体液の流れの例を矢印で示されている。図4に示すような吸収体4においては、表面側に排出された体液は、毛管現象、重力等によって表面側吸収体層6を通って、裏面側吸収体層5へと拡散する。そして、裏面側吸収体層5に到達した体液は、低密度部5Lから帯状高密度部5Hへと移行し、さらに帯状高密度部5Hの長手方向(紙面に直交する方法)に沿って、裏面側吸収体層5の前方及び後方に拡散することができる。
【0066】
図4の形態では、裏面側吸収体層5の帯状高密度部5Hは、吸収体層を表面側から圧搾することによって、表面側に圧搾溝ができるように形成されている。しかし、吸収体層を裏面側から圧搾することによって圧搾溝を形成してもよい。その場合、帯状高密度部5Hと、表面側吸収体層6とが接する構成とすることができ、表面側吸収体層6から帯状高密度部5Hへの体液の移行をより促進させることができる。また、表面及び裏側の両側から圧搾することによって帯状高密度部5Hを形成することもできる。
【0067】
裏面側吸収体層5の製造においては、均一な厚み及び密度を有する吸収体層を準備し、帯状高密度部5Hを形成したい部分と同じ形状を有する別の吸収体層片を、帯状高密度部5Hを形成したい部分に積層し、少なくとも、その別の吸収体層片を積層させた部分を圧搾することもできる。この場合、圧搾の条件を調整することにより、裏面側吸収体層5の厚みを均一にする、すなわち帯状高密度部5Hとそれ以外の部分(低密度部5L)との厚みを同等にすることもできる。
【0068】
また、積繊の際に、帯状高密度部5Hを形成したい部分の目付がより大きく(厚みが大きく)なるように吸収体層を形成し、少なくとも、目付を大きくした部分を圧搾することによっても、帯状高密度部5Hを有する裏面側吸収体層5を形成することができる。
【0069】
さらに、帯状高密度部5Hと、低密度部5Lとを別々に形成しておいて組み合わせることもできる。例えば、一対の帯状高密度部5H、5Hを形成したい部分を除いた領域のみの吸収体層を形成し、その後、一対の帯状高密度部5H、5Hの形状に形成しておいた高密度の吸収体層片を嵌め込むことができる。また、厚みが均一な吸収体層を形成しておいて、一対の帯状高密度部5H、5Hを形成したい範囲における表面側の一部を刳り抜き、別途高密度に形成しておいた吸収体層片を嵌め込むこともできる。その場合、帯状高密度部5Hと低密度部5Lとの吸収体に用いる材料(吸収体に含まれる繊維の径、長さ、粒子の径、形状等)が異なるようにしてもよい。この場合も、一対の帯状高密度部5H、5Hと低密度部5Lとの厚さは同じにすることもできるし、異ならせることもできる。
【0070】
表面側吸収体層6の構成は特に限定されないが、表面側吸収体層6の密度は全体として均一とすることができるし、後述のように、表面側吸収体層6の比較的小さな部分の密度を変更する等して、体液の誘導に利用することもできる。但し、表面側吸収体層6には、裏面側吸収体層5に形成されているような帯状の高密度部が形成されていないことが好ましい。これにより、表面側吸収体層6における面方向での拡散が、表面シート3を通して目立ってしまうことを防止することができる。
【0071】
表面側吸収体層6の密度は、裏面側吸収体層5の低密度部5Lの密度と同等とすることができ、また低密度部5Lの密度よりも小さくすることができる。表面側吸収体層6の密度が裏面側吸収体層5の低密度部5Lの密度よりも小さくすると、表面側吸収体層6から裏面側吸収体層5への体液の引き込みを促進することができる。表面側吸収体層6の密度は、20~80kg/mであると好ましく、25~50kg/mであるとより好ましい。
【0072】
吸収体4全体の厚みは、0.3~30mmの範囲内とすることができ、1.0~15mmの範囲であると好ましい。
【0073】
裏面側吸収体層5の厚み(低密度部5Lの厚み)は、1.0~5.5mmであると好ましく、1.5~3.0mmであるとより好ましい。帯状高密度部5Hが圧搾により形成されている場合には、帯状高密度部5Hの厚みは0.5~3.5mmであると好ましく、1.0~2.0mmであるとより好ましい。また、表面側吸収体層6の厚みは、1.0~5.5mmであると好ましく、1.5~3.0mmであるとより好ましい。裏面側吸収体層5の厚みと表面側吸収体層6の厚みは、同等であってもよいし、異なっていてもよい。表面側吸収体層6の厚みの方が大きい場合には、体液の拡散を表面側から見て目立たないようにするという観点からは好ましい。一方、裏面側吸収体層5の厚みが大きい場合には、長手方向の拡散を一層促進できるという観点から好ましい。
【0074】
なお、表面側吸収体層6の面積は、一対の帯状高密度部5H、5Hに重なっているのであれば、裏面側吸収体層5と同様であってもよく、異なっていてもよい。また、表面側吸収体層6は、一対の帯状高密度部5H、5Hの全体を覆っていることが好ましい。
【0075】
図5に、帯状高密度部の変形例として一対の帯状高密度部25H、25Hを備えた形態を示す。図5は、図3と同様に、吸収性物品20の表側から、サイド不織布、表面シート、及び被包シート、及び吸収体の上側(表面シート側)の層である表面側吸収体層26の一部を取り去った後の図を示す。図5の形態では、一対の帯状高密度部25H、25Hの前端部25Ha、25Ha及び後端部25Hb、25Hbが、幅方向外側に湾曲している点で、図3の形態とは異なる。この構成により、帯状高密度部25Hに引き込まれた体液を、裏面側吸収体層5の斜め前方及び斜め後方に拡散させることができ、吸収体を効率よく利用することができる。
【0076】
図6に、別の形態による吸収性物品30を部分的に示す。図6は、吸収性物品30の表面側から、サイド不織布、表面シート、及び被包シート、及び表面側吸収体層36の一部を取り去った後の図である。図6には、裏面シート32の上に載置された裏面側吸収体層35と、この裏面側吸収体層35上に配置された表面側吸収体層36とが示されている。
【0077】
図6の形態は、図3の形態と基本的な構成は同様であるが、一対の帯状高密度部35H、35Hが、一対の前方の帯状高密度部35Hf、35Hfと、一対の後方の帯状高密度部35Hr、35Hrとに分かれている点で異なっている。図6に示すように、一対の前方の帯状高密度部35Hf、35Hfは、体液排出口対応部Aの中心Acより前方に配置されており、一対の後方の帯状高密度部35Hr、35Hrは、体液排出口対応部Aの中心Acより後方に配置されていることが好ましい。このように一対の帯状高密度部が前後に分かれていることで、体液排出口対応部A及びその近傍において、長手方向で見ても、高密度部のない部分を形成することができる。そのため、体液排出口対応部A及びその近傍において、吸収体の柔らかさを確保することができる。これにより、装着時にその部位に接触する体液排出口対応部及びその周辺の部分の吸収体の柔軟性、クッション性を高めることによって、装着感を効果的に向上させることができる。
【0078】
図6に示すように、一対の前方の帯状高密度部35Hf、35Hfは、前端部35Hfa、35Hfaと、後端部35Hfb、35Hfbとを有している。また、一対の後方の帯状高密度部35Hr、35Hrは、前端部35Hra、35Hraと、後端部35Hrb、35Hrbとを有している。そして、一対の前方の帯状高密度部35Hf、35Hfの後端部35Hfb、35Hfb、及び一対の後方の帯状高密度部35Hr、35Hrの前端部35Hra、35Hraはそれぞれ、体液排出口対応部Aを含む股間対応領域M内に位置している。これにより、体液が排出される位置又は範囲が股間対応領域M内で多少ずれたとしても、一対の前方の帯状高密度部35Hf、35Hfと、一対の後方の帯状高密度部35Hr、35Hrと少なくとも一方で、排出された体液が確実に届くようになるので、体液を前方及び後方の少なくとも一方に良好に誘導させることができる。
【0079】
前方の帯状高密度部35Hfの後端部35Hfbと、後方の帯状高密度部35Hrの前端部35Hraとの長手方向の距離d2は、10~40mmであると好ましく、20~30mmであるとより好ましい。距離d2が10mm以上であることで、吸収体の柔軟性及びクッション性を向上させることができる。一方、距離d2が40mm以下であることで、排出された体液が、前方の帯状高密度部35Hfの後端部35Hfb及び後方の帯状高密度部35Hrの前端部35Hraによって確実に届くようになり、体液を長手方向に誘導することができる。
【0080】
図6に示すように、一対の前方の帯状高密度部35Hf、35Hfの後端部35Hfb、35Hfb、及び一対の後方の帯状高密度部35Hr、35Hrの前端部35Hra、35Hraは、幅方向内側に湾曲していてもよい。このような湾曲により、帯状高密度部を、長手方向で見て体液排出口対応部Aの中心Acに近付く程、幅方向にも体液排出口Aの中心Acに近付けることができる。この構成により、1回の排出量が少量であっても、体液を直ちに、前方の帯状高密度部35Hf、35Hfの後端部35Hfb、35Hfb、及び後方の帯状高密度部35Hr、35Hrの前端部35Hra、35Hraに到達させ、帯状高密度部に沿って誘導させることができる。なお、図示の形態では、前方の帯状高密度部35Hfの後端部35Hfb、及び後方の帯状高密度部35Hrの前端部35Hraの両方が幅方向内側に湾曲しているが、少なくとも一方が湾曲する形態とすることもできる。
【0081】
図7に、別の形態による吸収性物品40の構成を部分的に示す。図7は、吸収性物品40の表面側から、サイド不織布、表面シート、及び被包シート、及び表面側吸収体層46の一部を取り去った後の図である。図7においては、裏面シート42の上に載置された裏面側吸収体層45と、この裏面側吸収体層45上に配置された表面側吸収体層46とが示されている。また、図8に、図7のII-II線断面図を示す。
【0082】
図7に示す裏面側吸収体層45は、図3に示した裏面側吸収体層5と同様の構成を有する。つまり、図7に示すように、裏面側吸収体層45には、一対の帯状高密度部45H、45Hが設けられており、この一対の帯状高密度部45H、45Hは、少なくとも股間対応領域Mにおいて、互いに間隔d1を置いて配置され、吸収体44の前端から後端まで長手方向D1に延びている。しかし、本形態においては、表面側吸収体層46に一対の体液誘導部46C、46Cが形成されている点で、図3に示す形態と異なっている。
【0083】
図7及び図8に示すように、一対の体液誘導部46C、46Cは、体液排出口対応部Aを含む股間対応領域Mに設けられている。これにより、股間対応領域M内にある程度の範囲をもって排出された体液を、表面側吸収層46において、一対の体液誘導部46C、46Cへと引き込むことができる。
【0084】
さらに、一対の体液誘導部46C、46Cは、上面視で、一対の帯状高密度部45H、45Hとそれぞれ重なっていると好ましい。これにより、一対の高密度部46H、46Hに引き込まれた体液は、その下にそれぞれ位置する一対の帯状高密度部45H、45Hに誘導しやすくなる。また、一対の体液誘導部46C、46Cは、一対の帯状高密度部45H、45Hの範囲内にそれぞれ形成されている、すなわち、一対の帯状高密度部45H、45Hの内縁をそれぞれ越えないように形成されているとさらに好ましい。
【0085】
一対の体液誘導部46C、46Cは、体液誘導部46C以外の部分より密度が高い部分(高密度部)とすることができる。その場合、体液誘導部46C,46Cの密度は、40~110kg/mであると好ましく、50~90kg/mであるとより好ましい。また、表面側吸収体層46の体液誘導部46Cの密度は、裏面側吸収体層45の帯状高密度部45Hの密度よりも小さいと好ましい。これにより、体液誘導部46Cから、下層の裏面側吸収体層45の帯状高密度部45Hへの体液の移行が容易になる。
【0086】
体液誘導部46Cの大きさは、裏面側吸収体層5の帯状高密度部5Hより小さいことが好ましい。例えば、体液誘導部46Cの長手方向D1の長さは、10~30mm程度であり、幅方向D2の長さは、2.5~12.5mm程度であってよい。また、体液誘導部46Cの面積は、25~375mm程度とすることができる。
【0087】
また、体液誘導部46Cを高密度部とする場合には、体液誘導部46Cは、裏面側吸収体層46の帯状高密度部と同様の方法で形成することができる。つまり、高密度部46Hは、圧搾溝とすることができる。また、図示の形態では、一対の体液誘導部46C、46Cの形状は長方形であるが、別の形状であってもよい。例えば、円形、楕円形、正方形であってもよいし、五角形、六角形等の多角形、星形、ハート形、しずく形等であってもよい。
【0088】
なお、体液誘導部46Cは、体液を裏面側吸収体層45へ速やかに誘導できる構成であれば限定されず、例えば貫通孔であってもよい。
【0089】
図9に、別の形態による吸収性物品50の上面図を示す。図9に示す吸収性物品50は、図1に示した吸収性物品1と基本的な構成は同様であり、吸収体54は、裏面側吸収体層55と、表面側吸収体層56とを備えており、裏面側吸収体層55には密度が高められた一対の帯状高密度部55H、55Hが形成されている。しかし、図9に示す形態では、本体58に、表面シート側から裏面シート側へと窪む本体圧搾溝(フィットエンボスともいう)FEが形成されている点で、図1に示す吸収性物品1と異なる。
【0090】
本体圧搾溝FEは、溝の延在方向に直交する方向の幅が1.0~2.0mm程度の細い溝状の圧搾部分である。本体圧搾溝FEは、体液を本体圧搾溝FEに集め、本体圧搾溝FEに沿って誘導させる機能を有し得る。また、装着時には、本体圧搾溝FEを基点として、体液排出口対応部A及びその近傍が肌側に盛り上がるように本体58を変形させることができるので、吸収性物品50を肌に密着させることができ、漏れを防止することができる。
【0091】
図9の形態では、本体圧搾溝FEは、長手方向中心線CLを対称線として対称に形成されている。本体圧搾溝FEは少なくとも、股間対応領域Mを前方及び後方に越えて長手方向に延在する一対の股間対応領域圧搾溝FE1、FE1を含む。図示の形態では、一対の股間対応領域圧搾溝FE1、FE1は、平面視で、幅方向外側に凸になるように(幅方向外側に膨出するように)延在しているが、幅方向内側に凸となるように(幅方向内側に窪むように)延在していてもよいし、直線状になっていてもよい。
【0092】
図9に示すように、一対の股間対応領域圧搾溝FE1、FE1は、平面視、裏面側吸収体層55の一対の帯状高密度部55H、55Hにそれぞれ重なっていてよい。また、股間対応領域圧搾溝FE1、FE1は、平面視で、一対の帯状高密度部55H、55Hを幅方向外側に越えないことが好ましい。つまり、一対の帯状高密度部55H、55Hは、裏面側吸収体層55の一対の帯状高密度部55H、55Hの幅方向外縁よりも幅方向内側に配置されていると好ましい。これにより、股間対応領域圧搾溝FE1、FE1に沿って移行しつつ、吸収体54へ吸収される体液が、帯状高密度部の幅方向外側に拡散されて漏れやすくなることを防止することができる。
【符号の説明】
【0093】
1、20、30、40、50 吸収性物品
2、22、32、42 裏面シート
3、23、33、43、53 表面シート
4、24、34、44、54 吸収体
5、25、35、45、55 裏面側吸収体層
6、26、36、46、56 表面側吸収体層
5H、25H、35H、45H、55H 帯状高密度部
35Hf 前方の帯状高密度部
35Hfa 前方の帯状高密度部の前端部
35Hfb 前方の帯状高密度部の後端部
35Hr 後方の帯状高密度部
35Hra 後方の帯状高密度部の前端部
35Hrb 後方の帯状高密度部の後端部
5L、25L、35L、45L、55L 低密度部
8、58 本体(吸収性物品本体)
9 被包シート
46C (表面側吸収体層の)高密度部
CL 長手方向中心線
D1 第1方向
D2 第2方向
FE 本体圧搾溝
FE1 股間対応領域圧搾溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9