(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20220725BHJP
G10K 11/178 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
H04R1/10 101B
H04R1/10 101Z
G10K11/178 120
G10K11/178 150
(21)【出願番号】P 2018100658
(22)【出願日】2018-05-25
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 宗平
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡部 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 学
(72)【発明者】
【氏名】戸丸 賢也
(72)【発明者】
【氏名】樹所 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 教治
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 行志
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-070391(JP,A)
【文献】特表2015-537467(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0033419(US,A1)
【文献】特開平03-184499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
G10K 11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカと、前記スピーカを収容すると共に耳を覆う筐体と、前記筐体に対して前記耳側に配される耳側マイクと、前記スピーカの駆動を制御する制御部と、
前記筐体の外側に配される外側マイクと、前記外側マイクと前記スピーカの間に介在される壁部と、を備え、
前記筐体は、当該筐体の内部空間と当該筐体の外部空間とを連通する連通孔を有しており、
前記制御部は、前記耳側マイクからの入力信号に基づいて、前記スピーカから音を発生させることで、前記耳側マイク付近の騒音を低減することが可能な構成である
とともに、リファレンスマイクである前記外側マイクで検出した騒音に基づいて、エラーマイクである前記耳側マイクからの入力信号が最小となるように、前記スピーカから音を発生させる構成であり、
前記筐体は、前記連通孔を有すると共に前記スピーカを前記耳と反対側から覆う底壁部と、前記底壁部の外周端部から前記耳側に立ち上がる周壁部と、を備え、
前記外側マイクは、前記底壁部に対して前記耳と反対側から重なる形で配され、
前記壁部は、前記外側マイクと前記底壁部の間に介在されているヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される技術は、ヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音を低減することが可能なヘッドホンとして下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、ヘッドホンがマイクロホン及びスピーカユニットを備え、マイクロホンで検知した騒音に基づいてキャンセル信号を生成し、スピーカユニットからキャンセル信号に基づいた音を発生させることで、騒音を低減するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、騒音以外の外部からの音(例えば会話音や警報音など)がヘッドホンによって遮蔽されてしまうため、ヘッドホンの使用者は、外部からの音を聞くことが難しく、その点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、騒音を低減しつつ、外部からの音を聞くことが可能なヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本明細書で開示される技術は、スピーカと、前記スピーカを収容すると共に耳を覆う筐体と、前記筐体に対して前記耳側に配される耳側マイクと、前記スピーカの駆動を制御する制御部と、を備え、前記筐体は、当該筐体の内部空間と当該筐体の外部空間とを連通する連通孔を有しており、前記制御部は、前記耳側マイクからの入力信号に基づいて、前記スピーカから音を発生させることで、前記耳側マイク付近の騒音を低減することが可能な構成であることに特徴を有する。
【0007】
スピーカからの音によって騒音を低減することができる。そして、筐体は連通孔を有していることから、筐体の外部からの音を連通孔を通じて筐体の内部に伝達することができる。このため、ヘッドホンの装着者は、騒音(アクティブノイズキャンセルの対象となる周波数の音)以外の外部音については、ヘッドホンを装着した状態で聞くことができる。
【0008】
また、前記筐体の外側に配される外側マイクと、前記外側マイクと前記スピーカの間に介在される壁部と、を備え、前記制御部は、リファレンスマイクである前記外側マイクで検出した騒音に基づいて、エラーマイクである前記耳側マイクからの入力信号が最小となるように、前記スピーカから音を発生させるものとすることができる。耳側マイクと比べて耳からより遠い位置の外側マイクをリファレンスマイクとするフィードフォワード制御は、耳側マイクに比べ騒音源により近い位置で騒音を参照して制御を行うことから、参照した騒音が耳に届くまでの時間を稼ぐことができ、応答性がより高いものとされる。高周波の音は、時間経過に伴う位相の変化が大きいことから、このような音を低減するためにはより高い応答性が求められる。このため、フィードフォワード制御を行うことで、より高い周波数の騒音を低減することができる。また、上記構成では筐体の連通孔を通してスピーカからの音が筐体外部に漏れる事態が想定される。しかしながら、外側マイクとスピーカの間には壁部が介在されているため、スピーカからの音が外側マイクに到達する事態を抑制できる。この結果、外側マイクではスピーカからの音の影響がより少ない状態で騒音を検知することができ、騒音をより確実に低減することができる。
【0009】
また、前記筐体は、前記連通孔を有すると共に前記スピーカを前記耳と反対側から覆う底壁部と、前記底壁部の外周端部から前記耳側に立ち上がる周壁部と、を備え、前記外側マイクは、前記底壁部に対して前記耳と反対側から重なる形で配され、前記壁部は、前記外側マイクと前記底壁部の間に介在されているものとすることができる。外側マイクを周壁部に設ける場合と比べて、筐体の周方向における全周に亘って音を検知し易くなる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書で開示される技術によれば、騒音を低減しつつ、外部からの音を聞くことが可能なヘッドホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1のヘッドホンのヘッドホン本体を示す断面図
【
図6】実施形態2に係るヘッドホン本体を示す断面図
【
図7】実施形態3に係るヘッドホン本体のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1から
図5によって説明する。
図1に示すように、本実施形態では、車両10内で用いることが可能な車両用のヘッドホン20について例示する。ヘッドホン20は、左右一対のヘッドホン本体30(
図1では片側のヘッドホン本体のみを図示)と、ヘッドホン本体を連結するヘッドバンド21と、を備える。ヘッドホン本体30は、乗員の耳11に装着される部分であり、
図2に示すように、スピーカ31と、スピーカ31を収容すると共に耳を覆う筐体32と、筐体32に対して耳11側に配されるエラーマイク33(筐体に対して耳側に配される耳側マイク)と、イヤーパッド35と、スピーカ31の駆動を制御する制御部50と、筐体32の外側に配されるリファレンスマイク36(外側マイク)と、リファレンスマイク36とスピーカ31の間に介在される壁部37と、を備える。
【0013】
筐体32は、スピーカ31を耳11と反対側(
図2では左側)から覆う底壁部38と、底壁部38の外周端部から耳11側(
図2では右側)に立ち上がる周壁部39と、を備え、全体としては略円筒状をなしている。スピーカ31(スピーカユニット)は例えば底壁部38に対して固定されている。底壁部38は、筐体32の内部空間と筐体32の外部空間とを連通する複数の連通孔40を有している。なお、複数の連通孔40を有する底壁部38は、例えば、金属の薄板に対してパンチング加工を施すことで形成されているが、これに限定されない。イヤーパッド35は、スポンジ等のクッション部材が合成皮革等の被覆部材で覆われることで構成されている。イヤーパッド35は、円環状をなし、周壁部39の先端部(耳側の端部)に取り付けられる。イヤーパッド35は、耳11側の端部において装着者の耳11の周囲に当接する構成となっている。
【0014】
リファレンスマイク36は、底壁部38に対して耳11と反対側から重なる形で配されている。底壁部38は、
図3に示すように、例えば円形状をなしており、リファレンスマイク36は、底壁部38の中心と重なる形で配されている。つまり、リファレンスマイク36は、筐体32の中心軸L1と一致する箇所に配されている。また、本実施形態では、リファレンスマイク36、スピーカ31、エラーマイク33が筐体32の中心軸L1に沿って並ぶ形で配されている。また、耳11から遠い側からリファレンスマイク36、スピーカ31、エラーマイク33の順番で配されている。リファレンスマイク36は、筐体32に対して、保持部材41及び壁部37を介して保持されている。
【0015】
保持部材41は板状をなし、
図3に示すように、リファレンスマイク36から放射状に延びる3つの延設部43を有する。各延設部43の延設端部は、
図2に示すように、底壁部38の周端部と連結されている。保持部材41の中心部は、底壁部38の中心部に対して間隔を空けて配されている。これにより、スピーカ31の振動がリファレンスマイク36に伝わり難い構成となっている。保持部材41には、底壁部38と同様に複数の連通孔42が形成されている。壁部37は、例えば、耳11側に向かって先細りする略円錐状をなしており、リファレンスマイク36をスピーカ31側から覆う構成となっている。つまり、壁部37は、リファレンスマイク36と底壁部38の間に介在されている。
【0016】
次に制御部50の構成について説明する。制御部50は、エラーマイク33、リファレンスマイク36、スピーカ31とそれぞれ電気的に接続されている。制御部50は、エラーマイク33、リファレンスマイク36、スピーカ31と共にフィードフォワード型のアクティブノイズキャンセル装置を構成する。制御部50は例えばDSP(Digital Signal Processor)によって主に構成されている。制御部50は、リファレンスマイク36及びエラーマイク33からの入力信号に基づいて、スピーカ31から音を発生させることで、エラーマイク33付近(筐体32内部)の騒音を低減することが可能な構成となっている。具体的には、制御部50は、リファレンスマイク36で検出した騒音に基づいて、エラーマイク33からの入力信号(エラー信号)が最小となるように、スピーカ31から音(疑似騒音)を発生させる。なお、制御部50は、例えば筐体32に内蔵されていてもよいし、筐体32の外部に設けられていてもよい。
【0017】
制御部50は、
図4に示すように、二次経路モデル51と、疑似騒音の信号(疑似騒音信号)を生成する騒音制御フィルタ53と、エラー信号が最小となるように騒音制御フィルタ53のフィルタ係数を更新する係数更新部52と、を備える。二次経路モデル51は、二次経路(スピーカ31からエラーマイク33までの音の伝達経路)の音響伝達特性を模擬したデジタルフィルタであり、係数更新部52が二次経路で生じる音の変化分を除外した上で係数更新処理を行うためのものである。
【0018】
リファレンスマイク36により、騒音が収集され、リファレンス信号r(n)として入力されると、リファレンス信号r(n)は、二次経路モデル51及び騒音制御フィルタ53に入力される。二次経路モデル51では、リファレンス信号r(n)がフィルタリングされて、フィルタードリファレンス信号x(n)が生成され、係数更新部52へ出力される。係数更新部52では、フィルタードリファレンス信号x(n)及びエラー信号e(n)に基づいて、エラー信号e(n)が最も小さくなるように騒音制御フィルタ53で用いられる係数を更新する。係数更新部52では、例えば、LMS(least mean square)アルゴリズムを用いて係数の更新が行われる。
【0019】
騒音制御フィルタ53では、係数更新部52によって更新された係数を用いてリファレンス信号r(n)がフィルタリングされることで、疑似騒音信号u(n)が生成され、その疑似騒音信号u(n)はスピーカ31に出力される。これにより、スピーカ31からは、疑似騒音信号u(n)に基づいた疑似騒音が出力される。この疑似騒音は二次経路通過後、エラーマイク33付近の騒音と逆位相の音となる。エラーマイク33では、騒音と疑似騒音とが重なり合った音(疑似騒音によって打ち消しきれなかった音に相当)が検知され、エラー信号e(n)として入力され、エラー信号e(n)は係数更新部52へ入力される。上記の処理を繰り返すことにより、スピーカ31からは最適な疑似騒音が生成され、騒音が打ち消される。なお、騒音制御フィルタ53としては例えばFIRフィルタを用いることができる。
【0020】
次に本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、スピーカ31からの音によって騒音を低減することができる。そして、筐体32は連通孔40を有していることから、筐体32の外部からの音を連通孔40を通じて筐体32の内部に伝達することができる。このため、ヘッドホン20の装着者は、騒音(アクティブノイズキャンセルの対象となる周波数の音)以外の外部音については、ヘッドホン20を装着した状態で聞くことができる。
【0021】
なお、本実施形態で例示したフィードフォワード型のアクティブノイズキャンセル装置(能動騒音抑制装置)では、少なくとも500Hz以下の騒音を低減できることが見込まれる。このため、車両走行時のロードノイズ(500Hz以下)を低減することができる。また、音声の子音成分は一般的に1000Hz以上であり、救急車のサイレンは960Hz及び770Hz、踏切の警報音は523Hz及び659Hzであるため、これらの外部音については、低減され難く、ヘッドホン20を装着した状態で聞くことができる。なお、ヘッドホン20によって低減可能な騒音の周波数は500Hz以下に限定されずヘッドホン20の構成や制御方式によって設定される。
【0022】
また、
図5の変形例に示すように、制御部50がリファレンス信号r(n)の周波数帯域を制限する帯域制限フィルタ61、及びエラー信号e(n)の周波数帯域を制限する帯域制限フィルタ62を備えていてもよく、アクティブノイズキャンセルの対象となる音の周波数を設定可能な構成としてもよい。これにより、ヘッドホン20の装着者が可聴したい周波数の音については低減させないようにすることが可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、筐体32の外側に配されるリファレンスマイク36と、リファレンスマイク36とスピーカ31の間に介在される壁部37と、を備え、制御部50は、リファレンスマイク36で検出した騒音に基づいて、エラーマイク33からの入力信号が最小となるように、スピーカ31から音を発生させる。エラーマイク33と比べて耳からより遠い位置のリファレンスマイク36を用いるフィードフォワード制御は、エラーマイク33に比べ騒音源により近い位置で騒音を参照して制御を行うことから、参照した騒音が耳に届くまでの時間を稼ぐことができ、応答性がより高いものとされる。高周波の音は、時間経過に伴う位相の変化が大きいことから、このような音を低減するためにはより高い応答性が求められる。このため、フィードフォワード制御を行うことで、より高い周波数の騒音を低減することができる。また、上記構成では、筐体32の連通孔40を通して、スピーカ31からの音が筐体32外部に漏れる事態が想定される。しかしながら、リファレンスマイク36とスピーカ31の間には壁部37が介在されているため、スピーカ31からの音がリファレンスマイク36に到達する事態を抑制できる。この結果、リファレンスマイク36ではスピーカ31からの音の影響がより少ない状態で騒音を検知することができ、騒音をより確実に低減することができる。
【0024】
また、筐体32は、連通孔40を有すると共にスピーカ31を耳11と反対側から覆う底壁部38と、底壁部38の外周端部から耳11側に立ち上がる周壁部39と、を備え、リファレンスマイク36は、底壁部38に対して耳11と反対側から重なる形で配され、壁部37は、リファレンスマイク36と底壁部38の間に介在されている。リファレンスマイク36を周壁部39に設ける場合と比べて、筐体32の周方向における全周に亘って音を検知し易くなる。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図6によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のヘッドホン本体230においては、
図6に示すように、リファレンスマイク36が筐体32の周壁部39に設けられている点が上記実施形態と異なる。本実施形態では、リファレンスマイク36とスピーカ31の間に周壁部39(壁部の一例)が介在されているため、スピーカ31からの音がリファレンスマイク36に到達する事態を抑制できる。この結果、リファレンスマイク36によって騒音のみを確実に検知することができ、騒音をより確実に低減することができる。
【0026】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を
図7によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のヘッドホン本体330では、リファレンスマイク36を備えておらず、制御部の構成が上記実施形態と異なる。本実施形態の制御部350は、エラーマイク33、スピーカ31と共にフィードバック型のアクティブノイズキャンセル装置を構成する。本実施形態の制御部350は、
図7に示すように、二次経路モデル51と、騒音制御フィルタ53と、係数更新部52と、二次経路の音響伝達特性を模擬したデジタルフィルタである二次経路モデル254と、エラー信号e(n)とフィルタード疑似騒音信号z(n)とを合成する合成部255と、を備える。二次経路モデル254では、疑似騒音信号u(n)がフィルタリングされてフィルタード疑似騒音信号z(n)が生成される。フィルタード疑似騒音信号z(n)は、二次経路を経たスピーカ31からの疑似騒音(エラーマイク33付近での疑似騒音)に相当する信号である。
【0027】
エラーマイク33により、騒音が収集され、エラー信号e(n)として入力されると、エラー信号e(n)は、係数更新部52及び合成部255に入力される。合成部255では、エラー信号e(n)は、フィルタード疑似騒音信号z(n)と加算されて、再現騒音信号d(n)として、二次経路モデル51及び騒音制御フィルタ53に入力される。二次経路モデル51では、再現騒音信号d(n)が二次経路で生じる音の変化分を除外するようにフィルタリングされて、フィルタード再現騒音信号x(n)が生成され、係数更新部52へ出力される。係数更新部52では、フィルタード再現騒音信号x(n)及びエラー信号e(n)に基づいて、エラー信号e(n)が最も小さくなるように騒音制御フィルタ53で用いられる係数を更新する。騒音制御フィルタ53では、再現騒音信号d(n)が係数更新部52によって更新された係数を用いてフィルタリングされることで、疑似騒音信号u(n)が生成され、その疑似騒音信号u(n)はスピーカ31に出力される。これにより、スピーカ31からは、疑似騒音信号u(n)に基づいた疑似騒音が出力される。この疑似騒音は二次経路通過後、エラーマイク33位置での騒音と逆位相の音となる。エラーマイク33では、騒音と疑似騒音とが重なり合った音が検知され、エラー信号e(n)として入力され、エラー信号e(n)は係数更新部52へ入力される。上記の処理を繰り返すことにより、スピーカ31からは最適な疑似騒音が生成され、騒音が打ち消される。
【0028】
なお、係数更新部52では、例えば、LMS(least mean square)アルゴリズムを用いて係数の更新が行われる。このように本実施形態では、リファレンスマイク36を用いることなく、騒音を低減することができる。なお、本実施形態において、エラー信号e(n)に対して特定の周波数成分を除去するフィルタ処理を行う帯域制限フィルタ62(
図5参照)を備えていてもよい。なお、本願発明者によれば、本実施形態で例示したフィードバック型のアクティブノイズキャンセル装置では、少なくとも300Hz以下の騒音を低減できることが確認されている。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記各実施形態では、車両用のヘッドホンを例示したが、車両用に限定されない。
(2)上記実施形態1において、筐体の周壁部39に連通孔があってもよい。
(3)上記実施形態において制御部50による制御(リファレンスマイク及びエラーマイクを用いた制御)と制御部350による制御(エラーマイクを用いた制御)とを適宜変更可能な構成としてもよい。
(4)アクティブノイズキャンセルを実現するための手法は上記実施形態で例示したものに限定されない。例えば、二次経路モデルを必要としない手法(例えば連立方程式法や同時摂動法等)を挙げることができる。
【符号の説明】
【0030】
20…ヘッドホン、31…スピーカ、32…筐体、33…エラーマイク(筐体に対して耳側に配される耳側マイク)、36…リファレンスマイク(筐体の外側に配される外側マイク)、37…壁部、38…底壁部、39…周壁部(外側マイクとスピーカの間に介在される壁部)、40…連通孔、50,350…制御部