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特許7109980超音波計測装置、超音波計測方法および部材の接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】超音波計測装置、超音波計測方法および部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20220725BHJP
   G01N 29/26 20060101ALI20220725BHJP
   G01N 29/07 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/26
G01N29/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018085359
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019191043
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 岳志
(72)【発明者】
【氏名】山本 摂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009313(JP,A)
【文献】特開2012-137471(JP,A)
【文献】特開2012-006078(JP,A)
【文献】特開2013-242162(JP,A)
【文献】特開2013-040924(JP,A)
【文献】特開2014-048169(JP,A)
【文献】特開2010-194085(JP,A)
【文献】特開2009-186489(JP,A)
【文献】特開2014-119441(JP,A)
【文献】特開2008-286640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0217544(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、第1および第2の超音波を発生させる少なくとも一つの超音波発生部と、
前記第1および第2の超音波が前記被測定対象内で反射して得られる反射波を前記被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波受信箇所それぞれで受信する少なくとも一つの超音波受信部と、
前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を第1の超音波受信箇所で受信した第1の受信信号と、前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を第2の超音波受信箇所で受信した第2の受信信号とをそれぞれ収録する信号収録部と、
前記信号収録部に収録された前記第1および第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算部と、
を有し、
前記反射位置推定演算部は、
前記第1および第2の受信信号、前記第1の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部と、
前記第1および第2の受信信号、前記第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部と、
前記第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部で推定された結果と、前記第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部で推定された結果とに基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算部と、
を備えていることを特徴とする超音波計測装置。
【請求項2】
被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、第1および第2の超音波を発生させる少なくとも一つの超音波発生部と、
前記第1および第2の超音波が前記被測定対象内で反射して得られる反射波を前記被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波受信箇所それぞれで受信する少なくとも一つの超音波受信部と、
前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を第1の超音波受信箇所で受信した第1の受信信号と、前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を第2の超音波受信箇所で受信した第2の受信信号とをそれぞれ収録する信号収録部と、
前記信号収録部に収録された前記第1および第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算部と、
を有し、
前記反射位置推定演算部は、
前記第1の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて超音波の前記被測定対象内の反射位置を推定する第1の受信信号に基づく反射位置推定演算部と、
前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて超音波の前記被測定対象内の反射位置を推定する第2の受信信号に基づく反射位置推定演算部と、
前記第1の受信信号に基づく反射位置推定演算部で推定された結果と、前記第2の受信信号に基づく反射位置推定演算部で推定された結果とに基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算部と、
を備えていることを特徴とする超音波計測装置。
【請求項3】
前記反射位置推定演算部によって得られた前記被測定対象内の超音波反射位置を映像化する映像化処理部をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波計測装置。
【請求項4】
前記超音波受信部は、前記第1の超音波受信箇所および前記第2の超音波受信箇所で前記反射波を受信する受信時間範囲を設定可能に構成され、
前記超音波発生部は、前記超音波受信部が前記受信時間範囲の間に前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を受信可能なように当該第1および第2の超音波を発生させるように構成される、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の超音波計測装置。
【請求項5】
被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、第1および第2の超音波を発生させる超音波発生ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記被測定対象内で反射して得られる反射波の両方を前記被測定対象の第1の超音波受信箇所で第1の受信信号として受信する第1の超音波受信ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記被測定対象内で反射して得られる反射波の両方を前記被測定対象の前記第1の超音波受信箇所から離れた第2の超音波受信箇所で第2の受信信号として受信する第2の超音波受信ステップと、
前記第1の受信信号を収録する第1の受信信号収録ステップと、
前記第2の受信信号を収録する第2の受信信号収録ステップと、
前記第1の受信信号収録ステップで収録された前記第1の受信信号および前記第2の受信信号収録ステップで収録された前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算ステップと、
を有し、
前記反射位置推定演算ステップは、
前記第1および第2の受信信号、前記第1の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、
前記第1および第2の受信信号、前記第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、
前記第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果と、前記第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果とに基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算ステップと、
を備えていること、を特徴とする超音波計測方法。
【請求項6】
被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、第1および第2の超音波を発生させる超音波発生ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記被測定対象内で反射して得られる反射波の両方を前記被測定対象の第1の超音波受信箇所で第1の受信信号として受信する第1の超音波受信ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記被測定対象内で反射して得られる反射波の両方を前記被測定対象の前記第1の超音波受信箇所から離れた第2の超音波受信箇所で第2の受信信号として受信する第2の超音波受信ステップと、
前記第1の受信信号を収録する第1の受信信号収録ステップと、
前記第2の受信信号を収録する第2の受信信号収録ステップと、
前記第1の受信信号収録ステップで収録された前記第1の受信信号および前記第2の受信信号収録ステップで収録された前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算ステップと、
を有し、
前記反射位置推定演算ステップは、
前記第1の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて超音波の前記被測定対象内の反射位置を推定する第1の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップと、
前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて超音波の前記被測定対象内の反射位置を推定する第2の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップと、
前記第1の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップで推定された結果と、前記第2の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップで推定された結果とに基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算ステップと、
を備えていること、を特徴とする超音波計測方法。
【請求項7】
前記超音波発生ステップは、予め設定された受信時間範囲の間に前記第1の超音波受信ステップおよび前記第2の超音波受信ステップが実施されるように前記第1および第2の超音波を発生させる、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の超音波計測方法。
【請求項8】
接合対象部材に溶接により溶接部を形成するステップと、
前記接合対象部材および前記溶接部からなる接合部材の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、超音波励起用パルスレーザ光を照射して第1および第2の超音波を発生させる超音波発生ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記接合部材内で反射して得られる反射波の両方を前記接合部材の第1の超音波受信箇所に超音波励起用パルスレーザ光を照射して第1の受信信号として受信する第1の超音波受信ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記接合部材内で反射して得られる反射波の両方を前記接合部材の前記第1の超音波受信箇所から離れた第2の超音波受信箇所に前記超音波励起用パルスレーザ光を照射して第2の受信信号として受信する第2の超音波受信ステップと、
前記第1の受信信号を収録する第1の受信信号収録ステップと、
前記第2の受信信号を収録する第2の受信信号収録ステップと、
前記第1の受信信号収録ステップで収録された前記第1の受信信号および前記第2の受信信号収録ステップで収録された前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算ステップと、
を有し、
前記反射位置推定演算ステップは、
前記第1および第2の受信信号、前記第1の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、
前記第1および第2の受信信号、前記第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、
前記第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果と、前記第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果とに基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算ステップと、
を備えていること、を特徴とする部材の接合方法。
【請求項9】
接合対象部材に溶接により溶接部を形成するステップと、
前記接合対象部材および前記溶接部からなる接合部材の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、超音波励起用パルスレーザ光を照射して第1および第2の超音波を発生させる超音波発生ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記接合部材内で反射して得られる反射波の両方を前記接合部材の第1の超音波受信箇所に超音波励起用パルスレーザ光を照射して第1の受信信号として受信する第1の超音波受信ステップと、
前記第1および第2の超音波それぞれが前記接合部材内で反射して得られる反射波の両方を前記接合部材の前記第1の超音波受信箇所から離れた第2の超音波受信箇所に前記超音波励起用パルスレーザ光を照射して第2の受信信号として受信する第2の超音波受信ステップと、
前記第1の受信信号を収録する第1の受信信号収録ステップと、
前記第2の受信信号を収録する第2の受信信号収録ステップと、
前記第1の受信信号収録ステップで収録された前記第1の受信信号および前記第2の受信信号収録ステップで収録された前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算ステップと、
を有し、
前記反射位置推定演算ステップは、
前記第1の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて超音波の前記接合部材内の反射位置を推定する第1の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップと、
前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて超音波の前記接合部材内の反射位置を推定する第2の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップと、
前記第1の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップで推定された結果と、前記第2の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップで推定された結果とに基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算ステップと、
を備えていること、を特徴とする部材の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、超音波計測装置、超音波計測方法および部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷試験(UT:Ultrasonic testing)は、非破壊で構造材の表面および内部の健全性を確認できる技術であり、様々な分野で欠かせない検査技術となっている。圧電素子を検査対象に接触させて超音波を送受信する接触式のUT、小型の超音波送受信用圧電素子を並べ、圧電素子ごとにタイミング(遅延時間)をずらして超音波発信することにより任意の波形を形成できるフェーズドアレイ超音波探傷試験(PAUT)は、工業用途で広く用いられている。
【0003】
また、パルスレーザの照射により超音波を励起し、別のレーザおよびレーザ干渉計により検査対象表面の微小振動を計測するレーザ超音波法(LUT:Laser Ultrasonic Testing)などの方法も利用されている。レーザ超音波法は非接触で検査できるため、溶接施工中の検査などにも適用されている。
【0004】
超音波信号の処理方法、検査対象内部を映像化するための装置や手法についても、用途に応じた多様な形態が提案されており、たとえば生体の内部を超音波により映像化する場合、生体内の組織の違いにより音速が異なることから、検査対象のある特定の領域の音速を仮定して超音波の計測を行い、得られた検出結果とあらかじめ想定していた結果との違いから解析する手法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5651533号公報
【文献】特許第4632517号公報
【文献】特許第5528083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波計測により材料内の欠陥を検査する場合、検査対象となる材料、発生し得る欠陥の位置、形状などに応じて超音波の送受信位置を設定する。しかし検査対象によっては超音波の伝播範囲外に欠陥が存在することがあり、その場合、送受信位置を設定し直して、複数回測定して欠陥を検出する必要が生じるため、探傷に時間や手間がかかる。
【0007】
この発明の実施形態では、以上の状況を踏まえ、部材の接合時などの超音波検査において、検査に要する時間を削減し、もしくは探傷可能範囲を拡大できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態に係る超音波計測装置は、被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、第1および第2の超音波を発生させる少なくとも一つの超音波発生部と、前記第1および第2の超音波が前記被測定対象内で反射して得られる反射波を前記被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波受信箇所それぞれで受信する少なくとも一つの超音波受信部と、前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を第1の超音波受信箇所で受信した第1の受信信号と、前記第1および第2の超音波に基づく両方の反射波を第2の超音波受信箇所で受信した第2の受信信号とをそれぞれ収録する信号収録部と、前記信号収録部に収録された前記第1および第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算部と、を有し、前記反射位置推定演算部は、前記第1および第2の受信信号、前記第1の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部と、前記第1および第2の受信信号、前記第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部と、前記第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部で推定された結果と、前記第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部で推定された結果とに基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、実施形態に係る超音波計測方法は、被測定対象の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ、第1および第2の超音波を発生させる超音波発生ステップと、前記第1および第2の超音波それぞれが前記被測定対象内で反射して得られる反射波の両方を前記被測定対象の第1の超音波受信箇所で第1の受信信号として受信する第1の超音波受信ステップと、前記第1および第2の超音波それぞれが前記被測定対象内で反射して得られる反射波の両方を前記被測定対象の前記第1の超音波受信箇所から離れた第2の超音波受信箇所で第2の受信信号として受信する第2の超音波受信ステップと、前記第1の受信信号を収録する第1の受信信号収録ステップと、前記第2の受信信号を収録する第2の受信信号収録ステップと、前記第1の受信信号収録ステップで収録された前記第1の受信信号および前記第2の受信信号収録ステップで収録された前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算ステップと、を有し、前記反射位置推定演算ステップは、前記第1および第2の受信信号、前記第1の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、前記第1および第2の受信信号、前記第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、前記第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果と、前記第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果とに基づいて前記被測定対象内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算ステップと、を備えていること、を特徴とする。
【0010】
さらに、実施形態に係る部材の接合方法は、接合対象部材に溶接により溶接部を形成するステップと、前記接合対象部材および前記溶接部からなる接合部材の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所にそれぞれ超音波励起用パルスレーザ光を照射して第1および第2の超音波を発生させる超音波発生ステップと、前記第1および第2の超音波それぞれが前記接合部材内で反射して得られる反射波の両方を前記接合部材の第1の超音波受信箇所に超音波励起用パルスレーザ光を照射して第1の受信信号として受信する第1の超音波受信ステップと、前記第1および第2の超音波それぞれが前記接合部材内で反射して得られる反射波の両方を前記接合部材の前記第1の超音波受信箇所から離れた第2の超音波受信箇所に前記超音波励起用パルスレーザ光を照射して第2の受信信号として受信する第2の超音波受信ステップと、前記第1の受信信号を収録する第1の受信信号収録ステップと、前記第2の受信信号を収録する第2の受信信号収録ステップと、前記第1の受信信号収録ステップで収録された前記第1の受信信号および前記第2の受信信号収録ステップで収録された前記第2の受信信号、前記第1および第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標、に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する反射位置推定演算ステップと、を有し、前記反射位置推定演算ステップは、前記第1および第2の受信信号、前記第1の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、前記第1および第2の受信信号、前記第2の超音波発生箇所の座標、ならびに前記第1および第2の超音波受信箇所の座標の情報に基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップと、前記第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果と、前記第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップで推定された結果とに基づいて前記接合部材内の超音波反射位置を推定する反射位置総合推定演算ステップと、を備えていること、を特徴とする。

【発明の効果】
【0011】
この発明の実施形態によれば、部材の接合時などの超音波検査において、検査に要する時間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に設置した状況を示す模式的断面図である。
図2図1の超音波計測装置の信号処理部の機能構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波発生部から発せられた第1の超音波が第1の反射部で反射して各超音波受信部に到達するまでの経路を示す断面図である。
図4】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第2の超音波発生部から発せられた第2の超音波が第2の反射部で反射して各超音波受信部に到達するまでの経路を示す断面図である。
図5】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1および第2の超音波発生部から発せられた超音波が第1の超音波受信部に到達するまでの経路を示す断面図である。
図6】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波受信部で受信される第1の受信信号のタイムチャートである。
図7】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1および第2の超音波発生部から発せられた超音波が各超音波受信部に到達するまでの経路を示す断面図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る超音波計測装置による超音波計測方法の手順を示すフロー図である。
図9】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波発生部から発せられた第1の超音波を対象として開口合成処理をして得られた映像化結果を模式的に示す図である。
図10】第1の実施形態に係る超音波計測装置の第2の超音波発生部から発せられた第2の超音波を対象として開口合成処理をして得られた映像化結果を模式的に示す図である。
図11図10および図11の映像化結果を重ね合わせて得られた映像化結果を模式的に示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波受信部で受信される第1の受信信号のタイムチャートである。
図13】本発明の第3の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。
図14】本発明の第4の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。
図15】本発明の第5の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。
図16】本発明の第6の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する場合の被測定対象を示す模式的斜視図である。
図17】本発明の第7の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。
図18】本発明の第8の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。
図19】本発明の第9の実施形態に係る超音波計測装置の信号処理部の機能構成を示すブロック図である。
図20】本発明の第9の実施形態に係る超音波計測装置による超音波計測方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に設置した状況を示す模式的断面図である。
【0015】
第1の実施形態では、被測定対象10は、たとえば金属製の平板状であって、その内部に、欠陥である第1および第2の超音波反射部11、12が存在しているものとする。超音波反射部11、12に超音波が入射すると、反射、散乱もしくは回折して反射波(実施形態では反射、散乱または回折により生じた波を反射波と総称する)が生じる。超音波計測装置20は、第1および第2の超音波発生部21、22と、超音波受信部23と、信号収録部24と、信号処理部25と、映像表示部26とを有する。
【0016】
第1および第2の超音波発生部21、22は、それぞれ、被測定対象10の表面の互いに離れた第1および第2の超音波発生箇所71、72に取り付けられる。超音波発生部21、22は、たとえば圧電素子を備える。第1の超音波発生箇所71から被測定対象10内に第1の超音波が発せられ、第2の超音波発生箇所72から被測定対象10内に第2の超音波が発せられる。
【0017】
超音波受信部23は、超音波アレイプローブであって、複数(図示の例では11個)の超音波受信部が並列されている。超音波受信部23は、第1、第2、第3の超音波受信部231、232、233を含む。第1、第2、第3の超音波受信部231、232、233などはそれぞれ、被測定対象10の表面上の互いに離れた超音波受信箇所73、74、75などに取り付けられる。
【0018】
超音波アレイプローブを構成する各受信部は圧電素子を備えている。超音波発生部21、22および超音波受信部23はともに超音波探触子と呼ばれるものであり、被測定対象10の表面に接触して取り付けられる。超音波発生部21、22として、複数の超音波発生点が並列する超音波アレイプローブを用いてもよい。
【0019】
超音波発生部21、22、超音波受信部23は、それぞれが複数箇所の超音波発生箇所、複数箇所の超音波受信箇所を持つものであれば、それぞれが何箇所であってもよい。超音波発生部21、22、超音波受信部23は、それぞれが、超音波を発生または受信する振動面と、ダンピング材(図示せず)とを備えている。
【0020】
なお、複数の超音波探触子を備えた一つの超音波アレイプローブで超音波発生部と超音波受信部とを兼ねることもできる。
【0021】
超音波発生部21、22および超音波受信部231、232、233、・・・は、好ましくは、被測定対象10の一つの平面上で一直線上に並べられている。これにより、被測定対象10の一つの断面内の超音波反射位置(すなわち、被測定対象10内で超音波の反射、散乱または回折等が生じた位置)を推定できる。他の断面内の超音波反射位置を推定するためには、超音波発生部21、22および超音波受信部23を、被測定対象10の表面に沿って移動させて、同様の測定を繰り返せばよい。
【0022】
信号収録部24は、超音波受信部23で得られた受信信号を収録する。各超音波受信部23で受信する受信信号にはそれぞれに、第1および第2の超音波発生部21、22で発せられた第1および第2の超音波の反射波の情報が含まれる。なお実施形態において、反射波には散乱波、回折波を含むものとする。すなわち、第1の超音波受信部231で受信される第1の受信信号には第1および第2の超音波両方の反射超音波による信号が含まれ、同様に、第2の超音波受信部232で受信される第2の受信信号にも、第3の超音波受信部233で受信される第3の受信信号にも、第1および第2の超音波両方の反射超音波による信号が含まれる。
【0023】
信号処理部25は、信号収録部24に収録された受信信号に基づいて、被測定対象10内の欠陥である第1および第2の超音波反射部11、12の位置や形状を求める。映像表示部26は、信号処理部25によって得られた第1および第2の超音波反射部11、12の位置や形状を映像として表示する。信号収録部24、信号処理部25および映像表示部26の一部または全部を電子計算機で実現することができる。
【0024】
図2は、図1の超音波計測装置の信号処理部25の機能構成を示すブロック図である。信号処理部25は、反射位置推定演算部30と、開口合成演算部31とを備えている。また、反射位置推定演算部30は、第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部32と、第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部33と、反射位置総合推定演算部34とを備えている。開口合成演算部31は、反射位置推定演算部30によって得られた被測定対象10内の第1および第2の超音波反射部11、12の位置のデータを、映像として表示するためのデータに開口合成によって変換するものである。開口合成のほか、平均化処理、移動平均、フィルタ、FFT(高速フーリエ変換)、ウェーブレット変換等を行うことも可能である。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波発生部21から発せられた第1の超音波Utiが第1の超音波反射部11で反射して各超音波受信部23に到達するまでの経路を示す断面図である。第1の超音波発生部21から発せられた第1の超音波Utiは、超音波の指向性のために、第1の超音波発生部21のほぼ真下にある第1の超音波反射部11に到達し、第1の超音波反射部11で反射した反射超音波Uriは、各超音波受信部23で受信される。
【0026】
図3に示す配置関係からわかるように、第2の超音波反射部12の位置は第1の超音波Utiの指向性の外側にある。そのため、第1の超音波Utiのうちで第2の超音波反射部12に到達する超音波の強度は極めて低く、第1の超音波Utiが第2の超音波反射部12で反射して超音波受信部23に到達する超音波の強度は極めて低い。
【0027】
図4は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第2の超音波発生部22から発せられた第2の超音波Utjが第2の超音波反射部22で反射して各超音波受信部23に到達するまでの経路を示す断面図である。第2の超音波発生部22から発せられた第2の超音波Utjは、第2の超音波発生部22のほぼ真下にある第2の超音波反射部12に到達し、第2の超音波反射部12で反射した反射超音波Urjは、各超音波受信部23で受信される。
【0028】
第2の超音波Utjの一部は第1の超音波反射部11にも到達するが、第2の超音波発生部22から発せられた超音波Utjが第1の超音波反射部11で反射するとその反射超音波は、図4に示す配置関係から、ほとんどが超音波受信部23の方向から離れる方向(図4の左方向)に向かう。そのため、第2の超音波Utjが第1の超音波反射部11で反射して超音波受信部23に到達する反射超音波の強度は極めて低い。
【0029】
図5は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1および第2の超音波発生部から発せられた超音波が第1の超音波受信部231に到達するまでの経路を示す断面図である。図6は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波受信部で受信される第1の受信信号のタイムチャートである。
【0030】
第1の超音波発生部21で発生した第1の超音波Utiは、第1の超音波反射部11で反射して、その反射超音波Uriは第1の超音波受信部231に到達する。また、第2の超音波発生部22で発生した第2の超音波Utjは、第2の超音波反射部12で反射して、その反射超音波Urjは第1の超音波受信部231に到達する。ここでは、第1の超音波発生部21が超音波Utiを発する時刻Tiと、第2の超音波発生部22が超音波Utjを発する時刻Tjとが同時である。
【0031】
第1の超音波受信部231では、受信開始から受信終了までの1回の受信時間範囲内に反射超音波UriおよびUrjの両方を一つの受信信号(第1の受信信号:Uri+Urj)として受信する。第1の超音波受信部231で受信した第1の受信信号は、信号収録部24に収録される。
【0032】
同様に、第2の超音波受信部232では、1回の受信時間範囲内に反射超音波UriおよびUrjの両方を一つの受信信号(第2の受信信号)として受信し、第2の受信信号が信号収録部24に収録される。他の超音波受信部も同様である。
【0033】
図7は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1および第2の超音波発生部から発せられた超音波が各超音波受信部に到達するまでの経路を示す断面図である。
【0034】
第1の超音波発生部21で発生した超音波Utiが、第1の超音波反射部11で反射して、その反射超音波Uriが各超音波受信部23に到達する。また、第2の超音波発生部22で発生した第2の超音波Utjが、第2の超音波反射部12で反射して、その反射超音波Urjが各超音波受信部23に到達する。各超音波受信部23で受信した受信信号は、信号収録部24に収録される。
【0035】
信号処理部25の反射位置推定演算部30は、信号収録部24に収録された受信信号と、第1および第2の超音波発生箇所71、72、超音波受信箇所73、74,75などの位置座標とに基づいて、超音波反射部の位置11、12を計算する。また、信号処理部25の開口合成演算部31は、反射位置推定演算部30によって得られた被測定対象10内の第1および第2の超音波反射部11、12の位置のデータを、映像として表示するためのデータに、開口合成によって変換する。開口合成を行うに当たっては、図7に示すように、被測定対象10のうちの必要な部分を開口合成範囲40として設定する。ここで、超音波発生部21、22および超音波受信部231、232、233、・・・が並ぶ方向をX軸方向とし、X軸方向に垂直に、超音波発生部21、22および超音波受信部231、232、233、・・・が配置された被測定対象10の表面に垂直に被測定対象10の内部に向かう方向をZ軸方向とする。
【0036】
ここで、本発明の第1の実施形態に係る超音波計測装置による超音波計測方法の手順を、図8に沿って説明する。図8は、本発明の第1の実施形態に係る超音波計測装置による超音波計測方法の手順を示すフロー図である。
【0037】
図1などでは11個の超音波受信部23が並べられているものとしたが、図8では、単純化して、第1の超音波受信部231、第2の超音波受信部232、第3の超音波受信部233の3個の超音波受信部で超音波反射波を受信するものとする。図8で、初めに、第1の超音波発生部21から第1の超音波Utiが発せられ(第1の超音波発生ステップS11)、第2の超音波発生部22から第2の超音波Utjが発せられる(第2の超音波発生ステップS12)。
【0038】
第1の超音波受信部231、第2の超音波受信部232、第3の超音波受信部233はそれぞれが、第1の超音波Utiおよび第2の超音波Utjの両方の反射波を受信する(第1、第2、第3の超音波受信ステップS13、S14、S15)。第1の超音波受信部231、第2の超音波受信部232、第3の超音波受信部233それぞれの受信信号を第1、第2、第3の受信信号と呼ぶ。第1、第2、第3の受信信号は、それぞれが、信号収録部24に収録される(第1、第2、第3の受信信号収録ステップS16、S17、S18)。
【0039】
つぎに、反射位置推定演算部30が、信号収録部24に収録された受信信号に基づいて、被測定対象10内の超音波反射部の位置を推定する演算を行う(超音波反射位置推定演算ステップS20)。
【0040】
より具体的には、まず、第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部32が、第1、第2、第3の受信信号に基づき、第1の超音波発生部21から発せられる第1の超音波Utiの反射超音波である第1の超音波反射波Uriを対象として超音波反射部の位置を推定する演算を行う(第1の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップS21)。このとき、第1の超音波発生箇所71の座標と、第1の超音波受信箇所73、第2の超音波受信箇所74、第3の超音波受信箇所75それぞれの座標とを用いる。
【0041】
同様に、第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部33が、第1、第2、第3の受信信号に基づき、第2の超音波発生部22から発せられる第2の超音波Utjの反射超音波である第2の超音波反射波Urjを対象として超音波反射部の位置を推定する演算を行う(第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップS22)。このとき、第2の超音波発生箇所72の座標と、第1の超音波受信箇所73、第2の超音波受信箇所74、第3の超音波受信箇所75それぞれの座標とを用いる。
【0042】
つぎに、反射位置総合推定演算部34が、第1の超音波Utiに基づく反射位置推定演算ステップS21の結果と、第2の超音波Utjに基づく第2の超音波反射位置推定演算ステップS22の結果とに基づいて、超音波反射部の位置を総合的に推定する演算を行う(超音波反射位置総合推定演算ステップS23)。
【0043】
開口合成演算部31は、第1、第2の超音波を対象とする反射位置推定演算ステップS21、S22の結果それぞれに基づいて開口合成演算を行うことができる。また、超音波反射位置総合推定演算ステップS23の結果に基づいて開口合成演算を行うことができる。開口合成演算の結果は、映像表示部26に映像として表示される。
【0044】
図9は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波発生部21から発せられた第1の超音波Utiによる第1の反射超音波Uriを対象として開口合成処理をして得られた映像化結果を模式的に示す図である。すなわち、この図9は、第1の超音波Utiを対象とする反射位置推定演算ステップS21の結果に基づいている。この図9の場合は、図3に示すように、第1の反射超音波Uriのうちで、第1の超音波反射部11で反射して超音波受信部23に届くものの割合が高いので、第1の超音波反射部11の画像A1が濃く明りょうに表示される。一方、第1の反射超音波Uriのうちで、第2の超音波反射部12で反射して超音波受信部23に届くものの割合が低いので、第2の超音波反射部12の画像A2は薄く不明りょうに表示される。
【0045】
図10は、第1の実施形態に係る超音波計測装置の第2の超音波発生部22から発せられた第2の超音波Utjによる第2の反射超音波Urjを対象として開口合成処理をして得られた映像化結果を模式的に示す図である。すなわち、この図10は、第2の超音波Utjを対象とする反射位置推定演算ステップS22の結果に基づいている。この図10の場合は、図4に示すように、第2の反射超音波Urjのうちで、第2の超音波反射部12で反射して超音波受信部23に届くものの割合が高いので、第2の超音波反射部12の画像B2が濃く明りょうに表示される。一方、第2の反射超音波Urjのうちで、第1の超音波反射部11で反射して超音波受信部23に届くものの割合が低いので、第1の超音波反射部11の画像B1は薄く不明りょうに表示される。
【0046】
図11は、図10および図11の映像化結果を重ね合わせて得られた映像化結果を模式的に示す図である。この図11の場合は、第1の超音波反射部11および第2の超音波反射部12に対応する位置の画像のそれぞれが、濃く明りょうな部分とその周囲にある薄く不明りょうな部分との組み合わせの画像C1、C2として表示される。第1の超音波反射部11および第2の超音波反射部12に対応する位置に濃く明りょうな部分が表示されるので、全体で第1の超音波反射部11および第2の超音波反射部12に対応する位置およびそれぞれの形状を特定することができる。
【0047】
以上説明したように、この第1の実施形態によれば、超音波発生部および超音波受信部の位置を変更せずに、被測定対象の広範囲の検査を行うことができ、検査に要する手間および時間を減らすことができる。
【0048】
[第2の実施形態]
図12は、本発明の第2の実施形態に係る超音波計測装置の第1の超音波受信部で受信される第1の受信信号のタイムチャートである。
【0049】
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形であって、第1の超音波発生部21が超音波Utiを発する時刻Tiと第2の超音波発生部22が超音波Utjを発する時刻Tjがずれている点が、第1の実施形態と相違する。その他の構成、作用は第1の実施形態と同様である。時刻Tiと時刻Tjがずれているが、第1の超音波Utiに対応する第1の反射超音波Uriの受信信号と第2の超音波Utjに対応する第2の反射超音波Urjの受信信号は、各超音波受信部23における各受信時間範囲内であって、一つの受信信号として受信され、各受信信号が信号収録部24に収録される。
【0050】
信号処理部25において、時刻Tiと時刻Tjとのずれを考慮して反射位置推定演算を行う。これにより、第1の実施形態と同様に、開口合成演算部31による開口合成演算も行うことができる。
【0051】
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、超音波発生部および超音波受信部の位置を変更せずに、被測定対象の広範囲の検査を行うことができ、検査に要する手間および時間を減らすことができる。
【0052】
[第3の実施形態]
図13は、本発明の第3の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。第3の実施形態は、たとえば第1の実施形態の変形である。第3の実施形態の超音波計測装置50は、超音波励起用パルスレーザ53と、部分透過反射鏡54と、全反射鏡55と、超音波受信用レーザ56と、受信プローブ57と、スキャン機構58と、レーザ干渉計59と、光ケーブル60、61とを有する。そのほかに、超音波計測装置50は、第1の実施形態と同様に、信号収録部24と、信号処理部25と、映像表示部26とを有する。
【0053】
また、第1の実施形態と同様に、被測定対象10は、たとえば金属製の平板状であって、その内部に、欠陥である第1および第2の超音波反射部11、12が存在しているものとする。
【0054】
超音波励起用パルスレーザ53で発生したレーザ光の一部は、部分透過反射鏡54で反射して、被測定対象10の第1の超音波発生箇所71に照射される。超音波励起用パルスレーザ53で発生したレーザ光の他の部分は、部分透過反射鏡54を透過し、全反射鏡55で反射して被測定対象10の第2の超音波発生箇所72に照射される。これにより、第1の超音波発生箇所71から被測定対象10内に第1の超音波が伝搬し、第2の超音波発生箇所72から被測定対象10内に第2の超音波が伝搬する。第1および第2の超音波は、被測定対象10内の第1および第2の超音波反射部11、12で反射して反射超音波となって、被測定対象10内を伝搬する。なお、部分透過反射鏡54を複数個とすることにより、超音波発生箇所を3か所以上に増やすこともできる。
【0055】
超音波受信用レーザ56で発生した超音波受信用レーザ光は、光ケーブル60を通して受信プローブ57に送られ、受信プローブ57から超音波受信用レーザ光が被測定対象10の超音波受信箇所73に照射される。超音波受信用レーザ光は超音波受信箇所73で反射・散乱して受信プローブ57に戻される。
【0056】
受信プローブ57は光ケーブル61を介してレーザ干渉計59に接続されている。
【0057】
第1および第2の超音波発生箇所71、72から発せられて超音波反射部11、12で反射した超音波は、超音波受信箇所73に到達し、超音波受信箇所73の表面に微小振動を生じさせる。超音波受信箇所73で反射して受信プローブ57に戻されたレーザ光は、超音波受信箇所73の微小振動の影響を受けている。超音波受信用レーザ56からのレーザ光と超音波受信箇所73で反射した反射レーザ光とをレーザ干渉計59に入力することにより、レーザ干渉計59の出力として、超音波受信信号を得ることができる。
【0058】
受信プローブ57はスキャン機構58によって移動させることができ、それにより、複数の超音波受信箇所73でレーザ光を送受信することができる。
【0059】
レーザ干渉計59の出力である受信信号が、電気信号として信号収録部24に収録される。信号収録部24に収録された受信信号は、第1の実施形態と同様に、信号処理部25で処理され、その処理結果が映像表示部26に表示される。
【0060】
超音波励起用パルスレーザ53および超音波受信用レーザ56として使用されるレーザの例としては、Nd:YAGレーザ、CO2レーザ、Er:YAGレーザ、チタンサファイアレーザ、アレキサンドライトレーザ、ルビーレーザ、色素(ダイ)レーザおよびエキシマレーザなどが挙げられる。
【0061】
レーザ光源は連続波またはパルス波のどちらかとなり、1台だけでなく2台以上の複数台から構成することも可能である。複数台から構成する場合には、超音波を計測するために必要な他の機能も必要に応じて複数台使用する。
【0062】
レーザ干渉計59の例としては、たとえば、マイケルソン干渉計、ホモダイン干渉計、ヘテロダイン干渉計、フィゾー干渉計、マッハツェンダー干渉計、ファブリー=ペロー干渉計およびフォトリフラクティブ干渉計などが挙げられる。また干渉計測以外の方法として、ナイフエッジ法も考えられる。いずれの干渉計も1台以上の複数台使用することもできる。
【0063】
この第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、超音波発生部および超音波受信部の位置を変更せずに、被測定対象の広範囲の検査を行うことができ、検査に要する手間および時間を減らすことができる。
【0064】
さらに、この第3の実施形態によれば、被測定対象10の超音波発生箇所および超音波受信箇所に、プローブ等の機器を接触させる必要がない。そのため、接合対象部材に溶接により溶接部が形成された接合部材を対象とし、被測定対象10がたとえば溶接中や溶接直後の溶接部や接合対象部材の金属部分などの高温状態にあるものであっても、また、被測定対象10の超音波発生箇所または超音波受信箇所が平坦な面でなくても、容易に適用することができる。
【0065】
[第4の実施形態]
図14は、本発明の第4の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。第4の実施形態は第3の実施形態の変形である。第4の実施形態の超音波計測装置50は、第1の超音波励起用パルスレーザ53aおよび第2の超音波励起用パルスレーザ53bを備え、これらのパルスレーザ53a、53bから発せられるパルスレーザ光が、反射鏡を介さずに、それぞれ、被測定対象10の第1および第2の超音波発生箇所71、72に照射される。上記以外の構成は第3の実施形態と同様である。
【0066】
この第4の実施形態によれば、第3の実施形態などと同様に、超音波発生部および超音波受信部の位置を変更せずに、被測定対象の広範囲の検査を行うことができ、検査に要する手間および時間を減らすことができる。さらに、被測定対象10の超音波発生箇所および超音波受信箇所に、プローブ等の機器を接触させる必要がない。そのため、被測定対象10がたとえば溶接中の金属部分などの高温状態にあるものであっても、また、被測定対象10の超音波発生部または超音波受信部が平坦な面でなくても、容易に適用することができる。
【0067】
さらに、この第4の実施形態によれば、部分透過反射鏡54や全反射鏡55(図13)を用いずに、被測定対象10の第1および第2の超音波発生箇所71、72で超音波を発生させることができる。また、第1の超音波発生箇所71で超音波Utiが発せられる時刻Tiと第2の超音波発生箇所72で超音波Utjが発せられる時刻Tjとを、第1の実施形態のように一致させることもできるし、第2の実施形態のようにずらすこともできる。
【0068】
なお、超音波励起用パルスレーザの個数は、2個以上であれば何個であってもよい。
【0069】
[第5の実施形態]
図15は、本発明の第5の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。第5の実施形態は第3の実施形態の変形である。第5の実施形態の超音波計測装置50は、超音波励起用のレーザスキャン装置85を備える。超音波励起用パルスレーザ53から発せられたパルスレーザは、レーザスキャン装置85を介して被測定対象10の第1および第2の超音波発生箇所71、72に照射される。レーザスキャン装置85により、複数の超音波発生箇所71、72で超音波を発生させることができる。上記以外の構成は第3の実施形態と同様である。
【0070】
この第5の実施形態では、複数の超音波発生箇所71、72で超音波が発生する時刻は互いにずれるが、第2の実施形態の場合と同様であって、複数の超音波発生箇所71、72で発生した超音波Utの反射波Urが一つの受信時間範囲内で受信できれば問題ない。
【0071】
この第5の実施形態によれば、第3の実施形態などと同様に、超音波発生部および超音波受信部の位置を変更せずに、被測定対象の広範囲の検査を行うことができ、検査に要する手間および時間を減らすことができる。さらに、被測定対象10の超音波発生部および超音波受信部に、プローブ等の機器を接触させる必要がない。そのため、被測定対象10がたとえば溶接中の金属部分などの高温状態にあるものであっても、また、被測定対象10の超音波発生部または超音波受信部が平坦な面でなくても、容易に適用することができる。
【0072】
さらに、この第5の実施形態によれば、部分透過反射鏡54や全反射鏡55(図13)を用いず、また、複数の超音波励起用のレーザを用いずに、被測定対象10の複数の超音波発生箇所71、72で超音波を発生させることができる。
【0073】
上記説明では超音波発生箇所71、72は2箇所であるとしたが、複数箇所であればよく、3箇所以上であってもよい。
【0074】
[第6の実施形態]
図16は、本発明の第6の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する場合の被測定対象を示す模式的斜視図である。第6の実施形態は第3~第5の実施形態の変形である。
【0075】
これまで説明した各実施形態では、被測定対象10が平板状であるとした。それに対して、この第6の実施形態では、被測定対象10が、太径円柱部10aと細径円柱部10bとが軸方向に接続された形状となっている。第3~第5の実施形態のように超音波励起用パルスレーザおよび超音波受信用レーザを用いる場合、被測定対象10の表面にプローブ等の機器を接触させる必要がないので、このように被測定対象10が平板状でない場合であっても、超音波計測装置を簡単に適用できる。
【0076】
図16の例では、例えば太径円柱部10aに、2個の超音波発生箇所71a、72aを設定し、4個の超音波受信箇所73aを設定している。また、細径円柱部10bに、2個の超音波発生箇所71b、72bを設定し、3個の超音波受信箇所73bを設定している。
【0077】
被測定対象10の形状は、図16に示すものに限らず、任意の形状とすることができる。
【0078】
[第7の実施形態]
図17は、本発明の第7の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。第7の実施形態の超音波計測装置50の構成自体は、第3または第4の実施形態の超音波計測装置50と同じである。この第7の実施形態では、被測定対象10が、第1の平板(接合対象部材)10cと第2の平板(接合対象部材)10dとが突き合わせ溶接によって溶接される溶接中の溶接部80を含む溶接構造である。ここで、「溶接中」には、溶接を行うのと同時の場合と、複数の層を重ねて溶接を行う場合に、途中の層まで溶接が終わって次の層の溶接を行うまでの間の時間(溶接中断中)の場合との両方の場合がある。なお、図17では、超音波励起用レーザ等の図示を省略している。
【0079】
図17に示す例では、1層2パスの溶接ビード上の各々のパス81、82の上にそれぞれ、第1の超音波発生箇所71、第2の超音波発生箇所72を設定して、ここに2系統の超音波励起用パルスレーザ光を照射する。これにより、第1、第2の超音波発生箇所71、72で超音波が発生する。
【0080】
また、超音波受信箇所73は、第2の平板10dの表面上に設定する。第1、第2の超音波発生箇所71、72で発生した超音波は、溶接部80および第2の平板10d内を伝播し、溶接部80内の欠陥すなわち超音波反射部11、12で反射され、反射超音波が超音波受信箇所73に到達する。これにより、第3または第4の実施形態の場合と同様に、超音波反射部11、12の位置および形状を特定することができる。
【0081】
図17に示す例のように、広い開先の溶接部80が測定対象の場合、超音波発生箇所が一つだと、超音波の伝播範囲外に発生した欠陥は検出することができない。しかし、図17に示すように、2系統のレーザを各々のパス81、82上に照射することで、両パスに発生した欠陥すなわち超音波反射部11、12の両方を検出することが可能となる。
【0082】
ここで、溶接部80の溶接方法は限定されず、たとえば、被覆アーク溶接、サブマージアーク溶接、イナートガスアーク溶接、ティグ溶接、マグ溶接、ミグ溶接、炭酸ガスアーク溶接、プラズマアーク溶接、エレクトロスラグ溶接等のアーク溶接全般、スポット溶接、シーム溶接等の抵抗溶接全般、ガス溶接、テルミット溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接等の特殊な融接、さらに摩擦拡散接合などの圧接やろう接など金属間の接合技術全般を対象とする。
【0083】
また、被検査対象は平板に限らず、たとえば円筒形状や、それ以外の様々な形状における溶接を対象とする。また溶接継手の組み合わせ方としては、突合せ継手、T継手、十字継手、角継手、重ね継手、へり継手、当て金継手など、溶接継手全般を対象とする。継手形状については開先溶接、すみ肉溶接、シーム溶接、せん溶接、スロット溶接など継手形状全般を対象とする。
【0084】
図17では1層2パスの溶接の場合で説明したが、前述の接合技術、溶接継手、継手形状に対応した様々な溶接方法に応じて、最適な送信点を配置することができる。以下、具体的に欠陥を検出する過程を説明する。
【0085】
溶接中に溶接部80に欠陥すなわち超音波反射部11、12が発生した場合、超音波反射部11、12で反射した反射超音波は、溶接部80および第2の平板(母材)10d内を伝搬して、第2の平板10dの表面に設定した超音波受信箇所73に到達する。一方、この超音波受信箇所73に、受信プローブ57から超音波受信用レーザ光を照射する。これにより、第3の実施形態などと同様に、レーザ干渉計59から、電気信号としての受信信号が信号収録部24に送られ、そこに収録される。受信信号が信号収録部24に収録された後の処理は第3の実施形態などと同様である。
【0086】
この方法で溶接中に欠陥を検出した場合、溶接施工を止め、欠陥発生箇所を補修するなどの対応を取ることができる。また溶接中の検査ではなく、溶接施工を途中で止め、途中経過における溶接部80の検査(溶接中断中検査)を行うことも可能である。たとえば溶接パスを積層していく場合、全積層数の半分の時点で欠陥検査を行い、施工を続行するか判断をすることが可能である。
【0087】
この第7の実施形態では、レーザ超音波法による溶接欠陥検査について説明しているが、たとえば、溶接中断中検査の場合などは、圧電素子を用いた接触式の超音波用を適用することも考えられる。
【0088】
[第8の実施形態]
図18は、本発明の第8の実施形態に係る超音波計測装置を被測定対象に適用する状況を示す模式的断面図である。第8の実施形態の超音波計測装置50の構成自体は、第3、第4、第7の実施形態の超音波計測装置50と同じである。この第8の実施形態では、第7の実施形態とほぼ同様に、被測定対象10が、第1の平板10cと第2の平板10dとが突き合わせ溶接によって溶接される溶接中の溶接部80を含む溶接構造である。
【0089】
図18に示す例では、1層1パスの溶接部80上に、第1の超音波発生箇所71を設定し、第1の平板10cの表面上に第2の超音波発生箇所72を設定して、ここに2系統の超音波励起用パルスレーザ光を照射する。これにより、第1、第2の超音波発生箇所71、72で超音波が発生する。また、超音波受信箇所73は、第7の実施形態と同様に、第2の平板10dの表面上に設定する。
【0090】
この第8の実施形態によれば、特に、溶接部80の周辺の第1の平板10cに欠陥(超音波反射部)がある場合にその欠陥を検出しやすくなる。
【0091】
[第9の実施形態]
図19は、本発明の第9の実施形態に係る超音波計測装置の信号処理部の機能構成を示すブロック図である。この実施形態は、たとえば第1の実施形態の変形である。図1に示す超音波計測装置の構成は第1の実施形態と同様であるが、信号処理部25の内容が第1の実施形態と相違する。
【0092】
図19に示すように、この第9の実施形態の信号処理部25は、反射位置推定演算部90と開口合成演算部31とを有する。開口合成演算部31の内容は第1の実施形態と同様である。
【0093】
反射位置推定演算部90は、第1の受信信号に基づく反射位置推定演算部92と、第2の受信信号に基づく反射位置推定演算部93と、第3の受信信号に基づく反射位置推定演算部94と、反射位置総合推定演算部95とを有する。
【0094】
前述のように、第1、第2、第3の受信信号は、それぞれ、第1の超音波受信部231、第2の超音波受信部232、第3の超音波受信部233で受信した信号である。また、前述のように、第1、第2、第3の受信信号それぞれの中に、第1の超音波発生部21から発せられる第1の超音波Utiによる第1の反射超音波Uriの信号と、第2の超音波発生部22から発せられる第2の超音波Utjによる第2の反射超音波Urjの信号の両方が含まれている。
【0095】
図20は、本発明の第9の実施形態に係る超音波計測装置による超音波計測方法の手順を示すフロー図である。図20に示す本実施形態の超音波計測方法の手順と図8に示す第1の実施形態の超音波計測方法の手順とを比べると、超音波発生のステップS11、S12、超音波受信のステップS13~S15、受信信号収録のステップS16~S18の部分は共通である。そのつぎに、信号処理部25が、第1~第3の受信信号に基づいて、被測定対象10内の超音波反射部の位置を推定する演算を行う(超音波反射位置推定演算ステップS30)。この超音波反射位置推定演算ステップS30の内容は、第1の実施形態の超音波計測方法の場合と相違する。
【0096】
第1の受信信号に基づく反射位置推定演算部92は、第1の超音波受信部231で受信した第1の受信信号に基づいて反射位置推定演算を行う(第1の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップS31)。前述のように、第1の受信信号それぞれの中に、第1の超音波Utiによる第1の反射超音波Uriの信号と、第2の超音波Utjによる第2の反射超音波Urjの信号の両方が含まれている。このステップS30では、第1の反射超音波Uriによる信号と第2の反射超音波Urjによる信号の両方を対象とする。このとき、第1の超音波発生箇所71の座標と、第2の超音波発生箇所72の座標と、第1の超音波受信箇所73の座標とを用いる。
【0097】
同様に、第2の受信信号に基づく反射位置推定演算部93は、第2の超音波受信部232で受信した第2の受信信号に基づいて反射位置推定演算を行う(第2の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップS32)。このとき、第1の超音波発生箇所71の座標と、第2の超音波発生箇所72の座標と、第2の超音波受信箇所74の座標とを用いる。
【0098】
同様に、第3の受信信号に基づく反射位置推定演算部94は、第3の超音波受信部233で受信した第3の受信信号に基づいて反射位置推定演算を行う(第3の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップS33)。このとき、第1の超音波発生箇所71の座標と、第2の超音波発生箇所72の座標と、第3の超音波受信箇所75の座標とを用いる。
【0099】
つぎに、反射位置総合推定演算部95が、第1の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップS31の結果と、第2の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップS32の結果と、第3の受信信号に基づく反射位置推定演算ステップS33の結果と、に基づいて、被測定対象10内で超音波の反射、散乱または回折などが生じた部位である超音波反射部の位置(超音波反射位置)を総合的に推定する演算を行う(超音波反射位置総合推定演算ステップS23)。
【0100】
以上説明したように、この第9の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
上記説明では超音波発生箇所が2か所で超音波受信箇所が3か所としたが、超音波発生箇所および超音波受信箇所がそれぞれ2箇所以上であれば、それぞれが何か所であってもよい。この第9の実施形態は、超音波発生箇所が超音波受信箇所よりも多数ある場合に有利である。
【0102】
[他の実施形態]
上記各実施形態の特徴を適宜組み合わせることもできる。
【0103】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
10…被測定対象、 10a…太径円柱部、 10b…細径円柱部、 10c、10d…平板(母材:接合対象部材)、 11、12…超音波反射部、 20…超音波計測装置、 21、22…超音波発生部、 23…超音波受信部、 24…信号収録部、 25…信号処理部、 26…映像表示部、 30…反射位置推定演算部、 31…開口合成演算部、 32…第1の超音波を対象とする反射位置推定演算部、 33…第2の超音波を対象とする反射位置推定演算部、 34…反射位置総合推定演算部、 40…開口合成範囲、 50…超音波計測装置、 53、53a、53b…超音波励起用パルスレーザ、 54…部分透過反射鏡、 55…全反射鏡、 56…超音波受信用レーザ、 57…受信プローブ、 58…スキャン機構、 59…レーザ干渉計、 60、61…光ケーブル、 71、72…超音波発生箇所、 73、74、75…超音波受信箇所、 80…溶接部、 81、82…パス、 85…レーザスキャン装置、 90…反射位置推定演算部、 92…第1の受信信号に基づく反射位置推定演算部、 93…第2の受信信号に基づく反射位置推定演算部、 94…第3の受信信号に基づく反射位置推定演算部、 95…反射位置総合推定演算部、 231、232、233…超音波受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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