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特許7110024消費電力管理システム、消費電力管理装置、通信機およびコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】消費電力管理システム、消費電力管理装置、通信機およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220725BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J13/00 301A
H02J3/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018145039
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020022284
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳
(72)【発明者】
【氏名】進藤 聡光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 司
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-034975(JP,A)
【文献】特開2003-208684(JP,A)
【文献】特開2014-155197(JP,A)
【文献】特開2007-282456(JP,A)
【文献】特開2013-188078(JP,A)
【文献】特開2017-068623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を使用するユーザの端末装置と、
前記端末装置と通信ネットワークを介して接続する消費電力管理装置と、
前記ユーザの使用する消費電力量を計測する電力量計と、
前記電力量計と接続し、前記電力量計から取得される消費電力量を前記消費電力管理装置に送信する通信機とを備え、
前記消費電力管理装置は、
前記通信機から送信される消費電力量を時系列に取得する消費電力量取得部と、
取得された消費電力量の時間変化に基づいて、30分ごとの開始タイミングから30分経過時の消費電力量の推定値を、前記開始タイミングから30分経過するまでの間所定単位時間ごとに複数回演算する演算部と、
消費電力量を削減する方法の事例情報を含む複数のトライアルデータを記憶する記憶部と、
前記所定単位時間ごとに前記推定値があらかじめ設定された上限値を超えているかどうか判定し、前記推定値が前記上限値を超えていると判定した場合、前記トライアルデータを、通信ネットワークを介して接続する端末装置に送信し、該端末装置に表示させる判定処理部と
前記トライアルデータを作成するトライアルデータ作成部とを備え、
前記トライアルデータ作成部は、実際に実施される消費電力を削減する方法及びその実施タイミングの情報を含むトライアル開始情報を、前記開始タイミングから30分経過するまでの期間における、前記開始タイミングから30分より短い第1の経過時間経過してから前記開始タイミングから30分より短く且つ前記第1の経過時間より長い第2の経過時間経過するまでの間のみ、通信ネットワークを介して前記端末装置から受信可能であって、
前記トライアルデータ作成部は、
前記トライアル開始情報を通信ネットワークを介して前記端末装置から受信すると、前記開始タイミング後に前記トライアル開始情報を受信したタイミングから前記開始タイミング後30分経過時の前記推定値を前記所定単位時間ごとに複数回演算し、前記開始タイミング後30分経過時における実際に測定された消費電力量又はそれとみなされる値と前記推定値との差分値を演算し、
前記差分値と前記トライアル開始情報とを含む前記トライアルデータを作成し、前記記憶部に記憶させることを特徴とする消費電力管理システム。
【請求項2】
前記通信機は、前記電力量計が取り付けられている支柱に取り付けられ、電池駆動であることを特徴とする請求項1に記載の消費電力管理システム。
【請求項3】
電力を使用するユーザの端末装置と通信ネットワークを介して接続する消費電力管理装置であって、
計測機器により測定される消費電力量を時系列に取得する消費電力量取得部と、
取得された消費電力量の時間変化に基づいて、30分ごとの開始タイミングから30分経過時の消費電力量の推定値を、前記開始タイミングから30分経過するまでの間所定単位時間ごとに複数回演算する演算部と、
消費電力量を削減する方法の事例情報を含む複数のトライアルデータを記憶する記憶部と、
前記所定単位時間ごとに前記推定値があらかじめ設定された上限値を超えているかどうか判定し、前記推定値が前記上限値を超えていると判定した場合、前記トライアルデータを、通信ネットワークを介して接続する端末装置に送信し、該端末装置に表示させる判定処理部と
前記トライアルデータを作成するトライアルデータ作成部とを備え、
前記トライアルデータ作成部は、実際に実施される消費電力を削減する方法及びその実施タイミングの情報を含むトライアル開始情報を、前記開始タイミングから30分経過するまでの期間における、前記開始タイミングから30分より短い第1の経過時間経過してから前記開始タイミングから30分より短く且つ前記第1の経過時間より長い第2の経過時間経過するまでの間のみ、通信ネットワークを介して前記端末装置から受信可能であって、
前記トライアルデータ作成部は、
前記トライアル開始情報を通信ネットワークを介して前記端末装置から受信すると、前記開始タイミング後に前記トライアル開始情報を受信したタイミングから前記開始タイミング後30分経過時の前記推定値を前記所定単位時間ごとに複数回演算し、前記開始タイミング後30分経過時における実際に測定された消費電力量又はそれとみなされる値と前記推定値との差分値を演算し、
前記差分値と前記トライアル開始情報とを含む前記トライアルデータを作成し、前記記憶部に記憶させることを特徴とする消費電力管理装置。
【請求項4】
前記トライアルデータ作成部は、前記記憶部に記憶される複数のトライアルデータのうち、ユーザによってあらかじめ登録されているトライアルデータを選択して、前記端末装置に送信することを特徴とする請求項に記載の消費電力管理装置。
【請求項5】
前記トライアルデータ作成部は、前記記憶部に記憶される複数のトライアルデータのうち、前記推定値の前記上限値を超える超過分より大きい前記差分値を含む前記トライアルデータを選択して、前記端末装置に送信することを特徴とする請求項に記載の消費電力管理装置。
【請求項6】
前記判定処理部は、前記記憶部に記憶される複数のトライアルデータのうち、前記差分値の合計が前記推定値の前記上限値を超える超過分より大きくなる前記トライアルデータの組み合わせを選択して、前記端末装置に送信することを特徴とする請求項に記載の消費電力管理装置。
【請求項7】
前記トライアルデータ作成部は、前記実際に測定された消費電力量とみなされる値と前記推定値との差分値を演算する場合において、前記実際に測定された消費電力量とみなされる値を、前記トライアル開始情報の受信後の実際に測定される消費電力量の単位時間あたり変化量が連続して実質的に同一の値となる当該変化量を用いて算出することを特徴とする請求項に記載の消費電力管理装置。
【請求項8】
電力を使用するユーザの端末装置と通信ネットワークを介して接続するコンピュータ装置を、
計測機器により測定される消費電力量を時系列に取得する消費電力量取得手段、
取得された消費電力量の時間変化に基づいて、30分ごとの開始タイミングから30分経過時の消費電力量の推定値を、前記開始タイミングから30分経過するまでの間所定単位時間ごとに複数回演算する演算手段、
消費電力量を削減する方法の事例情報を含む複数のトライアルデータを記憶する記憶手段、
前記所定単位時間ごとに前記推定値があらかじめ設定された上限値を超えているかどうか判定し、前記推定値が前記上限値を超えていると判定した場合、前記トライアルデータを、通信ネットワークを介して接続する端末装置に送信し、該端末装置に表示させる判定処理手段
前記トライアルデータを作成するトライアルデータ作成手段として機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記トライアルデータ作成手段は、実際に実施される消費電力を削減する方法及びその実施タイミングの情報を含むトライアル開始情報を、前記開始タイミングから30分経過するまでの期間における、前記開始タイミングから30分より短い第1の経過時間経過してから前記開始タイミングから30分より短く且つ前記第1の経過時間より長い第2の経過時間経過するまでの間のみ、通信ネットワークを介して前記端末装置から受信可能であって、
前記トライアルデータ作成手段は、
前記トライアル開始情報を通信ネットワークを介して前記端末装置から受信すると、前記開始タイミング後に前記トライアル開始情報を受信したタイミングから前記開始タイミング後30分経過時の前記推定値を前記所定単位時間ごとに複数回演算し、前記開始タイミング後30分経過時における実際に測定された消費電力量又はそれとみなされる値と前記推定値との差分値を演算し、
前記差分値と前記トライアル開始情報とを含む前記トライアルデータを作成し、前記記憶部に記憶させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電力管理システム、消費電力管理装置及、通信機およびコンピュータプログラムに関し、特に、電力需要者であるユーザの節電行動を支援する消費電力管理システム、消費電力管理装置および通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧受電以上の電力需要者と電力会社との間の電力需給契約においては、刻々と変わる需要電力(いわゆるデマンド値)を記録型計量器により30分単位の平均電力として計量し、1月の最大値である最大需要電力等を基準とし契約電力を定め,基本料金の計算根拠としている。契約電力は,需給規模が500キロワット以上となるときまたは特別高圧の場合、1年間を通じての最大需要電力等を基準とし協議によって定め、需給規模が500キロワット未満となる場合、その月の最大需要電力と前11月の最大需要電力のうち、いずれか大きい値としている。したがって、電力需給契約において、電気料金の削減のためには、最大デマンド値を低く抑えることが重要となっている。
【0003】
近年、電力需要者の使用電力量をリアルタイムで監視して、その推移状況からデマンド値を予測するシステムが利用されるようになってきている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
さらに、デマンド値が所定の上限値を超えないように、デマンド値の予測値又は推定値が上限値を超えた場合に、警報を発するなどの注意喚起を行うことや、さらに、事前に決められた所定の電力消費機器(例えば空調機器)の停止を促したり又は自動的に停止させるなどの制御を行うなど、電力の消費を抑えてデマンド値の上昇を抑制するための手法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-178809号公報
【文献】特開2013-015883号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「事業者のお客様:デマンド監視装置のご紹介」、[online]、東北電力株式会社、[平成29年1月23日検索]、インターネット<URL: http://setsuden.tohoku-epco.co.jp/setsuden/corporate/demand.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、デマンド値の上昇を抑制するための手法として、上述の事前に決められた所定の電力消費機器を停止させる制御のような画一的・固定的な消費電力抑制手段に限られず、電力需要者の電力使用状況に応じてよりきめ細かく対応することが可能な消費電力抑制手段の提案について鋭意検討し、電力消費機器に各々計測機器を取り付けず、デマンドデータのみで消費電力削減量を精度良く検出することで、多様でより効果的に消費電力を抑制することができる手段を提案しうる新規な消費電力管理手法を考案した。
【0008】
本発明の目的は、多様でより効果的に消費電力を抑制することができる手段を提案しうる消費電力管理システム、消費電力装置及び通信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の消費電力管理システムは、電力を使用するユーザの端末装置と、端末装置と通信ネットワークを介して接続する消費電力管理装置と、ユーザの使用する消費電力量を計測する電力量計と、電力量計と接続し、電力量計から取得される消費電力量を消費電力管理装置に送信する通信機とを備え、消費電力管理装置は、通信機から送信される消費電力量を時系列に取得する消費電力量取得部と、取得された消費電力量の時間変化に基づいて、所定時間経過時の消費電力量の推定値を演算する演算部と、消費電力量を削減する方法の事例情報を含む複数のトライアルデータを記憶する記憶部と、推定値があらかじめ設定された上限値を超えているかどうか判定し、推定値が前記上限値を超えていると判定した場合、トライアルデータを、通信ネットワークを介して接続する端末装置に送信し、該端末装置に表示させる判定処理部とを備えることを特徴とする。好ましくは、通信機は、電力量計が取り付けられている支柱に取り付けられ、電池駆動である。
【0010】
上記目的を達成するための本発明の通信機は、ユーザの使用する電力量を計測する電力量計に接続され、電力量計により計測された電力量を受信し且つ当該受信した消費電力量を消費電力管理装置に送信する通信装置であって、当該消費電力管理装置は、ユーザに消費電力を削減させるための情報をユーザの端末装置に通信ネットワークを介して送信する、通信装置において、通信装置は、前記電力量計が取り付けられている支柱に取り付けられ、電池駆動であることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するための本発明の消費電力管理装置は、電力を使用するユーザの端末装置と通信ネットワークを介して接続する消費電力管理装置であって、計測機器により測定される消費電力量を時系列に取得する消費電力量取得部と、取得された消費電力量の時間変化に基づいて、所定時間経過時の消費電力量の推定値を演算する演算部と、消費電力量を削減する方法の事例情報を含む複数のトライアルデータを記憶する記憶部と、推定値があらかじめ設定された第1の上限値を超えているかどうか判定し、推定値が第1の上限値を超えていると判定した場合、トライアルデータを、通信ネットワークを介して接続する端末装置に送信し、該端末装置に表示させ、さらに、推定値が第1の上限値より大きい第2の上限値を超えているかどうか判定し、推定値が第2の上限値を超えていると判定した場合、ユーザの使用している所定の電気設備を運転停止させる判定処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力需要者であるユーザに、そのユーザの事情に適合し且つデマンド値を効果的に抑制できる節電方法を提案することができ、ユーザに寄り添った高品質のサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における消費電力管理システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における消費電力管理システムの別の構成例を示す図である。
図3】通信機16Aの機能ブロックを示す図である。
図4】サーバ装置(消費電力管理装置)20の機能を示すブロック図である。
図5】電力量DB210の情報を示す図である。
図6】推定値を演算するための近似手法の例を説明する図である。
図7】トライアルデータ作成部208におけるトライアルデータ作成処理のフローチャートである。
図8】トライアルデータ作成に関連するトップ画面を示す図である。
図9A】トライアルデータ作成のためのトライアルモニタ画面を示す図である。
図9B】トライアルデータ作成のためのトライアルモニタ画面を示す図である。
図9C】トライアルデータ作成のためのトライアルモニタ画面を示す図である。
図10】トライアルDB212の情報を示す図である。
図11】トライアル実施中において、ユーザがトライアルデータ作成のために実際に実施した電力削減方法の行為以外に、別の電力使用開始行為や電力使用停止行為(別の使用電力量変動行為)が行われる場合の積算電力量の変化例を示す図である。
図12】判定処理部206の判定処理のフローチャートである。
図13A】30分需要電力量の推移をリアルタイムで示すデマンド監視画面を示す図である。
図13B】30分値の推移をリアルタイムで示すデマンド監視画面を示す図である。
図14】判定処理部206の別の判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における消費電力管理システムの構成例を示す図である。消費電力管理システムは、当該システムが適用される電力需要者(ユーザ)の建物(住宅、オフィス、工場など)10に設置されている複数の電気設備(空調装置、エレベータ、照明器具、家電機器など)によって消費される電力量を計測する電力量計12、電力量計12により計測される電力量を有線又は無線にて送信する電力量送信機14、電力量送信機14からの電力量を送受信する通信機16、通信機16により受信された電力量を公衆通信ネットワーク(携帯電話網など)を介して受信するサーバ装置20、サーバ装置20と公衆通信ネットワーク(インターネットなど)を介して接続する端末装置18とを備えて構成される。なお、通信機16や端末装置18も、建物10内に設置される電気設備の一部である。
【0016】
電力量計12は、通常、建物10の外部(建物10の外壁、敷地内又は電柱など)に設置され、電力量送信機14は、電力量計12に付随して又は一体化されて配置される。
【0017】
電力量送信機14と通信機16間は、好ましくは低消費電力の近距離無線回線を通じて通信を行い、通信機16は、建物10の屋内に設置される通信中継装置であり、例えば携帯電話網(LTE回線など)である公衆通信ネットワークを介して、電力量送信機14より受信した電力量をサーバ装置20に送信する。図1に示す構成における通信機16は、建物10内に設置されるので、建物10に提供されているAC100V電源を利用可能である。
【0018】
上述の背景技術の項目において述べた通り、電力使用契約におけるいわゆるデマンド契約では、30分需要電力量を計測することになっており、毎時00分、30分を計測開始タイミングとして、そのタイミングから30分経過するまでの各30分間の消費電力量が計測される。電力量送信機14は、電力量計12が計測する1分毎の消費電力量を直接的又は間接的にサーバ装置20に送信し、サーバ装置20は、毎分受信する1分毎の消費電力量(以下、1分値と称する場合がある)を30分間分積算して30分需要電力量(以下、30分値と称する場合がある)を求める。
【0019】
端末装置18は、インターネットに接続可能な汎用のパーソナルコンピュータやタブレット装置などのコンピュータ装置であり、サーバ装置20も通信機能を有するコンピュータ装置であり、サーバ装置20は、端末装置18のウェブブラウザに対してHTMLドキュメントや画像などのオブジェクトを表示するウェブサーバである。
【0020】
端末装置18又はサーバ装置20であるコンピュータ装置は、ハードウェア構成として、インターネットや携帯電話通信網などの各種通信ネットワークと接続する通信装置、RAM、ROM、ハードディスク装置、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置及びCPUなどのプロセッサである演算処理装置を内蔵し、記憶装置に格納されたコンピュータプログラムを演算処理装置が実行することにより、本発明の実施の形態における消費電力管理システムにおける特徴的な機能を実現される。サーバ装置20は、本発明における消費電力管理装置である。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態における消費電力管理システムの別の構成例を示す図である。図2に示す別の構成例では、図1における電力量送信機14及び建物10内に設置される通信機16に代わって、通信機16Aが、建物10の外部で電力量計12と接続して設置される。すなわち、通信機16Aは、図1の電力量送信機14と同様に、建物10外部の支柱などに設置されている電力量計12に付随して電力量計12と有線接続してその支柱に設置される。通信機16Aは、電力量計12により計測される電力量のデータを電力量計12より取得し、その取得した電力量データを例えば携帯電話網(LTE回線など)である公衆通信ネットワークを介してサーバ装置20に送信する。通信機16Aは、建物10の外部に設置されることから、建物10に提供されている例えばAC100Vの商用電源を利用できないため、電池駆動式装置である。
【0022】
図3は、通信機16Aの機能ブロックを示す図である。通信機16Aは、防水の収容ケースに収容されたマイコン基板上に搭載される回路モジュールにより通信制御部161および通信部162の機能を具現する。通信制御部161が、電力量計12から電力量のデータを有線にて受信する。アンテナを有する通信部162は、受信した電力量のデータを公衆通信ネットワークを介してサーバ装置20に送信する。通信機16Aは、収容ケース内部に配置される電池160により駆動される。電池は例えばリチウム一次電池である。
【0023】
通信機16Aは一旦支柱に取り付けられた後は電池交換なしに少なくとも5年、好ましくは10年以上稼働し続けることが要求される装置であり、消費電力の更なる低減化が図られる。例えば、通信機16Aは、eDRX(extended Discontinuous Reception)技術を採用することにより、間欠受信の周期を従来よりも大幅に延長し、スリープ時間を長くすることや、従来は常時電力供給されている通信部162に対して、通信時にのみ電力を供給する機能を導入することで、低消費電力化を図ることができる。さらに、通信部162の通信規格として、LPWA(Low Power Wide Area)技術であって、LTE標準規格である省電力仕様のLTE-M通信方式を採用し、上記eDRX技術と組み合わせることで、消費電力を大幅に低減することができ、電池駆動による通信機16Aの長寿命化が実現される。更なる低消費電力技術や電池の大容量化も採用しうる。
【0024】
図4は、サーバ装置20の機能を示すブロック図であり、サーバ装置20が備える機能部及びサーバ装置20が記憶する情報を示す。サーバ装置20は、消費電力量取得部202、推定値演算部204、判定処理部206及び事例データ作成部208を有する。サーバ装置20のこれらの各機能は、サーバ装置20の記憶装置に格納されるコンピュータプログラムを、サーバ装置20の演算処理装置(CPU)が実行することにより実現される。
【0025】
また、サーバ装置20の記憶装置は、測定された消費電力量を記憶する電力量データベース(電力量DB)210と、後述する実際にトライアル実施された電力量を削減する方法事例であるトライアルデータを記憶するトライアルデータベース(トライアルDB)212を有する。
【0026】
消費電力量取得部202は、毎分の消費電力量を電力量送信機14から直接的又は間接的に取得する。取得された毎分の消費電力量は、サーバ装置20の記憶装置に電力量DB210として順次記憶される。
【0027】
図5は、電力量DB210の情報を示す図である。電力量DB210は、電力需要者(ユーザ)の識別情報(ID)ごとに、1分毎の時刻を含む日時情報とその毎分の1分値、及び毎時00分、30分を計測開始タイミングとした30分値の情報を含む。
【0028】
推定値演算部204は、毎時00分、30分である計測開始タイミングから30分経過するまでの毎回の計測期間において、現在時刻から計測期間の終了時刻までの残り時間の積算電力量の推定値を毎分ごとに演算する。毎分の消費電力量である1分値は1分毎に積算されていき、計測開始タイミングからの積算電力量が1分ごとに求められ、積算電力量推定値は、例えば、計測開始タイミングから演算を実行する時刻より前までの実測による積算電力量に基づいて、既知の手法例えば最小二乗法などの近似手法を用いて、積算電力量の増加の変化量(傾き)を1分毎に演算して求めることで算出される。現在時刻から1分後の推定値、2分後の推定値、・・・、残り時間の終了時刻における推定値のように1分刻みの推定値が求められ、さらに、最新の1分値が取得される1分ごとに推定値は更新演算される。
【0029】
図6は、推定値を演算するための近似手法の例を説明する図である。推定値の近似手法は、上述の最小二乗法に限らず、これと異なる別の近似手法、例えば、図5に示すように、演算時刻に直近の2つの時刻の積算電力量の増加分をそのまま積算電力量の変化量として線形近似し、推定値直線を求める手法であってもよい。
【0030】
判定処理部206は、推定値演算部204により求められた推定値が、あらかじめ設定された上限値を超えるかどうかを判定し、その推定値が上限値を超えていると判定した場合、トライアルDB212に格納されるトライアルデータ、すなわち、実際に実施された消費電力を削減する方法事例を含むデータを、通信ネットワークを介して接続する端末装置18に送信し、該端末装置18に表示させる。
【0031】
トライアルデータ作成部208は、上記トライアルデータを作成する。トライアルデータは、電力需要者(ユーザ)が実際に実施した消費電力を削減する方法の事例の情報であり、ユーザがトライアルとして削減方法(節電方法)を実施し、その効果としての消費電力の実際の削減量を求めて、その方法と効果とをトライアルデータとして登録する(トライアルDB212に記憶する)。
【0032】
ユーザは、平常時に、試行的に様々な節電方法を実施し、その節電方法とそれによる実際の節電量を測定しトライアルデータとして登録しておき(後述のトライアルデータ作成処理参照)、30分値の推定値が上限値を超えそうな事態になった場合に、その登録された節電方法をデマンド監視画面に表示する(後述の判定処理参照)ことで、ユーザは、あらかじめ実施されて節電効果が確認されている具体的な節電方法を即時に実施でき、実際の30分値が上限値を超えないよう適切な対応策を取ることができるようになる。
【0033】
また、多数のユーザがトライアルデータを登録し、多数のユーザによりトライアルデータを共有可能とすることで、ユーザに対して、多様で確実に消費電力削減効果を見込める方法の提案が可能となる。トライアルデータは、以下の手順によって作成される。
【0034】
図7は、トライアルデータ作成部208におけるトライアルデータ作成処理のフローチャートである。トライアルデータ作成部208は、これから実際に実施されようとしている消費電力を削減する方法及びその実施タイミングの情報を含むトライアル開始情報を通信ネットワークを介して端末装置18から受信する(S100)。
【0035】
図8は、トライアルデータ作成に関連するトップ画面を示す図である。ユーザの端末装置18のディスプレイ画面にWebページとして、トライアルデータに関連するトップ画面を表示させる。トップ画面には、既に実施されたトライアルデータの情報(表示欄A)や、ユーザが「お気に入り」として登録されたトライアルデータの情報(表示欄B)、トライアルデータを新規作成するための画面に遷移するためのボタン(表示欄C)などが表示されている。
【0036】
トライアルデータの情報が表示されている領域を選択操作することで、選択されたトライアルデータの内容を表示させることができ、また、いわゆる「お気に入り」に登録しておくこともできる。ユーザ自身が実施したトライアルデータと、他のユーザが実施したトライアルデータの両方を見ることができ、またお気に入り登録することができる。
【0037】
図9A、9B及び9Cは、トライアルデータ作成のためのトライアルモニタ画面を示す図であり、図9Aはトライアル実施前、図9Bはトライアル実施中、図9Cはトライアル終了後の画面例を示す。ユーザは、消費電力を削減する方法(以下、節電方法と称する場合がある)を実施しようとする場合、まず、端末装置18のディスプレイ画面にWebページとして図9Aに示す入力画面を表示させる。図9Aに示す入力画面は、これから実施しようとしている節電方法の内容である基本情報を入力する基本情報入力欄(表示欄D)、節電方法の実施タイミングを決定するためのスタートボタン(表示欄E)、グラフ表示欄(表示欄F)を有する。グラフ表示欄には、毎分、実際に測定された積算電力量(実測値)が電力量DB210より取得され、その推移がリアルタイムに表示されている。
【0038】
図9Aにおいて、ユーザは、まず、これから実施しようとしている節電方法の内容を基本情報入力欄に入力する。入力する内容は、必須項目として、少なくとも(1)実施場所(住所)、(2)実施場所の敷地面積、(3)実施場所にいる人の数、(4)普段使用している電気設備(空調、照明、OA機器、エレベータ、動力コンプレッサなど複数の項目から選択する)、(5)具体的な消費電力削減方法を含む。「具体的な節電方法」は、例えば「全館10分間空調を停止した」など具体的な節電方法を入力する。
【0039】
ユーザは、基本情報入力欄への入力が完了すると、その下に表示されているスタートボタンを例えばマウスでクリックすることで押下する。それと同時に、「具体的な節電方法」で入力された節電方法を実施する。例えば、入力された「具体的な節電方法」が「全館10分間空調を停止した」である場合、ユーザ自身が、対象となる空調機器のスイッチをオフとする。
【0040】
画面上でスタートボタンが押下されることで、その押下された時刻である実施タイミングと節電方法の内容を含む基本入力情報欄に入力された情報が、通信ネットワーク(インターネット)を介して端末装置18から送信され、サーバ装置20によって受信される。
【0041】
図7において、事例データ作成部208は、タイミング情報を受信すると、トライアル開始情報に含まれる節電方法の実施タイミング(時刻)の情報を取得し(S102)、その時刻より前の複数の積算電力量を用いて、30分値の推定値を演算する(S104)。
【0042】
具体的な演算手法は、上述の推定値演算部204の演算手法と同様であり、例えば直近の2つの消費電力量の増加分を積算電力量の変化量として線形近似する手法を採用してもよい(図6参照)。推定値においては、求められる積算電力量の変化量から、残り時間終了時刻までの1分毎の推定値を求めることができる。
【0043】
積算電力量の推定値の演算においては、その時刻よりも前に複数の積算電力量の値が必要であることから、毎時00分、30分である計測開始タイミングから30分経過するまでの期間において、計測開始タイミングから3分以上経過している必要があり、また、計測開始タイミングから30分経過する終了時刻直前(例えば25分以上経過している場合)は、節電方法を実施する期間が残りわずかの時間しかなく、節電効果を得にくいことから、事例データ作成部208が事例データを作成することができる期間は、計測開始タイミングからの経過時間が3分以上且つ25分以下の期間に限られるようにする。この期間以外では、図9Aにおいて、画面上でスタートボタンを押下できないように表示し、トライアル開始情報が送信されないようにする。
【0044】
S104において、推定値を演算した後、その時刻における推定値と実際の積算電力量(実測値)との差分値(実測値-推定値)を求め(S106)、端末装置18に、毎分、その時刻における差分値の情報を送信し(S108)、実測値とともに、図9Bのグラフ表示欄(表示欄F)に棒グラフ表示させる。
【0045】
図9Bのグラフ表示欄には、トライアル開始情報を受信後において、毎分の実測値に上積み表示された差分値が色分けして棒グラフ表示され、積算電力量の実測値と推定値との差分値の推移を視覚的に確認することができるようになっている。差分値を表示する処理は、30分値の計測期間の終了時刻まで続けられる(S110)。
【0046】
終了時刻に到達すると、今回の節電方法を実施した結果情報を端末装置18に送信し(S112)、図9Cに示す結果表示欄(表示欄G)に表示させる。結果情報は、少なくとも今回の節電方法を実施した時間、終了時刻における実測値と推定値の差分値を含み、ユーザは、実際にどの程度の節電効果があったのかを確認することができる。図9Cには、該結果のデータの取扱メニュー(削除、保存など)を表示するメニュー表示欄(表示欄H)が表示される。
【0047】
ユーザは、取扱メニュー欄において、今回の結果情報を保存する操作を行うことで、事例データ作成部208は、最初に入力したトライアル開始情報と得られた結果情報を含むトライアルデータをトライアルDB212に記憶・保存する(S114)。なお、当該トライアルデータを「お気に入り」登録する場合は、トライアルDB212に記憶後に、図8の画面において、当該トライアルデータを表示欄Aに表示させ、「お気に入りに追加」のメニューを選択する操作を行えばよい。
【0048】
図10は、トライアルDB212の情報を示す図である。ユーザによって実際に実施された節電方法一つ一つに対応してトライアルデータが作成され、トライアルデータには(a)ID及び(b)名称が付され、(c)実施ユーザID、(d)基本情報入力欄から入力された基本情報(実施場所、実施場所の敷地面積、実施場所にいる人の数、普段使用している電気設備、具体的な消費電力削減方法を含む)、(e)開始時刻、(f)終了時刻、(g)開始時刻の時点で求められた終了時刻までの1分ごとの推定値、(h)開始時刻から終了時刻までの1分ごとの各時刻における実測値、(i)開始時刻から終了時刻までの1分ごとの各時刻における差分値(実測値-推定値)、(j)1分ごとの電力削減量、(h)「お気に入り」登録しているユーザID、を含む情報がトライアルデータとしてトライアルDB212に記憶される。
【0049】
上記項目(i)における終了時刻における差分値が、このトライアル実施において実際に削減された電力量となるので、上記項目(j)における1分毎の電力削減量は、以下の式(1)により求めることができる。
【0050】
1分ごとの電力削減量=終了時刻の差分値/(終了時刻-開始時刻)・・・(1)
なお、この(i)1分ごとの電力削減量については、トライアル実施中において、ユーザがトライアルデータ作成のために実際に実施した電力削減方法に起因するもの以外の電力変動要因が含まれないようにすることが好ましい。
【0051】
図11は、トライアル実施中において、ユーザがトライアルデータ作成のために実際に実施した電力削減方法の行為以外に、別の電力使用開始行為や電力使用停止行為(別の使用電力量変動行為)が行われた場合の積算電力量の変化例を示す図である。トライアル開始時刻後において、電力削減方法の実施により、推定値よりも実測値が一律に減少していくが、例えば別の電力使用が開始されることで、実測値の変化量が変化し、当該別の電力使用行為に基づく電力変動量(図11の斜線部分)が実測値に含まれてしまう。
【0052】
そこで、ユーザがトライアルデータ作成のために実際に実施した電力削減方法のみに起因する電力削減量を、例えば以下の手法により求める。
【0053】
トライアル実施中において、別の使用電力量変動行為が行われなければ、実測値の毎分変化量(すなわち1分値)はほぼ一定と考えられ、別の使用電力量変動行為が行われた時点で、実測値の毎分変化量は変化すると仮定し、トライアル実施中における実測値の毎分変化量が連続して実質的に同一の値(「特定変化量」と称する)(図11の傾きCに相当)を抽出し、以下の式(2)により、補正実測値を求める。
【0054】
補正実測値=開始時刻における実測値+特定変化量×(終了時刻-開始時刻)・・・(2)
上記(2)式により求められる補正実測値は、実測値とみなされる値であって、この補正実測値を用いて、(終了時刻における推定値-補正実測値)を「終了時刻における差分値」として、上記式(1)により、「1分ごとの電力削減量」を求める。
【0055】
なお、別の使用電力量変動行為が行われた時点で、実測値の毎分変化量が変化するため、好ましくは、実測値の毎分変化量の変化の有無を監視し、変化する前の特定変化量を用いる。別の使用電力量変動行為による電力変動分を除去するための演算手法は、上述の手法に限られない。
【0056】
図12は、判定処理部206の判定処理のフローチャートである。判定処理部206は、推定値演算部204により求められた推定値が、あらかじめ設定された上限値を超えるかどうかを判定し、その推定値が上限値を超えていると判定した場合、トライアルDB212に格納されるトライアルデータ、すなわち、実際に実施された消費電力を削減する方法事例を含むデータ(図9参照)を、通信ネットワークを介して接続する端末装置18に送信し、該端末装置18に表示させる処理を実行する。ユーザの端末装置18のディスプレイ画面には、30分値の推移がリアルタイムで表示されている。
【0057】
図13A、13Bは、30分値の推移をリアルタイムで示すデマンド監視画面を示す図である。ユーザは、端末装置18のディスプレイ画面にWebページとして図13Aに示すデマンド監視画面を表示させる。図13Aに示すデマンド監視画面は、30分値における現在時点のリアルタイムの積算電力量を棒グラフで表示するグラフ表示欄(表示欄部I)、現在時点での30分終了時刻における推定値(1分ごとに更新)を表示する推定値表示欄(表示欄J)を有して構成される。
【0058】
消費電力量取得部202によって取得された1分値は、サーバ装置20の記憶装置に電力量DB210として順次記憶されている。判定処理部206は、1分ごとに、電力量DB210に記憶される最新の1分値を読み出し、それを積算していき、1分ごとにその積算電力量を端末装置18に送信する(S300)。端末装置18によって受信された積算電力量の推移が棒グラフにより図13Aのグラフ表示欄に表示される。
【0059】
また、判定処理部206は、推定値演算部204によって求められる残り時間における1分毎の推定値(計測期間終了時刻までの1分間隔の推定値)を推定値演算部204より取得し、端末装置18に送信する(S302)。端末装置18によって受信された推定値は、図13Aの推定値表示欄に表示される。
【0060】
判定処理部206は、取得した推定値が、残り時間の間にあらかじめ設定された上限値を超えているかどうか判定する(S304)。上限値は、現在電気料金の算出に適用されている最大需要電力量(デマンド値)、又は事前に注意喚起を促すためのデマンド値より低いアラートレベルの値であり、あらかじめ設定されている。
【0061】
ステップS304において、いずれの時刻の推定値も上限値を超えていないと判断された場合は、ステップS306において計測期間の終了時刻が経過していなければ、S300に戻り、次の1分の1分値を取得し、S300乃至S304の処理が繰り返される。
【0062】
S304において、いずれかの時刻の推定値が上限値を超えていると判断された場合、警報情報を端末装置18に送信して表示させ(S308)、さらに、トライアルDB212からトライアルデータを読み出して、端末装置18に送信して表示させる(S310)。
【0063】
警報情報は、図13Bに示すように、少なくとも推定値が上限値に達する時間、及び計測期間終了時における超過電力量(推定値-デマンド値)の情報を有し、図13Bの警報表示欄(点表示欄K)に表示される。
【0064】
また、端末装置18に表示されるトライアルデータは、トライアルDB212から読み出され、トライアルデータに含まれる少なくとも「具体的な節電方法」及び「削減量」の項目が送信され、端末装置18のディスプレイ画面に表示されるようにし、ユーザに、節電の実施を促す。「削減量」は、トライアルデータにおける「1分毎の電力削減量」×(終了時刻までの残り時間)により求められる。トライアルデータは、図13Bのトライアルデータ表示欄(表示欄L)に示すように、ポップアップ表示される。ユーザにとっては、警報とともに、節電方法の具体的な方策とその削減量の目安が示されるので、即時に行動を取ることができ、ユーザに対して、より高品質のサービスを提供することができる。
【0065】
ステップS304において、いずれかの時刻の推定値が上限値を超えていると判断された場合も、ステップS306において計測期間の終了時刻が経過していなければ、S300に戻り、次の1分の消費電力量を取得し、S300乃至S304の処理が繰り返される。
【0066】
このとき、再度、推定値が上限値を超えている場合は、警報情報が更新表示され、トライアルデータも再度トライアルDB212から読み出されて表示される。
【0067】
ステップS306において、計測期間の終了時刻に達した場合(30分経過した場合)は、消費電力量の積算、推定値演算、警報表示やトライアルデータ表示などをリセットし(S312)、ステップ300に戻り、次の計測期間の処理に移行する。
【0068】
ステップ310において端末装置18に表示されるトライアルデータは、例えば、以下の基準に基づいてトライアルDB212から選択されるようにする。選択されるトライアルデータ数は例えば最大5件程度とする。
【0069】
(1)ユーザが「お気に入り」登録しているトライアルデータを選択する。ユーザが「お気に入り」登録しているトライアルデータは、ユーザ自身が実施したものや、他のユーザが実施したものであるがそのユーザにも適用できるものをユーザ自身が選んでおいたものであり、ユーザに多様な節電手法が提供される。
【0070】
(2)超過電力量より大きい削減量を有するトライアルデータを選択する。選択の優先順位は、ユーザの「お気に入り」に登録しているトライアルデータ(他のユーザが実施したものも含む)、ユーザ自身が実施したトライアルデータ(「お気に入り」に登録していないもの)、他のユーザが実施したトライアルデータ(「お気に入り」に登録していないもの)の順である。
【0071】
(3)削減量の合計が超過電力量より大きくなるトライアルデータの組み合わせを作成する。一つのトライアルデータでは、削減量が超過電力量に満たない場合に、複数のトライアルデータを組み合わせるものであり、組み合わせの優先順位は、ユーザの「お気に入り」に登録しているトライアルデータ(他のユーザが実施したものも含む)、ユーザ自身が実施したトライアルデータ(「お気に入り」に登録していないもの)、他のユーザが実施したトライアルデータ(「お気に入り」に登録していないもの)の順である。
【0072】
図14は、判定処理部206の別の判定処理のフローチャートである。別の判定処理は、図12に示した判定処理において、S308の警報送信後に一定条件の下で電気設備の運転を強制的に停止させる処理を含む。具体的には、判定処理部206には、第1の上限値と、それより高い第2の上限値の2つの上限値が設定され、2段階処理が行われる。図14のフローチャートにかかる以下の説明において、図12の処理と重複するまたは実質的に同一の処理については図12と同一の参照番号を付し、簡略説明する。
【0073】
判定処理部206は、残り時間における1分毎の推定値を推定値演算部204より取得し、端末装置18に送信する(S302)。端末装置18によって受信された推定値は、図13Aの推定値表示欄に表示される。
【0074】
判定処理部206は、取得した推定値が、残り時間の間にあらかじめ設定された第1の上限値を超えているかどうか判定する(S304)。第1の上限値は、現在電気料金の算出に適用されている最大需要電力量(デマンド値)、又は事前に注意喚起を促すためのデマンド値より低いアラートレベルの値であり、あらかじめ設定された値であり、図12の判定処理における「上限値」と実質的に同一の値であってもよい。
【0075】
さらに、判定処理部206は、取得した推定値が、残り時間の間にあらかじめ設定された第2の上限値を超えているかどうか判定する(S320)。第2の上限値は、第1の上限値より大きい値である。
【0076】
ステップS304において、いずれの時刻の推定値も第1の上限値を超えていない(第2の上限値も超えていない)と判断された場合は、ステップS306において計測期間の終了時刻が経過していなければ、S300に戻り、次の1分の1分値を取得し、S300乃至S304の処理が繰り返される。
【0077】
ステップS304において、推定値が第1の上限値を超えていると判断され、且つS320において、推定値が第2の上限値を超えていない場合、図12の処理と同様に、警報情報を端末装置18に送信して表示させ(S308)、さらに、トライアルDB212からトライアルデータを読み出して、端末装置18に送信して表示させる(S310)。
【0078】
ステップS304において、いずれかの時刻の推定値が第1の上限値を超え、さらに、ステップS320において、推定値が第2の上限値を超えていると判断された場合、ユーザが節電方法を実施していないか不十分である可能性があり、この場合は、あらかじめ登録された電気設備の運転を強制的に停止する(S322)。ユーザによって登録された所定の電気設備を遠隔にて停止するようにすることで、デマンド値の上昇を確実に抑制する。サーバ装置20からの遠隔操作により、空調機器などの電気設備を直接運転停止するために、運転停止対象となる電気設備には、サーバ装置20と通信可能な通信機が取り付けられる。電気設備に取り付けられる通信機(図示せず)は、例えば上述の図3に示した通信機16AのようなIoT機器であって、サーバ装置20と公衆通信ネットワークを介して通信可能であって、電気設備と制御可能に接続される、サーバ装置20の判定処理部206からの制御信号に基づいて、電気設備を停止させる。複数の運転停止対象の電気設備が登録されている場合は、運転停止対象のすべての電気設備を同時に停止させてもよいし、または、優先順位を付けて順次停止するようにしてもよい。電気設備に取り付けられる通信機も、図3に示した通信機16Aと同様に、さまざまな省電力技術を採用した電池駆動式装置であってもよい。
【0079】
ステップS306において、計測期間の終了時刻に達した場合(30分経過した場合)は、消費電力量の積算、推定値演算、警報表示やトライアルデータ表示などをリセットし(S312)、ステップ300に戻り、次の計測期間の処理に移行する。
【0080】
本発明の実施の形態においては、30分最大需要電力(デマンド値)により電気料金を定めるユーザが、日常的にそのデマンド値の変化を監視するデマンド監視を行うにあたって、デマデマンド値が上限値を超えそうになった局面において、ユーザの事情にあわせて実際に実施されその節電効果が確認された(節電量が把握されている)節電方法を登録しておき、その節電方法を提案するようにすることで、一律ではなく、ユーザの事情に適合した節電方法、また、上限値超えを確実に防ぐことができる節電方法を提案することができ、ユーザに寄り添った高品質のサービスを提供することができる。
【0081】
また、本発明の実施の形態は、デマンド監視サービスにおいて実施される場合に限らず、節電方法を提供する手段として、さまざまな節電サービスに利用することができる。
【0082】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
10:建物、12:電力量計、14:電力量送信機、16:通信機、16A:通信機、18:端末装置、20:サーバ装置、202:消費電力量取得部、204:推定値演算部、206:判定処理部、208:トライアルデータ作成部、210:電力量DB、212:トライアルデータDB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14