(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】カード決済システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/24 20120101AFI20220725BHJP
【FI】
G06Q20/24
(21)【出願番号】P 2018057548
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山本 真永
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-048507(JP,A)
【文献】特開2005-275459(JP,A)
【文献】特開2009-169835(JP,A)
【文献】特開2002-133343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0269582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレジットカードの利用者からの要求に応じて、仮想店舗での当該クレジットカードの利用条件を設定する利用条件設定手段と、
クレジットカードの利用要求を受け付けた場合、当該クレジットカードに係る利用条件の設定の有無を判定する第1判定手段と、
利用条件が設定されていると判定した場合、前記利用要求に係るクレジットカードの利用が、当該利用条件を満足するか否かを判定する第2判定手段と、
前記利用条件を満足すると判定した場合に前記クレジットカードのオーソリ処理を行わずに決済を行う一方で、前記利用条件を満足しないと判定した場合に前記クレジットカードの決済を不可とする決済手段と
、
仮想店舗毎に、前記利用条件を満足しないと判定された回数を記録する回数記録手段と、
前記回数に基づいて、不正利用の可能性がある仮想店舗を特定する仮想店舗特定手段と
を備える、カード決済システム。
【請求項2】
利用条件が設定されていないと判定した場合、前記クレジットカードのオーソリ処理を行った上で決済を行う第2決済手段をさらに備える、
請求項1に記載のカード決済システム。
【請求項3】
クレジットカードの利用者からの要求に応じて、仮想店舗での当該クレジットカードの利用条件を設定する利用条件設定手段と、
クレジットカードの利用要求を受け付けた場合、利用要求に係るクレジットカードの利用が、当該クレジットカードに係る利用条件を満足するか否かを判定する第2判定手段と、
前記利用条件を満足すると判定した場合に前記クレジットカードのオーソリ処理を行わずに決済を行う一方で、前記利用条件を満足しないと判定した場合に前記クレジットカードの決済を不可とする決済手段と
、
仮想店舗毎に、前記利用条件を満足しないと判定された回数を記録する回数記録手段と、
前記回数に基づいて、不正利用の可能性がある仮想店舗を特定する仮想店舗特定手段と
を備える、カード決済システム。
【請求項4】
前記利用条件設定手段は、クレジットカードが利用可能な期間、回数、及び金額の少なくとも1つを含む利用条件を設定するように構成されている、
請求項1乃至3の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項5】
前記利用条件設定手段は、クレジットカードが利用可能な仮想店舗を含む利用条件を設定するように構成されている、
請求項1乃至4の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項6】
前記利用条件設定手段は、前記クレジットカードの利用者側で利用可能な通信端末を含む利用条件を設定するように構成されている、
請求項1乃至5の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項7】
前記利用条件設定手段は、前記クレジットカードの利用者側の通信端末における特定のプログラムの実行の有無を含む利用条件を設定するように構成されており、
前記通信端末から前記特定のプログラムの実行の有無を示す実行有無情報を受信する実行有無情報受信手段をさらに備え、
前記第2判定手段は、前記実行有無情報に基づいて、前記利用条件を満足するか否かを判定するように構成されている、
請求項1乃至6の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項8】
前記特定した仮想店舗について不正利用の可能性があることを示す警告を出力する警告出力手段
をさらに備える、
請求項1乃至7の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項9】
前記特定した仮想店舗での利用履歴がある利用者
であって、前記利用条件の設定の要求を行っていない利用者を特定する利用者特定手段と、
特定した利用者に対して、前記特定した仮想店舗でのクレジットカードの利用条件の設定を促す設定催促手段と
をさらに備える、請求項1乃至8の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項10】
クレジットカード毎に、前記利用条件を満足しないと判定された回数を記録する回数記録手段と、
前記回数に基づいて、不正利用の可能性があるクレジットカードを特定するクレジットカード特定手段と、
特定したクレジットカードについて不正利用の可能性があることを示す警告を出力する第2警告出力手段と
をさらに備える、
請求項1乃至9の何れかに記載のカード決済システム。
【請求項11】
利用条件を設定した場合に利用者に付与される特典情報を各利用者に対して提供する提供手段をさらに備える、
請求項1乃至10の何れかに記載のカード決済システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムの負荷を軽減することができるカード決済システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上の仮想店舗(オンラインショップ)の普及に伴って、特別なセールを仮想店舗で実施したり、新商品の購入の受付を実店舗に先立って仮想店舗で実施したりするなど、各企業が仮想店舗を戦略的に活用するようになっている。このような状況において、上記のセールの期間及び新商品の購入の受付期間等の特定の期間において、仮想店舗でのクレジットカードの利用が集中するという現象が起きている。そのため、その特定の期間においてオーソリ処理(与信照会処理)の件数が急増するため、フロアリミット(オーソリ処理が必要になる上限金額)を一時的に上げる等の対応により、オーソリ処理の件数の低減化を図っている(特許文献1の段落番号0005参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにフロアリミットを上げることによりオーソリ処理の件数を減らした場合、クレジットカード会社のリスクが増大するという問題が生じる。特に、仮想店舗の場合、実店舗と比べるとクレジットカードの不正利用が多いため、そのリスクはより大きいといえる。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、フロアリミットを上げることなく、オーソリ処理の件数を低減することができるクレジットカード決済システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様のカード決済システムは、クレジットカードの利用者からの要求に応じて、仮想店舗での当該クレジットカードの利用条件を設定する利用条件設定手段と、クレジットカードの利用要求を受け付けた場合、当該クレジットカードに係る利用条件の設定の有無を判定する第1判定手段と、利用条件が設定されていると判定した場合、前記利用要求に係るクレジットカードの利用が、当該利用条件を満足するか否かを判定する第2判定手段と、前記利用条件を満足すると判定した場合に前記クレジットカードのオーソリ処理を行わずに決済を行う一方で、前記利用条件を満足しないと判定した場合に前記クレジットカードの決済を不可とする決済手段とを備える。
【0007】
前記態様において、利用条件が設定されていないと判定した場合、前記クレジットカードのオーソリ処理を行った上で決済を行う第2決済手段をさらに備えていてもよい。
【0008】
また、本発明の他の態様のカード決済システムは、クレジットカードの利用者からの要求に応じて、仮想店舗での当該クレジットカードの利用条件を設定する利用条件設定手段と、クレジットカードの利用要求を受け付けた場合、利用要求に係るクレジットカードの利用が、当該クレジットカードに係る利用条件を満足するか否かを判定する第2判定手段と、前記利用条件を満足すると判定した場合に前記クレジットカードのオーソリ処理を行わずに決済を行う一方で、前記利用条件を満足しないと判定した場合に前記クレジットカードの決済を不可とする決済手段とを備える。
【0009】
前記態様において、前記利用条件設定手段は、クレジットカードが利用可能な期間、回数、及び金額の少なくとも1つを含む利用条件を設定するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記態様において、前記利用条件設定手段は、クレジットカードが利用可能な仮想店舗を含む利用条件を設定するように構成されていてもよい。
【0011】
また、前記態様において、前記利用条件設定手段は、前記クレジットカードの利用者側で利用可能な通信端末を含む利用条件を設定するように構成されていてもよい。
【0012】
また、前記態様において、前記利用条件設定手段は、前記クレジットカードの利用者側の通信端末における特定のプログラムの実行の有無を含む利用条件を設定するように構成されており、前記通信端末から前記特定のプログラムの実行の有無を示す実行有無情報を受信する実行有無情報受信手段をさらに備え、前記第2判定手段は、前記実行有無情報に基づいて、前記利用条件を満足するか否かを判定するように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記態様において、仮想店舗毎に、前記利用条件を満足しないと判定された回数を記録する回数記録手段と、前記回数に基づいて、不正利用の可能性がある仮想店舗を特定する仮想店舗特定手段と、特定した仮想店舗について不正利用の可能性があることを示す警告を出力する警告出力手段とをさらに備えていてもよい。
【0014】
また、前記態様において、前記特定した仮想店舗での利用履歴がある利用者を特定する利用者特定手段と、特定した利用者に対して、前記特定した仮想店舗でのクレジットカードの利用条件の設定を促す設定催促手段とをさらに備えていてもよい。
【0015】
また、前記態様において、クレジットカード毎に、前記利用条件を満足しないと判定された回数を記録する回数記録手段と、前記回数に基づいて、不正利用の可能性があるクレジットカードを特定するクレジットカード特定手段と、特定したクレジットカードについて不正利用の可能性があることを示す警告を出力する第2警告出力手段とをさらに備えていてもよい。
【0016】
また、前記態様において、利用条件を設定した場合に利用者に付与される特典情報を各利用者に対して提供する提供手段をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、安全性を担保した上で、オーソリ処理の件数の低減化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るカード決済システム及びその通信先の構成を示すブロック図。
【
図2】本発明の実施の形態に係る事前申告システムの構成を示すブロック図。
【
図3】利用条件データベースのレイアウトの一例を示す図。
【
図4】利用条件設定処理の手順を示すフローチャート。
【
図6A】カード決済処理の手順を示すフローチャート(前半)。
【
図6B】カード決済処理の手順を示すフローチャート(後半)。
【
図7】不正利用警告処理の手順を示すフローチャート。
【
図8】事前申告催促処理の手順を示すフローチャート。
【
図9】特典情報提供処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0020】
[カード認証システムの構成]
図1は、実施の形態に係るカード決済システム及びその通信先の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態のカード決済システム1は、クレジットカードの発行会社側に設けられたオーソリシステム2と、同じく設けられた事前申告システム3とを備えている。オーソリシステム2は、クレジットカードが利用される際に実行されるオーソリ処理を行うコンピュータシステムであり、事前申告システム3は、後述する利用条件の事前申告を受け付け、その利用条件に基づいてクレジットカードの利用可否を判定するコンピュータシステムである。
【0021】
オーソリシステム2及び事前申告システム3は、相互に通信可能に接続されている。また、オーソリシステム2及び事前申告システム3は、インターネット101に通信可能に接続されている。オーソリシステム2は、クレジットカードの利用者側に設けられている利用者端末4,4,…と、また、事前申告システム3は、利用者端末4,4,…及び仮想店舗を運営する店舗サーバ5,5,…と、インターネット101を介して各種のデータの送受信をそれぞれ行う。ここで、利用者端末4は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の携帯電話機又はタブレット端末等で構成される。
【0022】
[オーソリシステムの構成]
オーソリシステム2は、1台又は複数台のコンピュータで構成されており、所定のオーソリ処理を実行する。仮想店舗においてクレジットカードが利用される場合、その仮想店舗の店舗サーバ5と事前申告システム3との間を仲介する役割も有している。
【0023】
[事前申告システムの構成]
事前申告システム3は、1台のコンピュータで構成されている。以下、この事前申告システム3の詳細な構成について説明する。
図2は、事前申告システム3の構成を示すブロック図である。
図2に示すとおり、事前申告システム3は、CPU31、ROM32、RAM33、ハードディスク34、及び通信インタフェース(I/F)35を備えており、これらのCPU31、ROM32、RAM33、ハードディスク34、及び通信I/F35は、バス36によって接続されている。
【0024】
CPU31は、RAM33にロードされた各種のコンピュータプログラムを実行する。これにより、コンピュータ3が本実施の形態の事前申告システム3として機能することになる。
【0025】
ROM32は、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、又はEEPROM(Electrically Erasable PROM)等によって構成されており、CPU31にて実行されるコンピュータプログラム及びその実行の際に用いられるデータ等が記憶されている。
【0026】
RAM33は、SRAM又はDRAMなどによって構成されている。このRAM33は、ハードディスク34に記憶されている各種のコンピュータプログラムの読み出し等に用いられる。また、CPU31が各種のコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31の作業領域としても利用される。
【0027】
ハードディスク34には、CPU31に実行させるための各種のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータ等が予めインストールされている。また、このハードディスク34には、利用者に関する利用者情報が格納される利用者データベース(DB)34Aと、各利用者による事前申告によって設定された利用条件に関する利用条件情報が格納される利用条件データベース(DB)34Bと、各仮想店舗に関する店舗情報が格納される店舗データベース(DB)34Cと、利用条件の範囲外と判定された取引の履歴が格納される条件外履歴データベース(DB)34Dと、不正利用の可能性がある仮想店舗及びクレジットカードに関する不正利用情報が格納される不正利用データベース(DB)34Eと、クレジットカードの利用履歴が格納される利用履歴データベース(DB)34Fとが設けられている。これらの各データベースの詳細については後述する。
【0028】
さらに、ハードディスク34には、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、各種のコンピュータプログラムが当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0029】
通信I/F35は、インターネット101を介して事前申告システム3が外部の装置と通信するためのインタフェース装置である。事前申告システム3は、この通信I/F35を介して、利用者端末4,4,…及び店舗サーバ5,5,…との間で各種データの送受信を行う。
【0030】
以下、ハードディスク34に設けられている各データベースの詳細について説明する。
(A)利用者DB34A
利用者DB34Aには、利用者の氏名、連絡先、及びクレジットカードのカード番号の他、利用者が使用する利用者端末4を識別するための端末IDを含む利用者情報が格納されている。この端末IDは、各利用者から提供があった場合にのみ、利用者DB34Aに格納される。
【0031】
(B)利用条件DB34B
図3は、利用条件DB34Bのレイアウトの一例を示す図である。
図3に示すように、利用条件DB34Bは、カード番号フィールド301、期間フィールド302、回数フィールド303、金額フィールド304、店舗フィールド305、端末フィールド306、起動フィールド307、及び有効フィールド308を少なくとも有している。
【0032】
カード番号フィールド301には、各利用者のクレジットカードのカード番号が格納される。また、期間フィールド302、回数フィールド303、及び金額フィールド304には、クレジットカードの利用が可能な期間、回数の上限、及び金額の上限がそれぞれ格納される。また、店舗フィールド305には、クレジットカードの利用が可能な仮想店舗を識別する店舗IDが格納される。
【0033】
端末フィールド306には、利用者が利用可能な利用者端末4を特定したか否かを示す情報が格納される。本実施の形態では、特定された場合は“1”が、特定されていない場合は“0”が、それぞれ端末フィールド306に格納される。利用者がこの特定を行った場合、特定した利用者端末4を用いた場合のみクレジットカードの利用が可能になる。
【0034】
起動フィールド307には、利用者が特定のプログラム(専用アプリ)の起動とクレジットカードの利用とを関連付けるか否かを示す情報が格納される。本実施の形態では、関連付けがされた場合は“1”が、関連付けがされていない場合は“0”が、それぞれ起動フィールド307に格納される。利用者がこの関連付けを行った場合、専用アプリが起動されている場合にのみクレジットカードの利用が可能になる。
【0035】
有効フィールド308には、設定されている利用条件が有効であるか否かを示す情報が格納される。本実施の形態では、有効である場合は“1”が、無効である場合は“0”が、それぞれ有効フィールド308に格納される。利用条件を満たしたクレジットカードの利用がなされた場合、及び設定された期間が経過した場合等に、その利用条件は無効であると判断され、“0”が有効フィールド308に格納されることになる。
【0036】
(C)店舗DB34C
店舗DB34Cには、仮想店舗の名称及び連絡先等の各種情報が、各仮想店舗を識別するための店舗IDと対応付けられて格納されている。
【0037】
(D)条件外履歴DB34D
条件外履歴DB34Dには、利用条件を満足しない取引、すなわち利用条件の範囲外と判定された取引の履歴である条件外履歴が格納される。この条件外履歴には、当該取引に係るクレジットカードのカード番号及び仮想店舗の店舗IDが含まれている。
【0038】
(E)不正利用DB34E
不正利用DB34Eには、後述するようにして不正利用の可能性があると判定された仮想店舗及びクレジットカードに関する不正利用情報が格納されている。この不正利用情報には、当該仮想店舗の店舗ID及び当該クレジットカードのカード番号が含まれている。
【0039】
(F)利用履歴DB34F
利用履歴DB34Fには、各利用者によるクレジットカードの利用履歴が格納されている。この利用履歴には、クレジットカードのカード番号及び仮想店舗の店舗IDが含まれている。
【0040】
なお、上記のとおり、本実施の形態では事前申告システム3が1台のコンピュータで構成されているが、これに限定されるわけではなく、複数台のコンピュータによる分散システムによって事前申告システム3が構成されていてもよい。
【0041】
[カード決済システムの動作]
次に、上述したように構成された本実施の形態のカード決済システムの動作について、フローチャート等を参照しながら説明する。以下では、(1)利用者の事前申告により利用条件の設定を行う利用条件設定処理、(2)クレジットカードの利用が行われる場合に実行されるカード決済処理、(3)不正利用の可能性について警告するための不正利用警告処理、(4)利用条件の事前申告を利用者に促すための事前申告催促処理、及び(5)利用条件の設定に伴って各利用者に付与される特典に関する特典情報を提供するための特典情報提供処理の各処理について説明する。
【0042】
(1)利用条件設定処理
仮想店舗においてクレジットカードを利用する各利用者は、その利用を行う前に、利用条件の設定を行うことができる。以下、その設定を行う場合に実行される利用条件設定処理について説明する。
【0043】
図4は、利用条件設定処理の手順を示すフローチャートである。
図4に示すとおり、まず利用者端末4が、利用者から受け付けた指示にしたがって、利用条件の設定要求を事前申告システム3に対して送信する(S101)。この設定要求には、利用者のクレジットカードを特定できる情報(カード番号又は利用者の識別ID等)が含まれている。
【0044】
事前申告システム3は、利用者端末4から設定要求を受信した場合(S201)、利用条件DB34Bを参照した上で(S202)、利用条件の設定を受け付けるための利用条件設定画面に関する利用条件設定画面情報を生成する(S203)。ここで、事前申告システム3は、受信した設定要求に含まれる情報に基づいてクレジットカードのカード番号を特定し、そのカード番号に係る利用条件情報が利用条件DB34Bに存在するか否かを確認する。当該利用条件情報が存在する場合は、ステップS203においてその利用条件情報を含む利用条件設定画面情報が生成される。事前申告システム3は、生成した利用条件設定画面情報を利用者端末4に対して送信する(S204)。
【0045】
利用者端末4は、事前申告システム3から利用条件設定画面情報を受信した場合(S102)、その利用条件設定画面情報を用いて、利用条件設定画面を表示部に表示する(S103)。
【0046】
図5は、利用条件設定画面の表示例を示す図である。
図5に示すように、利用条件設定画面1001には、利用者の氏名及びクレジットカードのカード番号を表示する表示欄1002と、利用条件の設定履歴を表示する表示欄1003と、各利用条件を入力するための入力欄1004と、設定を指示するための設定ボタン1005とが表示されている。なお、表示欄1003には、利用条件の設定履歴がある場合、すなわち当該カード番号に係る利用条件情報が利用条件DB34Bに存在する場合にのみ、設定履歴が示される。
【0047】
利用者は、利用者端末4が備える入力部を用いて、所望の利用条件を入力欄1004に入力する。例えば、利用者は、特定の期間でのみ利用可能とする場合はその期間(日単位、時間単位など任意の期間)を、回数・金額の上限を設定する場合はその上限を、利用可能な仮想店舗を特定する場合はその店舗名を、利用可能な端末を特定する場合はその旨を、専用アプリの起動時のみ利用可能にする場合はその旨を、それぞれ入力する。
【0048】
上記のようにして利用条件の入力を行う場合、利用者は、表示欄1003に表示されている設定履歴を参考にすることができる。これにより、利用条件の入力の容易化が図られる。なお、各設定履歴を選択可能に表示し、利用者により特定の設定履歴が選択された場合、その設定履歴と同一の利用条件が入力欄1004に自動的に入力されるようになっていてもよい。
【0049】
このようにして利用条件の入力が行われた後、利用者は、設定ボタン1005をクリックする。これにより、利用条件の入力の受付が完了する。
【0050】
利用者端末4は、上記のようにして利用条件の入力を受け付けた場合(S104)、その利用条件を含む利用条件入力情報を事前申告システム3に対して送信する(S105)。事前申告システム3は、利用者端末4から利用条件入力情報を受信した場合(S205)、その利用条件入力情報に含まれる各利用条件を、利用条件DB34Bに登録し(S206)、処理を終了する。
【0051】
その後、事前申告システム3は、オーソリシステム2に対して、利用条件の事前申告がなされたことを示す事前申告済情報を送信する。この事前申告済情報には、利用条件の事前申告がなされているクレジットカードのカード番号が含まれている。オーソリシステム2は、この事前申告済情報を記憶装置に記憶しておく。
【0052】
なお、上記では、オーソリシステム2が利用条件の設定の可否について判断していないが、そのような判断を行うようにしてもよい。具体的には、事前申告システム3から事前申告済情報を受信した場合に、オーソリシステム2が事前申告された利用条件の内容を確認し、その利用条件の範囲内でクレジットカードが利用された場合に利用限度額の残高が不足しないか等を判定する。その結果、利用限度額が不足する等と判定された場合、オーソリシステム2は当該利用条件が適切ではないと判断し、その旨を事前申告システム3に通知する。この通知を受けた事前申告システム3は、当該利用条件を利用条件DB34Bから削除する。これにより、不適切な利用条件が設定されることを防止することができる。
【0053】
また、上記のとおり事前申告システム3による利用条件の設定後にオーソリシステム2が当該利用条件の適否を判断するのではなく、その設定前に当該判断を行うようにしてもよい。具体的には、事前申告システム3が利用条件入力情報を受信した場合(S206)、その利用条件入力情報に含まれる各利用条件をオーソリシステム2に対して送信し、これを受けたオーソリシステム2が上記と同様にして各利用条件の適否を判断するようにしてもよい。
【0054】
(2)カード決済処理
各利用者が仮想店舗にてクレジットカードを利用する場合、以下のカード決済処理が実行される。
図6A及び
図6Bは、カード決済処理の手順を示すフローチャートである。利用者は、利用者端末4を用いて特定の仮想店舗の店舗サーバ5にアクセスし、その仮想店舗で販売されている商品の購入手続を行う。これにより、利用者端末4は、購入予定の商品を特定した購入希望情報を店舗サーバ5に対して送信する(S301)。この購入希望情報には、利用者端末4の端末ID、及び専用アプリを用いてアクセスされている場合はそのことを示す情報が含まれている。
【0055】
店舗サーバ5は、利用者端末4から購入希望情報を受信した場合(S401)、その購入希望情報にて特定される商品の代金支払いについてクレジットカードを利用できるか否かを確認するために、クレジットカードの利用可否の判定を要求する利用可否要求をオーソリシステム2に対して送信する(S402)。この利用可否要求には、クレジットカードのカード番号及び支払金額が含まれている。
【0056】
オーソリシステム2は、店舗サーバ5から利用可否要求を受信すると(S501)、記憶装置に記憶されている事前申告済情報を参照して、その利用可否要求に含まれているカード番号について利用条件の事前申告がなされているか否かを確認することによって、利用条件の事前申告の有無を判定する(S502)。
【0057】
ステップS502において利用条件の事前申告がなされてないと判定された場合(S502でNO)、オーソリシステム2は、通常の取引と同様にオーソリ処理を実行する(S503)。その結果、クレジットカードの利用が承認された場合(S504でYES)、オーソリシステム2は、仮売上として処理する等の所定の決済処理を実行した上で(S505)、クレジットカードの利用が可能であることを示す利用可否情報を店舗サーバ5に対して送信する(S506)。他方、クレジットカードの利用が承認されなかった場合(S504でNO)、オーソリシステム2は、クレジットカードの利用ができないことを示す利用可否情報を店舗サーバ5に対して送信する(S506)。
【0058】
店舗サーバ5は、オーソリシステム2から利用可否情報を受信した場合(S403)、その利用可否情報を利用者端末4に対して送信する(S404)。利用者端末4は、この利用可否情報を受信すると(S302)、その利用可否情報に示される利用可否結果を表示部に表示する(S303)。
【0059】
また、ステップS502において事前申告がなされていると判定された場合(S502でYES)、オーソリシステム2は、設定されている利用条件を満足する内容の利用であるか否かの確認を要求する条件確認要求を事前申告システム3に対して送信する(S507)。
【0060】
事前申告システム3は、オーソリシステム2から条件確認要求を受信すると(S601)、利用条件DB34Bを参照し(S602)、今回のクレジットカードの利用が利用条件を満足しているか否かを判定する(S603)。この判定は、設定されている利用条件に応じて異なる。例えば、期間・回数・金額・仮想店舗について利用条件が設定されている場合は、その期間内の利用であるか、回数・金額の上限を超えていないか、特定されている仮想店舗と同一であるか等を確認することにより、利用条件を満足しているか否かが判定される。また、利用条件によって端末が特定されている場合であれば、利用者端末4の端末から送信されてきた購入希望情報に基づいて利用者端末4の端末IDを特定し、その端末IDと利用者DB34Aに格納されている端末IDとが一致するか否かを確認することにより、利用条件を満足しているか否かが判定される。さらに、専用アプリの起動時のみ利用可能にするとの利用条件が設定されている場合は、利用者端末4から送信されてきた購入希望情報から専用アプリの実行の有無を判断し、その結果にしたがって利用条件を満足しているか否かが判定される。
【0061】
ステップS603において、利用条件を満足すると判定した場合(S603でYES)、事前申告システム3は、仮売上として処理する等の所定の決済処理を実行した上で(S604)、クレジットカードの利用が可能であることを示す利用可否情報をオーソリシステム2に対して送信する(S606)。他方、利用条件を満足しないと判定した場合(S603でNO)、事前申告システム3は、条件外履歴DB34Dに条件外履歴を登録した上で(S605)、クレジットカードの利用ができないことを示す利用可否情報をオーソリシステム2に対して送信する(S606)。
【0062】
オーソリシステム2は、事前申告システム3から利用可否情報を受信した場合(S508)、その利用可否情報を店舗サーバ5に対して送信する(S509)。同様にして、店舗サーバ5は、利用可否情報を受信し(S405)、これを利用者端末4に対して送信する(S406)。利用者端末4は、この利用可否情報を受信すると(S304)、その利用可否情報に示される利用可否結果を表示部に表示する(S305)。
【0063】
上記のとおり、利用条件の事前申告がない場合は通常どおりにオーソリ処理を行う一方で、利用条件の事前申告がある場合はオーソリ処理を実行せずに決済を行うことができる。これにより、オーソリ処理の件数の低減化を図ることができる。
【0064】
また、利用条件の事前申告がある場合は、その利用条件を満足するときのみ決済処理が行われ、満足しない場合はクレジットカードを利用することができない。利用条件の事前申告を行った利用者以外の第三者は、通常その利用条件を知らないため、利用条件を満足するような取引を行うことは困難だといえる。したがって、第三者による不正利用を防止することが可能になる。
【0065】
(3)不正利用警告処理
上記のとおり、利用条件を満足しない取引があった場合、条件外履歴DB34Dに条件外履歴が登録される。事前申告システム3は、この条件外履歴DB34Dに登録されている条件外履歴に基づいて、下記の不正利用警告処理を実行する。
【0066】
図7は、不正利用警告処理の手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、事前申告システム3はまず、条件外履歴DB34Dを参照し(S701)、利用条件を満足しない取引が所定数以上となっている仮想店舗又はクレジットカードを特定する(S702)。
【0067】
真正の利用者による利用であれば、利用条件を満足しない取引を繰り返し行うことは稀であるといえるため、利用条件を満足しない取引が所定数以上となっているクレジットカードについては不正利用の可能性が高いと考えられる。また、利用条件を満足しない取引が繰り返し行われている仮想店舗についても、不正利用の可能性が高いといえる。そこで、事前申告システム3は、ステップS702にて特定された仮想店舗又はクレジットカードは不正利用の可能性が高いと判断し、その仮想店舗の店舗ID又はクレジットカードのカード番号を含む不正利用情報を不正利用DB34Eに登録する(S703)。
【0068】
次に、事前申告システム3は、不正利用DB34Eに登録されている不正利用情報に基づいて、不正利用の可能性が高い仮想店舗又はクレジットカードを特定した警告情報を生成し(S704)、これを送信する(S705)。この送信先は、不正利用の監視を行っている担当者であり、例えば電子メール等の手段を用いて当該担当者に警告情報が送信される。これにより、この担当者は、不正利用の可能性が高い仮想店舗又はクレジットカードを把握することできる。
【0069】
(4)事前申告催促処理
不正利用の可能性が高い仮想店舗においてクレジットカードの利用を行ったことがある利用者は、不正利用に巻き込まれるおそれが高いといえる。そのような不正利用に巻き込まれないようにするためには、利用条件を事前申告しておくことが好ましい。事前申告システム3は、以下の事前申告催促処理を実行することによって、このような利用者に対して利用条件の事前申告を催促することができる。
【0070】
図8は、事前申告催促処理の手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、事前申告システム3はまず、不正利用DB34Eを参照して、不正利用の可能性が高い仮想店舗を特定する(S801)。次に、事前申告システム3は、利用履歴DB34Fを参照して、ステップS801にて特定された仮想店舗での利用実績があるクレジットカードを特定する(S802)。
【0071】
次に、事前申告システム3は、利用条件DB34Bを参照して、ステップS802にて特定されたクレジットカードの中から、まだ利用条件の事前申告がなされていないクレジットカード、すなわち催促対象のカードを特定する(S803)。そして、事前申告システム3は、利用条件の事前申告を催促するための事前申告催促情報を生成し(S804)、その事前申告催促情報を、ステップS803にて特定されたクレジットカードの利用者宛に送信する(S805)。この送信は、例えば電子メール等を用いて行われる。
【0072】
上記の事前申告催告情報を受け取った利用者は、自身が不正利用に巻き込まれるおそれがあること、及びその対策として利用条件の事前申告を行うことが可能であることを知ることができる。この事前申告催促情報にしたがって利用条件の事前申告がなされることにより、事前申告の促進が図られる。
【0073】
(5)特典情報提供処理
上記のように、本実施の形態の場合、利用条件の設定がなされたクレジットカードの利用については、オーソリ処理を実行する必要がなくなるため、オーソリ処理の件数を減らすことができる。オーソリ処理の件数を減らすことは、システムの負荷の低下につながるため、システムを運用するカード会社にとっては大きなメリットだといえるが、クレジットカードの利用者にとってはメリットとはいえない。そのため、本実施の形態では、利用条件の事前申告を行った場合、例えば利用ポイントがアップする等の所定の特典を利用者に付与することにする。これにより、利用者にとってもメリットが生じるため、利用条件の事前申告の促進が図られることになる。以下の、特典情報提供処理は、そのように特典が付与されることを利用者に通知するための処理である。
【0074】
図9は、特典情報提供処理の手順を示すフローチャートである。
図9に示すように、事前申告システム3はまず、利用者DB34A及び利用条件DB34Bを参照して(S901)、利用条件の事前申告がなされていないクレジットカード、すなわち利用条件が設定されていないクレジットカードを特定する(S902)。
【0075】
次に、事前申告システム3は、利用条件の事前申告が行われた場合に付与される特典の内容を示す特典情報を生成し(S903)、その特典情報を、ステップS902にて特定されたクレジットカードの利用者宛に送信する(S904)。この送信は、例えば電子メール等を用いて行われる。
【0076】
上記の特典情報を受け取った利用者は、利用条件の事前申告を行った場合に特典が得られることを知ることができる。この特典情報にしたがって利用条件の事前申告がなされることにより、事前申告の促進が図られる。
【0077】
その他にも、例えば特別なセールが仮想店舗で実施される場合、事前申告システム3がそのセールの実施予定を仮想店舗側から事前に取得しておき、その仮想店舗での利用実績があるクレジットカードの利用者宛に特典情報を送信するようにしてもよい。この特典情報にしたがって利用条件の事前申告がなされることによって、セール期間中にオーソリ処理の件数が急増することを防止することができ、その結果システムの負荷を軽減することができる。
【0078】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、利用条件DBを事前申告システム3が有しているが、事前申告を行った利用者端末4が同様のデータベースを有していてもよい。この場合、クレジットカードの利用時、すなわちカード決済処理において、利用者端末4が、当該データベースに格納されている利用条件を、店舗サーバ5及びオーソリシステム2を介して事前申告システム3に送信する。事前申告システム3は、このようにして送信されてきた利用条件を用いて、上記のステップS603と同様に利用条件を満足するか否かを判定し、その後の処理を続ける。これによっても、上記の実施の形態の場合と同様に、利用条件の事前申告がある場合はオーソリ処理を実行することなく決済を行うことができるので、オーソリ処理の件数の低減化を図ることができる。なお、上記の実施の形態の場合と同様、オーソリシステム2が利用条件の設定の可否について判断し、その結果適切な利用条件であると判断された場合にのみ、利用者端末4のデータベースに利用条件が格納されるようにしてもよい。
【0079】
また、上記の実施の形態では、オーソリシステム2と事前申告システム3とが相互に通信可能に接続された別々のコンピュータシステムで構成されているが、これに限定されるわけではなく、例えば1つのコンピュータシステムでオーソリシステム2及び事前申告システム3が実現されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 カード決済システム
2 オーソリシステム
3 事前申告システム
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 ハードディスク
35 通信インタフェース
36 バス
34A 利用者データベース
34B 利用条件データベース
34C 店舗データベース
34D 条件外履歴データベース
34E 不正利用データベース
34F 利用履歴データベース
4 利用者端末
5 店舗サーバ
101 インターネット