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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/16 20060101AFI20220725BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220725BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20220725BHJP
   H01F 17/06 20060101ALI20220725BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20220725BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220725BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H05K1/16 B
H05K3/46 Z
H01F27/00 S
H01F17/06 D
H01F17/04 F
H01F17/00 D
H05K9/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018085072
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019192815
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】ガフ アントニー
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153106(JP,A)
【文献】特開2011-018505(JP,A)
【文献】実開平03-039821(JP,U)
【文献】特開2014-143233(JP,A)
【文献】特開2000-82626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/16
H05K 3/46
H01F 27/00
H01F 17/06
H01F 17/04
H01F 17/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回路体が絶縁層を介して積層方向に積層され、各絶縁層に形成された接続導体を介して層間接続された多層基板本体と、
少なくとも一部または全部が複数の前記回路体を挟んで積層方向に配置される磁性体と、を備え、
複数の前記回路体は、
入力側から配線方向に沿って第1方向に延在する第1延在部と、前記第1延在部の前記第1方向の端部から前記第1方向と反対側の第2方向に向けて折り返す第1折り返し部とで構成される第1回路体と、
出力側から前記第2方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部の前記第2方向の端部から前記第1方向に向けて折り返す第2折り返し部とで構成される第2回路体と、を含み、
前記第1回路体及び前記第2回路体は、
前記第1折り返し部と前記第2折り返し部とが前記接続導体を介して層間接続された接続状態において、前記多層基板本体の前記積層方向及び前記配線方向と直交する幅方向に互いに隣接して複数配置され、
前記磁性体は、
前記多層基板本体の幅方向に複数配置された前記第1回路体及び前記第2回路体を、前記多層基板本体の一部と共に挟む、
ことを特徴とする基板。
【請求項2】
複数の前記回路体は、さらに、
GNDに接続されたGND回路体を含み、
前記第1回路体とGND回路体とは、コンデンサを介して互いに接続される
請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記磁性体は、少なくとも前記第1回路体及び前記第2回路体の外側を前記配線方向周りに連続して包囲する、
請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
前記磁性体は、シート状に形成され、かつ少なくとも前記第1回路体及び前記第2回路体を挟んで対向する積層方向に配置される、
請求項1または2に記載の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板には、回路設計等を変更することなくノイズを低減させる方法として、例えば、一対の板状の磁性体を、絶縁層上にパターン形成されたインダクタンス回路の上方、下方及び両側面から覆うように配置するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、複数の誘電体層を積層してなる積層基板には、内部にバンドパスフィルタを積層方向と直交する方向に並べて配置し、バンドパスフィルタが、直列に接続することで螺旋状に形成された複数のコイルパターンを有するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-18505号公報
【文献】特開2009-153106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の基板では、透磁率の高いフェライト製の磁性体を使用したとしても、高いインダクタンス値を得ることが困難であることから、例えば高周波ノイズを低減しきれないおそれがある。その結果、ノイズ対策用の部品を別途追加する必要が生じることから、コスト面で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、低コストでノイズを低減することができる基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る基板は、複数の回路体が絶縁層を介して積層方向に積層され、各絶縁層に形成された接続導体を介して層間接続された多層基板本体と、少なくとも一部または全部が複数の前記回路体を挟んで積層方向に配置される磁性体と、を備え、複数の前記回路体は、入力側から配線方向に沿って第1方向に延在する第1延在部と、前記第1延在部の前記第1方向の端部から前記第1方向と反対側の第2方向に向けて折り返す第1折り返し部とで構成される第1回路体と、出力側から前記第2方向に延在する第2延在部と、前記第2延在部の前記第2方向の端部から前記第1方向に向けて折り返す第2折り返し部とで構成される第2回路体と、を含み、前記第1回路体及び前記第2回路体は、前記第1折り返し部と前記第2折り返し部とが前記接続導体を介して層間接続された接続状態において、前記多層基板本体の前記積層方向及び前記配線方向と直交する幅方向に互いに隣接して複数配置され、前記磁性体は、前記多層基板本体の幅方向に複数配置された前記第1回路体及び前記第2回路体を、前記多層基板本体の一部と共に挟む、ことを特徴とする。
【0008】
上記基板において、複数の前記回路体は、さらに、GNDに接続されたGND回路体を含み、前記第1回路体とGND回路体とは、コンデンサを介して互いに接続されるものである。
【0009】
上記基板において、前記磁性体は、少なくとも前記第1回路体及び前記第2回路体の外側を前記配線方向周りに連続して包囲するものである。
【0010】
上記基板において、前記磁性体は、シート状に形成され、かつ少なくとも前記第1回路体及び前記第2回路体を挟んで対向する積層方向に配置されるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る基板によれば、低コストでノイズを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る基板の概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る基板の概略構成を示す平面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る回路体の概略構成を示す斜視図である。
図5図5は、第1実施形態に係る回路体の回路構成を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係る基板の概略構成を示す斜視図である。
図7図7は、第2実施形態に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る基板の概略構成を示す斜視図である。
図9図9は、第3実施形態に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。
図10図10は、第1実施形態の第1変形例に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。
図11図11は、第1実施形態の第2変形例に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。
図12図12は、第1実施形態の第2変形例に係る回路体の概略構成を示す斜視図である。
図13図13は、第1実施形態の第3変形例に係る回路体の概略構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る基板の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、いわゆる当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、下記実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0014】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る基板1Aについて図1図5を参照して説明する。なお、図4は、図2に示すA-A部分断面図に相当する。図1図4図6図13も同様)おいて、基板1A(基板1B~1Eも同様)のX方向を「幅方向」、Y方向を「奥行き方向」、Z方向を「積層方向」と呼ぶものとする。幅方向(X方向)、奥行き方向(Y方向)、及び積層方向(Z方向)は、相互に直交する。ここで積層方向は、後述する多層基板本体3の各層が積層される方向に相当する。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0015】
図1及び図2に示す基板1Aは、例えば、自動車等の車両に搭載される各種電子部品ユニットに適用されるものである。電子ユニットは、例えば、各種電子部品が実装された基板1Aを含んで構成される。電子部品は、例えば、ヒューズ、コンデンサ、リレー、抵抗、トランジスタ、トランス、コイル、IPS(Intelligent Power Switch)、マイコン等を含むECU(Electronic Control Unit;電子制御ユニット)、各種センサ、LED(Light Emitting Diode)、スピーカ等であるが、これらに限られない。本実施形態の基板1Aは、多層基板本体3と、磁性体4とを含んで構成される。
【0016】
多層基板本体3は、上述した各種電子部品が実装され、これらを電気的に接続する電気回路を構成するものである。多層基板本体3は、例えば、図1及び図2に示すように、幅方向及び奥行き方向に沿って延在し略矩形の板状に形成される。多層基板本体3は、例えば、積層方向の両側の実装面31が形成され、当該実装面31に各種電子部品が実装される。多層基板本体3は、いわゆるプリント回路基板(Printed Circuit Board)である。多層基板本体3は、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、紙エポキシ樹脂やセラミック等の絶縁性の材料からなる絶縁層32に、銅等の導電性の材料によって配線パターン(プリントパターン)が印刷されることで当該配線パターンによって回路体33が構成される。多層基板本体3は、当該多層基板本体3を積層方向に沿って貫通して形成されるスルーホール(不図示)を有する。スルーホールには、電子部品のリード線や端子が挿入されハンダ付け等によって回路体33に電気的に接続される。
【0017】
多層基板本体3は、複数の回路体33が絶縁層32を介して積層方向に積層され、各絶縁層32に形成された接続導体36を介して層間接続されたものである。多層基板本体3は、図3に示すように、回路体33が印刷された絶縁層32を複数積層させることで、複数の絶縁層32と複数の回路体33とが交互に積層されて多層化された、いわゆる多層基板を構成する。多層基板本体3は、層分の絶縁層32に対して交互に回路体33による導体層が積層されることで、当該回路体33による導体層が層分積層されている。回路体33による導体層は、例えば、多層基板本体3において、積層方向の一方側から他方側に向かって第1層34A、第2層34B、第3層34Cの順に積層されて構成される。接続導体36は、例えばビア(via)であり、複数の回路体33間を電気的に接続するものである。
【0018】
多層基板本体3は、積層方向と直交する幅方向に対して間隔をあけて形成された一対の貫通孔35を有する。各貫通孔35は、多層基板本体3を複数の回路体33の積層方向に沿って貫通して設けられる中空部分である。各貫通孔35は、後述する磁性体4が挿通され組み付けられる部分を構成する。各貫通孔35は、積層方向と直交する方向の断面形状が略矩形状に形成される。一対の貫通孔35は、多層基板本体3におけるノイズ低減対象部位101を挟んで幅方向に対向して形成される。ノイズ低減対象部位101とは、多層基板本体3において磁性体4によるノイズ低減の対象となる複数の回路体33を含む部位である。本実施形態のノイズ低減対象部位101は、多層基板本体3において、一対の貫通孔35に挟まれた部位である。
【0019】
複数の回路体33は、図2及び図3に示すように、第1回路体33a,33b,33cと、第2回路体33d,33e,33fとを含んで構成される。ここで、本実施形態における3つの第1回路体33a~33cは同一形状を有することから、特に断りのない限り、第1回路体33aについて説明する。同様に、本実施形態における3つの第2回路体33d~33fは同一形状を有することから、特に断りのない限り、第2回路体33dについて説明する。第1回路体33a及び第2回路体33dは、図4に示すように、それぞれが略J字状に形成されている。第1回路体33aは、入力側から配線方向に沿って第1方向に延在する第1延在部33aaと、第1延在部33aaの第1方向の端部から第1方向と反対側の第2方向に向けて折り返す第1折り返し部33abとで構成される。第2回路体33dは、出力側から第2方向に延在する第2延在部33daと、第2延在部33daの第2方向の端部から第1方向に向けて折り返す第2折り返し部33dbとで構成される。第1折り返し部33ab及び第2折り返し部33dbは、図示のように、それぞれが円弧状またはU字状に形成されている。ここで入力側は、例えば、信号源から信号が入力される側であり、電源から電力が供給される側である。出力側は、例えば、信号が電子部品に出力される側であり、電力が負荷に出力される側である。第1方向は、配線方向に沿って一方(入力側)から他方(出力側)に向かう方向であり、第2方向は、配線方向に沿って他方から一方に向かう方向である。なお、本実施形態では、入力側と出力側が反対方向に向けて設定されているが、これに限定されず、同一方向に向けて設定されていてもよいし、入力側に向かう方向と出力側に向かう方向とが交差する方向に向けて設定されていてもよい。回路体33の配線方向は、多層基板本体3のノイズ低減対象部位101において、少なくとも第1延在部33aa及び第2延在部33daが延在する方向に相当し、ここでは、一対の貫通孔35が対向する幅方向と直交する奥行き方向に相当する。
【0020】
本実施形態では、第1回路体33aと第2回路体33dとを接続導体36を介して接続して2ターン(1回巻)のコイル状導体が形成されている。同様に、第1回路体33bと第2回路体33eとを接続導体36を介して接続して2ターンのコイル状導体が形成されている。同様に、第1回路体33cと第2回路体33fとを接続導体36を介して接続して2ターンのコイル状導体が形成されている。本実施形態の第1回路体33Aは、第1層34Aにおいて、各第1回路体33a,33b,33cが独立した回路系統を構成する。そして、第2回路体33Bは、第2層34Bにおいて、各第2回路体33d,33e,33fが独立した回路系統を構成する。第1回路体33aと第2回路体33dとは、接続導体36を介して層間接続され、同一の回路系統を構成する。第1回路体33aと第2回路体33dとは、例えば、配線20A上で48V電源に接続された電源回路を構成する。第1回路体33bと第2回路体33eとは、接続導体36を介して層間接続され、同一の回路系統を構成する。第1回路体33bと第2回路体33eとは、例えば、配線20B上で接地用のGND線を構成する。第1回路体33cと第2回路体33fとは、接続導体36を介して層間接続され、同一の回路系統を構成する。第1回路体33cと第2回路体33fとは、例えば、配線20C上で12V電源に接続された電源回路を構成する。
【0021】
複数の回路体33は、GNDに接続されたGND回路体37を含んで構成される。GND回路体37は、例えば、図5に示すように、第1回路体33b及び第2回路体33eを含んで構成される。本実施形態の第1回路体33aとGND回路体37(第1回路体33b)とは、コンデンサCを介して互いに電気的に接続される。同様に、第1回路体33cとGND回路体37とは、コンデンサCを介して互いに電気的に接続される。複数の回路体33は、ノイズ低減対象部位101において、1つが配線20A上で48V電源に接続された電源回路を構成し、1つが配線20B上で接地されたGNDを構成し、1つが配線20C上で12V電源に接続された電源回路を構成する。配線20A,20Cは、基板1Aに接続される各種機器に所定の電圧の電力を伝送するための伝送路である。配線20Bは、基板1Aに接続される各種機器のいわゆるアース(接地)をとるための伝送路である。本実施形態の配線20A,20B,20Cは、それらの並びが、積層方向と直交する方向(幅方向)に48V電源-GND-12V電源の順で配置される。これにより、GNDの共通化を図ることができる。
【0022】
磁性体4は、少なくとも一部または全部が複数の回路体33を挟んで積層方向に配置されることで、各回路体33におけるノイズを低減するものである。磁性体4は、例えば、透磁率の高い磁性体であるフェライトによって構成される。本実施形態の磁性体4は、貫通孔35を介して多層基板本体3に組み付けられ、多層基板本体3において一対の貫通孔35に挟まれた部位、すなわち、複数の回路体33が積層されているノイズ低減対象部位101の外側を連続して包囲する。言い換えると、磁性体4は、少なくとも第1回路体33a及び第2回路体33dの外側を配線方向周りに連続して包囲する。磁性体4は、複数の分割体、例えば、2つの分割体41,42を組み合わせることで、複数の回路体33の外側を当該複数の回路体33の配線方向周りに連続して包囲するように略環状に形成される。分割体41,42は、それぞれの奥行き方向から見た断面形状が略U字形状に形成される。
【0023】
上述した基板1Aは、延在部(33aa,33da)と折り返し部(33ab,33db)とで構成される複数の回路体33を接続導体36を介して接続することで積層方向を中心軸とする1回巻のコイル状導体を形成し、当該コイル状導体を積層方向から磁性体4で挟んで構成される。このコイル状導体のインピーダンスZは、下記の式(1)で求められる。
Z=R+2πfL ・・・(1)
R:抵抗[mΩ]、L:インダクタンス[μH]、f:周波数[HZ]
コイル状導体のインダクタンスLは、下記の式(2)で求まることから、透磁率、巻数、断面積を増やすことでインピーダンスZをより高くすることができる。
L=μN|S|/l ・・・(2)
μ:透磁率、N:巻数、l:コイル状導体のコイル長、|S|:コイル状導体の断面積
したがって、延在部と折り返し部とで構成される複数の回路体33を接続導体36を介して接続しコイル状導体を形成することで、インピーダンスZを高くすることができ、簡易な構成で周波数の高いノイズ成分が通りにくいノイズフィルタを得ることができる。
【0024】
以上説明した基板1Aは、複数の回路体33が絶縁層32を介して積層方向に積層され、各絶縁層32に形成された接続導体36を介して層間接続された多層基板本体3と、少なくとも一部または全部が複数の回路体33を挟んで積層方向に配置される磁性体4とを備える。複数の回路体33は、少なくとも第1回路体33aと第2回路体33dとを含むものである。第1回路体33aは、入力側から配線方向に沿って第1方向に延在する第1延在部33aaと、第1延在部33aaの第1方向の端部から第1方向と反対側の第2方向に向けて折り返す第1折り返し部33abとで構成される。第2回路体33dは、出力側から第2方向に延在する第2延在部33daと、第2延在部33daの第2方向の端部から第1方向に向けて折り返す第2折り返し部33dbとで構成される。上記構成により、延在部と折り返し部とで構成される複数の回路体33を接続導体36を介して接続しコイル状導体を形成してインピーダンスZを高くすることができ、簡易な構成で周波数の高いノイズ成分が通りにくいノイズフィルタを得ることができる。この結果、低コストでノイズを効果的に低減し、EMC(Electromagnetic Compatibirity)性能を向上させることができる。また、ノイズ対策用の部品を追加する必要がないので、基板全体のサイズを維持または小型化することができる。
【0025】
また、基板1Aは、複数の回路体33が、さらに、GNDに接続されたGND回路体37を含むものである。第1回路体33aとGND回路体37とは、コンデンサCを介して互いに接続される。上記構成により、例えば、電源回路とGNDとの間にコンデンサCが接続されることで、電源回路上で生じるノイズを除去することができる。特に、ノイズ源が信号源に対して直列に接続され、信号線を通して負荷に伝わるノーマルモードノイズ、及び、信号線とGND間にノイズ源が存在し、2本の信号線に伝わるコモンモードノイズを除去することができる。
【0026】
また、基板1は、磁性体4が、少なくとも第1回路体33a及び第2回路体33dの外側を配線方向周りに連続して包囲する。これにより、各回路体33の通電時に当該磁性体4に磁束が発生し、電流エネルギが磁気エネルギへ変換されると共に、電磁誘導によって再び磁気エネルギから電流エネルギに戻ろうとしたときに、磁気損失が起き、各回路体33におけるノイズ電流の一部が抑制される。この結果、基板1Aは、当該磁性体4によって外周側を包囲された各回路体33のノイズが低減される。
【0027】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る基板1Bについて図6及び図7を参照して説明する。なお、図7は、図6のB-B部分断面図に相当する。基板1Bは、その構成が、上記基板1Aに対して、一対のシート状の磁性体14が追加されている点で異なる。なお、以下の実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成要素には共通の符号を付すと共に、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する。
【0028】
基板1Bは、多層基板本体3と、磁性体4と、一対の磁性体14とを含んで構成される。各磁性体14は、例えば、幅方向及び奥行き方向に沿って延在する矩形のシート状(または薄板状)に形成される。各磁性体14は、磁性体4と同様に、透磁率の高いフェライトによって構成される。各磁性体14は、磁性体4の透磁率と同等以上の透磁率を有することが好ましいが、これに限定されるものではない。一対の磁性体14は、略環状に形成された磁性体4の内側に配置される。一対の磁性体14は、磁性体4の内側に配置されているが、例えば、各磁性体14の奥行き方向の幅が磁性体4の奥行き方向の幅と同一または当該幅よりも長く延在して形成されていてもよい。一対の磁性体14は、略環状に形成された磁性体4の内側に配置され、かつノイズ低減対象部位101を挟んで対向する位置に配置される。さらに言うと、一対の磁性体14は、各磁性体14の少なくとも一部または全部が磁性体4の内側に配置され、かつ少なくとも第1回路体33a及び第2回路体33dを挟んで対向する積層方向に配置される。
【0029】
以上説明した基板1Bは、磁性体14が、磁性体4の内側にあって、少なくとも第1回路体33a及び第2回路体33dを挟んで対向する積層方向に配置される。このように、磁性体14を追加配置することで、透磁率μが増加してコイル状導体のインダクタンスLを増加させることができ、上記式(1)によりインピーダンスZをより高くすることができる。基板1Bは、基板1Aに対して部品点数が増えるものの、上記第1実施形態の基板1Aと同等以上の効果を得ることが可能となる。例えば、磁性体4のみが配置された基板1Aに対してインピーダンスZがおよそ2倍になり、高周波ノイズを効率よく低減することが可能となる。
【0030】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る基板1Cについて図8及び図9を参照して説明する。なお、図9は、図8のC-C部分断面図に相当する。基板1Cは、その構成が、磁性体4に代えて、一対のシート状の磁性体14が配置されている点で上記基板1Aと異なる。
【0031】
基板1Cは、多層基板本体3と、一対の磁性体14とを含んで構成される。本実施形態の多層基板本体3は、一対の貫通孔35が形成されていない。すなわち、多層基板本体3は、ノイズ低減対象部位101を挟んで幅方向に対向して形成される一対の貫通孔35を有していない。
【0032】
一対の磁性体14は、ノイズ低減対象部位101を挟んで対向する位置に配置される。本実施形態のノイズ低減対象部位101は、多層基板本体3の積層方向に対向して配置される一対の磁性体14で挟まれた部分である。一対の磁性体14は、少なくとも第1回路体33a及び第2回路体33dを挟んで対向する積層方向に配置される。
【0033】
以上説明した基板1Cは、磁性体14が、少なくとも第1回路体33a及び第2回路体33dを挟んで対向する積層方向に配置される。このように、一対のシート状の磁性体14を、複数の回路体33を挟んで対向する積層方向に配置することで、磁性体14でコイル状導体を広く覆うことが可能となる。この結果、透磁率μが増加してコイル状導体のインダクタンスLを増加させることができ、上記式(1)によりインピーダンスZをより高くすることができ、上記第1実施形態の基板1Aと同等以上の効果を得ることが可能となる。ここで磁性体4は、図3に示すように、磁性体4の幅(幅方向)をW、内面側の積層方向の高さ(スリット高さ)をHとした場合、同一の幅Wでスリット高さHを小さくすると、高周波(例えば10MHz)において、式(1)によりインピーダンスZが高くなる。そこで、一対のシート状の磁性体14を、複数の回路体33を挟んで対向する積層方向に配置することで、磁性体4に比べて、磁性体14をノイズ低減対象部位101における複数の回路体33に接近させることが可能となる。この結果、コイル状導体のインダクタンスLを増加させてインピーダンスZを高くすることができ、上記第1実施形態の基板1Aと同等以上の効果を得ることが可能となる。
【0034】
[変形例]
上記第1実施形態では、基板1Aは、積層方向に隣り合う2つの導体層を接続して独立した回路系統を構成し、複数の当該回路系統が積層方向と直交する方向に並べて配置されているものについて説明したが、これに限定されるものではない。第1実施形態の第1変形例に係る基板1Dは、複数の当該回路系統が積層方向に沿って配置されている点で上記基板1Aとは異なる。図10は、第1実施形態の第1変形例に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。
【0035】
基板1Dは、多層基板本体3と、磁性体4とを含んで構成される。本実施形態の多層基板本体3は、図10に示すように、層分の絶縁層32に対して交互に回路体33による導体層が積層されることで、当該回路体33による導体層が7層分積層されている。回路体33による導体層は、多層基板本体3において、積層方向の一方側から他方側に向かって第1層34A、第2層34B、第3層34C、第4層34D、第5層34E、第6層34F、第7層34Gの順に積層されて構成される。第1層34A及び第2層34Bを構成する回路体33は、接続導体36を介して層間接続されている。第1層34Aは第1回路体33aを構成し、第2層34Bは第2回路体33dを構成する。第1回路体33a及び第2回路体33dは、ノイズ低減対象部位101において、例えば、配線20A上で48V電源に接続された電源回路を構成する。第3層34C及び第4層34Dを構成する回路体33は、接続導体36を介して層間接続されている。第3層34Cは第1回路体33bを構成し、第4層34Dは第2回路体33eを構成する。第1回路体33b及び第2回路体33eは、ノイズ低減対象部位101において、例えば、配線20B上で接地されたGND(GND回路体37)を構成する。第5層34E及び第6層34Fを構成する回路体33は、接続導体36を介して層間接続されている。第5層34Eは第1回路体33cを構成し、第6層34Fは第2回路体33fを構成する。第1回路体33c及び第2回路体33fは、ノイズ低減対象部位101において、例えば、配線20C上で12V電源に接続された電源回路を構成する。本実施形態の配線20A,20B,20Cは、それらの並びが、積層方向に48V電源-GND-12V電源の順で配置される。これにより、GNDの共通化を図ることができる。
【0036】
以上説明した基板1Dは、上記構成により、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、上記構成を、上記第2実施形態に係る基板1B、第3実施形態に係る基板1Cに適用しても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0037】
また、上記第1実施形態では、例えば信号等の比較的に小さな電流が流れる回路に適用されるものについて説明したが、これに限定されるものではなく、大電流が流れる回路に適用することも可能である。第1実施形態の第2変形例に係る基板1Eは、複数の回路体33を並列に接続して1つの独立した回路系統を構成する点で上記基板1Aとは異なる。図11は、第1実施形態の第2変形例に係る基板の概略構成を示す部分断面図である。図12は、第1実施形態の第2変形例に係る回路体の概略構成を示す斜視図である。
【0038】
基板1Eは、多層基板本体3と、磁性体4とを含んで構成される。本実施形態の多層基板本体3は、図11に示すように、層分の絶縁層32に対して交互に回路体33による導体層が積層されることで、当該回路体33による導体層が7層分積層されている。回路体33による導体層は、多層基板本体3において、積層方向の一方側から他方側に向かって第1層34A、第2層34B、第3層34C、第4層34D、第5層34E、第6層34F、第7層34Gの順に積層されて構成される。第1層34A、第2層34B、及び第3層34Cを構成する回路体33は、接続導体36を介して層間接続されている。言い換えると、第1層34A~第3層34Cは、3つの第1回路体33aで構成される。第4層34D、第5層34E、及び第6層34Fを構成する回路体33は、接続導体36を介して層間接続されている。言い換えると、第4層34D~第6層34Fは、3つの第2回路体33dで構成される。第1回路体33a及び第2回路体33dは、ノイズ低減対象部位101において、例えば、高圧電源に接続された電源回路、接地されたGND(GND回路体37)等を構成する。
【0039】
以上説明した基板1Eは、上記構成により、コイル状導体の断面積が大きくなり、回路体33の許容電流を上げることが可能となる。この結果、高い電力量を必要とする基板に適用することが可能となる。なお、上記構成を、上記第2実施形態に係る基板1B、上記第3実施形態に係る基板1Cに適用しても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0040】
なお、上記第1実施形態では、図4に示すように、第1回路体33aと第2回路体33dとを接続導体36を介して接続し2ターン(1回巻)のコイル状導体を形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、図13に示すように、第1回路体33aと第2回路体33dとの間に2つの回路体33g,33hを配置し、これらを接続導体36を介して接続して4ターン(2回巻)のコイル状導体を形成してもよい。回路体33gは、第2回路体33dと同様に、出力側から第2方向に延在する第2延在部33daと、第2延在部33daの第2方向の端部から第1方向に向けて折り返す第2折り返し部33dbとで構成される。回路体33hは、第1回路体33aと同様に、入力側から配線方向に沿って第1方向に延在する第1延在部33aaと、第1延在部33aaの第1方向の端部から第1方向と反対側の第2方向に向けて折り返す第1折り返し部33abとで構成される。上記構成により、コイル状導体のターン数、すなわち巻数を増やすことができるので、インピーダンスZをより高くすることができる。なお、コイル状導体のターン数は、偶数ターンに限定されるものではなく、奇数ターンであってもよい。
【0041】
また、上記第1実施形態では、第1折り返し部33ab及び第2折り返し部33dbは、それぞれが円弧状またはU字状に形成されているが、これらに限定されるものではなく、多角形状であってもよい。すなわち、第1回路体33aと第2回路体33dとを接続導体36を介して接続して形成されるコイル状導体の巻線部分が円形であっても多角形であってもよい。さらに、コイル状導体の巻線部分が円形や多角形を形成するものであれば、第1折り返し部33abや第2折り返し部33dbがどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B,1C,1D,1E 基板
3 多層基板本体
4,14 磁性体
20A,20B,20C 配線
32 絶縁層
33 回路体
33A,33a,33b,33c 第1回路体
33B,33d,33e,33f 第2回路体
35 貫通孔
36 接続導体(ビア)
37 GND回路体
41,42 分割体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13