(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-22
(45)【発行日】2022-08-01
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220725BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/54 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20220725BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20220725BHJP
H01M 4/13 20100101ALN20220725BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/533
H01M50/54
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M50/593
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2018236339
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】町田 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】小倉 正也
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-070918(JP,A)
【文献】特開平09-092338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/40-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質が塗工された活物質領域と、前記活物質が未塗工の領域であって前記活物質領域から突出した形状を有するタブ部と、を有する複数の電極シートと、
前記電極シートのうち正極となる正極シートと前記電極シートのうち負極となる負極シートとが交互に積層された状態で前記正極シートの前記活物質領域と前記負極シートの前記活物質領域との間に挟まれる複数のセパレータと、
同一の極性となる前記電極シートの複数の前記タブ部と接合される集電部品と、を有し、
前記複数の電極シート及び前記複数のセパレータは、積層状態で積層体を構成し、
前記集電部品は、前記複数の電極シート及び前記複数のセパレータが積層される方向を第1の方向とした場合、前記第1の方向において前記積層体の一方の端部に位置する第1の電極シートの側で複数の前記タブ部を束ね、
前記複数の電極シートは、
前記第1の方向において前記積層体の他方の端部に位置する第2の電極シートと、
複数の前記タブ部を束ねた状態で折り曲げた収納状態において、前記第2の電極シートにより形成されるたわみを前記第1の方向に直交する側面方向から前記第2の電極シートを見たときに前記たわみの底部の下方の前記積層体に位置する第3の電極シートと、を含み、
前記第2の電極シートと前記第3の電極シート
に該当する前記電極シートに限定して、短絡防止措置構造が設けられ
、
前記短絡防止措置構造は、前記タブ部側の前記活物質領域の辺に沿った所定の領域に絶縁物質が塗工又は貼り付けられる構造であり、前記所定の領域は、前記活物質領域の前記タブ部側の辺から前記積層体となった状態で前記セパレータの端部よりも前記タブ部の端部側に張り出す領域に設定される二次電池。
【請求項2】
前記収納状態において、前記第2の電極シートの前記たわみの頂点となる第1の頂点の下方の前記積層体に位置する第4の電極シートから前記第2の電極シートに至る範囲に設定される第1の短絡防止措置範囲と、
前記収納状態において、前記第2の電極シートの前記第1の頂点から前記底部に至る範囲において曲率が変化する変曲点の下方の前記積層体に位置する第5の電極シートから前記底部から前記タブ部の端部に至る範囲の曲線の頂点となる第2の頂点の下方の積層体に位置する第6の電極シートに至る範囲に設定される第2の短絡防止措置範囲と、を有し、
前記第1の短絡防止措置範囲と前記第2の短絡防止措置範囲とに含まれる前記複数の電極シートの少なくとも一部には、短絡防止措置構造が設けられる請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記短絡防止措置構造は、前記短絡防止措置構造が設けられない他の電極シートよりもシート厚が厚くなる構造である請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記短絡防止措置構造は、前記電極シートのうち前記正極シートに対してのみ設けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記集電部品に取り付けられる取り出し電極をさらに有し、
前記集電部品は、収納状態においてU字形状に折り曲げられた形状とされ、前記U字形状の一方の面において複数の前記タブ部と接合され、前記U字形状の他方の面において前記取り出し電極と接合され、
前記取り出し電極は、前記収納状態において前記第1の方向と直交する方向に突出するように設けられる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記積層体を収納するケースと、
一方の面に前記集電部品が設けられ、他方の面に前記取り出し電極が取り付けられ、かつ、前記ケースを封止する蓋と、
を有する請求項
5に記載の二次電池。
【請求項7】
前記セパレータは、前記正極シートの前記活物質領域と前記負極シートの前記活物質領域とのいずれの面積よりも広い面積を有し、前記積層体となった状態で、前記正極シートの前記活物質領域及び前記負極シートの前記活物質領域よりも前記タブ部側に突出する請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に関し、例えば、複数の正極シートと複数の負極シートを有し、正極シートと負極シートが交互に積層される構造を有する二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では、正極シートと負極シートとによりセパレータを挟み込む構造により発電体を形成する。また、二次電池は、発電体の面積の大きさにより電池容量が決まる。二次電池では、1つの二次電池の体積あたりの電池容量(以下容量効率と称す)を高めるために、発電体の二次電池内への収納方法が様々考えられている。収納方法の1つとして、広い面積のシート状の発電体を巻いて筒形状とする捲回体構造がある。また、別の収納方法として、複数の正極板と複数の負極板及び複数のセパレータを、正極シートと負極シートとの間にセパレータが挟まれる形態で積層する積層構造がある。
【0003】
二次電池では、集電体を構成するシートを束ね、集電体から電力を取り出す集電部品に要する体積をいかに小さくするかが容量効率に影響する要素の1つとしてある。そこで、特許文献1に捲回体構造の発電体を有する二次電池におけるタブ部の構造及びタブ部への集電板の取り付け方法の一例が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の積層式電池は、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極板と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極板とが、セパレータを介して積層されてなる積層電極体を備え、前記正極板および前記負極板が、それぞれ辺縁部から突出する正極リードおよび負極リードを有する積層式電池であって、前記正極リードおよび前記負極リードの少なくとも一方において、正極活物質層ないし負極活物質層に隣接する部位に、光硬化性樹脂よりなる保護層が形成されていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構造は、セパレータのズレによる正極板と負極板との短絡を防止するために保護層を設けるものであり、正極板の全て又は負極板の全てに保護層を設けなければならない。そのため、この保護層に要する製造コストが増大する問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、集電部品に要する体積を削減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の二次電池の一態様は、活物質が塗工された活物質領域と、前記活物質が未塗工の領域であって前記活物質領域から突出した形状を有するタブ部と、を有する複数の電極シートと、前記電極シートのうち正極となる正極シートと前記電極シートのうち負極となる負極シートとが交互に積層された状態で前記正極シートの前記活物質領域と前記負極シートの前記活物質領域との間に挟まれる複数のセパレータと、同一の極性となる前記電極シートの複数の前記タブ部と接合される集電部品と、を有し、前記複数の電極シート及び前記複数のセパレータは、積層状態で積層体を構成し、前記集電部品は、前記複数の電極シート及び前記複数のセパレータが積層される方向を第1の方向とした場合、前記第1の方向において前記積層体の一方の端部に位置する第1の電極シートの側で複数の前記タブ部を束ね、前記複数の電極シートは、前記第1の方向において前記積層体の他方の端部に位置する第2の電極シートと、前記複数のタブ部を束ねた状態で折り曲げた収納状態において、前記第2の電極シートにより形成されるたわみを前記第1の方向に直交する側面方向から前記第2の電極シートを見たときに前記たわみの底部の下方の前記積層体に位置する第3の電極シートと、を含み、前記第2の電極シートと前記第3の電極シートは、短絡防止措置構造が設けられる。
【0009】
本発明にかかる二次電池は、短絡防止措置構造を設ける電極シートを第2の電極シートと第3の電極シートに該当する電極シートに制限する。これにより、本発明にかかる二次電池は、正極シートと負極シートの短絡を防止しながら製造コストを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二次電池によれば、二次電池の製造コスト削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる二次電池の外観を表す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる二次電池のケースに収納される発電体の構造及び発電体の製造工程を説明する図である。
【
図3】実施の形態1にかかる二次電池の集電部品の詳細を説明する図である。
【
図4】実施の形態1にかかる二次電池における短絡防止措置領域を説明する図である。
【
図5】実施の形態1にかかる二次電池における短絡防止措置構造を説明する図である。
【
図6】実施の形態1にかかる二次電池における短絡防止措置構造を有する電極シートの製造方法を説明する図である。
【
図7】実施の形態2にかかる二次電池における短絡防止措置構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
まず、
図1に実施の形態1にかかる二次電池1の外観を表す図を示す。
図1では、複数の二次電池を組み合わせて形成する組電池の1つのセルを表した。
図1に示すように実施の形態1にかかる二次電池1は、ケース10、蓋11、負極極柱12、正極極柱13を有する。
【0014】
ケース10には、二次電池の電気エネルギーを蓄積する発電体が収納される。蓋11は、発電体をケース10に密閉するための蓋である。負極極柱12及び正極極柱13は、ケース10内の発電体と電気的に接続され、発電体に対して電流の入出力を行うための電極である。また、実施の形態1にかかる二次電池1では、負極極柱12及び正極極柱13がケース10から突出するように設けられる。
図1では図示を省略したが、実施の形態1にかかる二次電池1では、ケース内に格納される発電体に取り付けられる負極極柱12及び正極極柱13をケース外に取り出すための取り出し穴が蓋11に設けられる。そして、負極極柱12及び正極極柱13は、蓋11に設けられた取り出し穴を介してケース内に設けられる集電部品と接合される。実施の形態1にかかる二次電池1では、ケース10内に格納する発電体の格納方法(例えば、集電部品の形状及び格納方法)に特徴の1つを有する。そこで、以下では、実施の形態1にかかる二次電池1の発電体及び集電部品について詳細に説明する。
【0015】
図2に実施の形態1にかかる二次電池のケースに収納される発電体の構造及び発電体の製造工程を説明する図を示す。
図2は、発電体の製造工程を簡易的に示すものである。
図2では、発電体の製造工程を3つの段階に別けて示した。
【0016】
図2に示すように、発電体の製造工程では、まず、活物質が塗工された活物質領域と、活物質が未塗工の領域であって活物質領域から突出した形状を有するタブ部と、を有する複数の電極シートと、セパレータとを重ねて発電体を構成する。以下の説明では、この発電体を積層体20と称す。この積層体20では、正極シートと負極シートの間にセパレータが挟まれるように各シートを積層される。ここで、正極シートと負極シートについて説明する。
【0017】
例えば、正極シートには、活物質として、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2等が塗工される。また、負極シートには、活物質として、例えば、黒鉛(LiC6)、チタネイト(Li4Ti5O12)等が塗工される。そして、積層体20では、正極シートにおいて活物質が塗工される活物質領域と、負極シートのうち活物質が塗工される活物質領域と、が重ね合わされるように積層され、セパレータはこの正負の活物質領域に挟まれるように設けられる。
【0018】
また、
図2の第1の工程を説明する図に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、同一の極性となる電極シートの複数のタブ部を束ねる。具体的には、正極シートの正極タブ部21pと負極シートの負極タブ部21nをそれぞれ個別に束ねる。このとき、実施の形態1では、複数の電極シート及び複数のセパレータが積層される方向を第1の方向(
図2の第1の工程の図において上下方向となる方向)とした場合、第1の方向において積層体20の一方の端部(
図2の第1の工程の図において最も下側になるシート)に位置する第1の電極シートの側で複数のタブ部を束ねる。なお、第1の電極シートについては
図4及び
図5において符号を付して詳細に説明する。
【0019】
続いて、第2の工程では、第1の工程で束ねたタブ部に対して集電部品を取り付ける。この集電部品は、正極集電部品22p、負極集電部品22nを有する。そして集電部品は、蓋11を介して、台座23、取り出し電極(例えば、負極極柱12及び正極極柱13)と接合される。第2の工程では、正極集電部品22p及び負極集電部品22nは、L字形状となっており、L字形状の一方の面に取り付けられたタブ接合部25p、25nにおいて第1の工程において束ねた複数のタブ部と接合される。なお、第2の工程における接合は、超音波接合が用いられる。
【0020】
また、正極集電部品22pは、蓋11を貫通するかしめ部材(不図示)により正極集電部品22pのL字形状の他方の面が正極極柱13と電気的に接合される。また、かしめ部材(不図示)により負極集電部品22nのL字形状の他方の面が負極極柱12と電気的に接合される。このように、集電部品と極柱とを別部品として組み立てることで、接合工程における作業性を向上させることができる。また、蓋11により負極集電部品22n、正極集電部品22p、負極極柱12及び正極極柱13を一体化させることで、この後の第3の工程の作業性を向上させる。また、
図2に示すように、負極極柱12及び正極極柱13は、それぞれ台座23の上に設けられる。この台座23は、
図1で示した蓋11に密着され、積層体20がケース10に収納された後の密閉性を高める。
【0021】
続いて、
図2に示した第3の工程について説明する。
図2の第3の工程の図に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、正極集電部品22p及び負極集電部品22nをL字型からU字型に折り曲げる。そして、集電部品を折り曲げた後に、集電部品全体を負極極柱12及び正極極柱13が第1の方向(第3の工程の図において図面奥行き方向)も対して直交する方向に突出するように正極タブ部21p及び負極タブ部21nを折り曲げる。そして、実施の形態1にかかる二次電池1では、正極タブ部21p及び負極タブ部21nを折り曲げた状態で積層体20をケース10に収納する。
【0022】
ここで集電部品について詳細に説明する。そこで、
図3に実施の形態1にかかる二次電池の集電部品の詳細を説明する図を示す。なお、
図3では、集電部品のうち正極集電部品22pのみを示した。
図3では、折り曲げられていない収納状態でない集電部品の形態(つまり、
図2の第2の工程での集電部品の状態)を示した。
図3では、正極集電部品22p、蓋11及び正極極柱13を組み立てる前の状態を示した。
図3に示すように、正極集電部品22pは、蓋11の一方の面に設けられる。また、蓋11の他方の面には台座23及び正極極柱13が設けられる。そして、正極集電部品22pと台座23は、かしめ部材24a、24bにより接合される。ここで、
図3に示すように、正極集電部品22pの台座接合部22p_1には、穴24cが設けられ、蓋11には穴24dが設けられ、台座23には穴24eが設けられる。そして、実施の形態1にかかる二次電池1を組み立てる場合、かしめ部材24aが穴24c、24d、24eを貫通させ、かしめ部材24a及びかしめ部材24bにより、正極集電部品22p、蓋11及び台座23をかしめることで接合する。
【0023】
また、正極集電部品22pは、台座接合部22p_1、屈曲部22p_2、及び、集電板22p_3により構成される。集電板22p_3は、屈曲部22p_2の一方の面に設けられ、台座接合部22p_1は、屈曲部22p_2の他方の面に設けられる。集電板22p_3には、正極タブ部21pが接合される。この集電板22p_3と正極タブ部21pが接合される部分がタブ接合部25pとなる。屈曲部22p_2は、
図2の第2の工程及びL字形状とされ、第3の工程においてU字形状とされる。
図3においては、L字形状となった状態である。
【0024】
実施の形態1にかかる二次電池1では、このように正極タブ部21p及び負極タブ部21nを折り曲げた状態でケース10に積層体20を収納する。そのため、実施の形態1にかかる二次電池1では、折り曲げられるタブ部に曲げ応力がかかり、本来正極シートと負極シートを絶縁するセパレータが破損することがある。そこで、実施の形態1にかかる二次電池1では、このセパレータ破れが生じた場合においても正極シートと負極シートの短絡を防止するための措置を構造として設ける。そこで、以下では、実施の形態1にかかる二次電池1の電極シートに設けられる短絡防止措置構造について説明する。なお、以下では、正極シートに対して設ける短絡防止措置構造について説明するが、負極シートに短絡防止措置構造を設けてもよい。
【0025】
図4に実施の形態1にかかる二次電池における短絡防止措置領域を説明する図を示す。
図4は、積層体20をケース10に収納した収納状態において、積層体20を正極極柱13が近くなる側面から見た側面図を模式的に表したものである。なお、
図4の説明において、第1の電極シートから第6の電極シートについて説明するが、第3の電極シートから第6の電極シートについては、
図5において符号を付した具体例を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0026】
図4に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、積層体20の上方(
図4の上下方向において上になる側)に正極集電部品22p、正極極柱13等を有する集電部品が設けられる。また、
図4では、複数のタブ部が束ねられる状態を第1の電極シート26と第2の電極シート27とで囲まれるシルエットとして表した。また、実施の形態1にかかる二次電池1では、複数のタブ部が、正極集電部品22pに設けられたタブ接合部25pによって束ねられる。なお、複数のタブ部を含む正極タブ部21pとタブ接合部25pは、超音波接合によりそれぞれの金属が溶融された状態で接合される。
【0027】
ここで、第1の電極シート26と第2の電極シート27について説明する。まず、第1の電極シートは、複数の電極シート及び複数のセパレータが積層される方向を第1の方向とした場合、第1の方向において積層体20の一方の端部に位置する電極シートであって、正極タブ部21pを束ねる際の基準となる電極シートである。この第1の電極シート26は、正極タブ部21pを折り曲げた収納状態において、タブ接合部25pで束ねられた電極シートのうち正極極柱13に最も近い側に位置する電極シートとなる。
【0028】
また、第2の電極シート27は、第1の方向において積層体20の他方の端部(第1の電極シート26が位置する側と反対側の端部)に位置する電極シートである。この第2の電極シートは、正極タブ部21pを折り曲げた収納状態において、タブ接合部25pで束ねられた電極シートのうち正極極柱13に最も遠い側に位置する電極シートとなる。
【0029】
そして、
図4に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域とが設けられる。この短絡防止措置領域は、電極シートに正極タブ部21pの折り曲げに起因する応力が正極シートにかかる部分である。そして、実施の形態1にかかる二次電池1では、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域とに含まれる正極シートの少なくとも一部には短絡防止措置構造が設けられる。この短絡防止措置構造の詳細は後述する。
【0030】
ここでは、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域の決め方について説明する。
図4に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、正極タブ部21pを折り曲げた状態で第2の電極シート27によるたわみが形成される。そして、第1の短絡防止措置領域は、第2の電極シート27のたわみの頂点となる第1の頂点の下方の積層体20に位置する第4の電極シートから第2の電極シート27に至る範囲に設定される。
【0031】
また、第2の短絡防止措置領域には、第3の電極シートを含む。この第3の電極シートは、複数の正極タブ部21pを束ねた状態で折り曲げられた収納状態において、第2の電極シート27により形成されるたわみを第1の方向に直交する側面方向から第2の電極シート27を見たときにたわみの底部の下方の積層体20に位置する。第2の短絡防止措置領域は、この第3の電極シートを含む領域として設定される。
【0032】
具体的には、第2の短絡防止措置領域は、第5の電極シートから第6の電極シートに至る範囲に設定される。第5の電極シートは、正極タブ部21pを折り曲げた収納状態において、第2の電極シート27の第1の頂点か底部に至る範囲において曲率が変化する変曲点の下方の積層体20に位置する電極シートである。第6の電極シートは、第2の電極シート27のたわみの底部から正極タブ部21pの端部に至る範囲の曲線の頂点となる第2の頂点の下方の積層体20に位置する電極シートである。
【0033】
続いて、実施の形態1にかかる二次電池1において用いられる短絡防止構造について説明する。そこで、
図5に実施の形態1にかかる二次電池における短絡防止措置構造を説明する図を示す。
図5は、短絡防止措置構造を説明するために積層体20の部分を模式的に表したものである。なお、
図5の説明においては、正極シートに32a~32fの符号を付したが、正極シート全体について説明する場合には、単に正極シート32と称す。
【0034】
図5に示すように、積層体20では、負極シート31と正極シート32が交互に配置され、かつ、負極シート31と正極シート32の間にセパレータが挟まれる。また、負極シート31と正極シート32はそれぞれ活物質が塗工された領域を有する。そして、負極シート31の活物質領域は、正極シート32の活物質領域よりも広い面積を有する。特に、負極シート31の活物質領域の積層体20のタブ部側の辺は、正極シート32の活物質領域のタブ部側の辺よりも突出するように、各シートが設けられる。また、セパレータの積層体20のタブ部側の辺は、負極シート31の活物質領域と、正極シート32の活物質領域の両方よりもタブ部側において突出する大きさを有する。
【0035】
そして、
図5に示す例では、正極シート32a~32fのうち正極シート32a、32d、32eに対して短絡防止措置構造を設けた。この短絡防止措置構造は、タブ部側の活物質領域の辺に沿った所定の領域に絶縁膜33が塗工又は貼り付けられる構造である。また、所定の領域は、活物質領域のタブ部側の辺から積層体20となった状態でセパレータの端部よりもタブ部の端部側に張り出す領域に設定される。
【0036】
図5に示す例では、第1の短絡防止措置領域には、正極シート32a、32bが含まれる。正極シート32aは、第2の電極シート27に該当するものである。また、第4の電極シートは、
図5において正極シート32bの左隣の負極シートが該当する。この第1の短絡防止措置領域に属するシートには、収納状態において引っ張る方向の応力がかかる。そして、この第1の短絡防止措置領域に属するシートにおいては、もっとも外側に位置する電極シート32aに最も大きな応力がかかる。そのため、
図5に示す例では、電極シート32に対してのみ絶縁膜33を設けた。この絶縁膜33により、セパレータに正極シート32からの応力に起因する破れが生じた場合であって、正極シートと負極シートが短絡してしまうことを防止することができる。
【0037】
また、
図5に示す例では、第2の短絡防止措置領域に正極シート32d、32eが含まれる。正極シート32eは、第3の電極シートに該当するものである。また、電極シート32dは、第5の電極シートに該当するものである。なお、
図5に示す例では、正極シート32eの図面左隣の負極シートが第6の電極シートに該当する。この第2の短絡防止措置領域に属するシートには、収納状態において押し付ける方向の応力がかかる。このような応力がかかると、正極シートに隣接するセパレータを正極シートが押すことになってしまうため、セパレータに破れが生じることがある。そこで、
図5に示す例では、第2の短絡防止措置領域に属する正極シート32d、32eに短絡防止措置構造となる絶縁膜33を設ける。
図5に示す例では、属する正極シート32d、32eに大きな押し付け応力がかかると装丁されることから絶縁膜33を設けたが、第2の短絡防止措置領域においても押し付け応力が大きく無い部分に対しては絶縁膜33を省略することができる。この絶縁膜33により、セパレータに正極シート32からの応力に起因する破れが生じた場合であって、正極シートと負極シートが短絡してしまうことを防止することができる。
【0038】
ここで、短絡防止措置構造を有する正極シートの製造方法の一例について説明する。そこで、
図6に実施の形態1にかかる二次電池1における短絡防止措置構造を有する電極シートの製造方法を説明する図を示す。
図6では、短絡防止措置構造を有する電極シートを切り出す金属シート40と、短絡防止措置構造を有していない通常の電極シートを切り出す金属シート44とを示した。
【0039】
実施の形態1にかかる二次電池1の製造工程では、金属シート40の両面に活物質を塗工した活物質塗工領域41を形成する。そして、短絡防止措置構造を有する電極シートの元となる金属シート40に対して絶縁膜33を塗工又は貼り付けた絶縁膜領域42を形成する。一方、金属シート44の両面には活物質を塗工した活物質塗工領域45のみが形成される。
【0040】
そして、活物質塗工領域41及び絶縁膜領域42を形成した金属シート40に対して
図6に示した電極シートカット線43に沿ってレーザーカッター等の切り出し装置を用いて短絡防止措置構造を有する電極シートを切り出す。また、活物質塗工領域45を形成した金属シート44に対して
図6に示した電極シートカット線46に沿ってレーザーカッター等の切り出し装置を用いて短絡防止措置構造を持たない電極シートを切り出す。
【0041】
上記説明より、実施の形態1にかかる二次電池1では、積層体20をケース10に収納した収納状態で応力によりセパレータに大きな負荷をかけてしまう電極シートに短絡防止措置構造を設ける。これにより、実施の形態1にかかる二次電池1は、電極シートから与えられる応力に起因するセパレータ破れが発生した場合においても正極シートと負極シートの短絡を防止することができる。
【0042】
また、実施の形態1にかかる二次電池1では、短絡防止措置構造を有する電極シートを一部の電極シートに限定する。これにより、短絡防止措置構造に要する部材コストを削減することができる。
【0043】
また、実施の形態1にかかる二次電池1では、短絡防止措置構造を正極シートのみに形成することで短絡防止措置構造に設けるために要する部材コストを更に削減することができる。例えば、
図5に示すように、負極シートの活物質領域は、正極シートの活物質領域よりもタブ部の先端に向かって突出する大きさに設定する場合、負極シートにかかる応力によりセパレータが破れる可能性が低い。そのため、このような場合には、短絡防止措置構造を設ける電極シートを正極シートに限っても短絡の可能性は高まらない。
【0044】
また、実施の形態1にかかる二次電池1では、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域とにおいて、短絡防止措置構造を設ける電極シートを応力が特に高いところに限定することで、短絡防止措置構造を設ける電極シートの数を削減することができる。これにより、短絡防止措置構造に設けるために要する部材コストを更に削減することができる。
【0045】
実施の形態2
実施の形態2では短絡防止措置構造の別の形態について説明する。そこで、
図7に実施の形態2にかかる二次電池における短絡防止措置構造を説明する図を示す。
【0046】
図7に示すように、実施の形態2では、
図5で説明した短絡防止措置構造を有する正極シート32a~32fに代えて、正極シート42a~42fを有する。この正極シート42a~42fのうち短絡防止措置構造を有する正極シート32a、32d、32eに対応する正極シート42a、42d、42eは、短絡防止措置構造を持たない42b、42c、42fに比べて金属泊シートの厚みが厚くなる構造を有する。このように、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域に含まれる電極シートのうち短絡防止措置構造を有する金属シートの厚みを厚くすることで電極シートが引っ張り応力及び押し付け応力に対する強度を増す。
【0047】
上記説明より、実施の形態2にかかる二次電池では、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域に含まれる電極シートの厚みを増すことで、これら金属シートの引っ張り応力及び押し付け応力に対する強度を向上させる。これにより、第1の短絡防止措置領域と第2の短絡防止措置領域に含まれる電極シートは、隣接するセパレータを圧縮しづらくなり、セパレータが破れる可能性を低減することができる。
【0048】
また、実施の形態2にかかる二次電池では、短絡防止措置構造を有する電極シートを一部の電極シートに限定する。これにより、同一の厚みを有するケース10に収納する電極シートの枚数の減少量を最小限にとどめて、ケース10の体積当たりの蓄電容量を大きくすることが出来る。
【0049】
また、実施の形態2にかかる二次電池では、短絡防止措置構造を有する電極シートを一部の電極シートに限定する。これにより短絡防止措置構造に要する部材コストを削減することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 二次電池
10 ケース
11 蓋
12 負極極柱
13 正極極柱
20 積層体
21n 負極タブ部
21p 正極タブ部
22n 負極集電部品
22p 正極集電部品
23 台座
24a、24b かしめ部材
24c、24d、24e 穴
25p タブ接合部
25n タブ接合部
31 負極シート
32 正極シート
33 絶縁膜
40、44 金属シート
41、45 活物質塗工領域
42 絶縁膜領域
43、46 電極シートカット線