IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナブテスコ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図1
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図2
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図3
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図4
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図5
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図6
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図7
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図8
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図9
  • 特許-ブレーキシリンダ装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ブレーキシリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/14 20060101AFI20220725BHJP
   B61H 1/00 20060101ALI20220725BHJP
   B61H 13/34 20060101ALI20220725BHJP
   B60T 13/38 20060101ALI20220725BHJP
   F16D 121/10 20120101ALN20220725BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20220725BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20220725BHJP
【FI】
F16D65/14
B61H1/00
B61H13/34
B60T13/38
F16D121:10
F16D121:16
F16D125:06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018093647
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019199903
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】麻野 吉雄
(72)【発明者】
【氏名】大家 秀幸
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101766(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162960(WO,A1)
【文献】特開2010-164193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
B61H 1/00
B61H 13/00-13/74
F16D 121/10
F16D 121/16
F16D 125/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を供給することによりブレーキ力を発生させる流体ブレーキと、前記流体ブレーキとは独立して前記流体を排出することでブレーキ力を発生させるばねブレーキと、前記ばねブレーキのブレーキ力を解除する解放部と、を備え、前記流体ブレーキが作用しているときに前記ばねブレーキのブレーキ力を低減させるように前記流体が前記ばねブレーキに供給されるブレーキシリンダ装置であって、
前記流体を供給することで前記流体ブレーキのブレーキ力を発生させる第1ピストンを押圧する第1圧力室と、
前記流体を供給することで前記ばねブレーキのブレーキ力を発生させるばね力に抗して第2ピストンを押圧する第2圧力室と、
前記第1圧力室と連通し、前記第2圧力室とは独立して設けられ、前記流体ブレーキのブレーキ力を発生させる前記流体が前記第1圧力室と常時接続される連通路を介して供給されることで、前記ばねブレーキの前記ばね力に抗して前記第2ピストンを押圧する第3圧力室と、を備え、
前記解放部が操作されることにより前記ばねブレーキのブレーキ力が解除された後、前記ばねブレーキに供給される前記流体の圧力により前記ばねブレーキのブレーキ力が発生する状態に切り替わらないように、前記第2ピストンにおける前記第3圧力室の前記流体の受圧面積が設定されている
ブレーキシリンダ装置。
【請求項2】
流体を供給することによりブレーキ力を発生させる流体ブレーキと、前記流体ブレーキとは独立して前記流体を排出することでブレーキ力を発生させるばねブレーキと、前記ばねブレーキのブレーキ力を解除する解放部と、を備え、前記流体ブレーキが作用しているときに前記ばねブレーキのブレーキ力を低減させるように前記流体が前記ばねブレーキに供給されるブレーキシリンダ装置であって、
前記流体を供給することで前記流体ブレーキのブレーキ力を発生させる第1ピストンを押圧する第1圧力室と、
前記流体を供給することで前記ばねブレーキのブレーキ力を発生させるばね力に抗して第2ピストンを押圧する第2圧力室と、
前記第1圧力室と連通路を介さず直接連通し、前記第2圧力室とは独立して設けられ、前記流体ブレーキのブレーキ力を発生させる前記流体が前記第1圧力室から直接供給されることで、前記ばねブレーキの前記ばね力に抗して前記第2ピストンを押圧する第3圧力室と、を備え、
前記解放部が操作されることにより前記ばねブレーキのブレーキ力が解除された後、前記ばねブレーキに供給される前記流体の圧力により前記ばねブレーキのブレーキ力が発生する状態に切り替わらないように、前記第2ピストンにおける前記第3圧力室の前記流体の受圧面積が設定されている
ブレーキシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ブレーキとばねブレーキとの2つの異なるブレーキが作動可能なブレーキシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄道車両用ブレーキ装置において、通常の走行中に用いられて圧縮空気で作動する流体ブレーキと、長時間駐停車する場合などに用いられて圧縮空気がなくてもばね力により作動するばねブレーキ(駐車ブレーキ)との両方が作動可能なブレーキシリンダ装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図8にその概要を示すこの種のブレーキシリンダ装置150は、第1圧力室164、第1ピストン161、第1ばね166、ロッドあるいはスピンドル等の出力部材151(スピンドル)を備える流体ブレーキ160を有している。この流体ブレーキ160は、第1圧力室164に第1空気源104からの圧縮空気を供給することで流体ブレーキ力を生じさせている。またこのブレーキシリンダ装置150は、第2圧力室174、第2ピストン171、第2ばね176を備えるばねブレーキ170を併せて有している。このばねブレーキ170は、第2圧力室174内の圧縮空気が排出されることに伴い、第2ばね176が第2ピストン171並びに出力部材151を押圧することでブレーキ力(駐車ブレーキ力)を生じさせている。ちなみに図8は、このばねブレーキ170が作動中の状態を示している。なおばねブレーキ170では、上記第2圧力室174に、第1空気源104とは別の第2空気源106から圧縮空気が供給されることでその作動を抑止しているが、この圧縮空気の供給経路に複式逆止弁を設けたものも知られている(特許文献2の第2図)。第2空気源106から圧縮空気が供給経路に供給されない場合、第1空気源104からの圧縮空気が第1圧力室164に供給されるとともに複式逆止弁108を介して第2圧力室174にも供給される。これにより、流体ブレーキ160が作動しているときにばねブレーキ170も同時に作動してブレーキ力が過大となる不都合を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5654129号公報
【文献】特開昭63-125834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図8に例示した上記従来のブレーキシリンダ装置150では、ばねブレーキ170(駐車ブレーキ)の作動中にこれを解除して流体ブレーキ160の利用を許容することによりばねブレーキ170のブレーキ力を解除するブレーキ解放機構190を搭載していることが多い。このブレーキ解放機構190は、以下に説明するクラッチ機構180を備えている。
【0006】
まず、クラッチ機構180は、上記出力部材151と第2ピストン171とを連結し又その連結を解除して、ばねブレーキ170の付勢力の伝達又は遮断を切り替える機構である。このクラッチ機構180には、第2ピストン171に対して回転自在に支持されるとともに出力部材151に螺合されるナット部材181が設けられている。そして、第2圧力室174に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行することで第2ばね176の付勢力により第2ピストン171とともにナット部材181と噛合するクラッチ184が出力部材151に対して移動して出力部材151と第2ピストン171とを連結する連結状態となる。一方、第2圧力室174に圧縮空気が供給されている状態では、クラッチ機構180は、出力部材151と第2ピストン171との連結が解除される非連結状態となる。ブレーキシリンダ装置150では、このクラッチ機構180が上記連結状態に移行することで、ナット部材181とクラッチ184とにおける凹凸形状の歯が互いに噛み合ってばねブレーキ170によるブレーキ力が維持される。
【0007】
ブレーキ解放機構190は、クラッチ機構180の上記ナット部材181を回転可能に支持するクラッチ箱182の回転を規制/解除するロックレバー191を備えている。ロックレバー191の端部191aがクラッチ箱182に設けられたラッチ歯182cに係合することで、クラッチ箱182の回転が規制されている。このロックレバー191は手動で規制の解除が可能であり、ロックレバー191が図中上方に引っ張られて上記端部191aとクラッチ箱182のラッチ歯182cとの係合が解除されると、ナット部材181とクラッチ184との噛み合い状態が保たれたまま回転可能となり、クラッチ機構180全体が空回りする。換言すれば、出力部材151と第2ピストン171との相対変位が可能となる。これにより図8に示すように、第1ピストン161及び第2ピストン171は第1ばね166及び第2ばね176の付勢力によりストロークエンドまで移動して、第1ピストン161及び出力部材151がブレーキ力の作用しない方向に移動することで、ばねブレーキ170のブレーキ力が解除される。
【0008】
例えば回送運用で、ばねブレーキ170のブレーキ力を解除した後に、第2圧力室174に圧縮空気が供給されない状態で運用され、図9に示すように、第1空気源104から複式逆止弁108を介して第2圧力室174に圧縮空気が供給されると、第2ピストン171の反力受面積S3が大きいので反ブレーキ方向に押圧されて上記ロックレバー191によるクラッチ184の回転規制、すなわち端部191aとラッチ歯182cとの係合が復帰されるとともに、クラッチ機構180が非連結状態となる。さらにその後、図10に示すように、第1空気源104からの圧縮空気の供給が停止されて第2圧力室174の圧縮空気が減少すると、第2ばね176が伸長し、クラッチ機構180が連結状態に移行して、第2ばね176によるばねブレーキ170の作動が復帰されるようになる。
【0009】
もっともこの場合、第1空気源104からの圧縮空気の供給は、流体ブレーキ160の利用を意図したものであり、そうした中でのこのようなばねブレーキ170がリセットし始めることで流体ブレーキ160の圧縮空気を排出した後にばねブレーキ170が作用した状態となる。
【0010】
なお、以上の例では、理解を容易とするために、クラッチ機構180の存在を前提にその構成並びにその動作を説明したが、出力部材151と第2ピストン171との相対変位を規制する規制部(ラッチ182c)及びこの規制部による規制を解除するか解除部(ロックレバー191)を備える構成であれば、このような課題は同様に生じる。すなわち、上記クラッチ機構180の存在は必須ではない。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ばねブレーキのブレーキ力を解除した後の流体ブレーキに供給された流体によるばねブレーキのブレーキ力の解除のリセットを防止することのできるブレーキシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するブレーキシリンダ装置は、流体を供給することによりブレーキ力を発生させる流体ブレーキと、前記流体ブレーキとは独立して前記流体を排出することでブレーキ力を発生させるばねブレーキと、前記ばねブレーキのブレーキ力を解除する解放部と、を備え、前記流体ブレーキが作用しているときに前記ばねブレーキのブレーキ力を低減させるように前記流体が前記ばねブレーキに供給されるブレーキシリンダ装置であって、前記解放部が操作されることにより前記ばねブレーキのブレーキ力が解除された後、前記ばねブレーキに供給される前記流体の圧力により前記ばねブレーキのブレーキ力が発生する状態に切り替わらないように、前記ばねブレーキに供給される前記流体を受ける受圧面積が設定されている。
【0013】
上記構成によれば、ばねブレーキに供給される流体を受ける受圧面積が、ばねブレーキのブレーキ力が発生する状態に切り替わらないように設定されている。このため、解放部によってばねブレーキのブレーキ力を解除した後の流体ブレーキに供給された流体によるばねブレーキのブレーキ力の解除のリセットを防止することができる。
【0014】
上記ブレーキシリンダ装置について、前記流体を供給することで前記流体ブレーキのブレーキ力を発生させる第1ピストンを押圧する第1圧力室と、前記流体を供給することで前記ばねブレーキのブレーキ力を発生させるばね力に抗して第2ピストンを押圧する第2圧力室と、前記第2圧力室とは独立して設けられ、前記流体ブレーキのブレーキ力を発生させる前記流体が供給されることで、前記ばねブレーキの前記ばね力に抗して前記第2ピストンを押圧する第3圧力室と、を備え、前記受圧面積は、前記第2ピストンにおける前記第3圧力室の前記流体の受圧面積であることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、流体ブレーキに供給される流体が供給される第3圧力室を設け、この第3圧力室の受圧面積がばねブレーキのブレーキ力が解除された状態に維持される面積に設定されている。そして、第2圧力室に流体が供給されていなければ、第3圧力室の受圧面(面積)の流体の圧力が第2ピストンに作用することとなる。
【0016】
上記ブレーキシリンダ装置について、前記第3圧力室は、前記第1圧力室と連通し、前記流体ブレーキを作用させる前記流体が前記第1圧力室を介して供給されることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、第1圧力室に流体が供給されることで第3圧力室にも流体が供給され、流体ブレーキに供給される流体の圧力を第2ピストンに作用させることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ばねブレーキのブレーキ力を解除した後の流体ブレーキに供給された流体によるばねブレーキのブレーキ力の解除のリセットを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ブレーキシリンダ装置の第1の実施形態においてブレーキシリンダ装置を有するユニットブレーキの構成を示す図。
図2】同実施形態のブレーキシリンダ装置の構成を拡大して示す部分断面図。
図3】同実施形態のブレーキシリンダ装置のばねブレーキのブレーキ力を解除した状態を示す図。
図4】同実施形態のブレーキシリンダ装置において流体ブレーキが作動した状態を示す図。
図5】ブレーキシリンダ装置の第2の実施形態においてブレーキシリンダ装置を有するユニットブレーキの構成を示す図。
図6】同実施形態のブレーキシリンダ装置のばねブレーキのブレーキ力を解除した状態を示す図。
図7】同実施形態のブレーキシリンダ装置において流体ブレーキが作動した状態を示す図。
図8】従来のブレーキシリンダ装置を有するユニットブレーキの構成を示す図。
図9】従来のブレーキシリンダ装置のばねブレーキのブレーキ力を付与した状態を示す図。
図10】従来のブレーキシリンダ装置のばねブレーキのブレーキ力を解除した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、図1図4を参照して、ブレーキシリンダ装置をユニットブレーキに具体化した第1の実施形態について説明する。
【0021】
<ユニットブレーキ100の全体構成>
図1に示すユニットブレーキ100は、鉄道車両のブレーキ装置として構成されている。ユニットブレーキ100は、車両の車輪Wに制輪子31を当接させることにより当該車輪Wの回転を制動する。ユニットブレーキ100は、ロッド51を駆動するブレーキシリンダ装置50と、ロッド51の軸方向への移動によって揺動可能なブレーキ梃子20と、ブレーキ梃子20の揺動によって進退可能であって、制輪子31が取り付けられる制輪子受30と、を備えている。ユニットブレーキ100は、中空状に形成され、その内部は大気と連通するように構成されたケース40を備えている。ケース40は、車両の台車等に固定される。
【0022】
<ブレーキ梃子20>
ケース40には、ブレーキ梃子20が収納されている。このブレーキ梃子20は、ケース40内に架設された支軸21に回動可能に支持されている。ブレーキ梃子20は、上下方向に延出した状態で配設されている。支軸21は、ブレーキ梃子20の中間部に設けられている。そして、ブレーキ梃子20の上端部22は、ロッド51に回転可能に支持されている。ブレーキ梃子20の下端部には軸受孔24が設けられている。軸受孔24内には、球面軸受26が嵌め込まれている。球面軸受26の内輪には、さや棒28が固定されている。さや棒28は、円筒状に形成されている。さや棒28の内面には、雌ねじが形成されている。さや棒28の雌ねじには、支軸29が螺合されている。これにより、支軸29は、さや棒28に対して突出量の調整が可能となっている。
【0023】
<ケース40>
ケース40には、上側第1開口部41と、上側第2開口部42と、下側開口部43とが形成されている。上側第1開口部41は、ケース40の車輪側側壁44(図1の左側の側壁)における上部に形成されている。ブレーキシリンダ装置50は、ケース40の上側第1開口部41を塞ぐようにケース40に装着されている。上側第2開口部42には、圧縮空気を供給する供給経路が挿通される。
【0024】
下側開口部43は、車輪側側壁44における下部に形成されている。支軸29は、下側開口部43を通して車輪側へ突出している。支軸29の先端部には、制輪子受30が設けられている。
【0025】
<ブレーキシリンダ装置50>
ブレーキシリンダ装置50は、外周面に多条ねじが設けられたロッド51を備えており、このロッド51を軸方向に沿って移動させることにより、ブレーキ梃子20を揺動させる。
【0026】
ブレーキシリンダ装置50は、走行している車両を減速または停止させるために用いられる流体ブレーキ60と、車両の駐車時などに利用されるばねブレーキ70と、クラッチ機構80と、ブレーキ解放機構90とを備えている。流体ブレーキ60とばねブレーキ70とは、同一のロッド51を作動させるように構成されている。なお、ブレーキ解放機構90が解放部に相当する。
【0027】
<流体ブレーキ60>
流体ブレーキ60は、流体として圧縮空気によって作動する。流体ブレーキ60は、ロッド51に接続された第1ピストン61を有している。第1ピストン61には、第1圧力室64と第1ばね66とが対向して作用する。流体ブレーキ60は、第1圧力室64に圧縮空気が供給されることで第1ばね66の付勢力に抗して第1ピストン61がロッド51にブレーキ力を発生させる方向であるブレーキ方向(矢印X1方向)に移動する。流体ブレーキ60は、第1ピストン61を摺動可能に収容する有底筒状の第1シリンダ62を備えている。
【0028】
第1シリンダ62には、圧縮空気が給排される第1ポート63が設けられている。第1シリンダ62内には、第1ポート63に連通する第1圧力室64が形成されている。第1圧力室64は、第1ピストン61及び第1シリンダ62により形成されている。第1圧力室64には、所定のブレーキ操作に応じて圧縮空気体が供給又は排出されるようになっている。第1圧力室64は、後述するクラッチ箱82より反ブレーキ方向において区画される。
【0029】
<ばねブレーキ70>
ばねブレーキ70は、ロッド51が貫通されて同ロッド51の軸方向に移動可能に設けられた第2ピストン71を有している。第2ピストン71には、第2圧力室74と第2ばね76とが対向して作用する。ばねブレーキ70は、第2圧力室74に流体として圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行することで第2ばね76の付勢力により第2ピストン71がブレーキ方向(矢印X1方向)に移動する。ばねブレーキ70は、第2ピストン71を摺動可能に収容する第2シリンダ72を備えている。
【0030】
第2シリンダ72は、第1シリンダ62の胴部65の外周側に配設される胴部75を有している。また、第2ピストン71は、第1シリンダ62の胴部65の端部に当接可能に構成されている。第2シリンダ72は、ケース40に固定されている。第2ピストン71と、ケース40の車輪側側壁44との間には、第2ポート73を通して圧縮空気が給排される第2圧力室74が形成されている。第2圧力室74は、第2ピストン71、ケース40、及び第2シリンダ72により形成されている。また、第2圧力室74は、第1圧力室64に対向して設けられ、円環状である。第2圧力室74は、後述するクラッチ箱82の外側に区画されている。
【0031】
第2ピストン71に対して第2圧力室74と反対側には、第2ばね76が配設されている。この第2ばね76は、内側に配置される第1シリンダ62の胴部65と、外側に配置される第2シリンダ72の胴部75との間に配置されており、かつ第1圧力室64の外側に同心円上に配置されている。第2ばね76は、第2圧力室74内に圧縮空気を受けると圧縮される。第2圧力室74には、通常圧縮空気が導入されていて、第2ばね76が圧縮されているが、駐車等の所定のブレーキ操作が行われることによって、第2圧力室74内の圧縮空気が排出され、第2ばね76のばね力によってロッド51がブレーキ方向(矢印X1方向)に移動される。
【0032】
図2に拡大断面を示すように、第2ピストン71は、中央部分が第1ピストン61側に凸となるクラッチ収容部71aを有している。クラッチ収容部71aの内側には、クラッチ機構80が収納されている。第2ピストン71のロッド51側の端部には、ロッド51の軸方向に沿って延びる側壁71bが形成されている。この側壁71bには、後述するスラストベアリング85が保持されている。
【0033】
第1ピストン61と第2ピストン71との間には、上記第1ばね66が配設されている。この第1ばね66は、第1圧力室64が収縮する反ブレーキ方向(矢印X2方向)に第1ピストン61を押圧するものであり、第1圧力室64に圧縮空気が供給されると、この圧縮空気によって圧縮される。通常は、第1圧力室64内に圧縮空気が供給されていないため、第1ばね66のばね力によってロッド51が反ブレーキ方向(矢印X2方向)に移動する。所定のブレーキ操作によって第1圧力室64に圧縮空気が供給されて、ロッド51がブレーキ方向(矢印X1方向)に移動する。所定のブレーキ解除操作によって、第1圧力室64内の圧縮空気が排出されると、第1ばね66のばね力でロッド51が初期状態に復帰する。
【0034】
図1に示すように、ブレーキシリンダ装置50は、第2圧力室74とは分離して区画された圧力室であって、第1圧力室64に供給される圧縮空気が供給されることで第2ばね76の付勢力に抗して第2ピストン71を反ブレーキ方向(X2方向)に移動させる第3圧力室55を備えている。
【0035】
第2圧力室74はロッド51寄りに配置され、第3圧力室55は第2圧力室74よりもロッド51から離間して配置されている。すなわち、第3圧力室55は、第2圧力室74よりも更にブレーキシリンダ装置50の外周寄りに設けられ、円環状の空間である。第3圧力室55は、第1圧力室64に供給された圧縮空気が連通路56を介して供給される。連通路56は、ブレーキシリンダ装置50の縁部に沿って形成されている。
【0036】
第3圧力室55の受圧面55aの面積S1は、ロックレバー91の操作によってロッド51と第2ピストン71との相対変位が許容される解除状態において流体ブレーキ60が作動しても同解除状態に維持される面積の範囲内、言い換えれば、ばねブレーキ70のブレーキ力が発生する面積未満に設定されている。すなわち、ばねブレーキ70に供給される圧縮空気を受ける受圧面55aの面積S1が、ばねブレーキ70のブレーキ力が発生する状態に切り替わらないように設定されている。
【0037】
<クラッチ機構80>
クラッチ機構80は、流体ブレーキ60を駆動するときにロッド51に対するナット部材81の回転を許容する一方、ばねブレーキ70を駆動するときにはロッド51に対するナット部材81の回転を規制する。クラッチ機構80は、第1圧力室64および第2圧力室74に干渉しない領域に配置されている。すなわち、クラッチ機構80は、第2ピストン71がブレーキ方向に移動することでロッド51と第2ピストン71とが連結される連結状態とし、第2圧力室74に第2ばね76の付勢力に抗する圧縮空気が供給されている状態ではロッド51と第2ピストン71との連結が解除される非連結状態とする。
【0038】
クラッチ機構80は、ナット部材81と、ナット部材81を内側に収容するクラッチ箱82と、ナット部材81をクラッチ箱82に対して回転可能に支持するベアリング83と、ナット部材81に対向して配置されるクラッチ84と、を備えている。またクラッチ機構80は、クラッチ箱82を第2ピストン71に対して回転可能に支持するスラストベアリング85と、クラッチ箱押さえばね86と、クラッチばね87と、を備えている。クラッチ機構80は、ロックレバー91によって通常は回転不能にロックされている。
【0039】
ナット部材81は、ロッド51に対して回転可能に螺合している。また、ナット部材81は、クラッチ箱82に対してベアリング83を介して回転可能に支持されている。これにより、ナット部材81は、ロッド51とクラッチ箱82との相対移動により回転する。また、ナット部材81は、反ブレーキ方向(矢印X2方向)に向かってクラッチ箱82と共に移動可能に支持されている。そして、ナット部材81のクラッチ84に対向する部分には、当該クラッチ84の外歯84aに噛み合う外歯81aが形成されている。
【0040】
また、ナット部材81の外歯81aとクラッチ84の外歯84aとが係合した際に、クラッチ箱82に対してブレーキ方向(矢印X1方向)および反ブレーキ方向(矢印X2方向)への移動は許容されているが、ロッド51の軸周りへの回転方向の変位は規制される。
【0041】
クラッチ箱82は、ナット部材81およびクラッチ84が内側に配置される筒状の部材として形成されている。クラッチ84は、クラッチ箱82に対して、ロッド51の軸線方向を中心とする回転方向の変位が規制された状態で、その軸線方向と平行に摺動する。すなわち、クラッチ箱82は、クラッチ84を第2ピストン71の移動方向に沿って摺動可能に支持する。
【0042】
また、クラッチ箱82には、クラッチ84をナット部材81から遠ざける方向に付勢するクラッチ外しばね82bが設けられている。このクラッチ外しばね82bは、クラッチ箱82の内側(ロッド51側)且つナット部材81及びクラッチ84の外側に設けられている。また、クラッチ箱82と第2ピストン71との間には、クラッチ箱押さえばね86が設けられている。
【0043】
クラッチ84は、筒状の部材であって、ロッド51の周囲でナット部材81に対向するように設けられている。クラッチ84は、反ブレーキ方向(矢印X2方向)の端部において、スラストベアリング85を介して第2ピストン71に回転可能に支持されている。これにより、第2ばね76の付勢力により第2ピストン71がロッド51に対してブレーキ方向(矢印X1方向)に沿って移動するときには、クラッチ84も、第2ピストン71及びスラストベアリング85を介して、第2ピストン71と共にロッド51に対してブレーキ方向(矢印X1方向)に移動する。
【0044】
上記したクラッチ機構80は、第2圧力室74の内側に配置される。クラッチ機構80は、第2圧力室74に圧縮空気が供給されている状態から排出される状態へと移行することで、第2ばね76の付勢力により第2ピストン71と共にクラッチ84がロッド51に対してブレーキ方向(矢印X1方向)に移動してナット部材81と噛み合い(ナット部材81の外歯81aとクラッチ84の外歯84aとが噛み合い)、ロッド51と第2ピストン71とを連結する連結状態とする。
【0045】
一方、第2圧力室74に圧縮空気が供給されている状態では、クラッチ84がナット部材81から離間し(外歯81aと外歯84aとが噛み合っておらず)、ナット部材81が回転自在な状態となっている。このため、第2圧力室74に圧縮空気が供給されている状態では、クラッチ機構80は、ロッド51と第2ピストン71との連結を解除している非連結状態とする。
【0046】
<ブレーキ解放機構90>
ブレーキ解放機構90は、クラッチ機構80が連結状態にあるときのロッド51と第2ピストン71との相対変位を規制する規制部としてのクラッチ箱82のラッチ歯82c及びラッチ歯82cによる規制を手動解除する解除部としてのロックレバー91を有する。ブレーキ解放機構90は、ロックレバー91が操作されることでラッチ歯82cによる規制が解除されてロッド51と第2ピストン71との相対変位を許容することによりばねブレーキ70のブレーキ力を解除する。また、ブレーキ解放機構90は、ラッチ歯82cによる規制が復帰されるまで第2圧力室74に圧縮空気が供給されることでラッチ歯82cによるロッド51と第2ピストン71との相対変位の規制を再開する。
【0047】
ラッチ歯82cは、クラッチ箱82のブレーキ方向(矢印X1方向)の端部の外周面に設けられている。ロックレバー91の基端部には、ラッチ歯82cに係合可能に構成されたロック歯91aが設けられている。ロックレバー91は、付勢部材92によってロック歯91aがラッチ歯82cに係合する方向に付勢されており、ロックレバー91を引き上げることにより、ラッチ歯82cとロック歯91aとの係合が解除され、クラッチ箱82が回転可能な状態となる。クラッチ箱82のロック状態を解除可能に構成されているのは、留置のため第2圧力室74の圧縮空気が排出され、ばねブレーキ70の第2ばね76が伸長状態(ばねブレーキ70が作動状態)となっている場合において、ばねブレーキ70を手動で解除できるようにするためである。
【0048】
<ロッド51>
ロッド51は、上側第1開口部41に挿通されている。ブレーキ梃子20の上端部22は、ロッド51の駆動に伴って当該ロッド51から力を受ける部位であり、ロッド51の壁部間に挿入されている。
【0049】
ロッド51の内側にはガイド棒52が挿通されている。ガイド棒52の基端部は、図1に示されるように、ケース40における車輪と反対側の側壁45に固定されており、ロッド51と同軸状に配置されている。
【0050】
<圧縮空気の供給路>
図1に示すように、ブレーキシリンダ装置50は、第1圧力室64に圧縮空気を供給する第1供給路1と、第2圧力室74に圧縮空気を供給する第2供給路2とを備えている。
【0051】
第1供給路1は、第1空気源4から圧縮空気を供給し、流体ブレーキ制御装置5によって第1圧力室64への圧縮空気の供給及び排出が制御される。第1供給路1は、第1ポート63に接続されている。流体ブレーキ制御装置5は、車両のブレーキ操作に応じて圧縮空気の供給量を変更することでブレーキ量を変更する。
【0052】
第2供給路2は、第1空気源4とは別の第2空気源6から圧縮空気を供給し、ばねブレーキ制御電磁弁7の制御に基づいて第2圧力室74への圧縮空気の供給が制御される。第2供給路2は、第2ポート73に接続されている。ばねブレーキ制御電磁弁7は、車両の駐車ブレーキが操作されていないときには、圧縮空気を供給することで第2ばね76によるブレーキを解除している。一方、ばねブレーキ制御電磁弁7は、車両の駐車ブレーキが操作されると、ばねブレーキ制御電磁弁7において圧縮空気を排出することで第2ばね76によってブレーキを作用させる。
【0053】
<動作>
次に、ユニットブレーキ100の動作について説明する。
まず、図1を参照して、車両に対してブレーキが掛けられていない状態について説明する。図1に示す状態では、ユニットブレーキ100は、流体ブレーキ制御装置5によって、第1空気源4から第1ポート63を介して第1圧力室64へ圧縮空気の供給は行われないように制御されている。そして、第1圧力室64内の圧縮空気は第1ポート63を介して流体ブレーキ制御装置5から排出される。このため、第1ばね66によって第1ピストン61が反ブレーキ方向(矢印X2方向)に付勢され、第1ピストン61が第1シリンダ62の底部に当接した状態となっている。
【0054】
一方、図1に示す状態では、ユニットブレーキ100は、ばねブレーキ制御電磁弁7の制御に基づいて、第1空気源4から第2ポート73を介して圧縮空気が第2圧力室74に供給される。このため、第2圧力室74に供給された圧縮空気によって第2ピストン71が第2ばね76の付勢力に抗して反ブレーキ方向(矢印X2方向)に移動した状態となっている。この状態では図2に示されるように、ナット部材81の外歯81aとクラッチ84の外歯84aとは噛み合っておらず、空隙が形成された状態になっている。
【0055】
次に、図3を参照して、ばねブレーキ70によって車両にブレーキが掛けられている状態について説明する。
ばねブレーキ70を作動させる場合は、例えば、流体ブレーキ60を作動させて、完全に鉄道車両を停止させた状態で駐車ブレーキ等としてばねブレーキ70が作動されることになる。ばねブレーキ70は、ばねブレーキ制御電磁弁7の制御に基づいて、第2圧力室74から圧縮空気が排出されることで作動する。
【0056】
第2圧力室74内に供給されていた圧縮空気が排出されると、第2ばね76の付勢力によって第2ピストン71がブレーキ方向(矢印X1方向)に移動を開始する。このとき、第2ピストン71に支持されたスラストベアリング85に回転自在にクラッチ84が第2ピストン71と共にロッド51に対してブレーキ方向に移動し始めることになる。なお、このとき、クラッチ84は、クラッチ箱82に対してブレーキ方向に移動することになる。そして、このように第2ピストン71がクラッチ84と共にロッド51に対して移動し始めると、クラッチ84がナット部材81に当接することになる。すなわち、図2に示すナット部材81の外歯81aとクラッチ84の外歯84aとが噛み合い、ナット部材81の回転が停止する。
【0057】
上述のようにナット部材81とクラッチ84とが噛み合うことで、クラッチ機構80は非連結状態から連結状態に移行することになる。そして、この連結状態では、ナット部材81の回転が止められているため、第2ピストン71が第2ばね76の付勢力によってブレーキ方向(矢印X1方向)に移動した状態でクラッチ84及びナット部材81を介してロッド51を付勢し、第1ピストン61及びロッド51がブレーキ方向に移動したままの状態に保たれることになる。すなわち、ばねブレーキ70が作動してばねブレーキ力が作用した状態に保たれることになる。
【0058】
次に、図3を参照して、ばねブレーキ70によって車両にブレーキが掛けられた状態から手動でブレーキを解除する場合について説明する。
図3に示すように、ばねブレーキ70によって車両にブレーキが掛けられた状態からロックレバー91によって手動でブレーキを解除すると、ナット部材81とクラッチ84との噛み合い状態が保たれたまま回転可能となり、クラッチ機構80全体が空回りする。これにより、第1ピストン61は第1ばね66の付勢力により、第2ピストン71は第2ばね76の付勢力によりストロークエンドまで移動して、第1ピストン61及びロッド51が反ブレーキ方向(X2方向)に移動することで、ばねブレーキ70のブレーキ力が解除される。
【0059】
次に、図4に示すように、この後、第2供給路2に例えば空気漏れ等が生じたとしても、車両のブレーキ操作に応じて流体ブレーキ制御装置5が第1空気源4から第1圧力室64に圧縮空気が供給され、第1圧力室64に供給される圧縮空気が連通路56を経て第3圧力室55にも供給される。この第3圧力室55の受圧面55aの面積S1が、流体ブレーキ60が作動しても同解除状態に維持される面積の範囲内、言い換えれば、ばねブレーキ70のブレーキ力が発生する面積未満に設定されているので、流体ブレーキ60が作動しても同解除状態に維持される。よって、複式逆止弁を省略しつつ、ばねブレーキ70を手動で解除した後に流体ブレーキ60のブレーキ力にばねブレーキ70のブレーキ力が上乗せされることを防止することができる。また、流体ブレーキ60が作動するときには、第2ばね76の付勢力に抗して第2ピストン71を反ブレーキ方向(X2方向)に付勢して移動させた状態に保つことができ、流体ブレーキ60とばねブレーキ70とが同時に作動して流体ブレーキ力とバネブレーキ力の両方が作用する過大なブレーキが作用してしまうことを防止することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ばねブレーキ70に供給される圧縮空気を受ける受圧面55aの面積S1が、ばねブレーキ70のブレーキ力が発生する状態に切り替わらないように設定されている。このため、ブレーキ解放機構90によってばねブレーキ70のブレーキ力を解除した後の流体ブレーキ60に供給された圧縮空気によるばねブレーキ70のブレーキ力の解除のリセットを防止することができる。
【0061】
(2)流体ブレーキ60に供給される圧縮空気が供給される第3圧力室55を設け、この第3圧力室55の受圧面55aの面積S1がばねブレーキ70のブレーキ力が解除された状態に維持される面積に設定されている。そして、第2圧力室74に圧縮空気が供給されていなければ、第3圧力室55の受圧面(面積)の圧縮空気の圧力が第2ピストン71に作用することとなる。
【0062】
(3)第1圧力室64に圧縮空気が供給されることで第3圧力室55にも圧縮空気が供給され、流体ブレーキ60に供給される圧縮空気の圧力を第2ピストン71に作用させることができるようになる。
【0063】
(第2の実施形態)
以下、図5図7を参照して、ブレーキシリンダ装置をユニットブレーキに具体化した第2の実施形態について説明する。この実施形態のブレーキシリンダ装置は、第3圧力室が内側寄りに配置されている点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0064】
図5に示すように、ブレーキシリンダ装置50は、第2圧力室74とは分離して区画された圧力室であって、第1圧力室64に供給される圧縮空気が供給されることで第2ばね76の付勢力に抗して第2ピストン71を反ブレーキ方向(X2方向)に移動させる第3圧力室57を備えている。なお、第3圧力室57が反ブレーキ圧力付与部として機能する。第3圧力室57は、第2ピストン71の中央通路58から釣合室59に連通している。
【0065】
第3圧力室57はロッド51寄りに内側に配置され、第2圧力室74は第3圧力室57よりもロッド51から離間して外側に配置されている。すなわち、第2圧力室74は、第3圧力室57よりも更にブレーキシリンダ装置50の外周寄りに設けられ、円環状の空間である。第3圧力室57は、第1圧力室64に供給された圧縮空気が供給される。第1圧力室64と第3圧力室57とは直接つながって形成されている。
【0066】
第3圧力室57の受圧面57aから釣合室59を差し引いた面積S2は、ロックレバー91の操作によってロッド51と第2ピストン71との相対変位が許容される解除状態において流体ブレーキ60が作動しても同解除状態に維持される面積の範囲内に設定されている。
【0067】
<動作>
次に、図6及び図7を参照して、ユニットブレーキ100の動作について説明する。
図6に示すように、ばねブレーキ70によって車両にブレーキが掛けられた状態から手動でブレーキを解除すると、ナット部材81とクラッチ84との噛み合い状態が保たれたまま回転可能となり、クラッチ機構80全体が空回りする。これにより、第2ピストン71は第1ばね66の付勢力により、第2ピストン71は第2ばね76の付勢力によりストロークエンドまで移動して、第1ピストン61及びロッド51が反ブレーキ方向(X2方向)に移動することで、ばねブレーキ70のブレーキ力が解除される。
【0068】
次に、図7に示すように、この後、第2供給路2に例えば空気漏れ等が生じたとしても、車両のブレーキ操作に応じて流体ブレーキ制御装置5が第1空気源4から第1圧力室64に圧縮空気が供給され、第1圧力室64に供給される圧縮空気が第3圧力室57にも供給される。この第3圧力室57の受圧面57aから釣合室59を差し引いた面積S2が、流体ブレーキ60が作動しても同解除状態に維持される面積の範囲内に設定されているので、流体ブレーキ60が作動しても同解除状態に維持される。よって、複式逆止弁を省略しつつ、ばねブレーキ70のブレーキ力を手動で解除した後に流体ブレーキ60のブレーキ力にばねブレーキ70のブレーキ力が上乗せされることを防止することができる。また、流体ブレーキ60が作動するときには、第2ばね76の付勢力に抗して第2ピストン71を反ブレーキ方向(X2方向)に付勢して移動させた状態に保つことができ、流体ブレーキ60とばねブレーキ70とが同時に作動して流体ブレーキ力とバネブレーキ力の両方が作用する過大なブレーキが作用してしまうことを防止することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態の(1)及び(2)の効果と同様の効果を奏することができる。
なお、上記各実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
【0070】
・上記実施形態において、ばねブレーキ70のブレーキ力の解除は手動でも機械によってもどちらで行ってもよい。
・上記各実施形態において、ナット部材とラッチとを逆に取り付けてもよい。
【0071】
・上記各実施形態では、ブレーキシリンダ装置50によるロッド51の駆動を、ブレーキ梃子20を介してブレーキ力を制輪子31に付与するユニットブレーキ100を採用した。しかしながら、ブレーキシリンダ装置50による第1ピストンの駆動を、楔を介してブレーキ力を制輪子31に付与するユニットブレーキを採用してもよい。
【0072】
・上記各実施形態では、流体として圧縮空気を用いたが、圧縮空気に代えて油を用いてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…第1供給路、2…第2供給路、4…第1空気源、5…流体ブレーキ制御装置、6…第2空気源、7…ばねブレーキ制御電磁弁、20…ブレーキ梃子、21…支軸、22…上端部、24…軸受孔、26…球面軸受、28…さや棒、29…支軸、30…制輪子受、31…制輪子、40…ケース、41…上側第1開口部、42…上側第2開口部、43…下側開口部、44…車輪側側壁、45…側壁、50…ブレーキシリンダ装置、51…ロッド、52…ガイド棒、55…第3圧力室、55a…受圧面、56…連通路、57…第3圧力室、57a…受圧面、58…中央通路、59…釣合室、60…流体ブレーキ、61…第1ピストン、62…第1シリンダ、63…第1ポート、64…第1圧力室、65…胴部、66…第1ばね、70…ばねブレーキ、71…第2ピストン、71a…クラッチ収容部、71b…側壁、72…第2シリンダ、73…第2ポート、74…第2圧力室、75…胴部、76…第2ばね、80…クラッチ機構、81…ナット部材、81a…外歯、82…クラッチ箱、82b…クラッチ外しばね、82c…ラッチ歯、83…ベアリング、84…クラッチ、84a…外歯、85…スラストベアリング、86…クラッチ箱押さえばね、87…クラッチばね、90…ブレーキ解放機構、91…ロックレバー、91a…ロック歯、92…付勢部材、100…ユニットブレーキ、S1,S2,S3…面積、W…車輪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10