(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】クラッチユニット
(51)【国際特許分類】
F16D 41/10 20060101AFI20220725BHJP
F16D 41/067 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D41/067
(21)【出願番号】P 2018205177
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 恭兵
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-199993(JP,A)
【文献】特開2010-255837(JP,A)
【文献】特開2004-92718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/10
F16D 41/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーの回動により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御する入力側クラッチ部と、前記入力側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断する出力側クラッチ部とからなり、
前記入力側クラッチ部は、前記操作レバーが固定される側板と、前記側板と嵌合する外輪部材と、を備え、
前記出力側クラッチ部は、回転が拘束された静止部材を備えたクラッチユニットであって、
前記操作レバーの回動角度を規制する角度規制部が、前記外輪部材および前記静止部材の外周縁よりも径方向内側に配設されているクラッチユニット。
【請求項2】
前記角度規制部は、前記外輪部材に設けられた爪部と、前記静止部材に設けられ、前記爪部を周方向移動可能に収容してその移動端で係止させる被係止部とで構成されている請求項1に記載のクラッチユニット。
【請求項3】
前記入力側クラッチ部と前記出力側クラッチ部が自動車用シートリフタ部に組み込まれている請求項1又は2に記載のクラッチユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転トルクが入力される入力側クラッチ部と、入力側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側からの回転トルクを遮断する出力側クラッチ部とを備えたクラッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
円筒ころ等の係合子を用いるクラッチユニットでは、入力部材と出力部材間にクラッチ部が配設される。クラッチ部は、入力部材と出力部材間で係合子を係合および離脱させることにより、回転トルクの伝達および遮断を制御する構成になっている。
【0003】
本出願人は、レバー操作(操作レバーの回動)により座席シートを上下調整する自動車用シートリフタ部に組み込まれるクラッチユニットを先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示されたクラッチユニットは、
図8に示すように、レバー操作により回転トルクが入力されるレバー側クラッチ部111と、レバー側クラッチ部111からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部112とを備えている。
【0005】
レバー側クラッチ部111は、レバー操作により回転トルクが入力される外輪114を備えている。また、ブレーキ側クラッチ部112は、外輪123と、カバー124と、回転が拘束された静止部材としての側板125を備えている。
【0006】
外輪123およびカバー124の切り欠き凹部123b,124aに、側板125の爪部125aを嵌合させて加締めている。これにより、側板125、外輪123およびカバー124が一体化されている。
【0007】
特許文献1のクラッチユニットでは、操作レバーの回動角度を規制する角度規制部132が、
図9および
図10に示すように、外輪114およびカバー124の外周に設けられている。角度規制部132は、外輪114の外周に設けられた爪部114cと、カバー124の外周に設けられた切り欠き凹部124bとで構成されている。
【0008】
レバー操作により外輪114が回転すると、その外輪114の爪部114cがカバー124の切り欠き凹部124b内で周方向に移動する。その移動端で爪部114cが切り欠き凹部124bの周方向端面124cに当接する。
【0009】
このように、レバー操作による外輪114の回転時、爪部114cを切り欠き凹部124bの周方向端面124cで係止させることにより、操作レバーの回動角度を規制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1で開示されたクラッチユニットの爪部114cは、外輪114の外周を径方向外側に延設すると共に軸方向に屈曲させた形状をなす。この形状により、爪部114cをカバー124の外周に位置する切り欠き凹部124b内に配置している。
【0012】
このような構造を有する角度規制部132の場合、爪部114cをカバー124の外周まで径方向外側に延設しなければならない。そのため、爪部114cが大きくなり、外輪114の重量が増大するという問題があった。
【0013】
また、カバー124の外周には、側板125および外輪123を一体化するための加締め部(切り欠き凹部124aに嵌合された爪部125a)が配設されている。そのため、この加締め部を避けるように、切り欠き凹部124bをカバー124の外周に設けなければならない。
【0014】
この加締め部の存在により、切り欠き凹部124bの配置が制約されることから、角度規制部132のレイアウト自由度が低く、操作レバーの許容回動角度が制限されるという問題もあった。
【0015】
そこで、本発明は前述の課題に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、外輪の軽量化および角度規制部のレイアウト自由度の向上を図り得るクラッチユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るクラッチユニットは、操作レバーの回動により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御する入力側クラッチ部と、その入力側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断する出力側クラッチ部とからなる基本構成を具備する。
【0017】
本発明の入力側クラッチ部は、操作レバーが固定される側板と、その側板と嵌合する外輪部材と、を備え、本発明の出力側クラッチ部は、回転が拘束された静止部材を備えている。
【0018】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、操作レバーの回動角度を規制する角度規制部が、外輪部材および静止部材の外周縁よりも径方向内側に配設されていることを特徴とする。
【0019】
本発明では、角度規制部を外輪部材および静止部材の外周縁よりも径方向内側に配設したことにより、従来のように、外輪部材の爪部を静止部材の外周まで径方向外側へ延設する必要がないので、外輪部材の軽量化を容易に実現できる。また、静止部材の外周にある加締め部を避ける必要もないので、角度規制部のレイアウト自由度を向上させることができる。
【0020】
本発明における角度規制部は、外輪部材に設けられた爪部と、静止部材に設けられ、爪部を周方向移動可能に収容してその移動端で係止させる被係止部とで構成されていることが望ましい。
【0021】
このような構造を採用すれば、レバー操作により回転トルクが入力された外輪部材の爪部を静止部材の被係止部内で移動させてその移動端で係止させることで、操作レバーの回動角度を規制する構成を容易に実現できる。
【0022】
本発明における入力側クラッチ部および出力側クラッチ部は、自動車用シートリフタ部に組み込まれた構造が望ましい。
【0023】
このような構造を採用すれば、入力側クラッチ部をレバー側クラッチ部とし、出力側クラッチ部をブレーキ側クラッチ部とすることで、シートリフタ部の軽量化が図れ、シートリフタ部における操作レバーのレイアウト自由度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、角度規制部を外輪部材および静止部材の外周縁よりも径方向内側に配設したことにより、従来のように、外輪部材の爪部を静止部材の外周まで径方向外側へ延設する必要がないので、外輪部材の軽量化を容易に実現できる。また、静止部材の外周にある加締め部を避ける必要もないので、角度規制部のレイアウト自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態で、クラッチユニットの全体構成を示す断面図である。
【
図4】自動車の座席シートおよびシートリフタ部を示す構成図である。
【
図5】
図1のカバーおよび外輪部材を示す組立分解斜視図である。
【
図8】従来におけるクラッチユニットの全体構成を示す断面図である。
【
図9】
図8のカバーおよび外輪を示す組立分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るクラッチユニットの実施形態を図面に基づいて詳述する。以下の実施形態では、自動車用シートリフタ部に組み込まれたクラッチユニットを例示するが、自動車用シートリフタ部以外にも適用可能である。
【0027】
図1はクラッチユニットの全体構成を示す断面図、
図2は
図1のP-P線に沿う断面図、
図3は
図1のQ-Q線に沿う断面図である。この実施形態の特徴的な構成を説明する前にクラッチユニットの全体構成を説明する。
【0028】
この実施形態のクラッチユニット10は、
図1に示すように、入力側クラッチ部としてのレバー側クラッチ部11と、出力側クラッチ部としてのブレーキ側クラッチ部12とをユニット化した構造である。
【0029】
レバー側クラッチ部11は、レバー操作(操作レバーの回動)により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御する。ブレーキ側クラッチ部12は、レバー側クラッチ部11からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断する逆入力遮断機能を有する。
【0030】
レバー側クラッチ部11の主要部は、
図1および
図2に示すように、側板13と、外輪部材14と、内輪15と、複数の円筒ころ16と、保持器17と、内側センタリングばね18と、外側センタリングばね19とで構成されている。
【0031】
側板13は、その外周縁部から軸方向(ブレーキ側クラッチ部12側)に延びる爪部13aを有する。爪部13aは、外輪部材14の外周縁部に形成された切り欠き凹部14aに嵌合して加締められる。これにより、側板13と外輪部材14とが一体化されている。側板13および外輪部材14への回転トルクの入力は、側板13に取り付けた操作レバー43(
図4参照)により行われる。
【0032】
内輪15は、出力軸22が挿通される筒状部15aと、筒状部15aのブレーキ側端部を径方向外側に延在させた拡径部15bと、拡径部15bの外周端部を軸方向に屈曲させて延びる複数の柱部15c(
図3参照)とからなる。内輪15は、外輪部材14から入力される回転トルクをブレーキ側クラッチ部12に伝達する。
【0033】
外輪部材14の内周には、複数のカム面14bが周方向等間隔に形成されている。カム面14bと、内輪15の筒状部15aの円筒状外周面15dとの間には、楔すきま20が形成されている。
【0034】
円筒ころ16は、外輪部材14と内輪15との間に配置される。円筒ころ16は、外輪部材14のカム面14bと内輪15の外周面15dとの間に形成された楔すきま20での係合および離脱により外輪部材14からの回転トルクの伝達および遮断を制御する。
【0035】
保持器17には、円筒ころ16を楔すきま20で保持するポケット17aが周方向複数箇所に等間隔で形成されている。
【0036】
内側センタリングばね18は、保持器17とブレーキ側クラッチ部12のカバー24との間に配設された断面円形のC字状弾性部材であり、その両端部を保持器17およびカバー24の一部に係止させている。
【0037】
内側センタリングばね18は、レバー操作により外輪部材14から回転トルクが入力されると、静止状態にあるカバー24に対して、外輪部材14に追従する保持器17の回転に伴って拡径して弾性力が蓄積される。外輪部材14からの回転トルクの入力がなくなると、内側センタリングばね18の弾性力により保持器17が中立状態に復帰する。
【0038】
内側センタリングばね18の径方向外側に位置する外側センタリングばね19は、外輪部材14とブレーキ側クラッチ部12のカバー24との間に配設されたC字状帯板弾性部材であり、その両端部を外輪部材14およびカバー24の一部に係止させている。
【0039】
外側センタリングばね19は、レバー操作により外輪部材14から回転トルクが入力されると、静止状態にあるカバー24に対して、外輪部材14の回転に伴って拡径して弾性力が蓄積される。外輪部材14からの回転トルクの入力がなくなると、外側センタリングばね19の弾性力により外輪部材14が中立状態に復帰する。
【0040】
ブレーキ側クラッチ部12の主要部は、
図1および
図3に示すように、レバー側クラッチ部11から延びる内輪15の柱部15cと、出力軸22と、静止系としての外輪23、カバー24および側板25と、複数対の円筒ころ27および断面N字形の板ばね28と、摩擦リング29とで構成されている。
【0041】
出力軸22は、内輪15の筒状部15aが外挿された軸部22aと、その軸部22aの略中央部位から径方向外側に延びる大径部22bと、軸部22aの出力側端部に同軸的に形成されたピニオンギヤ部22dとからなる。出力軸22には、レバー側クラッチ部11からの回転トルクが出力される。
【0042】
大径部22bの外周には、複数(
図3では6つ)の平坦なカム面22eが周方向等間隔に形成されている。大径部22bのカム面22eと外輪23の円筒状内周面23aとの間には、楔すきま26が形成されている。
【0043】
楔すきま26に、二つの円筒ころ27とその間に介挿された一つの板ばね28とが配されている。円筒ころ27は、楔すきま26での係合および離脱により、出力軸22から逆入力される回転トルクの遮断と内輪15から入力される回転トルクの伝達とを制御する。板ばね28は、円筒ころ27同士に周方向への離反力を付勢する。
【0044】
複数対(
図3では6対)の円筒ころ27および板ばね28は、内輪15の柱部15cにより周方向等間隔に配設されている。内輪15の柱部15cは、外輪部材14から入力される回転トルクを出力軸22に伝達する機能と、円筒ころ27および板ばね28をポケット15fに収容して周方向等間隔に保持する機能とを有している。
【0045】
また、大径部22bには、内輪15からの回転トルクを出力軸22に伝達するための突起22fが設けられている。突起22fは、内輪15の拡径部15bに形成された孔15eに周方向のクリアランスをもって挿入配置されている。
【0046】
ピニオンギヤ部22dは、シートリフタ部39(
図4参照)と連結される。軸部22aの入力側端部にウェーブワッシャ30を介してワッシャ31を圧入することにより、レバー側クラッチ部11の構成部品を抜け止めしている。
【0047】
外輪23およびカバー24の外周縁部に切り欠き凹部23b,24aを形成すると共に、側板25の外周縁部に爪部25aを形成する。切り欠き凹部23b,24aに爪部25aを嵌合させて加締めることにより、外輪23、カバー24および側板25が一体化されている。
【0048】
摩擦リング29は、例えば樹脂製の部材であり、側板25に固着されている。摩擦リング29は、出力軸22の大径部22bに形成された環状凹部22cの内周面22gに嵌め合い代をもって圧入されている。
【0049】
摩擦リング29の外周面29aと環状凹部22cの内周面22gとの間に生じる摩擦力によって、レバー操作時、静止状態の側板25に固着された摩擦リング29に対して摺動する出力軸22に回転抵抗が付与される。
【0050】
以上のような構造を具備するレバー側クラッチ部11およびブレーキ側クラッチ部12の動作例を以下に説明する。
【0051】
レバー側クラッチ部11では、レバー操作により外輪部材14に回転トルクが入力されると、円筒ころ16が外輪部材14と内輪15間の楔すきま20に係合する。楔すきま20での円筒ころ16の係合により、内輪15に回転トルクが伝達されて内輪15が回転する。このとき、外輪部材14および保持器17の回転に伴って両センタリングばね18,19に弾性力が蓄積される。
【0052】
レバー操作による回転トルクの入力がなくなると、両センタリングばね18,19の弾性力により保持器17および外輪部材14が中立状態に復帰する。一方で、内輪15は、与えられた回転位置をそのまま維持する。従って、操作レバー43(
図4参照)のポンピング操作による外輪部材14の回転繰り返しで、内輪15は寸動回転する。
【0053】
ブレーキ側クラッチ部12では、座席シート40(
図4参照)への着座により出力軸22に回転トルクが逆入力されても、円筒ころ27が出力軸22と外輪23間の楔すきま26と係合して出力軸22が外輪23に対してロックされる。
【0054】
このようにして、出力軸22から逆入力された回転トルクは、ブレーキ側クラッチ部12によってロックされてレバー側クラッチ部11へ逆入力される回転トルクの還流が遮断される。これにより、座席シート40の座面高さは保持される。
【0055】
一方、レバー操作によりレバー側クラッチ部11からの回転トルクが内輪15に入力されると、内輪15の柱部15cが円筒ころ27と当接して板ばね28の弾性力に抗して円筒ころ27を押圧する。
【0056】
これにより、円筒ころ27が楔すきま26から離脱する。楔すきま26からの円筒ころ27の離脱により、出力軸22のロック状態が解除されて出力軸22は回転可能となる。このとき、摩擦リング29により出力軸22に回転抵抗が付与される。
【0057】
そして、内輪15がさらに回転すると、内輪15の拡径部15b(の孔15e)と出力軸22の突起22fとのクリアランスが詰まって、内輪15の拡径部15bが出力軸22の突起22fに回転方向で当接する。
【0058】
これにより、レバー側クラッチ部11からの回転トルクは、突起22fを介して出力軸22に伝達されて出力軸22が回転する。つまり、内輪15が寸動回転すると、出力軸22も寸動回転する。これにより、座席シート40の座面高さが調整可能となる。
【0059】
以上で説明したクラッチユニット10は、レバー操作により座席シート40の座面高さを調整する自動車用シートリフタ部39に組み込まれて使用される。
図4は自動車の乗員室に装備される座席シート40を示す。
【0060】
図4に示すように、座席シート40の座面高さは、レバー側クラッチ部11の側板13(
図1参照)に取り付けられた操作レバー43を回動させることによって調整される。シートリフタ部39は、以下の構造を具備する。
【0061】
スライド可動部材44にリンク部材45,46の一端が回動自在に枢着されている。リンク部材45,46の他端は座席シート40に回動自在に枢着されている。リンク部材45の他端にはセクターギヤ47が一体的に設けられている。セクターギヤ47は出力軸22のピニオンギヤ部22dに噛合している。
【0062】
例えば、座席シート40の座面を低くする場合、レバー側クラッチ部11でのレバー操作、つまり、シートリフタ部39の操作レバー43を下側へ回動させることにより、ブレーキ側クラッチ部12(
図1参照)のロック状態を解除する。
【0063】
ブレーキ側クラッチ部12でのロック解除時、摩擦リング29(
図1参照)により出力軸22に適正な回転抵抗を付与することで、座席シート40の座面をスムーズに低くすることができる。
【0064】
ブレーキ側クラッチ部12でのロック解除により、レバー側クラッチ部11からブレーキ側クラッチ部12に伝達された回転トルクでもって、ブレーキ側クラッチ部12の出力軸22のピニオンギヤ部22dが時計方向(
図4の矢印方向)に回動する。
【0065】
そして、ピニオンギヤ部22dと噛合するセクターギヤ47が反時計方向(
図4の矢印方向)に回動し、リンク部材45とリンク部材46が共に傾倒して座席シート40の座面が低くなる。
【0066】
このようにして、座席シート40の座面高さを調整した後、操作レバー43を開放すると、操作レバー43が両センタリングばね18,19の弾性力によって上側へ揺動して元の位置(中立状態)に戻る。
【0067】
なお、操作レバー43を上側へ回動させた場合は、前述とは逆の動作で座席シート40の座面が高くなる。座席シート40の座面高さを調整した後に操作レバー43を開放すると、操作レバー43が下側へ回動して元の位置(中立状態)に戻る。
【0068】
この実施形態におけるクラッチユニット10の全体構成は、前述のとおりであるが、その特徴的な構成である操作レバー43の回動角度を規制する角度規制部32について、以下に詳述する。
【0069】
角度規制部32は、
図5および
図6に示すように、ブレーキ側クラッチ部12(
図1参照)のカバー24およびレバー側クラッチ部11(
図1参照)の外輪部材14の外周縁よりも径方向内側に配設されている。
【0070】
カバー24の径方向内側、具体的に、カバー24のうち外側センタリングばね19が配された部位よりも径方向内側部位には、カバー24を板厚方向(軸方向)に貫通する複数(本実施形態では、3つ)の貫通穴24bが形成されている。本実施形態では、貫通穴24bは、周方向に沿う円弧状のスリットである。貫通穴24bは、後述する外輪部材14の爪部14cが係止する被係止部としての機能を有している。
【0071】
一方、外輪部材14の径方向内側、具体的に、外輪部材14のうちカバー24の貫通穴24bと軸方向に対応する部位には、爪部14cが設けられている。爪部14cは、外輪部材14の外周縁部のうち隣り合う切り欠き凹部14aの間からカバー24側に延びる突起である。
【0072】
外輪部材14の爪部14cをカバー24の貫通穴24bに周方向(レバー回動方向)に移動可能に収容してその移動端で係止可能とすることにより、操作レバー43の角度規制部32を構成している。
【0073】
角度規制部32を構成する爪部14cおよび貫通穴24bは、外輪部材14およびカバー24の周方向3箇所に等間隔で形成されている(
図7参照)。このように、角度規制部32を複数箇所(図では3箇所)に配置することにより、操作レバー43の回動によって発生する応力を分散させることで部品強度を確保することが可能となる。
【0074】
本実施形態では、角度規制部32を複数箇所に配置しているが、部品強度を確保することが可能であれば、角度規制部32を1箇所のみに配置してもよい。
【0075】
操作レバー43の角度規制部32では、操作レバー43の回動により回転トルクが外輪部材14に入力されて外輪部材14が回転すると、その外輪部材14の爪部14cがカバー24の貫通穴24bで周方向(レバー回動方向)に移動する。
【0076】
その移動端で爪部14cが貫通穴24bの周方向端面24cに当接する。このように、爪部14cを貫通穴24bの周方向端面24cで係止させることにより、操作レバー43の回動角度を規制する。
【0077】
本実施形態の角度規制部32は、カバー24の貫通穴24bを外側センタリングばね19が配された部位よりも径方向内側に形成すると共に、外輪部材14の爪部14cをカバー24の貫通穴24bと対応する部位に設けている。
【0078】
これにより、従来のように、外輪部材14の爪部14cをカバー24の外周まで径方向外側へ延設する必要がないので、外輪部材14の軽量化を容易に実現できる。また、カバー24の外周にある加締め部(切り欠き凹部24aに嵌合された爪部25a)を避ける必要もないので、貫通穴24bの配置が制約されず、角度規制部32のレイアウト自由度を向上させることができ、操作レバー43の許容回動角度が制限されることもない。
【0079】
なお、被係止部は貫通穴24bに限らず、非貫通穴(単なる窪み)であってもよい。
【0080】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0081】
10 クラッチユニット
11 入力側クラッチ部(レバー側クラッチ部)
12 出力側クラッチ部(ブレーキ側クラッチ部)
13 側板
14 外輪部材
14c 爪部
24 静止部材(カバー)
24b 被係止部(貫通穴)
32 角度規制部
39 シートリフタ部