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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220725BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B66F9/24 T
B66F9/24 Z
B66F11/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018100821
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019202880
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(73)【特許権者】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】今西 亮
(72)【発明者】
【氏名】森 邦博
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 耕
(72)【発明者】
【氏名】富澤 忠広
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-001798(JP,U)
【文献】特開平08-208198(JP,A)
【文献】特開平06-247699(JP,A)
【文献】特開2001-180894(JP,A)
【文献】実開昭63-071200(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、
前記走行体上に水平旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体に起伏可能に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に旋回可能に支持された作業台と、
前記作業台に設けられ、前記走行体を走行させるために傾倒操作される走行操作レバーとを備え、
前記作業台上から前記走行操作レバーを傾倒操作することにより前記走行体を走行させることが可能に構成された高所作業車の安全装置であって、
前記走行操作レバーが傾倒操作されたときの操作方向および操作量に応じて設定される走行方向および目標速度で前記走行体を走行させる制御を行う走行制御手段と、
前記走行体の前後軸線に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回体旋回角度検出手段と、
前記旋回体旋回角度検出手段により検出された前記旋回体の旋回角度が設定角度を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、警報作動を行う警報手段とを備え
前記走行制御手段は、前記旋回体旋回角度検出手段により検出された前記旋回体の旋回角度が前記設定角度を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、前記走行体の走行速度を、前記設定角度以内の状態で前記走行操作レバーが操作されたときよりも一定時間だけ低い速度に制御することを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
走行可能な走行体と、
前記走行体上に水平旋回可能に設けられた旋回体と、
前記旋回体に起伏可能に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に旋回可能に支持された作業台と、
前記作業台に設けられ、前記走行体を走行させるために傾倒操作される走行操作レバーとを備え、
前記作業台上から前記走行操作レバーを傾倒操作することにより前記走行体を走行させることが可能に構成された高所作業車の安全装置であって、
前記走行操作レバーが傾倒操作されたときの操作方向および操作量に応じて設定される走行方向および目標速度で前記走行体を走行させる制御を行う走行制御手段と、
前記走行体の前後軸線に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回体旋回角度検出手段と、
前記ブームに対する前記作業台の旋回角度を検出する作業台旋回角度検出手段と、
前記旋回体旋回角度検出手段および前記作業台旋回角度検出手段の検出結果に基づいて、前記走行操作レバーの傾倒方向に延びる傾倒方向線と前記走行体の前後軸線とのなす平面視における傾倒方向角度を求める傾倒方向角度演算手段と、
前記傾倒方向角度演算手段により求められた前記傾倒方向角度が設定角度を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、警報作動を行う警報手段とを備えることを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記走行制御手段は、前記警報手段により警報作動が所定時間行われた後に、前記走行体を走行させる制御を行うことを特徴とする請求項1もしくは2に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項4】
前記走行制御手段は、前記設定角度を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、前記走行体の走行速度を、前記設定角度以内の状態のときよりも時間をかけて前記目標速度に到達させる走行制御を行うことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの先端部に設けられた作業台上から走行操作を行うことが可能に構成された高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車の一例として、車輪もしくはクローラ機構を有して走行可能な走行体と、その走行体上に水平旋回可能に設けられた旋回体と、その旋回体に起伏および伸縮可能に設けられたブームと、そのブームの先端部に旋回可能に支持された作業台とを備えた自走式の高所作業車が知られている(例えば、特許文献1および2を参照)。このような高所作業車は、作業台に操作装置が設けられており、その操作装置を操作することにより、旋回体の旋回作動、ブームの起伏作動等および作業台の旋回(首振り)作動を行わせることが可能であるとともに、走行体を走行させることも可能に構成されている。作業台上の操作装置には、上方に延びた中立状態から前後に傾倒操作可能な走行操作レバーが設けられており、その走行操作レバーを傾倒操作したときの操作方向および操作量に応じて設定される進行方向および目標速度で走行体を走行させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002‐128496号公報
【文献】特開2002‐104227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような自走式の高所作業車では、旋回体を旋回作動させると、作業台上の走行操作レバーの傾倒方向と、その走行操作レバーを傾倒操作したときの走行体の進行方向とが大きくずれた状態となる場合がある。このような状態を作業者が把握していない状態で走行操作レバーを傾倒操作すると、作業者の意図した方向と異なる方向に走行体が発進するといった状況が生じる。このとき、走行操作レバーを大きく傾倒操作した場合には、意図していない方向への急発進となり、思わぬ事故につながるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、作業者が意図していない方向への走行体の発進を防止することができる高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1の本発明は、走行可能な走行体と、前記走行体上に水平旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に起伏可能に設けられたブームと、前記ブームの先端部に旋回可能に支持された作業台と、前記作業台に設けられ、前記走行体を走行させるために傾倒操作される走行操作レバーとを備え、前記作業台上から前記走行操作レバーを傾倒操作することにより前記走行体を走行させることが可能に構成された高所作業車の安全装置である。その上で、前記走行操作レバーが傾倒操作されたときの操作方向および操作量に応じて設定される走行方向および目標速度で前記走行体を走行させる制御を行う走行制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ50)と、前記走行体の前後軸線に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回体旋回角度検出手段(例えば、実施形態における旋回角度検出器61)と、前記旋回体旋回角度検出手段により検出された前記旋回体の旋回角度が設定角度(例えば、実施形態における設定旋回角度EA1)を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、警報作動を行う警報手段(例えば、実施形態における警報装置90)とを備え、前記走行制御手段は、前記旋回体旋回角度検出手段により検出された前記旋回体の旋回角度が前記設定角度を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、前記走行体の走行速度を、前記設定角度以内の状態で前記走行操作レバーが操作されたときよりも一定時間だけ低い速度に制御するように構成される。
【0007】
上記課題を解決するため、第2の本発明は、走行可能な走行体と、前記走行体上に水平旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体に起伏可能に設けられたブームと、前記ブームの先端部に旋回可能に支持された作業台と、前記作業台に設けられ、前記走行体を走行させるために傾倒操作される走行操作レバーとを備え、前記作業台上から前記走行操作レバーを傾倒操作することにより前記走行体を走行させることが可能に構成された高所作業車の安全装置である。その上で、前記走行操作レバーが傾倒操作されたときの操作方向および操作量に応じて設定される走行方向および目標速度で前記走行体を走行させる制御を行う走行制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ50)と、前記走行体の前後軸線に対する前記旋回体の旋回角度を検出する旋回体旋回角度検出手段(例えば、実施形態における旋回角度検出器61)と、前記ブームに対する前記作業台の旋回角度を検出する作業台旋回角度検出手段(例えば、実施形態における首振り角度検出器64)と、前記旋回体旋回角度検出手段および前記作業台旋回角度検出手段の検出結果に基づいて、前記走行操作レバーの傾倒方向に延びる傾倒方向線と前記走行体の前後軸線とのなす平面視における傾倒方向角度を求める傾倒方向角度演算手段(例えば、実施形態における走行規制装置55)と、前記傾倒方向角度演算手段により求められた前記傾倒方向角度が設定角度(例えば、実施形態における設定傾倒方向角度EA2)を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、警報作動を行う警報手段(例えば、実施形態における警報装置90)とを備えて構成される。
【0008】
上記構成の高所作業車の安全装置において、前記走行制御手段は、前記警報手段により警報作動が所定時間行われた後に、前記走行体を走行させる制御を行うように構成されることが好ましい。
【0009】
上記構成の高所作業車の安全装置において、前記走行制御手段は、前記設定角度を超えている状態で前記走行操作レバーが傾倒操作されたときに、前記走行体の走行速度を、前記設定角度以内の状態のときよりも時間をかけて前記目標速度に到達させる走行制御を行うように構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
第1の本発明によれば、走行体の前後軸線に対する旋回体の旋回角度が設定角度を超えている状態で走行操作レバーが傾倒操作されたときに、警報作動を行うように構成される。旋回体の旋回角度が大きくなると、走行操作レバーの傾倒方向と走行体の進行方向とが大きくずれた状態となる可能性が高い。そこで第1の本発明では、旋回角度が設定角度を超えている状態で走行操作レバーが操作されると警報作動が行われ、その警報作動により、意図していない方向に走行体が発進する可能性があることを作業者に報知することができる。従って、作業者に注意を促して、意図していない方向への走行体の発進を防止することができる。
【0011】
第2の本発明によれば、走行体の前後軸線に対する走行操作レバーの傾倒方向角度が設定角度を超えている状態で走行操作レバーが傾倒操作されたときに、警報作動を行うように構成される。そのため、走行操作レバーの傾倒方向と走行体の進行方向とが設定角度よりも大きくずれた状態で走行操作レバーが操作されると警報作動が行われ、その警報作動により、走行操作レバーの傾倒方向と走行体の進行方向とが大きくずれた状態であること、すなわち意図していない方向に走行体が発進する可能性があることを作業者に報知することができる。従って、作業者に注意を促して、意図していない方向への走行体の発進を防止することができる。
【0012】
上記第1および第2の本発明において、警報手段により警報作動が所定時間行われた後
に、走行体を走行させる制御を行うように構成されることが好ましい。このような構成とすれば、走行体が発進する前に、走行操作レバーの傾倒方向と走行体の進行方向が大きくずれた状態である可能性が高いことを作業者に報知することができる。
【0013】
上記第1および第2の本発明において、設定角度を超えている状態で走行操作レバーが傾倒操作されたときに、走行体の走行速度を、設定角度以内の状態のときよりも時間をかけて目標速度に到達させる走行制御を行うように構成されることが好ましい。このような構成とすれば、旋回体の旋回角度もしくは走行操作レバーの傾倒方向角度が設定角度を超えている場合に、走行操作レバーの傾倒操作に対する走行体の走行反応速度を抑えて、作業者に注意を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る安全装置を備えた高所作業車の一例であるクローラ自走式の高所作業車の側面図である。
図2】上記高所作業車の平面図である。
図3】上記高所作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
図4】上記高所作業車における旋回体および作業台を旋回させた状態の平面図である。
図5】走行操作レバーの操作時間と走行速度の関係を示すグラフである。
図6】走行操作レバーの操作時間と走行速度の関係の変形例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る安全装置を備えた高所作業車の一例として、図1および図2に自走式の高所作業車1を示している。高所作業車1は、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体20と、旋回体20の上部に起伏可能に設けられたブーム30と、ブーム30の先端部に設けられた作業台40とを備えて構成される。
【0016】
走行体10は、駆動輪12、複数の従動輪13および、これらの車輪に掛け回された履帯14を有する左右一対のクローラ機構15を、走行体フレーム11の左右両側にそれぞれ備えて構成される。左右のクローラ機構15は、駆動輪12を回転駆動する左右の走行モータ16L,16R(図3を参照)を有して構成される。走行体10は、左右の走行モータ16L,16Rの回転方向および回転速度を制御することにより任意の方向および速度で走行可能に構成されている。
【0017】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構18が設けられている。旋回機構18は、走行体フレーム11に固定された外輪と、旋回体20に固定され、前記外輪に係合された内輪と、旋回体20に設けられた旋回モータ26(図3を参照)と、旋回体20に設けられた油圧ポンプ85(図3を参照)から走行体10に設けられた左右の走行モータ16L,16Rに作動油を供給するためのロータリーセンタージョイントとを有している。旋回体20は、旋回機構18により走行体フレーム11に水平旋回自在に取り付けられ、旋回モータ26を正転もしくは逆転作動させることにより、走行体10に対して左右方向に旋回可能に構成されている。
【0018】
旋回体20の上部には、枢結ピンによりブーム30が上下方向に揺動自在(起伏自在)に設けられている。ブーム30は、旋回体20とブーム30の間に跨設されたブーム起伏シリンダ35(図3を参照)により旋回体20に対して起伏作動が可能になっている。ブーム30は、旋回体20に枢結された基端ブーム31、並びに、基端ブーム31に入れ子式に組み合わされた中間ブーム32および先端ブーム33を有して伸縮自在に構成される。ブーム30は、ブーム30内に設けられたブーム伸縮シリンダ36(図3を参照)によ
り伸縮作動が可能になっている。
【0019】
先端ブーム33の先端部には、枢結ピン34により垂直ポスト37が上下方向に揺動自在に設けられている。垂直ポスト37の上部に、作業台40が左右方向に旋回自在(首振り自在)に設けられている。先端ブーム33の先端部と垂直ポスト37との間にはレベリングシリンダ38(図3を参照)が跨設されている。レベリングシリンダ38は、作業台40に設けられた作業台傾斜検出器39(図3を参照)からの検出結果に基づいて伸縮作動されて垂直ポスト37を先端ブーム33に対して上下揺動させ、ブーム30の起伏角度によらず常に作業台40の床面を水平な状態に保持するように構成されている。なお、レベリングシリンダ38は、作業台傾斜検出器39の検出結果に基づく電気駆動式ではなく、基端ブーム31と旋回体20との間に跨設される下レベリングシリンダと油圧ホースによって閉回路を形成する油圧駆動式であってもよい。
【0020】
作業台40は、作業台40に設けられた首振りモータ46(図3を参照)により垂直ポスト37に対して左右方向に旋回作動(首振り作動)が可能に構成されている。作業台40は、作業者が搭乗可能な略矩形状の作業床41と、その作業床41の周囲に立設された手摺り42とを有して構成される。作業台40には、作業台40に搭乗した作業者が操作する操作装置70が設けられている。
【0021】
このような構成の高所作業車1を用いて作業を行うときには、作業者が作業台40に搭乗し、作業台40に設けられた操作装置70を操作して、走行体10の走行制御、旋回体20の旋回作動制御、ブーム30の起伏および伸縮作動制御、並びに作業台40の首振り作動制御を行い、高所作業車1を走行移動させるとともに、作業者が搭乗した作業台40を所望の高所位置に移動させる。これにより作業者は所望の高所位置での作業が可能になる。
【0022】
このような操作装置70の操作に基づき、走行体10の走行制御や、旋回体20、ブーム30および作業台40の作動制御を行う制御装置について、図3を参照して説明する。この制御装置は、走行体10に対する旋回体20の旋回角度を検出する旋回角度検出器61と、旋回体20に対するブーム30の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器62と、ブーム30の伸張量を検出するブーム伸張量検出器63と、ブーム30(垂直ポスト37)に対する作業台40の首振り角度(旋回角度)を検出する首振り角度検出器64とを有し、さらに、これら各検出器からの検出信号が入力されるコントローラ50を有する。コントローラ50には、作業台傾斜検出器39からの検出信号も入力される。
【0023】
旋回角度検出器61は、平面視において旋回体20(旋回機構18)の旋回中心を通るとともに走行体10の前後方向に延びる車両軸線A1(図2を参照)に沿って、ブーム30が走行体10の前方に延びた状態(図2に示す状態)を基準位置とし、この基準位置から旋回体20が左右方向に旋回した角度を検出するように構成されている。首振り角度検出器64は、平面視においてブーム30および垂直ポスト37の中心部を通るとともにブーム30の長手方向に延びるブーム軸線A2(図2を参照)に対して、作業台40が左右方向に首振り(旋回)した角度を検出するように構成されている。旋回角度検出器61および首振り角度検出器64はそれぞれ、例えば、ポテンショメータや、ロータリエンコーダ等を用いて構成される。なお、図2は、車両軸線A1とブーム軸線A2とが平面視において重なった状態の図である。
【0024】
コントローラ50には、作業台40に設けられた操作装置70からの操作信号も入力される。操作装置70は、走行体10を走行させる作動指令を行う走行操作レバー71と、走行体10に対して旋回体20を旋回作動させる作動指令を行う旋回操作レバー72と、旋回体20に対してブーム30を起伏および伸縮作動させる作動指令を行うブーム操作レ
バー73と、垂直ポスト37に対して作業台40を首振り作動(旋回作動)させる作動指令を行う首振り操作レバー74とを有している。
【0025】
走行操作レバー71は、左右のクローラ機構15(左右の走行モータ16L,16R)に対応した左右一対の2本の操作レバーを有している。これらの操作レバーは、垂直方向に延びた中立位置から前後方向に傾倒操作可能に構成され、傾倒操作方向および操作量に応じた走行体10の走行作動指令を行うようになっている。旋回操作レバー72は、垂直方向に延びた中立位置から左右方向に傾倒操作可能に構成され、傾倒操作方向に応じた走行体10に対する旋回体20の旋回作動指令を行うようになっている。ブーム操作レバー73は、垂直方向に延びた中立位置から前後および左右方向に傾倒操作可能に構成され、傾倒操作方向に応じたブーム30の起伏および伸縮作動指令を行うようになっている。首振り操作レバー74は、垂直方向に延びた中立位置から左右方向に傾倒操作可能に構成され、操作方向に応じた垂直ポスト37に対して作業台40の首振り(旋回)作動指令を行うようになっている。
【0026】
コントローラ50は、走行操作レバー71から操作信号を受けると、走行操作レバー71の傾倒操作方向および操作量に応じた走行方向および走行速度(目標速度)で走行体10を走行させる、すなわち左右の走行モータ16L,16Rの駆動制御を行わせるように制御バルブユニット80の走行制御バルブV1,V2を制御する。これにより、油圧ポンプ85からの作動油が走行制御バルブV1,V2を介して左右の走行モータ16L,16Rに供給され、走行体10の走行制御が行われるようになっている。コントローラ50が旋回操作レバー72から操作信号を受けると、旋回操作レバー72の傾倒操作方向に応じた旋回方向に走行体10に対して旋回体20を旋回させる、すなわち旋回モータ26の駆動制御を行わせるように制御バルブユニット80の旋回制御バルブV3を制御する。これにより、油圧ポンプ85からの作動油が旋回制御バルブV3を介して旋回モータ26に供給され、旋回体20の旋回作動制御が行われるようになっている。
【0027】
コントローラ50は、ブーム操作レバー73から操作信号を受けると、ブーム操作レバー73の傾倒操作方向に応じてブーム30を起伏および伸縮させる、すなわちブーム起伏シリンダ35およびブーム伸縮シリンダ36の駆動制御を行わせるように制御バルブユニット80の起伏および伸縮制御バルブV4,V5を制御する。これにより、油圧ポンプ85からの作動油が起伏および伸縮制御バルブV4,V5を介してブーム起伏シリンダ35およびブーム伸縮シリンダ36に供給され、ブーム30の起伏および伸縮作動制御が行われるようになっている。なお、操作装置70には、作業台40の移動方向を指令する操作スイッチ(図示せず)が設けられている。コントローラ50は、この操作スイッチおよびブーム操作レバー73から操作信号を受けると、ブーム30の起伏および伸縮作動を複合的に制御して、作業台40を水平面内で直線移動させる水平移動および垂直面内で直線移動させる垂直移動制御も行うことができるようになっている。
【0028】
コントローラ50が首振り操作レバー74から操作信号を受けると、首振り操作レバー74の傾倒操作方向に応じた首振り(旋回)方向に垂直ポスト37に対して作業台40を首振りさせる、すなわち首振りモータ46の駆動制御を行わせるように制御バルブユニット80の首振り制御バルブV7を制御する。これにより、油圧ポンプ85からの作動油が首振り制御バルブV7を介して首振りモータ46に供給され、作業台40の首振り作動制御が行われるようになっている。
【0029】
ここで旋回操作レバー72およびブーム操作レバー73を操作して作業者が搭乗した作業台40を所望の高所位置に移動させた状態で、走行操作レバー71を操作して高所作業車1を走行移動させるときに、作業者の意図していない方向に発進しないように走行体10の走行を規制する安全装置がこの高所作業車1に設けられている。この安全装置として
、コントローラ50には走行規制装置55が設けられている。
【0030】
走行規制装置55には、走行体10の走行規制を行うか否かの基準値として、走行体10に対する旋回体20の設定旋回角度EA1が設定記憶されている。設定旋回角度EA1は、図4に示すように、走行体10の車両軸線A1に対する旋回体20の旋回角度として設定されている。設定旋回角度EA1は、走行体10に対して旋回体20を旋回させたときにおいて、作業台40上の走行操作レバー71の傾倒操作方向と、走行操作レバー71を傾倒操作したときの走行体10の発進方向とが大きくずれた状態とならないように設定された許容角度である。例えば、車両軸線A1に対して左右にそれぞれ30度が設定旋回角度EA1として設定される。
【0031】
走行規制装置55は、旋回角度検出器61によって検出された旋回体20の旋回角度と、予め設定記憶されている設定旋回角度EA1とを比較する。そして、旋回体20の旋回角度が設定旋回角度EA1以内のときに、走行操作レバー71から操作信号を受けると、走行操作レバー71の傾倒操作方向に応じた走行方向、且つ、図5において2点鎖線L1で示すように走行操作レバー71の傾倒操作量に応じた目標走行速度に直ちに到達させるような制御信号を制御バルブユニット80の走行制御バルブV1,V2に出力し、左右の走行モータ16L,16Rが駆動されて走行体10の走行制御が行われる。
【0032】
その一方、走行規制装置55は、例えば、図4において2点鎖線で示す作業台40′のように旋回体20を略90度旋回させた場合等、旋回角度検出器61によって検出された旋回体20の旋回角度が設定旋回角度EA1を超えるときに、走行操作レバー71から操作信号を受けると、先ず、作業台40に設けられた警報装置90に警報信号を出力する。警報装置90は、警報ランプおよび警報ブザーを有しており、走行規制装置55から警報信号を受けると、警報ランプおよび警報ブザーによって、走行操作レバー71の傾倒操作方向と走行体10の発進方向とが大きくずれた状態であり、意図しない方向に走行体10が発進する可能性がある旨を作業者に報知する。
【0033】
このような警報作動が、走行操作レバー71が傾倒操作されてから所定時間tまで継続される。そして、図5に示すように、所定時間tが経過した後に、走行操作レバー71の傾倒操作方向に応じた走行方向、且つ、図5において実線L2で示すように所定時間tからtまでの時間をかけて徐々に走行操作レバー71の傾倒操作量に応じた目標走行速度に到達させるような制御信号を制御バルブユニット80の走行制御バルブV1,V2に出力し、左右の走行モータ16L,16Rが駆動されて走行体10の走行制御が行われる。
【0034】
このように、旋回体20の旋回角度が設定旋回角度EA1を超えるときには、走行操作レバー71が傾倒操作されても直ちに走行体10が発進されることはなく、先ずは警報装置90による警報ランプおよび警報ブザーによって警報作動が行われる。そして、警報作動が所定時間t継続された後に、旋回体20の旋回角度が設定旋回角度EA1以内のときよりも、走行体10がゆっくりと発進され、走行操作レバー71の傾倒操作量に応じた目標走行速度まで時間をかけて到達させるようになっている。従って、作業者に注意を促して、意図していない方向への走行体10の急発進を防止することができる。
【0035】
次に、作業者の意図していない方向に発進しないように走行体10の走行を規制する安全装置の第2実施形態である走行規制装置155について説明する。なお、上記実施形態と同じ構成のものについては、同じ符番を付して構成の説明については省略する。
【0036】
走行規制装置155には、走行体10の走行規制を行うか否かの基準値として、走行操作レバー71の設定傾倒方向角度EA2が設定記憶されている。設定傾倒方向角度EA2
は、図4に示すように、走行操作レバー71の傾倒操作方向(傾倒操作可能な方向)に延びる傾倒方向線A3と走行体10の車両軸線A1(発進方向)とのなす平面視における角度として設定されている。設定傾倒方向角度EA2は、走行体10に対して旋回体20を旋回させ、さらに垂直ポスト37に対して作業台40を首振り(旋回)させたときにおいて、走行操作レバー71の傾倒操作方向と、走行操作レバー71を傾倒操作したときの走行体10の発進方向とが大きくずれた状態とならないように設定された許容角度である。例えば、上記設定旋回角度EA1と同様に、走行体10の発進方向(車両軸線A1)に対して30度が設定傾倒方向角度EA2として設定される。
【0037】
走行規制装置155は、旋回角度検出器61によって検出された旋回体20の旋回角度と、首振り角度検出器64によって検出された作業台40の首振り角度とに基づいて、平面視における走行体10の車両軸線A1に対する走行操作レバー71の傾倒方向角度を求める。そして、求めた走行操作レバー71の傾倒方向角度と、予め設定記憶されている設定傾倒方向角度EA2とを比較する。そして、走行操作レバー71の傾倒方向角度が設定傾倒方向角度EA2以内のときに、走行操作レバー71から操作信号を受けると、走行操作レバー71の傾倒操作方向に応じた走行方向、且つ、図5において2点鎖線L1で示すように走行操作レバー71の傾倒操作量に応じた目標走行速度に直ちに到達させるような制御信号を制御バルブユニット80の走行制御バルブV1,V2に出力し、左右の走行モータ16L,16Rが駆動されて走行体10の走行制御が行われる。
【0038】
その一方、走行規制装置155は、例えば、図4において2点鎖線で示す作業台40″のように、旋回体20を旋回させずにブーム30が走行体10の前方に延びた状態で、垂直ポスト37に対して作業台40を略90度首振りさせた場合や、旋回体20を旋回させるとともに作業台40を首振りさせた場合等、旋回角度検出器61および首振り角度検出器64の検出結果に基づいて求めた走行操作レバー71の傾倒方向角度が設定傾倒方向角度EA2を超えるときに、走行操作レバー71から操作信号を受けると、先ず、作業台40に設けられた警報装置90に警報信号を出力する。警報装置90は、走行規制装置155から警報信号を受けると、警報ランプおよび警報ブザーによって、走行操作レバー71の傾倒操作方向と走行体10の発進方向とが大きくずれた状態であり、意図しない方向に走行体10が発進する可能性がある旨を作業者に報知する。
【0039】
このような警報作動が、走行操作レバー71が傾倒操作されてから所定時間tまで継続される。そして、図5に示すように、所定時間tが経過した後に、走行操作レバー71の傾倒操作方向に応じた走行方向、且つ、図5において実線L2で示すように所定時間tからtまでの時間をかけて徐々に走行操作レバー71の傾倒操作量に応じた目標走行速度に到達させるような制御信号を制御バルブユニット80の走行制御バルブV1,V2に出力し、左右の走行モータ16L,16Rが駆動されて走行体10の走行制御が行われる。
【0040】
このように、走行操作レバー71の傾倒方向角度が設定傾倒方向角度EA2を超えるときには、走行操作レバー71が傾倒操作されても直ちに走行体10が発進されることはなく、先ずは警報装置90による警報ランプおよび警報ブザーによって警報作動が行われる。そして、警報作動が所定時間t継続された後に、走行操作レバー71の傾倒方向角度が設定傾倒方向角度EA2以内のときよりも、走行体10がゆっくりと発進され、走行操作レバー71の傾倒操作量に応じた目標走行速度まで時間をかけて到達させるようになっている。従って、作業者に注意を促して、意図していない方向への走行体10の急発進を防止することができる。
【0041】
これまで本発明に係る実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、旋回角度検出器61がポ
テンショメータやロータリエンコーダ等を用いて構成されると説明したが、旋回角度検出器61は、走行フレーム11の上面に旋回角度検出用のドグを設けるとともに、旋回体20の下面にリミットスイッチや近接スイッチを設けた構成としてもよい。また、上述の実施形態では、走行操作レバー71が左右のクローラ機構15に対応する2本の操作レバーを有し、各操作レバーの操作量(および操作方向)を変えることで進行方向を変更する構成であると説明したが、走行操作レバー71は、1本の操作レバーの傾倒方向に応じて進行方向を変更する構成や、1本の走行レバーとダイヤル(もしくはスイッチ)を有してダイヤル操作により進行方向を変更する構成であってもよい。
【0042】
上述の実施形態では、警報装置90による警報作動が行われた後に、走行体10を発進させる制御について説明したが、警報作動が行われている間であっても、走行操作レバー71が傾倒操作されると直ちに走行体10を超低速にて発進させる制御を行うようにしてもよい。また、走行体10が発進された後であっても警報装置90による警報作動を継続するようにしてもよい。また、上述の実施形態では、設定角度EA1,EA2を超えたときに、図5において実線L2で示すように所定時間tからtまでの時間をかけて徐々に走行速度を増加させる制御について説明したが、図6の実線L2′で示すように所定時間tからtまでは一定の低速度を保持し、その後に走行速度を直ちに増加させる(段階的に増加させる)制御を行うようにしてもよい。また、上述の実施形態では、クローラ式の自走高所作業車1を例示して説明したが、ホイール式の自走高所作業車等においても本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 高所作業車
10 走行体
20 旋回体
30 ブーム
40 作業台
50 コントローラ(走行制御手段)
55 走行規制装置(傾倒方向角度演算手段)
61 旋回角度検出器(旋回体旋回角度検出手段)
64 首振り角度検出器(作業台旋回角度検出手段)
70 操作装置
71 走行操作レバー
90 警報装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6