(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】シートスライド装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2018124195
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 範生
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189184(JP,A)
【文献】特開2007-196870(JP,A)
【文献】特開2005-119613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付け可能なロアレールと、シートの下部に取り付け可能であり、前記ロアレールに摺動可能に係合しているアッパレールと、を備えており、前記アッパレールは、レール短手方向に進退可能に設けられているロックツメを備えているシートスライド装置の製造方法であり、
前記ロアレール用の板材に複数
の第1孔と複数
の第2孔を形成する孔形成工程と、
前記板材をロアレール形状に曲げ加工する曲げ工程と、
を備えており、
前記ロアレールは、
底板部と、レール短手方向で前記底板部の両端のそれぞれから上方に向かって延びている一対の外縦板部と、夫々の前記外縦板部の上端からレール短手方向の中央へ向けて横方向に延びている一対の上板部と、夫々の前記上板部の内側端から下方へ延びている一対の内縦板部を備えており、
複数の前記第1孔は、レール長手方向に沿って前記内縦板
部に設けられており、前記ロックツメと係合するピッチと孔サイズを備えており、
複数の前記第2孔は、前記ロアレールのレール長手方向の端と、複数の前記第1孔の並びの端との間でレール長手方向に沿って分布しており、
複数の前記第1孔と複数の前記第2孔は全体で前記ロアレールの長手方向の全体にわたっており、
複数の前記第2孔は、複数の前記ロックツメが係合できないピッチで配置されている、または、前記ロックツメが係合できないように前記ロックツメの高さとは異なる高さに配置されている、または、前記ロック
ツメの先端のサイズよりも小さい径を有している、
製造方法。
【請求項2】
前記ロアレールの端に最も近い前記第2孔と前記ロアレールの端との間の距離が、前記第2孔のピッチよりも短い、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートをスライドさせるシートスライド装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シートをスライドさせるシートスライド装置は、車体に取り付け可能なロアレールと、シートの下部に取り付け可能なアッパレールを備えている。アッパレールはロアレールに対して摺動可能に係合している。
【0003】
シートスライド装置は、ロアレールに対してアッパレールを固定するロック機構を備えている。一般的なロック機構は、ロアレールに設けられた複数の孔と、アッパレールに設けられたロックツメで構成される(例えば特許文献1)。ロックツメは、孔に対して挿抜可能に揺動する。ロックツメが複数の孔のいずれかに係止されるとアッパレールがロアレールに対して固定される。ロックツメが後退して係止が解除されると、アッパレールがロアレールに対して摺動可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロックツメと係合する複数の孔はアッパレールの長手方向の一部に設けられていることが多い。孔列が設けられている部分と設けられていない部分ではロアレールの剛性に差が生じる。ロアレールは、板材を曲げ加工して作られる。それゆえ、レールの長手方向で剛性が異なる部分が存在すると、曲げ戻りに差が生じてしまい、剛性の異なる部分でわずかながら形状に差が生じてしまう。本明細書は、シートスライド装置の製造方法に関し、ロアレールのレール長手方向で形状に差が生じ難い製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するシートスライド装置は、車体に取り付け可能なロアレールと、シートの下部に取り付け可能なアッパレールを備えている。アッパレールは、ロアレールに摺動可能に係合している。アッパレールは、レール短手方向に進退可能なロックツメを備えている。ロアレールは、レール長手方向に並んでいるとともにロックツメと係合する複数の第1孔と、レール長手方向で第1孔と並んでいる第2孔を備えている。第2孔は、ロックツメと係合できない位置に配置されている。又は、第2孔は、ロックツメが係合できない大きさを有している。このシートスライド装置は、ロアレールの長手方向の全体にわたって孔列を備えているため、長手方向で剛性のばらつきが小さい。それゆえ、加工時の曲げ戻りの差が小さく、ロアレールは長手方向で形状差が小さい。なお、第2孔は、ロックツメが係合できない位置に配置されている、又は、ロックツメが係合できない大きさを有しているので、ロックツメが誤って第2孔に係合してしまうことがない。
【0007】
アッパレールには、第1ピッチで長手方向に並んでいる複数のロックツメを備えている場合がある。その場合、ロアレールは、第1ピッチで並んでいる複数の第1孔と、第1ピッチと異なる第2ピッチで並んでいる複数の第2孔を備えていてよい。あるいは、第2孔は、第1孔とは異なる高さに設けられていてもよい。いずれの場合も、ロックツメは第2孔に係合できない。
【0008】
一つの典型的なロアレールは、レール長手方向の中央部分に複数の第1孔を備えている。その場合、ロアレールの長手方向の両端部分に第2孔が設けられているとよい。本明細書は、そのようなシートスライド装置に適した製造方法も提供する。その製造方法は、ロアレール用の板材の中央部分に複数の第1孔を設けるとともに両端部分に複数の第2孔を形成する孔形成工程と、板材をロアレール形状に曲げ加工する曲げ工程を備えている。ロアレールの板材の全長にわたって孔列を設けることで、中央部分と両端部分で曲げ戻りが同程度となる。それゆえ、ロアレールの中央部分と両端部分の形状差が小さくなる。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例のシートスライド構造の側面図である。
【
図4】ロック部材を通るYZ平面でカットしたシートスライド装置の断面図である。
図4(a)はロック状態を示しており、
図4(b)はロック解除状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して実施例のシートスライド装置100を説明する。
図1に、自動車に取り付けられたシートスライド装置100の側面図を示す。シートスライド装置100は、ロアレール1とアッパレール2で構成されている。アッパレール2は、ロアレール1に対して摺動可能に取り付けられている。ロアレール1は車両のフロアパネル90に固定される。アッパレール2は、シート91のシートクッション91aの下部に取り付けられる。アッパレール2の前端と後端にネジ孔30が設けられており、シートクッション91aはボルト92によってアッパレール2に固定される。
【0012】
図2にシートスライド装置100の斜視図を示し、
図3にアッパレール2の斜視図を示す。図中の座標系のX軸はレール長手方向に相当し、Y軸はレール短手方向に相当する。Z軸の正方向が上方向に相当する。座標系の各軸の方向は、以降の図でも同じである。
【0013】
ロアレール1は、1枚の金属板から折り曲げ加工(ロールフォーミング加工)によって形成される。ロアレール1は、車体に取り付けられる底板部3と、一対の外縦板部4と、一対の上板部5と、一対の内縦板部6を備えている。一対の外縦板部4は、レール短手方向で底板部3の両端のそれぞれから上方に向かって延びている。一対の上板部5は、夫々の外縦板部4の上端からレール短手方向の中央へ向けて横方向に延びている。一対の内縦板部6は、夫々の上板部5の内側端から下方へ延びている。一対の内縦板部6は、互いに対向している。外縦板部4と内縦板部6は略平行である。一対の内縦板部6には、レール長手方向に沿って並んでいる複数の第1孔7aと複数の第2孔7bが設けられている。複数の第1孔7aは第1ピッチPaで並んでおり、複数の第2孔7bは第2ピッチPbで並んでいる。複数の第1孔7aと複数の第2孔7bは、一対の内縦板部6の夫々に設けられている。
【0014】
アッパレール2の長手方向の中央には、レール長手方向に並んでいる複数のロックツメ14aが設けられている(
図3参照)。複数のロックツメ14aは、第1ピッチPaで並んでいる。ロックツメ14aは、ロック部材14の一部である。ロックツメ14aは、複数の第1孔7aに対して挿抜可能に揺動する。別言すれば、ロックツメ14aは、レール短手方向(図中のY方向)に進退可能である。
【0015】
図4を参照してロックツメ14aの揺動機構について説明する。
図4は、シートスライド装置100を、ロック部材14を通るYZ平面でカットした断面を表している。
図4(a)は、後述するロック状態を示す図であり、
図4(b)は、ロック解除状態を示す図である。
【0016】
ロアレール1の内部に形成された空間のうち、底板部3、外縦板部4、上板部5、及び、内縦板部6によって囲まれている空間はアッパレール2の収容空間8を構成する。収容空間8は一対の内縦板部6同士の間で上方に開放されている。収容空間8にはアッパレール2の一部すなわち下側部が収容されており、アッパレール2の残部すなわち上側部は、ロアレール1において上方に開放された部位から上方に突出している。
【0017】
アッパレール2は、互いに重ね合わせられた一対の金属板9を備えている。金属板9は、収容空間8内に配置されてロアレール1の内縦板部6に対向する一対の側板部10と、側板部10から屈曲して外縦板部4と内縦板部6の間に延びている一対の腕板部11を備えている。腕板部11は、外縦板部4と内縦板部6に対して略平行である。一対の腕板部11は、側板部10の下方側から屈曲し鉛直上方に向かって伸びるように形成された部分である。
【0018】
一対の側板部10のうち+Y方向側に配置されている側板部10には、矩形の複数の開口10aが形成されている。同様に、一対の腕板部11のうち+Y方向側に配置されている腕板部11には矩形の複数の開口11aが形成されている。開口10a、11aのピッチは、先に述べた第1孔7aのピッチ(第1ピッチPa)に等しい(
図3参照)。
【0019】
腕板部11にはローラ12が回転自在に支持されている。ローラ12は、ロアレール1の底板部3の上面に接し、レール長手方向(即ちX軸方向)にアッパレール2をスライド可能に支持している。
【0020】
シートスライド装置100は、レール長手方向(X軸方向)に沿ったアッパレール2の移動が規制されるロック状態(
図4(a))と、レール長手方向(X軸方向)に沿ったアッパレール2の移動が許容されるロック解除状態(
図4(b))を切り換えるスライドロック機構13を備えている。スライドロック機構13はロック部材14を備えている。ロック部材14は、屈曲した金属板で形成されている。ロック部材14は、一対の金属板9のうち+Y方向側に配置されたものに対して、ブラケット15を介して取り付けられている。ブラケット15は、X軸と平行な回転軸16によりロック部材14を回転自在に支持している。
【0021】
ロック部材14はロックツメ14a及び操作部14bを有している。複数のロックツメ14aがロック部材14の端部に形成されている。それぞれのロックツメ14aは、短冊状に形成されており、X軸に沿って1列に並ぶように配列されている。それぞれのロックツメ14aの幅(X方向における寸法)は、開口10a、11a、及び、ロアレール1の第1孔7aの各孔のそれぞれに挿通し得る幅となっている。また、先に述べたように、複数のロックツメ14aのピッチ(配置間隔)は、複数の第1孔7aの配置間隔である第1ピッチPaに等しい。
図4(a)に示すように、ロック状態は、それぞれのロックツメ14aが開口10a、11a、第1孔7aを貫通した状態である。ロックツメ14aが第1孔7aに挿通されることで、ロアレール1に対するアッパレール2のスライド(つまりレール長手方向に沿った移動)が規制される(ロック状態)。
【0022】
操作部14bは、ロック部材14のうち、回転軸16を挟んでロックツメ14aとは反対側の端部に形成された部分である。操作部14bには、ユーザが操作するレバー(不図示)の動きに連動するスライドアンロックレバー50の押し下げピン51が係合している。なお、
図4(a)、(b)では、押し下げピン51の先端のみを示してある。
図4(a)のロック状態から、ユーザがハンドルを引き上げると、押し下げピン51が下がり、操作部14bを押し下げる。ロック部材14は回転軸16周りで回転し、それぞれのロックツメ14aが、開口10a、11a、第1孔7aから引き抜かれる方向に揺動する。すなわち
図4(b)のロック解除状態に移行する。ロック解除状態では、ロアレール1に対するアッパレール2のスライドの規制が解除され、アッパレール2がレール長手方向(X軸方向)に沿って移動することができる(ロック解除状態)。
【0023】
ロック解除状態からユーザが不図示のハンドルを引き下げると、ロックツメ14aが再び、開口10a、11a、第1孔7aを貫通するように揺動し、ロック状態に戻る(
図4(a))。即ち、ユーザのハンドル操作により、ロックツメ14aは、開口10a、11a、第1孔7aに挿入あるいは抜去される。ロックツメ14aは、開口10a、11a、第1孔7aに対して挿抜可能に揺動する。
【0024】
図5に、ロアレール1の斜視図を示す。先に述べたように、ロアレール1の一対の内縦板部6には、第1ピッチPaで並んでいる複数の第1孔7aと、第2ピッチPbで並んでいる複数の第2孔7bが設けられている。スライドロック機構13の複数のロックツメ14aは、第1ピッチPaで並んでいる。ロックツメ14aは、第1孔7aに挿通(嵌合)することはできるが、第2孔7bには、ピッチが異なるので挿通(嵌合)できない。
図5では隠れて見えないが、第1孔7aと第2孔7bは、
図5の座標系において-Y側の内縦板部6にも設けられている。
【0025】
図5に示すように、複数の第2孔7bは、ロアレール1の一対の内縦板部6の長手方向の両端部分の夫々に設けられている。複数の第1孔7aは、一対の内縦板部6の長手方向の中央部分に設けられている。別言すれば、複数の第1孔7aは、内縦板部6の両端部分の第2孔7bに挟まれるように設けられている。複数の第1孔7aは、アッパレール2のロックツメ14aと係合するために設けられている。複数の第2孔7bには、次の利点がある。ロアレール1は、一枚の板材から、折り曲げ加工(ロールフォーミング)によって作られる。複数の第2孔7bを設けないと、板材を曲げた後、複数の第1孔7aが設けられている中央部分と、孔列が設けられていない両端部分で曲げ戻り(スプリングバック)の程度が異なる。孔列の有無で剛性に差が生じ、曲げ加工時に板材に生じる応力に差が出てしまうからである。その結果、ロアレール1の短手方向の断面形状が、中央部分と両端部分で相違してしまう。ロアレール1の両端部分に複数の第2孔7bを設けることで、ロアレール1の両端部分と中央部分の曲げ戻りの程度の差が小さくなる。その結果、両端部分の形状と中央部分の形状の差が小さくなる。
【0026】
なお、中央部分と両端部分の曲げ戻りの相違は、ロアレール1の両端部分に対応する板材部分を曲げ加工機に対して位置決めする治具によっても生じる。治具は、板材の所定部位(ロアレール1のレール長手方向の両端部分に対応する部位)で板材の短手方向(ロアレール短手方向)の端部に押し当てられる。それゆえ、所定部位では板材の短手方向に応力が生じる。その結果、両端部分に生じる応力は、ロアレール1の中央部分に対応する板材部分に生じる応力よりも大きくなる。それゆえ、ロアレール1の両端部分に対応する所定部位では中央部分よりも曲げ戻りが大きくなる。複数の第2孔7bは、ロアレールの両端部分に対応する部位における短手方向の応力を緩和する。複数の第2孔7bは、応力の差によって生じるロアレール両端部分の曲げ戻りを緩和する。
【0027】
図6を参照してロアレール1の製造方法(シートスライド装置の製造方法)を説明する。まず、ロアレール用の平坦な板材60aに、第1ピッチPaでレール長手方向に並ぶ複数の第1孔7aと、第2ピッチPbでレール長手方向に並ぶ複数の第2孔7bを設ける(孔形成工程、
図6(a)参照)。第2孔7bは、レール長手方向の両端部分に相当する部位に設けられ、第1孔7aは、レール長手方向の中央部分に相当する部位に設けられる。別言すれば、第1孔7aと第2孔7bは、板材60aの短手方向の縁と、短手方向の最外側の曲げ予定線(
図6(a)の破線DL)との間で縁に沿って一列に設けられる。なお、第2ピッチPbは第1ピッチPaとは異なる。
【0028】
次に、板材60aを、ロアレール形状に曲げ加工する(曲げ工程)。曲げ加工は、より詳細には、ロールフォーミングと呼ばれる加工方法であり、複数段のローラ対によって平坦な板材60aがロアレール1の形状に徐々に変形される。各段は、複数のローラ対を有しており、各ローラ対は、ローラ周面が対向するように配置されている。板材60aはローラ対の間を通る。夫々のローラ対は適当な角度で傾斜しており、ローラ対の間を通ると板材60aが少し変形する。例えば、
図6(a)に示す平坦な板材60aは、第1段のローラ対を通ると
図6(b)の板材60bのように少し曲げられる。
図6(b)の板材60bが第2段のローラ対を通ると
図6(c)の板材60cのようにさらに少し曲げられる。
図6(c)の板材60cが第3段のローラ対を通ると、
図5に示すように、完成品のロアレール1の形状まで曲げられる。なお、
図6(b)、(c)では、底板部6の湾曲は省略している。実際の曲げ工程では、約30段のローラ対を使って平坦な板材がロアレールの形状まで、徐々に曲げられる。
【0029】
板材60a-60cのロアレール両端部分に相当する部位には第2孔7bが設けられている。第2孔7bは、曲げ加工においてロアレール両端部分に相当する部位に生じる応力を緩和する。その結果、ロアレールの中央部分と両端部分の形状差が小さいシートスライド装置100が得られる。
【0030】
図6(a)に示した1個の板材60aは、その全長がロアレール1の長手方向の長さに等しい。ロアレール1を製造するための板材は、その長さがロアレール1の全長の2倍以上の場合がある。即ち、曲げ加工した1枚の板材を、ロアレールに相当する長さに切断し、複数個のロアレールを得る場合がある。その場合、孔形成工程では、第1孔7aの列と第2孔7bの列を板材長手方向で交互に形成する。曲げ工程の後、第1孔7aの列の両端に第2孔7bが位置するように、板材をロアレール1の長さに切断する(切断工程)。
【0031】
図7、
図8を参照して第1変形例のロアレール1aを説明する。
図7はロアレール1aの斜視図である。
図8は、ロアレール1aを、その短手方向の中央を通るXZ平面でカットした断面図である。ロアレール1aも、レール長手方向の中央部分に設けられている複数の第1孔7aと、ロアレール1aの長手方向の両端部分に設けられている複数の第2孔7cを備えている。第1孔7aと第2孔7cは、一対の内縦板部6の夫々に設けられている。
【0032】
複数の第1孔7aは、実施例のロアレール1の第1孔7aと同じ第1ピッチPaでレール長手方向に並んでいる。複数の第2孔7cも、同じ第1ピッチPaでレール長手方向に並んでいる。複数の第2孔7cは、高さ、即ち底板部3からの高さHbが、第1孔7aの高さHaと異なっている。ピッチが同じであっても高さが異なるので、第2孔7cにはアッパレール2のロックツメ14aが係合しない。一方、第2孔7cは、実施例の第2孔7bと同様に、ロアレール1aの両端部分の曲げ戻りを低減し、中央部分と両端部分の形状の差を小さくする効果を奏する。
【0033】
図9を参照して第2変形例のロアレール1bを説明する。
図9は、第2変形例のロアレール1bの断面図である。
図9は、
図8と同様に、ロアレール1bを、その短手方向の中央を通るXZ平面でカットした断面図である。ロアレール1bも、車体に取り付けられる底板部3と、一対の外縦板部4と、一対の上板部5(
図9では不図示)と、一対の内縦板部6を備えている。内縦板部6に、第1ピッチPaでレール長手方向に並んでいる複数の第1孔7aと、複数の第2孔7dが設けられている。第1孔7aは、レール長手方向で2個の領域A1、A2に分散して設けられている。
図9のロアレール1bは、レール長手方向に2個のアッパレール(即ち2個のシート)が取り付け可能である。ロアレール1cを含むシートスライド装置は、例えば、車両の第2列目のシートと第3列目のシートを固定するのに用いられる。
【0034】
ロアレール1bのレール長手方向で領域A1、A2以外には、第2孔7dが設けられている。複数の第2孔7dは、第1孔7aと同じ第1ピッチPaで並んでいるが、大きさが第1孔7aよりもずっと小さい。それゆえ、第2孔7dは、第1ピッチPaで並んでいるが、ロックツメ14a(
図3参照)が係合できない。第2孔7dの面積は、ロックツメ14aの先端の面積よりも小さければよい。
【0035】
図10を参照して第3変形例のロアレール1cを説明する。
図10は、第3変形例のロアレール1cの断面図である。
図10も、
図8と同様に、ロアレール1cを、その短手方向の中央を通るXZ平面でカットした断面図である。ロアレール1cも、車体に取り付けられる底板部3と、一対の外縦板部4と、一対の上板部5(
図10では不図示)と、一対の内縦板部6を備えている。内縦板部6に、第1ピッチPaでレール長手方向に並んでいる複数の第1孔7aと、複数の第2孔7e、7fが設けられている。
図10のロアレール1cの第1孔7aも、
図9のロアレール1bと同様に、レール長手方向で2個の領域に分散して設けられており、レール長手方向に2個のアッパレール(即ち2個のシート)が取り付け可能である。
【0036】
ロアレール1cのレール長手方向で第1孔7aが設けられていない領域には、第2孔7e、7fが設けられている。第2孔7e、7fは、第1孔7aとは異なる高さに設けられているため、ロックツメ14a(
図3参照)は係合できない。
【0037】
第2孔7e、7fは、下方が切り欠かれている。このように第2孔7e、7fは、一部が切り欠かれていてもよい。また、第2孔7fは、
図10において左端に1個だけ設けられている。このように第2孔7fは、1個だけ単独で設けられていてもよい。
【0038】
実施例のシートスライド装置100の特徴を以下に再記する。シートスライド装置100は、車体に取り付け可能なロアレール1と、シートの下部に取り付け可能なアッパレール2を備えている。アッパレール2は、ロアレール1に対して摺動可能に係合している。ロアレール1は、一枚の金属板材で作られている。ロアレール1は、車体に取り付けられる底板部3と、一対の外縦板部4と、一対の上板部5と、一対の内縦板部6を備えている。一対の外縦板部4の夫々は、底板部3のレール短手方向の両端から上方へ延びている。一対の上板部5の夫々は、夫々の外縦板部4の上端からレール短手方向の中央へ向けて横方向に延びている。一対の内縦板部6の夫々は、夫々の上板部5の内側の端から下方へ向けて延びている。レール長手方向からみると、外縦板部4と上板部5と内縦板部6は、逆U字形状に連なっている。変形例のロアレール1aでは、第1孔7aの高さHaと、第2孔7cの高さHbが異なっている。ここで、孔の高さとは、底板部3から孔までの距離を意味する。
【0039】
ロアレール1の内縦板部6には、レール長手方向に沿って一列に並んでいる複数の第1孔7aと複数の第2孔7bが設けられている。複数の第1孔7aは、第1ピッチPaで内縦板部6のレール長手方向の中央部分に設けられている。複数の第2孔7bは、第2ピッチPbで内縦板部6のレール長手方向の両端部分に設けられている。第2ピッチPbは第1ピッチPaとは異なっている。第1ピッチPaは、アッパレール2に設けられている複数のロックツメ14aのピッチに等しい。なお、ロックツメは、複数でなく単数であってもよい。
【0040】
実施例のレールで説明した技術に関する留意点を述べる。実施例では、レールの長手方向がシートの前後方向に一致するようにシートスライド装置を配置する例を説明した。しかし、シートスライド装置は、シートに対してどのような向きで取り付けられてもよい。例えば、レールの長手方向がシートの横方向(車幅方向)に一致するようにシートスライド装置が取り付けられていてもよい。あるいは、レールの長手方向がシートに対して斜めになるようにシートスライド装置が取り付けられていてもよい。
【0041】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0042】
1、1a、1b、1c:ロアレール
2:アッパレール
3:底板部
4:外縦板部
5:上板部
6:内縦板部
7a:第1孔
7b、7c、7d、7e、7f:第2孔
13:スライドロック機構
14:ロック部材
14a:ロックツメ
60a-60c:板材
100:シートスライド装置